説明

穀物乾燥機

【課題】収納時に嵩張ることなく、しかも、軽量な穀物乾燥機であって、特に、乾燥機本体とシート体との脱着、及び乾燥機本体と揚穀装置との脱着が極めて簡単で、組立・分解の作業性を向上させ、さらに、揚穀装置としてバケット昇降機を用いた場合でも製造コストを抑える。
【解決手段】乾燥用空気を上方へ誘導すべく筒状に形成した乾燥機本体と、乾燥機本体に通風する送風ファン3と、通気性の底面部4a及び非通気性の側面部4bにより形成され、前記乾燥機本体に上載して穀粒の通風乾燥を可能とした円筒状のシート体4と、該シート体4内に穀粒を投入するために穀粒を揚送する揚穀装置5とを備えた穀物乾燥機であって、揚穀装置5を、バケット昇降機となし、横送スクリュー13のスクリュー軸15aに、バケット昇降機5の下部内調車27を軸着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納が簡単な穀物乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
穀物乾燥機は、一年のうちで秋など一定の収穫時期のみ使用され、使用後は機内に溜まった残留米及び塵埃などを噴風・除去して清掃を施した上で納屋など倉庫に保管される。しかし、従来の鋼板等の材料を用いて製作した穀物乾燥機は、体積が大きくかつ重量が重いので、収納時の移動などが非常に不便であった。そこで、収納時に嵩張(かさば)ることなく、しかも、軽量な穀物乾燥機として、例えば、特許文献1に開示されているものが知られている。このものは、乾燥用温風が通過する穀物流下通路を備えた乾燥機本体と、該乾燥機本体の上側に閉空間を形成するシート体と、前記乾燥機本体に着脱自在に取付けられて前記シート体を支持する支持枠と、前記穀物流下通路を流下した穀物を前記閉空間の上端部に移送する揚穀装置とを設けたことを特徴とする構成である。
【0003】
これにより、穀物の滞留槽となる部分がシート体からなり、また、支持枠が乾燥機本体に着脱自在に取り付けられているので、収納時には乾燥機本体からシート体及び支持枠を取り外し、さらに、シート体と支持枠とを分離してシート体を折り畳むことができるので、嵩張らず、しかも軽量であるために収納に際して非常に便利となるものである。また、乾燥すべき穀物の量が少ない場合は、支持枠を上下にずらして乾燥機本体に固定し、これに応じた長さの揚穀装置の接続管を用いることにより、使用時の穀物乾燥機の高さを低くできるという利点もある。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の穀物乾燥機にあっては、シート体を乾燥機本体に固定する方法として、乾燥機本体の上端部周囲に取り付けられた複数の係止金具に、シート体下端部周囲に設けられた複数の孔を嵌め合わせることにより行われるが、該複数の係止金具と複数の孔とを嵌め合わせる作業は、位置合わせなどを考慮すると組立・分解作業が煩わしく面倒な作業であった。特に、お年寄りにとっては、組立・分解作業が簡略化された機械が望まれていた。
【0005】
また、上記特許文献1では、揚穀装置としてスロワが開示されているが、揚穀量が増えると揚穀高さが減少して、能力が不足する問題がある。搬送量及び揚穀高さに問題のない揚穀装置としては、バケット昇降機が挙げられる。そこで、横送用スクリューコンベアと揚穀装置との駆動系に関して言及すれば、横送用スクリューコンベアとスロワとを一本の駆動軸で連結することはよく知られているが、横送用スクリューコンベアとバケット昇降機とを一本の駆動軸で連結することは知られていない。例えば、特許文献2は、バケット昇降機の供給装置が開示されているが、昇降機の駆動用のモータと横送用スクリューコンベアの駆動用のモータとが設けられ、夫々が独立した駆動機構となっており、製造コスト高の要因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭57−105674号公報
【特許文献2】特開昭63−47222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点にかんがみ、収納時に嵩張ることなく、しかも、軽量な穀物乾燥機であって、特に、乾燥機本体とシート体との脱着、及び乾燥機本体と揚穀装置との脱着が極めて簡単で、組立・分解の作業性を向上させ、さらに、揚穀装置としてバケット昇降機を用いた場合でも製造コストを抑えることのできる穀物乾燥機を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、乾燥用空気を上方へ誘導すべく円筒状又は多角形筒状に形成した乾燥機本体(2)と、該乾燥機本体(2)に通風する送風ファン(3)と、通気性の底面部(4a)及び非通気性の側面部(4b)により形成され、前記乾燥機本体(2)に上載して穀粒の通風乾燥を可能とした円筒状のシート体(4)と、該シート体(4)内に穀粒を投入するために穀粒を揚送する揚穀装置(5)とを備えた穀物乾燥機であって、前記シート体(4)の底面部(4a)には、その中央部に穀粒の排出用開口部(4e)を形成するとともに、該排出用開口部(4e)下部(4f)に、フランジ(7a)〜(7d)を装着する一方、前記乾燥機本体(2)内部中央には、前記シート体(4)に貯留された穀粒を排出する穀粒排出樋(8)を設け、さらに、前記穀粒排出樋(8)上端部には、前記シート体(4)を着脱可能な構成とすべく、前記フランジ(7a)〜(7d)と嵌合するスライド溝(9a),(9c)を設けるとともに、前記揚穀装置(5)は、昇降機枠(42)内に上部内調車(28)及び下部内調車(27)をそれぞれ軸着するとともに、各調車(28),(27)間に、バケット(43)を多数装着したバケットベルト(44)を掛渡したバケット昇降機となす、という技術的手段を講じた。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記乾燥機本体(2)には、該乾燥機本体(2)中央部から外周方向に亘り穀粒排出用の空間部(31)を形成するとともに、該空間部(31)内に、移動用キャスター(17)を備えた横送スクリュー(13)を挿脱可能に設置することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記横送スクリュー(13)の終端側に、外部から穀粒を投入する穀粒投入ホッパー(6)及び前記揚穀装置(5)を一体的に配設し、前記乾燥機本体(2)から穀粒投入ホッパー(6)及びバケット昇降機(5)を一体で着脱可能に形成することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記横送スクリュー(13)のスクリュー軸(15a)に、バケット昇降機(5)の下部内調車(27)を軸着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、乾燥機本体(2)からシート体(4)を取り外す際、シート体(4)の底面部(4a)を手でめくり上げると、穀粒排出樋(8)上端部のスライド溝(9a),(9c)に嵌合されたフランジ(7a)〜(7d)が露呈することになる。そして、ノブボルトなどを螺脱し、スライド溝(9a),(9c)からフランジ(7a)〜(7d)を取り外すと、乾燥機本体(2)からシート体(4)を簡単に取り外すことができる。乾燥機本体(2)から取り外したシート体(4)は折り畳んで収納することができ、かさ張らずしかも軽量であるので収納に際して非常に便利となる。また、揚穀装置(5)として、バケット昇降機を採用しているから、スロワに比べて搬送量及び揚穀高さに問題がなく、安定した穀粒の投入作業と排出作業を行うことができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、乾燥機本体(2)中央部から外周方向に亘り穀粒排出用の空間部(31)を形成するとともに、該空間部(31)内に、移動用キャスター(17)を備えた横送スクリュー(13)を挿脱可能に設置してあり、横送スクリュー(13)を乾燥機本体(2)から挿脱する際は、移動用キャスター(17)によって労力を要することなく簡単に横送スクリュー(13)取り外すことができる。
【0014】
また、請求項3記載の発明によれば、横送スクリュー(13)の終端側に、外部から穀粒を投入する穀粒投入ホッパー(6)と、バケット昇降機(5)とを一体的に配設し、前記乾燥機本体(2)から穀粒投入ホッパー(6)及びバケット昇降機(5)を着脱可能に形成してあり、横送スクリュー(13)を乾燥機本体(2)から挿脱するのに伴って、穀粒投入ホッパー(6)及びバケット昇降機(5)が一体で着脱可能となる。
【0015】
さらに、請求項4記載の発明によれば、横送スクリュー(13)のスクリュー軸(15a)に、バケット昇降機(5)の下部内調車(27)を軸着したものであるから、スクリュー軸(15a)の回転により、バケット昇降機(5)及び横送スクリュー(13)が駆動され、穀粒の横送りと揚穀とが同時に行われ、揚穀装置としてバケット昇降機を用いた場合でも一個のモータで横送スクリュー(13)とバケット昇降機(5)の駆動が可能となり、製造コストも大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る穀物乾燥機の斜視図である。
【図2】同穀物乾燥機の正面図である。
【図3】同穀物乾燥機の平面図である。
【図4】乾燥機本体と揚穀装置との脱着状態を示す斜視図である。
【図5】図3のA−A線で破断したときの概略断面図である。
【図6】図3のB−B線で破断したときの概略断面図である。
【図7】乾燥機本体とシート体との脱着を示す概略斜視図である。
【図8】シート体内の籾水分の時間的推移を示すグラフである。
【図9】図5の符号Aで囲んだ部分の要部拡大断面図である。
【図10】補強部材を環状にした一例を示す一部切開図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施形態に係る穀物乾燥機の斜視図であり、図2は同穀物乾燥機の正面図であり、図3は同穀物乾燥機の平面図であり、図4は乾燥機本体と揚穀装置との脱着状態を示す斜視図であり、図5は図3のA−A線で破断したときの概略断面図であり、図6は図3のB−B線で破断したときの概略断面図であり、図7は乾燥機本体2とシート体4との脱着を示す概略斜視図である。
【0018】
図1乃至図7において、穀物乾燥機1は、乾燥用空気を上方へ誘導して穀粒に通風させるための円筒状又は多角筒状の乾燥機本体2と、該乾燥機本体2の側面部に設置される、加温ヒータ付きの送風ファン3と、前記乾燥機本体2の上端部を覆い該乾燥機本体2の上側に穀粒の貯留槽を形成する円筒状のシート体4と、該シート体4内に穀粒を張り込むために穀粒を揚送する揚穀装置5、及び該揚穀装置5に接続されて、外部から穀粒を投入することが可能な穀粒投入ホッパー6から主要部が構成される。符号32は、前記シート体4を支えて転倒を防止するための支柱である。
【0019】
図5及び図6に示すように、前記シート体4は、底面部4a及び側面部4bを有し、上面部が開放状となっている。そして、底面部4aが通気性を有し、側面部4bは非通気性となし、かつ、上面部4cは通気口を兼ねた穀粒の充填用開口部4dとなす。そして、底面部4aはその中央部に通気性素材(メッシュ網など)によって筒状に囲繞された穀粒の排出用開口部4eが形成されている。
【0020】
そして、図5、図6及び図7に示すように、前記排出用開口部4e付近のシート体下部4fには、平面視矩形状のフランジ7a〜7dが装着されるとともに、前記乾燥機本体2側の内部中央部には、前記シート体4に貯留された穀粒を受ける穀粒排出樋8と、穀粒排出樋8の開口面を開閉するスライドシャッター11とが設置されている。そして、前記穀粒排出樋8にはスライド溝9a,9cが設けられ、該スライド溝9a,9cに前記シート体下部のフランジ7a,7cが嵌合可能となっており、該フランジ7a,7cがスライド溝9a,9cに嵌め込まれた後、フランジ7bとスライド溝9bとをノブボルト10によって螺着して固定可能な構成となっている。これは、ちょうど掃除機に紙パックを装着するようなイメージによりシート体4と乾燥機本体1とを簡単に脱着可能な構成となっている。
【0021】
また、図5及び図6に示すようにシート体4の下部周面4gには、下部周面4gを取り囲んで、風漏れ防止用のスカート部29が設けられる。さらに、前記シート体4とスカート部29との継ぎ目付近の周面には、挿通部材34が設けられ(図1、図2、図4乃至図7参照)、該挿通部材34には、前記シート体4の下部周面4gを補強するために可撓性の円環状の補強部材35を挿通する。また、前記スカート部29の下部周縁29aには、トンネル状の紐通し部36が形成し(図9参照)、該紐通し部36に、スカート部29の形状保持部材37が挿通されている。
【0022】
図10は前記補強部材35を環状にした一例を示す一部切開図である。図示のように、補強部材35は、蛇腹状のフレキシブル管38内にグラスファイバーロッドなど樹脂材39を内装する構成にするとよい。前記スカート部29の形状保持部材37についても、グラスファイバーロッドなど樹脂材を利用するとよい。図10に示される符号40a,40bは、フレキシブル管38及び樹脂材39を環状に接続する接続部材であり、符号41は、鼠が嫌う高周波帯域の周波数を発信する超小型の超音波発信器であり、前記接続部材40内に内装することができる。
【0023】
前記スライドシャッター11は、穀粒排出用の開口面11aと、穀粒貯留用の閉鎖面11bと、開閉操作用の操作棒11cとから形成され、穀粒の貯留と排出とが切り換え可能な構成となっている。さらに、スライドシャッター11の下方には、始端側にホッパー部12が接続された穀粒排出用の横送スクリュー13が配置される。図6に示すように、乾燥機本体2には、乾燥機本体2中央部から外周方向に亘り横送スクリュー13を挿脱可能となるように長孔状の空間部31が形成されている。そして、前記横送スクリュー13は、長尺状のコンベアケース14と、該コンベアケース14内に回転可能に横設したスクリュー15とから構成され、前記横送スクリュー13の終端側に、外部から穀粒を投入する穀粒投入ホッパー6と、揚穀装置としてのバケット昇降機5とが一体的に配設される。スクリュー15の終端側のスクリュー軸15aには、バケット昇降機5の下部内調車27を軸着するとともに、軸端に駆動プーリ24が軸着されており、駆動プーリ24が回転されることにより、バケット昇降機5及び横送スクリュー13が駆動され、穀粒の横送りと揚穀とが同時に行われる構成となっている。
【0024】
そして、前記コンベアケース14下面及びバケット昇降機5が内装される機枠16下面には、それぞれ移動用キャスター17,18が設けられる。そして、図4に示すように、乾燥機本体2側にはボルト19,20が突設されるとともに、前記機枠16の前面壁16aには、前記ボルト19,20を挿通する挿通孔16b,16bが穿設されている。これにより、前記ボルト19,20に螺着されたノブナット19a,20aを取り外せば、前記乾燥機本体2の空間部31から前記横送スクリュー13、穀粒投入ホッパー6及びバケット昇降機5を一体的に挿脱可能な構成となっている。すなわち、前記乾燥機本体2の空間部31に、横送スクリュー13を挿入しておき、スライドシャッター11を操作すれば、シート体4内に貯留された穀粒を、穀粒排出樋8、ホッパー部12及びスクリュー15を介して、乾燥機本体2の中央部から外周方向に穀粒が取り出される構成となっている。
【0025】
なお、前記スクリュー15は、図6に示すように、穀粒投入ホッパー6付近では、スクリュー羽根15bが途切れて、スクリュー軸15aに下部内調車27を軸着し、昇降機枠42内の前記下部内調車27と上部内調車28との間には、バケット43が多数装着されたバケットベルト44が掛渡されている。符号45は、バケット43から投擲された穀粒を一次貯留する一次貯留タンクであり、符号46は排出筒である。また、符号21…は乾燥機本体2底部に取り付けた移動用キャスターであり、乾燥機本体2を収納場所に簡単に移動できる構成となっている。
【0026】
前記穀粒投入ホッパー6下部は、側面部が略直方体形状の機枠16で覆われており、該機枠16に駆動モータ22が内装されている(図4参照)。該駆動モータ22のモータ軸に軸着したモータプーリ23は、スクリュー15終端のスクリュー軸に軸着した駆動プーリ24との間でVベルト25によって巻回されている。これにより、駆動モータ22が駆動すれば、スクリュー15が回転して穀粒排出樋8から排出された穀粒が、バケット昇降機5側に横送りされるとともに、下部内調車27(図6参照)が回転して多数のバケット43が調車27,28間を回動して、穀粒を揚穀できる構成となっている。また、作業者は、排出筒46を手で持って回転させると、穀粒の排出方向を変更可能であり、例えば、穀粒を機外排出するか又は穀粒をシート体4内に再投入するかを任意に選択できる構成となっている。
【0027】
上記構成の穀物乾燥機の作用を図面を参照しながら説明する。コンバインにより収穫された、例えば、水分20%以上の約500kg〜1,000kgの生籾は、軽トラックに取り付けたグレンコンテナなどで納屋近くまで運搬し、図1のようにグレンコンテナに付属されるバネコンベア33を介して穀粒投入ホッパー6に投入する。次いで、作業者が揚穀筒46を手で回転させ、穀粒の排出方向をシート体4内に投入するように向きを変えておき、駆動モータ22を駆動すると、穀粒投入ホッパー6に投入された穀粒は、多数のバケット43の回動により揚穀されて、生籾がシート体4の上面部4c(充填用開口部4d)から投入されることになる。
【0028】
次に、上面部4cを開放する一方、スカート部29は、下部周縁29aの形状保持部材37が錘となっているので、形状を保持した状態で乾燥機本体2の内側面に垂下させることができる。そして、図9に示すように、スカート部29を内側面に垂下させると、当該スカート部29が乾燥機本体2の外方向へ若干膨出するとともに、シート体4の底面によりスカート部29の下部周縁が挟み付けられた状態になる。そして、乾燥のための熱風の一部が、前記スカート部29の膨出部29bに送給され、スカート部29が膨らむ。すると、膨らむことによって、シート体4のスカート部29が乾燥機本体2に密着して風抜けが防止されることとなる。
【0029】
このようにして諸準備が終了した後は、例えば、風量比0.322m/s・t、熱風温度35℃程度の条件となるように加温ヒータ付きの送風ファン3を稼動すると、外気が熱せられ、この乾燥風が乾燥機本体2及び通気性の底面部4aを通して籾に送風され、籾の通風乾燥を行うことができる。特に、上記条件で乾燥開始から12時間経過後に、スクリュー15及びバケット昇降機5を稼動し、穀物層の攪拌を行って再度通風乾燥を行うと、乾減率は0.24%/hを満たし、初期水分22.5%の生籾を、24時間で16.7%まで乾燥することが確認できた(図8のグラフ参照)。
【0030】
上記構成の穀物乾燥機1の乾燥機本体とシート体との脱着、及び乾燥機本体と揚穀装置との脱着を図4〜図7を参照して説明する。
【0031】
乾燥機本体2からシート体4を取り外す際は、まず、作業者がスカート部29及びシート体4の底面部4aを手でめくり上げると、図7のようにスライド溝9a,9cに嵌合されたフランジ7a〜7dが露呈することになる。そして、ノブボルト10を螺脱し、スライド溝9a,9cからフランジ7a〜7dを取り外すと、乾燥機本体2からシート体4を簡単に取り外すことができる。乾燥機本体2から取り外したシート体4は折り畳んで収納することができ、かさ張らずしかも軽量であるので収納に際して非常に便利となる。
【0032】
次に、乾燥機本体2から揚穀装置5を取り外す際は、図4に示すように、ノブナット19a,20aを取り外し、乾燥機本体2の空間部31から投入ホッパー6を引き出すと、前記コンベアケース14下面及びバケット昇降機5下面にそれぞれ配設された移動用キャスター17,18によって、コンベアケース14、スクリュー15、投入ホッパー6及びバケット昇降機5が一体となって乾燥機本体2から簡単に取り外すことができる。このように、本発明の穀物乾燥機1にあっては、ノブナット19a,20aの取り外しという簡単な作業により揚穀装置5の取り外しが可能で、分解の作業性が向上するものであり、お年寄りであっても楽に組立・分解作業ができる。
【0033】
なお、図示は省略するが、乾燥機本体2と送風ファン3との脱着においても、ノブボルト、ノブナット等を利用して組立・分解作業を簡略化することも可能である。また、本実施形では揚穀装置としてバケット昇降機を採用しているが、これに限定されることなく、スロワ、エア搬送装置なども採用することができる。
【実施例1】
【0034】
シート体4は、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどの樹脂材質で形成され、高さが約1.25m、直径が約1.3mの略円筒状の側面部4bと、該側面部4bの上縁に連設される上面部4c(充填用開口部4d)と、通気性に形成した底面部4aと、該底面部4a中央に形成した排出用開口部4eと、該開口部4eに装着した平面視矩形状のフランジ7a〜7dとにより構成した。底面部4aは、穀粒(例えば、米麦)が漏出しない程度の大きさである一辺が約1.9mm×1.9mmのメッシュ構造の網となした。
乾燥機本体2は、シート体4の側面部4bと同等かやや小さめの、直径が約1.2〜1.3m、高さが約0.5mの略円筒形に形成し、乾燥機本体2の底面には移動用キャスター21…を設けた。
シート体4と乾燥機本体2との脱着は、図7に示すように、フランジ7a〜7dを乾燥機本体2側にある穀粒排出樋8のスライド溝9a,9cに嵌め込み、ノブボルト10で螺着することで完了した。これは、ちょうど掃除機に紙パックを装着するようなイメージによりシート体4と乾燥機本体2とを脱着でき、約5分で作業が完了した。
また、乾燥機本体2と揚穀装置5との脱着は、図4に示すように、ノブナット19a,20aを取り外し、乾燥機本体2の空間部31から投入ホッパー6を引き出すと、前記コンベアケース14下面及びバケット昇降機5下面にそれぞれ配設された移動用キャスター17,18によって、コンベアケース14、スクリュー15、投入ホッパー6及びバケット昇降機5が一体となって乾燥機本体2から楽に取り外すことができた。この作業においても、約5分で作業が完了した。
【実施例2】
【0035】
スクリュー15の終端側のスクリュー軸15aには、バケット昇降機5の下部内調車27を軸着するとともに、軸端に駆動プーリ24が軸着したので、駆動プーリ24が回転されることにより、バケット昇降機5及び横送スクリュー13が駆動され、穀粒の横送りと揚穀とが同時に行われ、揚穀装置としてバケット昇降機を用いた場合でも一個のモータで横送スクリューとバケット昇降機5の駆動が可能となり、製造コストも大幅に削減することができた。
【実施例3】
【0036】
シート体4の下部周面4gに挿通部材34を縫製して設け、該挿通部材34に、前記シート体4の下部周面4gを補強するために可撓性の円環状の補強部材35を挿通した。補強部材35は、蛇腹状のフレキシブル管38内にグラスファイバーロッドなど樹脂材39を内装する構成にした。穀粒をシート体4内に投入する際は、穀粒が偏って投入された場合でも、シート体4が変形する虞が少なかった。また、底面が円環状に保持され、穀粒の重みにより、シート体4の底面が乾燥機本体2側に沈み込む量が少なくなった。さらに、使用後は円環状のフレキシブル管38を手で持って揺することにより、シート体4内の周縁側に溜まった残留米を、穀粒排出用開口部4e側に移送させ、残留米の排出を容易に行うことができた。
【実施例4】
【0037】
図10に示すように、補強部材として、蛇腹状のフレキシブル管38内にグラスファイバーロッドなど樹脂材39を内装し、その接続部材40内に、鼠が嫌う高周波帯域の周波数を発信する超小型の超音波発信器41を内装した。これにより、人間には感じないが、鼠には知覚神経の錯乱やストレスを与えて嫌悪を感じる高周波帯域の周波数が、超音波発信器から発せられるので、穀物乾燥機から鼠を追い出したり、穀物乾燥機内への侵入を防止したりすることができるようになった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
収納が簡単な穀物乾燥機に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 穀物乾燥機
2 乾燥機本体
3 送風ファン
4 シート体
5 揚穀装置(バケット昇降機)
6 張込ホッパー
7 フランジ
8 穀粒排出樋
9 スライド溝
10 ノブボルト
11 シャッター
12 ホッパー部
13 穀粒排出用横送スクリュー
14 コンベアケース
15 スクリュー
16 機枠
17 移動用キャスター
18 移動用キャスター
19 ボルト
20 ボルト
21 移動用キャスター
22 駆動モータ
23 モータプーリ
24 駆動プーリ
25 Vベルト
26 ケーシング
27 下部内調車
28 上部内調車
29 スカート部
31 空間部
32 支柱
33 バネコンベア
34 挿通部材
35 補強部材
36 紐通し部
37 形状保持部材
38 フレキシブル管
39 樹脂材
40 接続部材
41 超音波発信器
42 昇降機枠
43 バケット
44 バケットベルト
45 一次貯留タンク
46 排出筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥用空気を上方へ誘導すべく円筒状又は多角形筒状に形成した乾燥機本体(2)と、 該乾燥機本体(2)に通風する送風ファン(3)と、通気性の底面部(4a)及び非通気性の側面部(4b)により形成され、前記乾燥機本体(2)に上載して穀粒の通風乾燥を可能とした円筒状のシート体(4)と、該シート体(4)内に穀粒を投入するために穀粒を揚送する揚穀装置(5)とを備えた穀物乾燥機であって、
前記シート体(4)の底面部(4a)には、その中央部に穀粒の排出用開口部(4e)を形成するとともに、該排出用開口部(4e)下部(4f)に、フランジ(7a)〜(7d)を装着する一方、前記乾燥機本体(2)内部中央には、前記シート体(4)に貯留された穀粒を排出する穀粒排出樋(8)を設け、さらに、前記穀粒排出樋(8)上端部には、前記シート体(4)を着脱可能な構成とすべく、前記フランジ(7a)〜(7d)と嵌合するスライド溝(9a),(9c)を設けるとともに、
前記揚穀装置(5)は、昇降機枠(42)内に上部内調車(28)及び下部内調車(27)をそれぞれ軸着するとともに、各調車(28),(27)間に、バケット(43)を多数装着したバケットベルト(44)を掛渡したバケット昇降機となしたことを特徴とする穀物乾燥機。
【請求項2】
前記乾燥機本体(2)には、該乾燥機本体(2)中央部から外周方向に亘り穀粒排出用の空間部(31)を形成するとともに、該空間部(31)内に、移動用キャスター(17)を備えた横送スクリュー(13)を挿脱可能に設置してなる請求項1記載の穀物乾燥機。
【請求項3】
前記横送スクリュー(13)の終端側に、外部から穀粒を投入する穀粒投入ホッパー(6)及び前記揚穀装置(5)を一体的に配設し、前記乾燥機本体(2)から穀粒投入ホッパー(6)及びバケット昇降機(5)を一体で着脱可能に形成してなる請求項2記載の穀物乾燥機。
【請求項4】
前記横送スクリュー(13)のスクリュー軸(15a)には、バケット昇降機(5)の下部内調車(27)を軸着してなる請求項2又は3記載の穀物乾燥機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−94918(P2011−94918A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250992(P2009−250992)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】