説明

研磨装置および研磨方法

【課題】 処理時間が短く、処理スペースが小さく、かつ、取り扱いが困難な溶解液を使用する必要のない研磨装置を提供する。
【解決手段】 電解液6を貯蔵する電解研磨槽2と、第1の電極3と、第2の電極4とを備え、前記第1の電極3と前記第2の電極4との間に電圧を印加し、前記第1の電極3に接触させた被研磨物100の被研磨部分101と前記第2の電極4との間に前記電解液6を介して電流を流し、前記被研磨部分101を研磨する研磨装置1であって、前記第1の電極3は、前記被研磨部分101と接触する接触部分11が、少なくとも前記電圧印加時、前記電解液中に配置されている研磨装置1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は研磨装置および研磨方法に関し、特に、電解研磨装置および電解研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の表面を研磨する方法の一つとして、化学研磨方法が知られている。化学研磨方法は、被研磨部分を過酸化水素等の化学研磨液に浸漬し、当該被研磨部分の表面を溶解させて研磨する(特許文献1)。
【特許文献1】特開平1−272785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、化学研磨方法は、被研磨物の表面を化学的に溶解させるため研磨処理に時間がかかり、加えて、研磨処理後に化学研磨液を完全に洗い流さねばならず洗浄処理にも時間がかかる。
また、化学研磨液として過酸化水素等の医薬用外劇物が用いられることが多く、取り扱いに危険が伴い、また廃液の処理も面倒である。
【0004】
本発明は、上記した課題に鑑み、研磨処理時間が短く、また取り扱いに危険が伴い廃液の処理が面倒な医薬用外劇物を使用する必要のない研磨装置および研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1記載の本発明に係る研磨装置は、電解液を貯蔵する電解研磨槽と、第1の電極と、第2の電極とを備え、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加し、前記第1の電極に接触させた被研磨物の被研磨部分と、前記第2の電極との間に前記電解液を介して電流を流し、前記被研磨部分を研磨する研磨装置であって、前記第1の電極は、前記被研磨部分と接触する接触部分が、少なくとも前記電圧印加時、前記電解液中に配置されている構成を有する。
【0006】
請求項2記載の本発明に係る研磨装置は、請求項1記載の研磨装置において、前記第1の電極は、前記接触部分が前記電解研磨槽の貯蔵部内に収まるように前記電解研磨槽に取り付けられている構成を有する。
請求項3記載の本発明に係る研磨装置は、請求項1または2記載の研磨装置において、前記第1の電極は、前記接触部分を前記被研磨部分側へ弾発付勢する弾性部を備えている構成を有する。
【0007】
請求項4記載の本発明に係る研磨装置は、請求項3記載の研磨装置において、前記弾性部は、板ばね構造を有する構成を有する。
請求項5記載の本発明に係る研磨装置は、請求項2記載の研磨装置において、前記被研磨物を把持する把持手段と、前記把持部材を上下に移動させ、前記把持部材が把持した前記被研磨物の被研磨部分を前記第1の電極に接触させる移動手段と、前記把持部材を前記第1の電極側へ弾発付勢する弾性部材とを備えた被研磨物移動手段を備える構成を有する。
【0008】
請求項6記載の本発明に係る研磨装置は、請求項1から5のいずれか1項に記載の研磨装置において、前記第1の電極は、少なくとも前記電解液に浸漬する部分がタングステンで形成されている構成を有する。
請求項7記載の本発明に係る研磨方法は、第1の電極、第2の電極および被研磨物の被研磨部分を、前記第1の電極と前記被研磨部分とが接触し、かつ、前記第1の電極の少なくとも一部、前記第2の電極の少なくとも一部および前記被研磨部分が電解液に浸漬した状態に配置する配置ステップと、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加し、前記第2の電極と前記被研磨部分との間に前記電解液を介して電流を流し、前記被研磨部分を研磨する研磨ステップとを含むことを特徴とする。
【0009】
請求項8記載の本発明に係る研磨方法は、請求項7記載の研磨方法において、前記配置ステップにおいて、前記第1の電極の少なくとも一部を予め前記電解液に浸漬しておき、前記第1の電極の浸漬部分に前記被研磨部分を接触させることを特徴とする。
請求項9記載の本発明に係る研磨方法は、請求項7または8記載の研磨方法において、前記第1の電極の前記被研磨部分との接触部分を、前記被研磨部分側へ弾発付勢させることを特徴とする。
【0010】
請求項10記載の本発明に係る研磨方法は、請求項7から9のいずれか1項に記載の研磨方法において、前記被研磨物は、冷陰極蛍光ランプであり、前記被研磨部分はリード線であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、電気エネルギーが寄与する陽極的溶解によって被研磨部分を研磨するため、化学的溶解により研磨する化学研磨方法と比べて研磨処理時間が格段に短い。また、取り扱いに危険が伴うと共に廃液の処理が面倒な医薬用外劇物等を使用する必要もない。
請求項2記載の発明によれば、第1の電極の接触部分が電解研磨槽の貯蔵部内に収められているため、被研磨部分を電解液中に移動させるだけで、前記被研磨部分と前記接触部分とを接触させることができ、第1の電極を移動させるための手段が不要である。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、被研磨部分を第1の電極に接触させたときの衝撃を弾性部で低減させることができ、被研磨物や被研磨部分が衝撃に弱い物性であっても、前記被研磨物や前記被研磨部分が破損しにくい。さらに、接触部分は、弾性部によって被研磨部分側に弾発付勢されているため、前記第1の電極と前記被研磨部分との接触状態を安定維持することができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、第1の電極を簡単な構造にすることができるため、低コスト化が図れ、メンテナンスも簡単である。
請求項5記載の発明によれば、被研磨部分を第1の電極に接触させたときの衝撃を弾性部材で低減させることができ、被研磨物や被研磨部分が衝撃に弱い物性であっても、前記被研磨物や前記被研磨部分が破損しにくい。さらに、接触部分は、弾性部材によって被研磨部分側に弾発付勢されているため、前記第1の電極と前記被研磨部分との接触状態を安定維持することができる。
【0014】
請求項6記載の発明によれば、第1の電極が研磨されにくく、部品交換回数の低減による低コスト化とメンテナンスの簡略化を図ることができる。
請求項7記載の発明によれば、電気エネルギーが寄与する陽極的溶解によって研磨するため、化学的溶解により研磨する化学研磨方法と比べて処理時間が格段に短い。また、取り扱いに危険が伴うと共に廃液の処理が面倒な医薬用外劇物を使用する必要もない。
【0015】
請求項8記載の発明によれば、被研磨部分を移動させるだけで、前記被研磨部分と前記接触部分とを簡単に接触させることができる。
請求項9記載の発明によれば、被研磨部分を第1の電極に接触させたときの衝撃を弾性部材で低減させることができ、被研磨物や被研磨部分が破損しにくい。さらに、第1の電極と被研磨部分との接触状態を安定維持することができる。
【0016】
請求項10記載の発明によれば、冷陰極蛍光ランプのリード線の研磨に特有の問題を解決することができる。これについての詳細は後述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る研磨装置および研磨方法について、図面を参照しながら説明する。
第1〜第4の実施形態に係る研磨装置および研磨方法は、被研磨物を陽極側にして陰極との間に電解液を介して電流を流し、前記被研磨物の表面を陽極酸化させ研磨効果を得る、いわゆる電解研磨装置および電解研磨方法である。
【0018】
<第1実施形態>
(電解研磨装置の説明)
図1は、第1の実施の形態に係る電解研磨装置を示す概略図である。電解研磨装置1は、電解研磨槽2、第1の電極3、および、第2の電極4を備える。
電解研磨槽2は、上面に開口を有する箱形形状であって、材質は、塩化ビニルである。電解研磨槽2は、内部が貯蔵部5となっており、この貯蔵部5には、電解液6として、40重量%のリン酸を含有するのリン酸水溶液が貯蔵される。
【0019】
なお、リン酸水溶液の濃度は40重量%に限定されないが、研磨処理の時間を短くするためには、リン酸水溶液の濃度が30〜50重量%であることが好ましい。また、電解液6は、リン酸水溶液に限定されず、電解研磨で使用される公知の電解液を適宜選択して使用することができる。例えば、硫酸水溶液や硝酸水溶液等が挙げられる。但し、リン酸水溶液は、医薬用外劇物適用外であるリン酸を使用しているため、安全に取り扱うことができ、廃液の処理も簡単である。また、リン酸水溶液は、汚れると着色するため、交換時期の見極めが容易である。
【0020】
また、電解研磨槽2の材質は、塩化ビニルに限定されず、電解液6の種類に応じて、前記電解液6に侵食されにくいものを適宜選択可能である。なお、電解液6をリン酸水溶液とした場合、リン酸水溶液は侵食性に乏しいため電解研磨槽2が侵食されにくい。
第1の電極3は、電解研磨槽2に取り付けられている。当該第1の電極3は、前記電解研磨槽2の側板に固定された支持部材7と、前記支持部材7に支持された電極本体8とを備える。
【0021】
電極本体8は、タングステン製の板材を略L字形に折曲成形したものであって、支持部材7の一端部にネジ9で固定される垂直部10と、冷陰極蛍光ランプ100のリード線101を接触させる接触部分としての水平部11とを備えている。電極本体8は、水平部11が電解研磨槽2の貯蔵部5内に収納されるように、支持部材7によって所定の高さ位置に支持されている。
【0022】
電極本体8は、タングステンで形成されているため、電圧印加時の電解液6に浸漬させても電解研磨されにくい。なお、電極本体8の材質は、タングステンに限定されず、電解研磨されにくい性質を有する材質であればよい。
電極本体8は、前述した通り略L字形に折り曲げられた板材であるため、それ自体が板ばね構造を有する弾性部となっている。したがって、水平部11に荷重がかかると、前記水平部11は垂直部10との連結部分を中心に回動する。例えば、水平部11の上面に上方からリード線101を押し当てて接触させた場合、前記水平部11には下向きの荷重が加わり、前記水平部11は下方(図1における矢印12で示す方向)に回動する。
【0023】
このように、水平部11に荷重が加わると前記水平部11が回動するため、前記水平部11にリード線101を接触させた際に、前記リード線101に加わる荷重を低減させることができる。そのため、水平部11にリード線101を強く押し当ててしまうようなことがあっても、前記リード線101が折れ曲がったり、冷陰極蛍光ランプ100が折れて破損したりしにくい。
【0024】
なお、電極本体8の板ばね構造のばね圧は、冷陰極蛍光ランプ100のサイズ、リード線101の径および突出部分の長さ、後述するチャックヘッド110の下方へ移動する速度などに応じて、適宜調節することが好ましい。なお、ばね圧が強すぎると、前記冷陰極蛍光ランプ100や前記リード線101が折れ曲がり、ばね圧が弱すぎると、水平部11が所定の位置に戻らなくなる。
【0025】
また、電極本体8が板ばね構造を有しているため、リード線101を水平部11に接触させると、前記水平部11が前記リード線101側へ弾発付勢されるため、前記水平部11と前記リード線101との接触状態を安定維持することができる。したがって、リード線101に電流を安定して流すことができ、研磨処理を確実に行うことができる。
第2の電極4は、略L字形に折り曲げられた鉛製の棒材であって、一方の端部が電解研磨槽2の貯蔵部6内に収まるようにして前記電解研磨槽2の側板に固定されている。
【0026】
第1の電極3は、電気配線13を介して、図示しない電源の陽極側に接続されており、また、第2の電極4は、電気配線14を介して、前記電源の陰極側に接続されている。支持部材7および電極本体8がそれぞれ導電性を有しているため、第1の電極3は、前記電源と電気的に導通している。また、第2の電極4も、導電性を有しているため、前記電源と電気的に導通している。
【0027】
(被研磨物の説明)
本実施の形態に係る電解研磨装置1は、被研磨物が冷陰極蛍光ランプ100であり、被研磨部分が前記冷陰極蛍光ランプ100のリード線101である場合に特に有用である。
図2は、冷陰極蛍光ランプを示す縦断面図である。なお、図2では、各構成部材間の縮尺は統一されていない。図2に示すように、冷陰極蛍光ランプ100は、両端部に電極102が気密封止され、内面に蛍光体膜103が形成され、内部に水銀および希ガスが封入されたガラスバルブ104を備える。
【0028】
ガラスバルブ104は、全長が280〜1000mm、外径が1.8〜4.0mm、内径が1.4〜3.0mmである。
各電極102は、有底筒状の電極本体105と、前記電極本体105の底部にレーザー溶接等によって接続されたリード線101とを備える。電極102は、電極本体105と、リード線101の前記電極本体105側の端部とが、ガラスバルブ104の内部に収まり、前記リード線101の前記電極本体105とは反対側の端部が、前記ガラスバルブ104から外側へ突出するように配置されている。
【0029】
リード線101は、例えば、ニオブ・ニッケル製であって、線径は0.8〜0.9mmである。また、リード線101におけるガラスバルブ104から外側へ突出した部分(以下、単に「突出部分」)の長さは、2〜11mmである。なお、リード線101の代わりに、例えば、鉄・ニッケル合金線の心材を銅層で被覆したもの(ジュメット線)等が使用されていてもよい。
【0030】
図3は、冷陰極蛍光ランプの製造における電極封止工程を説明する図である。図3に示すように、電極封止工程では、リード線101にガラスビーズ107を外嵌させておいた電極102を、ガラスバルブ104の前駆体であるガラス管106の端部に差し込み、その端部をガスバーナー108で加熱軟化させることによって電極102を封止する。
前記ガスバーナー108の加熱温度は約1300℃であり、この加熱によって、リード線101の突出部分に膜厚0.2〜1.0μmの酸化被膜が形成される。特に、ガスバーナー108の炎に近い突出部分の根元付近(図3において符号109で示す範囲)には、酸化被膜が形成され易い。なお、酸化被膜の膜厚は、オージェ電子分光分析法により測定した。
【0031】
一般に、冷陰極蛍光ランプ100は、リード線101の突出部分の酸化を防止するために、前記突出部分の表面が半田でコーティングされ出荷される。コーティングに半田が用いられるのは、冷陰極蛍光ランプ100をバックライトユニットなどの灯具(不図示)へ取り付ける際に、コーティングされた半田を利用して半田付けをすることができ、別途半田を用意する手間が省けるからである。
【0032】
ところが、リード線101の表面に酸化被膜が形成されていると、前記リード線101の表面の半田の濡れ性が悪くなり、半田のコーティング処理が上手くいかない。これにより、冷陰極蛍光ランプ100の製造歩留まりが低下する。したがって、リード線101を研磨して酸化被膜を除去しなければならない。そして、特に研磨したい部分は、リード線101の根本部分109である。
【0033】
電解研磨装置1は、第1の電極3の水平部11が電解液6中に配置されているため、電圧印加時にリード線101の突出部分の全体を電解液6に浸漬させることが可能である。したがって、酸化被膜が形成され易いリード線101の根元付近109を電解液6に浸漬させることが可能であり、前記根元付近109を研磨することができる。
一般に、電解研磨方法では、第1の電極3と接触している部分が研磨され難い。しかし、第1の実施形態に係る電解研磨装置1の場合、第1の電極3の水平部11と接触しているのは、酸化被膜が形成され難いリード線101の下端部であり、酸化被膜が形成され易い根元付近109は第1の電極3と接触していない状態で電解液6中に浸漬している。したがって、根元付近109を効率良く研磨することができる。
【0034】
(電解研磨方法の説明)
以下に、電解研磨装置1を用いて行う電解研磨方法について説明する。
まず、電解研磨槽2の貯蔵部5内に、少なくとも第1の電極3の水平部11と第2電極の一端部とが浸漬する程度に、電解液6を注入する。
次に、冷陰極蛍光ランプ100を移動させて、前記冷陰極蛍光ランプ100のリード線101を第3の電極3の水平部11の上面に押し当て、前記リード線101と前記水平部11とを接触させる。
【0035】
冷陰極蛍光ランプ100は、冷陰極蛍光ランプ100を把持する把持部材111と、前記把持部材111を上下に移動させる移動手段112とを備えたチャックヘッド110によって移動させる。
具体的には、チャックヘッド110によって、冷陰極蛍光ランプ100を電解研磨槽2の真上に移動させ、さらに、前記冷陰極蛍光ランプ100を下方へ降ろす。これにより、冷陰極蛍光ランプ100のリード線101が電解液収納部5内の電解液6に浸漬し、前記リード線101の下端部が、前記電解液6中の水平部11の上面に接触する。
【0036】
次に、第1の電極3と第2の電極4との間に電圧を印加し、第1の電極3に接触させたリード線101と第2の電極4との間に電解液6を介して0.8〜5.0Aの電流を3秒以上流す。これにより、リード線101の酸化被膜が、電気化学的反応によって電解液6に溶解し、リード線101の表面が研磨される。なお、電圧印加時、リード線101は陽極として機能し、第2の電極4は陰極として機能する。
【0037】
<第2実施形態>
第2の実施形態に係る電解研磨装置は、第1の電極が板ばね構造を有さない代わりに、接触部分を被研磨部分側へ弾発付勢する弾性部を備えている点において第1の実施形態とは相違する。他の構成は、基本的に第1の実施形態に係る電解研磨装置1と同様である。したがって、共通の構成部分には第1の実施形態と同じ符号を付し、その説明は省略するか簡略するにとどめ、相違点を中心に説明する。
【0038】
(電解研磨装置の説明)
図4は、第2の実施の形態に係る電解研磨装置を示す概略図である。電解研磨装置200は、電解研磨槽2、第1の電極201、第2の電極4、および、弾性部材202を備える。
第1の電極201は、タングステンで形成されており、冷陰極蛍光ランプ100のリード線101を接触させる第1の水平部203と、取付部材204によって電解研磨槽2の側板に摺動自在に取り付けられた垂直部205と、電気配線13が接続された第2の水平部206とを有する。
【0039】
第1の電極201は、電解研磨槽2の貯蔵部5内における第1の水平部203の下側に配置された弾性部材202によって、前記水平部203が所定の高さ位置となるよう支持されている。
弾性部材202は、内部にエアーが充填されたゴム製の袋体であって、第1の水平部203に荷重が加わると、前記第1の水平部203に圧迫されて扁平する。すなわち、弾性部材202は、第1の電極201の第1の水平部203をリード線101側へ弾発付勢している。例えば、第1の水平部203の上面に上方からリード線101を接触させた場合、前記第1の水平部203に下向きの荷重が加わって、弾性部材202が横長に扁平し、前記第1の水平部203は下方(図4における矢印207で示す方向)に移動する。
【0040】
このように、第1の水平部203に上方から荷重が加わると、前記第1の水平部203が下方へ移動するため、リード線101に加わる荷重を低減させることができる。しかも、弾性部材202の弾発力によって、第1の水平部203はリード線101側へ弾発付勢されるため、前記第1の水平部203とリード線101との接触状態を安定維持することができる。
【0041】
第1の電極201は、電気配線13を介して、図示しない電源の陽極側に接続されている。第1の水平部203、垂直部205および第2の水平部205がそれぞれ導電性を有しているため、第1の電極201は、電源と電気的に導通している。
(電解研磨方法の説明)
以下に、電解研磨装置200を用いて行う電解研磨方法について説明する。
【0042】
まず、電解研磨槽2の貯蔵部5内に、少なくとも第1の電極201の第1の水平部203と第2電極の一端部とが浸漬する程度に、電解液6を注入する。
次に、冷陰極蛍光ランプ100を、把持部材111および移動手段112を備えたチャックヘッド110によって移動させ、リード線101の根元付近109を電解液6に浸漬させると共に、前記リード線101の下端部を第3の電極3の第1の水平部203の上面に接触させる。
【0043】
さらに、第1の電極201と第2の電極4との間に電圧を印加して、前記第1の電極201に接触させたリード線101と前記第2の電極4との間に電解液6を介して電流を流す。これにより、リード線101の表面の酸化被膜が、電気化学的反応によって電解液6に溶解し、リード線101の表面が研磨される。
<第3実施形態>
第3の実施形態に係る電解研磨装置は、被研磨物移動手段を備えている点において第1の実施形態とは相違するが、他の構成は、基本的に第1の実施形態に係る電解研磨装置1と同様の構成をしている。したがって、共通の構成部分には第1の実施形態と同じ符号を付してその説明は省略するか簡略するにとどめ、相違点を中心に説明する。
【0044】
(電解研磨装置の説明)
図5は、第3の実施の形態に係る研磨装置を示す概略図である。電解研磨装置300は、電解研磨槽2、第1の電極301、第2の電極4、および、被研磨物移動手段の1例としてのチャックヘッド310を備える。
第1の電極301は、タングステンで形成されており、その一端部側が電解研磨槽2の側板に設けられた開口部302を貫通し、前記電解研磨槽2の貯蔵部5内に収まっている。なお、第1の電極301と開口部302内面との間にはシール部材303が充填され、電解研磨槽2の電解液6が漏れないようになっている。
【0045】
第1の電極301は、電解液収納部5側の端部が、冷陰極蛍光ランプ100のリード線101を接触させるための接触部分となっている。
図6は、冷陰極蛍光ランプを把持したチャックヘッドを図5における矢印A側から見た図である。図5および図6に示すように、チャックヘッド310は、冷陰極蛍光ランプ100を把持する一対の把持部材311と、前記把持部材を上下に移動させるための一対の移動手段312とを備える。
【0046】
把持部材311は、前記把持部材311を貫通する軸体313に沿って上下に摺動自在に支持されており、前記把持部材311と軸体313とは移動手段312の下端部付近に取り付けられた筐体314内に収納されている。また、把持部材311の上方には、軸体313に外嵌させるようにして弾性部材の1例としてのばね315が取り付けられており、前記把持部材311は、前記ばね315によって第1の電極301側へ弾発付勢されている。
【0047】
把持部材311が冷陰極蛍光ランプ100を把持する強さは、前記冷陰極蛍光ランプ100のリード線101を第1の電極301に接触させた際、前記冷陰極蛍光ランプ100がズレ動かない程度に強いことが好ましい。なお、把持部材311が冷陰極蛍光ランプ100を強く挟み過ぎて、前記冷陰極蛍光ランプ100が破損することがないように、前記把持部材311の前記冷陰極蛍光ランプ100と直接接触する部分には、緩衝材316が取り付けられている。
【0048】
冷陰極蛍光ランプ100は、チャックヘッド310によって、電解研磨槽2の真上に移動させられ、その後下方へ降ろされる。これにより、冷陰極蛍光ランプ100の下側のリード線101が電解液収納部5内の電解液6に浸漬し、前記リード線101の下端部が、前記電解液6中の水平部11の上面に接触する。
リード線101を第1の電極301に接触させた際、把持部材311に下方から荷重が加わると、前記把持部材311が上方へ移動するため、リード線101に加わる荷重を低減させることができる。しかも、ばね314の弾発力によって、把持部材311が第1の電極3側へ弾発付勢されるため、第1の電極301とリード線101との接触状態は安定維持される。
【0049】
(電解研磨方法の説明)
以下に、電解研磨装置300を用いて行う電解研磨方法について説明する。
まず、電解研磨槽2の貯蔵部5内に、少なくとも第1の電極301の貯蔵部5側の端部と、第2電極の一端部とが浸漬する程度に電解液6を注入する。
次に、冷陰極蛍光ランプ100を、チャックヘッド310によって移動させ、リード線101の根元付近109を電解液6に浸漬させると共に、前記リード線101の下端部を第3の電極301の上面に接触させる。
【0050】
さらに、第1の電極301と第2の電極4との間に電圧を印加して、前記第1の電極301に接触させたリード線101と前記第2の電極4との間に電解液6を介して電流を流す。これにより、リード線101の表面の酸化被膜が、電気化学的反応によって電解液6に溶解し、リード線101の表面が研磨される。
<第4実施形態>
第4の実施形態に係る電解研磨装置は、被研磨物移動手段を備える点において第1の実施形態とは相違するが、他の構成は、基本的に第1の実施形態に係る電解研磨装置1と同様の構成をしている。したがって、共通の構成部分には第1の実施形態と同じ符号を付してその説明は省略するか簡略するにとどめ、相違点を中心に説明する。
【0051】
(電解研磨装置の説明)
図7は、第4の実施の形態に係る研磨装置を示す概略図である。電解研磨装置400は、電解研磨槽2、第1の電極401、第2の電極4、および、被研磨物移動手段の1例としての電解用ヘッド410を備える。
第1の電極401の構成は、第3の実施形態に係る第1の電極301と同様である。すなわち、第1の電極401は、タングステンで形成されており、開口部402を貫通して電解研磨槽2の貯蔵部5内に収まった一端部側が、冷陰極蛍光ランプ100のリード線101を接触させるための接触部分となっている。また、第1の電極401と開口部402内面との間にはシール部材403が充填されている。
【0052】
第4の実施の形態に係る電解研磨装置400の場合、冷陰極蛍光ランプ100は、第1の実施形態で用いられるチャックヘッド110と同様のチャックヘッド110によって電解研磨槽2の真上に移動させられる。さらに、電解研磨槽2の真上に移動させられた冷陰極蛍光ランプ100は、チャックヘッド110から電解用ヘッド410へと受け渡され、前記電解用ヘッド410によって下方へ降ろされる。
【0053】
電解用ヘッド410は、冷陰極蛍光ランプ100を把持する把持部材411と、前記把持部材411を上下に移動させるための一対の移動手段412とを備える。
把持部材411は、前記把持部材411を貫通する軸体413に沿って上下に摺動自在に支持されており、前記把持部材411と軸体413とは移動手段412に取り付けられた筐体414内に収納されている。また、把持部材411の上方には、軸体413に外嵌させるようにして弾性部材としてのばね415が取り付けられており、前記把持部材411は、前記ばね415によって移動手段412に対して下方に弾発付勢されている。
【0054】
移動手段412は、前記移動手段412を貫通する軸体416に沿って上下に摺動自在に支持されている。
冷陰極蛍光ランプ100が電解用ヘッド410によって下方へ降ろされると、冷陰極蛍光ランプ100の下側のリード線101が電解液収納部5内の電解液6に浸漬し、前記リード線101の下端部が、前記電解液6中の水平部11の上面に接触する。
【0055】
リード線101を第1の電極401に接触させた際、把持部材411に下方から荷重が加わると、前記把持部材411が上方へ移動するため、リード線101に加わる荷重を低減させることができる。しかも、ばね414の弾発力によって、把持部材411は第1の電極401側へ弾発付勢されるため、第1の電極401とリード線101との接触状態は安定維持される。
【0056】
(電解研磨方法の説明)
以下に、電解研磨装置400を用いて行う電解研磨方法について説明する。
まず、電解研磨槽2の貯蔵部5内に、少なくとも第1の電極401の貯蔵部5側の端部と、第2電極の一端部とが浸漬する程度に電解液6を注入する。
次に、冷陰極蛍光ランプ100を、把持部材111および移動手段112を備えたチャックヘッド110によって電解研磨槽2の真上に移動させ、さらに、電解用ヘッド410によって下方に降ろして、リード線101の根元付近109を電解液6に浸漬させると共に、前記リード線101の下端部を第3の電極401の上面に接触させる。
【0057】
さらに、第1の電極401と第2の電極4との間に電圧を印加して、前記第1の電極401に接触させたリード線101と前記第2の電極4との間に電解液6を介して電流を流す。これにより、リード線101の表面の酸化被膜が、電気化学的反応によって電解液6に溶解し、リード線101の表面が研磨される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る研磨装置および研磨方法は、導電性を有する物品の表面を研磨する場合に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】第1の実施形態に係る電解研磨装置を示す概略図である。
【図2】冷陰極蛍光ランプを示す縦断面図である。
【図3】冷陰極蛍光ランプの製造における電極封止工程を説明する図である。
【図4】第2の実施形態に係る電解研磨装置を示す概略図である。
【図5】第3の実施形態に係る電解研磨装置を示す概略図である。
【図6】冷陰極蛍光ランプを把持したチャックヘッドを図5における矢印A側から見た図である。
【図7】第4の実施形態に係る電解研磨装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0060】
1,200,300,400 研磨装置
2 電解研磨槽
3,201,301,401 第1の電極
4 第2の電極
5 貯蔵部
6 電解液
8 弾性部
11 接触部分
100 被研磨物
101 被研磨部分
310,410 被研磨物移動手段
311,411 把持手段
312,412 移動手段
315,415 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液を貯蔵する電解研磨槽と、第1の電極と、第2の電極とを備え、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加し、前記第1の電極に接触させた被研磨物の被研磨部分と、前記第2の電極との間に前記電解液を介して電流を流し、前記被研磨部分を研磨する研磨装置であって、
前記第1の電極は、前記被研磨部分と接触する接触部分が、少なくとも前記電圧印加時、前記電解液中に配置されていることを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
前記第1の電極は、前記接触部分が前記電解研磨槽の貯蔵部内に収まるように前記電解研磨槽に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の研磨装置。
【請求項3】
前記第1の電極は、前記接触部分を前記被研磨部分側へ弾発付勢する弾性部を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記弾性部は、板ばね構造を有することを特徴とする請求項3に記載の研磨装置。
【請求項5】
前記被研磨物を把持する把持手段と、
前記把持部材を上下に移動させ、前記把持部材が把持した前記被研磨物の被研磨部分を前記第1の電極に接触させる移動手段と、
前記把持部材を前記第1の電極側へ弾発付勢する弾性部材と
を備えた被研磨物移動手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の研磨装置。
【請求項6】
前記第1の電極は、少なくとも前記電解液に浸漬する部分がタングステンで形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の研磨装置。
【請求項7】
第1の電極、第2の電極および被研磨物の被研磨部分を、前記第1の電極と前記被研磨部分とが接触し、かつ、前記第1の電極の少なくとも一部、前記第2の電極の少なくとも一部および前記被研磨部分が電解液に浸漬した状態に配置する配置ステップと、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加し、前記第2の電極と前記被研磨部分との間に前記電解液を介して電流を流し、前記被研磨部分を研磨する研磨ステップと
を含むことを特徴とする研磨方法。
【請求項8】
前記配置ステップにおいて、前記第1の電極の少なくとも一部を予め前記電解液に浸漬しておき、前記第1の電極の浸漬部分に前記被研磨部分を接触させることを特徴とする請求項7に記載の研磨方法。
【請求項9】
前記第1の電極の前記被研磨部分との接触部分を、前記被研磨部分側へ弾発付勢させることを特徴とする請求項7または8に記載の研磨方法。
【請求項10】
前記被研磨物は、冷陰極蛍光ランプであり、前記被研磨部分はリード線であることを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の研磨方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−167824(P2006−167824A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−360438(P2004−360438)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】