説明

研削装置のクーラント装置

【課題】構成の簡素化、装置の小型化を図る。
【解決手段】タンク82に貯留されている静圧兼冷却油83は、静圧用ポンプ91により、第1及び第2のスライド部101,103へ静圧油として、また、ワーク冷却用ポンプ92により、ワークの加工部分へ冷却用油として、さらに、スピンドル冷却用ポンプ93により、砥石スピンドル21〜23の被冷却部分に、それぞれ供給される一方、ベッド1を伝わって油回収皿81に回収されて、第1乃至第3のフィルタ85〜87により濾過されて、第1及び第2のタンク圧送用ポンプ88,89によりタンク82に圧送され、貯留されて、循環的に用いられるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削装置におけるクーラント装置係り、特に、構成の簡素化、装置の小型化等を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、研削装置などに代表される機械部品の加工装置にあっては、加工作業中に発生する熱対策として、熱の発生部位に応じた冷却方策を採るのが一般的であった。
例えば、研削装置を例に採れば、砥石スピンドル、ワークスピンドルの軸受け部分で発生する熱の冷却には、冷却水を、また、切削点において発生する加工熱については、クーラント油(切削油、研削油等)を、それぞれ用いるのが一般的であり、このような従来の研削装置については、例えば、特許文献1等において開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−77531号公報(第2−3頁、図1−図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来の研削装置等の機械部品加工装置にあっては、それぞれの冷却媒体毎に、その供給のための機構が必要である。すなわち、従来の研削装置等においては、概略的には、冷却媒体を貯留するタンク、タンクに貯留された冷却媒体を汲み上げて圧送するためのポンプ、タンクに貯留された冷却媒体を適温に保つための温調装置に大別されて構成される冷却媒体の供給機構を、冷却媒体毎に備える必要がある。そのため、装置構成の複雑化を招き、しかも、研削装置全体の高価格化を招く原因となっている。
【0005】
さらに、研削装置等においては、静圧テーブルを用いるものがあるが、この静圧油の供給機構も、上述のような冷却媒体の供給機構と同様に、概略的には、タンク、ポンプ及び温調装置から構成されるのが一般的であり、装置構成のさらなる複雑化、さらなる高価格化を招くものとなっている。
【0006】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、構成の簡素化、装置の小型化を可能とする研削装置用のクーラント装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る研削装置のクーラント装置は、
前記研削装置のベッドから流れ落ちる静圧兼冷却油を回収可能に回収用皿が設けられると共に、当該回収用皿に回収された静圧兼冷却油を貯留するタンクが設けられ、前記回収用皿と前記タンクとの間には、前記回収用皿に回収された静圧兼冷却油を濾過すると共に、前記タンクへ圧送する貯留用濾過・圧送手段が設けられる一方、
前記タンクと前記研削装置の静圧油の導入部分の間には、前記タンクの静圧兼冷却油を圧送、供給する静圧用圧送・供給手段が設けられ、
前記タンクと前記研削装置におけるワークの加工部分の間には、前記タンクの静圧兼冷却油を圧送、供給するワーク冷却用圧送・供給手段が設けられ、
前記タンクと前記研削装置のスピンドルの被冷却部分の間には、前記タンクの静圧兼冷却油を圧送、供給するスピンドル冷却用圧送・供給手段が設けられ、
前記静圧用圧送・供給手段には、静圧兼冷却油を濾過する静圧用フィルタが設けられてなるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一種類の静圧兼冷却油を、静圧用、ワークの冷却用、及び、スピンドルの冷却用に共通に用いることができるようにしたので、従来と異なり、構成要素の共用化により構成の簡素化、装置の小型化が容易なクーラント装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図7を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態におけるクーラント装置が用いられる研削装置の全体構成について、図1を参照しつつ説明する。
本発明の実施の形態における研削装置Sは、特に、その全体外観、寸法が従来装置に比して非常に小型化されたもので、その正面側の横幅は、従来の大凡1/3程度の細身となっている(図1(A)参照)。また、研削装置Sの奥行きは、従来とほぼ同程度であるが(図1(B)参照)、上述のように正面横幅の縮小化が図られているために、その設置スペースが従来に比して大幅に削減できるものとなっている。このような小型化を可能としたのは、詳細は後述するが、ワーク研削部分の構造にある。
【0010】
本発明の研削装置Sは、ワークの研削を行う砥石などが配設される本体部201と、本体部201の上方に配設され、研削量などを設定する操作盤202と、操作盤202の設定データなどを基に、研削動作の制御等を行う電子回路が収納され、操作盤202の後方に配設される制御盤203と、制御盤203の後方に配設され、後述する静圧兼冷却用油の濾過を行う濾過装置204と、この濾過装置204に積層されるよう設けられ、静圧兼冷却油の圧力を制御する油圧装置205と、この油圧装置205に積層されるように設けられる冷却のため霧状に放出された静圧兼冷却油の回収を行うミストコレクタ206とに大別されて構成されたものとなっている。
【0011】
本体部201の正面ほぼ中央には、前面扉201aが開閉可能に設けてあり、その開閉によって、内部に設けられたワーク保持用のチャック(図示せず)へ対するワークの取り付けや取り外しなどの作業が行えるようになっている。
【0012】
図2には、本体部201内に収納、配設される研削装置Sの主要部の構成例が示されており、以下、同図を参照しつつ、その構成例について説明する。
本体部201の底部側には、基台部としてのベッド1が設けられており、このベッド1に形成された水平面であるスライド設置面2に、後述する第1及び第2のスライド手段としての第1及び第2のスライド部101,102やワーク保持手段としてのワーク保持部103などが設けられるものとなっている。なお、ベッド1は、低熱膨張鋳物を用いて形成するのが、熱変位を最小限に抑える観点から好ましい。
【0013】
本発明の実施の形態におけるベッド1の平面外観形状、すなわち、図2に示された本体部201の主要部を上方向から見た場合の形状は、矩形状に形成されたものとなっているが、その一つの辺に沿ってスライド設置面2より高い段部1cが形成されており、その頂部1dには、第1乃至第3の砥石スピンドル21〜23等が設けられる(詳細は後述)ものとなっている。
【0014】
スライド設定面2上には、第1のスライド部101が設けられている。この第1のスライド部101は、スライド設定面2に接合されるように設けられた第1のベースプレート(ベース部材)11と、この第1のベースプレート11に対向するように設けられた第1のテーブルプレート(テーブル部材)12と、第1のベースプレート11と第1のテーブルプレート12との間に設けられたリニアモータ13とに大別されて構成されたものとなっている。なお、図2においては、第1のスライド部101は、その概略が示されたものとなっており、第1のスライド部101のより詳細な構造については後述する。
【0015】
本発明の実施の形態において、第1のベースプレート11は、その全体外観形状が大凡長方形となっており、その長辺は、上述の段部1cと反対側のベッド1の一辺とほぼ同じ長さに設定されたものとなっている。
また、第1のテーブルプレート12は、その横幅が第1のベースプレート11の短辺とほぼ同一であるが、この短辺と直交する方向の辺の長さは、第1のベースプレート11の長辺の大凡1/3〜2/3程度の長さとなっており、後述するように第1のベースプレート11の長辺に沿っての往復動が容易となるようにしてある。
【0016】
なお、この第1のテーブルプレート12は、リニアモータ13の駆動力を受けて、後述する案内部30によって第1のベースプレート11の長辺に平行するように案内されて往復動するものとなっている。
ここで、第1のテーブルプレート12が往復動する方向を、便宜的にX軸方向とする(図2参照)。
【0017】
そして、第1のテーブルプレート12には、第2のスライド部102が載置されるように設けられている。
この第2のスライド部102は、その基本的な構造は、先の第1のスライド部101と同一のもので、第2のベースプレート(ベースプレート部材)14と、この第2のベースプレート14に対向するように設けられた第2のテーブルプレート(テーブル部材)15と、第2のベースプレート14と第2のテーブルプレート15との間に設けられたリニアモータ16とに大別されて構成されたものとなっている。なお、図2における第2のスライド部102は、先の第1のスライド部101同様、その概略が示されたものとなっており、より詳細な構造については後述する。
【0018】
本発明の実施の形態における第2のベースプレート14は、その横幅、すなわち、X軸方向の長さが第1のテーブルプレート12のX軸方向の長さにほぼ等しく設定されている一方、X軸を含む水平面内においてX軸と直交する方向(以下、この方向を便宜的に「Z軸方向」と称する)の長さは、第1のテーブルプレート12のZ軸方向の長さよりもやや長目のものとなっている。
一方、第2のテーブルプレート15は、その横幅、すなわち、X軸方向の長さが第2のベースプレート14のX軸方向の長さにほぼ等しく設定されている一方、Z軸方向の長さは、第2のベースプレート14のZ軸方向の長さよりも短めに設定されたものとなっている。
そして、第2のテーブルプレート15は、リニアモータ16の駆動力を受けて、Z軸方向で往復動せしめられるようになっている。
【0019】
さらに、第2のテーブルプレート15の上には、ワーク保持部103が載置されたものとなっている。
すなわち、ワーク保持部103は、図示されないワークを着脱可能に保持するチャック17と、内部にモータ(図示せず)を有してチャック17を回転自在に保持する主軸18とから構成されたものとなっている。
本発明の実施の形態においては、ベッド1に形成された段部1c側に位置する第2のテーブルプレート15の縁からチャック17が段部1c方向へ突出するように主軸18及びチャック17が設けられたものとなっている。
【0020】
また、第2のテーブルプレート15上において、ワーク保持部103の近傍には、ドレススピンドル19が設けられており、後述する第1乃至第3の砥石24〜26のドレス作業が可能となっている。
【0021】
一方、段部1cの頂部1dには、第1乃至第3の砥石保持手段としての第1乃至第3の砥石スピンドル21〜23がX軸方向において適宜な間隔を隔てて設けられている。これら第1乃至第3の砥石スピンドル21〜23には、それぞれ第1の砥石24、第2の砥石25、第3の砥石26が回転可能に取り付けられており、第1乃至第3の砥石スピンドル21〜23は、第1乃至第3の砥石24〜26が、ワーク保持部103に臨むように段部1cに固設されたものとなっている。換言すれば、第1乃至第3の砥石スピンドル21〜23は、その軸方向がZ軸方向となるように設けられている。
【0022】
また、段部1cには、これら第1乃至第3の砥石スピンドル21〜13の近傍に、ワーク交換のためのローディング装置104が設けられている。
本発明の実施の形態におけるローディング装置104は、旋回シリンダ71と、上下シリンダ72と、2つのエアチャック73,74を主たる構成要素としてなるものである。
段部1cに設けられた旋回シリンダ71は、水平面内で回転可能となっているもので、この旋回シリンダ71に上下シリンダ72が載置されている。
上下シリンダ72は、垂直方向での上下動が可能となっており、この上下シリンダ72に第1及び第2のエアチャック73,74が積層するように設けられている。
かかる構成により、旋回シリンダ71による旋回と、上下シリンダ72による上下動により、チャック17に対して適切な位置でローディング、アンローディング作業が行えるようになっている。
【0023】
また、本発明の実施の形態においては、第1のエアチャック73には、シート深さ測定用の第1の測定子75が、また、第2のエアチャック74には、内径ポスプロ測定用の第2の測定子76が、それぞれ適宜な位置に取着されており、ローディングの際に、それぞれ測定可能に構成されたものとなっている。
【0024】
かかる構成において、図示されないワークの研削作業は、まず、チャック17にワーク(図示せず)を取着させ、操作盤202において、所望する研削に応じた設定を行う。そして、図示されない始動スイッチを押下することによって、第1のテーブルプレート12がX軸方向に、第2のテーブルプレート15がZ軸方向に、制御盤203からの制御によって所望する研削に応じて往復動されながら、第1乃至第3の砥石24〜26が適宜選択され、研削が行われるものとなっている。
本発明の実施の形態においては、第1の砥石24は内径研削に、第2の砥石25はシート研削に、第3の砥石26は端面研削に、それぞれ供されるものとなっている。
【0025】
次に、第1及び第2のスライド部101,102のより具体的な構成について、図3乃至図6を参照しつつ説明することとする。
まず、図3には、第1のスライド部101の縦断面図が示されているが、本発明の実施の形態においては、第2のスライド部102の構成も、基本的に第1のスライド部101と同一であり、以下、第1のスライド部101の構成の説明を以て、第2のスライド部102の構成の説明に代えることとする。
【0026】
本発明の実施の形態において、第1のベースプレート11と第1のテーブルプレート12との間には、第1のテーブルプレート12をX軸方向(図3において紙面表裏方向)に案内する案内部30が設けられている。
すなわち、本発明の実施の形態における案内部30は、第1のベースプレート11に固設された第1及び第2の基準ガイド部材31a,31bと、第1のテーブルプレート12に固設された第1及び第2の可動側ガイド部材32a,32bと、これら第1及び第2の基準ガイド部材31a,31bと第1及び第2の可動側ガイド部材32a,32bとの間に設けられた複数の静圧パッド40とに大別されて構成されたものとなっている。
【0027】
第1及び第2の基準ガイド部材31a,31bは、第1のテーブルプレート11の往復動方向と直交する方向、すなわち、換言すれば、Z軸方向で適宜な間隔を隔てて第1のベースプレート11に固設されたものとなっている。
本発明の実施の形態において、第1のベースプレート11は、その長手軸方向、すなわち、X軸方向の両側部近傍が、扁平の段部34a,34bに形成されており、この扁平の段部34a,34bに挟まれる部位は、平坦部35となっている。
【0028】
第1のベースプレート11は、少なくとも平坦部35が水平面となっている必要がある。
第1及び第2の基準ガイド部材31a,31bは、この平坦部35の両側縁部分、すなわち、扁平の段部34a,34bに隣接する側縁部分に沿って固設されたものとなっている。
本発明の第1及び第2の基準ガイド部材31a,31bは、大凡角柱状に形成された部材を用いてなり、その一面部分が山形に形成された山形部36となっている。そして、かかる第1及び第2の基準ガイド部材31a,31bは、山形部35が、第1のベースプレート11の長手方向と直交する方向、すなわち、Z軸方向において、外方へ向かうように平坦部35に固設されたものとなっている。
【0029】
一方、可動側ガイド部材32a,32bは、第1及び第2の基準ガイド部材31a,31b同様、大凡角柱状に形成された部材を用いてなり、その一面部分が先の第1及び第2の基準ガイド部材31a,31bの山形部36が遊嵌できるよう溝部37を形成したものとなっている。
【0030】
そして、第1及び第2の可動側ガイド部材32a,32bは、その溝部37がZ軸方向において第1のスライド部101の内側を向くように、換言すれば、第1及び第2の基準ガイド部材31a,31bの山形部36に臨むように第1のテーブルプレート12の下面側(図3において紙面下側)においてX軸方向の両側縁部分に固設されたものとなっている。
【0031】
なお、第1のリニアモータ13は、第1のコイル13aと、第1の永久磁石13bとに大別されてなる公知・周知の構成を有してなるもので、上述の第1の基準ガイド部材31a及び第1の可動側ガイド部材32aと、第2の基準ガイド部材31b及び第2の可動側ガイド部材32bとの間において、第1のコイル13aが第1のテーブルプレート12の下面側に、第1の永久磁石13bが第1のベースプレート11に、それぞれ固着されたものとなっている。
【0032】
さらに、本発明の実施の形態においては、溝部37の斜面部分に、次述するように静圧パッド40が設けられている。
以下、図4乃至図6を参照しつつ静圧パッド40について説明する。
まず、静圧パッド40の基本的な構成としては、図4に示されたように、リセス41と、このリセス41の周囲を囲むように形成されるランド42とからなり(図4参照)、ランド42に対向するように静圧を生じさせたい相手側部材、すなわち、本発明の実施の形態においては、第1及び第2の基準ガイド部材31a,31bが位置するものとなっている(図5参照)。
【0033】
さらに、リセス41の底部には、後述する油路50に連通する静圧ノズル43の開口43aが形成されており、開口43aから所定圧で静圧兼冷却用油を噴出させることで、第1及び第2の基準ガイド部材31a,31bとの間に静圧を生じせしめることができるようになっている。
そして、かかる静圧によって、第1の基準ガイド部材31aと第1の可動側ガイド部材32a(第2の基準ガイド部材31bと第2の可動側ガイド部材32b)の間には、いわゆる静圧軸受けが実現され、互いに、間隙(静圧軸受け用ギャップ)を介して対向状態に保持されることとなる。
なお、静圧軸受け用ギャップの大きさLgは、静圧パッド40が形成されていない部分でLg=l1とすると(図6参照)、静圧パッド40が形成された部分では、当然のことではあるが、ランド42の厚み分だけ狭くなり、Lg=l2(<l1)となる。
【0034】
本発明の実施の形態においては、静圧パッド40へ所定圧で後述する静圧兼冷却用油を供給するために、第2のテーブルプレート12と第1及び第2の可動側ガイド部材32a,32bに油路50が形成されている(図3参照)。
すなわち、まず、油路50は、第2のテーブルプレート12においては、その内部に、第2のテーブルプレート12の往復動方向と直交する方向、すなわち、Z軸方向において、第2のテーブルプレート12の側部近傍まで形成されている(図3参照)。
そして、油路50の一部が第2のテーブルプレート12の外面に開口して、後述するクーラント装置Scからの静圧油としての静圧兼冷却油が供給されるようになっている(図3参照)。なお、油路50は、X軸方向の静圧パッド40の数に応じて設けられたものとなっている。
【0035】
次に、図7を参照しつつ本発明の実施の形態におけるクーラント装置Scの構成について説明する。
本発明の実施の形態におけるクーラント装置Scは、濾過装置204と油圧装置205とに大別されてなるもので、特に、静圧兼冷却油83を、第1乃至第3の砥石スピンドル21〜23の冷却水に代わるものとして、また、ワークの研削部分に対する冷却油として、さらに、第1及び第2のスライド部101,102の静圧油として共通に用いることができるよう構成されたものである。
本発明の実施の形態における静圧兼冷却油83は、通常、ワークの冷却用に用いられるもので、それを、第1乃至第3の砥石スピンドル21〜23の冷却水に代わるものとして、また、ワークの研削部分に対する冷却油として、さらに、第1及び第2のスライド部101,102の静圧油として共通に用いるようにしたものである。
【0036】
以下、具体的に説明すれば、まず、ベッド1(図2参照)の下部の適宜な位置には、油回収皿81が設けられており、第1乃至第3の砥石スピンドル21〜23の冷却に用いられた静圧兼冷却油83及びワーク作業の冷却に用いられた静圧兼冷却油83は、ベッド1を伝わって油回収皿81に流れ込むようになっている。
また、第1及び第2のスライド部101,102の静圧油として用いられた静圧兼冷却油83は、図示されない排出口から油回収皿81に注ぎ込まれるようになっている。
【0037】
油回収皿81に回収された静圧兼冷却油83は、タンク82に貯留されるが、油回収皿81とタンク82との間には、貯留用配管84が設けられると共に、その途中には、第1乃至第3のフィルタ85〜87、第1及び第2のタンク圧送用ポンプ89,90が適宜な間隔で設けられている。
すなわち、貯留用配管84には、油回収皿81側から第1のフィルタ85、第1のタンク圧送用ポンプ89、第2のフィルタ86、第2のタンク圧送用ポンプ90及び第3のフィルタ87が順に設けられている。
【0038】
第1及び第2のタンク圧送用ポンプ89,90は、公知・周知の構成を有するもので、油回収皿81の静圧兼冷却油83をタンク82へ圧送するためのものである。
また、第1のフィルタ85は、特に、公知・周知の構成を有してなるマグネットセパレータが用いられており、回収された静圧兼冷却油83に混入している金属材の切削くずを磁石を用いて分離回収できるようになっている。
【0039】
さらに、第2及び第3のフィルタ86,87は、マグネットセパレータでは分離、回収しきれない比較的小さなごみや、切り粉を濾過するためのもので、後述する静圧用フィルタ95に比して比較的大きめのごみ等の除去を目的としたものである。本発明の実施の形態においては、第2及び第3のフィルタ86,87の孔径は、大凡10ミクロン程度に設定されたものが用いられている。
【0040】
タンク82に貯留された静圧兼冷却油83は、静圧用ポンプ91、ワーク冷却用ポンプ92、スピンドル冷却用ポンプ93により、それぞれ次述するように所定の部位に圧送されるようになっている。
すなわち、静圧用ポンプ91は、タンク82の静圧兼冷却油83を第1及び第2のスライド部101,102へ圧送するためのもので、その吐出側と、先に説明した第1及び第2のスライド部101,102の油路50との間には、両者を接続する静圧用配管94が設けられており、静圧兼冷却油83が流通可能となっている。
なお、静圧用配管94は、図7においては、詳細を省略してあるが、第1及び第2のスライド部101,102の近傍において二股に分岐し、それぞれ第1及び第2のスライド部101,102の油路50に接続されるようになっている。
【0041】
また、本発明の実施の形態においては、静圧用配管94の途中の適宜な位置、例えば、静圧用ポンプ91の近傍に静圧用フィルタ95が設けられている。これは、静圧に用いられる油は、冷却に用いられるものと比較して高い浄化度が要求されるためである。かかる静圧用フィルタ95の孔径は、静圧兼冷却油83に混入したごみ等が静圧ノズル43に入り込まないようにする観点から、静圧ノズル43の内径よりも十分に小さく設定されるべきものであり、本発明の実施の形態においては、大凡3ミクロン程に設定されたものとなっている。
なお、先に述べた静圧軸受け用ギャップの大きさ、特に、静圧パッド40が形成された部分の静圧軸受け用ギャップの大きさLg=l2が、静圧ノズル43の内径より小である場合にあっては、静圧用フィルタ95の孔径は、そのl2以下に設定されるべきものである。それによって、静圧軸受け用ギャップの部分に、静圧兼冷却油83へ混入したごみ等が噛み込むようなことが確実に防止されることとなる。
【0042】
また、ワーク冷却用ポンプ92は、タンク82の静圧兼冷却油83をワークの加工部分へ圧送するためのもので、その吐出側には、砥石24〜26の近傍に突出口を有するワーク用配管96が接続されており、静圧兼冷却油83が流通可能となっている。
本発明の実施の形態においては、ワーク用配管96の途中の適宜な位置、例えば、ワーク冷却用ポンプ92の近傍にワーク用フィルタ97が設けられており、タンク82から汲み上げられた静圧兼冷却油83をさらに浄化している。本発明の実施の形態におけるワーク用フィルタ97は、孔径が大凡5ミクロン程度に設定されたものが用いられている
【0043】
さらに、スピンドル冷却用ポンプ93は、第1乃至第3の砥石スピンドル21〜23の冷却のため、タンク82の静圧兼冷却油83を圧送するためのもので、その吐出側には、スピンドル冷却用配管98が接続されており、このスピンドル冷却用配管98を介して第1乃至第3の砥石スピンドル21〜23の被冷却部分に静圧兼冷却油83の放出ができるようになっている。
【0044】
また、調温装置105がタンク82近傍に設けられており、タンク82に貯留された静圧兼冷却油83を、ほぼ一定温度に保つことができるようにしてある。なお、調温装置105は、公知・周知の構成を有するものである。このような調温装置105としては、例えば、コイル状に形成された熱交換用パイプ105aに適温に調整された冷媒を流通させ、この熱交換用パイプ105aを被調温液体(例えば、静圧兼冷却油83)に浸すことで、被調温液体を所望する温度に調整可能としたものなどがある。
【0045】
なお、本発明の実施の形態においては、第1乃至第3のフィルタ85〜87、静圧用フィルタ95及びワーク用フィルタ97は、濾過装置204に、第1及び第2のタンク圧送用ポンプ88,89、静圧用ポンプ91、ワーク冷却用ポンプ92及びスピンドル冷却用ポンプ93は、油圧装置205に、それぞれ設けられたものとなっている。
本発明の実施の形態においては、貯留用配管84、第1乃至第3のフィルタ85〜87、第1及び第2のタンク圧送用ポンプ88,89により貯留用濾過・圧送手段が形成されたものとなっている。
【0046】
また、静圧用配管94、静圧用フィルタ95及び静圧用ポンプ91により静圧用圧送・供給手段が、ワーク用配管96、ワーク用フィルタ97及びワーク冷却用ポンプ92によりワーク冷却用圧送・供給手段が、スピンドル冷却用配管98及びスピンドル冷却用ポンプ93によりスピンドル冷却用圧送・供給手段が、それぞれ形成されたものとなっている。
【0047】
かかる構成における静圧兼冷却油83の循環について概括的に説明すれば、まず、タンク82に貯留されている静圧兼冷却油83は、静圧用ポンプ91により、第1及び第2のスライド部101,103へ静圧油として供給され、図示されない排出口から放出されて、油回収皿81に回収される。
また、タンク82の静圧兼冷却油83は、ワーク冷却用ポンプ92により、ワークの加工部分へ冷却用油として供給され、放出されるようになっており、放出後は、ベッド1を伝わって油回収皿81に回収される。
さらに、タンク82の静圧兼冷却油83は、スピンドル冷却用ポンプ93により、砥石スピンドル21〜23の被冷却部分に供給され、放出されるようになっており、放出後は、ベッド1を伝わって油回収皿81に回収される。
【0048】
そして、上述のようにして油回収皿81に回収された静圧兼冷却油83は、第1乃至第3のフィルタ85〜87により濾過されて、第1及び第2のタンク圧送用ポンプ88,89によりタンク82に圧送され、タンク82に貯留され、循環的に、静圧、冷却に用いられるものとなっている。
【0049】
上述のように、本発明の実施の形態においては、静圧兼冷却油83を、第1乃至第3の砥石スピンドル21〜23の冷却水に代わるものとして、また、ワークの研削部分に対する冷却油として、さらに、第1及び第2のスライド部101,102の静圧油として共通に用いるようにしたので、従来に比して、構成が簡素になるだけではなく、例えば、従来、砥石スピンドルの冷却に水を用いていていたため、そのタンクの錆の発生が回避し難いものであったが、静圧兼冷却油83を用いることで、そのような錆の発生を回避することができる。
【0050】
また、従来は、スピンドルの冷却用の冷却水、ワーク冷却用の冷却油、静圧油を、それぞれ別個に、必要な箇所に供給するような構成が一般的であった。このような構成において、特に、高い浄化品質が必要とされる静圧油にあっては、その供給路に外部から切り粉などの異物の混入が確実に回避できるよう、その構成には、配慮が必要であった。
これに対して、本発明の実施の形態においては、静圧兼冷却油83を共通に用いることができるようにしたので、従来と異なり、特定の部位だけに、切り粉等の混入を心配する必要がなく、従来に比して、使い勝手が極めて良好なものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態における研削装置の全体構成を示す図であって、図1(A)は正面図、図1(B)は側面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態における研削装置の主要部の構成例を示す全体斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態における研削装置に用いられる第1のスライド部の縦断面図である。
【図4】本発明の実施の形態における研削装置に用いられる静圧パッドの一構成例における平面図である。
【図5】図4に示された静圧パッドのA−A線断面図である。
【図6】図4に示された静圧パッドのB−B線断面図である。
【図7】本発明の実施の形態におけるクーラント装置の構成例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0052】
11…第1のベースプレート
12…第1のテーブルプレート
14…第2のベースプレート
15…第2のテーブルプレート
24…第1の砥石
25…第2の砥石
26…第3の砥石
40…静圧パッド
43…静圧ノズル
81…油回収皿
82…タンク
83…静圧兼冷却油
101…第1のスライド部
102…第2のスライド部
103…ワーク保持部
204…濾過装置
205…油圧装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削装置におけるクーラント装置であって、
前記研削装置のベッドから流れ落ちる静圧兼冷却油を回収可能に回収用皿が設けられると共に、当該回収用皿に回収された静圧兼冷却油を貯留するタンクが設けられ、前記回収用皿と前記タンクとの間には、前記回収用皿に回収された静圧兼冷却油を濾過すると共に、前記タンクへ圧送する貯留用濾過・圧送手段が設けられる一方、
前記タンクと前記研削装置の静圧油の導入部分の間には、前記タンクの静圧兼冷却油を圧送、供給する静圧用圧送・供給手段が設けられ、
前記タンクと前記研削装置におけるワークの加工部分の間には、前記タンクの静圧兼冷却油を圧送、供給するワーク冷却用圧送・供給手段が設けられ、
前記タンクと前記研削装置のスピンドルの被冷却部分の間には、前記タンクの静圧兼冷却油を圧送、供給するスピンドル冷却用圧送・供給手段が設けられ、
前記静圧用圧送・供給手段には、静圧兼冷却油を濾過する静圧用フィルタが設けられてなること特徴とする研削装置のクーラント装置。
【請求項2】
貯留用濾過・圧送手段は、回収用皿とタンクが配管接続されると共に、前記回収用皿に回収された静圧兼冷却油を前記タンクへ圧送するタンク圧送用ポンプと、前記静圧兼冷却油を濾過する貯留用濾過手段とが設けられてなり、
静圧用圧送・供給手段は、前記タンクと研削装置の静圧部とが配管接続されると共に、前記静圧部に前記タンクに貯留された静圧兼冷却油を圧送する静圧用ポンプが設けられてなり、
ワーク冷却用圧送・供給手段は、前記タンクに貯留された静圧兼冷却油をワークの加工部分へ圧送するワーク冷却用ポンプが設けられる共に、当該ワーク冷却用ポンプにより前記ワークの冷却部分へ静圧兼冷却油を圧送可能に配管が設けられてなり、
スピンドル冷却用圧送・供給手段は、前記タンクと研削装置のスピンドルの被冷却部分とが配管接続されると共に、前記タンクに貯留された静圧兼冷却油を前記スピンドルの被冷却部分に圧送するスピンドル冷却用ポンプが設けられてなることを特徴とする請求項1記載の研削装置のクーラント装置。
【請求項3】
静圧用フィルタは、静圧部に設けられた静圧ノズルの開口径及び又は静圧軸受け用ギャップより大きな異物の濾過を可能としたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2いずれか記載の研削装置のクーラント装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−284723(P2010−284723A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264548(P2007−264548)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】