説明

磁性シートの移載システム、キャリア及び磁性シートの移載方法

【課題】磁性シートを円滑に移載することができる磁性シートの移載システム、キャリア及び磁性シートの移載方法を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るキャリア10は、第1の非磁性基板11と、第2の非磁性基板12と、磁石13とを有する。第1の非磁性基板11は、磁性シートMを支持する第1の面11aとこれとは反対側の第2の面11bとを有する。第2の非磁性基板12は、第2の面11bに対向し、磁石13は、第2の非磁性基板12に固定され、第1の面11aに磁場を形成する。第1の非磁性基板12は、第2の非磁性基板12と近接した第1の支持位置と第2の非磁性基板12から離間した第2の支持位置との間を移動可能に構成され、第2の支持位置で第2の非磁性基板12からウェーハカセットへ磁性シートとともに移載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性シートの移載システム、磁性シートを支持するためのキャリア及び磁性シートの移載方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、真空処理によって薄膜が形成される基板として、シリコン基板、ガラス基板、金属基板、絶縁体基板等が知られているが、磁性体基板も採用されることがある。例えば特許文献1には、トレイに嵌め込まれた磁性体基板について、その真空処理時に磁石によって基板を保持固定できる成膜装置が記載されている。
【0003】
真空処理装置を用いて基板に成膜等の真空処理をする際、典型的には、未処理の基板は大気室から処理室へ搬送されて所定の真空処理を施され、処理後の基板は再び大気室に搬送されて、カセット等に移載される。基板の特性によっては、特許文献1のように、その形態を維持するためにトレイ等によって支持された状態で一連の工程が行われる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−324273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁石の磁力でトレイ上に基板を保持する真空処理方法においては、当該磁力による影響でトレイからカセット等へ基板を円滑に移載することが困難な場合が多い。特に基板がシート状あるいはフィルム状である場合、移載時に基板に皺や変形が生じたり、基板がトレイやカセットから脱落したりするおそれがある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、磁性シートを円滑に移載することができる磁性シートの移載システム、磁性シートを支持するためのキャリア及び磁性シートの移載方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る磁性シートの移載システムは、キャリアと、移動機構とを具備する。
上記キャリアは、第1の非磁性基板と、第2の非磁性基板と、磁石とを有する。上記第1の非磁性基板は、上記磁性シートを支持することが可能な第1の面と、上記第1の面とは反対側の第2の面とを有する。上記第2の非磁性基板は、上記第2の面に対向する第3の面と、上記第3の面とは反対側の第4の面とを有する。上記磁石は、上記第2の非磁性基板に固定され、上記第1の面に磁場を形成する。
上記移動機構は、上記第1の非磁性基板を支持可能な支持体と、駆動部とを有する。上記駆動部は、上記第1の非磁性基板が上記第2の非磁性基板と近接した第1の支持位置と、上記第1の非磁性基板が上記第2の非磁性基板から離間した第2の支持位置との間で上記支持体を移動させる。
【0008】
本発明の一形態に係るキャリアは、磁性シートを支持するためのキャリアであって、第1の非磁性基板と、第2の非磁性基板と、磁石とを具備する。
上記第1の非磁性基板は、上記磁性シートを支持することが可能な第1の面と、上記第1の面と反対側の第2の面とを有する。
上記第2の非磁性基板は、上記第2の面に対向する。
上記磁石は、上記第2の非磁性基板に固定され、上記第1の面に磁場を形成する。
【0009】
本発明の一形態に係る磁性シートの移載方法は、第1の非磁性基板と、前記第1の非磁性基板に対向する第2の非磁性基板と、前記第2の非磁性基板に固定された磁石とを有するキャリアを用いた磁性シートの移載方法である。
上記磁性シートは、上記磁石の磁力で上記第1の非磁性基板の表面で保持される。
上記キャリア上の上記磁性シートは、真空処理室内で真空処理される。
上記第1の非磁性基板は、上記第2の非磁性基板から離間させられる。
上記磁性シートは、上記第1の非磁性基板と上記第2の非磁性基板との間に配置された載台に、上記第1の非磁性層とともに移載される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る移載システムを備えた真空処理装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るキャリアを示す概略平面図である。
【図3】図2における[A]−[A]方向の概略断面図である。
【図4】本発明の移動機構の構成を示す斜視図である。
【図5】磁性シートの移載時におけるキャリアとリフターピンとの態様を示した概略断面図であり、(A)は、第1の支持位置での態様を示し、(B)は、第2の支持位置での態様を示す。
【図6】ウェーハカセットへ磁性シートを移載する際の移載システムとウェーハカセットとの関係を示した概略図であり、(A)は磁性シートと第1の基板とがリフターピンに支持されている態様を示し、(B)は磁性シートと第1の基板とがウェーハカセットに収容されている態様を示す。
【図7】本発明の一実施形態に係るキャリアを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る磁性シートの移載システムは、キャリアと、移動機構とを具備する。
上記キャリアは、第1の非磁性基板と、第2の非磁性基板と、磁石とを有する。上記第1の非磁性基板は、上記磁性シートを支持することが可能な第1の面と、上記第1の面とは反対側の第2の面とを有する。上記第2の非磁性基板は、上記第2の面に対向する第3の面と、上記第3の面とは反対側の第4の面とを有する。上記磁石は、上記第2の非磁性基板に固定され、上記第1の面に磁場を形成する。
上記移動機構は、上記第1の非磁性基板を支持可能な支持体と、駆動部とを有する。上記駆動部は、上記第1の非磁性基板が上記第2の非磁性基板と近接した第1の支持位置と、上記第1の非磁性基板が上記第2の非磁性基板から離間した第2の支持位置との間で上記支持体を移動させる。
【0012】
上記移載システムにおいて、第1の非磁性基板は、移動機構によって上記第1の支持位置と上記第2の支持位置との間を移動することができる。第1の支持位置では、磁性シートは、第1の面上に形成された磁石の磁場により保持される。これにより、例えば真空チャンバ内で基板を搬送する際、磁性シートが第1の面上に吸着固定され、形状を維持することができる。さらに、例えば処理室内で縦型の成膜装置等を採用する際、キャリアを垂直に立てても磁性シートが保持され、その形状を維持することができる。
【0013】
一方、第2の支持位置では、磁性シートと第1の非磁性基板とが磁石及び第2の非磁性基板から離間している。第2の支持位置において第1の面上に形成される磁石の磁場は、上記第1の支持位置におけるよりも低下するため、磁性シートは、移載システムとカセット等の載台との間で容易に移載される。また磁性シートは、第2の支持位置で磁力による保持力が低下しても、第1の非磁性基板上の第1の面に支持されていることから、その形状の変化が抑制される。
【0014】
上記移載システムにおいて、上記磁石は、上記第2の非磁性基板の第3の面に固定されてもよい。また、上記磁石は、上記第3の面とは反対側の第4の面に固定されてもよい。
【0015】
上記第2の非磁性基板は、複数の貫通孔を有し、上記支持体は、上記複数の貫通孔に対応して配置された複数本の軸部材を有してもよい。この場合、上記駆動部は、上記複数本の軸部材の各々をその軸方向に昇降させる。
【0016】
上記磁石は、永久磁石でもよいし、電磁石でもよい。上記磁石は、複数の永久磁石片で構成されてもよいし、単一の磁石で構成されてもよい。永久磁石材料は特に限定されず、例えばサマリウムコバルト系磁石やネオジム系磁石等で構成される。このような素材の磁石を用いることによって十分な磁力で磁性シートを保持できるが、特にサマリウムコバルト系磁石においては、真空処理時に高温となっても磁力の低下が少なく、磁性シートを安定的に保持することができる。さらに、複数の磁石を用いることによって、磁性シートの形態安定性を向上させることができる。
【0017】
本発明の一実施形態に係るキャリアは、磁性シートを支持するためのキャリアであって、第1の非磁性基板と、第2の非磁性基板と、磁石とを具備する。
上記第1の非磁性基板は、上記磁性シートを支持することが可能な第1の面と、上記第1の面と反対側の第2の面とを有する。
上記第2の非磁性基板は、上記第2の面に対向する。
上記磁石は、上記第2の非磁性基板に固定され、上記第1の面に磁場を形成する。
【0018】
本発明の一実施形態に係る移載方法は、第1の非磁性基板と、前記第1の非磁性基板に対向する第2の非磁性基板と、前記第2の非磁性基板に固定された磁石とを有するキャリアを用いた磁性シートの移載方法である。
上記磁性シートは、上記磁石の磁力で上記第1の非磁性基板の表面で保持される。
上記キャリア上の上記磁性シートは、真空処理室内で真空処理される。
上記第1の非磁性基板は、上記第2の非磁性基板から離間させられる。
上記磁性シートは、上記第1の非磁性基板と上記第2の非磁性基板との間に配置された載台に、上記第1の非磁性層とともに移載される。
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0020】
[真空処理装置の構成]
図1は、本実施形態に係る移載システムを備えた真空処理装置1の概略構成図である。本実施形態では、真空処理装置1がマルチチャンバ方式の真空処理装置であるとする。なお、ここでは一般的な基板を真空処理するとして真空処理装置1の構成を説明する。
【0021】
真空処理装置1は、移載室6と、ロードロック室2A,2Bと、処理室3A,3Bと、コア室(搬送室)4とを備えている。なお、ロードロック室2A,2B、処理室3A,3B及びコア室4は、図示しない排気システムがそれぞれ接続されており、真空排気可能な真空チャンバを構成している。
【0022】
移載室6は、大気圧であって、内部にウェーハカセット7と基板搬送ロボット6aが設置されている。基板搬送ロボット6aは後述する移動機構20を有しており、当該移動機構によって、基板搬送ロボット6aとウェーハカセット7との間で未処理あるいは処理済の基板を相互に移載することができる。さらに基板搬送ロボット6aは、ロードロック室2A,2Bとウェーハカセット7との間で未処理あるいは処理済の基板を搬送する。移載室6はドア5A,5Bを介してロードロック室2A,2Bに連絡している。
【0023】
ロードロック室2A,2Bはそれぞれ同一の構成を有しており、内部に所定枚数の基板を収容できるストッカが設置されている。ロードロック室2A,2Bは図示の例のように複数設置される場合に限らず、単数であってもよい。
【0024】
処理室3A,3Bは、基板に対して所定の真空処理を行い、エッチング室、加熱室、成膜室(スパッタ室、CVD室)等で構成されているが、本実施形態ではいずれも成膜室とされている。処理室3A,3Bには、真空処理中に基板を支持するプラテン機構(図示せず)が設置され、その周囲に、例えば、高周波電力を投入可能なカソード(図示せず)を備えている。なお、図示せずとも各処理室3A,3Bには、プロセスに応じた所定の成膜ガス(反応ガス、原料ガス、不活性ガス等)のガス源が接続されている。
【0025】
コア室4では、ロードロック室2A,2Bと処理室3A,3Bとの間における基板の受け渡しを行う。コア室4は、図示せずとも内部に基板搬送ロボットを有しており、ロードロック室2A,2Bと処理室3A,3Bとの間、あるいは処理室3Aと処理室3Bとの間において、基板の受け渡しを行うように構成されている。
【0026】
真空処理装置1を用いて基板を真空処理する際には、まず移載室6内でウェーハカセット7から移動機構20(基板搬送ロボット6a)に基板が移載され、基板搬送ロボット6aによってロードロック室2A,2Bへと搬送される。さらに、コア室4の基板搬送ロボットによって処理室3A,3Bへと搬送され、所定の真空処理が行われる。真空処理後の基板は、処理前とは逆の工程を経て移載室6へ搬送され、移動機構20によってウェーハカセット7へ移載される。
【0027】
真空処理装置1における真空排気系及び基板搬送系の駆動、ドアバルブの開閉、移載室6における基板搬送ロボット6a(移動機構20)の駆動等は、図示しないコントローラによって制御される。
【0028】
以上のように構成された真空処理装置1は、移載室6において本発明に係る移載システムを採用している。上記移載システムは、キャリア10と、移動機構20とを具備する。以下、キャリア10、移動機構20の構成についてそれぞれ説明する。
【0029】
[キャリアの構成]
図2は、本発明の一実施形態に係る磁性シートのキャリア10を示す概略平面図であり、図3は、図2における[A]−[A]方向の概略断面図である。キャリア10は、第1の基板(第1の非磁性基板)11と、第2の基板(第2の非磁性基板)12と、磁石13とを具備する。
【0030】
第1の基板11は、第2の基板12の上に載置される。第1の基板11は、例えばガラス基板等であり、磁性シートMを支持可能な第1の面11aとその反対側の第2の面11bとを有する。第1の基板11を構成する材料は、非磁性であればよく、導体でも絶縁体でもよい。第1の基板11の厚みは、第2の基板12の上に載置された状態で、磁石13の磁力によって第1の面11a上に磁性シートMを保持できる均一な厚さで形成され、例えば0.3mm以上1.2mm以下の厚みを有する。また、第1の面11aの大きさは特に制限されず、本実施形態では磁性シートMより大きく形成される。
【0031】
第2の基板12は、第1の基板11の第2の面11bに対向する第3の面12aと、その反対側の第4の面12bとを有する。第2の基板12を構成する材料は、例えばガラス基板等であるが、非磁性であればよく、導体でも絶縁体でもよい。第2の基板12の厚みはほぼ均一に形成される。第2のガラス基板12の大きさは特に制限されないが、本実施形態では第1の基板11とほぼ同じ大きさで形成される。
【0032】
さらに、第2の基板12は、後述する複数のリフターピン210に対応する複数の貫通孔210aを有している。貫通孔210aはリフターピン210を各々貫通可能に構成されている。
【0033】
磁石13は、第1の基板11を介して第1の面11aに磁場を形成する複数個の永久磁石片で構成される。本実施形態では、各磁石13は、第2の基板12の第3の面12aに固定されている。磁石13の配置は、磁性シートMの形状、磁石13の磁気特性や形状、磁性シートMとの距離等を考慮して、磁性シートMの形状を保持できるよう設定される。例えば、図2のように磁性シートMが矩形である場合には、例えば四隅と中央部に対応する第2の面12a上に配置される。また各々の磁石13は、貫通孔210aが形成されない位置に配置される。
【0034】
第3の面12a上への磁石13の固定には、例えば接着剤が用いられる。この種の接着剤としては、磁性シートMとの間に磁力が作用している状態で第1の基板11と第2の基板12を離間させたとしても、磁石13が第3の面12a上から剥離せず、かつ真空処理時の温度、圧力で接着性が低下しない接着剤が用いられる。このような接着剤としては、耐熱性無機接着剤を用いることができ、さらに具体的には、例えば東亞合成社製の「アロンセラミック」(商品名)が挙げられる。
【0035】
また、磁石13の形状は、第1の基板11を挟んで磁性シートMを保持できれば特に制限されず、角型でも丸型でも、第3の面12a全体を覆う1枚の板状あるいはシート状でもあってもよい。この場合、板状あるいはシート状の磁石は貫通孔210aを塞がないように、その貫通孔210aに対応する部分が穿孔される。
【0036】
磁石13を構成する材料は、第1の基板11を挟んで第1の面11aに磁性シートMを保持できる磁力を有し、かつ真空処理時の温度、圧力で磁性が低下しないものであればよく、このような材料として、例えばサマリウムコバルト系磁石やネオジム系磁石等の永久磁石が挙げられる。
【0037】
サマリウムコバルト系の磁石は希土類磁石の一つであり、強力な永久磁石として知られている。また、キュリー点が高いため真空処理時の高温下(150℃〜300℃)であっても磁力を十分維持することができる。このため、サマリウムコバルト系磁石片で構成された磁石13を用いることによって、真空処理に係る一連の工程を経ても磁石13の変性や磁力の低下が少なく、磁性シートMに対する保持力を安定に維持することができる。
【0038】
一方、ネオジム系の磁石も希土類磁石の一つであり、非常に強力な永久磁石として知られている。例えば真空処理装置1内で高温下での処理工程が含まれない場合に、磁石13としてネオジム系磁石片を用いることができる。その他の永久磁石片についても、その磁性と真空処理装置1内での処理条件とを鑑みて、磁性シートMを安定的に保持することが可能であれば、磁石13として用いることができる。
【0039】
磁性シートMは、外部磁場により磁化される軟磁気特性を有する強磁性材料で形成されたシートあるいは箔で構成される。また、磁性シートMとしては、プラスチックフィルムや紙等の表面に上記強磁性層が形成された複合シートであってもよい。強磁性材料は特に限定されず、典型的には、Fe、Co、Ni等が挙げられるが、これ以外にも、Fe−Al系、Fe−Ni系等の合金材料であってもよい。
【0040】
[移動機構の構成]
図4は、本実施形態に係る移動機構20の構成を示す斜視図である。移動機構20は、支持体としての複数本のリフターピン(軸部材)210と、駆動部22とを有する。
【0041】
リフターピン210及び駆動部22は、ハンド211に設けられている。ハンド211は、基板搬送ロボット6aの多関節アームの先端に取り付けられており、ハンド211の上面は、キャリア10が載置可能なステージ面211aを構成している。
【0042】
各リフターピン210は、ハンド211のステージ面211aに対して垂直に配置されており、駆動部22によってリフターピン210の軸方向に昇降可能に構成されている。リフターピン210は、磁性シートMの移載時以外においてハンド211の内部に退避しており、移載時にはステージ面211aから上方へ突出するよう構成されている。なお、リフターピン210の本数及び配置は、後述するように第1の基板11を支持できれば特に制限されない。
【0043】
駆動部22は、ハンド211内に設置されており、複数本のリフターピン210を軸方向に同時に昇降させる。なお駆動部22は、典型的にはエアシリンダあるいはステッピングモータであるが、リフターピン210を昇降可能であれば特に制限されない。駆動部22の駆動は上記コントローラによって制御される。
【0044】
次に、図面を参照しながら、本実施形態に係る移載システムを用いた磁性シートMの移載方法について説明する。
【0045】
[磁性シートの移載方法]
図5は、磁性シートの移載時におけるキャリア10とリフターピン210との態様を示した概略断面図である。(A)は、第1の基板11と第2の基板12とが相互に近接した第1の支持位置での態様を示し、(B)は、第1の基板11と第2の基板12とが相互に離間した第2の支持位置での態様を示す。なお、ハンド211は図示を省略している。
【0046】
磁性シートMを真空処理装置1によって真空処理する際、キャリア10は、ロードロック室2A,2B、処理室3A,3B、コア室4内における工程の間、常に、図5(A)に示す態様にあり、磁性シートMは、キャリア10の第1の面11aに磁石13の磁力によって保持されている。すなわち、磁性シートMは、キャリア10と一体的に処理室3A,3Bに搬送され、処理室3A,3B内にて成膜等の所定の真空処理が行われる。
【0047】
第1の支持位置では、磁性シートMが磁石13によって第1の面11a上に保持されており、磁性シートMとキャリア10が一体化している。よって、真空処理装置1内でこれらを搬送する際、磁性シートMが第1の面11a上で形状を維持することができる。さらに、例えば処理室3A,B内で縦型の成膜装置等を採用する際、キャリア10を垂直に立てても磁性シートMが第1の面11a上に保持され、その形状を維持することができる。
【0048】
また、磁石13は、キュリー点が比較的高いサマリウムコバルト系の磁石片であるため、真空処理時の高温下(150℃〜300℃)であっても磁力を十分維持することができる。よって、真空処理に係る一連の工程を経ても磁石13の変性や磁力の低下が少なく、磁性シートMに対する保持力を安定に維持することができる。
【0049】
真空処理された磁性シートMは、移載室6に搬送され、基板搬送ロボット6aによってウェーハカセット7へ移載される。図6は、ウェーハカセット7へ磁性シートMを移載する際の移載システムとウェーハカセット7との関係を示した概略図であり、(A)は磁性シートMと第1の基板11がリフターピン210に支持されている態様を示し、(B)は磁性シートMと第1の基板11がウェーハカセット7に収容されている態様を示す。ウェーハカセット7は、図6に示すように、典型的には基板の対向する2辺を支持する基板支持台(載台)7aを有する。
【0050】
ロードロック室2A,2Bから移載室6へ搬送された磁性シートMとキャリア10は、ハンド211のステージ面211a上に支持されている。磁性シートMを移載する際は、ハンド211内部に退避していたリフターピン210が軸方向に上昇し、第2の基板12の貫通孔210aを各々貫通する。第1の基板11に当接したリフターピン210は、さらに上昇し、磁性シートMと第1の基板11とが一体化して持ち上げられる(図5(B))。このとき、第1の基板11は第2の基板12から離間しており、第2の支持位置にある。
【0051】
複数本のリフターピン210によって支持された第1の基板11と磁性シートMは、ウェーハカセット7の所定の基板支持台7a上に配置される(図6(A))。このとき、ウェーハカセット7の基板支持台7aは、第1の基板11と第2の基板12との間に位置する。そして、複数のリフターピン210は同時に下降し、磁性シートMと第1の基板11がウェーハカセット7へ移載される(図6(B))。
【0052】
以上のように、キャリア10は、移動機構20によって第1の支持位置と第2の支持位置との間を移動することができる。第2の支持位置では、磁性シートMと第1の基板11が磁石13とは離間しており、磁石13による保持力は低下している。このため、磁性シートMが、ウェーハカセット7の基板支持台7aへ容易に移載される。また磁性シートMは、第2の支持位置で磁力による保持力が低下しても、第1の基板11上の第1の面11aに支持されていることから、その形状の変化を抑制することができる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、勿論、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0054】
例えば以上の実施形態では、キャリア10について、磁石13が第3の面12aに固定されたが、図7のように、磁石13は第3の面12aとは反対側の第4の面12bに固定されてよい。この実施形態において、第1の基板11と第2の基板12の厚さは、それぞれ均一で、かつ磁石13が第1の基板11と第2の基板12を挟んで磁性シートMを保持できる厚さで形成される。この場合、第1の基板11は第2の基板12よりも薄くてもよい。
【0055】
また、以上の実施形態では、磁性シートMを移載する載台がウェーハカセット7であるとして説明したが、これに限らず、例えば別の搬送ロボットのハンド等でもよい。
【0056】
また、以上の実施形態では、移動機構20について、支持体21は昇降可能なリフターピン210を有していると説明したが、これに代えて、第1の基板11の下面を支持し、昇降させるハンド等を有するロボットで構成されていてもよい。この実施形態では、第2の基板12に貫通孔210aを形成する必要はないが、第1の基板11または第2の基板12に、ハンド等の差し込みが可能な溝等を形成してもよい。また、第1の基板を側方から把持可能に構成されたロボットが上記移動機構として採用されてもよい。
【0057】
なお、一実施形態としてマルチチャンバ型の真空処理装置1について説明したが、これに限らず、例えばインライン型の真空処理装置にも適用可能である。さらに、移載室6において、基板搬送ロボット6aの一部に移動機構20が構成されているとしたが、別のロボットとしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1・・・真空処理装置
2A,2B・・・ロードロック室
3A,3B・・・処理室
4・・・コア室
6・・・移載室
7・・・ウェーハカセット
M・・・磁性シート
10・・・キャリア
11・・・第1の基板
12・・・第2の基板
13・・・磁石
20・・・移動機構
22・・・駆動部
210・・・リフターピン
211・・・ハンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性シートの移載システムであって、
前記磁性シートを支持することが可能な第1の面と前記第1の面とは反対側の第2の面とを有する第1の非磁性基板と、前記第2の面に対向する第3の面と前記第3の面とは反対側の第4の面とを有する第2の非磁性基板と、前記第2の非磁性基板に固定され前記第1の面に磁場を形成する磁石とを有するキャリアと、
前記第1の非磁性基板を支持可能な支持体と、前記第1の非磁性基板が前記第2の非磁性基板と近接した第1の支持位置と前記第1の非磁性基板が前記第2の非磁性基板から離間した第2の支持位置との間で前記支持体を移動させる駆動部とを有する移動機構と
を具備する磁性シートの移載システム。
【請求項2】
請求項1に記載の磁性シートの移載システムであって、
前記磁石は、前記第3の面に固定される
磁性シートの移載システム。
【請求項3】
請求項1に記載の磁性シートの移載システムであって、
前記磁石は、前記第4の面に固定される
磁性シートの移載システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の磁性シートの移載システムであって、
前記第2の非磁性基板は、複数の貫通孔を有し、
前記支持体は、前記複数の貫通孔に対応して配置された複数本の軸部材を有し、
前記駆動部は、前記複数本の軸部材の各々をその軸方向に昇降させる
磁性シートの移載システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の磁性シートの移載システムであって、
前記磁石は、複数の永久磁石片で構成される
磁性シートの移載システム。
【請求項6】
磁性シートを支持するためのキャリアであって、
前記磁性シートを支持することが可能な第1の面と、前記第1の面とは反対側の第2の面とを有する第1の非磁性基板と、
前記第2の面に対向する第2の非磁性基板と、
前記第2の非磁性基板に固定され、前記第1の面に磁場を形成する磁石と
を具備するキャリア。
【請求項7】
第1の非磁性基板と、前記第1の非磁性基板に対向する第2の非磁性基板と、前記第2の非磁性基板に固定された磁石とを有するキャリアを用いた磁性シートの移載方法であって、
前記磁石の磁力で前記磁性シートを前記第1の非磁性基板の表面で保持し、
前記キャリア上の前記磁性シートを真空処理室内で真空処理し、
前記第1の非磁性基板を前記第2の非磁性基板から離間させ、
前記第1の非磁性基板と前記第2の非磁性基板との間に配置された載台に、前記磁性シートを前記第1の非磁性基板とともに移載する
磁性シートの移載方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−222186(P2012−222186A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87086(P2011−87086)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】