説明

移植拒絶反応を阻害するための方法および組成物

被験体における免疫反応を調節する方法が提供される。好ましい実施形態は、被験体、好ましくはヒト被験体における移植拒絶反応を軽減または阻害するための方法および組成物を提供する。免疫細胞の生物学的活性を阻害もしくは低減するか、または移植部位における炎症促進性分子の量を低減するのに有効な量のB7−H4ポリペプチド、その断片、またはその融合体を投与することにより、被験体における移植拒絶反応を阻害または軽減することができる。Th1細胞、Th17細胞、およびTh22細胞は、炎症を阻害または軽減するのに、B7−H4ポリペプチド、B7−H4融合タンパク質、またはその断片による阻害の標的となりうる例示的なT細胞である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2009年8月31日に出願された米国仮特許出願第61/238,605号、2009年12月4日に出願された米国仮特許出願第61/266,854号、2009年10月26日に出願された米国仮特許出願第61/254,930号、2009年12月15日に出願された米国仮特許出願第61/286,537号、および2010年8月30日に出願された米国仮特許出願第61/378,361号に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明の分野は一般に、免疫学の領域にあり、特に、移植拒絶反応(transplant rejection)を処置するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
外科術および免疫抑制療法の持続的な進歩は、臓器移植が、移植を必要とする患者にとって、極めて成功の可能性の高い処置選択肢となることを可能としている。1970年代におけるシクロスポリンの革命的な発見と共に始められた免疫抑制レジメンは、大きく進化し、心臓、腎臓、および骨髄など、多くの種類の臓器移植および組織移植の生存率を著明に増大させている。例えば、最新の統計は、1年間の肝臓移植片生存率が80%を超えることを確認している(Pillaiら、World J Gastroenterol、15巻(34号):4225〜4233頁(2009年))。
【0004】
器官および組織の手術による移植の成功は、医師が、移植レシピエントの免疫反応を調節する能力に大きく依存する。移植された外来組織を生存および機能させようとするならば、これらの組織を指向する免疫反応を制御しなければならない。移植拒絶反応時には、移植レシピエントの正常に機能する免疫系が、移植された器官を「非自己」組織として認識し、以後、移植された器官に対する免疫反応をもたらす。調査されずに放置されれば、免疫反応はその結果として最終的に、移植された器官の生物学的機能の喪失または死滅をもたらす多数の細胞およびタンパク質を生成し、また、移植レシピエントにおいて、他の重篤な毒性副作用ももたらしうる。
【0005】
移植拒絶反応は、依然として、ヒトにおける長期にわたる移植片の生存に対する主要な障害である。
【0006】
移植拒絶反応においては、T細胞が、中心的な役割を演じる(Gandhi, A.ら、Curr Opin Organ Transplant、13巻:622〜626頁(2008年))。移植拒絶反応を防止する大半の療法は、T細胞活性化の阻害を焦点とする。ナイーブT細胞は、その完全な活性化に2つのシグナルを必要とする(Vincennti, F.ら、J Allergy Clin Immunol、121巻(2号):299〜306頁)。第1のシグナルは、抗原特異的であり、抗原提示細胞(APC)上のMHCおよび抗原性ペプチドの複合体と相互作用するT細胞受容体によりもたらされる。第2のシグナル、または共刺激シグナルは、APC上のCD80およびCD86などの分子と、ナイーブT細胞上の同族受容体(cognate receptor)との相互作用によりもたらされる。IL−2を含めたサイトカインの存在が、その結果としてT細胞を増殖させる活性化の過程を刺激する。この経路の遮断のためにT細胞が共刺激シグナルを受け取らなければ、T細胞は、アネルギー性となり、アポトーシスを受ける。
【0007】
CD80(B7−1)およびCD86(B7−2)は、共刺激分子のB7スーパーファミリーのメンバーである。これらは、各々、刺激性のCD28受容体および阻害性のCTLA−4(CD152)受容体と関与しうる。T細胞受容体を介するシグナル伝達と共に、CD28によるライゲーションは、抗原特異的なT細胞増殖を増大させ、サイトカインの生成を増強し、T細胞の分化およびエフェクター機能を刺激し、かつT細胞の生存を促進する(非特許文献1;非特許文献2;ならびに非特許文献3)。これに対し、CTLA−4を介するシグナル伝達は、T細胞の増殖、IL−2の生成、ならびに細胞周期の進行を阻害する、負のシグナルを送達すると考えられている(非特許文献4;ならびに非特許文献5)。
【0008】
現行の免疫抑制剤には、シクロスポリンおよびタクロリムスなどのカルシニューリン阻害剤が含まれる。これらの薬剤は、もっぱらT細胞に限られるわけではない、細胞内プロテアーゼであるカルシニューリンを阻害する。カルシニューリンは、他の種類の細胞にも存在するため、カルシニューリン阻害剤は、他の組織において副作用を引き起こす。シロリムスなどのmTOR阻害剤も同様に、T細胞に特異的なわけではないシグナル伝達経路を阻害するため、他の組織において副作用を引き起こす(Emamaullee, J.ら、Expert Opin. Biol. Ther.、9巻(6号):789〜796頁(2009年))。T細胞上の受容体に結合する抗体ベースの薬剤は、カルシニューリン阻害剤を上回る選択性をもたらすが、免疫系に対するより強力な阻害効果をもたらすことが多く、これは数カ月間にわたり持続しうる。
【0009】
T細胞が活性化した後では、CTLA−4が発現し、T細胞反応を下方制御するように作用する。CTLA−4は、CD28よりもCD80リガンドおよびCD86リガンドに対してより高いアビディティーで結合し、CD28と競合して、T細胞の活性を下方制御する。CTLA−4の細胞外ドメインを伴う融合タンパク質は、CD28を介するT細胞の活性化を選択的に阻止することが示されている(Alegre, M.ら、Current Pharmacoloical Design、12巻:149〜160頁)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Lenshowら、Annu. Rev. Immunol.(1996年)14巻:233〜258頁
【非特許文献2】ChambersおよびAllison、Curr. Opin. Immunol.(1997年)9巻:396〜404頁
【非特許文献3】RathmellおよびThompson、Annu. Rev. Immunol.(1999年)17巻:781〜828頁
【非特許文献4】KrummelおよびAllison、J. Exp. Med.(1996年)183巻:2533〜2540頁
【非特許文献5】Walunasら、J. Exp. Med.(1996年)183巻:2541〜2550頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、移植拒絶反応を阻害または軽減するための方法および組成物を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、同種異系移植片の生存を延長するための方法および組成物を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、移植片対宿主病を阻害または軽減するための方法および組成物を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、T細胞に特異的な免疫抑制剤を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、ナイーブT細胞の、Th1細胞、Th17細胞、またはTh22細胞への発生を阻害することにより、移植拒絶反応を阻害するための方法および組成物を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、炎症促進性分子(proinflammatory molecule)の生成を阻害または低減し、それにより移植拒絶反応を阻害または軽減することにより、移植拒絶反応を阻害するための方法および組成物を提供することである。
【0017】
本発明の目的は、T細胞の増殖を阻害し、T細胞による炎症促進性分子の生成を低減または阻害し、Th1細胞、Th17細胞、またはTh22細胞の分化およびエフェクター機能を低減または阻害し、Th1細胞、Th17細胞、またはTh22細胞の生存を低減または阻害する、移植拒絶反応を阻害するための方法および組成物を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、Tregの抑制作用を増強することにより、移植拒絶反応を阻害するための方法および組成物を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、Th1経路、Th17経路、およびTh22経路に対するTregの抑制作用を増強して、生成されるIFN−ガンマ、IL−17、ならびに他の炎症性分子のレベルを低減し、それにより炎症、同種異系反応性(alloreactivity)、および移植拒絶反応を阻害または軽減することにより、移植拒絶反応を阻害するための方法および組成物を提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、Tregに直接的に作用して、IL−10の生成を促進または増強し、炎症性分子の生成をさらに抑制し、それにより移植拒絶反応を阻害または軽減する薬剤を投与することにより、移植拒絶反応を阻害するための方法および組成物を提供することである。
【0021】
本発明の別の目的は、Tregの活性を増大させるかもしくは促進するか、ナイーブT細胞のTregへの分化を増大させるか、Tregの数を増大させるか、またはTregの生存を増大させる、移植拒絶反応を阻害するための方法および組成物を提供することである。
【0022】
Th1 T細胞、Th17 T細胞、またはTh22 T細胞の炎症促進活性を調節しながら、同時に、Tregの活性を増大させるかまたは促進するための組成物および方法を提供することが、本発明の別の目的である。
【0023】
本発明の別の目的は、移植拒絶反応を阻害するための組合せ療法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
被験体における免疫反応を調節するための方法が提供される。好ましい実施形態は、免疫細胞の生物学的活性を阻害もしくは低減するか、または炎症促進性分子、例えば、炎症促進性サイトカインの量を低減するのに有効な量のB7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合タンパク質を投与することにより、被験体、好ましくはヒト被験体における移植拒絶反応を軽減または阻害するための方法および組成物を提供する。最も好ましい実施形態は、B7−H4−Ig融合タンパク質である。例示的な炎症促進性分子には、IL−1β、TNF−α、TGF−ベータ、IFN−γ、IL−17、IL−6、IL−23、IL−22、IL−21、およびMMPが含まれるがこれらに限定されない。Th1細胞、Th17細胞、およびTh22細胞は、炎症を阻害または軽減するのに、B7−H4ポリペプチド、B7−H4融合タンパク質、またはこれらの断片による阻害の標的となりうる例示的なT細胞である。B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合タンパク質はまた、炎症性分子を分泌するか、または他の細胞に炎症性分子を分泌させる他の細胞を標的とするのにも用いることができる。加えて、B7−H4ポリペプチド、B7−H4融合タンパク質、またはこれらの断片は、Tregを標的として、IL−17などの炎症性分子の生成に対する抑制作用を増強することも可能である。B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体はまた、Tregに直接的に作用して、IL−10の生成を促進または増強し、炎症性分子の生成をさらに抑制するか、またはTregの抑制作用を増強し、それにより移植拒絶反応を阻害または軽減することも可能である。
【0025】
B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体は、複数の経路の複数の地点において作用する。例えば、B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体は、ナイーブT細胞が、Th1細胞、Th17細胞、Th22細胞、または炎症性分子を分泌するか、もしくは他の細胞に炎症性分子を分泌させる他の細胞に発達することを阻害しうる。代替的に、B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体は、Th1細胞、Th17細胞、Th22細胞、および/または他の細胞と相互作用して、炎症促進性分子の生成を阻害または低減することも可能であり、Th1細胞、Th17細胞、またはTh22細胞の増殖を阻害することも可能である。加えて、B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体は、Tregと共に作用して、Th1細胞、Th17細胞、および/またはTh22細胞に対する抑制効果を増強させ、生成されるIFN−γおよび/またはIL−17のレベルを低減することも可能である。B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体はまた、Tregに直接的に作用して、IL−10の生成を促進または増強し、Th1経路および/またはTh17経路を抑制することも可能である。加えて、B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体は、移植された組織領域におけるTreg細胞の分化、動員、および/または増殖を増強することによっても作用しうる。
【0026】
処理される移植材料は、細胞、組織、器官、四肢、手足指、または身体の部分、好ましくはヒト身体の部分でありうる。移植片は、同種異系または異種であることが典型的である。B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体は、全身投与することもでき、局所投与することもできる。一部の実施形態では、B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体を、移植前、移植時、または移植後において、移植部位に投与する。一実施形態では、B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体を、移植部位に、皮下注射などにより非経口投与する。他の実施形態では、B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体を、移植される細胞、組織、または器官に、ex vivoにおいて直接的に投与する。一実施形態では、移植材料を、移植前、移植後、またはその両方において、B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体と接触させる。他の実施形態では、B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体を、リンパ節または脾臓などの免疫組織または免疫器官に投与する。また、B7−H4ポリペプチドをコードするベクターも提供される。これらのベクターを用いて、B7−H4を、in vivoまたはex vivoにおいて局所的に、例えば、膵島細胞に送達することができる。例示的なベクターはアデノウイルスベクターである。
【0027】
B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体は、他のリンパ球表面マーカー(例えば、CD40)もしくはサイトカインに対する抗体;他の融合タンパク質、例えば、CTLA−4−Ig(Orencia(登録商標))、TNFR−Ig(Enbrel(登録商標));または他の免疫抑制薬;抗増殖剤;細胞傷害剤;あるいは免疫抑制の一助となりうる他の化合物が含まれるがこれらに限定されない、1または複数のさらなる治療剤と組み合わせて投与することができる。一実施形態では、さらなる治療剤が、CTLA−4融合タンパク質、例えば、CTLA−4Ig(アバタセプト)である。好ましい実施形態では、さらなる治療剤が、in vivoにおいてそのCD86に対するアビディティーを顕著に増大させる、2つのアミノ酸置換(L104EおよびA29Y)を含有する、ベラタセプトとして公知のCTLA−4−Ig融合タンパク質である。
【0028】
さらに別の実施形態は、移植片対宿主病(GVHD)に随伴する1または複数の症状を緩和するのに有効な量のB7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体を投与することにより、それを必要とする被験体における、GVHDの1または複数の症状を処置するための方法および組成物を提供する。
【0029】
別の実施形態は、それを必要とする被験体にインスリン生成細胞を移植し、該インスリン生成細胞に対する移植拒絶反応を阻害または軽減するのに有効な量のB7−H4ポリペプチド、その融合体、またはB7−H4ポリペプチドもしくはB7−H4融合タンパク質をコードするベクターを投与することにより、糖尿病を処置するための方法を提供する。
【0030】
また、慢性移植拒絶反応を阻害または軽減するための方法も提供される。該方法は、それを必要とする被験体に、コントロールと比べて、移植片の慢性拒絶反応を阻害または軽減するのに有効な量のB7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体を投与するステップを包含する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、糖尿病の誘導、ならびに同種異系の膵島細胞移植と、0日目、2日目、4日目、6日目、および8日目におけるB7−H4−Ig(0.25mg)の投与とを伴う処置を概略的に例示する図である。
【図2】図2は、百分率による膵島の生存を、B7−H4−Igで処置したマウスにおける移植後の日数(実線)またはコントロールにおける移植後の日数(点線)と対比させる折れ線グラフである。
【図3】図3は、移植片対宿主病アッセイの実験デザインについての概略的な図である。4群のマウスを、骨髄移植にかけた。第I群には、同系骨髄移植を施した。第II群には、同種異系骨髄移植を施し、0日目、1日目、7日目、および14日目にコントロールIgG(0.5mg)で処置した。第III群には、同種異系骨髄移植を施し、0日目、1日目、7日目、および14日目にB7−H4−Ig(0.5mg)で処置した。第IV群には、同種異系骨髄移植を施し、0日目、1日目、7日目、および14日目にリン酸緩衝食塩液(PBS)で処置した。
【図4】図4Aは、図3で処置された第II群および第III群のマウスによる下痢の臨床スコアを示す棒グラフである:コントロールIgG(黒色の影)群;B7−H4−Ig(白色ボックス)群を示す。図4Bは、図3で処置された第II群および第III群のマウスの百分率による体重の低減を示す棒グラフである:コントロールIgG(黒色の影)群を示す。
【図5】図5は、図3で処置されたマウスの百分率による生存を、骨髄移植後の日数と対比させて示す折れ線グラフである。同系移植(黒四角)、コントロールIgGで処置した同種異系移植(白三角)、B7−H4−Igで処置した同種異系移植(黒三角)、リン酸緩衝生理食塩液で処置した同種異系移植(白丸)を示す。表示されるタンパク質は、矢印により表示される通り、0日目、1日目、7日目、および14日目に0.5mgで注射された。
【発明を実施するための形態】
【0032】
I.定義
「同系」という用語は、遺伝子的に同一であるか、または密接に類縁である生物、細胞、組織、器官などを指す。
【0033】
「同種異系」という用語は、同じ種の個体に由来する(from、またはderived from)生物、細胞、組織、器官などをいうが、ここで、この生物、細胞、組織、器官などは、互いと遺伝子的に異なる。
【0034】
「異種移植」という用語は、ドナーとレシピエントとの種が異なる移植を指す。
【0035】
「移植拒絶反応」という用語は、移植レシピエントの表面または内部において、移植された細胞、組織、器官などが部分的または完全に破壊されることを指す。
【0036】
「宿主」または「被験体」という用語は、移植される細胞、組織、器官などのレシピエントである生物(生物は哺乳動物であることが好ましい)、組織、器官などを指す。本明細書では、移植の宿主、被験体、またはレシピエントを指す場合の「宿主」、「レシピエント」、または「被験体」を互換的に用いる。
【0037】
「移植拒絶反応を阻害するのに治療的に有効な量」とは、移植レシピエントに投与されると、処置されないコントロールと比べて、移植拒絶反応を部分的または完全に阻害するB7−H4−Igの量を指す。
【0038】
本明細書で用いられる「炎症性分子」とは、IL−1β、TNF−α、TGF−ベータ、IFN−γ、IL−17、IL−6、IL−23、IL−22、IL−21、およびMMPが含まれるがこれらに限定されない、サイトカイン、メタロプロテアーゼ、ならびに他の分子を指す。
【0039】
II.B7−H4ならびにその融合タンパク質
A.B7−H4
B7−H4は、タンパク質のB7ファミリーのメンバーであり、T細胞シグナル伝達経路に関与する。ナイーブT細胞は、その完全な活性化に2つのシグナルを必要とする(Vincennti, F.ら、J Allergy Clin Immunol、121巻(2号):299〜306頁)。第1のシグナルは、抗原特異的であり、抗原提示細胞(APC)上のMHCおよび抗原性ペプチドの複合体と相互作用するT細胞受容体によりもたらされる。第2のシグナル、または共刺激シグナルは、APC上のCD80およびCD86などの分子と、ナイーブT細胞上のCD28などの同族受容体との相互作用によりもたらされる。最も広範にわたり特徴づけられているT細胞共刺激経路は、B7−CD28経路であり、ここでは、B7−1(CD80)およびB7−2(CD86)の各々が、刺激性のCD28受容体および阻害性のCTLA−4(CD152)受容体に結合(engage)しうる。T細胞受容体を介するシグナル伝達と共に、CD28の連結(ligation)は、抗原特異的なT細胞増殖を増大させ、サイトカインの生成を増強し、T細胞の分化およびエフェクター機能を刺激し、T細胞の生存を促進する(Lenshowら、Annu. Rev. Immunol.、14巻:233〜258頁(1996年);ChambersおよびAllison、Curr. Opin. Immunol.、9巻:396〜404頁(1997年);ならびにRathmellおよびThompson、Annu. Rev. Immunol.、17巻:781〜828頁(1999年))。これに対し、CTLA−4を介するシグナル伝達は、T細胞の増殖、IL−2の生成、ならびに細胞周期の進行を阻害する、負のシグナルを送達すると考えられている(KrummelおよびAllison、J. Exp. Med.、183巻:2533〜2540頁(1996年);ならびにWalunasら、J. Exp. Med.、183巻:2541〜2550頁(1996年))。B7ファミリーの他のメンバーには、B7−H1(Dongら、Nature Med.、5巻:1365〜1369頁(1999年);ならびにFreemanら、J. Exp. Med.、192巻:1〜9頁(2000年))、B7−DC(Tsengら、J. Exp. Med.、193巻:839〜846頁(2001年);ならびにLatchmanら、Nature Immunol.、2巻:261〜268頁(2001年))、B7−H2(Wangら、Blood、96巻:2808〜2813頁(2000年);Swallowら、Immunity、11巻:423〜432頁(1999年);ならびにYoshinagaら、Nature、402巻:827〜832頁(l999年))、B7−H3(Chapovalら、Nature Immunol.、2巻:269〜274頁(2001年))、およびB7−H4(Choiら、J. Immunol.、171巻:4650〜4654頁(2003年);Sicaら、Immunity、18巻:849〜861頁(2003年);Prasadら、Immunity、18巻:863〜873頁(2003年);ならびにZangら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、100巻:10388〜10392頁(2003年))が含まれる。B7−H1およびB7−DCは、PD−1のリガンドであり、B7−H2はICOSのリガンドであり、B7−H3およびB7−H4は、現時点では、オーファンリガンドである(Dongら、Immunol. Res.、28巻:39〜48頁(2003年))。
【0040】
B7−H4は、T細胞反応に対する負の制御因子である。ヒトB7−H4とマウスB7−H4とが87%のアミノ酸同一性を共有することから、進化において保存された重要な機能が示唆される。ヒトおよびマウスのB7−H4 mRNAは、リンパ系器官(脾臓および胸腺)および非リンパ系器官(肺、肝臓、精巣、卵巣、胎盤、骨格筋、膵臓、および小腸を含めた)のいずれにおいても、広範に発現しているが、B7−H4タンパク質は通常のヒト組織において、免疫組織化学によって検出されない。B7−H4タンパク質の発現についての限られた研究は、B7−H4が、単離されたばかりのヒトT細胞、B細胞、DC、および単球上では発現せず、in vitroにおいて刺激された後のこれらの細胞型において誘導されうることを示唆する。免疫組織化学染色は、B7−H4が、肺の腫瘍、卵巣の腫瘍、および頭頚部の腫瘍で高度に発現することを示し、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)による解析はまた、マウスB7−H4も、前立腺癌、肺癌、および結腸癌を含めた多数の腫瘍細胞系において高度に発現することを示唆する。
【0041】
B7−H4のトランスフェクト体(transfectant)ならびに固定されたB7−H4−Ig融合タンパク質を用いる機能研究は、B7−H4が、TCRを介するCD4T細胞およびCD8T細胞の増殖、細胞周期の進行、ならびにIL−2の生成を阻害するシグナルを送達することを裏付けている。B7−1による共刺激は、B7−H4−Igにより誘導される阻害を凌駕することができない。B7−H4ノックアウトマウスが自己免疫を発生させることは、in vitroにおける活性と符合する。
【0042】
B.例示的なB7−H4ポリペプチドおよびB7−H4融合タンパク質
他のポリペプチドと連結されて融合タンパク質を形成するB7−H4ポリペプチドを含有する融合タンパク質が提供される。B7−H4融合ポリペプチドは、(i)第2のポリペプチドに直接的に融合するか、または(ii)必要に応じて上記第2のポリペプチドに融合するリンカーペプチド配列に融合するB7−H4タンパク質のうちの全部または一部を含む、第1の融合パートナーを有する。その融合タンパク質は、必要に応じて、2つ以上の融合タンパク質を二量体化または多量体化するように機能するドメインを含有する。そのペプチド/ポリペプチドリンカードメインは、別個のドメインの場合もあり、代替的に、上記融合タンパク質の他のドメインのうちの1つのうちの1つ(B7−H4ポリペプチドまたは第2のポリペプチド)の内部に含有される場合もある。同様に、上記融合タンパク質を二量体化または多量体化するように機能するドメインは、別個のドメインの場合もあり、代替的に、上記融合タンパク質の他のドメイン(B7−H4ポリペプチド、第2のポリペプチド、またはペプチド/ポリペプチドリンカードメイン)のうちの1つのうちの1つ内に含有される場合もある。一実施形態では、上記二量体化/多量体化ドメインと、上記ペプチド/ポリペプチドリンカードメインとが同じである。
【0043】
本明細書で開示される融合タンパク質は、式I:
N−R−R−R−C
[式中、「N」は、融合タンパク質のN末端を表わし、「C」は、融合タンパク質のC末端を表わす]の融合タンパク質であり、「R」が、B7−H4ポリペプチドであり、「R」が、任意選択のペプチド/ポリペプチドリンカードメインであり、「R」が、第2のポリペプチドである。代替的に、Rは、上記B7−H4ポリペプチドであることが可能であり、Rは、上記第2のポリペプチドでありうる。
【0044】
上記融合タンパク質は、二量体化または多量体化され得る。二量体化または多量体化は、二量体化ドメインまたは多量体化ドメインを介して、2つ以上の融合タンパク質間で生じうる。代替的に、融合タンパク質の二量体化または多量体化は、化学的な架橋形成によっても生じうる。形成される二量体または多量体は、ホモ二量体/ホモ多量体の場合もあり、ヘテロ二量体/ヘテロ多量体の場合もある。
【0045】
A.B7−H4ポリペプチド
好ましい実施形態では、上記B7−H4ポリペプチドが、哺乳動物種に由来する。最も好ましい実施形態では、上記B7−H4ポリペプチドが、マウス、非ヒト霊長動物(Pan troglodytes、Macaca mulatta、およびMacaca fascicularis)、またはヒト起源のものである。有用なマウスB7−H4ポリペプチドは、GenBank受託番号NM_178594またはAY280973である核酸によりコードされるB7−H4ポリペプチドに対して、少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%の配列同一性を有する。有用なマウスB7−H4ポリペプチドは、GenBank受託番号がAAH32925.1またはNP_848709.2によるB7−H4ポリペプチドに対して、少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%の配列同一性を有する。有用なヒトB7−H4ポリペプチドは、GenBank受託番号がAK026071である核酸によりコードされるB7−H4ポリペプチドに対して、少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%の配列同一性を有する。有用なヒトB7−H4ポリペプチドは、GenBank受託番号NP_078902.2またはBAB15349.1によるB7−H4ポリペプチドに対して、少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%の配列同一性を有する。
【0046】
マウスB7−H4ポリペプチドは、
【0047】
【化1】

に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされうる。
【0048】
マウスB7−H4ポリペプチドは、
【0049】
【化2】

に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有しうる。
【0050】
ヒトB7−H4ポリペプチドは、
【0051】
【化3】

に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされうる。
【0052】
ヒトB7−H4ポリペプチドは、
【0053】
【化4】

に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有しうる。
【0054】
非ヒト霊長動物B7−H4ポリペプチドは、
【0055】
【化5】

に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有しうる(配列番号15および16は、チンパンジー(Pan troglodytes)のポリペプチド配列であり、配列番号17および18は、アカゲザル(Macaca mulatta)のポリペプチド配列であり、配列番号19および20は、カニクイザル(Macaca fascicularis)のポリペプチド配列である)。
【0056】
B7−H4ポリペプチドをコードする核酸は、好まれる発現宿主における発現について最適化することができる。コドンは、B7−H4核酸配列が由来する哺乳動物と上記発現宿主の間でのコドン使用の違いを考慮して、同じアミノ酸をコードする代替のコドンで置換することができる。このようにして、発現宿主に好ましいコドンを用いて、核酸を合成することができる。
【0057】
1.B7−H4ポリペプチドの断片
上記B7−H4タンパク質は、抗体の可変ドメインおよび定常ドメインと類縁の、2つの免疫グロブリンドメインである、IgVドメイン(またはVドメイン)およびIgCドメイン(またはCドメイン)を、その細胞外ドメイン内に含有する。当業者は、ファミリーデータベースおよびドメインデータベースを検索することにより、上記ドメインを同定することができる。単離IgVドメインに由来する機能的データに基づき、ならびに他のB7ファミリーメンバーとの類比により、上記IgVドメインが、受容体との結合に関与すると考えられる。細胞外ドメインの各Igドメインは、このフォールドに典型的であり、かつ、構造−機能にとって重要でありうる通り、ドメイン内のシステイン残基間で形成される1つのジスルフィド結合を含む。配列番号2、5、9、および12では、これらのシステインが、IgVドメインでは残基56および130に位置し、IgCドメインでは残基168および225に位置する。加えて、IgVドメインでは、1つのN連結されたグリコシル化部位の存在が予測され、上記IgCドメインでは、6つのグリコシル化部位の存在が予測されており、これらは、マウスB7−H4配列と、ヒトB7−H4配列とで保存されている。
【0058】
一実施形態では、上記第1の融合パートナーが、B7−H4の断片である。本明細書で用いられるB7−H4断片とは、全長タンパク質より少なくとも1アミノ酸短いポリペプチドの任意のサブセットを指す。有用な断片は、それらの1つ以上の天然の受容体に結合する能力を保持する断片である。全長B7−H4の断片であるB7−H4ポリペプチドは、全長B7−H4と比較して、その天然の受容体(複数可)に結合する能力が、典型的には少なくとも20パーセント、30パーセント、40パーセント、50パーセント、60パーセント、70パーセント、80パーセント、90パーセント、95パーセント、98パーセント、99パーセント、100パーセント、なおまたは100パーセント超である。
【0059】
B7−H4ポリペプチドの断片には、可溶性断片が含まれる。可溶性のB7−H4ポリペプチド断片とは、それらを生成させる細胞から漏出するか、分泌されるか、または他の方法で抽出されうる、B7−H4ポリペプチドの断片である。B7−H4ポリペプチドの可溶性断片は、上記受容体ポリペプチドの細胞外ドメインの一部または全部を含み、かつ、細胞内ドメインおよび/または膜貫通ドメインの一部または全部を欠く。一実施形態では、B7−H4ポリペプチド断片が、上記B7−H4ポリペプチドの細胞外ドメインの全体を含む。他の実施形態では、上記B7−H4ポリペプチドの可溶性断片が、B7−H4の生物学的活性を保持する細胞外ドメインの断片を含む。上記細胞外ドメインは、上記膜貫通ドメインに由来する1、2、3、4、もしくは5の連続するアミノ酸、ならびに/またはそのシグナル配列に由来する1、2、3、4、もしくは5の連続するアミノ酸を含みうる。代替的に、上記細胞外ドメインは、C末端、N末端、またはこれらの両方から取り出された、1、2、3、4、5以上のアミノ酸を有しうる。一部の実施形態では、上記細胞外ドメインが、IgVドメインのみであるか、または全長タンパク質の残基56および130に位置するIgVドメインの保存システイン間の領域である。
【0060】
一般に、上記B7−H4ポリペプチドまたはそれらの断片は、シグナル配列をコードする配列を含む核酸から発現される。一般に、そのシグナル配列が未成熟ポリペプチドから切断されて、上記シグナル配列を欠く成熟ポリペプチドが生成される。配列番号4、7、11、14、16、18、および20は、各々が、シグナルペプチドを欠く。標準的な分子生物学の技法を用いて、B7−H4のシグナル配列を、別のポリペプチドのシグナル配列で置換して、そのポリペプチドの発現レベル、分泌、可溶性、または他の特性に影響を及ぼすことができる。上記B7−H4のシグナル配列を置換するのに用いられるシグナル配列は、当技術分野で公知の任意のシグナル配列でありうる。配列番号2、3、5、6、9、10、12、13、15、17、および19は、各々が、シグナルペプチドを含有する。
【0061】
好ましい実施形態では、上記融合タンパク質が、Ig Fc領域に融合した、B7−H4またはその断片の細胞外ドメインを含む。組換えB7−H4−Ig融合タンパク質は、既に説明されている通り(Chapovalら、Methods Mol. Med.、45巻:247〜255頁(2000年))、B7−H4またはその断片の細胞外ドメインのコード領域を、ヒトIgG1またはマウスIgG2aのFc領域と融合させることにより、調製することができる。
【0062】
a.マウスB7−DC細胞外ドメイン融合パートナー
一実施形態では、上記融合タンパク質の第1の融合パートナーが、マウスB7−H4またはその断片の細胞外ドメインを含む。上記第1の融合パートナーは、
【0063】
【化6】

に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされうる。
【0064】
別の実施形態では、上記第1の融合パートナーが、マウスアミノ酸配列:
【0065】
【化7】

に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有しうる。
【0066】
成熟タンパク質では、シグナル配列が除去される。加えて、他のポリペプチドまたは他の生物に由来するシグナルペプチドを用いて、作製時における宿主からの融合タンパク質の分泌を増強することができる。配列番号28は、上記シグナル配列を伴わない、配列番号24および配列番号26のマウスアミノ酸配列:
【0067】
【化8】

を示す。
【0068】
配列番号29は、上記シグナル配列を伴わない、配列番号25および配列番号27のマウスアミノ酸配列:
【0069】
【化9】

を示す。
【0070】
別の実施形態では、上記融合タンパク質の第1の融合パートナーが、マウスB7−H4のIgVドメインを含む。一実施形態では、上記IgVドメインが、少なくとも、配列番号2または配列番号5の56位におけるシステイン〜配列番号2または配列番号5の130位におけるシステインを含む。別の実施形態では、上記IgVドメインが、このアミノ酸範囲により定められるポリペプチドの少なくとも25または50アミノ酸の断片を含有する。
【0071】
上記第1の融合パートナーは、例示的なIgVドメインをコードする以下のヌクレオチド配列:
【0072】
【化10】

に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされうる。
【0073】
上記第1の融合パートナーは、マウスアミノ酸配列:
【0074】
【化11】

に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有しうる。
【0075】
b.ヒト細胞外ドメイン融合パートナー
別の実施形態では、上記融合タンパク質の第1の融合パートナーが、ヒトB7−H4またはその断片の細胞外ドメインを含む。上記第1の融合パートナーは、
【0076】
【化12】

【0077】
【化13】

【0078】
【化14】

【0079】
【化15】

に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされうる。
【0080】
別の実施形態では、上記第1の融合パートナーが、ヒトアミノ酸配列:
【0081】
【化16】

【0082】
【化17】

【0083】
【化18】

に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有しうる。
【0084】
成熟タンパク質では、シグナル配列が除去される。加えて、他のポリペプチドまたは他の生物に由来するシグナルペプチドを用いて、作製時における宿主からの融合タンパク質の分泌を増強することができる。配列番号55は、上記シグナル配列を伴わない、配列番号43および配列番号49のヒトアミノ酸配列:
【0085】
【化19】

を示す。
【0086】
配列番号56は、上記シグナル配列を伴わない、配列番号46および配列番号52のヒトアミノ酸配列:
【0087】
【化20】

を示す。
【0088】
配列番号57は、上記シグナル配列を伴わない、配列番号44および配列番号50のヒトアミノ酸配列:
【0089】
【化21】

を示す。
【0090】
配列番号58は、上記シグナル配列を伴わない、配列番号47および配列番号53のヒトアミノ酸配列:
【0091】
【化22】

を示す。
【0092】
配列番号59は、上記シグナル配列を伴わない、配列番号45および配列番号51のヒトアミノ酸配列:
【0093】
【化23】

を示す。
【0094】
配列番号60は、上記シグナル配列を伴わない、配列番号48および配列番号54のヒトアミノ酸配列:
【0095】
【化24】

を示す。
【0096】
他の実施形態では、配列番号45、48、51、54、59、および60から、最後のアラニン残基およびセリン残基が除去される。
【0097】
別の実施形態では、上記融合タンパク質の第1の融合パートナーが、ヒトB7−H4のIgVドメインを含む。一実施形態では、上記IgVドメインが、少なくとも、配列番号9または配列番号12の56位におけるシステイン〜配列番号9または配列番号12の130位におけるシステインを含む。別の実施形態では、上記IgVドメインが、このアミノ酸範囲により定められるポリペプチドの少なくとも25または50アミノ酸の断片を含有する。
【0098】
上記第1の融合パートナーは、例示的なIgVドメインをコードする以下のヌクレオチド配列:
【0099】
【化25】

に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされうる。
【0100】
上記第1の融合パートナーは、ヒトアミノ酸配列:
【0101】
【化26】

に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有しうる。
【0102】
c.非ヒト霊長動物細胞外ドメイン融合パートナー
別の実施形態では、上記融合タンパク質の第1の融合パートナーが、非ヒト霊長動物B7−H4またはその断片の細胞外ドメインを含む。例示的な非ヒト霊長動物には、チンパンジー(Pan troglodytes)、アカゲザル(Macaca mulatta)、およびカニクイザル(Macaca fascicularis)が含まれるがこれらに限定されない。
【0103】
上記第1の融合パートナーは、チンパンジー(Pan troglodytes)アミノ酸配列:
【0104】
【化27】

に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有しうる。
【0105】
成熟タンパク質では、シグナル配列が除去される。加えて、他のポリペプチドまたは他の生物に由来するシグナルペプチドを用いて、作製時における宿主からの融合タンパク質の分泌を増強することができる。
【0106】
配列番号68は、上記シグナル配列を伴わない、配列番号65のチンパンジーアミノ酸配列:
【0107】
【化28】

を示す。
【0108】
配列番号69は、上記シグナル配列を伴わない、配列番号66のチンパンジーアミノ酸配列:
【0109】
【化29】

を示す。
【0110】
配列番号70は、上記シグナル配列を伴わない、配列番号67のチンパンジーアミノ酸配列:
【0111】
【化30】

を示す。
【0112】
上記第1の融合パートナーは、アカゲザル(Macaca mulatta)アミノ酸配列:
【0113】
【化31】

に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有しうる。
【0114】
成熟タンパク質では、シグナル配列が除去される。加えて、他のポリペプチドまたは他の生物に由来するシグナルペプチドを用いて、作製時における宿主からの融合タンパク質の分泌を増強することができる。
【0115】
配列番号74は、上記シグナル配列を伴わない、配列番号71のアカゲザルアミノ酸配列:
【0116】
【化32】

を示す。
【0117】
配列番号75は、上記シグナル配列を伴わない、配列番号72のアカゲザルアミノ酸配列:
【0118】
【化33】

を示す。
【0119】
配列番号76は、上記シグナル配列を伴わない、配列番号73のアカゲザルアミノ酸配列:
【0120】
【化34】

を示す。
【0121】
上記第1の融合パートナーは、カニクイザル(Macaca fascicularis)アミノ酸配列:
【0122】
【化35】

に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有しうる。
【0123】
成熟タンパク質では、シグナル配列が除去される。加えて、他のポリペプチドまたは他の生物に由来するシグナルペプチドを用いて、作製時における宿主からの融合タンパク質の分泌を増強することができる。
【0124】
配列番号80は、上記シグナル配列を伴わない、配列番号77のカニクイザルアミノ酸配列:
【0125】
【化36】

を示す。
【0126】
配列番号81は、上記シグナル配列を伴わない、配列番号78のカニクイザルアミノ酸配列:
【0127】
【化37】

を示す。
【0128】
配列番号82は、上記シグナル配列を伴わない、配列番号79のカニクイザルアミノ酸配列:
【0129】
【化38】

を示す。
【0130】
他の実施形態では、配列番号67、70、73、76、79、および82から、最後のアラニン残基およびセリン残基が除去される。
【0131】
別の実施形態では、上記融合タンパク質の第1の融合パートナーが、チンパンジーB7−H4のIgVドメインを含む。一実施形態では、上記IgVドメインが、少なくとも、配列番号15の52位におけるシステイン〜配列番号15の126位におけるシステインを含む。別の実施形態では、上記IgVドメインが、このアミノ酸範囲により定められるポリペプチドの少なくとも25または50アミノ酸の断片を含有する。
【0132】
上記第1の融合パートナーは、以下の例示的なIgVドメインの以下のチンパンジーアミノ酸配列:
【0133】
【化39】

に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有しうる。
【0134】
別の実施形態では、上記融合タンパク質の第1の融合パートナーが、アカゲザルB7−H4のIgVドメインを含む。一実施形態では、上記IgVドメインが、少なくとも、配列番号17の56位におけるシステイン〜配列番号17の130位におけるシステインを含む。別の実施形態では、上記IgVドメインが、このアミノ酸範囲により定められるポリペプチドの少なくとも25または50アミノ酸の断片を含有する。
【0135】
上記第1の融合パートナーは、以下の例示的なIgVドメインのアカゲザルアミノ酸配列:
【0136】
【化40】

に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有しうる。
【0137】
別の実施形態では、上記融合タンパク質の第1の融合パートナーが、カニクイザルB7−H4のIgVドメインを含む。一実施形態では、上記IgVドメインが、少なくとも、配列番号19の56位におけるシステイン〜配列番号19の130位におけるシステインを含む。別の実施形態では、上記IgVドメインが、このアミノ酸範囲により定められるポリペプチドの少なくとも25または50アミノ酸の断片を含有する。
【0138】
上記第1の融合パートナーは、以下の例示的なIgVドメインのカニクイザルアミノ酸配列:
【0139】
【化41】

に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有しうる。
【0140】
d.B7−H4細胞外ドメイン断片
B7−H4細胞外ドメインは、B7−H4のシグナルペプチドまたは推定膜貫通ドメインに由来する、1つ以上のアミノ酸を含有しうる。分泌時において、切断される上記シグナルペプチドのアミノ酸数は、発現系および宿主に応じて変化しうる。加えて、C末端またはN末端に由来する1つ以上のアミノ酸を逸失しながら、B7−H4受容体に対する結合能を保持するB7−H4細胞外ドメインの断片も、本開示される融合タンパク質の融合パートナーとして用いることができる。
【0141】
例えば、第1の融合パートナーとして用いうる、適切なマウスB7−H4断片には、
配列番号26もしくは配列番号27の、
32−257、32−256、32−255、32−254、32−253、32−252、32−251、32−250、32−249、
31−257、31−256、31−255、31−254、31−253、31−252、31−251、31−250、31−249、
30−257、30−256、30−255、30−254、30−253、30−252、30−251、30−250、30−249、
29−257、29−256、29−255、29−254、29−253、29−252、29−251、29−250、29−249、
28−257、28−256、28−255、28−254、28−253、28−252、28−251、28−250、28−249、
27−257、27−256、27−255、27−254、27−253、27−252、27−251、27−250、27−249、
26−257、26−256、26−255、26−254、26−253、26−252、26−251、26−250、26−249、
25−257、25−256、25−255、25−254、25−253、25−252、25−251、25−250、25−249、
24−257、24−256、24−255、24−254、24−253、24−252、24−251、24−250、24−249、または
配列番号24もしくは配列番号25の、
24−249、24−248、24−247、24−246、24−245、24−244、24−243、24−242、24−241、
23−249、23−248、23−247、23−246、23−245、23−244、23−243、23−242、23−241、
22−249、22−248、22−247、22−246、22−245、22−244、22−243、22−242、22−241、
21−249、21−248、21−247、21−246、21−245、21−244、21−243、21−242、21−241、
20−249、20−248、20−247、20−246、20−245、20−244、20−243、20−242、20−241、
19−249、19−248、19−247、19−246、19−245、19−244、19−243、19−242、19−241、
18−249、18−248、18−247、18−246、18−245、18−244、18−243、18−242、18−241、
17−249、17−248、17−247、17−246、17−245、17−244、17−243、17−242、17−241、
16−249、16−248、16−247、16−246、16−245、16−244、16−243、16−242、16−241
が含まれるがこれらに限定されない。
【0142】
さらなる適切なマウスB7−H4断片には、
必要に応じて、シグナルペプチドのうちの1〜5アミノ酸をそのN末端に結合させた、
配列番号2または配列番号5の、
28−257、28−258、28−259、28−260、28−261、28−262、28−263、
29−257、29−258、29−259、29−260、29−261、29−262、29−263、
30−257、30−258、30−259、30−260、30−261、30−262、30−263、
31−257、31−258、31−259、31−260、31−261、31−262、31−263、
32−257、32−258、32−259、32−260、32−261、32−262、32−263
が含まれるがこれらに限定されない。上記シグナルペプチドは、配列番号2、3、5、6、9、10、12、13、15、17、および19内に含有されるシグナルペプチドを含め、本明細書で開示される任意のシグナルペプチドの場合もあり、当技術分野において公知である任意のシグナルペプチドの場合もある。
【0143】
さらなる適切なマウスB7−H4断片には、配列番号32または配列番号33に示されるIgVドメインのうちの、少なくとも25、20、75、100、または125アミノ酸を含有する断片が含まれるがこれらに限定されない。
【0144】
例示的な断片には、必要に応じて、シグナルペプチドのうちの1〜5アミノ酸をそのN末端に結合させた、
配列番号24もしくは配列番号25の、
16−144、16−145、16−146、16−147、16−148、16−149、16−150、16−151、16−152、
17−144、17−145、17−146、17−147、17−148、17−149、17−150、17−151、17−152、
18−144、18−145、18−146、18−147、18−148、18−149、18−150、18−151、18−152、
19−144、19−145、19−146、19−147、19−148、19−149、19−150、19−151、19−152、
20−144、20−145、20−146、20−147、20−148、20−149、20−150、20−151、20−152、
21−144、21−145、21−146、21−147、21−148、21−149、21−150、21−151、21−152、
22−144、22−145、22−146、22−147、22−148、22−149、22−150、22−151、22−152、
23−144、23−145、23−146、23−147、23−148、23−149、23−150、23−151、23−152、
24−144、24−145、24−146、24−147、24−148、24−149、24−150、24−151、24−152、または
配列番号26もしくは配列番号27の、
24−152、24−153、24−154、24−155、24−156、24−157、24−158、24−159、24−160、
25−152、25−153、25−154、25−155、25−156、25−157、25−158、25−159、25−160、
26−152、26−153、26−154、26−155、26−156、26−157、26−158、26−159、26−160、
27−152、27−153、27−154、27−155、27−156、27−157、27−158、27−159、27−160、
28−152、28−153、28−154、28−155、28−156、28−157、28−158、28−159、28−160、
29−152、29−153、29−154、29−155、29−156、29−157、29−158、29−159、29−160、
30−152、30−153、30−154、30−155、30−156、30−157、30−158、30−159、30−160、
31−152、31−153、31−154、31−155、31−156、31−157、31−158、31−159、31−160、
32−152、32−153、32−154、32−155、32−156、32−157、32−158、32−159、32−160
が含まれるがこれらに限定されない。上記シグナルペプチドは、配列番号2、3、5、6、9、10、12、13、15、17、および19内に含有されるシグナルペプチドを含め、本明細書で開示される任意のシグナルペプチドの場合もあり、当技術分野において公知である任意のシグナルペプチドの場合もある。
【0145】
第1の融合パートナーとして用いうる、例示的である適切なヒトB7−H4断片には、
配列番号49もしくは配列番号52の、
32−249、32−248、32−247、32−246、32−245、32−244、32−243、32−242、32−241、
31−249、31−248、31−247、31−246、31−245、31−244、31−243、31−242、31−241、
30−249、30−248、30−247、30−246、30−245、30−244、30−243、30−242、30−241、
29−249、29−248、29−247、29−246、29−245、29−244、29−243、29−242、29−241、
28−249、28−248、28−247、28−246、28−245、28−244、28−243、28−242、28−241、
27−249、27−248、27−247、27−246、27−245、27−244、27−243、27−242、27−241、
26−249、26−248、26−247、26−246、26−245、26−244、26−243、26−242、26−241、
25−249、25−248、25−247、25−246、25−245、25−244、25−243、25−242、25−241、
24−249、24−248、24−247、24−246、24−245、24−244、24−243、24−242、24−241、または
配列番号50もしくは配列番号53の、
32−245、32−244、32−243、32−242、32−241、32−240、32−239、32−238、32−237、
31−245、31−244、31−243、31−242、31−241、31−240、31−239、31−238、31−237、
30−245、30−244、30−243、30−242、30−241、30−240、30−239、30−238、30−237、
29−245、29−244、29−243、29−242、29−241、29−240、29−239、29−238、29−237、
28−245、28−244、28−243、28−242、28−241、28−240、28−239、28−238、28−237、
27−245、27−244、27−243、27−242、27−241、27−240、27−239、27−238、27−237、
26−245、26−244、26−243、26−242、26−241、26−240、26−239、26−238、26−237、
25−245、25−244、25−243、25−242、25−241、25−240、25−239、25−238、25−237、
24−245、24−244、24−243、24−242、24−241、24−240、24−239、24−238、24−237、または
配列番号51もしくは配列番号54の、
32−259、32−258、32−257、32−256、32−255、32−254、32−253、32−252、32−251、
31−259、31−258、31−257、31−256、31−255、31−254、31−253、31−252、31−251、
30−259、30−258、30−257、30−256、30−255、30−254、30−253、30−252、30−251、
29−259、29−258、29−257、29−256、29−255、29−254、29−253、29−252、29−251、
28−259、28−258、28−257、28−256、28−255、28−254、28−253、28−252、28−251、
27−259、27−258、27−257、27−256、27−255、27−254、27−253、27−252、27−251、
26−259、26−258、26−257、26−256、26−255、26−254、26−253、26−252、26−251、
25−259、25−258、25−257、25−256、25−255、25−254、25−253、25−252、25−251、
24−259、24−258、24−257、24−256、24−255、24−254、24−253、24−252、24−251、または
配列番号43もしくは配列番号46の、
24−241、24−240、24−239、24−238、24−237、24−236、24−235、24−234、24−233、
23−241、23−240、23−239、23−238、23−237、23−236、23−235、23−234、23−233、
22−241、22−240、22−239、22−238、22−237、22−236、22−235、22−234、22−233、
21−241、21−240、21−239、21−238、21−237、21−236、21−235、21−234、21−233、
20−241、20−240、20−239、20−238、20−237、20−236、20−235、20−234、20−233、
19−241、19−240、19−239、19−238、19−237、19−236、19−235、19−234、19−233、
18−241、18−240、18−239、18−238、18−237、18−236、18−235、18−234、18−233、
17−241、17−240、17−239、17−238、17−237、17−236、17−235、17−234、17−233、
16−241、16−240、16−239、16−238、16−237、16−236、16−235、16−234、16−233、または
配列番号44もしくは配列番号47の、
24−237、24−236、24−235、24−234、24−233、24−232、24−231、24−230、24−229、
23−237、23−236、23−235、23−234、23−233、23−232、23−231、23−230、23−229、
22−237、22−236、22−235、22−234、22−233、22−232、22−231、22−230、22−229、
21−237、21−236、21−235、21−234、21−233、21−232、21−231、21−230、21−229、
20−237、20−236、20−235、20−234、20−233、20−232、20−231、20−230、20−229、
19−237、19−236、19−235、19−234、19−233、19−232、19−231、19−230、19−229、
18−237、18−236、18−235、18−234、18−233、18−232、18−231、18−230、18−229、
17−237、17−236、17−235、17−234、17−233、17−232、17−231、17−230、17−229、
16−237、16−236、16−235、16−234、16−233、16−232、16−231、16−230、16−229、または
配列番号45もしくは配列番号48の、
24−251、24−250、24−249、24−248、24−247、24−246、24−245、24−244、24−243、
23−251、23−250、23−249、23−248、23−247、23−246、23−245、23−244、23−243、
22−251、22−250、22−249、22−248、22−247、22−246、22−245、22−244、22−243、
21−251、21−250、21−249、21−248、21−247、21−246、21−245、21−244、21−243、
20−251、20−250、20−249、20−248、20−247、20−246、20−245、20−244、20−243、
19−251、19−250、19−249、19−248、19−247、19−246、19−245、19−244、19−243、
18−251、18−250、18−249、18−248、18−247、18−246、18−245、18−244、18−243、
17−251、17−250、17−249、17−248、17−247、17−246、17−245、17−244、17−243、
16−251、16−250、16−249、16−248、16−247、16−246、16−245、16−244、16−243
が含まれるがこれらに限定されない。
【0146】
さらなる適切なヒトB7−H4断片には、
必要に応じて、シグナルペプチドのうちの1〜5アミノ酸をそのN末端に結合させた、
配列番号9または配列番号12の、
27−249、27−250、27−251、27−252、27−253、27−254、27−255、27−256、27−257、27−259、27−260、
28−249、28−250、28−251、28−252、28−253、28−254、28−255、28−256、28−257、28−259、28−260、
29−249、29−250、29−251、29−252、29−253、29−254、29−255、29−256、29−257、29−259、29−260、
30−249、30−250、30−251、30−252、30−253、30−254、30−255、30−256、30−257、30−259、30−260、
31−249、31−250、31−251、31−252、31−253、31−254、31−255、31−256、31−257、31−259、31−260、
32−249、32−250、32−251、32−252、32−253、32−254、32−255、32−256、32−257、32−259、32−260
が含まれるがこれらに限定されない。上記シグナルペプチドは、配列番号2、3、5、6、9、10、12、13、15、17、および19内に含有されるシグナルペプチドを含め、本明細書で開示される任意のシグナルペプチドの場合もあり、当技術分野において公知である任意のシグナルペプチドの場合もある。
【0147】
さらなる適切なヒトB7−H4断片には、配列番号63または配列番号64に示されるIgVドメインのうちの、少なくとも25、20、75、100、または125アミノ酸を含有する断片が含まれるがこれらに限定されない。例示的な断片には、必要に応じて、シグナルペプチドのうちの1〜5アミノ酸をそのN末端に結合させた、
配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、もしくは配列番号48のうちのいずれかの、
16−144、16−145、16−146、16−147、16−148、16−149、16−150、16−151、16−152、
17−144、17−145、17−146、17−147、17−148、17−149、17−150、17−151、17−152、
18−144、18−145、18−146、18−147、18−148、18−149、18−150、18−151、18−152、
19−144、19−145、19−146、19−147、19−148、19−149、19−150、19−151、19−152、
20−144、20−145、20−146、20−147、20−148、20−149、20−150、20−151、20−152、
21−144、21−145、21−146、21−147、21−148、21−149、21−150、21−151、21−152、
22−144、22−145、22−146、22−147、22−148、22−149、22−150、22−151、22−152、
23−144、23−145、23−146、23−147、23−148、23−149、23−150、23−151、23−152、
24−144、24−145、24−146、24−147、24−148、24−149、24−150、24−151、24−152
または
配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、もしくは配列番号54のうちのいずれかの、
24−152、24−153、24−154、24−155、24−156、24−157、24−158、24−159、24−160、
25−152、25−153、25−154、25−155、25−156、25−157、25−158、25−159、25−160、
26−152、26−153、26−154、26−155、26−156、26−157、26−158、26−159、26−160、
27−152、27−153、27−154、27−155、27−156、27−157、27−158、27−159、27−160、
28−152、28−153、28−154、28−155、28−156、28−157、28−158、28−159、28−160、
29−152、29−153、29−154、29−155、29−156、29−157、29−158、29−159、29−160、
30−152、30−153、30−154、30−155、30−156、30−157、30−158、30−159、30−160、
31−152、31−153、31−154、31−155、31−156、31−157、31−158、31−159、31−160、
32−152、32−153、32−154、32−155、32−156、32−157、32−158、32−159、32−160
が含まれるがこれらに限定されない。上記シグナルペプチドは、配列番号2、3、5、6、9、10、12、13、15、17、および19内に含有されるシグナルペプチドを含め、本明細書で開示される任意のシグナルペプチドの場合もあり、当技術分野において公知である任意のシグナルペプチドの場合もある。
【0148】
第1の融合パートナーとして用いうる、例示的である適切な非ヒト霊長動物B7−H4断片には、
配列番号71もしくは配列番号77の、
32−249、32−248、32−247、32−246、32−245、32−244、32−243、32−242、32−241、
31−249、31−248、31−247、31−246、31−245、31−244、31−243、31−242、31−241、
30−249、30−248、30−247、30−246、30−245、30−244、30−243、30−242、30−241、
29−249、29−248、29−247、29−246、29−245、29−244、29−243、29−242、29−241、
28−249、28−248、28−247、28−246、28−245、28−244、28−243、28−242、28−241、
27−249、27−248、27−247、27−246、27−245、27−244、27−243、27−242、27−241、
26−249、26−248、26−247、26−246、26−245、26−244、26−243、26−242、26−241、
25−249、25−248、25−247、25−246、25−245、25−244、25−243、25−242、25−241、
24−249、24−248、24−247、24−246、24−245、24−244、24−243、24−242、24−241、または
配列番号72もしくは配列番号78の、
32−245、32−244、32−243、32−242、32−241、32−240、32−239、32−238、32−237、
31−245、31−244、31−243、31−242、31−241、31−240、31−239、31−238、31−237、
30−245、30−244、30−243、30−242、30−241、30−240、30−239、30−238、30−237、
29−245、29−244、29−243、29−242、29−241、29−240、29−239、29−238、29−237、
28−245、28−244、28−243、28−242、28−241、28−240、28−239、28−238、28−237、
27−245、27−244、27−243、27−242、27−241、27−240、27−239、27−238、27−237、
26−245、26−244、26−243、26−242、26−241、26−240、26−239、26−238、26−237、
25−245、25−244、25−243、25−242、25−241、25−240、25−239、25−238、25−237、
24−245、24−244、24−243、24−242、24−241、24−240、24−239、24−238、24−237、または
配列番号73もしくは配列番号79の、
32−259、32−258、32−257、32−256、32−255、32−254、32−253、32−252、32−251、
31−259、31−258、31−257、31−256、31−255、31−254、31−253、31−252、31−251、
30−259、30−258、30−257、30−256、30−255、30−254、30−253、30−252、30−251、
29−259、29−258、29−257、29−256、29−255、29−254、29−253、29−252、29−251、
28−259、28−258、28−257、28−256、28−255、28−254、28−253、28−252、28−251、
27−259、27−258、27−257、27−256、27−255、27−254、27−253、27−252、27−251、
26−259、26−258、26−257、26−256、26−255、26−254、26−253、26−252、26−251、
25−259、25−258、25−257、25−256、25−255、25−254、25−253、25−252、25−251、
24−259、24−258、24−257、24−256、24−255、24−254、24−253、24−252、24−251、または
配列番号65の、
28−245、28−244、28−243、28−242、28−241、28−240、28−239、28−238、28−237、
27−245、27−244、27−243、27−242、27−241、27−240、27−239、27−238、27−237、
26−245、26−244、26−243、26−242、26−241、26−240、26−239、26−238、26−237、
25−245、25−244、25−243、25−242、25−241、25−240、25−239、25−238、25−237、
24−245、24−244、24−243、24−242、24−241、24−240、24−239、24−238、24−237、
23−245、23−244、23−243、23−242、23−241、23−240、23−239、23−238、23−237、
22−245、22−244、22−243、22−242、22−241、22−240、22−239、22−238、22−237、
21−245、21−244、21−243、21−242、21−241、21−240、21−239、21−238、21−237、
20−245、20−244、20−243、20−242、20−241、20−240、20−239、20−238、20−237、または
配列番号66の、
28−241、28−240、28−239、28−238、28−237、28−236、28−235、28−234、28−233、
27−241、27−240、27−239、27−238、27−237、27−236、27−235、27−234、27−233、
26−241、26−240、26−239、26−238、26−237、26−236、26−235、26−234、26−233、
25−241、25−240、25−239、25−238、25−237、25−236、25−235、25−234、25−233、
24−241、24−240、24−239、24−238、24−237、24−236、24−235、24−234、24−233、
23−241、23−240、23−239、23−238、23−237、23−236、23−235、23−234、23−233、
22−241、22−240、22−239、22−238、22−237、22−236、22−235、22−234、22−233、
21−241、21−240、21−239、21−238、21−237、21−236、21−235、21−234、21−233、
20−241、20−240、20−239、20−238、20−237、20−236、20−235、20−234、20−233、または
配列番号67の、
28−255、28−254、28−253、28−252、28−251、28−250、28−249、28−248、28−247、
27−255、27−254、27−253、27−252、27−251、27−250、27−249、27−248、27−247、
26−255、26−254、26−253、26−252、26−251、26−250、26−249、26−248、26−247、
25−255、25−254、25−253、25−252、25−251、25−250、25−249、25−248、25−247、
24−255、24−254、24−253、24−252、24−251、24−250、24−249、24−248、24−247、
23−255、23−254、23−253、23−252、23−251、23−250、23−249、23−248、23−247、
22−255、22−254、22−253、22−252、22−251、22−250、22−249、22−248、22−247、
21−255、21−254、21−253、21−252、21−251、21−250、21−249、21−248、21−247、
20−255、20−254、20−253、20−252、20−251、20−250、20−249、20−248、20−247
が含まれるがこれらに限定されない。
【0149】
さらなる適切な非ヒト霊長動物B7−H4断片には、
必要に応じて、シグナルペプチドのうちの1〜5アミノ酸をそのN末端に結合させた、
配列番号17または配列番号19の、
27−249、27−250、27−251、27−252、27−253、27−254、27−255、27−256、27−257、27−259、27−260、
28−249、28−250、28−251、28−252、28−253、28−254、28−255、28−256、28−257、28−259、28−260、
29−249、29−250、29−251、29−252、29−253、29−254、29−255、29−256、29−257、29−259、29−260、
30−249、30−250、30−251、30−252、30−253、30−254、30−255、30−256、30−257、30−259、30−260、
31−249、31−250、31−251、31−252、31−253、31−254、31−255、31−256、31−257、31−259、31−260、
32−249、32−250、32−251、32−252、32−253、32−254、32−255、32−256、32−257、32−259、32−260
が含まれるがこれらに限定されない。上記シグナルペプチドは、配列番号2、3、5、6、9、10、12、13、15、17、および19内に含有されるシグナルペプチドを含め、本明細書で開示される任意のシグナルペプチドの場合もあり、当技術分野において公知である任意のシグナルペプチドの場合もある。
【0150】
さらなる適切な非ヒト霊長動物B7−H4断片には、
必要に応じて、シグナルペプチドのうちの1〜5アミノ酸をそのN末端に結合させた、
配列番号15の、
23−245、23−246、23−247、23−248、23−249、23−250、23−251、23−252、23−253、23−254、23−255、
24−245、24−246、24−247、24−248、24−249、24−250、24−251、24−252、24−253、24−254、24−255、
25−245、25−246、25−247、25−248、25−249、25−250、25−251、25−252、25−253、25−254、25−255、
26−245、26−246、26−247、26−248、26−249、26−250、26−251、26−252、26−253、26−254、26−255、
27−245、27−246、27−247、27−248、27−249、27−250、27−251、27−252、27−253、27−254、27−255、
28−245、28−246、28−247、28−248、28−249、28−250、28−251、28−252、28−253、28−254、28−255
が含まれるがこれらに限定されない。上記シグナルペプチドは、配列番号2、3、5、6、9、10、12、13、15、17、および19内に含有されるシグナルペプチドを含め、本明細書で開示される任意のシグナルペプチドの場合もあり、当技術分野において公知である任意のシグナルペプチドの場合もある。
【0151】
さらなる適切な非ヒト霊長動物B7−H4断片には、配列番号83、配列番号84、または配列番号85に示されるIgVドメインのうちの、少なくとも25、20、75、100、または125アミノ酸を含有する断片が含まれるがこれらに限定されない。例示的な断片には、必要に応じて、シグナルペプチドのうちの1〜5アミノ酸をそのN末端に結合させた、配列番号65、配列番号66、もしくは配列番号67のうちのいずれかの、
20−148、20−149、20−150、20−151、20−152、20−153、20−154、20−155、20−156、
21−148、21−149、21−150、21−151、21−152、21−153、21−154、21−155、21−156、
22−148、22−149、22−150、22−151、22−152、22−153、22−154、22−155、22−156、
23−148、23−149、23−150、23−151、23−152、23−153、23−154、23−155、23−156、
24−148、24−149、24−150、24−151、24−152、24−153、24−154、24−155、20−156、
25−148、25−149、25−150、25−151、25−152、25−153、25−154、25−155、25−156、
26−148、26−149、26−150、26−151、26−152、26−153、26−154、26−155、26−156、
27−148、27−149、27−150、27−151、27−152、27−153、27−154、27−155、27−156、
28−148、28−149、28−150、28−151、28−152、28−153、28−154、28−155、28−156、または
配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号77、配列番号78、もしくは配列番号79のうちのいずれかの、
24−152、24−153、24−154、24−155、24−156、24−157、24−158、24−159、24−160、
25−152、25−153、25−154、25−155、25−156、25−157、25−158、25−159、25−160、
26−152、26−153、26−154、26−155、26−156、26−157、26−158、26−159、26−160、
27−152、27−153、27−154、27−155、27−156、27−157、27−158、27−159、27−160、
28−152、28−153、28−154、28−155、28−156、28−157、28−158、28−159、28−160、
29−152、29−153、29−154、29−155、29−156、29−157、29−158、29−159、29−160、
30−152、30−153、30−154、30−155、30−156、30−157、30−158、30−159、30−160、
31−152、31−153、31−154、31−155、31−156、31−157、31−158、31−159、31−160、
32−152、32−153、32−154、32−155、32−156、32−157、32−158、32−159、32−160
が含まれるがこれらに限定されない。上記シグナルペプチドは、配列番号2、3、5、6、9、10、12、13、15、17、および19内に含有されるシグナルペプチドを含め、本明細書で開示される任意のシグナルペプチドの場合もあり、当技術分野において公知である任意のシグナルペプチドの場合もある。
【0152】
2.B7−H4ポリペプチド改変体
有用な改変体には、本明細書で説明されるアッセイのうちのいずれかにより示されるような、生物学的活性を増大させるか、またはそのタンパク質の半減期もしくは安定性を増大させる改変体が含まれる。B7−H4の活性を有する、B7−H4ポリペプチドおよびB7−H4断片、またはこれらの融合物を操作して、生物学的活性を増大させることができる。好ましい実施形態では、上記B7−H4ポリペプチドまたはB7−H4融合タンパク質が、免疫細胞、例えば、T細胞に対するその分子の結合を増大させ、上記T細胞に阻害シグナルを伝達する、少なくとも1つのアミノ酸の置換、欠失、または挿入により改変されている。
【0153】
他の好ましい改変体は、他の免疫細胞と対比して、1つのT細胞型に選択的に結合するように操作されたB7−H4ポリペプチドである。例えば、上記B7−H4ポリペプチドを操作して、Treg、Th0細胞、Th1細胞、Th17細胞、またはTh22細胞に優先的に結合させることができる。優先的結合とは、1つの細胞型について、別の細胞型を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%以上上回る結合を指す。
【0154】
B7−H4のさらに他の改変体を操作して、免疫細胞に対する結合性を野生型B7−H4と比べて低減することができる。これらの改変体を、より強力な結合特性を有する改変体と組合わせて用いて、影響が中程度であるように免疫反応を調節することができる。
【0155】
最後に、改変体のB7−H4ポリペプチドを操作して、半減期を野生型と比べて延長することができる。これらの改変体は、酵素的分解に耐性であるように改変することが典型的である。例示的な改変には、酵素的分解に耐性である、改変アミノ酸残基および改変ペプチド結合が含まれる。当技術分野では、これを達成するための各種の修飾が公知である。例えば、B7−H4の膜近傍領域は、例えば、プロテアーゼのプロタンパク質コンベルターゼファミリーのメンバーによるならば、認識および切断される可能性がありうる二塩基性のモチーフである、KRRSモチーフを含む。このモチーフ(KRRS)を除去して、半減期を延長することができる。上記改変体を改変して、受容体に対する親和性が、血清のpHならびにエンドソームのpHにおいて、B7−H4ポリペプチド、B7−H4断片、またはこれらの融合物の半減期に対して及ぼす影響について調整することもできる。
【0156】
B.第2のポリペプチド
上記B7−H4ポリペプチドは、第2のポリペプチドに融合させることができる。上記第2のポリペプチドの存在は、上記B7−H4融合ポリペプチドの可溶性、安定性、親和性、および/または価数を変化させうる。本明細書で用いられる「価数」とは、分子1個当たりで利用可能な結合部位の数を指す。一実施形態では、上記第2のポリペプチドが、異なる供給源または異なるタンパク質に由来するポリペプチドである。
【0157】
一実施形態では、上記第2のポリペプチドが、ヒト免疫グロブリンCγ1鎖のヒンジ領域、C2領域、およびC3領域に対応するか、またはマウス免疫グロブリンCγ2a鎖のヒンジ領域、C2領域、およびC3領域に対応するアミノ酸配列を有することが好ましい、免疫グロブリン重鎖定常領域のうちの1つ以上のドメインを含有する。配列番号88および89は、ヒト免疫グロブリンCγ1のヒンジ領域、C2領域、およびC3領域の例示的な配列を示す。
【0158】
好ましい二量体融合タンパク質では、その二量体は、二量体化した通常のIg重鎖内でジスルフィド結合するCys残基と同じCys残基である、上記Ig重鎖の2つからのヒンジ領域内のシステイン残基が共有結合することから生じる。このようなタンパク質を、B7−H4−Igと称する。
【0159】
一実施形態では、上記免疫グロブリン定常ドメインが、特定の細胞型への結合性を増強するか、バイオアベイラビリティーを増大させるか、またはB7−H4ポリペプチド、B7−H4融合タンパク質、またはこれらの断片の安定性を増大させる、1つ以上のアミノ酸の挿入、欠失、または置換を含有しうる。上記で説明した通り、適切なアミノ酸置換には、保存的置換および非保存的置換が含まれる。
【0160】
別の実施形態では、上記第2のポリペプチドが、それを介してさらなる分子が、上記B7−H4融合タンパク質に結合されうる、コンジュゲーションドメインを有しうる。このような一実施形態では、そのコンジュゲートされる分子が、特定の器官または組織を上記融合タンパク質の標的とすることが可能である。このような別の実施形態では、上記コンジュゲートされる分子が、上記B7−H4融合タンパク質の効果を増強するかまたは増進させることができる別の免疫調節剤である。別の実施形態では、上記コンジュゲートされる分子が、ポリエチレングリコール(PEG)である。
【0161】
上記融合タンパク質のFc部分は、アイソタイプもしくはサブクラスにより異なる場合があり、キメラ体もしくはハイブリッド体とすることが可能であり、かつ/または、例えば、エフェクター機能、半減期の調節、組織への結合可能性を改善し、安定性などの生物物理的な特徴を増強し、生産の効率を改善する(ならびにより廉価とする)ように改変することができる。当技術分野では、開示される融合タンパク質を構築するのに有用な多くの改変、ならびにそれらを行う方法が当該分野で公知であり、例えば、Muellerら、Mol. Immun.、34巻(6号):441〜452頁(1997年); Swannら、Cur. Opin. Immun.、20巻:493〜499頁(2008年);ならびにPresta、Cur. Opin. Immun.、20巻:460〜470頁(2008年)を参照されたい。一部の実施形態では、上記Fc領域が、天然のIgG1 Fc領域、IgG2 Fc領域、またはIgG4 Fc領域である。一部の実施形態では、上記Fc領域が、ハイブリッド体、例えば、IgG2 Fc定常領域/IgG4 Fc定常領域からなるキメラ体である。上記Fc領域に対する改変には、Fcガンマ受容体および補体への結合を防止するようにIgG4を修飾すること;1つ以上のFcガンマ受容体への結合を改善するようにIgG1を改変すること;エフェクター機能を最小化するようにIgG1を改変すること(アミノ酸の変化);IgG1のグリカンを変化させる/取り除くこと(典型的には、発現宿主を変更することによる);ならびにFcRnに対するIgG1のpH依存性結合を変化させることが含まれるがこれらに限定されない。上記Fc領域は、ヒンジ領域の全体を含む場合もあり、全体には満たないヒンジ領域を含む場合もある。
【0162】
非ホジキンリンパ腫またはワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症に対し、リツキシマブ(CD20に対するマウス/ヒトキメラIgG1モノクローナル抗体)で処置された患者における治療結果は、ヒトIgG1のFcドメインに対し固有の親和性を有するFcγ受容体の対立遺伝子改変体を上記個体が発現することと相関した。特に、低親和性の活性化Fc受容体であるCD16A(FcγRIIIA)について、高親和性の対立遺伝子を有する患者は、高い奏効率を示し、非ホジキンリンパ腫の場合には、無増悪生存が改善された。別の実施形態では、上記Fcドメインが、低親和性の阻害性Fc受容体であるCD32B(FcγRIIB)への結合性を低減する、1つ以上のアミノ酸の挿入、欠失、または置換を含有することが可能であり、かつ、低親和性の活性化Fc受容体であるCD16A(FcγRIIIA)に対する野生型の結合レベルを保持するか、またはこれに対する結合性を増強しうる。
【0163】
別の実施形態は、FcRへの結合性が低度であるIgG2−4ハイブリッド体およびIgG4変異体を含み、これにより、その半減期が延長される。代表的なIgG2−4ハイブリッド体およびIgG4変異体は、Angal, S.ら、Molecular Immunology、30巻(1号):105〜108頁(1993年); Mueller, J.ら、Molecular Immonology、34巻(6号):441〜452頁(1997年);ならびにWangらに対する米国特許第6,982,323号において記載されている。一部の実施形態では、上記IgG1ドメインおよび/またはIgG2ドメインが欠失しており、例えば、Angalらは、セリン241がプロリンで置換されたIgG1およびIgG2について記載している。
【0164】
好ましい実施形態では、上記Fcドメインが、CD16Aに対する結合性を増強する、アミノ酸の挿入、欠失、または置換を含有する。当技術分野では、CD16Aに対する結合を増大させ、かつ、CD32Bに対する結合性を低減する、ヒトIgG1のFcドメインにおける多数の置換が公知であり、Stavenhagenら、Cancer Res.、57巻(18号):8882〜90頁(2007年)において記載されている。CD32Bに対する結合性を低減し、かつ/またはCD16Aに対する結合性を増大させる、ヒトIgG1 Fcドメインの例示的な改変体は、F243L置換、R929P置換、Y300L置換、V305I置換、またはP296L置換を含有する。これらのアミノ酸置換は、任意の組合せで、ヒトIgG1 Fcドメイン内に存在しうる。一実施形態では、上記ヒトIgG1 Fcドメインの改変体が、F243L置換、R929P置換、およびY300L置換を含有する。別の実施形態では、ヒトIgG1 Fcドメインの改変体が、F243L置換、R929P置換、Y300L置換、V305I置換、およびP296L置換を含有する。別の実施形態では、N297Q置換によってFcRへの結合性が消失するので、上記ヒトIgG1 Fcドメインの改変体が、この変異を含有する。
C.ペプチドリンカードメインまたはポリペプチドリンカードメイン
本開示されるB7−H4融合タンパク質は、必要に応じて、上記B7−H4ポリペプチドを、第2のポリペプチドから隔てる、ペプチドリンカードメインまたはポリペプチドリンカードメインを含有する。
【0165】
1.抗体のヒンジ領域
一実施形態では、上記リンカードメインが、免疫グロブリンのヒンジ領域を含有する。好ましい実施形態では、上記ヒンジ領域が、ヒト免疫グロブリンに由来する。上記ヒンジが由来しうる、適切なヒト免疫グロブリンには、IgG、IgD、およびIgAが含まれる。好ましい実施形態では、上記ヒンジ領域が、ヒトIgGに由来する。当技術分野では、免疫グロブリンのヒンジ領域ならびに他のドメインのアミノ酸配列が周知である。
【0166】
一実施形態では、B7−H4融合ポリペプチドが、
【0167】
【化42】

に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有する核酸によりコードされる、ヒト免疫グロブリンCγ1鎖のヒンジ領域、C2領域、およびC3領域を含有する。
【0168】
配列番号86によりコードされるヒト免疫グロブリンCγ1鎖のヒンジ領域、C2領域、およびC3領域は、以下のアミノ酸配列:
【0169】
【化43】

を有する。
【0170】
配列番号87によりコードされるヒト免疫グロブリンCγ1鎖のヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域は、以下のアミノ酸配列:
【0171】
【化44】

を有する。
【0172】
上記ヒンジをさらに短縮して、配列番号89のアミノ酸1、2、3、4、5、またはこれらの組合せを除去することができる。一実施形態では、配列番号89のアミノ酸1および2を欠失させる。
【0173】
別の実施形態では、上記B7−H4融合ポリペプチドが、
【0174】
【化45】

に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有する核酸によりコードされる、マウス免疫グロブリンCγ2a鎖のヒンジ領域、C2領域、およびC3領域を含有する。
【0175】
配列番号90によりコードされるマウス免疫グロブリンCγ2a鎖のヒンジ領域、C2領域、およびC3領域は、以下のアミノ酸配列:
【0176】
【化46】

を有する。
【0177】
別の実施形態では、上記リンカードメインが、上記で説明した免疫グロブリンのヒンジ領域を含有し、かつ、1つ以上のさらなる免疫グロブリンドメインをさらに含む。
2.他のペプチド/ポリペプチドリンカードメイン
他の適切なペプチド/ポリペプチドリンカードメインは、天然または非天然のペプチドまたはポリペプチドを含む。ペプチドリンカーの配列は、少なくとも2アミノ酸の長さである。上記ペプチドまたはポリペプチドドメインは、可撓性のペプチドまたはポリペプチドである。本明細書における「可撓性リンカー」とは、ペプチド結合(複数可)によって連結された2つ以上のアミノ酸残基を含有するペプチドまたはポリペプチドであって、上記結合によって連結した2つのポリペプチドにその結合が与える回転自由度が、上記可撓性リンカーが存在しない2つの連結したポリペプチドが有する回転自由度より大きい、ペプチドまたはポリペプチドを指す。このような回転自由度により、可撓性リンカーにより連結した2つ以上の抗原結合部位の各々が、より効率的に標的抗原(複数可)に接近することが可能となる。例示的な可撓性ペプチド/ポリペプチドには、アミノ酸配列Gly−Ser、Gly−Ser−Gly−Ser(配列番号92)、Ala−Ser、Gly−Gly−Gly−Ser(配列番号93)、(Gly−Ser)(配列番号94)、および(Gly−Ser)(配列番号95)が含まれるがこれらに限定されない。当技術分野では、さらなる可撓性ペプチド/ポリペプチド配列が周知である。
D.二量体化ドメイン、多量体化ドメイン、および標的化ドメイン
本明細書で開示される融合タンパク質は、必要に応じて、2つ以上の融合タンパク質を二量体化または多量体化するように機能する、二量体化ドメインまたは多量体化ドメインを含有する。上記融合タンパク質を二量体化または多量体化するように機能するドメインは、上記融合タンパク質の別個のドメインの場合もあり、代替的に、上記融合タンパク質の他のドメイン(B7−H4ポリペプチド、第2のポリペプチド、またはペプチド/ポリペプチドリンカードメイン)のうちの1つの内部に含有される場合もある。
【0178】
1.二量体化ドメイン
「二量体化ドメイン」は、少なくとも2つのアミノ酸残基、または少なくとも2つのペプチドもしくはポリペプチド(アミノ酸配列が同じ場合もあり、アミノ酸配列が異なる場合もある)が会合することにより形成される。上記ペプチドまたはポリペプチドは、共有結合および/または非共有結合による会合(複数可)を介して、互いと相互作用しうる。好ましい二量体化ドメインは、そのパートナーの融合タンパク質におけるシステインと分子間ジスルフィド結合を形成することが可能な、少なくとも1つのシステインを含有する。上記二量体化ドメインは、そのパートナーの融合タンパク質間でジスルフィド結合(複数可)が形成されうるように、1つ以上のシステイン残基を含有しうる。一実施形態では、二量体化ドメインが、1、2、または3〜約10のシステイン残基を含有する。好ましい実施形態では、上記二量体化ドメインが、免疫グロブリンのヒンジ領域である。
【0179】
さらなる例示的な二量体化ドメインは、当技術分野において公知である任意の二量体化ドメインであることが可能であり、これらには、コイルドコイルドメイン;酸性残基のパッチ(acid patch);亜鉛フィンガードメイン;カルシウムハンドドメイン;C1−C対ドメイン;米国特許第5,821,333号に記載される、操作された「ノブ」および/または「隆起」を伴う「インターフェース」ドメイン;ロイシンジッパードメイン(例えば、junおよび/またはfos由来)(米国特許第5,932,448号);SH2(src相同体2)ドメイン;SH3(src相同体3)ドメイン(Vidalら、Biochemistry、43巻、7336〜44頁(2004年));ホスホチロシン結合(PTB)ドメイン(Zhouら、Nature、378巻:584〜592頁(1995年));WWドメイン(Sudol、Prog. Biochys. Mol. Bio.、65巻:113〜132頁(1996年));PDZドメイン(Kimら、Nature、378巻:85〜88頁(1995年); Komauら、Science、269巻:1737〜1740頁(1995年));14−3−3ドメイン;WD40ドメイン(Huら、J Biol Chem.、273巻、33489〜33494頁(1998年));EHドメイン;Limドメイン;イソロイシンジッパードメイン;受容体の二量体対(例えば、インターロイキン8受容体(IL−8R);ならびにLFA−1およびGPIIIb/IIIaなどのインテグリンヘテロ二量体)、またはそれらの二量体化領域(複数可)によるドメイン;二量体のリガンドポリペプチド(例えば、神経増殖因子(NGF)、ニューロトロフィン−3(NT−3)、インターロイキン−8(IL−8)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、VEGF−C、VEGF−D、PDGFのメンバー、および脳由来神経栄養因子(BDNF)(Arakawaら、J. Biol. Chem.、269巻(45号):27833〜27839頁(1994年);ならびにRadziejewskiら、Biochem.、32巻(48号):1350頁(1993年))によるドメインが含まれるがこれらに限定されず、また、その親和性を変化させるこれらのドメインの改変体でもありうる。上記ポリペプチド対は、酵母ツーハイブリッド法によるスクリーニングを含め、当技術分野において公知の方法により同定することができる。酵母ツーハイブリッド法によるスクリーニングは、米国特許第5,283,173号および同第6,562,576号において説明されている。相互作用するドメイン対間の親和性は、Katahiraら、J. Biol. Chem.、277巻、9242〜9246頁(2002年)において記載される方法を含め、当技術分野において公知の方法を用いて決定することができる。代替的に、例えば、WO01/00814において記載される方法を用いて、ペプチド配列のライブラリーを、ヘテロ二量体化についてスクリーニングすることもできる。タンパク質間相互作用に有用な方法はまた、例えば、米国特許第6,790,624号においても記載されている。
【0180】
2.多量体化ドメイン
「多量体化ドメイン」とは、3つ以上のペプチドまたはポリペプチドを、共有結合および/または非共有結合による会合(複数可)を介して互いと相互作用させるドメインである。適切な多量体化ドメインには、コイルドコイルドメインが含まれるがこれに限定されない。コイルドコイルとは、通常、7アミノ酸(ヘプタッドリピート)または11アミノ酸(ウンデカドリピート)の配列内において、3および4残基の間隔を置いた、主に疎水性の残基が連続するパターンを伴うペプチド配列であり、多量体によるヘリックスバンドルを形成するように構築される(フォールドする)。配列が、一部不規則に分布する3および4残基の間隔を含む、コイルドコイルもまた意図される。疎水性残基とは、特に、疎水性アミノ酸のVal、Ile、Leu、Met、Tyr、Phe、およびTrpである。「主に疎水性」とは、上記残基のうちの少なくとも50%が、言及された疎水性アミノ酸から選択されなければならないことを意味する。
【0181】
コイルドコイルドメインは、ラミニンに由来しうる。細胞外腔では、ヘテロ三量体のコイルドコイルタンパク質であるラミニンが、基底膜の形成において重要な役割を果たす。ラミニンの機能に、多機能性のオリゴマー構造が要求されることは、明らかである。コイルドコイルドメインはまた、3本の鎖が連結されるトロンボスポンジン(TSP−1およびTSP−2)または5本鎖の鎖が連結されるトロンボスポンジン(TSP−3、TSP−4、およびTSP−5)に由来する場合もあり、パラレルな5本鎖のコイルドコイル(Malashkevichら、Science、274巻:761〜765頁(1996年))へとフォールドするCOMP(COMPcc)(Guoら、EMBO J.、1998年、17巻:5265〜5272頁)に由来する場合もある。
【0182】
当技術分野では、他のタンパク質に由来するさらなるコイルドコイルドメイン、ならびにポリペプチドの多量体化を媒介する他のドメインが公知であり、本開示される融合タンパク質において用いるのに適している。
【0183】
別の実施形態では、B7−H4ポリペプチド、B7−H4融合タンパク質、またはこれらの断片を、抗体などの第2の多価ポリペプチドに結合させることにより、多量体を形成するように誘導することができる。B7−H4ポリペプチド、B7−H4融合タンパク質、またはこれらの断片を多量体化する目的で用いるのに適する抗体には、IgM抗体、ならびに架橋多価IgG複合体、架橋多価IgA複合体、架橋多価IgD複合体、または架橋多価IgE複合体が含まれるがこれらに限定されない。
【0184】
3.標的化ドメイン
上記B7−H4ポリペプチドおよびB7−H4融合タンパク質は、体内の特定の部位を上記分子の標的とするための標的化ドメインを含有しうる。好ましい標的化ドメインは、炎症領域を上記分子の標的とする。例示的な標的化ドメインは、炎症組織またはIL17、IL−4、IL−6、IL−12、IL−21、IL−22、およびIL−23が含まれるがこれらに限定されない炎症促進性サイトカインに特異的な抗体またはそれらの抗原結合断片である。多発性硬化症などの神経学的障害の場合において、上記標的化ドメインは、CNSを上記分子の標的とする場合もあり、血管内皮(vascular epithelium)のVCAM−1に結合する場合もある。さらなる標的化ドメインは、炎症促進性分子に特異的なペプチドアプタマーでありうる。他の実施形態では、上記B7−H4融合タンパク質が、免疫細胞、例えば、T細胞の表面上に提示されるポリペプチドに特異的な結合パートナーを含みうる。さらに他の実施形態では、上記標的化ドメインが、活性化免疫細胞を特異的に標的とする。標的とするのに好ましい免疫細胞には、Th0細胞、Th1細胞、Th17細胞、およびTh22細胞、IL−1β、TNF−α、TGF−ベータ、IFN−γ、IL−17、IL−6、IL−23、IL−22、IL−21、およびMMPが含まれるがこれらに限定されない炎症性分子を分泌するか、もしくは他の細胞にこれらを分泌させる他の細胞、ならびにTregが含まれる。例えば、Tregの標的化ドメインは、CD25に特異的に結合しうる。
【0185】
別の実施形態では、B7−H4ポリペプチド、その断片、またはその融合体が、移植される器官または組織を上記分子の標的とする標的化ドメインを含有しうる。例えば、標的化ドメインは、移植される器官または組織の種類に特異的な細胞の表面上に提示されるポリペプチドに特異的な抗体、その抗原結合断片、または別の結合パートナーでありうる。
【0186】
E.例示的な融合タンパク質
代表的なマウスB7−H4融合タンパク質は、
【0187】
【化47】

【0188】
【化48】

【0189】
【化49】

に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有する核酸によりコードされる。
【0190】
別の実施形態では、代表的なマウスB7−H4融合タンパク質が、
【0191】
【化50】

【0192】
【化51】

に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有する。
【0193】
シグナル配列を伴わない、配列番号99および配列番号101のマウスB7−H4融合タンパク質のアミノ酸配列は、
【0194】
【化52】

である。
【0195】
シグナル配列を伴わない、配列番号100および配列番号102のマウスB7−H4融合タンパク質のアミノ酸配列は、
【0196】
【化53】

である。
【0197】
代表的なヒトB7−H4融合タンパク質は、
【0198】
【化54】

【0199】
【化55】

【0200】
【化56】

【0201】
【化57】

【0202】
【化58】

【0203】
【化59】

に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有する核酸によりコードされる。
【0204】
別の実施形態では、代表的なヒトB7−H4融合タンパク質が、
【0205】
【化60】

に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有する。
【0206】
別の実施形態では、代表的なヒトB7−H4融合タンパク質が、
【0207】
【化61】

【0208】
【化62】

【0209】
【化63】

【0210】
【化64】

に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有する。
【0211】
シグナル配列を伴わない、配列番号114および配列番号122のヒトB7−H4融合タンパク質のアミノ酸配列は、
【0212】
【化65】

である。
【0213】
シグナル配列を伴わない、配列番号115および配列番号123のヒトB7−H4融合タンパク質のアミノ酸配列は、
【0214】
【化66】

である。
【0215】
シグナル配列を伴わない、配列番号116および配列番号124のヒトB7−H4融合タンパク質のアミノ酸配列は、
【0216】
【化67】

である。
【0217】
シグナル配列を伴わない、配列番号117および配列番号125のヒトB7−H4融合タンパク質のアミノ酸配列は、
【0218】
【化68】

である。
【0219】
シグナル配列を伴わない、配列番号118および配列番号126のヒトB7−H4融合タンパク質のアミノ酸配列は、
【0220】
【化69】

である。
【0221】
シグナル配列を伴わない、配列番号119および配列番号127のヒトB7−H4融合タンパク質のアミノ酸配列は、
【0222】
【化70】

である。
【0223】
シグナル配列を伴わない、配列番号120および配列番号128のヒトB7−H4融合タンパク質のアミノ酸配列は、
【0224】
【化71】

である。
【0225】
シグナル配列を伴わない、配列番号121および配列番号129のヒトB7−H4融合タンパク質のアミノ酸配列は、
【0226】
【化72】

である。
【0227】
上記の例示的な融合タンパク質は、本明細書に記載される改変体の任意の組合せを組み込みうる。別の実施形態では、上記の例示的な融合タンパク質の末端のリシンを欠失させる。
【0228】
本開示される融合タンパク質は、標準的な分子生物学の技法を用いて単離することができる。例えば、B7−H4−Ig融合タンパク質をコードするDNA配列を含有する発現ベクターを、リン酸カルシウム沈殿により293細胞へとトランスフェクトし、無血清DMEM中で培養する。72時間後にその上清を回収し、プロテインGまたは好ましくはプロテインA SEPHAROSE(登録商標)カラム(Pharmacia、Uppsala、Sweden)により、上記融合タンパク質を精製する。
【0229】
F.融合タンパク質の二量体および多量体
B7−H4融合ポリペプチドは、二量体化することもでき、多量体化することもできる。二量体化または多量体化は、上記で説明した二量体化ドメインまたは多量体化ドメインを含め、二量体化ドメインまたは多量体化ドメインを介した2つ以上の融合タンパク質間で生じうる。代替的に、融合タンパク質の二量体化または多量体化は、化学的な架橋形成によっても生じうる。融合タンパク質の二量体は、ホモ二量体の場合もあり、ヘテロ二量体の場合もある。融合タンパク質の多量体は、ホモ多量体の場合もあり、ヘテロ多量体の場合もある。
【0230】
本明細書で開示される融合タンパク質の二量体は、式II:
N−R−R−R−C
N−R−R−R−C
または、代替的に、式III:
N−R−R−R−C
C−R−R−R−N
の二量体である[式中、式IIにより示される二量体の融合タンパク質を、パラレルな配向性にあると定義し、式IIIにより示される二量体の融合タンパク質を、アンチパラレルな配向性にあると定義する。また、パラレルな二量体およびアンチパラレルな二量体を、それぞれ、シス二量体およびトランス二量体とも称する。「N」および「C」は、それぞれ、上記融合タンパク質のN末端およびC末端を表わす。融合タンパク質の構成要素である「R」、「R」、および「R」は、式Iに関して上記で定義された通りである。式IIおよび式IIIの両方に関して、「R」は、B7−H4ポリペプチドまたは第2のポリペプチドであり、「R」は、任意選択のペプチド/ポリペプチドリンカードメインであり、「R」は、B7−H4ポリペプチドまたは第2のポリペプチドであり、ここで、「R」が第2のポリペプチドである場合は、「R」がB7−H4ポリペプチドであり、「R」がB7−H4ポリペプチドである場合は、「R」が第2のポリペプチドである。一実施形態では、「R」がB7−H4ポリペプチドであり、「R」もまたB7−H4ポリペプチドであり、「R」および「R」のいずれもが第2のポリペプチドである]。
【0231】
「R」=「R」、「R」=「R」、ならびに「R」=「R」であるときの式IIの融合タンパク質二量体を、ホモ二量体と定義する。同様に、「R」=「R」、「R」=「R」、ならびに「R」=「R」であるときの式IIIの融合タンパク質二量体を、ホモ二量体と定義する。任意の理由でこれらの条件が満たされないときの融合タンパク質二量体を、ヘテロ二量体と定義する。例えば、ヘテロ二量体は、これらの条件を満たすドメイン配向性を含有しうる(すなわち、式IIによる二量体では、「R」および「R」が両方ともB7−H4ポリペプチドであり、「R」および「R」が両方ともペプチド/ポリペプチドリンカー(liker)ドメインであり、「R」および「R」が両方とも第2のポリペプチドである)が、これらのドメインのうちの1つ以上の種が同一ではない。例えば、「R」および「R」のいずれもがB7−H4ポリペプチドでありうるが、一方のポリペプチドは野生型のB7−H4アミノ酸配列を含有しうるのに対し、他方のポリペプチドは改変体のB7−H4ポリペプチドでありうる。例示的な改変体のB7−H4ポリペプチドは、標的細胞に対する結合性が増大または減少し、免疫細胞に対する活性が増大し、半減期が延長または短縮されるか、または安定性が増大または減少するように修飾したB7−H4ポリペプチドである。免疫グロブリンのC1領域またはC領域を、ポリペプチドリンカードメインの一部として含有する融合タンパク質の二量体は、その二量体の一方の融合タンパク質がC1領域を含有し、その二量体の他方の融合タンパク質がC領域を含有する、ヘテロ二量体を形成することが好ましい。
【0232】
また、融合タンパク質を用いて、多量体を形成することもできる。二量体と同様に、多量体も、上記多量体うちのすべての融合タンパク質が、それらのN末端およびC末端に関して同じ配向性で整列する、パラレルな多量体でありうる。多量体は、上記多量体うちの融合タンパク質が、代替的に、それらのN末端およびC末端に関して反対の配向性で整列する、アンチパラレルな多量体でもありうる。多量体(パラレルな多量体またはアンチパラレルな多量体)は、ホモ多量体の場合もあり、ヘテロ多量体の場合もある。
【0233】
G.ペプチドおよびポリペプチドの修飾
上記融合タンパク質は、通常の細胞環境においてポリペプチドに存在しうる化学的部分により、例えば、リン酸化、メチル化、アミド化、硫酸化、アシル化、グリコシル化、SUMO化、およびユビキチン化により修飾することができる。融合タンパク質はまた、放射性同位体および蛍光化合物が含まれるがこれらに限定されない、検出可能なシグナルを直接的または間接的に与えることが可能な標識により修飾することもできる。
【0234】
融合タンパク質はまた、細胞環境においては通常ポリペプチドに付加されない化学的部分によっても修飾することができる。例えば、本開示される融合タンパク質はまた、ポリエチレングリコールポリマー(PEG)鎖が含まれるがこれらに限定されないポリマー鎖を共有結合させること(すなわち、PEG化)が含まれるがこれらに限定されないポリマー鎖の共有結合によっても修飾することができる。PEGへの高分子のコンジュゲーションは、近年、各種の薬物の薬物動態(PK)プロファイルを変化させ、これにより、それらの治療剤としての能力を改善するのに有効な戦略として行われている。PEGコンジュゲーションは、酵素による消化に対して保護し、腎臓による濾過を遅延させ、かつ、中和抗体の生成を低減することにより、その循環における薬物の貯留を増大させる。加えて、PEGコンジュゲーションはまた、上記融合タンパク質の多量体化を可能とするためにも用いることができる。
【0235】
上記ポリペプチドのうちで標的とされるアミノ酸残基を、選択された側鎖または末端残基と反応することが可能な有機誘導剤と反応させることにより、分子内に修飾を導入することができる。別の修飾は、上記タンパク質の環化である。
【0236】
上記ポリペプチドの化学的誘導体の例には、コハク酸無水物または他のカルボン酸無水物で誘導体化されたリシニル残基およびアミノ末端残基が含まれる。環状カルボン酸無水物(carboxylic anhydride)による誘導体化には、上記リシニル残基の電荷を逆転させる効果がある。アミノ含有残基を誘導体化するのに適する他の試薬には、メチルピコリンイミデートなどのイミドエステル;ピリドキサールリン酸;ピリドキサール;クロロボロヒドリド;トリニトロベンゼンスルホン酸;O−メチルイソウレア;2,4ペンタンジオン;ならびにグリオキシル酸塩とのトランスアミナーゼ触媒反応物が含まれる。カルボキシル側鎖基であるアスパルチルまたはグルタミルは、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−(4−エチル)カルボジイミドまたは1−エチル−3−(4−アゾニア−4,4−ジメチルペンチル)カルボジイミドなどのカルボジイミド(R−N=C=N−R’)との反応により選択的に修飾することができる。さらに、アスパルチル残基およびグルタミル残基は、アンモニアとの反応により、アスパラギニル残基およびグルタミニル残基へと転換することもできる。融合タンパク質はまた、1つ以上のL−アミノ酸を置換する、1つ以上のD−アミノ酸も含みうる。
【0237】
H.結合特性の修飾
B7−H4ポリペプチド、それらの断片、ならびにそれらの融合物(集合的に、B7−H4ポリペプチドと称する)の結合特性は、投与される用量および投与レジメンに関連する。一実施形態では、本開示されるB7−H4ポリペプチドが、免疫細胞の受容体分子の他のリガンドと比べ、上記受容体分子をより長期にわたり、またはより高い百分率で占有することを証明する結合特性を、T細胞上の少なくとも1つの受容体に対して有する。他の実施形態では、本開示されるB7−H4ポリペプチドが示すT細胞上の受容体に対する結合親和性が、野生型のB7−H4と比べて低く、上記タンパク質が、投与後3カ月、2カ月、1カ月、3週間、2週間、1週間、または数日間未満の期間で解離することを可能とする。
【0238】
一部の実施形態では、上記B7−H4ポリペプチド、もしくはそれらの断片、またはそれらの融合物の、その受容体に対する親和性が比較的高く、したがって、解離速度が比較的遅い。他の実施形態では、上記B7−H4ポリペプチドを、数日間、数週間、または数カ月の期間にわたり間欠的に投与し、次回の投与前の回復を可能とする程度に免疫反応を弱めるが、これを用いて、免疫反応を完全に止めることなしに免疫反応を軽減することができ、かつ、長期間にわたる副作用を回避することができる。
【0239】
III.単離核酸分子
本明細書では、B7−H4ポリペプチド、それらの断片、ならびにそれらの融合物をコードする単離核酸配列が開示される。本明細書で用いられる「単離核酸」とは、哺乳動物のゲノム内に存在する他の核酸分子から分離される核酸を指し、これには、通常、哺乳動物ゲノム内の上記核酸の片側または両側に隣接する核酸(例えば、B7−H4以外のタンパク質をコードする核酸)が含まれる。任意の非天然核酸配列は、天然では見出されず、天然のゲノム内では直接隣接する配列を有さないので、核酸に関して本明細書で用いられる「単離」という用語はまた、このような非天然核酸配列との組合せも包含する。
【0240】
単離核酸は、例えば、天然のゲノム内において、通常、あるDNA分子に直接隣接して見出される核酸配列のうちの1つが除去されるかまたは存在しないと仮定した場合のDNA分子でありうる。したがって、限定なしに述べると、単離核酸には、他の配列とは独立した個別の分子(例えば、化学的に合成された核酸、またはPCRもしくは制限エンドヌクレアーゼ処理により作製されたcDNAもしくはゲノムDNA断片)の他、自律複製プラスミド、ウイルス(例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、またはヘルペスウイルス)であるベクター内、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNA内に組み込まれた組換えDNAとして存在するDNA分子が含まれる。加えて、単離核酸には、ハイブリッド核酸または融合核酸の一部である組換えDNA分子など、操作された核酸も含まれうる。例えば、cDNAライブラリーもしくはゲノムライブラリー、またはゲノムDNAの制限酵素消化物を含有するゲルスライス内の数百〜数百万の他の核酸中に存在する核酸は、単離核酸と考えるべきでない。
【0241】
B7−H4融合ポリペプチドをコードする核酸は、好まれる発現宿主における発現について最適化することができる。コドンは、B7−H4核酸配列が由来する哺乳動物と上記発現宿主の間でのコドン使用の違いを考慮して、同じアミノ酸をコードする代替のコドンで置換することができる。このようにして、発現宿主に好ましいコドンを用いて、核酸を合成することができる。
【0242】
核酸は、センス配向性の場合もあり、アンチセンス配向性の場合もあり、B7−H4ポリペプチドをコードする基準配列に相補的な場合もある。核酸は、DNAの場合もあり、RNAの場合もあり、核酸類似体の場合もある。核酸類似体は、塩基部分で修飾される場合もあり、糖部分で修飾される場合もあり、リン酸塩骨格で修飾される場合もある。このような修飾は、例えば、上記核酸の安定性、ハイブリダイゼーション、または可溶性を改善しうる。上記塩基部分における修飾には、デオキシチミジンに対するデオキシウリジン、ならびにデオキシシチジンに対する5−メチル−2’−デオキシシチジンまたは5−ブロモ−2’−デオキシシチジンが含まれうる。上記糖部分に対する修飾には、2’−O−メチル糖または2’−O−アリル糖を形成する、リボース糖の2’ヒドロキシルに対する修飾が含まれうる。リン酸デオキシリボース骨格を修飾して、各塩基部分がモルホリノ6員環に連結されるモルホリノ核酸、またはデオキシリン酸塩骨格が偽ペプチド骨格で置換されるが4つの塩基は保持されるペプチド核酸を作製することができる。例えば、SummertonおよびWeller(1997年)、Antisense Nucleic Acid Drug Dev.、7巻:187〜195頁;ならびにHyrupら(1996年)、Bioorgan. Med. Chem.、4巻:5〜23頁を参照されたい。加えて、上記デオキシリン酸塩骨格を、例えば、ホスホロチオエート骨格もしくはホスホロジチオエート骨格、ホスホルアミダイト(phosphoroamidite)骨格、またはアルキルホスホトリエステル骨格で置換することもできる。
【0243】
ポリペプチドをコードする核酸は、それらを必要とする被験体に投与することができる。核酸の送達は、細胞内に「外来」核酸を導入すること、ならびに、最終的には、生きた動物に「外来」核酸を導入することを伴う。当技術分野では、被験体に核酸を送達するための組成物および方法が公知である(「Understanding Gene Therapy」、Lemoine, N.R.編、BIOS Scientific Publishers、Oxford、2008年を参照されたい)。
【0244】
IV.ベクターおよび宿主細胞
B7−H4ポリペプチド、それらの断片、ならびにそれらの融合物をコードするベクターもまた提供される。上記で説明した核酸などの核酸は、ベクターへと挿入して、細胞内で発現させることができる。本明細書で用いられる「ベクター」とは、挿入されたセグメントの複製をもたらすように、その中に別のDNAセグメントを挿入しうる、プラスミド、ファージ、ウイルスまたはコスミドなどのレプリコンである。ベクターは、発現ベクターでありうる。「発現ベクター」とは、1つ以上の発現調節配列を含むベクターであり、「発現調節配列」とは、別のDNA配列の転写および/または翻訳を調節するかつ制御するDNA配列である。
【0245】
ベクター内の核酸は、1つ以上の発現調節配列に作動可能に連結されうる。本明細書で用いられる「作動可能に連結される」とは、発現調節配列が、対象のコード配列の発現を効果的に調節するように、遺伝子構築物内に組み込まれることを意味する。発現調節配列の例には、プロモーター、エンハンサー、および転写終結領域が含まれる。プロモーターとは、転写が開始される地点(一般には、RNAポリメラーゼIIの開始部位近傍)の100ヌクレオチド以内上流であることが典型的なDNA分子の領域からなる。コード配列をプロモーターの調節下に置くには、上記ポリペプチドの翻訳リーディングフレームの翻訳開始部位を、上記プロモーターの1〜約50ヌクレオチド下流に配置することが必要である。エンハンサーは、時間、位置、およびレベルに関して発現特異性をもたらす。プロモーターとは異なり、エンハンサーは、転写部位から種々の距離に配置されても機能しうる。エンハンサーはまた、転写開始部位の下流に配置することもできる。RNAポリメラーゼがコード配列をmRNAへと転写することが可能であり、次いで、mRNAを、そのコード配列によりコードされるタンパク質へと翻訳しうる場合、このコード配列は、「作動可能に連結されて」おり、細胞内の発現調節配列の「調節下」にある。
【0246】
限定なしに述べると、適切な発現ベクターには、例えば、バクテリオファージ、バキュロウイルス、タバコモザイクウイルス、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスに由来するプラスミドおよびウイルスベクターが含まれる。Novagen(Madison、WI)、Clontech(Palo Alto、CA)、Stratagene(La Jolla、CA)、およびInvitrogen Life Technologies(Carlsbad CA)などの企業から、多数のベクターおよび発現系が市販されている。
【0247】
発現ベクターは、タグ配列を含みうる。タグ配列は、コードされるポリペプチドとの融合物として発現させることが典型的である。このようなタグは、カルボキシル末端またはアミノ末端を含めた、上記ポリペプチド内の任意の部位に挿入することができる。有用なタグの例には、緑色蛍光タンパク質(GFP)、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、ポリヒスチジン、c−myc、ヘマグルチニン、Flag(商標)タグ(Kodak、New Haven、CT)、マルトースE結合タンパク質、およびプロテインAが含まれるがこれらに限定されない。一実施形態では、B7−H4融合ポリペプチドをコードする核酸分子が、好ましくは、ヒト免疫グロブリンCγ1鎖のヒンジ領域、C2領域、およびC3領域に対応するアミノ酸配列を有するIg重鎖定常領域のうちの1つ以上のドメインをコードする核酸を含有するベクター内に存在する。
【0248】
発現させる核酸を含有するベクターは、宿主細胞内に移入することができる。「宿主細胞」という用語は、その中に組換え発現ベクターを導入しうる、原核生物細胞および真核生物細胞を含むことを意図する。本明細書で用いられる「形質転換」および「トランスフェクト」とは、多数の技法のうちの1つにより、核酸分子(例えば、ベクター)を細胞内に導入することを包含する。特定の技法に限定されないが、当技術分野では、これらの技法のうちの多くが十分に確立されている。例えば、電気穿孔法または塩化カルシウムを介する形質転換により、原核生物細胞を核酸で形質転換することができる。例えば、リン酸カルシウム共沈殿、DEAEデキストランを介するトランスフェクション、リポフェクション、電気穿孔法、またはマイクロインジェクションを含めた技法により、核酸を哺乳動物細胞へとトランスフェクトすることができる。例えば、本明細書に記載されるB7−H4融合ポリペプチドを作製するには、宿主細胞(例えば、原核生物細胞、またはCHO細胞などの真核生物細胞)を用いることができる。
【0249】
記載したベクターを用いて、細胞内、例えば、膵島細胞など、移植される細胞内でB7−H4を発現させることができる。例示的なベクターには、アデノウイルスベクターが含まれるがこれに限定されない。1つの手法は、培養物中の初代細胞内に核酸を導入した後、これらのex vivoで形質転換された細胞を、宿主の全身に、または宿主の特定の器官もしくは組織内に自家移植することを含む。ex vivo法は、例えば、被験体から細胞を採取する工程と、その細胞を培養する工程と、その細胞に発現ベクターを形質導入する工程と、コードされるポリペプチドの発現に適する条件下に細胞を維持する工程とを含みうる。分子生物学の技術分野では、これらの方法が公知である。例えば、リン酸カルシウムによる遺伝子移入、リポフェクションによる遺伝子移入、電気穿孔法による遺伝子移入、ウイルス感染による遺伝子移入、ならびに遺伝子銃による遺伝子移入を含めた、ex vivoにおける遺伝子治療に用いられる任意の標準的な手段により、上記形質導入工程を達成することができる。代替的に、リポソームまたはポリマー製マイクロ粒子を用いることもできる。次いで、形質導入に成功した細胞は、例えば、コード配列の発現、または薬剤耐性遺伝子の発現について選択することができる。次いで、上記細胞を致死線量で放射線照射し(所望の場合)、被験体内に注射するかまたは植え込むことができる。一実施形態では、融合タンパク質をコードする核酸を含有する発現ベクターを、それを必要とする被験体へと投与される細胞内にトランスフェクトする。
【0250】
in vivoにおける核酸療法は、機能的に活性なDNAを、in vivoにおいて、哺乳動物の体細胞組織または器官へと直接移入することにより達成することができる。例えば、本明細書で開示されるポリペプチドをコードする核酸は、リンパ系組織または腫瘍へと直接投与することができる。代替的に、Bリンパ球特異的転写制御エレメント(TRE)、Tリンパ球特異的TRE、または樹状細胞特異的TREなどのリンパ系組織特異的TREを用いて、リンパ系組織特異的な標的化を達成することもできる。当技術分野では、リンパ組織特異的TREが公知である。
【0251】
核酸はまた、ウイルス性の手段によって、in vivoで投与することもできる。融合タンパク質をコードする核酸分子は、当技術分野において周知の、複製欠損レトロウイルスを生成させるパッケージング細胞系を用いて、レトロウイルスベクターへとパッケージングすることができる。また、非複製性とされうる、組換えアデノウイルスおよび組換えワクシニアウイルスを含めた他のウイルスベクターも用いることができる。裸のDNAもしくは裸のRNA、またはウイルスベクターに加えて、操作された細菌も、ベクターとして用いることができる。
【0252】
核酸はまた、リポソーム、ポリマー製マイクロ粒子およびポリマー製ナノ粒子、ならびにアシアロ糖タンパク質/ポリリシンなどのポリカチオンを含めた他のキャリアにより送達することもできる。
【0253】
in vivoにおける、ウイルス媒介の遺伝子移入、ならびにキャリア媒介の遺伝子移入に加えて、プラスミドDNAの投与ならびに粒子ボンバードメント媒介の遺伝子移入を含め、当技術分野において周知の物理的手段も、DNAの直接的導入に用いることができる。
【0254】
V.薬学的組成物
本明細書で開示される融合ポリペプチドを含む薬学的組成物が提供される。ペプチドまたはポリペプチドを含有する薬学的組成物は、非経口投与経路(筋肉内注射、腹腔内注射、静脈内(IV)注射、または皮下注射)、経皮投与経路(受動的に、またはイオン導入法もしくは電気穿孔法を用いる)、または経粘膜投与経路(鼻腔内投与経路、膣内投与経路、直腸内投与経路、または舌下投与経路)により投与することもでき、生体崩壊性挿入物を用いて投与することもでき、かつ、各投与経路に適切な剤形で処方することができる。
【0255】
in vivoにおける一部の手法では、本明細書で開示される組成物を、治療有効量で被験体に投与する。本明細書で用いられる「有効量」または「治療有効量」という用語は、処置される障害の1つ以上の症状を処置、阻害、もしくは緩和するか、または他の方法で所望の薬理学的効果および/または生理学的効果をもたらすのに十分な投与量を意味する。正確な投与量は、被験体に依存する変数(例えば、年齢、免疫系の健康など)、疾患、ならびに行われる処置など、種々の因子により異なる。
【0256】
本明細書で開示されるポリペプチド組成物、ならびに上記ポリペプチドをコードする核酸については、さらなる研究が行われるにつれて、種々の患者における種々の状態を処置するのに適切な投与量のレベルについての情報が明らかになり、当業者は、レシピエントの治療的状況、年齢、ならびに全般的な健康を考慮して、適正な投薬について確実にすることができる。選択される投与量は、所望の治療効果、投与経路、ならびに所望の処置期間に依存する。一般に、哺乳動物には、毎日体重1kg当たり0.001mg〜10mgのレベルの投与量を投与する。一般に、静脈内注射または静脈内注入の場合、投与量は低量でありうる。
【0257】
ある特定の実施形態では、例えば、処置される部位に直接注射することにより、上記ポリペプチド組成物を局所に投与する。その注射は、全身投与により達成されうるものより高い上記ポリペプチド組成物の局所濃度の増加をもたらすことが典型的である。臓器移植の場合は、そのタンパク質を移植された臓器近傍の部位へと局所投与することができる。上記ポリペプチド組成物を、上記で説明したマトリックスと組み合わせて、処置される部位の外部への上記ポリペプチドの受動拡散を低減することにより、そのポリペプチド組成物の局所濃度の増大を補助することができる。
【0258】
1.非経口投与のための製剤
好ましい実施形態では、ペプチドおよびポリペプチドを含有する組成物を含めた、本明細書で開示される組成物を、水溶液中で非経口注射により投与する。製剤はまた、懸濁液またはエマルジョンの形態でもありうる。一般に、薬学的組成物は、有効量のペプチドまたはポリペプチドを含めて提供され、必要に応じて、薬学的に許容される希釈剤、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント、および/またはキャリアを含む。このような組成物は、希釈剤、滅菌水、各種の緩衝剤内容物(例えば、トリス−HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pH、およびイオン強度による緩衝食塩液;必要に応じて、洗浄剤および可溶化剤(例えば、TWEEN 20、TWEEN 80、ポリソルベート−20またはポリソルベート−80とも呼ばれる))、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、ならびに防腐剤(例えば、Thimersol、ベンジルアルコール)および増量剤(例えば、ラクトース、マンニトール)などの添加剤を含む。非水性溶媒または非水性ビヒクルの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油およびトウモロコシ油などの植物油、ゼラチン、ならびにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。上記製剤は、凍結乾燥させ、かつ、使用直前に再溶解/再懸濁させることができる。上記製剤は、例えば、細菌保持(bacteria retaining)フィルターを介する濾過により、滅菌剤を組成物中に組み込むことにより、上記組成物に照射することにより、または組成物を加熱することにより滅菌することができる。
【0259】
2.局所投与のための製剤
本明細書で開示される融合タンパク質は、局所適用することができる。局所投与は、とりわけ、肺粘膜、鼻腔粘膜、口腔(舌下、頬)粘膜、膣粘膜、または直腸粘膜に適用される場合に有効でありうるが、大半のペプチド製剤については良好に作用しない。
【0260】
組成物を吸入しながら肺へと送達することができ、空気動力学的直径が約5ミクロン未満である、エアゾールまたは噴霧乾燥粒子として送達される場合、肺上皮層に浸透して血流へと達しうる。
【0261】
それらのすべてが当業者にはよく知られている、噴霧器、定量吸入器、および粉末吸入器が含まれるがこれらに限定されない、治療用生成物を肺送達するためにデザインされた広範にわたる機械的デバイスを用いることができる。市販されるデバイスの一部の具体例は、Ultravent噴霧器(Mallinckrodt Inc.、St.Louis、Mo.);Acorn II噴霧器(Marquest Medical Products、Englewood、Colo.);Ventolin定量吸入器(Glaxo Inc.、Research Triangle Park、N.C.);およびSpinhaler粉末吸入器(Fisons Corp.、Bedford、Mass.)である。Nektar、Alkermes、およびMannkindはいずれも、吸入用インスリン粉末調製物の承認を受けているか、またはそれらを臨床試験中であり、これらの技術は、本明細書に記載される製剤に適用されうる。
【0262】
上記粘膜に投与するための製剤は、噴霧乾燥薬物粒子であることが典型的ではあるが、錠剤、ゲル、カプセル、懸濁液、またはエマルジョンに組み込むこともできる。標準的な薬学的賦形剤が任意の処方者(formulator)から入手可能である。経口製剤は、チューインガム、ゲルストリップ、錠剤、またはロゼンジの形態でありうる。
【0263】
経皮製剤もまた、調製しうる。これらは、軟膏、ローション、スプレー、またはパッチであることが典型的であり、それらのすべては、標準的な技法を用いて調製することができる。経皮製剤は、浸透増強剤の含有が求められる。
【0264】
3.制御送達用ポリマーマトリックス
本明細書で開示される融合タンパク質はまた、放出制御製剤で投与することもできる。放出制御用ポリマーデバイスは、ポリマーデバイスの植込み(ロッド、シリンダー、フィルム、ディスク)後または注射(マイクロ粒子)後の長期間にわたり、全身に放出されるように作製することができる。マトリックスは、マイクロスフェアなどのマイクロ粒子の形態であることが可能であり、この場合、固体のポリマー製マトリックス中またはマイクロカプセル内にペプチドを分散させるが、そこでは、コアがポリマー殻とは異なる材料であり、その性状が液体の場合もあり固体の場合もあるこのコア内に上記ペプチドを分散または懸濁させる。本明細書で別段に定義しない限り、マイクロ粒子、マイクロスフェア、およびマイクロカプセルは、互換的に用いられる。代替的に、上記ポリマーは、数ナノメートル〜4センチメートルの薄型のスラブまたはフィルムとして成形することもでき、粉砕または他の標準的な技法により作製される粉末の場合もあり、ハイドロゲルなどのゲルの場合さえもある。
【0265】
融合ポリペプチドまたはその融合ポリペプチドをコードする核酸を送達するには、非生体分解性マトリックスを用いることもでき、生体分解性マトリックスを用いることもできるが、生体分解性マトリックスが好ましい。生体分解性マトリックスは、天然ポリマーの場合もあり、合成ポリマーの場合もあるが、分解プロファイルおよび放出プロファイルの特徴がより良好であるため、合成ポリマーが好ましい。上記ポリマーは、放出が所望される期間に基づいて選択される。いくつかの場合には、直線的放出が最も有用でありうるが、他の場合には、パルス放出または「バルク放出」がより有効な結果をもたらしうる。上記ポリマーは、ハイドロゲルの形態であることが可能であり(水の重量で約90%まで吸収することが典型的である)、必要に応じて、多価イオンまたはポリマーで架橋することができる。
【0266】
上記マトリックスは、溶媒を蒸発させることにより、噴霧乾燥させることにより、溶媒で抽出することにより、かつ、当業者に公知の他の方法より形成することができる。例えば、MathiowitzおよびLanger、J. Controlled Release、5巻:13〜22頁(1987年); Mathiowitzら、Reactive Polymers、6巻:275〜283頁(1987年);ならびにMathiowitzら、J. Appl. Polymer Sci.、35巻:755〜774頁(1988年)により記載される通り、薬物送達のためのマイクロスフェアを作製するために開発された方法のうちのいずれかを用いて、生体崩壊性マイクロスフェアを調製することができる。
【0267】
上記デバイスは、植込み領域または注射領域を処置する局所放出用(これらは、全身を処置するための投与量よりはるかに少ない投与量を送達することが典型的である)に処方することもでき、全身送達用に処方することもできる。これらは、皮下に植え込むかまたは注射することもでき、筋肉内、脂肪内に植え込むかまたは注射することもでき、嚥下させることもできる。
【0268】
別の実施形態では、B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体を、マトリックス内に封入された移植細胞と共に投与して、移植領域内において、ある期間にわたり、B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体の放出を可能とする。マトリックスは、細胞の封入に適する任意のポリマーを用いて作製されるポリマーマトリックスでありうる。細胞を封入するのに適する例示的なポリマー材料には、アルギナート、アガロース、ヒアルロン酸、コラーゲン、合成単量体、アルブミン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、デキストラン、硫酸デキストラン、硫酸コンドロイチン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、キチン、キトサン、ヘパラン、硫酸ヘパラン、またはこれらの組合せが含まれるがこれらに限定されない。例えば、糖尿病を処置するには、B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体を、膵島細胞と共にポリマーマトリックス内に封入することができる。膵島細胞の封入については、例えば、Barnettら、Nature Medicine、13巻(8号):986〜91頁(2007年)において説明されている。
【0269】
VI.製造方法
A.融合タンパク質を作製するための方法
単離融合タンパク質は、例えば、化学合成により得ることもでき、宿主細胞における組換えによる産生によって得ることもできる。組換えにより融合タンパク質を生産するためには、上記融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含有する核酸を用いて、細菌宿主細胞または真核生物宿主細胞(例えば、昆虫細胞、酵母細胞、または哺乳動物細胞)を形質転換することもでき、これに形質導入することもでき、これにトランスフェクトすることもできる。一般に、核酸構築物は、上記融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された制御配列を含む。制御配列(本明細書ではまた、発現調節配列とも称する)は、遺伝子産物をコードしないが、代わりに、それらが作動可能に連結された核酸配列の発現に影響を及ぼすことが典型的である。
【0270】
当技術分野では、ポリペプチドを発現させ、かつ産生させるのに有用な原核生物細胞系および真核生物細胞系が周知であり、これらには、例えば、BL−21株などのEscherichia coli菌株、ならびにCHO細胞などの培養哺乳動物細胞が含まれる。
【0271】
真核生物宿主細胞では、多数のウイルスベースの発現系を用いて、融合タンパク質を発現させることができる。当技術分野では、ウイルスベースの発現系が周知であり、これらには、バキュロウイルスベクター、SV40ベクター、レトロウイルスベクター、またはワクシニアベースのウイルスベクターが含まれるがこれらに限定されない。
【0272】
適切な調節エレメントおよび選択マーカーを伴う発現ベクターを用いて、改変体の融合タンパク質を安定的に発現する哺乳動物細胞系を作製することができる。例えば、真核生物発現ベクターであるpCR3.1(Invitrogen Life Technologies)およびp91023(B)(Wongら(1985年)、Science、228巻:810〜815頁を参照されたい)は、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS−1細胞、ヒト胚性腎臓293細胞、NIH3T3細胞、BHK21細胞、MDCK細胞、およびヒト血管内皮細胞(HUVEC)における改変体共刺激ポリペプチドの発現に適する。さらなる適切な発現系には、Lonza Group Ltd.を介して入手可能なGS Gene Expression System(商標)が含まれる。
【0273】
電気穿孔法、リポフェクション、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウムによる共沈殿、DEAEデキストラン、または他の適切なトランスフェクション法により発現ベクターを導入した後、安定的な細胞系を選択することができる(例えば、代謝的選択による場合もあり、G418、カナマイシン、またはハイグロマイシンに対する抗生剤耐性による場合もあり、グルタミン合成酵素−NS0系を使用する代謝的選択による場合もある)。対象のポリペプチドを発現させ、例えば、細胞培養物上清または溶解させた細胞から上記ポリペプチドを回収しうるように、トランスフェクトされた細胞を培養することができる。代替的に、(a)増幅された配列を、pcDNA3(Invitrogen Life Technologies)などの哺乳動物発現ベクターへとライゲーションし、かつ、(b)小麦胚芽抽出物またはウサギ網状赤血球溶解物を用いて、in vitroにおいて転写および翻訳することにより、融合タンパク質を作製することもできる。
【0274】
融合タンパク質は、例えば、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、およびヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー法を用いて単離することができる。一部の実施形態では、上記ポリペプチドを、アフィニティーマトリックスへと捕捉させるアミノ酸配列を含有するさらなるドメインを含有するように、融合タンパク質を操作することができる。例えば、プロテインAカラムを用いて、細胞培養上清中または細胞質抽出物中のFc融合ポリペプチドを単離することができる。加えて、c−myc、ヘマグルチニン、ポリヒスチジン、またはFlag(商標)(Kodak)などのタグを用いて、ポリペプチドの精製を補助することもできる。このようなタグは、カルボキシル末端またはアミノ末端を含め、上記ポリペプチド内の任意の位置に挿入することができる。有用でありうる他の融合物には、アルカリホスファターゼなど、上記ポリペプチドの検出を促進する酵素が含まれる。また、イムノアフィニティークロマトグラフィーも、共刺激ポリペプチドを精製するのに用いることができる。加えて、その中でそれが生成する細胞に融合タンパク質を分泌させる分泌シグナルを含有する(予め分泌シグナルが存在するのではない場合)ように、その融合タンパク質を操作することもできる。次いで、分泌された融合タンパク質を細胞培地から慣習的に単離することができる。
【0275】
B.単離核酸分子を作製するための方法
一般的な分子クローニング法ならびに化学的な核酸合成法が含まれるがこれらに限定されない標準的な技法により、単離核酸分子を作製することができる。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて、改変体共刺激ポリペプチドをコードする単離核酸を得ることができる。PCRとは、標的核酸を酵素的に増幅する技法である。対象領域またはこれを超える領域の末端に由来する配列情報を使用して、増幅される鋳型の対向鎖と配列が同一であるオリゴヌクレオチドプライマーをデザインすることができる。PCRを用いて、全ゲノムDNAまたは全細胞RNAに由来する配列を含め、DNAならびにRNAに由来する特定の配列を増幅することができる。プライマーは、14〜40ヌクレオチドの長さであることが典型的であるが、10ヌクレオチド〜数百ヌクレオチドの範囲の長さでありうる。一般的なPCR法については、例えば、「PCR Primer: A Laboratory Manual」、DieffenbachおよびDveksler編、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1995年において記載されている。RNAを鋳型の供給源として用いる場合は、逆転写酵素を用いて、相補的DNA(cDNA)鎖を合成することができる。また、リガーゼ鎖反応、鎖置換増幅、自家持続配列複製、または核酸配列ベースの増幅を用いて、単離核酸を得ることもできる。例えば、Lewis(1992年)、Genetic Engineering News、12巻:1頁; Guatelliら(1990年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、87巻:1874〜1878頁;ならびにWeiss(1991年)、Science、254巻:1292〜1293頁を参照されたい。
【0276】
単離核酸は、単一の核酸分子として化学合成することもでき、オリゴヌクレオチドの配列として(例えば、3’から5’方向における自動DNA合成のためのホスホルアミダイト法を用いて)化学合成することもできる。例えば、所望の配列を含有し、オリゴヌクレオチド対がアニーリングしたときに二重鎖が形成されるように、各対が、短鎖の相補性セグメント(たとえば、約15ヌクレオチド)を含有する長鎖オリゴヌクレオチド(例えば、>100ヌクレオチド)の1つ以上の対を合成することができる。DNAポリメラーゼを用いて上記オリゴヌクレオチドを伸長させ、その結果として、1つのオリゴヌクレオチド対当たり単一の二本鎖核酸分子を得、次いで、これをベクターへとライゲーションすることができる。単離核酸はまた、変異誘発により得ることもできる。PCRを介するオリゴヌクレオチド特異的変異誘発および/または部位特異的変異誘発を含めた標準的な技法を用いて、融合タンパク質をコードする核酸を変異させることができる。「Short Protocols in Molecular Biology」、8章、Green Publishing Associates and John Wiley & Sons、Ausubelら編、1992年を参照されたい。修飾されうるアミノ酸位置の例には、本明細書で説明される位置が含まれる。
【0277】
VII.使用方法
本明細書で開示されるB7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体は、治療剤として有用である。一実施形態は、宿主に有効量のB7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体を投与することにより、該宿主における移植拒絶反応を阻害または軽減するための方法を提供する。in vivoまたはex vivoにおいて、免疫細胞、好ましくはT細胞を、B7−H4ポリペプチドと接触させて、移植拒絶反応が含まれるがこれに限定されない免疫反応を軽減または阻害することができる。B7−H4融合ポリペプチドと接触させるT細胞は、α/β型T細胞受容体およびγ/δ型T細胞受容体を含めたT細胞受容体を発現させる任意の細胞でありうる。T細胞は、CD4を発現させるT細胞のサブセット、ならびにCD8を発現させるT細胞のサブセットを含め、CD3を発現させるすべての細胞を包含する。T細胞は、ナイーブ細胞およびメモリー細胞の両方を包含し、CTLなどのエフェクター細胞も包含する。T細胞はまた、Th1細胞、Tc1細胞、Th2細胞、Tc2細胞、Th3細胞、Th17細胞、Th22細胞、ならびにTreg細胞、およびTr1細胞などの制御性細胞も包含する。例えば、組成物を用いて、Th1細胞、Th17細胞、Th22細胞、またはIL−1β、TNF−α、TGF−ベータ、IFN−γ、IL−17、IL−6、IL−23、IL−22、IL−21、およびMMPが含まれるがこれらに限定されない炎症性分子を分泌するか、もしくは他の細胞に炎症性分子を分泌させる他の細胞を調節することができる。T細胞はまた、NKT細胞ならびに、これと類似する、T細胞系列の固有のクラスも包含する。組成物はまた、Tregの活性を増大させるかもしくは促進するか、TregからのIL−10などのサイトカインの生成を増大させるか、Tregの分化を増大させるか、Tregの数を増大させるか、またはTregの生存を増大させるのにも用いることができる。
【0278】
開示されるB7−H4ポリペプチド、B7−H4融合タンパク質、またはその断片により処置されうる他の免疫細胞には、T細胞の前駆体、抗原提示細胞、B細胞、またはその組合せが含まれる。B細胞を、これらによる抗体の生成をコントロールと比べて阻害または低減するのに有効な量のB7−H4組成物と接触させることにより、これらによる抗体の生成を調節するのに、B7−H4組成物を用いることができる。B7−H4組成物はまた、B細胞によるサイトカインの生成も調節しうる。
【0279】
A.移植拒絶反応を処置する方法
好ましい実施形態は、被験体、好ましくはヒト被験体における移植拒絶反応を軽減または阻害するための方法を提供する。免疫細胞の生物学的活性を阻害もしくは低減するか、または移植部位における炎症を随伴するかもしくはこれを促進する炎症促進性サイトカインもしくは他の分子の量を低減するのに有効な量のB7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体を投与することにより、被験体における移植拒絶反応を阻害または軽減することができる。例示的な炎症促進性分子には、IL−1β、TNF−α、TGF−ベータ、IFN−γ、IL−17、IL−6、IL−23、IL−22、IL−21、およびMMPが含まれるがこれらに限定されない。
【0280】
Th1およびTh17は、炎症を阻害または軽減するB7−H4ポリペプチド、B7−H4融合タンパク質、またはその断片による阻害の標的となりうる、例示的なT細胞である。B7−H4融合タンパク質は、以下:Th1細胞、Th17細胞、Th22細胞、ならびに/または炎症性分子を分泌するか、もしくは他の細胞に炎症性分子を分泌させる他の細胞の分化を阻害または低減すること;Th1細胞、Th17細胞、Th22細胞、ならびに/または炎症性分子を分泌するか、もしくは他の細胞に炎症性分子を分泌させる他の細胞の活性を阻害または低減すること;Th1経路および/またはTh17経路を阻害または低減すること;Th1細胞、Th17細胞、Th22細胞、ならびに/または炎症性分子を分泌するか、もしくは他の細胞に炎症性分子を分泌させる他の細胞によるサイトカインの生成および/または分泌を阻害または低減すること;Th1細胞、Th17細胞、Th22細胞、ならびに/または炎症性分子を分泌するか、もしくは他の細胞に炎症性分子を分泌させる他の細胞の増殖を阻害または低減することのうちのいずれかまたはすべてにより、炎症を処置するのに有用である。
【0281】
加えて、B7−H4ポリペプチド、B7−H4融合タンパク質、またはその断片は、Tregに、Th1細胞、Th17細胞、Th22細胞、ならびに/または炎症性分子を分泌するか、もしくは他の細胞に炎症性分子を分泌させる他の細胞に対する抑制作用を増強させて、生成されるIFN−γおよび/またはIL−17のレベルを低減することも可能である。B7−H4ポリペプチド、B7−H4融合タンパク質、またはその断片はまた、Tregに対して直接的に作用して、IL−10の生成を促進または増強し、Th1経路および/またはTh17経路を抑制するか、またはTregの数を増大させることも可能である。
【0282】
B7−H4ポリペプチド、B7−H4融合タンパク質、またはその断片は、複数の経路内の複数の地点で作用する。例えば、B7−H4ポリペプチド、B7−H4融合タンパク質、またはその断片は、ナイーブT細胞が、Th1細胞またはTh17細胞に発達することを阻害しうる。代替的に、B7−H4ポリペプチド、B7−H4融合タンパク質、またはその断片は、Th1細胞もしくはTh17細胞、またはその両方と相互作用して、炎症促進性分子の生成を阻害または低減することも可能である。加えて、B7−H4ポリペプチド、B7−H4融合タンパク質、またはその断片は、Tregを標的として、Th1経路および/またはTh17経路に対する抑制作用を増強させて、生成されるINF−γおよび/またはIL−17のレベルを低減することも可能である。B7−H4組成物はまた、Tregに直接的に作用して、IL−10の生成を促進または増強し、Th1経路および/またはTh17経路を抑制することも可能である。加えて、B7−H4組成物は、移植される組織の領域内または末梢部位におけるTreg細胞の動員または増殖(またはその両方)を増強することによっても作用しうる。
【0283】
1.Th1経路の阻害
a.Th1発達の阻害
移植拒絶反応を阻害または軽減するための一方法は、それを必要とする被験体において、ナイーブT細胞がTh1細胞に発達することを、コントロールと比べて移植拒絶反応を阻害または軽減するのに有効な量だけ阻害または遮断するのに有効な量のB7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体を投与するステップを包含する。B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体もしくはその改変体を投与することを介して、ナイーブT細胞のTh1細胞への分化を遮断することにより、移植拒絶反応を阻害または軽減しうることが発見されている。一実施形態では、B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体が、ナイーブT細胞に対するTregの抑制能を増大させて、ナイーブT細胞がTh1細胞に分化することを阻害または低減し、それにより被験体におけるTh1細胞の数を低減する。代替的に、B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体は、Th1細胞の増殖を阻害または低減する。被験体において発達しうるTh1細胞の数を制限することにより、INF−γなど、生成される炎症促進性分子の量を低減するかまたは抑えることができる。INF−γは、IL−1β、TNF−α、およびMMPを含めた、他の炎症促進性分子の生成または放出を刺激する。したがって、被験体におけるTh1細胞の数を制御することにより、これらの他の炎症促進性分子のレベルを制御することができ、それにより移植拒絶反応を軽減することができる。
【0284】
b.炎症促進性分子の阻害
別の実施形態は、Th1細胞による炎症促進性分子の生成を、被験体における移植拒絶反応を阻害または軽減するのに有効な量だけ阻害または低減するのに有効な量のB7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体を該被験体に投与することにより、該被験体における移植拒絶反応を阻害または軽減する方法を提供する。Th1細胞により生成される、例示的な炎症促進性分子には、IFN−γが含まれる。この実施形態では、B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体が、Th1細胞と直接的に相互作用し、Th1細胞によるIFN−γの生成を阻害または低減することが可能である。この実施形態では、Th1細胞集団ではなくて、炎症促進性分子の量を制御する。
【0285】
2.Th17経路の阻害
a.Th17発達の阻害
また、ナイーブT細胞がTh17細胞に発達することを、被験体における移植拒絶反応をコントロールと比べて阻害または軽減するのに有効な量だけ阻害または遮断するのに有効な量のB7−H4ポリペプチド、もしくはその断片、またはその融合体を投与することにより、該被験体における移植拒絶反応を阻害または軽減することもできる。一実施形態では、B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体が、ナイーブT細胞のTh17細胞への分化に対するTregの抑制活性を、被験体におけるTh17細胞の数を低減するのに十分な量だけ増大させる。代替的に、B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体は、Th17細胞の増殖を阻害または低減する。被験体におけるTh17細胞の集団を低減することにより、生成されるIL−17のほか、IL−22およびIL−21の量も低減することができる。IL−17とは、IL−1β、TNF−α、およびMMPなど、他の炎症促進性分子を増大させる炎症促進性分子である。したがって、IL−17の量を低減することにより、これらの他の炎症促進性分子も低減することができ、それにより移植拒絶反応を軽減または阻害することができる。
【0286】
b.IL−17の生成の阻害
さらに別の実施形態は、Th17細胞によるIL−17の生成のほか、IL−22およびIL−21の生成も、コントロールと比べて移植拒絶反応を阻害または軽減するのに有効な量だけ阻害するのに有効な量のB7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体を投与することにより、被験体における移植拒絶反応を阻害または軽減するための方法を提供する。この実施形態では、B7−H4ポリペプチドまたはB7−H4融合タンパク質が、例えば、Th17細胞に結合し、その結果として、これらのTh17細胞によるIL−17(またはIL−22およびIL−21)を阻害することにより、Th17細胞に直接的に作用することが可能である。上述の通り、IL−17(ならびにIL−22またはIL−21)を阻害または低減すると、他の炎症促進性分子が低減され、それにより移植拒絶反応が軽減または阻害される。
【0287】
3.Th1経路およびTh17経路の阻害
開示されるB7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体を用いて、Th1経路およびTh17経路の両方を同時に阻害することができる。1つの抗炎症剤を用いて2つの別個の経路を阻害することにより、免疫反応に対するより頑健な阻害または低減がもたらされ、それにより移植拒絶反応が軽減または阻害される。Th1経路およびTh17経路を阻害すると、好中球の動員が阻害または低減され、それにより1または複数の炎症症状が軽減されうる。一実施形態では、Th1経路およびTh17経路により、好中球および/またはマクロファージの増殖が低減または阻害される。
【0288】
4.Treg
炎症はまた、B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体を、IL−10を生成するTregを標的としてTh1経路および/またはTh17経路に対する抑制活性を増強するのに有効な量で被験体に投与することにより処置することも可能である。この実施形態では、開示されるB7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体が、単独のTregと比べて、IL−17の生成に対する抑制効果を増大させ、それによりコントロールと比べて移植拒絶反応を阻害または軽減する。
【0289】
別の実施形態は、TregによるIL−10の生成を増大させるのに有効な量のB7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体を投与することにより、移植拒絶反応を阻害または軽減するための方法を提供する。IL−10の生成が増大すると、その結果として、Th17細胞によるIL−17の生成が低減し、Th1細胞によるIFN−αの生成が低減する。この実施形態では、B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体が、Tregと直接的に相互作用して、TregによるIL−10の生成を増大させ、それにより被験体における移植拒絶反応をコントロールと比べて阻害または軽減することが可能である。
【0290】
加えて、B7−H4ポリペプチド、もしくはその断片、またはその融合体は、移植された組織領域におけるTreg細胞の動員または増殖(またはその両方)を増強することによっても作用しうる。したがって、別の実施形態は、移植された組織領域におけるTreg細胞の動員を増強するのに有効な量のB7−H4−Ig融合タンパク質を被験体に投与することにより、該被験体における移植拒絶反応を阻害または軽減するための方法を提供する。移植された組織へのTreg細胞の浸潤を増大させると、IL−10レベルを局所的に上昇させることができ、その結果として、Th17細胞によるIL−17の生成を低減し、移植部位でTh1細胞によるIFN−αの生成を低減することができる。これは、移植片の生存を延長し、移植片に対する拒絶を低減しうる。
【0291】
さらに別の実施形態は、Th1経路、Th17経路を阻害するか、またはこれらに干渉して、TregによるTh17経路に対する抑制効果を、被験体における移植拒絶反応をコントロールと比べて阻害または軽減するのに有効な量だけ増強するのに有効な量のB7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体を投与することにより、該被験体における移植拒絶反応を阻害または軽減するための方法を提供する。
【0292】
B7−H4ポリペプチド、B7−H4融合タンパク質、ならびにその断片はまた、Treg細胞の集団または数を増大させるのに十分な量で被験体に投与することも可能である。
【0293】
Tregを、B7−H4活性を有する、有効量のB7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体と接触させることにより、TregによるIL−10およびTGF−βの生成を、コントロールと比べて増大させることができる。増大は、in vitroで生じる場合もあり、in vivoで生じる場合もある。
【0294】
5.可溶性B7−H4
可溶性B7−H4(sH4)は、B7−H4受容体に結合し、内因性B7−H4がその受容体に結合することを遮断しうる、デコイ分子として作用する。sH4は、細胞表面B7−H4のように阻害シグナルを送達することがない。B7−H4は、抗原による刺激の存在下において、T細胞の細胞周期の進行を阻害する。B7−H4は、好中球の前駆細胞の増殖を抑制することにより、先天免疫を阻害しうる。sH4レベルの上昇は、内因性B7−H4の阻害効果を遮断すると考えられている。
【0295】
したがって、in vivoにおけるsH4の生物学的活性に干渉することにより、例えば、それを必要とする個体に、sH4がB7−H4受容体に結合する能力を阻害もしくは低減するか、または内因性の阻害性B7−H4分子の活性を増進させるのに有効な量の薬剤を投与することにより、移植拒絶反応を阻害または軽減することができる。sH4の生物学的活性に対する干渉は、本明細書で開示されるB7−H4融合ポリペプチドを投与することにより達成することができる。
【0296】
投与は、既存の状態、疾患、または障害(すなわち、既存の炎症性疾患もしくは炎症性障害または自己免疫疾患もしくは自己免疫障害)に対する処置に限定されず、また、個体においてこのような疾患が発生する危険性を防止または低下させるのにも、すなわち、予防的使用にも用いることができる。したがって、開示される組成物は、移植前、移植時、および移植後において投与することができる。
【0297】
6.移植片
移植材料は、細胞、組織、器官、四肢、手足指、または身体の部分、好ましくはヒト身体の部分でありうる。移植は、典型的には、同種異系または異種である。開示されるB7−H4ポリペプチド、B7−H4融合タンパク質、またはその断片を、移植拒絶反応を軽減または阻害するのに有効な量で被験体に投与する。B7−H4ポリペプチド、B7−H4融合タンパク質、またはその断片は、任意の許容可能な投与経路により、全身投与することもでき、局所投与することもできる。一部の実施形態では、B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体を、移植前、移植時、または移植後において、移植部位に投与する。一実施形態では、B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体を、移植部位に、皮下注射などにより非経口投与する。
【0298】
他の実施形態では、B7−H4ポリペプチド、B7−H4融合タンパク質、またはその断片を、移植される細胞、組織、または器官に、ex vivoにおいて直接的に投与する。一実施形態では、移植材料を、移植前、移植後、またはそれらの両方において、B7−H4ポリペプチド、その融合タンパク質、ならびにその断片と接触させる。
【0299】
他の実施形態では、B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体を、リンパ節または脾臓などの免疫組織または免疫器官に投与する。
【0300】
移植前に、移植材料を改変することができる。例えば、移植材料を遺伝子改変して、移植拒絶反応を阻害または軽減する一助となるタンパク質を発現させることができる。好ましい実施形態では、移植材料を遺伝子改変して、移植レシピエントにおける移植拒絶反応を阻害または軽減するのに有効な量で、B7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体を発現させる。
【0301】
移植材料を、移植拒絶反応などの免疫反応に関与することについて公知であるかまたはこれが疑われる細胞表面のタンパク質、炭水化物、または脂質を除去する酵素または他の物質により処理することができる。
【0302】
B7−H4は、炎症経路の複数の地点において、高レベルで作用し、それによりTNF−αなどのエフェクター性サイトカインの発現および/または活性に対する影響を制御する主要な制御因子として作用する。したがって、本明細書で説明されるB7−H4組成物は、Enbrel、Remicade、Cimzia、およびHumiraなどのTNF−α遮断剤が奏効しない患者を処置するのに特に有用である。加えて、炎症経路における主要な制御因子としてのその活性のために、開示されるB7−H4組成物は、慢性移植拒絶反応を処置するのに特に有用である。
【0303】
a.細胞
任意の種類の細胞集団を被験体に移植することができる。細胞は、同種細胞の場合もあり、異種細胞の場合もある。異種細胞とは、その細胞集団が、複数種類の細胞を含有することを意味する。例示的な細胞には、ドナーから採取し、被験体に移植しうる、幹細胞および多能性細胞などの前駆細胞が含まれる。細胞は、場合によって、上述の通り、移植前に処理することができる。このような処理は、ex vivoにおいて、細胞に、それらがin vitroおよびin vivoでB7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体を発現することを可能とする核酸構築物をトランスフェクトするステップを包含する。当技術分野では、細胞にトランスフェクトする方法が周知である。
【0304】
ex vivoにおける核酸送達法は、例えば、被験体から細胞を採取するステップと、細胞を培養するステップと、細胞に発現ベクターを形質導入するステップと、コードされるポリペプチドの発現に適する条件下に細胞を維持するステップとを包含しうる。分子生物学の技術分野では、これらの方法が公知である。例示的な核酸ベクターには、アデノウイルスベクターが含まれるがこれに限定されない。例えば、リン酸カルシウムによる遺伝子導入、リポフェクションによる遺伝子導入、電気穿孔による遺伝子導入、ウイルス感染による遺伝子導入、ならびに遺伝子銃による遺伝子導入(biolistic gene transfer)を含めた、ex vivoにおける遺伝子治療に用いられる任意の標準的な手段により、形質導入ステップを達成することができる。代替的に、リポソームまたはポリマー製マイクロ粒子を用いることもできる。次いで、形質導入に成功した細胞は、例えば、コード配列の発現、または薬剤耐性遺伝子の発現について選択することができる。次いで、細胞を致死線量で放射線照射し(所望の場合)、被験体内に注射するかまたは植え込むことができる。移植されうる他の例示的な細胞には、膵島細胞、造血細胞、筋肉細胞、心臓細胞、神経細胞、胚性幹細胞、成体幹細胞、T細胞、リンパ球、真皮細胞、中胚葉細胞、内胚葉細胞、および外胚葉細胞が含まれるがこれらに限定されない。
【0305】
b.組織
任意の組織を、移植片として用いることができる。例示的な組織には、皮膚組織;脂肪組織;静脈、動脈、毛細血管、血管弁などの心血管組織;神経組織;骨髄組織;肺組織;角膜および水晶体などの眼組織;軟骨組織;骨組織;ならびに粘膜組織が含まれる。組織は、上記で論じた通りに改変することができる。
【0306】
c.器官
移植に用いうる例示的な器官には、腎臓、肝臓、心臓、脾臓、膀胱、肺、胃、眼、舌、膵臓、腸などが含まれるがこれらに限定されない。上記で論じた通り、移植される器官もまた、移植前に改変することができる。
【0307】
一実施形態は、コントロールと比べて慢性移植拒絶反応を阻害または軽減するのに有効な量のB7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体を投与することにより、被験体における慢性移植拒絶反応を阻害または軽減するための方法を提供する。この文脈では、Treg細胞に対するB7−H4ポリペプチド、その融合タンパク質、ならびにその断片の効果が特に重要である。
【0308】
B.移植片対宿主病(GVHD)
開示されるB7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体はまた、移植片対宿主病(GVHD)に随伴する1または複数の症状を緩和するのに有効な量のB7−H4ポリペプチド、その融合タンパク質、またはその断片を投与することにより、GVHDを処置するのにも用いることができる。GVHDとは、同種異系の造血幹細胞の移植に随伴する主要な合併症であり、移植された骨髄中の機能性免疫細胞が、レシピエントを「外来者」として認識し、免疫攻撃をもたらす。GVHDはまた、特定の状況下にある輸血においても生じうる。GVHDの症状には、皮膚の発疹または皮膚の色もしくはきめの変化、下痢、悪心、肝機能の異常、皮膚の黄色化、易感染性の増大、ドライアイ(dry)、眼の刺激、ならびに口腔過敏(sensitive mouth)またはドライマウスが含まれる。
【0309】
D.糖尿病
B7−H4ポリペプチドならびにその融合タンパク質はまた、糖尿病を処置するのにも用いることができる。該方法は、被験体にインスリン生成細胞を移植するステップと、移植拒絶反応を軽減または阻害するのに有効な量のB7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体を該被験体に投与するステップとを包含する。インスリン生成細胞は、ベータ細胞または膵島細胞であることが好ましい。ある実施形態では、インスリン生成細胞が、インスリンを生成するように操作された組換え細胞である。インスリン生成細胞はまた、本明細書で説明されるB7−H4ポリペプチドもしくはその断片、またはその融合体を生成するように遺伝子改変することもできる。
【0310】
インスリン生成細胞は、アルギナート、アガロース、ヒアルロン酸、コラーゲン、合成単量体、アルブミン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、デキストラン、硫酸デキストラン、硫酸コンドロイチン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、キチン、キトサン、ヘパラン、硫酸ヘパラン、またはその組合せが含まれるがこれらに限定されない適切なポリマーを用いるポリマーマトリックスなどのマトリックス内に封入することができる。
【0311】
D.組合せ療法
B7−H4ポリペプチドまたは断片、あるいはその融合物は、単独で用いることもでき、さらなる治療剤と組み合わせて用いることもできる。上記さらなる治療剤には、免疫抑制剤(例えば、他のリンパ球表面マーカー(例えば、CD40、アルファ−4インテグリン)またはサイトカインに対する抗体);他の融合タンパク質(例えば、CTLA−4−Ig(Orencia(登録商標))、TNFR−Ig(Enbrel(登録商標)));Enbrel、Remicade、Cimzia、およびHumiraなどのTNF−α遮断剤;シクロホスファミド(CTX)(すなわち、Endoxan(登録商標)、Cytoxan(登録商標)、Neosar(登録商標)、Procytox(登録商標)、Revimmune(商標));メトトレキサート(MTX)(すなわち、Rheumatrex(登録商標)、Trexall(登録商標));ベリムマブ(すなわち、Benlysta(登録商標));もしくは他の免疫抑制薬(例えば、シクロスポリンA、FK506様化合物、ラパマイシン化合物、またはステロイド類);抗増殖剤;細胞傷害剤;または免疫抑制を補助し得る他の化合物が含まれるがこれらに限定されない。
【0312】
好ましい実施形態では、上記さらなる治療剤が、別個の経路を介して、T細胞の活性化およびサイトカインの産生を阻害するかまたは低減するように機能する。このような一実施形態では、上記さらなる治療剤が、CTLA−4 Ig(アバタセプト)などのCTLA−4融合タンパク質である。CTLA−4 Ig融合タンパク質は、抗原提示細胞上におけるCD80/CD86(B7−1/B7−2)への結合について、T細胞上の共刺激受容体であるCD28と競合し、このために、T細胞の活性化を阻害するように機能する。好ましい実施形態では、上記さらなる治療剤が、ベラタセプトとして公知のCTLA4−Ig融合タンパク質である。ベラタセプトは、in vivoにおけるCD86に対するそのアビディティーを顕著に増大させる2つのアミノ酸置換(L104EおよびA29Y)を含有する。別の実施形態では、上記さらなる治療剤が、Maxy−4である。
【0313】
別の実施形態では、第2の治療剤が、慢性移植拒絶反応またはGvHDを優先的に処置し、それにより治療レジメンが、急性移植拒絶反応または急性GvHDならびに慢性移植拒絶反応または慢性GvHDの両方を標的とする。好ましい実施形態では、第2の治療剤が、TNF−α遮断剤である。
【0314】
別の実施形態では、上記第2の治療剤が、血清中におけるアデノシン量を増加させる(例えば、WO08/147482を参照されたい)。好ましい実施形態では、上記第2の治療剤が、CD73−Ig、組換えCD73、またはCD73の発現を増大させる他の薬剤(例えば、サイトカインまたはモノクローナル抗体または低分子)である(例えば、WO04/084933を参照されたい)。別の実施形態では、上記第2の治療剤が、インターフェロン−ベータである。
【0315】
好ましい実施形態では、上記組成物は、Tregの活性または生成を増大させる化合物と組み合わせて、またはこれらの化合物と逐次的に用いられる。例示的なTreg増強剤には、グルココルチコイドであるフルチカゾン、サルメテロール(salmeteroal)、IL−12に対する抗体、IFN−γに対する抗体、およびIL−4に対する抗体;ビタミンD3、およびデキサメタゾン、ならびにこれらの組合せが含まれるがこれらに限定されない。他の炎症促進性分子に対する抗体もまた、開示されるB7−H4ポリペプチド、B7−H4融合タンパク質、またはこれらの断片と組み合わせて、またはこれらと交互に用いることができる。IL−6、IL−23、IL−22、またはIL−21に結合する抗体が好ましい。
【0316】
本明細書で用いられる「ラパマイシン化合物」という用語は、中性の三環系化合物であるラパマイシン、ラパマイシン誘導体、ラパマイシン類似体、ならびにラパマイシンと同じ作用機構(例えば、サイトカイン機能の阻害)を有すると考えられる他のマクロライド化合物を含む。「ラパマイシン化合物」という表現は、ラパマイシンと構造的類似性を有する化合物、例えば、それらの治療有効性を増強するように改変された類似の大環状構造物を有する化合物を含む。当技術分野では、例示的なラパマイシン化合物が公知である(例えば、WO95122972;WO95116691;WO95104738;米国特許第6,015,809号;同第5,989,591号;米国特許第5,567,709号;同第5,559,112号;同第5,530,006号;同第5,484,790号;同第5,385,908号;同第5,202,332号;同第5,162,333号;同第5,780,462号;同第5,120,727号を参照されたい)。
【0317】
「FK506様化合物」という表現は、FK506、およびFK506誘導体およびFK506類似体、例えば、FK506と構造的類似性を有する化合物、例えば、それらの治療有効性を増強するように改変された類似の大環状構造物を有する化合物を含む。FK506様化合物の例には、例えば、WO00101385に記載されている化合物が含まれる。本明細書で用いられる「ラパマイシン化合物」という表現は、FK506様化合物を含めないことが好ましい。
【0318】
他の適切な治療剤には、抗炎症剤が含まれるがこれらに限定されない。上記抗炎症剤は、非ステロイド系の場合もあり、ステロイド系の場合もあり、これらの組合せの場合もある。一実施形態は、約1%(w/w)〜約5%(w/w)、典型的には約2.5%(w/w)の抗炎症剤を含有する経口組成物を提供する。限定なしに述べると、非ステロイド系抗炎症剤の代表例には、ピロキシカム、イソキシカム、テノキシカム、スドキシカムなどのオキシカム;アスピリン、ジサルシド、ベノリレート、トリリセート、サファプリン、ソルプリン、ジフルニサル、およびフェンドサルなどのサリチル酸塩およびエステル;ジクロフェナク、フェンクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、イソキセパック、フロフェナク、チオピナク、ジドメタシン、アセマタシン、フェンチアザク、ゾメピラク、クリンダナク、オキセピナク、フェルビナク、およびケトロラクなどの酢酸誘導体;メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルミン酸、およびトルフェナム酸などのフェナム酸塩およびエステル;イブプロフェン、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、インドプロフェン、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ミロプロフェン、チオキサプロフェン、スプロフェン、アルミノプロフェン、およびチアプロフェン酸(tiaprofenic)などのプロピオン酸誘導体;フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェプラゾン、アザプロパゾン、およびトリメタゾンなどのピラゾールが含まれる。また、これらの非ステロイド系抗炎症剤の混合物も使用することができる。
【0319】
限定なしに述べると、ステロイド系抗炎症薬の代表例には、ヒドロコルチゾン、ヒドロキシルトリアムシノロン、アルファ−メチルデキサメタゾン、リン酸デキサメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、吉草酸クロベタゾール、デソニド、デソキシメタゾン、酢酸デソキシコルチコステロン、デキサメタゾン、ジクロリゾン、二酢酸ジフロラゾン、吉草酸ジフルコルトロン、フルアドレノロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロコルチゾン、フルメタゾンピバレート、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルコルチンブチルエステル、フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン(フルプレドニリデン)、フルランドレノロン、ハルシノニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、コルチゾン、コルトドキソン、フルセトニド、フルドロコルチゾン、二酢酸ジフルオロオゾン、フルラドレノロン、フルドロコルチゾン、二酢酸ジフルロゾン、フルラドレノロンアセトニド、メドリゾン、アムシナフェル、アムシナフィド、ベタメタゾンおよびそのエステルの残りのもの(the balance of its esters)、クロロプレドニゾン、酢酸クロロプレドニゾン(chlorprednisone acetate)、クロコルテロン、クレシノロン、ジクロリゾン、ジフルルプレドネート、フルクロロニド、フルニゾリド、フルオロメタロン、フルペロロン、フルプレドニゾロン、吉草酸ヒドロコルチゾン、シクロペンチルプロピオン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルタメート、メプレドニゾン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロン、ならびにこれらの混合物などのコルチコステロイドが含まれる。
【0320】
別の実施形態では、さらなる治療剤に、sH4活性を阻害するかまたはこれに干渉して、被験体における炎症性障害を処置する組成物が含まれる。一実施形態では、炎症性疾患を処置するために、sH4を微量有するかまたはそれが検出不能である被験体にB7−H4融合ポリペプチドを投与する。別の実施形態では、B7−H4融合ポリペプチドを投与して、sH4レベルが高い被験体における炎症性疾患の1つ以上の症状を処置する。sH4レベルの上昇は、炎症性障害を有することが公知の被験体におけるsH4レベルを、炎症性障害を有さない被験体におけるsH4レベルと比較することにより決定することができる。
【0321】
F.移植候補者の選択
sH4およびB7−H4の検出を用いて、移植候補者を評価することができる。sH4レベルが上昇すると、内因性B7−H4の阻害効果が遮断され、したがって、血清中のsH4レベルによって、患者が移植材料を拒絶する可能性が予測されうると考えられる。B7−H4は、T細胞反応の負の制御因子であるので、細胞表面において発現するB7−H4のレベルによっても、患者が移植材料を拒絶する可能性が予測されうる。個体に由来する生物学的試料中に存在するsH4レベルは、移植前に決定することができる。異なるレベルの重症度を含めた移植拒絶反応と相関するsH4の量は、移植に成功した患者におけるsH4、ならびに移植に失敗した患者におけるsH4を定量化することにより、あらかじめ決定することができる。移植候補者の生物学的試料中に存在するsH4レベルは、他の個体に由来する生物学的試料中に存在する、所定の基準sH4レベルと比較することができ、これらを用いて、該候補者が移植に成功する可能性を予測することができる。例えば、sH4レベルが約「x」である患者のうちの75%が、移植片拒絶を経験していれば、sH4レベルが約「x」である患者は、移植を拒絶する確率が75%でありうる。当技術分野では、患者が移植を拒絶する可能性に影響しうる他の因子が公知であり、患者が移植を拒絶する確率を決定するときにこれらを考慮することができる。例えば、ドナーの年齢、レシピエントの糖尿病、レシピエントの性別、慢性GVHD、ならびにT細胞のレベルもまた考慮することができる。
【0322】
患者が移植に成功する可能性を用いて、患者を、移植について選択することができる。例えば、そのsH4レベルが、0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、または70%の拒絶可能性に対応する患者は、移植の良好な候補者でありうるのに対し、そのsH4レベルが、80%、90%、または100%の拒絶可能性に対応する患者は、移植の良好な候補者ではない可能性がある。それに加えて、その代わりに、移植候補者の生物学的試料中のsH4レベルを、炎症反応または自己免疫疾患の異なる病期の指標となるsH4量と比較することもできる。
【0323】
代替的に、sH4量を、好中球レベルと相関させることができる。好中球は、早期の同種異系移植拒絶反応の一因をなすと考えられている(Healyら、Eur J Cardiothorac Surg、29巻:760〜766頁(2006年))。したがって、ある個体では、好中球レベルの上昇によって、移植拒絶反応、特に、急性拒絶が予測されうる。したがって、個体におけるsH4レベルを、好中球レベルと相関させることができる。特定の好中球レベルに対応するsH4レベルは、被験体におけるsH4レベルをアッセイし、該被験体における好中球レベルをアッセイすることにより、あらかじめ決定することができる。基準レベルを決定したら、被験体に由来する生物学的試料を、sH4レベルについてアッセイすることができる。次いで、結果として得られるsH4レベルを、特定の好中球レベルと相関させた所定のsH4レベルと比較する。結果として得られるsH4レベルを、所定のレベルと照合(match)して、被験体における好中球レベルを決定する。健康な個体における好中球数は、約15,000細胞/μl〜約20,000細胞/μlの範囲にある。
【0324】
試料中におけるsH4量は、酵素結合イムノソルベント検定法、質量分析、分光測光法、またはその組合せなど、従来の技法を用いて決定することができる。
【0325】
生物学的試料中におけるsH4の存在を検出するための方法、ならびに/または生物学的試料中におけるsH4レベルを測定するための方法は、sH4特異的抗体または抗B7−H4抗体の使用を包含しうる。該抗体は、配列番号2〜7、9〜20、24〜33、42〜80によりコードされるポリペプチドのうちのいずれか1つにおけるエピトープを認識することが好ましい。該方法は一般に、
a)試料を、sH4に特異的な抗体と接触させるステップと、
b)抗体と試料の分子との結合を検出するステップと
を包含する。
【0326】
適切なコントロールと比較して、sH4特異的抗体の特異的結合を検出することから、試料中にsH4が存在することが示唆される。適切なコントロールには、sH4を含有しないことが公知である試料、ならびにsH4に特異的でない抗体、例えば、抗イディオタイプ抗体と接触させた試料が含まれる。
【0327】
当技術分野では、特異的な抗体−抗原相互作用を検出するための各種の方法が公知であり、標準的な免疫組織化学法、免疫沈降、酵素イムノアッセイ、およびラジオイムノアッセイが含まれるがこれらに限定されない方法において用いることができる。一般に、sH4特異的抗体は、直接的または間接的に、検出可能に標識される。直接的な標識には、放射性同位元素;その生成物が検出可能である酵素(例えば、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼなど);蛍光標識(例えば、イソチオシアン酸フルオレセイン、ロダミン、フィコエリトリンなど);EDTAなどの金属キレート化基を介して抗体に結合させた蛍光発光金属、例えば、152Eu、またはランタニド系列の他の元素;化学発光化合物、例えば、ルミノール、イソルミノール、アクリジニウム塩など;生物発光化合物、例えば、ルシフェリン、イクオリン(緑色蛍光タンパク質)などが含まれる。抗体は、ポリスチレン製のプレートまたはビーズなど、不溶性の支持体に結合させる(連結する)ことができる。間接的標識には、sH4特異的抗体に特異的な第2の抗体が含まれ、該第2の抗体は、上記で説明した通りに標識され、場合によって、特異的な結合対、例えば、ビオチン−アビジンのメンバーを含有する。細胞、細胞粒子、または可溶性タンパク質を固定化することが可能な、ニトロセルロースなど、固体の支持体または担体と生物学的試料を接触させ、これに固定化することができる。次いで、支持体を適切な緩衝液で洗浄した後、検出可能に標識されたsH4特異的抗体と接触させることができる。
【0328】
さらに他の実施形態は、生物学的試料中におけるsH4の存在を検出するための方法、ならびに/または生物学的試料中におけるsH4レベルを測定するための方法を提供する。該方法は一般に、
a)試料を、sH4リガンド、例えば、sH4に結合するB7−H4受容体またはその断片と接触させるステップと、
b)B7−H4受容体と試料の分子との結合を検出するステップと
を包含する。
【0329】
B7−H4受容体の特異的な結合を検出することから、試料中にsH4ポリペプチドが存在することが示唆される。
【0330】
当技術分野では、B7−H4受容体とsH4との結合を検出するための方法が公知であり、これらには、その抗体がB7−H4受容体−sH4の結合を破壊しない限りにおいて、B7−H4受容体に特異的な抗体を用いる、B7−H4受容体−リガンド複合体の免疫沈降が含まれる。代替的に、用いられるB7−H4受容体は、その融合パートナーに特異的な免疫沈降、酵素的検出、蛍光シグナル(例えば、緑色蛍光タンパク質)をもたらす融合タンパク質でもありうる。B7−H4受容体は、上記で説明した任意の検出可能な標識で標識することができる。B7−H4受容体を、直接的に、またはリンカーを介して、不溶性の支持体(例えば、ポリスチレン製のビーズ、磁気ビーズなど)に結合させ、それにより生物学的試料からsH4/受容体複合体を分離し、その後、sH4の存在を検出し、かつ/またはsH4の量(レベル)を測定するための手段を提供することができる。
【実施例】
【0331】
(実施例1)
同種異系の膵島移植片(islet graft)の移植におけるB7−H4−Igの効果
レシピエントとしてのC57BL/6(B6)マウス、ならびに膵島ドナーとしてのBALB/cマウスによる同種異系移植モデルを用いて、移植レシピエントによる膵島移植片の生存延長におけるin vivoのB7−H4−Ig効果を調べた。膵島細胞に特異的に毒性であり、その結果として永続的な高血糖状態をもたらす、広範に用いられる薬物であるストレプトゾトシン(STZ;200mg/kg)を腹腔内(i.p.)投与することにより、雌B6マウスのレシピエント(n=4)を糖尿病とした。STZを注射した後、Glucometer Eliteによりマウスを血中グルコースレベル(BGL)について調べ、糖尿病の徴候について調べた。STZ投与から2〜3日後、糖尿病の徴候を示すB6マウスを、移植レシピエントとして用いた。同種異系移植用の膵島細胞は、コラゲナーゼ消化(ドナーの膵臓を、コラゲナーゼを伴う総胆管(common duct)を介して、in situの胆汁存在下において還流した)の後、非連続的なFicoll勾配で分離し、実体顕微鏡下で手で選別すること(handpicking)によって精製することにより、8〜10週齢のBALB/cドナーマウスの膵臓から単離した。次いで、膵島細胞(islet)500個の群を、各レシピエントの左腎被膜下に移植した。次いで、0日目に、B7−H4−Ig(250μg)のi.p.注射により、移植レシピエントを処置した。この後、2、4、6、および8日目に、それぞれ同量ずつの試薬を注射した。隔日でBGLを測定した。無作為のBGL読み取り値が、3日連続で>250mg/dlであることを、糖尿病の臨床的再発として定義したが、膵島細胞の生存は、マウスが、250mg/dl未満のBGL読み取り値を維持する能力により決定する。糖尿病を有するB6マウスにおける膵島移植に対するB7−H4−Ig注射の効果を決定するため、カプラン−マイヤー解析により、B7−H4−Ig処置群の移植片生存曲線と、非処置群の移植片生存曲線とを比較した。図1は、レシピエントB6マウスにおける糖尿病の誘導、ならびにB7−H4−Igの投与を伴う、同種異系の膵島移植を示す。図2は、B7−H4−Igを注射したところ、移植拒絶反応が緩徐化し、同種異系の膵島移植レシピエントのB6マウスにおける移植片の生存が延長された、この実験の結果を示す。
【0332】
(実施例2)
B7−H4−IgはGvHDの同種異系移植マウスモデルにおける生存性を増大させる
移植および処置のプロトコール
レシピエントのBalb/Cマウスを、8.4Gyの線量で致死的に照射し、C57B/6に由来する5×10個の同種異系骨髄(BM)細胞+脾臓細胞(1.5×10個)または5×10個の同系骨髄細胞を単回静脈内接種することにより、4時間以内に回復させた(reconstitute)。ケージ関連効果に由来する偏りを回避するため、異なる群内の動物を、ケージ間で無作為化した。4群のマウスを含んだ。第I群は、Balb/Cマウスに由来するBM細胞を、Balb/Cマウスに導入した同系BM移植であり、陰性コントロールとして用いた。第II群は、0日目、1日目、7日目、および14日目にコントロールIgG(0.5mg)を投与した同種異系骨髄移植とした。第III群は、0日目、1日目、7日目、および14日目にB7−H4−Ig(0.5mg)を投与した同種異系骨髄移植とした。第IV群は、0日目、1日目、7日目、および14日目にリン酸緩衝食塩液(PBS)で処置した同種異系骨髄移植とした。陰性コントロールである同系BM移植群のマウスは4匹とし、他の3群のマウスは8匹ずつとした。図3は、移植片対宿主病アッセイの実験デザインについての概略的な図である。
【0333】
結果
図4Aは、移植後7日目において、B7−H4−Igで処置した同種異系BM移植マウスが、コントロールIgGで処置した同種異系BM移植マウスと比較して、下痢の臨床スコアを有意に低下させたことを示す。図4Bは、B7−H4−Igで処置した同種異系BM移植マウスが、コントロールIgGで処置した同種異系移植マウスと比較して、体重低減を軽減したことを示す。図5は、一過的にB7−H4−Igで処置した同種異系BM移植マウスが、コントロールと比較して、より長く生存したことを示す。まとめると、結果は、用量レジメンを最適化すると、B7−H4−Igが、同種異系BM移植に潜在的に有用でありうることを示す。
【0334】
別段に定義されない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語および科学用語は、開示される発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0335】
当業者は、日常的な実験だけを用いて、本明細書で説明される本発明の特定の実施形態に対する多くの同等物を実施しうることを認識するか、または確認しうるであろう。このような同等物は、以下の特許請求の範囲により包含されることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における移植拒絶反応を阻害または軽減するための方法であって、Th1細胞、Th17細胞、Th22細胞、または炎症性分子を分泌するか、もしくは他の細胞に炎症性分子を分泌させる他の細胞からなる群から選択される免疫細胞の分化、増殖、活性、または前記免疫細胞によるサイトカインの生成もしくは分泌を、コントロールと比べて移植拒絶反応を阻害または軽減するのに有効な量だけ阻害または低減するのに有効な量のB7−H4タンパク質を前記被験体に投与するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記B7−H4タンパク質が、ナイーブT細胞の、Th17細胞、Th1細胞、またはTh22細胞への発達を阻害する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記B7−H4タンパク質が、前記被験体における免疫細胞によるIFNγの生成を阻害する、請求項4に記載の方法。
【請求項4】
前記B7−H4タンパク質が、前記被験体における免疫細胞によるIL−17またはIL−22の生成を阻害する、請求項6に記載の方法。
【請求項5】
被験体における移植拒絶反応を阻害または軽減するための方法であって、Th1細胞、Th17細胞、Th22細胞、または炎症性分子を分泌するか、もしくは他の細胞に炎症性分子を分泌させる他の細胞からなる群から選択される2種類以上の免疫細胞の分化、増殖、活性、ならびに/または2種類以上の前記免疫細胞によるサイトカインの生成および/もしくは分泌を、コントロールと比べて移植拒絶反応を阻害または軽減するのに有効な量だけ阻害または低減するのに有効な量のB7−H4タンパク質を前記被験体に投与するステップを含む、方法。
【請求項6】
被験体における移植拒絶反応を阻害または軽減するための方法であって、Th17経路に対するTregの抑制効果を、移植拒絶反応を阻害または軽減するのに有効な量で増強するのに有効な量のB7−H4タンパク質を前記被験体に投与するステップを含む、方法。
【請求項7】
被験体における移植拒絶反応を阻害または軽減するための方法であって、TregによるIL−10の生成を、前記被験体における移植拒絶反応をコントロールと比べて阻害または軽減するのに有効な量だけ促進または増強するのに有効な量のB7−H4タンパク質を前記被験体に投与するステップを含む、方法。
【請求項8】
被験体における移植拒絶反応を阻害または軽減するための方法であって、Tregの数を、前記被験体における移植拒絶反応をコントロールと比べて阻害もしくは軽減するか、または移植される組織領域におけるTreg細胞の動員もしくは増殖を増強するのに有効な量だけ増大させるのに有効な量のB7−H4タンパク質を前記被験体に投与するステップを含む、方法。
【請求項9】
被験体における移植拒絶反応を阻害または軽減するための方法であって、前記被験体における移植拒絶反応をコントロールと比べて阻害もしくは軽減するのに有効な量だけ、Th1経路およびTh17経路を阻害し、Tregと共に作用して、Th17経路に対するその抑制効果を増強するか、またはTregによるIL−10の分泌を促進もしくは増強するのに有効な量のB7−H4タンパク質を前記被験体に投与するステップを含む、方法。
【請求項10】
被験体におけるサイトカインの生成を低減するための方法であって、前記被験体における1または複数のサイトカインの生成を阻害するのに有効な量のB7−H4ポリペプチド、B7−H4融合タンパク質、B7−H4アゴニスト性抗体、またはその断片を前記被験体に投与するステップを含む、方法。
【請求項11】
第2の治療剤を投与するステップをさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の治療剤が、グルココルチコイド、フルチカゾン、サルメテロール(salmeteroal);IL−12に対する抗体、IL−6に対する抗体、IFN−γに対する抗体、IL−23に対する抗体、IL−22に対する抗体、IL−21に対する抗体、およびIL−4に対する抗体;ビタミンD3;CTLA−4−Ig、ベラタセプト;デキサメタゾン、ならびにその組合せからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
被験体における移植拒絶反応を阻害または軽減する方法であって、Th0細胞が、Th1細胞、Th17細胞、またはTh22細胞のうちの1または複数に分化することを、前記被験体における移植拒絶反応をコントロールと比べて阻害または軽減するのに有効な量だけ阻害するのに有効な量のB7−H4ポリペプチド、B7−H4融合タンパク質、B7−H4アゴニスト性抗体、またはその断片を前記被験体に投与するステップを含む、方法。
【請求項14】
前記移植が、同種異系移植である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記移植が、皮膚移植、組織移植、臓器移植、または骨髄移植である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記B7−H4融合タンパク質が、移植前、移植後、またはその両方において、移植される細胞、組織、または器官に直接的に投与される、請求項1から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記B7−H4融合タンパク質が、免疫器官に直接的に投与される、請求項1から15のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
被験体における移植片対宿主病(GVHD)の1または複数の症状を処置するための方法であって、移植片を受けた被験体または移植片を受ける被験体に、GVHDの1または複数の症状を緩和するのに有効な量のB7−H4ポリペプチド、その融合タンパク質、またはその断片を投与するステップを含む、方法。
【請求項19】
糖尿病を処置するための方法であって、それを必要とする被験体に、インスリン生成細胞を移植するステップと、糖尿病に随伴する1または複数の症状を緩和するのに有効な量のB7−H4ポリペプチド、その融合タンパク質、またはその断片を前記被験体に投与するステップを含む、方法。
【請求項20】
被験体における慢性移植拒絶反応を阻害または軽減するための方法であって、コントロールと比べて移植片の慢性拒絶反応を阻害または軽減するのに有効な量のB7−H4融合タンパク質を前記被験体に投与するステップを含む、方法。
【請求項21】
患者が移植を拒絶する可能性を予測するための方法であって、
(a)前記患者におけるsH4レベルを決定するステップと、
(b)前記患者におけるsH4レベルを、移植を受けた1または複数の他の患者におけるsH4レベルと比較して、(a)において決定されたsH4レベルを有する前記他の患者における移植拒絶反応の頻度を決定するステップと
を含む、方法。
【請求項22】
移植について患者を選択するための方法であって、
(a)請求項21に記載の方法と、
(b)移植拒絶反応の可能性が30%以下である患者を選択するステップと
を含む、方法。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−503205(P2013−503205A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527108(P2012−527108)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2010/047384
【国際公開番号】WO2011/026132
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(512050737)アンプリミューン, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】