説明

研磨装置及び方法、並びに、ドレッシングユニットの性能試験方法

【課題】研磨パッドとドレッシング部材とを接触させてドレッシング処理を行う際に、自励振動を防いで研磨パッドのドレッシングを確実に行い、パッド表面の研磨面の再生を行うことができるドレッシングユニットを備えた研磨装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る研磨装置は、研磨テーブル上の研磨パッドに基板を押圧して研磨する基板保持ユニットと、該研磨パッドにドレッシング部材を接触させて該研磨パッドを目ならしするドレッシングユニットを備え、さらに該ドレッシングユニットは、ドレッシングユニット本体を内部に収容する容器と、該容器の上に載置される錘と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨装置及び方法、並びにドレッシングユニットの性能試験方法に関するもので、特に、半導体ウェハを研磨する研磨装置の研磨パッド表面を再生するドレッシングユニットを備えた研磨装置及び方法、およびドレッシングユニットの性能試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を製造するにあたり、素子の微細化が進展するにつれて、平坦加工技術の重要性は増してきている。特に、CMP(Chemical Mechanical Polishing)装置、すなわち、化学的機械的研磨装置は、必須の技術となっている。この化学的機械的研磨装置は、STI(shallow trench Isolation)、ILD(層間絶縁膜)の平坦化など、最近では、low-k材などの平坦化など、様々な工程に利用されてきている。
【0003】
ここで、研磨パッドの表面状態は、被加工物に直接接する面の状態を意味するため、このパッドの表面状態を好ましい状態に維持することが重要となる。そして、このパッドをドレッシングするためのドレッシング部材(ドレッサーともいう)は、研磨パッドに当接させて、パッドの表面の一部を削り取ったり、表面をあらすことで、パッドにスラリーを保持する能力を良好として、研磨可能な状態に維持するのである。このパッドは、研磨加工を経るにつれ表面状態が劣化するため、好ましい表面状態に維持するためには、適宜、研磨処理を行っている最中か、もしくは研磨処理を行っている間の時間などに、コンディショニング(ドレッシング)処理を行うことが必要とされてきた。
【0004】
このドレッサーとしては、従来からステンレス等の金属表面にダイヤモンド砥粒が電着されたドレッサーの他に、ブラシドレッサーを設けたものが知られている。ブラシドレッサーとして使用されている材料としては、ポリアミド系の合成樹脂(例えば、ナイロン(登録商標))が知られている。
【0005】
また、研磨装置に設けられるドレッシングユニットでは、ドレッサーを上下に昇降させる機構と、ドレッサーを回転させる回転機構が設けられ、ドレッサーを回転させつつ押圧することにより、パッドのドレッシングを行っている。
また、上述したドレッシングユニットによる研磨パッドの研磨面のドレッシングには、基板の研磨と同時に行なう方法と、基板の研磨と研磨との合間に行なう方法とがある。いずれの方法においても、研磨面はドレッシングによってある程度削り取られてしまう。
【0006】
従来のドレッシングユニットでは、ダイヤモンドなどの砥粒を電着させたドレッシング部材を使用して研磨パッド(研磨面)をドレッシングしており、ドレッシングユニットの振動現象が悪影響を及ぼすことはきわめて稀であった。しかし、柔らかい材質を用いたいわゆるソフトパッドを使用する場合には、ダイヤモンドドレッサーをドレッシング部材として用いてドレッシングすると、必要以上にコンディショニング後のパッドの研磨面があらされてしまう。これは、パッドの研磨面の状態を悪化させ、ひいては、研磨性能に悪影響を及ぼす可能性がある。そこで、パッド表面をドレッシングする際に表面を必要以上に荒らすことがないように、ブラシによってパッドをドレッシングすることが考えられる。
さらに、パッドの表面に凹凸が設けられた場合や、又は表面に複雑な形状の溝が形成された研磨パッドの場合にも、凹凸の内部に研磨砥粒が滞留しがちとなるため、その粒子を適切に除去するために、ブラシを用いたドレッサーがドレッシング部材として用いられることがある。
【0007】
しかしながら、このブラシドレッサーを用いた場合に、場合によっては、新たな問題が発生することがわかってきた。
すなわち、ブラシの先端でパッド表面に接触することから、ブラシとパッドとの接触面積がきわめて小さくなる。そうすると、パッドとブラシとの間に働く摩擦力が非常に大きくなることから、ドレッサーとパッドの接触面でいわゆるスティックスリップ現象が発生する。スティックは、粘着する、スリップは、滑る、ということを各々意味するものである。したがって、一般には、物体を滑らせるときに、途中でひっかかったり滑ったりを繰り返すような現象を指して、スティックスリップ現象という。
さらに、ダイヤモンドなどの砥粒をドレッシング部材に用いず、ブラシのみを研磨パッドに接地させてドレッシングする場合には、上からの押圧に対してブラシそのものがいわば「バネ」のように機能する。
したがって、パッドとブラシとの間に働く摩擦力が非常に大きいことからスティックスリップ現象が発生し、さらに、ブラシそのものもバネのように機能することで、ドレッシングする際の押圧力のかかりかたによっては、ドレッサーから自励振動が発生する場合があること、特に、ドレッサー旋回アーム周辺からの振動が極めて大きくなる場合があることを、発明者らは新たに見出した。
【0008】
一般に特殊な摩擦によっては自励振動が発生しうることは知られている(非特許文献1参照)。しかるに、ブラシドレッサーにおける自励振動の問題を解決することは、次の観点から重要である。ドレッサーを駆動させた場合において、場合によっては自らが振動する、自励振動現象が発生しても、パッドのコンディショニングに悪影響を及ぼさないのであれば問題がないともいえるが、振動が発生してしまうと、パッド表面をドレッシングした後でも、適切なドレッシングがなされない場合があった。すなわち、振動によりパッド表面の異物が除去できる領域と、除去できない領域が発生してしまい、その結果、この除去できない領域があることで、たとえば異物が被研磨物の傷の発生原因となる、といった、研磨性能に悪影響をもたらすことがある。また、このような振動は、他の機器の運転に悪影響を及ぼしたりもする。
さらに、表面に複雑な形状の溝が形成された研磨パッドやソフトパッドについても、ドレッシング時の押圧力を適切に選択すれば、ブラシドレッサーではなくドレッシング部材としてダイヤモンドを用いたダイヤモンドドレッサーを使用することがある。この場合にも、条件によっては、パッドの表面状態如何によってはパッドとダイヤモンドとの間に働く摩擦力が大きくなり、自励振動現象が発生する可能性がある。したがって、ダイヤモンドドレッサーの場合であっても、ドレッシング時の自励振動を予め抑制することは重要である。
また、研磨処理の最中に振動が発生してしまうとプロセスロスが大きくなるため、ドレッシングユニットから予め振動が発生しないことを試験、確認した後に、ドレッシングユニットを研磨装置に設置する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−211355号公報
【特許文献2】特開2002−210650号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】日本機械学会論文集(C編)49巻441号(昭58-5)711〜718ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここで、研磨パッドの平面は、貼り付け時点のむらや、もともとの厚みがあり、また、研磨パッドそのものにたとえば溝が形成されていたりするので、完全な平面ではない。例えばブラシを研磨パッドに当接させてドレッシングする等する場合に、ドレッシングユニットの自励振動を抑制すれば、研磨パッドの溝に対してブラシをより正確に接するように動作させることが可能となり、ドレッシングをより確実に行うことにつながる。そこで、ドレッシングユニットないしドレッサーの振動を低減させ、如何に安定的に駆動させるかが課題となる。
【0012】
また、ソフトパッドとブラシドレッサーの組み合わせは、パッドとブラシドレッサーとの間に働く摩擦力が非常に大きい為、ブラシの先端でスティックスリップ現象が発生し、そのエネルギーが伝わり、ドレッサー旋回アーム周辺から自励振動が発生する。また、研磨パッドとドレッシング部材の摩擦力が大きくなる場合にもドレッサー旋回アーム周辺から自励振動が発生するであろう。
この自励振動は、自身(振動する部分)の固有振動数とほぼ等しい周波数で発生するものである。そして、主要部品の見直しによる大幅な構造変更を行う対策も考えられるが、コストや対策展開までのリードタイムが莫大に掛かることが憂慮されていた。
【0013】
本発明では、上述の点に鑑み、ドレッシングユニットの振動を低減もしくは防止して、安定的にドレッシングを行いうるドレッシングユニットを備えた研磨装置、および、該研磨装置を用いた研磨方法を提供することを目的とする。また、自励振動を防いでパッドのドレッシングを確実に行い、パッド表面の研磨面の再生を行うことができるとともに、半導体ウェハの被研磨面におけるマイクロスクラッチの発生を低減することができるドレッシングユニットを備えた研磨装置、および、該研磨装置を用いた研磨方法を提供することを目的とする。さらに、本発明では、ドレッシング条件が変化してもドレッシングユニットから振動が発生しないように、ドレッシングユニットを試験するための性能試験方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、本発明の一実施形態においては、研磨テーブル上の研磨パッドに基板を押圧して研磨する基板保持ユニットと、該研磨パッドにドレッシング部材を接触させて該研磨パッドを目ならしするドレッシングユニットを備えた研磨装置において、前記ドレッシングユニットは、ドレッシングユニット本体を内部に収容する容器と、該容器の上に載置される錘と、を有した研磨装置を提供する。このように、本発明では、ダイナミックダンパー(動吸振器)としてのドレッシングユニット本体を収容する容器と、該容器の上に錘を採用したので、確実に振動発生を抑制できた。また、該容器の上に錘を載せているので、錘の荷重を変更することで、動吸振器の大きさや振動数を自在に調整することが可能となり、確実かつ簡便に、有害な振動を抑制することができる。ここで容器とは、ドレッシング本体を内部に収容するドレッシングカバーないしハウジングのことを言う。
また、本発明の一実施形態においては、基板を保持して研磨テーブル上の研磨パッドに該基板を押圧して研磨するための基板保持ユニットと、該研磨パッドにドレッシング部材を接触させて該研磨パッドを目ならしするドレッシングユニットとを備えた研磨装置において、前記ドレッシングユニットは、ドレッシングユニット本体を内部に収容する容器と、ドレッシング部材が固定されるドレッサーフランジと、該ドレッサーフランジのバックホイールに載置される錘と、を有した研磨装置を提供する。ここで、バックホイールとは、ドレッサーフランジのドレッシング部材固定面とは異なる面(裏面)のことである。このように、本発明では、ドレッサーフランジのバックホイールに錘を載置したので、錘の荷重を変更することで、確実かつ簡便に、有害な振動を抑制することができる。
また、本発明の一実施形態においては、基板を保持して研磨テーブル上の研磨パッドに該基板を押圧して研磨するための基板保持ユニットと、該研磨パッドにドレッシング部材を接触させて該研磨パッドを目ならしするドレッシングユニットとを備えた研磨装置において、前記ドレッシングユニットは、ドレッシングユニット本体を内部に収容する容器と、該容器の上に載置される機械的押圧機構と、を有した研磨装置を提供する。このように、本発明では、ダイナミックダンパー(動吸振器)としてのドレッシングユニット本体を収容する容器と、該容器の上に載置される機械的押圧機構を採用したので、確実に振動発生を抑制できた。また、容器の上に載置される機械的押圧機構を採用しているので、機械的に荷重を変更することで、動吸振器の大きさや振動数を自在に調整することが可能となり、確実かつ簡便に、有害な振動を抑制することができる。
また、好ましくは、前記ドレッシングユニット本体を内部に収容する容器は、ドレッサー軸を内部に収容するハウジングと、該ハウジングの外側に設けられドレッシングユニット本体を収容するドレッサーカバーを有する。
また、本発明の一実施形態においては、好ましくは、前記ドレッサー駆動軸の周りには、ボールスプラインが備えられ、該ボールスプライン周りをマイナス隙間とされたことを特徴とする研磨装置を提供する。
さらに、本発明の一実施形態においては、ドレッシングユニットの性能試験方法であって、ドレッシング部材への第1押付荷重を設定し、該第1押付荷重によってドレッシングする第1工程と、第1工程において発生する振動を測定して振動抑制効果の有無を判定する第2工程と、前記振動抑制効果が存在しないと判定された場合にドレッシングユニットの制振手段を変更し、前記振動抑制効果が存在すると判定された場合に押付荷重を変更する第3工程と、を有した、ドレッシングユニットの性能試験方法を提供する。このように構成したので、本発明では、任意のドレッシング荷重を加えた場合に、ドレッシングユニットのダイナミックダンパー(動吸振器)として作用する制振手段に振動抑制効果が存在しないと判定された場合にはドレッシングユニットの動吸振器の大きさや振動数を調整し、制振効果が認められたときには別のドレッシング荷重を加えるようにし、全ドレッシング荷重範囲で有害な振動を抑制できるか確認することができ、したがって、ドレッシングユニットの耐振性を確保することができる。
さらに好ましくは、前記ドレッシング部材が、ブラシドレッサーであることを特徴とする。
さらに好ましくは、前記ドレッシング部材が、ダイヤモンドドレッサーであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施形態によれば、ダイナミックダンパー(動吸振器)としてのドレッシングユニット本体を収容する容器と、該容器の上に錘を備えたドレッシングユニットを採用したので、ドレッシングユニットの主振動系に発生するような振動の固有振動数を打ち消して固有振動ピークを複数のピークに分裂させるので、振動を有効に抑制ないし防止することが出来る。また、振動エネルギーが発生しても、振動エネルギーをドレッサーの周囲や地面へと拡散させるようなドレッサーカバーを採用しうるので、振動によってドレッサー(ドレッシング部材)が不良動作を起こすことを抑制することができる。
また、本発明の一実施形態によれば、ドレッシングユニット本体を内部に収容する容器と、ドレッシング部材が固定されるドレッサーフランジと、該ドレッサーフランジのバックホイールに載置される錘と、を有したドレッシングユニットとされたので、ドレッシングユニットの主振動系に発生するような振動の固有振動数を打ち消して固有振動ピークを複数のピークに分裂させるので、振動を有効に抑制ないし防止することが出来る。また、たとえ振動エネルギーが発生しても、振動エネルギーをドレッサーの周囲や地面へと拡散させるようなドレッサーカバーを採用しうるので、振動によってドレッサー(ドレッシング部材)が不良動作を起こすことを抑制することができる。
また、本発明の一実施形態によれば、ドレッシングユニット本体を内部に収容する容器と、該容器の上に載置される機械的押圧機構と、を有したドレッシングユニットとされたので、本発明の研磨装置および方法によれば、自励振動の発生を防いで研磨パッドのドレッシングを確実に行うことができるので、パッド表面の研磨面の再生を有効に行うことができるとともに、半導体ウェハの被研磨面におけるマイクロスクラッチの発生を低減することができるドレッシングユニットを備えた研磨装置ないし方法を提供することができる。また、振動の発生を抑制するためのダンパーの荷重を、振動状態に適合するように可変式としたため、振動の発生を予測して、有効に、自励振動を防止することができる。
また、本発明のドレッシングユニットの性能試験方法によれば、ドレッシング条件が変化してもドレッシングユニットから振動が発生しないことを予め確認した上で、該ドレッシングユニットを研磨装置に設置することができる。したがって、研磨処理の最中に振動を発生させることなく研磨時のプロセスロスを最小化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】CMP装置(基板研磨装置)の各部の配置構成を示す平面図である。
【図2】CMP装置(基板研磨装置)のポリッシュ部を示す斜視図である。
【図3】ドレッシングユニットのカバーを除いた内部構造を模式的に示した図である。
【図4】ドレッシングユニットの動作を模式的に示した図(カバーを除くドレッシングユニット本体の動作を示す図)であり、図4(a)は、作動しているドレッシングユニットを垂直方向上方から見たときの図である。図4(b)は、作動しているドレッシングユニットを横方向から見たときの図であり、図4(c)は、図4(b)におけるフランジの縁部分(領域U)の部分拡大図である。図4(d)は、作動しているドレッシングユニットを斜め上方から見たときの斜視図である。
【図5】本発明におけるドレッシングユニットを模式的に示す図である。このうち図5(a)は、ハウジングおよび旋回アームの外側にドレッサーカバーを設け、このドレッサーカバーの天板上に錘を載置したドレッシングユニットを垂直方向上方から見たときの斜視図である。図5(b)は、ハウジングおよび旋回アームの外側にドレッサーカバーを設け、バックホイール上に錘を載置したドレッシングユニットを垂直方向上方から見たときの斜視図である
【図6】本発明における、振動抑制の機構を模式的に示した図である。
【図7】Z軸方向の旋回アームにおいて発生した振動の周波数と伝達関数強度との関係、およびZ軸方向の旋回アームにおける自励振動の固有振動数が抑制された結果を示すグラフである。
【図8】ドレッシングユニットの性能試験方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る装置の発明を実施するための最良の形態について、実施例に即して説明する。
【実施例】
【0018】
以下、実施例について述べるが、本発明は下記の実施例に制限されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で種々変更が可能である。ここで、錘をドレッサーカバーに載置した実施例を記載したが、ダイナミックダンパーの作用をする限りにおいて、錘の位置は下記実施例の態様に限定されないことは当然である。
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る基板研磨装置の各部の配置構成を示す平面図である。この基板研磨装置は、研磨面を有する研磨テーブルと、研磨対象の基板を保持して研磨テーブルの研磨面に押圧する基板保持ユニットと、基板上に形成されている膜の膜厚を測定する膜厚測定ユニットと、を備えている。
【0020】
この基板研磨装置は、走行レール1003上を移動する搬送ロボット1004がカセット1001内にストックされている半導体ウェハなどの基板の取出・収納を行うとともに、その未研磨・研磨済みの基板を載置台1050および搬送ロボット1020に中継させてロータリートランスポーター1027との間を往復させる。そして、そのロータリートランスポーター1027上の基板を後述する基板保持ユニットのトップリング1に保持させつつ研磨テーブル100上に位置させることにより、複数枚の基板を連続して研磨処理することができるように、この基板研磨装置はシステム化されている。なお、図において、1005,1022は洗浄機であり、研磨後の基板を洗浄乾燥することができるように構成されている。また、1036も研磨テーブルであり、基板を2段研磨することができるように構成されている。1038、3000は研磨テーブル100、1036のドレッシングを行うためのドレッシングユニットであり、1043はそのドレッシングユニット1038を洗浄するための水桶である。
【0021】
この基板研磨装置には、研磨後に洗浄及び乾燥処理が完了した半導体ウェハ等の膜厚を測定するIn-line膜厚測定ユニット200を備えている。図1に示すように、搬送ロボット1004が研磨後のウェハをカセット1001内に収納する前、もしくは搬送ロボット1004が研磨前のウェハをカセット1001から取出した後(In-line)に、センサコイルによる渦電流信号、光学的手段による研磨面への入射および反射の光学信号、研磨面の温度信号、あるいはマイクロ波の反射信号などの単独または適切なる組合せから、その半導体ウェハなどの基板の導電性膜のCu膜やバリア層または、酸化膜等の絶縁膜の膜厚を測定する膜厚測定ユニット(測定手段)200が配置されている。そして、この基板研磨装置は、その基板の研磨中または/および研磨後に、導電性膜が配線部などの必要な領域を除いて除去され、または絶縁膜が除去されることをこれらのセンサ信号や計測値を監視することにより検出して、CMPプロセスの終点を決定し、適切な研磨処理を繰り返すことができるようになっている。
【0022】
この基板研磨装置の基板保持ユニット(トップリング)1は、上述したように研磨対象である半導体ウェハW等の基板を保持して研磨テーブル上の研磨面に押圧して研磨する装置である。基板保持装置を構成するトップリング1の下方には、上面に研磨パッド(研磨布)101を貼付した研磨テーブル100が設置されている。また、研磨テーブル100の上方には研磨液供給ノズル102が設置されており、この研磨液供給ノズル102によって研磨テーブル100上の研磨パッド101上に研磨液Qが供給されるようになっている。市場で入手できる研磨パッドとしては種々のものがあり、例えば、ロデール社製のSUBA800、IC−1000、IC−1000/SUBA400(二層クロス)、フジミインコーポレイテッド社製のSurfin xxx−5、Surfin 000、ニッタ・ハース社のVISION PAD 3200/3500、JSR社のフィラー・パッド等がある。SUBA800、Surfin xxx−5、Surfin 000は繊維をウレタン樹脂で固めた不織布であり、IC−1000は硬質の発泡ポリウレタン(単層)である。発泡ポリウレタンは、ポーラス(多孔質状)になっており、その表面に多数の微細なへこみ又は孔を有している。
【0023】
図2にCMP装置のポリッシュ部の斜視図を示す。ポリッシュ部は、研磨パッド10を支持する研磨テーブル11と、ウェハなどの基板(被研磨物)を研磨パッド10に摺接させて研磨するトップリング20と、研磨パッド10を目立て(ドレッシング)するドレッシングユニット30とを備えている。研磨パッド10は研磨テーブル11の上面に取り付けられており、研磨パッド10の上面は研磨面を構成している。研磨テーブル11は、図示しないモータに連結されており、このモータによって研磨テーブル11および研磨パッド10は、矢印で示す方向に回転されるようになっている。
【0024】
基板保持ユニット20は、基板を保持し研磨パッド10の上面に押圧するトップリングヘッド21と、トップリングヘッド21に連結されるトップリング駆動軸22と、トップリング駆動軸22を回転自在に保持するトップリング揺動アーム23とを備えている。トップリング揺動アーム23は、トップリング揺動軸24によって支持されている。トップリング揺動アーム23の内部には、トップリング駆動軸22に連結された図示しないモータが設置されている。このモータの回転はトップリング駆動軸22を介してトップリングヘッド21に伝達され、これによりトップリングヘッド21は、矢印で示す方向にトップリング駆動軸22を中心として回転する。
【0025】
基板保持ユニット20に隣接して、研磨液及びドレッシング液を研磨パッド10の研磨面に供給する液体供給機構25が配置されている。液体供給機構25は、複数の供給ノズルを備えており、この供給ノズルから研磨液及びドレッシング液が研磨パッド10の研磨面に供給される。この液体供給機構25は、研磨液を研磨パッド10に供給する研磨液供給機構と、ドレッシング液(例えば純水)を研磨パッド10に供給するドレッシング液供給機構とを兼用している。なお、研磨液供給機構とドレッシング液供給機構とを別に設けてもよい。
【0026】
トップリングヘッド21の下面は、真空吸着などにより基板を保持する基板保持面を構成している。トップリング駆動軸22は、図示しない上下動アクチュエータ(例えばエアシリンダ)に連結されている。したがって、トップリングヘッド21は、上下動アクチュエータによりトップリング駆動軸22を介して上下動する。
【0027】
基板の研磨は、次のようにして行なわれる。トップリングヘッド21の下面に基板が保持され、トップリングヘッド21および研磨テーブル11が回転される。この状態で、研磨パッド10の研磨面には研磨液が供給され、そして、トップリングヘッド21により基板が研磨パッド10の研磨面に押圧される。基板の表面(下面)は、研磨液に含まれる砥粒による機械的研磨作用と研磨液の化学的研磨作用により研磨される。トップリング揺動軸24は、研磨パッド10の径方向外側に位置している。このトップリング揺動軸24は回転可能に構成されており、これによりトップリングヘッド21は研磨パッド10上の研
磨位置と、研磨パッド10の外側の待機位置との間を移動可能となっている。また、研磨するにあたっては、基板保持ユニット1の吸着部による半導体ウェハWの吸着を解除した後、基板保持ユニット1の下面に半導体ウェハWを保持させると共に、トップリング駆動軸11に連結されたトップリング用エアシリンダ111を作動させて基板保持ユニット1の下端に固定されたリテーナリング3(不図示)を所定の押圧力で研磨テーブル100の研磨面に押圧する。この状態で、基板保持ユニット1の複数の圧力室(不図示)にそれぞれ所定の圧力の加圧流体を供給し、半導体ウェハWを研磨テーブル100の研磨面に押圧する。そして、研磨液供給ノズル102から研磨液Qを流すことにより、研磨パッド101に研磨液Qが保持され、半導体ウェハWの研磨される面(下面)と研磨パッド101との間に研磨液Qが存在した状態で研磨が行われる。
【0028】
ドレッシングユニット30は、パッド表面が柔らかいソフトパッドを使用した研磨パッド10の研磨面に摺接されるドレッサー31と、このドレッサー31に連結されたスプラインシャフト32と、スプラインシャフト32を回転自在に保持する旋回アーム4と、ドレッシングユニット30の本体全体を覆うようにされたカバー33を備えている。ドレッサー31(すなわち、ドレッサーフランジ42の下側)の下面は、研磨パッド10の研磨面に摺接されるドレッシング面を構成している。このドレッシング面には、ダイヤモンド粒子などの砥粒が固定されている。旋回アーム4は、モータが設置されたモータ軸34に支持されている。旋回アーム4の内部には、モータ軸34に設けられたモータとスプラインシャフト32とに連結された回転するベルト38が設置されている。モータ40の回転は旋回アーム4、スプラインシャフト32を介してドレッサー31に伝達され、これによりドレッサー31は、矢印で示す方向にスプラインシャフト32を中心として回転する。
【0029】
図3は、旋回アーム4の外周に設けられるカバー33の図示を省略した形のドレッシングユニット30の内部構造を示す図である(カバー33の内部に、ハウジング6が設けられている)。回転用モータ40は、ベルト38の回転駆動力を与えるものであり、ベルト38はスプラインシャフト32と回転用モータ40を支える軸との2軸の間で回転するようになっている。ベルト38は、対磨耗性、耐久性に優れた材料が用いられる。そして、ドレッシング時には、回転用モータ40の動作によりベルト38は回転する。このとき、回転モータ40を支える軸の側で、図4(a)におけるFの方向に回転するようになっている。また、ドレッシング時には、回転テーブル14は、Eの方向に回転するようになっている。さらに、ドレッシング時には、図4(b)に示すように、ドレッサーを下方に押し付けることで、ドレッサーに対する押圧力Gを発生させる。
【0030】
ベルト駆動輪43がDの方向に、ベルト38がCの方向に回転すると、スプラインシャフト32側でも同様にAの方向に回転するように構成されている。このスプラインシャフト32の方向Aへの回転により、ブラシドレッサーも回転し、その結果、図4(c)に示すようにブラシドレッサー50はドレッシングを行うことになる。ここで、図4(d)は、図4(b)を斜め上方位置から見た斜視図である。
駆動機構としてのエアシリンダ5は、スプラインシャフト32を上下させる駆動力を与え、ドレッシング時には、ブラシのパッドに対するドレッシング押圧力を設定することができる。
【0031】
ドレッシングユニットの旋回アーム4は、ベルト38の周囲に設けられており、ベルトの回転動作時にほこりなどの異物が内部に混入してしまうことを防ぐとともに、回転動作にともなって発生する異物が、外部へと拡散することをも防ぐ。この旋回アーム4付近で、従来のドレッシングユニットでは振動が発生していた。
【0032】
本発明の実施形態においては、図5(a)に示すように、ドレッシングユニットの旋回アーム4の上部に、天板51及びカバー33を設けている。さらに、この天板51の上部、例えば、天板上のドレッサーのスプラインシャフトの軸心上に、荷重を加えるためのオモリ(錘)50を設けている。すなわち、ドレッシングユニット本体を内部に収容する容器と、この容器の上部に載置される錘とが設けられたドレッシングユニットが図5(a)に示されている。他方、図5(b)には、天板51の上部に錘を載せる代わりに、回転するドレッサーフランジ42のドレッシング部材を固定する面の裏面(バックホイール)に錘51を載せて振動を抑制するようにした装置構成を示している。すなわち、ここで、バックホイールとは、図5(b)に示すように、ドレッサーフランジのドレッシング部材固定面とは異なる面(裏面)のことを意味する。
【0033】
また、ドレッサーカバー33の形状は、半円筒状とされ、旋回アーム4の両端に設置される。そして、モータ及びエアシリンダ等の駆動部品をその内部に収容することで、外部空間からそれらの機器を保護している。
【0034】
ドレッサーカバー33の上面には、ステンレス製の天板51が設けられる。この天板51は、旋回アーム4で振動が発生した場合には、ダイナミックダンパーとして機能するものである。
【0035】
さらに、このダンパーとしての天板51の上部には、質量1〜5kgの錘(おもり、荷重)50を搭載することができるようになっている(図5(a))。ここで、本発明では錘の荷重を可変式としているので、主振動系の固有振動数と、ダイナミックダンパー(動吸振器)の固有振動数をほぼ一致するよう調整可能として、装置間における固有振動数のばらつきに対応することができる。また、図5(a)の実施例と代替的な実施例として、ドレッシングユニット本体を内部に収容する容器の上部、たとえば天板51の上部位置(図5(a)の錘50の位置)に、別途の押圧手段として、例えば油圧シリンダーのような、可変式の荷重を加えることができる押圧機構を設けることもできる。このように構成すれば、振動抑制のための操作をより簡便に行うことが可能となる。
【0036】
ここで、上記ドレッサーカバー33とステンレス製の天板51はバネとダンパーの役割を果たし、オモリ50はマスの役割を果たすことになる。この関係を模式的に示したのが図6である。
【0037】
一般に自励振動は、エネルギー(この場合、ブラシドレッサーによる摩擦力)が低い固有振動数に変換されて起こる。しかし、低い固有振動数は、剛性増加によって、自励振動が発生しにくく対策されているため、次に低い(かつ未対策の)、Z方向の固有振動数にエネルギーが変換され、振動が発生する可能性があった。
本発明では、このドレッシング時に発生しうるZ軸方向の固有振動数へのエネルギー変換、すなわち、上下方向の振動が発生することを防止するために、ダイナミックダンパーとしての天板51の上部に、オモリ50を設け、これにより、振動の抑制と、振動の発生防止を有効に達成することに成功した。
【0038】
なお、本発明において、ダンパー、ないしダイナミックダンパーとは、主振動系(振動を抑えたい部位)に、マス、バネ、ダンパーからなる振動系を取り付け、これを調整することで、特定の加振周波数に対して主振動系の振動を抑制する構造である。
【0039】
そして、このように構成された装置がどのように振動発生の抑制および振動吸収に寄与するものであるかの実験結果を、図7に示す。
図7では、縦軸として伝達関数(入力に対する応答の感度)を、横軸として周波数(Hz)を示す。なお、ここでZ軸方向とは、研磨パッドに対して鉛直方向の軸の方向を意味し、X軸方向、Y軸方向とは、研磨パッドに対して平行な平面上で、直行する2つの軸方向を意味する。
図7では、旋回アームで発生する振動のZ軸方向の固有振動結果である。ドレッサー旋回アーム300の天板の直上に何ら荷重を設けなかった場合には、Z軸方向の旋回アームの固有振動数は周波数90Hz付近でピークを示す振動ピークが生じていることがわかる(曲線d−1)。90Hz付近の固有振動数の自励振動は本来発生しにくいと想定されたものだが、摩擦によるエネルギーが大きくなった今回の場合には、曲線d−1のような自励振動が発生してしまったものである。これに対して、ドレッサー旋回アームの天板の直上に、振動防止のための荷重部材として、重量が2kgの荷重をかけた場合の曲線がd−2である。この場合、ドレッサー旋回アームの天板の直上に、2kgの荷重部材を設けた場合、ダイナミックダンパーとして機能し、実線で示された周波数90Hz付近でのピークは分裂していることがわかった。
すなわち、図7から明らかなように、Z軸方向の旋回アームの固有振動数は、ドレッサー旋回アームの天板の直上に、振動防止のための荷重部材を設けた場合には、これがダイナミックダンパーとして機能し、90Hz付近にもともと発生していた固有振動数のピークが二つに分裂し、振動の抑制がなされていることがわかる。
【0040】
また、ドレッサー旋回アーム4の天板の直上に載せる荷重部材の重量には、これがダイナミックダンパーとして機能するための最適値が存在する。発明者らは、この点について以下の実験を行った。すなわち、ドレッサー旋回アーム4の天板51の直上(ここでは、図5(a)の位置に載置した場合)に載せる荷重部材の重量として、0kg、2kg、の2種類の場合で試験を行い、ドレッサーブラシとしてすべての場合で7mmのものを使用、ドレッサーへの垂直方向荷重を100Nから400Nの範囲で変化させた場合の結果を示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1では、ブラシドレッサーにおいて、ドレッサーへの垂直荷重(押圧力)を変化させた場合に見受けられるブラシドレッサーの振動の大きさを測定したものである。例えば、表1の比較例1の場合には、ドレッサーへの垂直荷重が100Nとした際にはブラシドレッサーの振動カーブ(振動カーブの例は、図7を参照)の極大値の大きさが、0.01(Grms)となったことを示している。なお、比較例1、比較例2、実施例1においては、表に示した以外の条件については、すべて同じとした。具体的には、ブラシとしてナイロン製(ブラシ長として7mm)のものを使用し、かつ、測定点をブラシドレッサーの上下動を行わせるスプラインシャフト上に設け、研磨テーブルおよびドレッサーをともに回転させた条件とした上で、測定したものである。表1において、例えば、比較例1のケースにおける荷重100Nを加えた場合には、振動の加速度は0.01Grmsとなって、十分に振動発生は抑制されていた。しかし、この場合には、荷重が小さいため、パッドの表面の凹凸状態が粗い場合に、目立て効果が必ずしも十分確保できない可能性がある。他方で、荷重400Nを加えた場合の比較例2と実施例1の値の振動値をみると、値は異なるにせよ、十分に振動発生は抑制されていると評価できるレベルのものであった(ただし、後述するように、比較例2の場合には、外部から衝撃を加えることで、振動が発生してしまう)。
ここで、表1の比較例1、比較例2とを比較した場合、ドレッサーカバーを使用したブラシドレッサーにおいては振動が抑制されていることがわかった。すなわち、比較例2の場合では、ドレッサーカバーを使用することで振動の固有振動エネルギーが吸収され、固有振動の極大値が抑えられているものと推定される。
さらに、比較例2と実施例1とを比較するため、ドレッシングユニットの上部に衝撃を与えて強制的に振動を発生させる振動収束試験を行った。この結果、外部から衝撃をあたえると振動が発生してしまうことがあったのが(比較例2)、錘を用いた場合にはこの振動も抑制されることがわかった(実施例1)。比較例2の場合は固有振動の極大値が抑えられていただけなのが、実施例1の場合には容器の上に錘を載せたことでこれがダイナミックダンパーとして機能し、図7の結果のように固有振動のピークが複数のピークに分裂しているものと推定された。
そして、実施例1では、ドレッシング処理全体を通して自励振動の発生を確実に防いでパッドのドレッシングを行うことができた。また、目立て後の研磨パッドの表面状態を確認したところ、問題となるような凹凸は生じていなかった。したがって、従来の装置と比較して、パッド表面の研磨面の再生を効果的に行うとともに、半導体ウェハの被研磨面におけるマイクロスクラッチの発生をも確実に低減できた。
【0043】
すなわち、上記実験結果から、ブラシに衝撃が加えられたとしても振動を生じさせないようなブラシドレッサーの振動の発生を抑制・防止するためには、ドレッシング本体を収容しうる容器、ドレッサーカバーを用い、かつ、ドレッサー旋回アームの天板の直上(好ましくは先端部の上部)に、振動抑制のために荷重を載せることが有効であることが分かった。さらに、この試験結果より、より振動の発生が顕在化しにくいダイヤモンドドレッサーを用いた場合においても同様の手段を講じれば防振効果が期待できることが分かった。
さらに、振動源に近い部分にオモリを設けることも、振動抑制のためには有効であった。
また、表には示していないが、ドレッサー駆動軸の周りにボールスプラインを設け、このボールスプライン周りをマイナス隙間とすることで、振動抑制をより確実なものとすることができる点も、発明者らは見出した。なお、ここで「マイナス隙間」とされた状態とは、剛体を挟み込む際、剛体を挟むようにして形成された空間の幅(間隔)と、剛体の直径とを比較したときに、当該間隔(幅)が、剛体の本来の直径寸法値よりも小さい値となるように剛体を挟持した状態のこと、である。
また、ドレッサー駆動軸の周りに、ボールスプラインを設ける代わりに、例えば防振ゴム材からなる弾性支持部材を設けて振動抑制を図ることもできる。このように構成しても、振動抑制をより確実なものとすることができる。
【0044】
ここで、一般に振動現象は次のように表される。
【数1】

【0045】
すなわち、ドレッサー旋回アームの上に荷重を加えた場合には、減衰要素が付加されることでξ値が大きくなり、これにより、減衰係数が大きくなって振動が減衰する。図7の曲線d-2ではダンパー効果が有効に発揮され、曲線d-1の90Hz付近の固有振動の極大ピークが有効に分裂し、かつ、振動そのものの発生も抑制されているのである。このように、主振動系に発生する振動を抑制するダイナミックダンパーとしての効果を有効に発揮するように、荷重をドレッシングユニット本体を内部に収容する容器(たとえば、ドレッサー旋回アームの天板)上の適切な位置に配することで、上記固有振動数の一部を打ち消して、固有振動ピークを複数のピークに分裂させたので、効果的に振動を抑制させることが出来た。
【0046】
次に、ドレッシングを行うドレッシングユニットの振動発生の抑制効果を確認するための性能試験方法を示す。この方法は、上述したドレッシングユニットに振動抑制手段を具備させた後に、ドレッシング部材への第1押付荷重を設定してドレッシングし、次いで、振動抑制効果が存在しないと判定された場合に、当該振動抑制手段を見直した上で、同じ第1押付荷重にてドレッシングを行って振動抑制効果が得られるまで試験するものである。また、第1押付荷重にてドレッシングを行って振動抑制効果が得られたときには、さらに別の押付荷重(第2押付荷重)にてドレッシングを行って振動抑制効果が得られるかどうかを試験し、ドレッシングユニットの押付荷重範囲全てで振動抑制効果が得られているかを確認する、ドレッシングユニットの性能試験方法である(図8)。
【0047】
すなわち、本実施例においては、図8のフロー図に示すように、まず、ドレッシングユニットにより研磨パッドの目立てを行うにあたり(300)、ドレッシング部材への第1押付荷重を設定し、第1押付荷重によってドレッシングする(301、302。第1工程)。
ついで、ドレッシング中に研磨テーブル近傍に設置された振動測定手段によって第1工程において発生する振動を測定する(303。なお、任意的に、このときにドレッシング後の研磨パッドの表面状態を例えば光学測定装置によりスキャニング・測定をおこなったり、あるいは目視による確認を行い、目立て効果が確保されていることを確認することもできる)。そして、振動抑制効果の有無を判定するが(304。第2工程)、この判定の演算処理を自動的に行うために、振動測定手段および押付荷重変更手段にケーブル接続された演算装置を別途設けることが出来る。
さらに、第2工程で振動抑制効果が無しと判定された場合にはドレッシング部材への押付荷重を変更せずに制振手段を変更した上で、第1押付荷重のままドレッシング試験を継続する(305から302へ戻る)。もし、第2工程で振動抑制効果が有りと判定された場合にはドレッシング部材への押し付け荷重を第2押付荷重へと変更してこの第2押付荷重によりドレッシングを行って全範囲押付荷重範囲において効果が得られているか続いて確認する(306。第3工程)。
【0048】
この実施例においては、自励振動の有無判定と、押付荷重の設定変更について、演算処理器を用いて制御することもできる。したがって、本発明によれば、振動抑制が確実になされたドレッシングユニットの性能試験を迅速に行える方法を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、ドレッシングユニットを備えた研磨装置およびそれを用いた研磨方法、および、ドレッシングユニットの試験方法を提供するものであるが、シリコンウェーハ、化合物半導体ウェハ又は合成石英ウェハ等のあらゆる素材を研磨する際の振動抑制に適用できる装置ないし方法、および、研磨装置に用いられるドレッシングユニットの性能試験に適用できる方法である。
【符号の説明】
【0050】
1 基板保持ユニット
2 トップリング本体
3 リテーナリング
4 旋回アーム(ドレッサー揺動アーム)
5 エアシリンダ
6 ハウジング
10 研磨パッド
11 研磨テーブル
20 基板保持ユニット
21 トップリングヘッド
22 トップリング駆動軸
23 揺動アーム
24 トップリング揺動軸
25 液体供給機構
30 ドレッシングユニット
31 ドレッサー
32 スプラインシャフト
33 カバー
34 モータ軸(ドレッサー揺動軸)
35 カップリング
36 軸受
37 ブラシドレッサー(ブラシ)
38 ベルト
39 モータ軸
40 回転用モータ
41 スプラインナット
42 ドレッサーフランジ
43 ベルト駆動輪
50 錘(おもり)
51 天板
100 研磨テーブル
101 研磨パッド(研磨布)
102 研磨液供給ノズル

200 In-line膜厚測定ユニット
300 試験開始
301 ドレッシング部材への押付荷重(第1押付荷重)設定工程
302 第1押付荷重によりドレッシングする工程
303 振動測定工程
304 測定結果をもとに振動抑制効果の有無を判定する工程
305 錘の重量を変更して(第1押付荷重にて)更にドレッシングする工程
306 ドレッシング部材への押し付け荷重を変更して(第2押付荷重にて)ドレッシングする工程
1001 カセット
1003 走行レール
1004 搬送ロボット
1005 洗浄機
1020 搬送ロボット
1022 洗浄機
1027 ロータリートランスポーター
1036 研磨テーブル
1038 ドレッシングユニット
1043 水桶
1050 載置台
3000 ドレッシングユニット

A ドレッサーフランジの回転方向
B スプラインシャフトの回転方向
C ベルトの回転方向
D ベルト駆動輪の回転方向
E 回転テーブルの回転方向
F ドレッサーの回転方向
G ドレッシング時のドレッサーに対する押圧力

Q 研磨液
W 半導体ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨テーブル上の研磨パッドに基板を押圧して研磨する基板保持ユニットと、該研磨パッドにドレッシング部材を接触させて該研磨パッドを目ならしするドレッシングユニットを備えた研磨装置において、
前記ドレッシングユニットは、
ドレッシングユニット本体を内部に収容する容器と、
該容器の上に載置される錘と、
を有したことを特徴とする、研磨装置。
【請求項2】
基板を保持して研磨テーブル上の研磨パッドに該基板を押圧して研磨するための基板保持ユニットと、該研磨パッドにドレッシング部材を接触させて該研磨パッドを目ならしするドレッシングユニットとを備えた研磨装置において、
前記ドレッシングユニットは、
ドレッシングユニット本体を内部に収容する容器と、
ドレッシング部材が固定されるドレッサーフランジと、
該ドレッサーフランジのバックホイールに載置される錘と、
を有したことを特徴とする、研磨装置。
【請求項3】
基板を保持して研磨テーブル上の研磨パッドに該基板を押圧して研磨するための基板保持ユニットと、該研磨パッドにドレッシング部材を接触させて該研磨パッドを目ならしするドレッシングユニットとを備えた研磨装置において、
前記ドレッシングユニットは、
ドレッシングユニット本体を内部に収容する容器と、
該容器の上に載置される機械的押圧機構と、
を有したことを特徴とする、研磨装置。
【請求項4】
前記ドレッシングユニット本体を内部に収容する容器は、ドレッサー軸を内部に収容するハウジングと、該ハウジングの外側に設けられドレッシングユニット本体を収容するドレッサーカバーを有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の研磨装置。
【請求項5】
前記ドレッサー駆動軸の周りにはボールスプラインが備えられ、該ボールスプライン周りをマイナス隙間としたことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の研磨装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の研磨装置を用いて基板を研磨することを特徴とする研磨方法。
【請求項7】
ドレッシングユニットの性能試験方法であって、
ドレッシング部材への第1押付荷重を設定し、該第1押付荷重によってドレッシングする第1工程と、
第1工程において発生する振動を測定して振動抑制効果の有無を判定する第2工程と、
前記振動抑制効果が存在しないと判定された場合にドレッシングユニットの制振手段を変更し、前記振動抑制効果が存在すると判定された場合に押付荷重を変更する第3工程と、
を有した、ドレッシングユニットの性能試験方法。
【請求項8】
前記ドレッシング部材が、ブラシドレッサーであることを特徴とする、請求項7に記載のドレッシングユニットの性能試験方法。
【請求項9】
前記ドレッシング部材が、ダイヤモンドドレッサーであることを特徴とする、請求項7に記載のドレッシングユニットの性能試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−148046(P2011−148046A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11592(P2010−11592)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】