説明

磁気センサ装置

【課題】磁気抵抗素子が内部に配置されるヘッド部の取付位置の調整を容易に行うことが可能で、かつ、外部からの電気的なノイズに対する耐ノイズ性を高めることが可能な磁気センサ装置を提供する。
【解決手段】磁気抵抗素子3を備える磁気センサ装置は、磁気抵抗素子3が内部に配置される筺体10と、磁気センサ装置の状態を示すための発光体8とを備えている。発光体8は、筺体10の内部に配置され、筺体10には、発光体8から発せられる可視光が筺体10の外部から見えるように開口する開口部11aが形成されている。開口部11aは、可視光を透過させる可視光透過性と導電性とを有するカバー部材15によって塞がれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗素子を有する磁気センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械等においてその可動部の位置検出等を行うための磁気センサ装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の磁気センサ装置は、読取りヘッドと磁気スケールとを備えている。読取りヘッドは、磁気抵抗素子と、磁気抵抗素子が内部に配置されるハウジングとを備えており、磁気抵抗素子は、正弦波信号および余弦波信号を出力する。ハウジングには、磁気抵抗素子から出力される正弦波信号および余弦波信号の状態を表示するためのLED(Light Emitting Diode)が取り付けられている。LEDは、その一部がハウジングの外部に突出するように、ハウジングに取り付けられている。
【0003】
特許文献1に記載の磁気センサ装置では、磁気抵抗素子から出力される正弦波信号および余弦波信号に基づいて、可動部の適切な位置検出等を行うことが可能な適切なリサージュ波形が形成されるときには、LEDは緑色の可視光を放つ。一方、磁気抵抗素子から出力される正弦波信号および余弦波信号に基づいて、可動部の適切な位置検出等を行うことが困難な不適切なリサージュ波形が形成されるときには、LEDは赤色の可視光を放つ。また、リサージュ波形の形状に影響を与える正弦波信号および余弦波信号の信号レベル(振幅)等は、磁気スケールと磁気抵抗素子との相対距離や、磁気スケールに対する読取りヘッドの相対移動方向に直交する方向における磁気スケールと磁気抵抗素子との相対位置精度によって変わる。
【0004】
そのため、この磁気センサ装置の場合、工作機械等に読取りヘッドを取り付ける際に、LEDから発せられる光を確認しながら読取りヘッドの取付位置が調整されて、LEDが緑色光を放つ位置で読取りヘッドが工作機械等に取り付けられる。LEDが緑色光を放つ位置で読取りヘッドが取り付けられると、磁気抵抗素子から出力される正弦波信号および余弦波信号に基づいて適切なリサージュ波形が形成され、可動部の適切な位置検出等を行うことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3202316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、磁気センサ装置は、様々な環境で使用されるようになってきている。たとえば、工作機械や電子部品の表面実装装置等に磁気センサ装置が使用される場合であって、磁気センサ装置の近くにリニアモータが配置される場合がある。この場合、リニアモータの駆動時にリニアモータから発せられる電磁波が、磁気センサ装置に対する電気的な外部ノイズとなる。
【0007】
上述のように、特許文献1に記載の磁気センサ装置の場合、工作機械等へ読取りヘッドを取り付ける際に、LEDから発せられる光を確認しながら読取りヘッドの取付位置を調整することができるため、読取りヘッドの取付位置の調整を容易に行うことが可能になる。しかしながら、特許文献1に記載の磁気センサ装置では、LEDの一部がハウジングの外部に突出しているため、リニアモータ等の近くに磁気センサ装置が配置されると、LEDの取付部分からハウジングの内部に電気的な外部ノイズが入り込んで、磁気センサ装置の検出精度に影響を及ぼすおそれがある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、磁気抵抗素子が内部に配置されるヘッド部の取付位置の調整を容易に行うことが可能で、かつ、外部からの電気的なノイズに対する耐ノイズ性を高めることが可能な磁気センサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の磁気センサ装置は、磁気抵抗素子を備える磁気センサ装置において、磁気抵抗素子が内部に配置される筺体と、磁気センサ装置の状態を示すための発光体とを備え、発光体は、筺体の内部に配置され、筺体には、発光体から発せられる可視光が筺体の外部から見えるように開口する開口部が形成され、開口部は、可視光を透過させる可視光透過性と導電性とを有するカバー部材によって塞がれていることを特徴とする。
【0010】
本発明の磁気センサ装置は、磁気センサ装置の状態を示すための発光体を備えている。この発光体は、筺体の内部に配置されているが、本発明では、発光体から発せられる可視光が筺体の外部から見えるように開口する開口部が筺体に形成され、開口部は、可視光を透過させる可視光透過性を有するカバー部材によって塞がれている。そのため、発光体から発せられる可視光を筺体の外部で確認することができる。したがって、本発明では、磁気抵抗素子から出力される正弦波信号および余弦波信号の状態によって発光体が異なる色の可視光を発するようにすれば、発光体が発する光を確認しながら、磁気抵抗素子が内部に配置されるヘッド部を工作機械や実装装置等に取り付けることが可能になる。すなわち、本発明では、特許文献1に記載の磁気センサ装置と同様に、磁気抵抗素子が内部に配置されるヘッド部の取付位置の調整を容易に行うことが可能になる。
【0011】
また、本発明の磁気センサ装置では、発光体は、筺体の内部に配置され、かつ、筺体に形成される開口部は、導電性を有するカバー部材によって塞がれている。そのため、発光体から発せられる可視光が筺体の外部から見えるように筺体に開口部が形成されている場合であっても、カバー部材によって、電気的な外部ノイズが筺体の内部に入り込むのを防止することが可能になる。したがって、本発明では、外部からの電気的なノイズに対する耐ノイズ性を高めることが可能になる。
【0012】
本発明において、磁気センサ装置は、磁気抵抗素子および筺体を有するヘッド部と、ケーブルを介してヘッド部に接続され、ヘッド部から出力される信号を処理する回路基板を有する本体部とを備え、ヘッド部から本体部へアナログ信号が出力されることが好ましい。このように構成すると、AD変換後のデジタル信号がヘッド部から出力される場合と比較して、ヘッド部の構成を簡素化することが可能になる。一方、この場合には、ヘッド部からアナログ信号が出力されるため、電気的な外部ノイズがヘッド部の筺体の中に入り込むと、磁気センサ装置の検出精度が低下しやすくなるが、本発明では、電気的な外部ノイズが筺体の中に入り込むのを防止して、磁気センサ装置の検出精度が低下するのを防止することが可能になる。
【0013】
また、上記の課題を解決するため、本発明の磁気センサ装置は、磁気抵抗素子を有する磁気センサ装置において、磁気抵抗素子が内部に配置されるヘッド部と、ケーブルを介してヘッド部に接続され、ヘッド部から出力される信号を処理する回路基板を有する本体部とを備え、本体部は、回路基板が内部に配置される筺体と、磁気センサ装置の状態を表示するための発光体とを備え、発光体は、筺体の内部に配置され、筺体には、発光体から発せられる可視光が筺体の外部から見えるように開口する開口部が形成され、開口部は、可視光を透過させる可視光透過性と導電性とを有するカバー部材によって塞がれていることを特徴とする。
【0014】
本発明の磁気センサ装置では、本体部は、磁気センサ装置の状態を示すための発光体を備えている。この発光体は、本体部の筺体の内部に配置されているが、発光体から発せられる可視光が筺体の外部から見えるように開口する開口部が筺体に形成され、開口部は、可視光を透過させる可視光透過性を有するカバー部材によって塞がれている。そのため、上述のように、磁気抵抗素子から出力される正弦波信号および余弦波信号の状態によって発光体が異なる色の可視光を発するようにすれば、本発明では、発光体が発する光を確認しながら、磁気抵抗素子が内部に配置されるヘッド部を工作機械や実装装置等に取り付けることが可能になる。すなわち、本発明では、磁気抵抗素子が内部に配置されるヘッド部の取付位置の調整を容易に行うことが可能になる。
【0015】
また、本発明では、発光体は、筺体の内部に配置され、かつ、筺体に形成される開口部は、導電性を有するカバー部材によって塞がれているため、発光体から発せられる可視光が筺体の外部から見えるように筺体に開口部が形成されている場合であっても、電気的な外部ノイズが筺体の内部に入り込むのを防止することが可能になる。したがって、本発明では、外部からの電気的なノイズに対する耐ノイズ性を高めることが可能になる。
【0016】
本発明において、カバー部材は、金属製の筺体、または、筺体に固定される金属製の金属部材に接触していることが好ましい。このように構成すると、外部からの電気的なノイズに対する耐ノイズ性を効果的に高めることが可能になる。
【0017】
本発明において、たとえば、カバー部材の導電性を有する部分の表面抵抗値は、500Ω以下であり、カバー部材の可視光の透過率は、60%以上である。また、本発明において、カバー部材は、たとえば、透明な樹脂製の樹脂フィルムにITO(Indium Tin Oxide)膜が蒸着されたフィルム、または、透明な樹脂製の樹脂フィルムに金属製で網目状の金属メッシュが形成されたフィルムである。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明の磁気センサ装置では、磁気抵抗素子が内部に配置されるヘッド部の取付位置の調整を容易に行うことが可能で、かつ、外部からの電気的なノイズに対する耐ノイズ性を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態にかかる磁気センサ装置の一部の斜視図である。
【図2】図1に示すヘッド部を底面側から示す斜視図である。
【図3】図2に示すヘッド部の断面部である。
【図4】図3のE部の拡大図である。
【図5】図1に示す磁気センサ装置を構成する本体部の平面図である。
【図6】図5に示す本体部の断面図である。
【図7】図6のF部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
(磁気センサ装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる磁気センサ装置1の一部の斜視図である。図2は、図1に示すヘッド部4を底面側から示す斜視図である。図3は、図2に示すヘッド部4の断面部である。図4は、図3のE部の拡大図である。図5は、図1に示す磁気センサ装置1を構成する本体部6の平面図である。図6は、図5に示す本体部6の断面図である。図7は、図6のF部の拡大図である。
【0022】
本形態の磁気センサ装置1は、電子部品の実装装置や工作機械等においてその可動側の部材の位置や速度を検出するための磁気式リニアエンコーダである。この磁気センサ装置1は、磁気スケール2と、磁気抵抗素子3(図3参照)が内部に配置されるヘッド部4と、ケーブル5を介してヘッド部4に接続される本体部6(図5参照)とを備えている。磁気スケール2には、その長さ方向において、N極とS極とが交互に着磁されている。磁気センサ装置1では、たとえば、実装装置等の可動側の部材に磁気スケール2が取り付けられ、実装装置等の固定側の部材にヘッド部4および本体部6が取り付けられている。また、磁気スケール2に対向するようにヘッド部4内の磁気抵抗素子3が配置されており、磁気抵抗素子3から出力される信号に所定の処理を行うことで、実装装置等の可動側の部材の位置や速度が検出される。
【0023】
ヘッド部4は、上述の磁気抵抗素子3に加えて、磁気センサ装置1の状態を示すための発光体としてのLED8と、LED8の端子が固定される基板9と、磁気抵抗素子3、LED8および基板9が内部に配置される(収容される)筺体10とを備えている。ケーブル5の一端側は、筺体10の中に引き込まれている。なお、以下のヘッド部4の説明では、図2、図3に示すように、互いに直交する3方向のそれぞれをX1方向、Y1方向およびZ1方向とする。また、X1方向を「前後方向」、Y1方向を「左右方向」、Z1方向を「上下方向」とする。
【0024】
筺体10は、アルミニウム合金等の導電性を有する金属材料で形成される筺体本体11と、鋼板等の導電性を有する金属材料で形成されるカバー12とによって構成されている。筺体本体11は、略直方体状に形成されるとともに、中空状に形成されている。また、筺体本体11の上下両側面は、開口している。カバー12は、薄板状に形成され、筺体本体11の上下両側面の一方(図3の下面)に固定されている。このカバー12は、筺体本体11に接触するように固定されており、図1に示すように、筺体本体11の上下両側面の一方に形成される開口を塞いでいる。
【0025】
筺体本体11の上下両側面の他方(図3の上面)は、磁気スケール2に対向配置されるセンサ面となっており、筺体本体11の内部の、上下方向の他方側(図3の上側)に磁気抵抗素子3が配置されている。筺体本体11の上下両側面の他方には、アルミニウム箔等の導電性を有する薄い金属箔からなるシールドカバー13が固定されている。シールドカバー13は、筺体本体11の上下両側面の他方に形成される開口を塞いでおり、磁気抵抗素子3は、シールドカバー13によって覆われている。シールドカバー13には、導電性の粘着層が形成されており、この粘着層を介して、シールドカバー13が筺体本体11に固定されている。なお、磁気抵抗素子3は、シリコンやセラミックス等で形成された剛性基板である基板14に形成される磁気抵抗パターンによって構成されている。
【0026】
筺体本体11の前後方向の一方の側面には、LED8から発せられる可視光が筺体本体11の外部から見えるように開口する開口部11aが形成されている。開口部11aは、筺体本体11の前後方向の一方の側面を貫通している。また、ケーブル5の一端側は、筺体本体11の前後方向の他方の側面から筺体10の内部に引き込まれている。
【0027】
開口部11aは、図4に示すように、LED8の一部が配置されるLED配置部11bと、LED配置部11bよりも内径の大きな第1拡径部11cと、第1拡径部11cよりも内径の大きな第2拡径部11dと、第2拡径部11dよりも内径の大きな第3拡径部11eとから構成されている。LED配置部11b、第1拡径部11c、第2拡径部11dおよび第3拡径部11eは、前後方向において、筺体本体11の内側から外側に向かってこの順番に形成されている。LED配置部11b、第1拡径部11cおよび第2拡径部11dの内径は、一定となっている。一方、第3拡径部11eの内径は、前後方向の外側に向かうにしたがって、次第に大きくなっている。また、LED配置部11bの内径は、LED配置部11bに配置されるLED8の一部の外径よりもわずかに大きくなっている。なお、LED8の先端側部分は、第1拡径部11cの内部にも配置されている。
【0028】
開口部11aは、可視光を透過させる可視光透過性と導電性とを有するカバー部材15によって塞がれている。カバー部材15は、円板状に形成されており、開口部11aを塞ぐように第2拡径部11dに取り付けられている。また、カバー部材15は、第1拡径部11cと第2拡径部11dとの間の段差面に接触した状態で、この段差面に固定されている。
【0029】
本形態のカバー部材15は、透明な樹脂製の樹脂フィルムにITO膜が蒸着されたフィルムである。たとえば、カバー部材15は、透明なPET(Polyethylene Terephthalate)製の樹脂フィルムにITO膜が蒸着されたフィルムである。このカバー部材15の可視光の透過率は60%以上となっており、また、カバー部材15の、ITO膜が蒸着された面の表面抵抗値は500Ω以下となっている。具体的には、本形態では、カバー部材15の可視光の透過率は85%であり、カバー部材15の、ITO膜が蒸着された面の表面抵抗値は20Ωである。カバー部材15は、第1拡径部11cと第2拡径部11dとの間の段差面にITO膜が蒸着された面が接触して、筺体本体11とカバー部材15との間で導通が取れるように、第2拡径部11dに取り付けられている。
【0030】
基板9は、ガラスエポキシ樹脂等で形成された剛性基板である。基板9には、上述のようにLED8の端子が固定されて、電気的に接続されている。また、基板9には、ケーブル5の一端が固定されて、電気的に接続されている。また、基板14には、ケーブル5の一端が、直接、あるいは、基板9を介して電気的に接続されている。基板9または基板14には、磁気抵抗素子3から出力される正弦波信号および余弦波信号を増幅する増幅回路が実装されている。本形態では、磁気抵抗素子3から出力され増幅回路で増幅されたアナログ状の正弦波信号および余弦波信号が、ヘッド部4から本体部6へ出力される。すなわち、本形態では、ヘッド部4から本体部6へアナログ信号が出力される。
【0031】
本体部6は、ヘッド部4から出力される信号を処理する回路基板としての基板17と、磁気センサ装置1の状態を示すための発光体としてのLED18と、電子部品の実装装置や工作機械等へ本体部6を電気的に接続するためのコネクタ19と、基板17およびLED18が内部に配置される(収容される)筺体20とを備えている。ケーブル5の他端側は、筺体20の中に引き込まれている。なお、以下の本体部6の説明では、図5、図6に示すように、互いに直交する3方向のそれぞれをX2方向、Y2方向およびZ2方向とする。また、X2方向を「前後方向」、Y2方向を「左右方向」、Z2方向を「上下方向」とする。
【0032】
筺体20は、アルミニウム合金等の導電性を有する金属材料によって形成されている。また、筺体20は、上下方向に分割可能な第1筺体21と第2筺体22とによって構成されている。筺体20は、上下方向に扁平な略直方体状に形成されるとともに、中空状に形成されている。第1筺体21の上下方向の一方の側面(図6の下面)は開口しており、第2筺体22が第1筺体21に固定されることで、第1筺体21の開口が塞がれている。コネクタ19は、たとえば、D−sub型コネクタであり、筺体20の前後方向の一方の側面に配置されている。また、ケーブル5の他端側は、筺体20の前後方向の他方の側面から筺体20の内部に引き込まれている。
【0033】
第1筺体21の上下方向の他方の側面(図6の上面)には、LED18から発せられる可視光が第1筺体21の外部から見えるように開口する開口部21aが形成されている(図7参照)。開口部21aは、第1筺体21の上下方向の他方の側面を貫通している。
【0034】
開口部21aは、図7に示すように、LED18の一部が配置される第1LED配置部21bと、第1LED配置部21bよりも内径が大きくかつLED18の先端側の一部が配置される第2LED配置部21cと、第2LED配置部21cよりも内径の大きな第1拡径部21dと、第1拡径部21dよりも内径の大きな第2拡径部21eとから構成されている。第1LED配置部21b、第2LED配置部21c、第1拡径部21dおよび第2拡径部21eは、上下方向において、第1筺体21の内側から外側に向かってこの順番に形成されている。第1LED配置部21b、第2LED配置部21cおよび第2拡径部21eの内径は、一定となっている。一方、第1拡径部21dの内径は、上下方向の外側に向かうにしたがって、次第に大きくなっている。また、LED配置部21bの内径は、LED配置部21bに配置されるLED18の一部の外径よりもわずかに大きくなっている。なお、LED18の先端側部分は、第1拡径部21dの内部にも配置されている。
【0035】
開口部21aは、可視光を透過させる可視光透過性と導電性とを有するカバー部材25によって塞がれている。カバー部材25は、円板状に形成されており、開口部21aを塞ぐように第2拡径部21eに取り付けられている。また、カバー部材25は、第1拡径部21dと第2拡径部21eとの間の段差面に接触した状態で、この段差面に固定されている。
【0036】
本形態のカバー部材25は、カバー部材15と同様に、透明な樹脂フィルムにITO膜が蒸着されたフィルムであり、たとえば、透明なPET製の樹脂フィルムにITO膜が蒸着されたフィルムである。このカバー部材25の可視光の透過率、および、カバー部材25の、ITO膜が蒸着された面の表面抵抗値は、カバー部材15と同様になっている。すなわち、カバー部材25の可視光の透過率は60%以上となっており、また、カバー部材25の、ITO膜が蒸着された面の表面抵抗値は500Ω以下となっている。具体的には、本形態のカバー部材25の可視光の透過率は85%であり、また、カバー部材25の、ITO膜が蒸着された面の表面抵抗値は20Ωである。カバー部材25は、第1拡径部21dと第2拡径部21eとの間の段差面にITO膜が蒸着された面が接触して、第1筺体21とカバー部材25との間で導通が取れるように、第2拡径部21eに取り付けられている。
【0037】
基板17は、ガラスエポキシ樹脂等で形成された剛性基板である。基板17には、LED18の端子が固定されて、電気的に接続されている。前後方向における基板17の一端には、コネクタ19が固定されて、電気的に接続され、前後方向における基板17の他端には、ケーブル5の他端が固定されて、電気的に接続されている。また、基板17には、ヘッド部4から出力される信号を処理する信号処理用IC27が実装されている。信号処理用IC27は、ヘッド部4から入力されたアナログ状の正弦波信号および余弦波信号をAD変換するとともに、実装装置等の可動側の部材の位置や速度を検出するための所定の演算処理等を実行する。
【0038】
上述のように、LED8、18は、磁気センサ装置1の状態を示す機能を果たしている。本形態では、信号処理用IC27に含まれる(あるいは、基板17に実装される)信号処理用のEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)の状態、磁気センサ装置1の検出速度(応答周波数)、ヘッド部4から出力される正弦波信号および余弦波信号のオフセット電圧レベル、および、ヘッド部4から出力される正弦波信号および余弦波信号の出力レベル(振幅)の全ての条件が正常(適切)であるときには、LED8、18は、緑色の可視光を放つ。一方、上記の4つの条件の全てが揃って正常でないときには上記の4つの条件の中に正常なものがあっても(すなわち、上記の4つの条件のうちのいずれか1つにでも異常があるときには)、LED8、18は、赤色の可視光を放つ。なお、LED8、18の制御用回路は、基板17に実装されており、本体部6からヘッド部4へLED8の制御用の信号が出力されている。
【0039】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の磁気センサ装置1は、LED8、18を備えている。このLED8、18は、筺体10、20の内部に配置されているが、筺体10、20に、LED8、18から発せられる可視光が筺体10、20の外部から見えるように開口する開口部11a、21aが形成され、開口部11a、21aは、可視光を透過させる可視光透過性を有するカバー部材15、25によって塞がれている。そのため、本形態では、LED8、18から発せられる可視光を筺体10、20の外部で確認することができる。また、本形態では、ヘッド部4から出力される正弦波信号および余弦波信号のオフセット電圧レベル、および、ヘッド部4から出力される正弦波信号および余弦波信号の出力レベルのいずれか一方が適切でなければ、LED8、18は、赤色の可視光を放つ。そのため、本形態では、LED8、18が発する光を確認しながら、ヘッド部4を実装装置等に取り付けることが可能になり、その結果、ヘッド部4の取付位置の調整を容易に行うことが可能になる。特に本形態では、実装装置等への取付の対象となるヘッド部4にLED8が取り付けられているため、ヘッド部4に取り付けられているLED8の光を確認しながら、ヘッド部4の取付位置の調整をより容易に行うことが可能になる。
【0040】
本形態では、開口部11a、21aを覆うカバー部材15、25は、導電性を有している。そのため、LED8、18から発せられる可視光が筺体10、20の外部から見えるように、筺体10、20に開口部11a、21aが形成されていても、筺体10、20の内部に電気的な外部ノイズが入り込むのを防止することが可能になる。したがって、本形態では、外部からの電気的なノイズに対する耐ノイズ性を高めることが可能になる。特に本形態では、導電性を有する金属製の筺体10、20とカバー部材15、25との間で導電が取れているため、外部からの電気的なノイズに対する耐ノイズ性を効果的に高めることが可能になる。
【0041】
また、本形態では、開口部11a、21aがカバー部材15、25によって塞がれているため、開口部11a、21aが筺体10、20に形成されていても、筺体10、20の内部への塵埃の侵入を防止することが可能になる。
【0042】
本形態では、ヘッド部4から本体部6へアナログ信号が出力されている。そのため、AD変換後のデジタル信号がヘッド部4から出力される場合と比較して、ヘッド部4の基板9または基板14の構成を簡素化することが可能になる。一方、ヘッド部4からアナログ信号が出力されるため、筺体10の中に電気的な外部ノイズが入り込むと、磁気センサ装置1の検出精度が低下しやすくなるが、本形態では、ヘッド部4の中に電気的な外部ノイズが入り込むのを防止して、磁気センサ装置1の検出精度が低下するのを防止することが可能になる。
【0043】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0044】
上述した形態では、カバー部材15、25は、透明な樹脂フィルムにITO膜が蒸着されたフィルムであるが、カバー部材15、25は、可視光透過性と導電性とを有するのであれば、透明な樹脂フィルムにITO膜が蒸着されたフィルム以外のものであっても良い。たとえば、カバー部材15、25は、透明な樹脂フィルムの表面に金属製で網目状の金属メッシュが形成されたフィルムであっても良い。この場合には、たとえば、カバー部材15、25は、金、銀、銅、チタン、ニッケル、アルミニウム、すず、あるいは、インジウム等の金属メッシュが透明なPET製の樹脂フィルムの表面に形成されたフィルムである。また、カバー部材15、25は、透明な樹脂フィルムに銀ナノ粒子がコーティングされたフィルムであっても良い。
【0045】
上述した形態では、カバー部材15、25は、導電性を有する金属製の筺体10、20に接触した状態で筺体10、20に固定されている。この他にもたとえば、筺体10、20に導電性を有する金属製の金属部材が固定され、カバー部材15、25が、この金属部材に接触した状態で、この金属部材または筺体10、20に固定されても良い。また、カバー部材15、25は、導電性を有する粘着テープや接着剤を介して筺体10、20に固定されても良い。すなわち、カバー部材15、25と筺体10、20との間に導電性を有する粘着テープや接着剤が介在しても良い。
【0046】
上述した形態では、ヘッド部4および本体部6の両者がLED8、18を備えている。この他にもたとえば、ヘッド部4または本体部6のいずれか一方のみがLED8、18を備えていても良い。この場合であっても、上述した形態と同様の効果を得ることができる。また、上述した形態では、ヘッド部4と本体部6とが別体で形成されているが、ヘッド部4と本体部6とが一体で形成されても良い。すなわち、磁気抵抗素子3が内部に配置されるヘッド部は、本体部付きのヘッド部であっても良い。この場合には、磁気センサ装置1は、LED8またはLED18のいずれか一方を備えていれば良い。この場合であっても、上述した形態と同様の効果を得ることができる。また、上述した形態では、本体部6は、実装装置等へ本体部6を電気的に接続するためのコネクタ19を備えているが、コネクタ19を有するコネクタ部が所定のケーブルを介して本体部6に接続されても良い。すなわち、コネクタ19を有するコネクタ部と本体部6とが別体で形成されても良い。
【0047】
上述した形態では、開口部11a、21aに、LED8、18の一部が配置されている。この他にもたとえば、LED8、18が、開口部11a、21aよりも筺体10、20の内部側に配置されて、開口部11a、21aに、LED8、18が配置されなくても良い。また、上述した形態では、磁気センサ装置1は、磁気センサ装置1の状態を示すための発光体として、LED8、18を備えているが、磁気センサ装置1は、磁気センサ装置1の状態を示すための発光体として、LED8、18以外の発光体を備えていても良い。また、上述した形態では、ヘッド部4から本体部6にアナログ信号が出力されているが、AD変換後のデジタル信号がヘッド部4から本体部6へ出力されても良い。
【符号の説明】
【0048】
1 磁気センサ装置
3 磁気抵抗素子
4 ヘッド部
5 ケーブル
6 本体部
8、18 LED(発光体)
10、20 筺体
11a、21a 開口部
15、25 カバー部材
17 基板(回路基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気抵抗素子を備える磁気センサ装置において、
前記磁気抵抗素子が内部に配置される筺体と、前記磁気センサ装置の状態を示すための発光体とを備え、
前記発光体は、前記筺体の内部に配置され、
前記筺体には、前記発光体から発せられる可視光が前記筺体の外部から見えるように開口する開口部が形成され、
前記開口部は、可視光を透過させる可視光透過性と導電性とを有するカバー部材によって塞がれていることを特徴とする磁気センサ装置。
【請求項2】
前記磁気抵抗素子および前記筺体を有するヘッド部と、ケーブルを介して前記ヘッド部に接続され、前記ヘッド部から出力される信号を処理する回路基板を有する本体部とを備え、
前記ヘッド部から前記本体部へアナログ信号が出力されることを特徴とする請求項1記載の磁気センサ装置。
【請求項3】
磁気抵抗素子を有する磁気センサ装置において、
前記磁気抵抗素子が内部に配置されるヘッド部と、ケーブルを介して前記ヘッド部に接続され、前記ヘッド部から出力される信号を処理する回路基板を有する本体部とを備え、
前記本体部は、前記回路基板が内部に配置される筺体と、前記磁気センサ装置の状態を示すための発光体とを備え、
前記発光体は、前記筺体の内部に配置され、
前記筺体には、前記発光体から発せられる可視光が前記筺体の外部から見えるように開口する開口部が形成され、
前記開口部は、可視光を透過させる可視光透過性と導電性とを有するカバー部材によって塞がれていることを特徴とする磁気センサ装置。
【請求項4】
前記カバー部材は、金属製の前記筺体、または、前記筺体に固定される金属製の金属部材に接触していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の磁気センサ装置。
【請求項5】
前記カバー部材の導電性を有する部分の表面抵抗値は、500Ω以下であり、
前記カバー部材の可視光の透過率は、60%以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の磁気センサ装置。
【請求項6】
前記カバー部材は、透明な樹脂製の樹脂フィルムにITO(Indium Tin Oxide)膜が蒸着されたフィルム、または、透明な樹脂製の樹脂フィルムに金属製で網目状の金属メッシュが形成されたフィルムであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の磁気センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−29346(P2013−29346A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164066(P2011−164066)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】