説明

移植機

【課題】機体の側部に畦際から予備苗を連続的に補給するための予備苗載せ台を備える乗用型田植機等の移植機において、第一苗台を固定苗台上に並列させた姿勢状態において、第1苗台とその下方の固定苗台上に並列して位置させた姿勢状態でも予備苗載せ台の前後並列姿勢状態と同量の予備苗を載置できるようにする。
【解決手段】第一苗台2fとその下方の固定苗台2mとの間に空間Sを有し、第一苗台2fと固定苗台2mに予備苗Nを載置できるように構成する。
また、第一苗台2fの後端に、当該姿勢での予備苗Nの落下を防止する部材25を設ける。
さらに、固定苗台2mの前端に、当該姿勢での予備苗Nの落下を防止する部材35を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の側部に、畦際から予備苗を連続的に補給するための予備苗載せ台を備える乗用型田植機等の移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、予備苗(マット苗)を乗用型田植機に補給する予備苗載せ台の形態としては、左右枠の間に転動ローラを多数設けたローラコンベアを機体の側部に配設し、前記転動ローラ上を予備苗が育苗されている苗箱を滑らせて、畦際から機体側に予備苗を連続的に補給できるように構成すると共に、ローラコンベアの前後中間部を折畳んで前側のコンベアを後側のコンベアの上に折重ねて格納する際、後側のコンベア上に載置されている予備苗が前側のコンベアと圧接しないように、両コンベアの折重ね間隔を所定の間隔に設定したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−276821号公報(第4−5頁、図12−13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来の予備苗載せ台では、ローラコンベアの前後中間部を折畳んで前側のコンベアを後側のコンベアの上に折重ねた格納状態において、折重ねない状態と同量の苗をコンベア上に載置することは困難だった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決することを目的として創案したものであって、運転席を設けた走行機体の後部に植付部を連結し、走行機体の側部に、畦際から予備苗を補給する予備苗載せ台を備える移植機において、前記予備苗載せ台は、前記運転席よりも前方において走行機体に固定的に設けた固定苗台と、移動可能に設けた第一苗台、及び第二苗台を有し、前記予備苗載せ台の姿勢状態を、前記第一苗台、前記固定苗台、及び第二苗台を前後に略一直線状に並列させた姿勢状態と、前記第一苗台を固定苗台上に並列して位置させた姿勢状態とに姿勢変更可能になすと共に、前記第一苗台を固定苗台上に並列させた姿勢状態において、第一苗台とその下方の固定苗台との間に空間を有し、第一苗台と固定苗台に予備苗を載置できるように構成したことを第1の特徴としている。
また、前記第一苗台を固定苗台上に並列させた姿勢状態における前記第一苗台の後端に、当該姿勢での予備苗の落下を防止する落下防止部材を設けたことを第2の特徴としている。
そして、前記第一苗台を固定苗台上に並列させた姿勢状態における前記固定苗台の前端に、当該姿勢での予備苗の落下を防止する部材を設けたことを第3の特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、前記第一苗台を固定苗台上に並列させた姿勢状態において、第一苗台とその下方の固定苗台との間に空間を有し、第一苗台と固定苗台に予備苗を載置できるように構成したことによって、第一苗台のみを折畳んで固定苗台の上方に並列させて走行機体の前端からの予備苗載せ台の突出量を少なくした短縮姿勢状態で行う植付作業時においても、第1苗台上に同じように予備苗を載置でき、予備苗載せ台の全長を有効に利用して、当該予備苗載せ台の前後並列姿勢状態と同量の予備苗を載置することができる。
【0007】
また、請求項2の発明によれば、第一苗台を固定苗台上に並列させた姿勢状態において、当該姿勢での予備苗の第一苗台の後端からの落下を防止して、予備苗載せ台の前後並列姿勢状態と同量の予備苗を載置することができる。
そして、請求項3の発明によれば、第一苗台を固定苗台上に並列させた姿勢状態において、当該姿勢での予備苗の前記固定苗台の前端からの落下を防止して、予備苗載せ台の前後並列姿勢状態と同量の予備苗を載置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明を適用した乗用型田植機(移植機)の全体側面図。
【図2】同上全体平面図。
【図3】展開姿勢状態(前後並列姿勢状態)の予備苗載せ台に予備苗を載置した状態を示す乗用型田植機の全体側面図。
【図4】苗スクレーパの把持部形状、及び予備苗載せ台後端のストッパープレートを示す要部側断面図。
【図5】予備苗載せ台の前後方向中間部に設けた開閉可能なローラコンベア手段を示す側断面図。
【図6】展開姿勢状態(前後並列姿勢状態)の予備苗載せ台の前部を折畳んで予備苗を載置した状態を示す乗用型田植機の全体側面図。
【図7】展開姿勢状態(前後並列姿勢状態)の予備苗載せ台の前部を折畳んで予備苗を載置した状態を示す要部側断面図。
【図8】格納姿勢状態(上下並列姿勢状態)の予備苗載せ台を示す乗用型田植機の全体側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2は、乗用型田植機(移植機)1の機体の左右側部に配設される折畳み式の予備苗載せ台2,2の展開姿勢状態(前後並列姿勢状態)を示す側面図及び平面図であり、予備苗載せ台2,2が配設される乗用型田植機1は、前輪3及び後輪4に支持される走行機体5を有しており、走行機体5の前側にはフロントステップ6を載置し、このフロントステップ6の中央にボンネット7で覆われたエンジン(不図示)を搭載すると共に、ボンネット7の後方にはステアリングハンドル8や主変速レバー9、及び運転操作パネル10等を備えた操縦部11、該操縦部11の床面を形成するステップ12、運転席13を支持する機体カバー14等を設けている。尚、機体カバー14は、運転席13後方の左右両側にステップ12より一段高く形成した平坦な苗補給用ステップ14a,14aを設けている。
【0010】
そして、走行機体5の後部には、昇降リンク機構15を介して作業機である植付部16を昇降自在に連結している。植付部16は、前方に傾斜して設けられた苗載せ台17と、苗載せ台17から苗を掻取って植え付ける複数のプランタ18を備え、このプランタ18の下方には植付け田面を整地するフロート19等が設けられているが、これらの基本的な構成は何れも従来通りであり詳細な説明を省略する。
【0011】
フロントステップ6の左右両側に配設されて畦際から予備苗N(図3参照)を補給する折畳み式の予備苗載せ台2,2は、走行機体5から外側方に延出されるブラケット21a,21bに取り付けた固定苗台2mと、固定苗台2m前方の第一苗台2fと、固定苗台2m後方の第二苗台2bにより構成されており、当該予備苗載せ台2,2が、第一苗台2fを固定苗台2mに対して前方に位置させ、且つ、第二苗台2bを固定苗台2mに対して後方に位置させて、固定苗台2m、第一苗台2f、及び第二苗台2bを前後に並列させた展開姿勢状態(前後並列姿勢状態)にある時は、その全体が前高後低の傾斜姿勢になっている。この時、予備苗載せ台2,2を構成する第一苗台2fは走行機体5の前端から大きく突出すると共に、第二苗台2bは、前記操縦部11の床面を形成するステップ12、及び運転席13の側方に位置し、植付部16の苗載せ台17の近傍に位置する機体カバー14の平坦な苗補給用ステップ14a,14a上まで延出されるようになっている。
【0012】
また、上述の如く展開姿勢状態(前後並列姿勢状態)にある予備苗載せ台2,2は、全体としては、軽量部材であるアルミ合金製の左右の外枠間に所定の間隔で転動ローラ21・・・を複数取り付けたローラコンベアの形態を採用しており、畦際から予備苗載せ台2,2に予備苗を補給する際は、先ず走行機体5の前端から大きく突出する予備苗載せ台2,2の第一苗台2fを畦際に進入させ、しかる後に図3に示すように、方形状の苗箱(不図示)に育苗されている予備苗(マット苗)Nを苗スクレーパ25で掬い取った状態で、前記転動ローラ・・・上を図中の矢印方向(機体後方)に順次滑らせることによって、予備苗Nを畦際から連続的に予備苗載せ台2,2上に補給することができる構成になっている。
【0013】
この時、図4に示すように、苗スクレーパ25の把持部25aの後端面Eが予備苗Nの床土Gと接当するように、把持部25aを上方に向けて凸状に形成しておけば、予備苗載せ台2,2上に載置した苗スクレーパ25の把持部25aと、引き続いて補給される苗スクレーパ25の先端部25b側の苗茎部が直接接当することがないので、当該予備苗補給時に発生する苗茎部の損傷を防止することができる。尚、図中に示す予備苗載せ台2,2を構成する第二苗台2bの後端には断面が逆L字状のストッパープレート26が横設してあり、このストッパープレート26が落下防止部材となり、前高後低の傾斜姿勢に構成されている予備苗載せ台2,2上に載置した予備苗Nが落下することを防いでいる。
【0014】
また、予備苗載せ台2,2の中間部を構成する固定苗台2mの下方には、図示しない施肥装置にペースト状または液状の肥料を供給するための肥料タンク27L,27Rが設置されており、この肥料タンク27L,27Rの上部に設けられた肥料補給口(蓋)Bが、固定苗台2mに塞がれた状態になっている。そこで、肥料タンク27L,27Rの肥料補給口(蓋)Bの上部には、図5に示すように、部分的に開閉可能なローラコンベア手段22を設けている。即ち、前記ローラコンベア手段22は、固定苗台2mを構成する左右の外枠28,28の内側に嵌装する内枠28a,28aに、3個の転動ローラ21を所定の間隔で取り付けると共に、P1を回動支点として図中矢印方向に回動可能に構成している。したがって、肥料タンク27L,27Rに肥料を補充する際は、ローラコンベア手段22を図中の二点鎖線で示す苗補給姿勢から実線で示す状態まで回動させると、肥料タンク27L,27Rの肥料補給口(蓋)B上部が開放されて容易に肥料の補充が行えるようになる。
【0015】
また、第一苗台2fの後端に突出状に設けられた左右のアーム30,30は、固定苗台2mの前端に上方に向け突出状に形成した左右のアーム31,31に、P2を回動支点として後方に向けて回動可能に支持されている。そして、図6及び図7に示すように、第一苗台2fのみを図中矢印に示す如く後方に回動させて折畳み、固定苗台2mの上方に位置させた状態(植付作業姿勢状態)で、前記アーム31,31の上部に固着したストッパーピン32,32と左右のアーム30,30が接当すると、当該第一苗台2fの下方の固定苗台2m上に予備苗Nを載置可能とする空間Sが確保されると共に、第一苗台2fの上面側Uにも予備苗Nを載置することができる。即ち、第一苗台2fのみを折畳んで固定苗台2mの上方に並列させて位置させることで、予備苗載せ台2,2の前後方向の長さを短縮した姿勢状態である植付作業姿勢状態とした時、第一苗台2fの上面側Uとその下方の固定苗台2m上に予備苗Nを載置可能に構成したので、第一苗台2fのみを折畳んで固定苗台2mの上方に並列させて走行機体5の前端からの予備苗載せ台2,2の突出量を少なくした短縮姿勢状態で行う植付作業時においても、第1苗台上に同じように予備苗Nを載置でき、予備苗載せ台2,2の全長を有効に利用して、当該予備苗載せ台2,2の展開姿勢状態(前後並列姿勢状態)と同量の予備苗Nを載置することができる構成になっている。
【0016】
尚、上述の如く第一苗台2fの後端に突出状に設けた左右のアーム30,30と、固定苗台2mの前端に上方に向け突出状に形成した左右のアーム31,31による第一苗台2fの折畳み形態に換えて平行リンク機構を採用することも可能である。更に、第一苗台2fの後端には、第二苗台2bの後端に横設した落下防止部材としてのストッパープレート26を同様に設けると共に、その前端側には落下防止部材としての棒状のストッパー33を横設し、また固定苗台2mの前端には、常時スプリング34によりP3を支点として上方へ回動付勢されるストッパーアーム35を設けることによって、図6及び図7に示す如く、予備苗載せ台2,2上に載置された予備苗N・・・が植付作業時の機体振動に伴って落下することがないように落下防止手段を構成している。
【0017】
尚、上述の如く第一苗台2fを折畳んで上方に位置させ、植付作業姿勢状態とした時、第一苗台2fの後端部が、第二苗台2bの後端部よりも予備苗N一枚分以上前方に位置する構成になっており、それによって第二苗台2b及び固定苗台2m上に載置されている予備苗Nを順序よく容易に取り出すことができるので、当該予備苗Nを植付部の苗載せ台へ補給する作業が効率的に行えるようになる。
【0018】
一方、第二苗台2bは、固定苗台2mの後端、即ち運転操作パネル10の側方位置のP4を回動支点として前方に向けて回動可能に支持されている。更に詳しくは、図8に示すように、第一苗台2fを後方に回動させて折畳んだ状態、即ち第一苗台2fを植付作業姿勢状態とした時に形成される第一苗台2fとその下方の固定苗台2mとの空間Sに、第二苗台2bを折畳んで、走行機体前部のフロントステップ6の側方において、固定苗台2mに対して第一苗台2f、及び第二苗台2bを上下方向に並列して位置させることによって、予備苗載せ台2,2を格納姿勢状態(上下並列姿勢状態)とすることができるようになっており、予備苗載せ台2,2の折畳み構造を軽量且つコンパクト化することができる。また第一苗台2fと第二苗台2bを折畳んで、固定苗台2m、第一苗台2f、及び第二苗台2bを走行機体前部のフロントステップ6の側方に上下方向に並列させた姿勢状態としたことにより、操縦部11の床面を形成するステップ12へのスムーズな乗降を可能とするにあたって、別途油圧アクチュエータ等を設ける必要がなく、低コストの予備苗載せ台2,2を構成することができるようになる。
【符号の説明】
【0019】
2 予備苗載せ台
2f 第一苗台
2b 第二苗台
2m 固定苗台
5 走行機体
16 植付部
17 苗載せ台
N 予備苗
S 空間
U 第一苗台の上面側(植付作業姿勢状態)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席(13)を設けた走行機体(5)の後部に植付部(16)を連結し、走行機体(5)の側部に、畦際から予備苗(N)を補給する予備苗載せ台(2)を備える移植機において、
前記予備苗載せ台(2)は、前記運転席(13)よりも前方において走行機体(5)に固定的に設けた固定苗台(2m)と、移動可能に設けた第一苗台(2f)、及び第二苗台(2b)を有し、
前記予備苗載せ台(2)の姿勢状態を、前記第一苗台(2f)、前記固定苗台(2m)、及び第二苗台(2b)を前後に略一直線状に並列させた姿勢状態と、前記第一苗台(2f)を固定苗台(2m)上に並列して位置させた姿勢状態とに姿勢変更可能になすと共に、
前記第一苗台(2f)を固定苗台(2m)上に並列させた姿勢状態において、第一苗台(2f)とその下方の固定苗台(2m)との間に空間(S)を有し、第一苗台(2f)と固定苗台(2m)に予備苗(N)を載置できるように構成したことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記第一苗台(2f)を固定苗台(2m)上に並列させた姿勢状態における前記第一苗台(2f)の後端に、当該姿勢での予備苗(N)の落下を防止する部材(26)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項3】
前記第一苗台(2f)を固定苗台(2m)上に並列させた姿勢状態における前記固定苗台(2m)の前端に、当該姿勢での予備苗(N)の落下を防止する部材(35)を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−178754(P2010−178754A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94373(P2010−94373)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【分割の表示】特願2007−19735(P2007−19735)の分割
【原出願日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】