説明

移植機

【課題】圃場面からの段差が大きい畦際の道路や足場の悪い畦際等において、乗用型移植機のオペレータや補助作業者が重量の重い燃料補給用タンクを持ちながら移動しなくても、走行機体の前方から後部に亘って予備苗を移送することができる予備苗移送台を利用して燃料タンクへの燃料補給が容易に行えるようにする。
【解決手段】燃料タンク9へ燃料を補給する燃料補給用タンク33を予備苗移送台5上に載置した状態で、該予備苗移送台5を燃料タンク9側に姿勢変更できるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の側部に走行機体の前方から後部に亘って予備苗を移送することができる予備苗移送台を設けた移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の乗用型移植機では、走行機体の前部にエンジンを覆うボンネットを備えており、このボンネットの上部に燃料タンクを内蔵している。そして、ボンネットと燃料タンクの左右両側方に上下複数段の苗台を有する補助苗載台を設けると共に、その最上段の苗台を180度反転可能に支持部材に支承し、燃料タンクへ燃料を補給する際は最上段の苗台を機体側に180度反転することによって、最上段の苗台を燃料補給用タンクの載置台として兼用できるように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平4−77716号公報(第1図−第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上述した特許文献1のもでは、最上段の苗台を機体側に180度反転させて燃料補給用タンクの載置台として兼用する際は、補助作業者またはオペレータが重量の重い燃料補給用タンクを持ちながら、圃場面からの段差が大きい畦際の道路や足場の悪い畦際等を移動して、当該載置台上まで燃料補給用タンクを運ばなければならず十分な労力軽減効果が得られていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、走行機体の前部に備えるエンジンの上方に燃料タンクの給油口を配設すると共に、走行機体の側部に走行機体の前方から後部に亘って予備苗を滑動させて移送可能な予備苗移送台を設けた移植機において、前記燃料タンクへ燃料を補給する燃料補給用タンクを予備苗移送台上に載置した状態で、当該予備苗移送台を燃料タンク側に姿勢変更できるように構成したことを第一の特徴としている。
そして、前記予備苗移送台に燃料補給用タンクの滑動停止手段を設けたことを第二の特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明によれば、作業中に燃料タンクへ燃料を補給する必要が生じた時は、移植機を畦際等に移動した後に補助作業者またはオペレータが予備苗移送台上に燃料補給用タンクを載置し、しかる後に予備苗移送台を燃料タンク側に姿勢変更すれば、予備苗移送台上に載置した燃料補給用タンクをボンネットの上部に配設されている燃料タンクに近接せしめることができ、それによって燃料補給用タンクから燃料タンクへ容易に燃料を補給することができると共に、圃場面からの段差が大きい畦際の道路や足場の悪い畦際等において、補助作業者やオペレータが重量の重い燃料補給用タンクを持ちながら移動しなくて済むので労力も軽減される。
請求項2の発明によれば、前記予備苗移送台に燃料補給用タンクの滑動停止手段を設けたことによって、予備苗移送台上を滑動する燃料補給用タンクを燃料タンクに近接する適切な位置で停止させることができるので作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2は、乗用移植機である乗用型田植機1の側面図と平面図であって、この乗用型田植機1は、左右一対の前輪2及び後輪3に支持された走行機体4を有し、その左右一側(本実施例では左側)には、走行機体4の前方から後部に亘って延設される折畳み式の予備苗移送台5を配設すると共に、他側(右側)には、上下に多段の予備苗台6を備える予備苗載せ台7を設けている。
【0007】
そして、走行機体4の前部には、ボンネット8で覆われるエンジンEを搭載すると共に、ボンネット8の上部には、燃料タンク9を配設してある。更にボンネット8の後方には、ステアリングホイール11、運転操作パネル12、及び主変速レバー13等を備えた操縦部14と、この操縦部14の床面を形成するステップ15、座席16を支持する機体カバー17を設けている。尚、機体カバー17には、座席16後方の左右両側に、前記ステップ15より一段高い平坦な苗供給用ステップ17a,17aを形成している。
【0008】
また、走行機体4の後方には、昇降リンク機構18を介して植付作業機19を昇降自在に連結している。植付作業機19は、前高後低状に傾斜して設けた苗載せ台21と、該苗載せ台21から苗を掻取って植え付ける複数の植付杆22を備えた移植装置23と、この移植装置23の下方には、植付け田面を整地するフロート24等を設けているが、これらの基本的な構成は何れも従来通りであり詳細な説明を省略する。
【0009】
そして、ボンネット8の左右両側に形成されているフロントステップ25L,25Rのうち、左側のフロントステップ25Lの後部下方には、走行機体4から外側方に延出させた1本の支持パイプからなる支柱26を立ち上げると共に、この支柱26に回転自在に内嵌する支持バー27の上部に前高後低状のステー28を形成することによって、該ステー28の上部に折畳み式の予備苗移送台5を構成する固定移送台5aを螺設できるように構成している。
【0010】
更に固定移送台5aの前側と後側には、この固定移送台5aに対して回動可能な第1可動移送台5bと第2可動移送台5cとを連結してあり、予備苗移送台5は、図1及び図2に示すように、各移送台5a,5b,5cが側面視で前高後低の略一直線状に展開される展開姿勢状態と第1可動移送台5bと第2可動移送台5cとが固定移送台5aの上方に折畳まれた図示しない格納姿勢状態とに姿勢変更できるようになっている。
【0011】
尚、予備苗移送台5が展開姿勢状態にある時は、第1可動移送台5bは、ボンネット8より高い位置に展開して走行機体4の前端から大きく突出するので、圃場面Sからの段差が大きい畦際の道路Rや畦等から当該予備苗移送台5へ予備苗(マット苗)を補給する際の作業性がよい。また、第2可動移送台5cの終端は、苗供給用ステップ17a,17aの上方近傍に位置するので、第2可動移送台5cから苗載せ台21への予備苗の供給がスムーズに行える。
【0012】
また、予備苗移送台5を構成する固定移送台5a、第1可動移送台5b、及び第2可動移送台5cは、軽量部材であるアルミ合金製の左右の外枠31,31、またはポリアミド(ナイロン)等の熱可塑性樹脂を用いて射出成形した左右の外枠31´,31´の間に、所定の前後間隔で複数の転動ローラ32を取り付けたローラコンベアの形態を採用している。
【0013】
そして、圃場面Sからの段差が大きい畦際の道路Rや畦等から予備苗移送台5に予備苗を補給する際は、先ず走行機体4の前端から大きく突出する第1可動移送台5bを畦際に進入させ、しかる後に予備苗が育苗されている図示しない方形状の苗箱、あるいは苗箱に育苗されている予備苗を苗スクレーパで掬い取った状態で、予備苗移送台5の複数の転動ローラ32上を機体後方に向けて滑らせることによって、当該予備苗を畦際から連続的に予予備苗移送台5上に補給することができるようになっている。
【0014】
また、予備苗移送台5上には、上述した予備苗と同様に圃場面Sからの段差が大きい畦際の道路Rや畦等から、燃料タンク9へ燃料を補給する際に用いる燃料補給用タンク33も載置することができる。この場合も、先ず走行機体4の前端から大きく突出する第1可動移送台5bを畦際に進入させ、しかる後に燃料補給用タンク33を第1可動移送台5b上に載置して、該第1可動移送台5bに備える複数の転動ローラ32上を図1にA矢印で示す如く機体後方に向けて滑らせればよい。
【0015】
そして、予備苗移送台5を構成する固定移送台5aの前後方向略中間部には、燃料補給用タンク33の不要な滑動を防止する滑動停止手段、言い換えると予備苗移送台5上を滑動する燃料補給用タンク33を燃料タンク9に近接する適切な位置で停止させるべく、側面視でL字状の断面形状を有する起伏自在なストッパプレート34を横設している。
【0016】
更に詳しくは、ストッパプレート34の左右両端部における内曲げ部には、図3(a)及び図3(b)に示すように、ストッパプレート34を、グロメット35を介して図中E矢印方向に回動自在に支持する支持プレート36を固設してある。そして、ストッパプレート34の回り止め部材を兼ねる横パイプ37の両端に固設した左右の側板38L,38Rを、固定移送台5aを構成する左右の外枠31(31´)の内側にボルト41,42を用いて螺設すると共に、左右の側板38L,38Rを外枠31(31´)に螺設する後側のボルト42によって、前記グロメット35を介装した支持プレート36を支持しており、それにより上述のストッパプレート34に適当な回動抵抗を付与しながら、当該ストッパプレート34を図中実線で示すストッパ作用姿勢と二点鎖線で示すストッパ解除姿勢とに容易に起伏(姿勢変更)させることができる。
【0017】
以上説明したように、折畳み式の予備苗移送台5を構成する第1可動移送台5b上に載置した燃料補給用タンク33を機体後方に向けて滑らせ、その後部が固定移送台5aのストッパプレート34と当接した状態になったなら、支柱26に回転自在に内嵌する支持バー27を回動(旋回)支点として、折畳み式の予備苗移送台5を構成する第1可動移送台5bの先端側を図2にB矢印で示す如く機体中心方向へ回動させる。すると、固定移送台5aと第1可動移送台5bに亘って位置する燃料補給用タンク33の給油口33aが、乗用型移植機1の燃料タンク9の給油口9aと平面視で接近すると共に、燃料補給用タンク33の給油口33aが乗用型移植機1の燃料タンク9の給油口9aよりも高い位置にあるので、図示するように給油ポンプ46を用いて燃料補給用タンク33から燃料タンク9へ容易に燃料を補給することができる。
【0018】
即ち、植付作業中に燃料タンク9へ燃料を補給する必要が生じた時は、乗用型移植機1を畦際等に移動した後に補助作業者またはオペレータが予備苗移送台5上に燃料補給用タンク33を載置し、しかる後に予備苗移送台5を燃料タンク9側に姿勢変更(回動)すれば、予備苗移送台5上に載置した燃料補給用タンク6をボンネット8の上部に配設されている燃料タンク9に近接せしめることができ、それによって燃料補給用タンク33から燃料タンク3へ容易に燃料を補給することができると共に、圃場面からの段差が大きい畦際の道路Rや足場の悪い畦際等において、補助作業者やオペレータが重量の重い燃料補給用タンク33を持ちながら移動しなくて済むので労力も軽減される。そして、前記予備苗移送台5に燃料補給用タンク33の滑動停止手段としてのストッパプレート34を設けたことによって、予備苗移送台5上を滑動する燃料補給用タンク33を燃料タンク9に近接する適切な位置で停止させることができるので作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】乗用型田植機の側面図。
【図2】乗用型田植機平面図。
【図3】(a),(b)ストッパプレートの構成を示す側面図と平面図。
【符号の説明】
【0020】
4 走行機体
5 予備苗移送台
9 燃料タンク
33 燃料補給用タンク
34 滑動停止手段
E エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(4)の前部に備えるエンジン(E)の上方に燃料タンク(9)の給油口(9a)を配設すると共に、走行機体(4)の側部に走行機体(4)の前方から後部に亘って予備苗を滑動させて移送可能な予備苗移送台(5)を設けた移植機において、前記燃料タンク(9)へ燃料を補給する燃料補給用タンク(33)を予備苗移送台(5)上に載置した状態で、該予備苗移送台(5)を燃料タンク(9)側に姿勢変更できるように構成したことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記予備苗移送台(5)に燃料補給用タンク(33)の滑動停止手段(34)を設けた請求項1に記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−225699(P2009−225699A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73027(P2008−73027)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】