説明

種籾の温湯消毒方法

【課題】建屋内における配置が容易で、しかも作業者による作業領域を1箇所にまとめて、少ない作業者数で種籾容器の搬入と搬出などの作業を効率的に行うことができる種籾の消毒装置を提供する。
【解決手段】種籾の温湯消毒装置1は、種籾を温湯に浸す温湯タンク2と、温湯に浸した種籾を冷水に浸す冷水タンク3と、種籾を収容する通水性の種籾容器4と、種籾容器4を昇降および移動させる自動搬送装置5とで構成される。温湯タンク2および冷水タンク3を自動搬送装置5による種籾容器4の移動経路に並べて配置してある。自動搬送装置5の一端側には、種籾容器4の移動経路内に種籾容器4を搬入し搬出する作業域6を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種籾を温湯に浸して病原菌を死滅ないし不活化する種籾の温湯消毒装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
種籾には、いもち病菌、糸状菌、苗立枯細菌病菌、ごま葉枯病菌、褐条病菌、もみ枯細菌病菌などの病原菌が表面に付着しまたは籾殻と果皮との間に潜んでいる。従来、種籾を所定温度の温湯に所定時間浸すことにより、種籾の表面に付着しまたは籾殻と果皮との間に潜む病原菌を死滅ないしは不活化(以下、消毒という)する装置であって、温湯浸漬のための種籾容器に種籾を詰め込む工程、種籾を種籾容器ごと温湯に浸漬する工程、温湯漬漬した種籾を種籾容器ごと冷水に浸漬して冷却する工程、冷却した種籾を水切りして種籾容器から取り出す工程を一連処理する種籾の温湯消毒装置としては、特開2006−42745公報、特開2006−158302公報、特開2005−52023公報および特開2005−328723公報に記載されているものなどが知られている。
【0003】
また、種籾を収容した種籾容器を自走クレーンで吊り下げて温湯タンクに出し入れする種籾の温湯消毒装置は、特開平11−318118号公報または特開2002−325505公報、特開2003−235308公報、特開2004−90公報および特開2004−290011公報に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−42745公報
【特許文献2】特開2006−158302公報
【特許文献3】特開2005−52023公報
【特許文献4】特開2005−328723公報
【特許文献5】特開平11−318118号公報
【特許文献6】特開2002−325505公報
【特許文献7】特開2003−235308公報
【特許文献8】特開2004−90公報
【特許文献9】特開2004−290011公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前掲の特許文献1ないし4、または特許文献5ないし9に記載されている従来の種籾の温湯消毒装置においては、種籾を種籾容器に詰め込む作業を行う作業領域と、温湯消毒処理を終えた種籾を種籾容器から取り出す作業を行う作業領域が互いに反対側となるように離れているので、種籾の温湯消毒装置を設置する建屋内の配置上、2箇所にわたる作業領域と作業者がそこへ出入りするための通路やスペースなどを必要として、種籾の温湯消毒装置を設備する建屋の有効利用がはかれず、また作業領域が離れているところから、2箇所の作業領域にそれぞれ作業者の配置を要したり、また作業者の作業行動も非効率となるなどの問題点が指摘されていた。
【0006】
そこで本発明は、このような従来の問題点を解消しようとするものであって、建屋内における配置が容易であり、少ない作業者数で種籾容器の搬入と搬出などの作業を効率的に行うことができる種籾の温湯消毒装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1特徴は、種籾を温湯に浸して病原菌を死滅ないし不活化する種籾の温湯消毒装置において、次のように構成することにある。
種籾を温湯に浸す温湯タンクと、温湯に浸した種籾を冷水に浸す冷水タンクと、種籾を収容する通水性の種籾容器と、種籾容器を昇降および移動させる自動搬送装置とで構成され、温湯タンクおよび冷水タンクを自動搬送装置による種籾容器の移動経路に並べて配置してあり、自動搬送装置の一端側に、種籾容器の移動経路内に種籾容器を搬入し搬出する作業域を設けている。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第2特徴は、種籾を温湯に浸して病原菌を死滅ないし不活化する種籾の温湯消毒装置において、次のように構成することにある。
種籾を温湯に浸す温湯タンクと、温湯に浸した種籾を冷水に浸す冷水タンクと、種籾を収容する通水性の種籾容器と、種籾容器を昇降および移動させる自動搬送装置とで構成され、温湯タンクおよび冷水タンクを自動搬送装置による種籾容器の移動経路に並べて配置してあり、自動搬送装置は、作業域、温湯タンクおよび冷水タンク上に亘る単線往復経路を構成しており、作業域側を往路の移動始点、冷水タンク側を往路の移動終点とし、作業域側を復路の移動終点とする制御機能を備えている。
【0009】
本発明の第3特徴は、本発明の第1または第2特徴の種籾の温湯消毒装置において次のように構成することにある。
自動搬送装置による種籾容器の移動経路に、作業域、温湯タンクおよび冷水タンクの順に並べて配置している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1特徴によると、種籾容器を昇降および移動させる自動搬送装置の一端側に種籾容器の移動経路内に種籾容器を搬入し搬出する作業域を設けたことにより、建屋内における配置が容易で、しかも作業者による作業領域を1箇所にまとめて少ない作業者数で種籾容器の搬入と搬出などの作業を効率的に行うことができる。
【0011】
本発明の第3特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第3特徴によると、冷水浸漬時間よりも所要時間の長い温湯浸漬時間中に、種籾容器を種籾容器に最も離れている冷水タンクと作業域間を移動させることで、作業時間のロスを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態に係る種籾の温湯消毒装置を示す全体斜視図である。
【図2】同上正面図である。
【図3】同上種籾容器を温湯タンク内に降ろした態様を示す正面図である。
【図4】本発明の実施の第1別形態に係る種籾の温湯消毒装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明の一実施の形態に係る種籾の温湯消毒装置を示す全体斜視図、図2は同上正面図、図3は同上種籾容器を温湯タンク内に降ろした態様を示す正面図、図4は本発明の他の実施の形態に係る種籾の温湯消毒装置を示す正面図である。
【0014】
本発明に係る種籾の温湯消毒装置1は、種籾を温湯に浸す温湯タンク2と、温湯に浸した種籾を冷水に浸す冷水タンク3と、種籾を収容する通水性の種籾容器4と、種籾容器4を吊持して昇降および移動させる自動搬送装置5とで構成されている。
【0015】
温湯タンク2および冷水タンク3は、自動搬送装置5による種籾容器4の移動経路に並べて配置してあり、自動搬送装置5の一端側には、種籾容器4の移動経路内に種籾容器4を搬入し搬出する作業域6を設けてある。作業域6には自動搬送装置5に対して前後方向に種籾容器4を2個並べて置くことができる作業台7を設けてあり、この作業台7の後方側略半分は自動搬送装置5の種籾容器4の移動経路から後方に出ていて、作業台7の後方に載置した種籾容器4は手押し作業によって前方へ移動させることにより自動搬送装置5による種籾容器4の移動経路に挿入することができるようになっている。自動搬送装置5による種籾容器4の移動経路に配置された前記作業域6、温湯タンク2および冷水タンク3はその順に並べて配置されており、温湯タンク2および冷水タンク3は互いに連結されているとともに自動搬送装置5の支脚が温湯タンク2および冷水タンク3に固定されている。
【0016】
自動搬送装置5は、作業域6、温湯タンク2および冷水タンク3の順に並ぶ種籾容器4の移動経路を跨ぐ架台8上に、前記種籾容器4の移動経路の方向に懸架した駆動チェーン9により往復動する移動台車10と、移動台車10に装備された、種籾容器4を吊持して昇降させるための昇降機構11とで構成されている。駆動チェーン9は、冷水タンク3側の端部に設けられたスプロケット12と、作業域6側の端部に位置するスプロケット13間に懸架されており、駆動チェーン9の懸架上側の一端と他端は移動台車10の前後に連結されていて、駆動チェーン9の回転により移動台車10がレール14上を往方向または復方向に移動するようになっている。15は駆動電動機であって前記スプロケット12に動力を伝動するものである。
【0017】
このように種籾容器4を吊持して昇降および移動させる自動搬送装置5は、作業域6、温湯タンク2および冷水タンク3上に跨る単線往復経路を構成しており、作業域6側を往路の移動始点、冷水タンク3側を往路の移動終点とし、作業域6側を復路の移動終点とする制御機能を備えている。
【0018】
前記自動搬送装置5は、作業域6で種籾容器4を吊持して温湯タンク2による温湯浸漬処理位置、冷水タンク3による冷却処理および作業域6への戻し工程の順に種籾容器4を昇降および移動させる制御機能を備えており、架台8上の作業域6、温湯タンク2および冷水タンク3に対応する位置には、それぞれ位置センサ16、17、18が設けられていて、前記位置センサ16、17、18による移動台車10の位置感知動作により、移動台車10をそれぞれの定位置に自動的に停止させる制御機構を構成している。位置センサ16、17および18は、移動台車10の制御位置に複数のスイッチを設けることにより構成している。
【0019】
前記移動台車10には前述のように昇降機構11が装備されているが、この昇降機構11の下端には種籾容器4の吊り掛けフック19を取り付けてある。20は昇降駆動電動機であって移動台車10に搭載してある。昇降機構11の吊り掛けフック19は、移動台車10の復路方向に開口する開口部21が形成されているとともに種籾容器4の吊り掛けアーム22を一定の掛け位置に誘導する掛け溝23が形成されているものである。したがって、吊り掛けフック19にその開口部21から掛けられた種籾容器4はその掛けアーム22が掛け溝23に案内されて定位置に吊り下がるとともに不用意な外れが防止される。
【0020】
本発明に係る種籾の温湯消毒装置1により種籾の温湯消毒を行うにあたっては、温湯タンク2に張った水または温湯を所定温度に保つように温度制御をする。また冷水タンク3には冷水を張るとともに循環および適宜冷水を補給する冷水管理を行う。消毒する種籾は網袋に詰めるかまたは直に作業域6の作業台7上で種籾容器4に入れ、昇降機構12の吊り掛けフック19を種籾容器4の吊り掛けアーム22に合わせて下げ、移動台車10の復方向の移動により掛止めたうえ上昇により種籾容器4を吊り下げる。そして、移動台車10を、作業域6から温湯タンク2上に移動して種籾容器4を温湯タンク2内に降ろして種籾を温湯に浸漬し、移動台車10は作業域6に戻しておく。
【0021】
次いで、温湯タンク2による温湯浸漬処理時間が経過した時点で、作業域6に戻されている移動台車10を作業域6から温湯タンク2上に移動するとともに種籾容器4を吊り上げて冷水タンク3上まで移動し、種籾容器4を冷水タンク3内に降ろして冷水に浸漬し、移動台車10は再び作業域6に戻しておく。
【0022】
温湯タンク2による温湯浸漬時間は10分間、冷水タンク3による冷水浸漬時間は5分間に設定するものとすれば(通常、温湯浸漬時間は10分間、冷水浸漬時間は5分間が好適である)、種籾の温湯浸漬と冷水浸漬に要する時間は15分間である。そして、先行する種籾容器4が冷水タンク3に移動すれば、温湯タンク2が空き状態となるので、先行する種籾容器4が温湯タンク2の温湯浸漬継続中に、後行する別の種籾容器4に作業域6の作業台7上で種籾の詰め込み作業を済ませておき、先行する種籾容器4を冷水タンク3に移して作業域6に戻っている移動台車10により、作業域6から後行する種籾容器4を温水タンク3に移動して温湯浸漬する。
【0023】
前述のように種籾の温湯浸漬時間は冷水浸漬の2倍であるから、後行する種籾容器4が温湯タンク2の温湯浸漬継続中に先行する種籾容器4の冷水浸漬時間が経過するので、作業域6に戻っている移動台車10により冷水タンク3から先行する種籾容器4を引き上げて作業域6に移動させ、かつ、浸漬後の種籾を取出して次の温湯浸漬に備え(浸漬前の種籾の詰め込み作業を済ませる)る。そして、先行する種籾容器4が作業域6に移動させた後に後行する種籾容器4の温湯タンク3による温湯浸漬時間が経過するので、作業域6に戻っている移動台車10により後行する種籾容器4を冷水タンク3に移動させて冷水浸漬し、移動台車10は作業域6に戻される。
【0024】
次いで、既に種籾を詰めて待機している先行する種籾容器4を温湯タンク2に移動させて温湯浸漬する。移動台車10は温湯タンク2の位置から作業域6に戻される。
【0025】
次いで、冷水タンク3により冷水浸漬中の後行する種籾容器4が冷水浸漬時間を経過するので、作業域6から移動台車10を冷水タンク3に移動して後行する種籾容器4を作業域6に移動して種籾を取り出し、次の温湯浸漬に備える。以下、2個の種籾容器4を用いてこの作業を繰り返えすことにより、種籾の温湯消毒作業を継続することができる。
【0026】
本発明に係る種籾の温湯消毒装置1おいては、種籾容器4を吊持して昇降および移動させる自動搬送装置5が、作業域6、温湯タンク2および冷水タンク3上に亘る単線往復経路を構成しているものであり、作業域6側を往路の移動始点、冷水タンク3側を往路の移動終点とし、作業域6側を復路の移動終点とするものであるから、種籾容器4の移動経路は1系統であってそれを往路および復路に使用するものである。しかし、一般的に冷水浸漬時間より温湯浸漬時間の方が長く、この種籾の温湯浸漬とその後の冷水浸漬の経過時間差およびそれぞれの所要時間差を有効に利用することにより、温湯浸漬時間中に種籾容器4を最も離れている冷水タンク3と作業域6間を移動させるようにし、移動による作業時間のロスが少なくできる。しかも単線往復経路のように構成自体が簡素なものであっても作業の進行に滞りがなく、容易にしかも効率的な作業を行うことができるものである。
【0027】
[発明の実施の第1別形態]
本発明に係る種籾の温湯消毒装置1にあっては、図4に示すように、種籾容器4に代えて遠心脱水機(図示せず)の脱水容器24を用いることができる。この脱水容器24は、底面25が多孔面を成しているとともに下方に開放できるものである。なお図4に示す構成においては、脱水容器24をホイスト26により吊持して移動するようになっている。その外の構成は図1ないし図3に示すものと同構成である。
【0028】
[発明の実施の第2別形態]
本発明に係る種籾の温湯消毒装置1にあっては、種籾容器4は通水性さえあれば、変形可能な袋状のものや、折り畳み自在な容器などでも良い。
また、自動搬送装置5は昇降と移動の機能があれば、[発明を実施するための最良の形態]および[発明の実施の第1別形態]に限定されるものではなく、例えば昇降と移動の機能が別の装置で分担されているもの、種籾容器4をコンベア搬送するもの、種籾容器4が所望の位置にガイドされるもの、種籾容器4を挟んだり下部から支えたりして支持し、その部材が昇降して所望の位置に移動させるものなどでも良い。
【符号の説明】
【0029】
1 種籾の温湯消毒装置
2 温湯タンク
3 冷水タンク
4 種籾容器
5 自動搬送装置
6 作業域
7 作業台
8 架台
9 駆動チェーン
10 移動台車
11 昇降機構
12 スプロケット
13 スプロケット
14 レール
15 駆動電動機
16,17,18 位置センサ
19 吊り掛けフック
20 昇降駆動電動機
21 開口部
22 吊り掛けアーム
23 掛け溝
24 脱水容器
25 底面
26 ホイスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種籾を温湯に浸して病原菌を死滅ないし不活化する種籾の温湯消毒装置であって、
種籾を温湯に浸す温湯タンクと、温湯に浸した種籾を冷水に浸す冷水タンクと、種籾を収容する通水性の種籾容器と、前記種籾容器を昇降および移動させる自動搬送装置とで構成され、前記温湯タンクおよび冷水タンクを自動搬送装置による種籾容器の移動経路に並べて配置してあり、
前記自動搬送装置の一端側に、前記種籾容器の移動経路内に種籾容器を搬入し搬出する作業域を設けてあることを特徴とする種籾の温湯消毒装置。
【請求項2】
種籾を温湯に浸して病原菌を死滅ないし不活化する種籾の温湯消毒装置であって、
種籾を温湯に浸す温湯タンクと、温湯に浸した種籾を冷水に浸す冷水タンクと、種籾を収容する通水性の種籾容器と、前記種籾容器を昇降および移動させる自動搬送装置とで構成され、前記温湯タンクおよび冷水タンクを自動搬送装置による種籾容器の移動経路に並べて配置してあり、
前記自動搬送装置は、作業域、前記温湯タンクおよび冷水タンク上に亘る単線往復経路を構成しており、前記作業域側を往路の移動始点、前記冷水タンク側を往路の移動終点とし、前記作業域側を復路の移動終点とする制御機能を備えていることを特徴とする種籾の温湯消毒装置。
【請求項3】
自動搬送装置による種籾容器の移動経路に、作業域、温湯タンクおよび冷水タンクの順に並べて配置したことを特徴とする請求項1または2記載の種籾の温湯消毒装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−250807(P2011−250807A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204672(P2011−204672)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【分割の表示】特願2007−160207(P2007−160207)の分割
【原出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【出願人】(000132792)株式会社タイガーカワシマ (48)
【Fターム(参考)】