説明

磁気障害防止装置およびその敷設方法

【課題】有害な磁力線を出す送電線などの電力施設周辺にある建物や敷地において、それらの既設の建物や敷地を簡単かつ安価な工事で磁気障害から守り、電子機器や人に有害でないレベルに、磁気を減少させる装置およびその敷設方法。
【解決手段】電力施設付近の敷地もしくはその上に立つ造作物に用いるコイルを用いた磁気障害防止装置において、多芯線でループを作り、そのループの接続部で各電線の接続順番を少なくとも一つずつずらすことにより、多芯線の線数の巻数をもったコイルを作る、磁気障害防止装置およびその敷設方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護対象としたい建物や用地に対して、送電線等の電力施設からの磁気障害を軽減し、磁気障害による被害を防ぐための装置およびその敷設方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
送電線などの電力施設付近では、送電により磁場が発生しており、電子機器にノイズを発生する、人体に影響が出るなどの磁気障害が発生している。
【0003】
磁気障害を防止する技術として、磁性体で磁気を遮断する、コイルに電流を流すことにより逆相の磁場を発生させ、到来する磁場を減弱させるといった技術が提示されている。
【0004】
従来においては、電線を用いてコイルを作り、磁気障害を減弱させるという技術思想は提示されていたが、現実的に業として製品化可能と考えられる技術は提示されてこなかった。
【特許文献1】特開平8―191454
【特許文献2】特許第2662186号
【0005】
送電線からの磁気障害に対しては、その人体への健康被害が懸念されており、WHOの規制に応じて経済産業省でも規制がはじめられた。
【非特許文献1】朝日新聞平成19年4月26日の記事
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の技術の中でもコイルを用いた磁気障害防止装置において、コイルの磁気発生力は流れる電流に巻数を掛けた物であり、巻数が少ない場合は大きな電流を必要とする。
従来の磁気障害防止装置では通常の電線を用いてコイルを製作していたため、不特定な形状の建造物内外や敷地にコイルを設置する場合、設置が困難であり、巻数を多くしづらいため大きな電流を必要とし、消費電力が大きかった。
【0007】
従来のコイルを用いた障害磁気防止装置は、施工にあたって電源の無い場所に施工することが出来なかった。
【0008】
又従来のコイルを用いた磁気障害防止装置においては、雷によって発生する誘導電圧による機器の損傷の危険性に対する対処が成されていなかった。
【0009】
又従来のコイルを用いた磁気障害防止装置を用いた磁気の減弱においては、障害を起こす磁気の到来する方向がコイルを用いた磁気障害防止装置に対して垂直からある程度外れた角度であった場合、磁気を減弱する能力が低下するという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、これらの課題を解決するため、次のような方法を用いる。コイルを用いた磁気障害防止装置において、請求項1の発明にあるように、扱いやすい多芯線1を用いて図1にあるようなコイルを製作し、コイルを用いた磁気障害防止装置を敷設することにより、容易に巻数の多いコイルを用いた磁気障害防止装置が敷設できる。これにより、電流を小さくできるため、その結果消費電力を下げることが出来る。
【0011】
本発明のコイルを用いた磁気障害防止装置において、多芯線の両端の接続処理にあたり、図2に図示されるような専用のコネクタボックス3を使用する。このことにより施工が容易且つ確実になる。
【0012】
本発明のコイルを用いた磁気障害防止装置において、アレスタ2を内蔵しておくことにより機器の損傷の危険性を下げることが出来る。
【0013】
本発明のコイルを用いた磁気障害防止装置において、その時点で装置の駆動に必要な外部電源が確保出来ない場所であっても、太陽光電池や風力発電機や電池やコンデンサといった電源6を併設することにより、電源の無い場所でも使用が可能となる。
【0014】
本発明のコイルを用いた磁気障害防止装置においては、施工の容易性からコイルループを多数敷設する事が出来る。これらの各コイルを制御装置4で位相制御することにより、コイルに対して垂直からある程度外れた角度から到来する磁気8に対しても対応できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコイルを用いた磁気障害防止装置およびその敷設方法では、取り扱い及び敷設の簡便な多芯線を用い、図1にあるように接続に工夫を加えることによって、容易に巻数の大きなコイルの敷設を実現することが出来る。使用する多芯線は、被覆などを容易に変更でき、環境に合わせることが容易である。
【0016】
このとき、コンピュータなどで使用されるフラットケーブルを用いれば、本発明のコイルを用いた磁気障害防止装置を畳や絨毯の下に容易に敷設でき、屋内や屋根裏にも敷設しやすい。
【0017】
敷設の時ひとつの平面に多数のコイルを設置し、これらの各コイルを制御装置で位相制御することにより、コイルに対して垂直からある程度外れた角度から到来する磁気に対しても対応できる。これにより、到来する磁気の方向に対して敷設が困難な場合でも、磁気障害を防ぐことが出来る。
【0018】
又施工工事において、作業者は1本の線として扱える物を敷設するだけで良い。これにより、作業時間及び作業コストの削減が出来る。
【0019】
本発明は、巻数を自由に増減出来るため、電流の最適値を選びやすく、そのため大電流を扱う必要が無くなり、消費電力を低くおさえられる。消費電流が低いと大電流回路が不要となり、回路の作成が容易であり、部品の入手が容易である。電圧が上がることにより、電線中の導体の使用量を下げることも可能になる。
【0020】
本発明は、その時点で装置の駆動に必要な外部電源が確保出来ない場所であっても、太陽光電池や風力発電機や電池やコンデンサを併設することにより、電源の無い場所でも使用が可能となり、省エネルギー効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のコイルを用いた磁気障害防止装置及びその敷設方法は、扱いやすい多芯線を使用し、接続にあたりその両端をコネクタボックスによって接続することにより、コイルを用いた磁気障害防止装置のコイルの敷設を容易にするものである。
【0022】
複数のコイルループをひとつの平面上に多数敷設し、これらの各コイルを制御装置で位相制御することにより、コイルに対して垂直からある程度外れた角度から到来する磁気に対しても対応できる。
【0023】
又アレスタを入れておくことにより、誘導雷やフェランティ現象により有害磁気発生源である送電線や電力施設に強力な磁場が発生した場合や近接した落雷によりコイルに異常高電圧が発生した場合、機器の損傷の危険性を下げることが出来る。
【0024】
電源には太陽光電池や風力発電機や電池やコンデンサを併設することにより、電源の無い場所でも使用が可能となり、省エネルギー効果もある。
【実施例1】
【0025】
図3は、本発明装置および敷設方法の1実施例の斜視図であって、一般的なビルに敷設した例である。ビル壁面及び屋上に多芯線1を敷設し、コネクタボックス3で接続してコイルを作り、制御装置4で制御することにより磁気障害を防止している。
【0026】
多芯線1によるコイルは、ビル内に敷設する空間が有れば内部でも良いし、空間がない場合は外壁に貼り付けることも可能である。
【0027】
本実施例における電源6は太陽光電池であり、装置は電力的に独立して駆動している。
【0028】
ビルの中間階に多芯線1によるコイルを追加することにより、より強い防御効果を発揮することも出来る。
【実施例2】
【0029】
図4は、本発明装置および敷設方法の1実施例の斜視図であって、一般家屋の屋根裏に敷設した例である。家屋の屋根裏に多芯線1を敷設し、制御装置兼コネクタボックス5で接続して磁気障害防止装置とした物である。
【0030】
6畳の一般的な畳敷きの部屋において、磁界の強さを測定すると6ミリガウスであった。そこで20芯のフラットケーブルを畳下の外周に敷設し、コネクタボックスを使用して機器を動作させると1ミリガウス以下になった。そのとき、解放時のコイル両端電圧は50ミリボルトであった。
【0031】
同一家屋で屋根裏全内周に同様の20芯フラットケーブルを敷設し装置を動かしたところ、前述の和室における磁界の強さは1.2ミリガウス以下になっていた。これは屋根裏と一階の和室では距離があるためと思われる。
【実施例3】
【0032】
図5は、本発明装置および敷設方法の1実施例の斜視図であって、家屋及びその敷地を囲むように本発明装置を敷設した例である。敷地の内周に沿って多芯線1を埋設し、制御装置兼コネクタボックス5で接続して磁気障害防止装置とした物である。
【0033】
本実施例における電源6は風力発電機であり、装置は電力的に独立して駆動している。
【実施例4】
【0034】
図6は、本発明装置および敷設方法の1実施例の斜視図であって、保護対象9である敷地の側に送電線7が通っており、多数の多芯線1とコネクタボックス3からなるコイルを、制御装置4制御する例である。
【0035】
図7は、図6の実施例において、斜め方向から到来する障害磁気8を、多数のコイルを位相制御によって連動させ、傾けた防御磁気10により減弱させる図を横から見た物である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
簡便な工事で磁気障害を阻止でき、到来磁気方向にかかわらず効果のある磁気遮蔽を安価に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】多芯線からなるコイルを示した斜視図である。
【図2】多芯線からなるコイルを接続するコネクタボックスを示した斜視図である。
【図3】コイルを用いた磁気障害防止装置の実施例を示した斜視図である。(実施例1)
【図4】コイルを用いた磁気障害防止装置の実施例を示した斜視図である。(実施例2)
【図5】コイルを用いた磁気障害防止装置の実施例を示した斜視図である。(実施例3)
【図6】コイルを用いた磁気障害防止装置の実施例を示した斜視図である。(実施例4)
【図7】多数のコイルを用いて位相制御により斜め方向から到来する磁気を減弱させる様子を横から示した横面図である。(実施例4)
【符号の説明】
【0038】
1 多芯線
2 アレスタ
3 コネクタボックス
4 制御装置
5 制御装置兼コネクタボックス
6 電源
7 送電線
8 障害磁気
9 保護対象
10 防御磁気


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力施設付近の敷地もしくはその上に立つ造作物に用いるコイルを用いた磁気障害防止装置において、多芯線でループを作り、そのループの接続部で各電線の接続順番を少なくとも一つずつずらすことにより、多芯線の線数の巻数をもったコイルを作る、磁気障害防止装置およびその敷設方法。
【請求項2】
コイルを用いた障害磁気防止装置の敷設における配線を、コネクタと内部配線によって実現する接続用コネクタボックスを使用した、請求項1記載のコイルを用いた磁気障害防止装置の敷設方法。
【請求項3】
一平面上にコイルを用いた磁気障害防止装置を多数設置することにより、フェーズドアレイ方式によって多方向からの磁気障害に対して減弱をおこなうことができる、請求項1記載のコイルを用いた磁気障害防止装置およびその敷設方法。
【請求項4】
コイルを用いた磁気障害防止装置の給電点にアレスタを取り付けた、請求項1記載のコイルを用いた磁気障害防止装置およびその敷設方法。
【請求項5】
コイルを用いた磁気障害防止装置の敷設において、電力源として太陽光電池を併設する、請求項1記載のコイルを用いた磁気障害防止装置およびその敷設方法。
【請求項6】
コイルを用いた磁気障害防止装置の敷設において、電力源として風力発電機を併設する、請求項1記載のコイルを用いた磁気障害防止装置およびその敷設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−308953(P2008−308953A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160264(P2007−160264)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(306031180)
【Fターム(参考)】