説明

積層体及び積層体の製造方法

【課題】耐熱性、低熱収縮、光学特性、低反り性、密着性に優れた機能性層が被覆され、重合硬化時間の短い樹脂積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】活性エネルギー線重合性液体を鋳型に供給する第一の工程、供給された重合性液体上に、活性エネルギー線透過性フィルムの片面に剥離可能な機能性層が形成された機能性転写フィルムの機能性層側が接するようにして該フィルムを被せる第二の工程、該フィルムの上から活性エネルギー線を照射して重合性液体を硬化させ樹脂基材とする第三の工程、機能性層と樹脂基材とが一体化した樹脂積層体を鋳型と前記フィルムから剥離する第四の工程を含む樹脂積層体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体を製造する方法、及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、携帯型ゲーム機、カーナビゲーションシステム、ポータブルAV機器等に代表される小型ディスプレイにおいて、画像の精細度が近年、劇的な進歩を見せており、これらディスプレイの表面を保護する透明樹脂シートも、これまで以上に高い透明性と光学歪の少なさを求められるようになってきている。
【0003】
特に、携帯電話に関しては、世界的な筐体薄型化の流れを背景とし、もはや筐体パーツの精度はμmオーダーで問われる時代になってきており、ディスプレイ部分の保護板も例外ではない。保護板の原材料である透明樹脂シートからカット、印刷、仕上げに至るまでの種々の熱履歴による寸法精度の変化や反りの許容値が年々厳しくなっている。すなわち、光学特性が良く、耐熱性が高く、熱による寸法収縮が少ない透明樹脂シートが近年の小型ディスプレイの保護板として最適なのである。
【0004】
光学用のポリマーとして使用されるポリメチルメタクリレートは、その加工の容易さ、取り扱い易さ、軽量、安価などの特長に加え、高い透明性、複屈折の少なさなどから、光ディスク、ピックアップレンズ、液晶ディスプレイ用の光学フィルムなど、様々な光学用途に用いられており、各種光学特性の観点から、ポリメチルメタクリレート含有量の多いポリマーが必要とされている。
【0005】
それらポリメチルメタクリレート含有量の多いアクリル樹脂シートの製造方法として例えば、水平方向に走る上下に位置した2個のエンドレスベルトコンベアーの間に、重合性化合物を注入してベルトの移動と共に重合せしめ、他端より板状の重合物を得る、連続セルキャスト法が知られている(特許文献1)。この連続セルキャスト方式では、他に知られている溶融押出方式と比較して、高分子量化による製品板耐熱性の向上が可能で、また製造時に延伸工程を含まないことによる熱収縮、反りの少なさから良好な板を製造する方法として利用されている。
【0006】
しかしながら、ポリメチルメタクリレートのモノマーであるメチルメタクリレートは、一般的に重合速度が遅いことが知られており、連続セルキャスト方式では、その重合に要する時間とエンドレスベルトが装置の重合区域を通過する時間を原則的に同じにする必要があるため、装置が巨大化し、長大なエンドレスベルトを使用する必要があった。
【0007】
これらの問題に対し、連続製板装置での重合所要時間をいかに短くし、装置の生産性を向上させるかを焦点として、熱分解開始剤量の増量、半減期温度の低い開始剤の選定(特許文献2)などなされてきたが、重合速度と耐熱性など各種物性がトレードオフとなり、さらに原料の粘性液体の保存に過大な冷却設備を必要とし、作業性にも問題があった。
【0008】
また、これらの問題に対し、ポリマーの含有率を高くし、重合速度を高める方法が提案されている。高重合率シラップにて熱重合を行う場合、シラップに事前に熱開始剤を含有させると、わずかな熱開始剤の分解においても重合が進行してしまうため、シラップを冷却しておかなければならなく、こちらも過大な冷却設備を必要としてしまう。これに対してポリマー含有率の高いシラップと、熱開始剤を含有させた低粘度シラップを直前にてスタティックミキサーにて混合、供給させる方法が提案されている(特許文献3)。この方法では、非常に高い粘度のシラップに熱開始剤を均一に分散させる必要があるため、スタティックミキサーのユニット数が多量に必要で、ユニットあたりの圧力損失も大きくなるため、ポンプ、ラインなどの供給設備が過大になってしまう。さらに、1対の金属製エンドレスベルトを使用する連続セルキャスト方式においては、そのベルトの高い剛性のためベルトの急激な角度変更が出来ず、原料シラップを挟み込む時の1対のベルト角度を大きく取れないため、粘度の高い高重合率シラップを原料とすると泡をかみやすい問題があった。
【0009】
この連続セルキャストによる熱重合の問題に対して、重合性原料を光硬化性原料とし、連続セルキャスト法の片側エンドレスベルトを透明フィルムに置き換え、光を照射して硬化させる方法が提案されている(特許文献4)。しかし、この方法を単純にメチルメタクリレートを多く含有する原料に適応し重合固化させると、他の重合性モノマーと比較して重合速度の遅いメチルメタクリレートモノマーを重合させる間、強い紫外線を照射することになるため、高い光学特性を必要とする製品板が黄変するという問題があった。
【0010】
ところで近年、前面板における重要な要求性能として、反射防止機能、防眩機能、ハードコート機能、帯電防止機能、汚れ防止機能などが挙げられている。このような機能を有する積層体は、従来、ディップ法によってプラスチック基材に直接塗料を塗布して作製されていたが、この方法はバッチ式のため生産効率が低く、機能性層を作製する際にコストアップの一因となっていた。また、ディップ法を採用する場合には、ディップ液からプラスチック基板を引き上げる速度などによって膜厚にムラが出来易く、均一な被膜を得ることは通常困難であった。
【0011】
一方、紫外線硬化型の接着層を介して機能性層を被転写表面へ貼り合わせ、UV照射を行うことにより接着層を固化させた後に、機能性層が形成された基材フィルムを剥離し、該機能性層を被転写表面へ転写させる方法(以下、「UVラミ転写法」という。)が開示されている(特許文献5)。この方法は、比較的簡便な設備で高生産性で転写を行うことが可能であるが、基材との密着性が得られにくいため生産スピードが制約される問題があった。さらに、紫外線照射による紫外線硬化型の接着層の残留効力により、得られた樹脂積層体がそり易いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特公昭46−41602号公報
【特許文献2】特開平4−114001号公報
【特許文献3】特開平6−239905号公報
【特許文献4】特開2002−11742号公報
【特許文献5】特開2000−158599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、耐熱性、低熱収縮、光学特性、低反り性、密着性に優れた、機能性層が被覆された積層体を、短時間の重合硬化時間により得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、活性エネルギー線重合性液体を鋳型に供給する第一の工程、供給された活性エネルギー線重合性液体上に、活性エネルギー線透過性フィルムの片面に剥離可能な機能性層が形成された機能性転写フィルムの機能性層側が接するようにして該フィルムを被せる第二の工程、該フィルムの上から活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線重合性液体を硬化させ樹脂基材とする第三の工程、機能性層と樹脂基材とが一体化した樹脂積層体を鋳型と活性エネルギー線透過性フィルムから剥離する第四の工程を含む樹脂積層体の製造方法である。
【0015】
また本発明は、前記製造方法により得られる樹脂積層体である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、短時間での重合を可能とするため、生産量の増加、重合設備縮小を可能とし、さらに熱収縮の少ない、シート厚斑の少ない、反りの少ない、活性エネルギー線照射による光学特性低下の少ない、及び密着性に優れた機能性層を有する積層体を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の方法を適用した製造装置の一例の模式的側面図を示す図である。
【図2】本発明の積層体の熱収縮率を算出するための長さ測定点の位置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、以下の四つの工程を含む樹脂積層体の製造方法である。
【0019】
活性エネルギー線重合性液体を鋳型に供給する第一の工程。
【0020】
供給された活性エネルギー線重合性液体上に、活性エネルギー線透過性フィルムの片面に剥離可能な機能性層が形成された機能性転写フィルムの機能性層側が接するようにして該フィルムを被せる第二の工程。
【0021】
該フィルムの上から活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線重合性液体を硬化させ樹脂基材とする第三の工程。
【0022】
機能性層と樹脂基材とが一体化した樹脂積層体を鋳型と活性エネルギー線透過性フィルムから剥離する第四の工程。
【0023】
本発明において使用される活性エネルギー線重合性液体は、重合性モノマー、ポリマー、活性エネルギー線分解重合開始剤および任意の他の成分とから構成される。
【0024】
本発明において使用される重合性モノマーとしては、活性エネルギー線の照射によって硬化することにより樹脂を形成するモノマーである。光学性能の観点から、得られる樹脂基材中に、メチルメタクリレート単位を50質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含有することがより好ましい。メチルメタクリレート以外に各種モノマーを使用することができる。例えば、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物、N−フェニルマレイミド,N−シクロヘキシルマレイミド、N−t-ブチルマレイミド等のマレイミド誘導体、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシ基含有単量体、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート等の窒素含有単量体、アリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有単量体、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体、エチレングリコールジアクリレート、アリルアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレート等の架橋剤などが挙げられ、これらの中から1種または複数種選定し使用される。ここで「(メタ)アクリ」とは「メタクリ」または「アクリ」のことをいう。
【0025】
本発明において使用されるポリマーとしては、特に制限されるものではなく、例えば先に挙げた重合性モノマーの単独重合物または共重合物を使用することができ、光学性能の観点から、ポリメチルメタクリレートを使用することが好ましい。
【0026】
本発明において使用されるポリマーの重量平均分子量Mwは、下記式(1)を満足していることが好ましい。また、本発明において使用されるポリマーの含有量Pは、下記式(2)を満足していることが好ましい。
【0027】
30,000 ≦ Mw ≦ 500,000 (1)
35−(9/200,000)× Mw ≦ P ≦60 (2)
式中、Mwは活性エネルギー線重合性液体に含有するポリマーの重量平均分子量[−]
Pは活性エネルギー線重合性液体に含有するポリマー含有量割合[質量%]
活性エネルギー線重合性液体のポリマー含有量Pが(2)式で表される範囲より少ないと、単官能モノマーであるメチルメタクリレートを主成分とするモノマーを使用する場合、分子鎖の絡み合いが小さいため、重合初期には活性エネルギー線分解重合開始剤が分解しても、停止反応に消費される割合が大きくなり、重合に多くの時間を要する結果となる。また、ポリマー含有量が少ないと重合速度だけでなく、モノマー量も増加するため、最終的に樹脂基材を得るために必要な重合量が増加することもトータルの重合時間に影響を及ぼす。
【0028】
また、活性エネルギー線重合性液体のポリマー含有量Pが、多すぎると、重合速度の観点からは有利となるが、モノマー揮発による粘度変化が大きくなる領域のため表面乾燥の影響が無視できなくなり、製品の表面外観に影響を与える。詳しくは、鋳型上でフィルムを積層する前に原料表面が乾燥すると、表面に膜が張った状態となり、フィルムを積層してもその時の凹凸が消せなくなり、最終製品の平滑性などが損なわれる結果となる。また、低分子量のポリマーを含有させた場合には比較的粘度変化は小さくなるが、低分子量のポリマーが多くなりすぎると、得られた樹脂基材の分子量が低下し、耐熱性などに問題が発生してしまう。
【0029】
本発明において使用されるポリマーの重量平均分子量Mwは、30、000〜500、000であることが好ましい。重量平均分子量が低すぎると、製造される製品が低分子量化し、耐熱性の観点では不利になり、また重量平均分子量が高すぎると得られる樹脂基材の重量平均分子量を高めることはできるが、モノマーに該ポリマーを溶解させて活性エネルギー線重合性液体を製造する場合、溶解時間を多く要し、またモノマーの一部を重合させて製造する場合には高い重量平均分子量になるようにゆっくり重合させる必要がある。
【0030】
本発明において使用される活性エネルギー線分解重合開始剤としては、活性エネルギー線の照射によってラジカルを発生し、硬化した樹脂の透明性を阻害しない限り、特に制限されず、各種の活性エネルギー線分解重合開始剤を使用することができる。代表的には、アセトフェノン系またはベンゾフェノン系の活性エネルギー線活性重合開始剤が挙げられ、特に1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾインエチルエーテル等を用いることが好ましい。
【0031】
上記の活性エネルギー線分解重合開始剤は活性エネルギー線重合性液体100質量部に対し、通常0.01〜2質量部の割合で使用することが好ましい。この使用量が少なすぎると重合速度が上がらず、重合時間を多く要する結果となり、また使用量が多すぎると製品板の光学性能、耐候性に影響を及ぼすため0.05〜1質量部の割合で使用することが好ましい。
【0032】
本発明において使用される活性エネルギー線重合性液体に含有する任意の他の成分としては、熱重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、離型剤、重合禁止剤などを使用することができる。
【0033】
本発明において使用される活性エネルギー線重合性液体の粘度に関しては、鋳型上に供給した活性エネルギー線重合性液体を所望の厚みとして保持するため、また片面をフィルムのような剛性の低いものでカバーする際、その表面で良好な外観を得るために20℃における粘度が5000mPa・s以上であることが好ましく、10000mPa・s以上であることがより好ましい。
【0034】
本発明において活性エネルギー線重合性液体を鋳型上に供給する方法としては、特に制限されるものではなく、通常の配管、ホースからの供給や、各種コーティング方法が使用できる。供給ダイにより活性エネルギー線重合性液体をシート状に供給する方法が好ましい。活性エネルギー線重合性液体をシート形状にする方法としては、先のダイからの供給や、鋳型上に供給した活性エネルギー線重合性液体をロールと、鋳型上を介したロールによって押し拡げる方法などもあり、これらを組み合わせた方法でも良い。
【0035】
本発明において使用される鋳型の材質は特に規定されるものではなく、活性エネルギー線重合性液体をシート状に保持する場合、金属製、樹脂製など自由に選定可能である。重合・硬化する際には重合収縮があるため、剛性の高い金属製鋳型が好ましく、モノマーなどに対する腐食性の観点からステンレス製鋳型が好ましい。さらに樹脂基材の表面は、鋳型の表面を転写して得られるため、表面を鏡面仕上げされたステンレス製鋳型であるとより好ましい。また、鋳型は生産性が良好であることから、エンドレスベルトが好ましい。
【0036】
鋳型上に供給された活性エネルギー線重合性液体上に、後述する活性エネルギー線透過性フィルムの片面に剥離可能な機能性層が形成された機能性転写フィルムの機能性層側が接するようにして該フィルムを被せる。機能性層の上に、接着層が形成されたフィルムを用いることが好ましい。
【0037】
本発明において照射する活性エネルギー線としては、X線、紫外線、電子線等が挙げられる。中でも特に、紫外線が好ましい。
【0038】
紫外線は、各種紫外線照射装置により照射され、例えば高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、殺菌灯、ブラックライト、紫外LEDなどが使用できる。
【0039】
活性エネルギー線の照射強度としては、活性エネルギー線重合性液体に含有する活性エネルギー線分解重合開始剤濃度と照射時間との関係により決定されるが、前記活性エネルギー線重合性液体においては、モノマーの成長速度の観点から1mW/cm〜30mW/cmの範囲が好ましい。照射強度が弱すぎると重合開始剤の分解量が少ないことにより重合速度が遅くなり、逆に強すぎると、開始剤分解量を増やしても、本法での活性エネルギー線重合性液体ではモノマーの成長速度が追いつかず、停止反応に多くが消費されてしまうことで、製品の分子量低下と、活性エネルギー線が過剰に照射されることによる製品黄変がおきてしまう。
【0040】
本発明において、樹脂積層体を連続的に製造する場合、樹脂基材の生産速度(鋳型の走行速度)としては、0.5〜15m/minであることが好ましく、1〜10m/minであることがより好ましい。速度が遅すぎると、得られる樹脂基材の生産量が少なくなってしまう問題があり、速度が速すぎると必要重合時間を得るための活性エネルギー線照射区間が大きくなる。なお、活性エネルギー線透過性フィルムの供給速度は、樹脂基材の生産速度と同じにすることが好ましい。
【0041】
本発明において活性エネルギー線を照射して硬化させる際の温度条件としては、重合速度や粘性条件などにより選定できるが、活性エネルギー線重合性液体に活性エネルギー線を照射する際には、モノマーの沸点以下であることが好ましく、メチルメタクリレートモノマーでは100℃以下となる。また、メチルメタクリレートモノマーの重合においては、重合時の温度が低いほど重合体中のモノマー単位の結合の配置においてシンジオタクチック成分が増加することが知られている。このシンジオタクチック成分が多いほど重合体のガラス転移温度Tgなどが高くなり、耐熱性が高くなる。耐熱性向上の観点より、活性エネルギー線を照射するときの重合温度は50℃以下であることがより好ましい。
【0042】
活性エネルギー線硬化した樹脂に対しては、残存モノマーを減少させる観点から、使用するモノマーとポリマーの組み合わせから得られるガラス転移温度Tg以上の温度に熱処理することも適宜可能であり、ポリメチルメタクリレートの場合のように、通常100℃以上に熱処理することが好ましい。また、Tg以上の温度に熱処理することにより、樹脂基材の残留応力が緩和され、樹脂基材のそりを低減することができる。
【0043】
本発明における樹脂基材の厚みは、規定されるものではないが5mm以下であることが好ましい。樹脂基材の厚みが厚すぎると重合発熱の除去が間に合わなくなり、未重合モノマーが沸騰し、樹脂基材内に泡が発生しやすくなる。
【0044】
本発明の方法を実施するのに用いる装置の一例を図1に示し、これをもとに本発明を説明する。この図により本発明が規定されるものではない。ここでは活性エネルギー線として紫外線を用いる。エンドレスベルト3は主プーリ11と主プーリ12によりテンションをかけられた状態でエンドレスに移送される。エンドレスベルト3の上に供給ダイ1により光(紫外線)重合性液体2をシート状に供給し(第一の工程)、該光重合性液体2上に、機能性転写フィルム繰り出し装置6より供給される機能性転写フィルム5の機能性層側が接するようにして該フィルムを被せた後(第二の工程)、上面押し付けロール8と下面押し付けロール8′間を経由した後、前段加熱機構9により所望の温度に制御されながら、紫外線照射装置4により光重合性液体2を硬化させ樹脂基板とする(第三の工程)。
【0045】
その後、後段加熱機構10により熱処理された後、機能性層と樹脂基材とが一体化した樹脂積層体を、機能性層を樹脂基材表面に残した状態で、活性エネルギー線透過性フィルム5′とエンドレスベルト3から剥離し(第四の工程)、活性エネルギー線透過性フィルムは活性エネルギー線透過性フィルム巻取り装置7にて巻取る。
【0046】
光重合性液体2を硬化させる際、光重合性液体2をエンドレスベルト3と機能性転写フィルム5との間に挟み込ませた後、エンドレスベルト、光重合性液体、機能性転写フィルム5が積層されればよく、エンドレスベルト上に光重合性液体を供給し、その後に機能性転写フィルム5を積層してもよいし、機能性転写フィルム5上に光重合性液体を供給した後エンドレスベルトと積層してもよく、さらに同時に積層してもよい。連続セルキャスト方式の1対の金属製エンドレスベルトを使用する場合と異なり、少なくとも一方はフィルムを使用することで、該フィルムの供給箇所におけるエンドレスベルト表面と、それと向き合う機能性転写フィルム5表面とがなす角度を大きくすることができるため、高粘度の光重合性液体を使用する場合においても泡をかむことなく積層させることが可能である。
【0047】
次いで機能性転写フィルムについて詳細に説明する。
【0048】
機能性層は、反射防止機能、防眩機能、ハードコート機能、帯電防止機能、及び汚れ防止機能の中の少なくとも一つの機能を有するものである。機能性層としては前記の機能を単層に担わせても良いし、前記の機能を有する複数の層を積層させたものでも良い。
【0049】
活性エネルギー線透過性フィルムとしては、公知のフィルムを利用することができる。また剥離性を有するフィルムであれば尚、好適であるが、剥離性が不充分の場合であれば、基材フィルムの表面に剥離層を設けてもよい。
【0050】
例えばポリエチレンテレタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等の合成樹脂フィルム、セルロースアセテートフィルム等のセルロース系フィルム、セロハン紙、グラシン紙、等の洋紙、和紙などのフィルム状の物、あるいはこれらの複合フィルム状物、複合シート状物等や、それらに剥離層を設けてなるもの等が活性エネルギー線透過性フィルムとして挙げられる。
【0051】
活性エネルギー線透過性フィルムの厚さとしては特に制限はないが、しわや亀裂などのない転写フィルムの製造が容易にできる観点から4μm以上が好ましく、12μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましく、また500μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、120μm以下がさらに好ましい。
【0052】
これらの活性エネルギー線透過性フィルムの剥離性が不充分な場合は、剥離層を形成してもよい。剥離層の形成材は、公知の剥離層を形成するポリマーやワックスなどを適宜選択使用できる。剥離層の形成方法としては、例えばパラフィンワックス、アクリル系、ウレタン系、シリコン系、メラミン系、尿素系、尿素−メラミン系、セルロ−ス系、ベンゾグアナミン系などの樹脂及び界面活性剤を単独またはこれらの混合物を有機溶剤もしくは水に溶解させた塗料をグラビア印刷法、スクリ−ン印刷法、オフセット印刷法などの通常の印刷法で前記フィルム上に塗布、乾燥(熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂など硬化性塗膜には硬化)させて形成する方法が挙げられる。剥離層の厚さとしては特に制限はないが、0.1〜3μm程度の範囲とすることが好ましい。剥離層が薄すぎる場合、剥離しにくい傾向があり、逆に剥離層が厚すぎる場合、剥離しやすくなり過ぎて転写前に基材フィルム上の各層の脱離が起こりやすくなる傾向にある。
【0053】
反射防止機能を有する反射防止層は、樹脂積層体表面の反射光を入射光の20%以下、好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下に抑える機能を有する層であれば、どのような材料から構成されていてもよい。このような機能を付与するためには、例えば、2以上の異なる屈折率を有する膜の積層構造とする方法等種々の方法が挙げられる。
【0054】
2種の異なる屈折率を有する膜の積層構造とする場合には、各膜の屈折率は特に限定されるものではないが、例えば、空気に面する最表面の屈折率が1.3〜1.5程度の低屈折率層、該低屈折率層の基材側に存在する高屈折率層の屈折率が1.6〜2.0であることが好ましい。かかる範囲であれば、入射光の反射光を十分抑制できる。
【0055】
低屈折率層、高屈折率層の膜厚は特に限定されないが、それぞれ50nm以上が好ましく、70nm以上がより好ましい。また200nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましい。膜厚がかかる範囲であれば、視認される波長の反射光を十分抑制できる。
【0056】
低屈折率層を形成する成分としては、屈折率が1.3〜1.5程度のものが好ましく、例えばアルコキシシラン、アルキルアルコキシシランなど、縮合重合系の硬化性化合物からなるシロキサン結合主体の層が挙げられ、その具体例としては、シロキサン系樹脂のシロキサン結合の一部が水素原子、水酸基、不飽和基、アルコキシル基等で置換された化合物等から形成されたものが挙げられる。
【0057】
また、シロキサン系樹脂の層へは、コロイダルシリカを添加することが、さらなる低屈折率化を達成する観点で好ましい。コロイダルシリカは、多孔質シリカ及び/又は非多孔質シリカの微粒子を分散媒に分散させ、コロイド溶液としたものである。ここで、多孔質シリカは、粒子内が多孔性あるいは中空であり、内部に空気を含有した低密度のシリカである。多孔質シリカの屈折率は1.20〜1.40であり、通常のシリカの屈折率1.45〜1.47に比較して低い。したがって、本発明において低屈折率層の屈折率を低下させるためには、コロイダルシリカとして多孔質シリカを使用することがより好ましい。
【0058】
さらに、後述する紫外線硬化性混合物へコロイダルシリカを添加して硬化させ、低屈折率層を形成しても良い。また、表面がシランカップリング剤処理されたコロイダルシリカを用いても良い。
【0059】
これらの硬化性化合物は、例えば、電子線、放射線、紫外線などの活性エネルギー線を照射することにより硬化するか、あるいは加熱により硬化するものである。これらの硬化性化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、複数の硬化性を有する化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
高屈折率層を形成する成分としては、屈折率が1.6〜2.0程度のものが好ましく、それ自体加水分解して金属酸化物を形成し、しかも緻密な膜を形成する金属アルコキシドを含有させたものを用いることができる。この金属アルコキシドは、化学式 M(OR)m
(化学式中、Mは金属を表し、Rは炭素数1〜5の炭化水素基を表し、mは金属Mの原子価(3または4)を表す。)
で示されるものであることが好ましい。金属Mとしては、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ等が好ましく、中でも特にチタンが好ましい。金属アルコキシドの具体例としては、チタンメトキサイド、チタンエトキサイド、チタンn−プロポキサイド、チタンイソプロポキサイド、チタンn−ブトキサイド、チタンイソブトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムブトキシド、アルミニウムt−ブトキサイド、スズt−ブトキサイド、ジルコニウムエトキサイド、ジルコニウムn−プロポキサイド、ジルコニウムイソプロポキサイド、ジルコニウムn−ブトキサイド等が挙げられる。
【0061】
また、金属酸化物を形成する金属アルコキシドへは、さらなる高屈折率化を達成する観点から、高屈折率の金属酸化物であるZrO,TiO,NbO,ITO,ATO,SbO,In,SnO及びZnOの中の少なくとも1種である微粒子を添加することが好ましい。
【0062】
さらに、後述する紫外線硬化性混合物へ高屈折率の金属酸化物微粒子を添加して硬化させ、高屈折率層を形成しても良い。また、表面処理された高屈折率の金属酸化物微粒子を用いても良い。
【0063】
反射防止層の形成方法は特に限定されないが例えば、流延法、ローラーコート法、バーコート法、噴霧コート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、フローコート法、カーテンコート法、フィルムカバー法及びディッピング法が挙げられる。
【0064】
これらの硬化性化合物は、例えば、電子線、放射線、紫外線などの活性エネルギー線を照射することにより硬化するか、或いは加熱により硬化するものである。これらの硬化性化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、複数の硬化性を有する化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
次に、前記活性エネルギー線重合性液体に接する反射防止層の表層に接着層及びハードコート層の少なくとも一層を形成することが好ましい。接着層を形成することにより、界面の密着性が良好となり、ハードコート層を形成することにより、反射防止積層体の表面硬度が良好となる。
【0066】
さらに、本発明で得られた反射防止積層体の表面反射率は2%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。前記、反射率が2%以下であると、外光などの映りこみが抑制され、屋外でも画像の視認性が低下しない。
【0067】
ハードコート機能を有するハードコート層としては、積層体表面の耐擦傷性を向上させるものであり、この耐擦傷性をもたらす各種の硬化性化合物からなる硬化性混合物を膜状に硬化させたものである。硬化性混合物としては、後述する紫外線硬化性混合物のようなラジカル重合系の硬化性化合物からなる硬化性混合物や、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシランなど、縮合重合系の硬化性化合物からなる硬化性混合物を挙げることができる。これらの硬化性化合物は、例えば、電子線、放射線、紫外線などの活性エネルギー線を照射することにより硬化するか、或いは加熱により硬化することが好ましい。これらの硬化性化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、複数の硬化性を有する化合物を組み合わせて用いてもよい。なお、硬化性化合物単独で用いる場合も便宜的に「硬化性混合物」という。
【0068】
本発明において、ハードコート層は、生産性及び物性の観点から紫外線によって硬化されることが好ましい。以下、紫外線硬化性混合物について説明する。
【0069】
紫外線硬化性混合物としては、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、及び活性エネルギー線分解重合開始剤からなる紫外線硬化性混合物を用いることが生産性の観点から好ましい。
【0070】
例えば、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物としては、1モルの多価アルコールと2モル以上の(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物、多価アルコールと多価カルボン酸又はその無水物と(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物等が挙げられる。
【0071】
1モルの多価アルコールと2モル以上の(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物の具体例としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート;1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルキルジオールのジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等の3官能以上のポリオールのポリ(メタ)アクリレート;などが挙げられる。
【0072】
また、多価アルコールと多価カルボン酸又はその無水物と(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物において、多価アルコールと多価カルボン酸又はその無水物と(メタ)アクリル酸の好ましい組合せとしては、例えば、マロン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0073】
分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物のその他の例としては、トリメチロールプロパントルイレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネートの3量化により得られるポリイソシアネート1モル当たり、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、15,3−プロパントリオール−1,3−ジ(メタ)アクリレート、3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の活性水素を有するアクリル系モノマー3モル以上を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート又はトリ(メタ)アクリレート等のポリ[(メタ)アクリロイルオキシエチレン]イソシアヌレート;エポキシポリ(メタ)アクリレート;ウレタンポリ(メタ)アクリレート;などが挙げられる。ここで「(メタ)アクリ」とは、「メタクリ」又は「アクリ」を意味する。
【0074】
活性エネルギー線分解重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等のリン化合物;などが挙げられる。
【0075】
活性エネルギー線分解重合開始剤の添加量は、紫外線硬化性混合物100質量部中、紫外線照射による硬化性の観点から0.1質量部以上が好ましく、ハードコート層の良好な色調を維持する観点から10質量部以下が好ましい。また、活性エネルギー線分解重合開始剤は2種類以上を併用してもよい。
【0076】
紫外線硬化性混合物には、必要に応じて、スリップ性向上剤、レベリング剤、無機微粒子、光安定剤(紫外線吸収剤、HALS等)等の各種成分をさらに添加できる。積層体の透明性の観点から、その添加量は紫外線硬化性混合物100質量部中、10質量部以下が好ましい。
【0077】
ハードコート層としては、膜厚が0.5μm〜10μmであることが好ましく、膜厚が1μm〜7μmであることがより好ましい。かかる範囲においては、十分な表面硬度を有し塗膜層によるフィルムの反りも少なく、外観も良好である。
【0078】
前記ハードコート層の形成方法は特に限定されないが、前記反射防止層の形成方法と同様の方法が挙げられる。
【0079】
次に防眩機能を有する防眩層について詳細に説明する。防眩機能は、表面の微細凹凸及び、または内部散乱により、外光を乱反射させて外光の映りこみを抑制するものである。
【0080】
所望の微細凹凸形状を有する活性エネルギー線透過性フィルムへ、例えば前述のハードコート層を形成する紫外線硬化性混合物を塗布し硬化させ、硬化塗膜層を形成する。その後、樹脂基材と一体化した後、微細凹凸と硬化塗膜層界面で剥離することにより、樹脂基材の表面に微細凹凸形状からなる防眩層を有する積層体を得ることができる。
【0081】
微細凹凸と硬化塗膜層界面の剥離が悪い場合は、微細凹凸表面に微細凹凸形状を変化させない程度の剥離層を形成する手法、微細凹凸を形成する樹脂中に剥離剤を添加する方法、硬化塗膜層側へ剥離剤を添加する方法などをすることが可能である。
【0082】
また、紫外線硬化性混合物へ光拡散性の微粒子を添加することにより、内部散乱機能を有する防眩層を形成することが可能である。
【0083】
微細凹凸形状の作製方法としては、活性エネルギー線透過性フィルム自体に凹凸形状を持たせる方法や、平滑な活性エネルギー線透過性フィルム表面にコーティング法、型転写などにより凹凸形状を持たせる方法などが挙げられる。
【0084】
活性エネルギー線透過性フィルム自体に凹凸形状を持たせる方法としては、フィルム樹脂中へ粒子を練りこむ手法、フィルム樹脂をガラス転移温度以上に加熱し、熱溶融させた状態で微細凹凸を有する型形状を、転写させる手法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
次いで、平滑な基材表面に凹凸形状を持たせる手法としては、アンチグレアコーティング剤を塗布する方法、光硬化性樹脂を基材フィルムと微細凹凸を有する型の間に流し込み光照射により硬化させた後、型から剥離する手法(2P法)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
微細凹凸形状を有する型の作製方法としては、サンドブラスト法、ケミカルエッチング法、リソグラフィー法などが挙げられる。型は生産性が良好である観点から、ロール形状であることが好ましい。
【0087】
次に汚れ防止機能を有する汚れ防止層について詳細に説明する。汚れ防止機能は、撥水性、撥油性でもよく、親水、親油性でも良いが、汚れを除去し易い観点から撥水性、撥油性が好ましい。撥水層は、前述の分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物及び活性エネルギー線分解重合開始剤を含む紫外線硬化性混合物を用いることが生産性の観点から好ましい。
【0088】
フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物は撥水層の撥水・撥油性能(防汚性)を発現するために必須な成分である。
【0089】
フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物としては特に限定されるものではなく、公知のフッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。
【0090】
フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物の市販品としては、例えば、へプタデカンフルオロデシルアクリレートである大阪有機化学工業(株)製「ビスコート17F」(商品名)、パーフルオロオクチルエチルアクリレートである共栄社化学(株)製「ライトアクリレートFA−108」(商品名)、1,10−ビス(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,−ヘキサデカフルオロデカンである共栄社化学(株)製「16−FDA」(商品名)が挙げられる。
【0091】
フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物として、撥水層の撥水・撥油性能を良好とする点で、パーフルオロポリエーテル基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。パーフルオロポリエーテル基を有する(メタ)アクリレート化合物の市販品としては、例えば、ダイキン工業(株)製「オプツールDAC」(商品名)、DIC(株)製「EXP RS−503」及び「EXP RS−751−k」が挙げられる。
【0092】
フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0093】
フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物の添加量は、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物100質量部に対して0.1〜2質量部が好ましい。フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物の添加量が0.1質量部以上であると、撥水層の撥水・撥油性能を十分とすることができる。また、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物の添加量が2質量部以下であると、撥水層の硬化性及び透明性を良好とすることができる。
【0094】
活性エネルギー線分解重合開始剤の添加量としては、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。
【0095】
また、撥水層としては、膜厚が0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。また膜厚が15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。かかる範囲においては、十分な表面硬度、透明性を有し塗膜層によるフィルムの反りも少なく、外観も良好である。
【0096】
一般的に、紫外線硬化性混合物中のフッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物は、表面張力が低いために、比較的表面張力の高い活性エネルギー線透過性フィルムよりも表面張力の低い大気界面に集まりやすい傾向にある。従って、撥水層を転写した際に、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物は、樹脂基材側により多く存在する(以下、「配向する」という。)ようになり、得られた樹脂積層体表層の撥水層の撥水性が不十分になる。
【0097】
活性エネルギー線透過性フィルム界面にフッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物を配向させるためには、活性エネルギー線透過性フィルム上にフッ素原子を有する皮膜を形成し、その上に、撥水層を形成することが好ましい。
【0098】
フッ素原子を有する皮膜は、公知の含フッ素化合物及び有機溶剤を含有するフッ素含有コーティング剤をフィルム上に塗工し、次いで有機溶剤を揮発させて得られる。
【0099】
含フッ素化合物としては、下記一般式(I)で示される含フッ素化合物が、表面張力の低い皮膜を形成できる点で好ましい。
Rf−Si−(O−R)(I)
(式中、Rfはフッ素原子を有する有機官能基、Rは炭素数が1〜3のアルキル基を表す。)
本発明で使用されるフッ素含有コーティング剤中に含有する含フッ素化合物は、フィルム表面上に表面張力が低く、撥水・撥油性能の高い後述の被膜を形成するための成分である。
【0100】
含フッ素化合物はフッ素原子を有する有機官能基であるRfを有するが、被膜の撥水・撥油性能の点及びフィルムとの密着性の点で、Rfはパーフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基であることが好ましい。Rは炭素数が1〜3のアルキル基を表す。
【0101】
含フッ素化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0102】
本発明においては、含フッ素化合物は、撥水・撥油性能の高い被膜を得る点で、フッ素含有コーティング剤中に0.02〜0.2質量%含有されることが好ましい。
【0103】
フッ素含有コーティング剤中に含有する有機溶剤は含フッ素化合物との相溶性に優れ、また、フッ素含有コーティング剤の粘度、乾燥速度及び被膜の膜厚をコントロールするために使用される。
【0104】
皮膜は、膜厚が2nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましい。また膜厚が20nm以下であることが好ましく、15nm以下であることがより好ましい。かかる範囲においては、外観良く、撥水・撥油性能の高い被膜を得ることができる。
【0105】
前記有機溶剤としては炭化水素系溶剤等の非フッ素溶剤及び含フッ素溶剤が挙げられるが、含フッ素化合物との相溶性に優れる点で、含フッ素溶剤が好ましい。
【0106】
非フッ素溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2プロパノール等の一価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類及びジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。
【0107】
含フッ素溶剤としては、例えば、含フッ素アルコール、含フッ素エーテル及びジトリフルオロメチルベンゼンが挙げられる。
【0108】
含フッ素アルコールの具体例としては、化学式H(CF(CH−OH、F(CF(CH−OH、F(CFCH=CHCHOH及びF(CFCHCH(I)CHOHで示される化合物が挙げられる。尚、上記の式において、v及wはそれぞれ独立に1〜8の整数を表す。
【0109】
含フッ素エーテルの具体例としては、R21−O−R22で示される化合物が挙げられる。尚、上記の式において、R21及びR22はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖又は分枝鎖のアルキル基であり、R21及びR22の少なくとも一方がフッ素原子を含む。
【0110】
含フッ素エーテルとしては、例えば、ハイドロフルオロアルキルエーテルが挙げられる。また、含フッ素エーテルの市販品としては、例えば、住友スリーエム(株)製の「HFE−7100」及び「HFE−7200」(いずれも商品名)が挙げられる。
【0111】
ジトリフルオロメチルベンゼンとしては、o−ジトリフルオロメチルベンゼン、m−ジトリフルオロメチルベンゼン、p−ジトリフルオロメチルベンゼン及びこれらの混合物が挙げられる。
【0112】
有機溶剤は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明で使用されるフッ素含有コーティング剤は含フッ素化合物及び有機溶剤を含有するが、含フッ素化合物及び有機溶剤の必要量を混合して濃度や粘度を適宜調整する方法及び含フッ素化合物及び有機溶剤が既に混合された状態の市販品を使用する方法のいずれでもよい。
【0113】
フッ素含有コーティング剤の市販品としては、例えば、(株)フロロテクノロジー製「フロロサーフFG5010」(商品名)、ダイキン工業(株)製「オプツールDSX」及び「オプツールAES−4」(いずれも商品名)、住友スリーエム(株)製「ノベックEGC−1720」(商品名)が挙げられる。これら市販品を使用する際には、適宜、有機溶剤を添加することにより、含フッ素化合物の含有量を調整することができる。
【0114】
フッ素含有コーティング剤のフィルム表面への塗工方法としては、特に限定されないが、前記反射防止層の形成方法と同様の方法が挙げられる。
【0115】
本発明において、被膜はフッ素含有コーティング剤をフィルム上に塗工し、次いで有機溶剤を揮発させる乾燥処理を実施することにより得られる。
【0116】
被膜は、表面張力が低く、塗工時に紫外線硬化性混合物をはじき易いため、フィルムカバー法で塗工することが好ましい。また、撥水層の耐擦傷性向上の観点から、また仕上がり不良の原因となる泡やゴミ等の混入防止の観点から、酸素等によって重合阻害されることのない嫌気性雰囲気で硬化することが好ましい。
【0117】
得られた被膜は表面張力が低く、撥水・撥油性能が高いので、撥水層を転写する際、紫外線硬化性混合物に含まれるフッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物が紫外線硬化性混合物の塗膜の被膜側の表層に配向しやすくなり、得られる樹脂積層体上の撥水層の撥水・撥油性が向上する。樹脂積層体上の撥水層表面の水に対する接触角は100度以上が好ましく、105度以上がより好ましい。
【0118】
被膜を形成した活性エネルギー線透過性フィルムの皮膜上に、前記フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物を含む紫外線硬化性混合物を塗工する方法としては、特に限定されないが、前記反射防止層の形成方法と同様の方法が挙げられる。
【0119】
これらの硬化性混合物は、例えば、電子線、放射線、紫外線などの活性エネルギー線を照射することにより硬化するものである。
【0120】
以下に、フィルムカバー法における製造例の一例を詳細に説明する。活性エネルギー線透過性フィルム上にフッ素含有コーティング剤を乾燥させて皮膜を形成し、皮膜の面上にフッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物を含む紫外線硬化性混合物を塗工する。次いで、カバーフィルムとなる活性エネルギー線透過性フィルムの任意の面と紫外線硬化性混合物を塗工した活性エネルギー線透過性フィルムの塗工した面とを相対させてプレスロールで圧接することにより、活性エネルギー線透過性フィルム、皮膜、紫外線硬化性混合物及びカバーフィルムが順次積層された積層体が形成される。この積層体に、カバーフィルム面側よりフィルムを介して、活性エネルギー線照射装置を用いて紫外線を照射し、紫外線硬化性混合物を硬化させる。本発明においては上記積層体が形成された後、活性エネルギー線の照射までに保持時間を設けることが好ましい。保持時間としては、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物が紫外線硬化性混合物中で被膜の面側に配向することを考慮して0.5〜5分が好ましい。紫外線硬化性混合物の硬化後、カバーフィルムを剥離する。このようにして、活性エネルギー線透過性フィルム上にフッ素含有コーティング剤を乾燥させて得られる皮膜及び剥離可能な撥水層が積層された積層フィルムを得ることができる。
【0121】
次に帯電防止機能を有する帯電防止層について詳細に説明する。
帯電防止層は、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、帯電防止成分及び活性エネルギー線分解重合開始剤を含む紫外線硬化性混合物を用いることが生産性の観点から好ましい。
【0122】
帯電防止成分は、電子伝導型の有機化合物や導電性粒子、イオン伝導型の有機化合物などが挙げられるが、環境の変化を受け難く導電性能が安定し、特に低湿環境下でも良好な導電性能を発現する点で、π共役系導電性有機化合物、導電性微粒子などの電子伝導型の帯電防止成分が好ましい。
【0123】
π共役系導電性有機化合物としては、脂肪族共役系のポリアセチレン、芳香族共役系のポリ(パラフェニレン)、複素環式共役系のポリピロール、ポリチオフェン、含ヘテロ原子共役系のポリアニリン、混合型共役系のポリ(フェニレンビニレン)等が挙げられる。特に、ポリチオフェン系導電性ポリマーが好ましい。
【0124】
導電性微粒子としては、カーボン系、金属系、金属酸化物系、導電被覆系微粒子等が挙げられる。
カーボン系微粒子としては、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボン粉末、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等のカーボン繊維、膨張化黒鉛粉砕品のカーボンフレーク等が挙げられる。
【0125】
金属系微粒子としては、アルミニウム、銅、金、銀、ニッケル、クロム、鉄、モリブデン、チタン、タングステン、タンタル等の金属、及び、それらの金属を含有する合金の粉末や、金属フレーク、鉄、銅、ステンレス、銀メッキ銅、黄銅等の金属繊維等が挙げられる。
【0126】
金属酸化物系微粒子としては、酸化錫、アンチモンをドープした酸化錫(ATO)、酸化インジウム、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛、アルミニウムをドープした酸化亜鉛、アンチモン酸亜鉛、五酸化アンチモンなどが挙げられる。
【0127】
導電被覆系微粒子としては、例えば、酸化チタン(球状、針状)、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、硫酸バリウム、マイカ、シリカ等の各種微粒子表面を、酸化錫、ATO、ITO等の帯電防止成分で被覆した導電性微粒子、金及び/又はニッケルなどの金属で表面処理されたポリスチレン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂等の樹脂ビーズが好ましい。
【0128】
導電性微粒子としては金属系微粒子(特に、金、銀、銀/パラジウム合金、銅、ニッケル、アルミニウム)や金属酸化物系微粒子(特に、酸化錫、ATO、ITO、酸化亜鉛、アルミニウムをドープした酸化亜鉛)が好ましい。特に、金属や金属酸化物などの電子伝導型の帯電防止成分が好ましく、中でも金属酸化物系微粒子が特に好ましく、上記に挙げた金属酸化物系微粒子のうち少なくとも1種以上用いることが好ましい。
【0129】
帯電防止成分の一次粒子の質量平均粒径は1nm以上であることが好ましい。また該質量平均粒径は200nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましく、80nm以下であることが特に好ましい。帯電防止成分の平均粒径は、光散乱法や電子顕微鏡写真により測定できる。
【0130】
活性エネルギー線分解重合開始剤の添加量は、紫外線硬化性混合物100質量部中、紫外線照射による硬化性の観点から0.1質量部以上が好ましく、帯電防止層の良好な色調を維持する観点から10質量部以下が好ましい。
【0131】
紫外線硬化性混合物には、必要に応じて、スリップ性向上剤、レベリング剤、無機微粒子、光安定剤(紫外線吸収剤、HALS等)等の各種成分をさらに添加できる。積層体の透明性の観点から、その添加量は紫外線硬化性混合物100質量部中、10質量部以下が好ましい。
【0132】
帯電防止層としては、膜厚が0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。また膜厚が10μm以下であることが好ましく、7μm以下であることがより好ましい。かかる範囲においては、十分な表面硬度、帯電防止性能、透明性を有し塗膜層によるフィルムの反りも少なく、外観も良好である。
【0133】
帯電防止層の表面抵抗値は1010Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。かかる表面抵抗値の領域であると、積層体における帯電防止性能が十分となる。
【0134】
帯電防止層の形成方法は特に限定されないが、前記反射防止層の形成方法と同様の方法が挙げられる。
【0135】
これらの硬化性化合物は、例えば、電子線、放射線、紫外線などの活性エネルギー線を照射することにより硬化するものである。
【0136】
接着層としては、例えば、アクリル系樹脂、塩素化オレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、マレイン酸系樹脂、塩化ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、ポリアミド系樹脂、クマロンインデン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、ブチラール樹脂、ロジン系樹脂、エポキシ系樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0137】
前記熱可塑性樹脂は、ポリアミド系樹脂にブチラール樹脂、ロジン系樹脂、及びエポキシ系樹脂の中の少なくとも一つを混合させてなる樹脂組成物であることが好ましい。またポリウレタン樹脂にブチラール樹脂、ロジン系樹脂、及びエポキシ系樹脂の中の少なくとも一つを混合させてなる樹脂組成物であってもよく、さらにはポリアミド系樹脂とポリウレタン系樹脂との混合物にブチラール樹脂、ロジン系樹脂、及びエポキシ系樹脂の中の少なくとも一つを混合させてなる樹脂組成物としてもよい。いずれの場合であっても、低温であっても接着が可能となる接着層を得ることができる。なお、接着層の形成は、それ自体公知の方法により形成することができる。
【0138】
接着層が熱可塑性樹脂からなり、表層にタック性を有さないため、また転写フィルムがロール形状で保管可能であるため、連続生産に適し生産性が良好である。
【0139】
接着層の形成方法は特に限定されないが、前記反射防止層の形成方法と同様の方法が挙げられる。
【0140】
本発明によって得られた積層体の加工工程において、カット、印刷、仕上げに至るまでの各工程での熱履歴による寸法精度の変化や反り量を低く抑えることができる。
【0141】
本発明によって得られた積層体の熱収縮率は、120℃の雰囲気下で120分間熱処理する前後の長さの変化から算出される熱収縮率でみた場合、シートの搬送方向、および該シートの搬送方向に直交する方向の収縮率がいずれも1.4%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましい。前記熱収縮率が1.4%以下であると、該樹脂積層体の加工時の熱によっても寸法が保持され、表示装置の面板として好適となる。
【0142】
以上の通り、本発明によって得られた機能性層を有する積層体は優れた反射防止機能、防眩機能、ハードコート機能、帯電防止機能、汚れ防止機能と優れた外観(光学歪の少なさ)を有し、かつ耐熱性が高いため、ディスプレイ等表示装置の面板、すなわち携帯電話、携帯型ゲーム機、カーナビゲーションシステム、ボータブルAV機器等に代表される液晶画面の表面を保護する透明樹脂シートとして好適である。
【実施例】
【0143】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
(ポリマーの重量平均分子量)
活性エネルギー線重合性液体に含有しているポリマーの重量平均分子量を次の方法にて測定した。ポリマービーズにテトラヒドロフラン(THF)を加えて、一晩静置溶解させて、東ソー(株)製液体クロマトグラフィーHLC−8020型を用いて測定した。分離カラムは東ソー(株)製TSK−GelGMHXL2本直列、溶媒はTHF、流量は1.0ml/min、検出器は示差屈折計、測定温度は40℃、注入量は0.1mlとした。標準ポリマーとしてメタクリル樹脂を使用した。
(ポリマー含有量)
ポリマー含有量は、活性エネルギー線重合性液体に含有するポリマーの割合を質量部にて計算したものである。
(開始剤量)
開始剤量は、活性エネルギー線重合性液体に含有する活性エネルギー線分解重合開始剤量をモノマーとポリマーを合わせたものを100質量部としたときの質量部表示とした。
(粘度)
粘度に関しては、各活性エネルギー線重合性液体の20℃における粘度をB型粘度計にて測定した結果を示した。測定方法は、ブルックフィールド社製デジタル粘度計、LVDV−II+ProのスピンドルLV4を使用し、回転速度6rpmにて行った。
(重合ピーク時間)
重合ピーク時間は、活性エネルギー線重合性液体に活性エネルギー線を照射してから、重合発熱による温度ピークを検知するまでの時間を分の単位で表示した。実際に活性エネルギー線重合性液体を樹脂基材にするまでに要する時間としては、活性エネルギー線照射から熱処理までを含んだ時間であるが、熱処理工程に関しては、どの条件にても同時間要すること、重合ピークを検知する前はモノマーが多く、その状態で熱処理をするとモノマーの沸騰により発泡状態の板となってしまうため、重合ピークの検知後に熱処理の流れは短縮できないことから、実質的に重合ピークまでの時間が製造時間として影響するため、重合ピーク時間にて比較を行った。
(積層体外観)
得られた積層体の凹凸を目視にて確認した結果で、板の黄色味に関しては考慮せず、以下のように判断した。
◎:エッジ部において板厚低下が少なく、フィルム面側の凹凸も少なく良好な外観
○:エッジ部において若干の板厚低下があるものの問題なく、外観良好なもの
×:エッジ部で粘性液体が流れて板厚低下、フィルム側の面にて凹凸が確認される
××:供給出口での表面の乾燥により大きな凹凸形状が確認される
(黄色度)
黄色度に関しては、JIS K7105、測定条件(b)にて測定される黄色度YIの3つのサンプルを測定した平均値として表した。
(ビカット軟化温度)
ビカット軟化温度に関しては、JIS K7206のB50法により3回測定した平均値として表した。
(熱収縮率の測定)
積層体の熱収縮率は、加熱処理を施す前後での板の収縮量をパーセント表示したもので、板の耐熱性、板製造時の応力などが影響し、携帯電話の画面を保護するシートなどでの熱履歴に対する寸法精度を表す指標として重要なものである。ミクロンオーダーの熱収縮量を測定する方法として以下のように測定した。製品として得られた反射防止積層体を図2に示すようにシートの搬送方向と、それと直行する方向(幅方向)がそれぞれ正方形の一辺となるように80mm角として切り出し、その切り出した板の中心を通り、積層体の移送方向、幅方向へそれぞれおよそ60mmの間隔となるように油性インクにて十字印を記し、それぞれ図のように(1)〜(4)までの番号をふり、(1)−(3)間、(2)−(4)間の長さをザイゴ株式会社製New View 6300により3回測定した。その後、120℃に設定した乾燥機に100mm角、厚さ5mmのガラス板に、サンプルの付着防止のための綿布(カナキン)をひき、ガラス板が120℃一定となるように30分間静置した後、上記測定済みサンプルを布の上に載せ、120分間加熱した。加熱後30分間かけて40℃まで冷却し、再度(1)−(3)間、(2)−(4)間の長さを3回測定し、それぞれの平均値の差を、収縮側を正として算出し、初期の長さによって割り、パーセント表示とした。このときの、同箇所同条件での3回測定の最大値と最小値の差はいずれにおいても10μm以下で、60mmの測定間隔として0.017%以下の測定誤差であった。
(全光線透過率及びヘーズ)
日本電色製HAZE METER NDH2000(商品名)を用いてJIS K7361−1に示される測定法に準拠して、全光線透過率を測定し、JIS K7136に示される測定法に準拠してヘーズを測定した。
(耐擦傷性)
擦傷試験の前後におけるヘーズの変化(Δヘーズ)をもって評価した。即ち、#000のスチールウールを装着した直径25.4mmの円形パッドを積層体のハードコート層表面上に置き、500gの荷重下で、20mmの距離を10回往復擦傷し、擦傷前と擦傷後のヘーズ値の差を下式(1)より求めた。
[Δヘーズ(%)]=[擦傷後ヘーズ値(%)]−[擦傷前ヘーズ値(%)]・・(1)
また、試験後のサンプルの傷の本数を数えた。
(反射防止性能評価)
シートの裏面をサンドペーパーで粗面化した後艶消し黒色スプレーで塗り、これをサンプルとし、分光光度計(日立製作所社製、「U−4000」)を用いて、入射角5°、波長380〜780nmの範囲でJIS R3106に示される測定法に準拠してサンプルの表面の反射率を測定した。
(密着性評価)
付着性試験;クロスカット法(JIS K5600−5−6)により評価した。100箇所の内、剥離せず残った箇所の数を表示した。
(樹脂積層体の反り評価)
80℃の環境で15時間放置した後の、30cm×30cmの樹脂積層体の反り量を測定した。なお、反り量は、平板の上にサンプルをおき、平板から反ったサンプルまでの距離を測定した。
○:反り量5mm以下
×:反り量5mm以上
(接触角)
(a)水に対する接触角
樹脂積層体上の撥水層に、23℃、相対湿度50%の環境下において、純水0.2μLを1滴で滴下し、携帯型接触角計(Fibro syetem ab社製、商品名:「PG−X」)を用いて水と撥水層の接触角を測定し、水に対する接触角を求めた。
(b)トリオレインに対する接触角
純水の代わりにトリオレインを使用したこと以外は水に対する接触角の評価と同様にして、トリオレインと樹脂積層体上の撥水層の接触角を測定し、トリオレインに対する接触角を求めた。
(油性インク拭き取り性)
油性インク(黒字)として「マイネーム」((株)サクラクレパス製、商品名)で硬化被膜の表面上に線を書き、3分後に「キムタオル」(日本製紙クレシア(株)製、商品名)で拭き取り、その際の油性インクの拭き取れ具合を目視により以下の基準で評価した。
「○」:5回の拭取りで完全に拭き取れる
「△」:5回の拭取りでわずかに線の跡が残る
「×」:5回の拭取りで一部、又は全部のインクが付着したままである
(帯電防止性能評価)
帯電防止性能は表面抵抗値から評価した。
【0144】
超絶縁抵抗計(TOA製、ULTRA MEGOHMMETERMODEL SM−10E)を使用し、測定温度23℃、50%相対湿度の条件で、樹脂積層体の積層膜側について印加電圧500Vで1分後の表面抵抗値(Ω/□)を測定した。測定用の試料としては、予め23℃、50%相対湿度で1日間調湿したものを用いた。
(膜厚測定方法)
ミクロトームにて厚み100nmにサンプルを切り出し透過型電子顕微鏡で観察した。透過型電子顕微鏡は日本電子製(JEOL)JEM−1010を用いて測定した。
(実施例1)
メチルメタクリレートモノマー60質量部に対し、メチルメタクリレートポリマービーズ(三菱レイヨン社製、BR−83、重量平均分子量4万)40質量部を80℃で30分間かけて加熱溶解させた混合物100質量部に対し、紫外線分解重合開始剤1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(チバ・ジャパン社、イルガキュア184)を0.3質量部、離型剤としてジオクチルスルホ琥珀酸ナトリウム(三井サイアナミッド社製、エアロゾルOT−100)を0.05質量部添加し、光重合性液体を調整し(ポリマー含有量39.9質量部)、調合時の泡を抜くために50℃にて6時間静置させた後、常温まで自然冷却させた。
【0145】
鋳型として、縦300mm、横300mm、厚み3mmのSUS304、反射防止転写フィルムとして尾池工業製反射防止転写フィルム:STEP PAR-2(紫外線透過性フィルム、剥離層、反射防止層、ハードコート層、接着層の順に積層)、紫外線照射装置として東芝社製FL30S−BLランプ、前段加熱機構、後段加熱機構については熱風加熱を使用した。
【0146】
鋳型の搬送速度を1.5m/minとし、供給ダイから光重合性液体を幅200mm、厚さ1mmのシート状に供給し、反射防止転写フィルムを光重合性液体へ接着層が接するよう被せた。
【0147】
その後、前段加熱機構により60℃に温度制御し、紫外線照射装置により5mW/cmの照射強度で10分間紫外線を照射し、後段加熱機構10により130℃にて5分間熱処理した後、90℃に空冷し、反射防止層を樹脂基材と一体化した積層体を作成した。この後、紫外線透過性フィルム、鋳型から反射防止積層体を剥離した。この際、紫外線透過性フィルムの剥離層と反射防止層界面で剥離し、製品表層、即ち空気層側から、反射防止層、ハードコート層、接着層、樹脂基材の順に積層された反射防止積層体が得られた。
【0148】
得られた反射防止積層体は均一で上下いずれの面に対しても平滑で良好な外観の反射防止積層体を得た。このとき、紫外線照射区間における光重合性粘性液体の内部温度を測定した結果、照射開始から3.8分後に重合発熱による温度ピークを確認した。
【0149】
得られた反射防止積層体の全光線透過率は95%、ヘーズは0.2%であり、透明性に優れたものであった。さらに、反射防止層の擦傷後のヘーズ増分は0.1%であり、傷の本数は3本であった。最小反射率は580nmの波長において0.2%であった。また密着性試験を行った結果塗膜の剥離はなく密着性が良好であった。反り試験を行った結果、反り量は5mm未満であった。結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1と同様に、光重合性粘性液体を調整し(ポリマー含有量39.9質量部)、調合時の泡を抜くために50℃にて6時間静置させた後、常温まで自然冷却させた。
【0150】
図1に示されるのと同様の装置を使用し、エンドレスベルト3としては幅500mmのステンレス製エンドレスベルト、反射防止転写フィルム5としては幅450mmで厚さ188μmの尾池工業製反射防止転写フィルム:STEP PAR-2(紫外線透過性フィルム、剥離層、反射防止層、ハードコート層、接着層の順に積層)、紫外線照射装置4として東芝社製FL30S−BLランプ、前段加熱機構9、後段加熱機構10については熱風加熱を使用した。
【0151】
エンドレスベルト3の搬送速度を1.5m/minとし、供給ダイ1から光重合性液体2を幅400mm、厚さ1mmのシート状に供給し、反射防止転写フィルム5を光重合性液体へ接着層が接するよう被せた。
【0152】
その後、前段加熱機構により60℃に温度制御し、紫外線照射装置4により5mW/cmの照射強度で10分間紫外線を照射し、後段加熱機構10により130℃にて5分間熱処理した後、90℃に空冷し、反射防止層を樹脂基材と一体化した積層体を作成した。この後、紫外線透過性フィルム5′、エンドレスベルト3から反射防止積層体を剥離した。この際、紫外線透過性フィルムの剥離層と反射防止層界面で剥離し、製品表層、即ち空気層側から、反射防止層、ハードコート層、接着層、樹脂基材の順に積層された反射防止積層体が得られた。紫外線透過性フィルムと剥離層が一体化された状態で、紫外線透過性フィルム巻取り装置7を用いてフィルムを巻き取った。
【0153】
得られた反射防止積層体は均一で上下いずれの面に対しても平滑で良好な外観の反射防止積層体を得た。このとき、紫外線照射区間における光重合性粘性液体の内部温度を測定した結果、照射開始から3.8分後に重合発熱による温度ピークを確認した。
【0154】
得られた反射防止積層体の全光線透過率は95%、ヘーズは0.2%であり、透明性に優れたものであった。さらに、反射防止層の擦傷後のヘーズ増分は0.1%であり、傷の本数は3本であった。最小反射率は580nmの波長において0.2%であった。また密着性試験を行った結果塗膜の剥離はなく密着性が良好であった。反り試験を行った結果、反り量は5mm未満であった。結果を表1に示す。
(実施例3)
メチルメタクリレートモノマー65質量部に対し、メチルメタクリレートポリマービーズ(三菱レイヨン社製、BR−80、重量平均分子量10万)35質量部にしたこと以外は実施例2と同様にして反射防止積層体を得た。このときの紫外線照射区間での温度ピークは照射から4.8分後であった。結果を表1に示す。
(実施例4)
まず、以下の方法によりポリマービーズを製造した。
【0155】
アニオン系高分子化合物水溶液の製造:攪拌機を備えた重合装置に、メタクリル酸2−スルホエチルナトリウム58質量部、メタクリル酸カリウム水溶液(メタクリル酸カリウム分30質量部)31質量部、メチルメタクリレート11質量部からなる単量体混合物と、脱イオン水900質量部を加えて攪拌溶解させた。その後、窒素雰囲気下で混合物を攪拌しながら60℃まで昇温し、6時間攪拌しつつ60℃で保持させてアニオン系高分子化合物水溶液を得た。この際、温度が50℃に到達した後、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.1質量部を添加し、更に別に計量したメチルメタクリレート11質量部を75分間かけて、上記の反応系に連続的に滴下した。
【0156】
ビーズ状共重合体の製造:攪拌機が備わった第1の容器に、メチルメタクリレート97質量部、メチルアクリレート3質量部からなる単量体混合物に、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)を0.1質量部、連鎖移動剤としてn−オクチルメルカプタンを0.11質量部投入し攪拌混合した。
【0157】
また、攪拌機が備わった第2の容器に、脱イオン水150質量部、分散安定剤として、上記方法により得たアニオン系高分子化合物水溶液0.3質量部、分散安定助剤として硫酸ナトリウム0.35質量部を投入し攪拌混合した。
【0158】
攪拌機が備わった重合用容器に、上記で得られた第1の容器の内容物(全部)と、第2の容器の内容物(全部)とのそれぞれを投入し、窒素置換後、80℃に昇温した。重合発熱ピーク終了後、95℃で30分間保持した後、30℃に冷却し重合を完結した。その後、洗浄脱水処理、70℃で真空乾燥して重量平均分子量18万のポリマービーズを得た。
【0159】
メチルメタクリレートモノマー65質量部に対し、上記で製造したポリマービーズ35質量部にしたこと以外は実施例2と同様にして、反射防止積層体を得た。このときの紫外線照射区間での温度ピークは照射から4.0分後であった。結果を表1に示す。
(実施例5)
メチルメタクリレートモノマー77質量部に対し、メチルメタクリレートポリマービーズ(三菱レイヨン社製、BR−85、重量平均分子量30万)23質量部にしたこと以外は実施例2と同様にして反射防止積層体を得た。このときの紫外線照射区間での温度ピークは照射から7.0分後であった。結果を表1に示す。
(実施例6)
メチルメタクリレートモノマー85質量部に対し、メチルメタクリレートポリマービーズ(三菱レイヨン社製、BR−88、重量平均分子量48万)15質量部にしたこと以外は実施例2と同様にして、反射防止積層体を得た。このときの紫外線照射区間での温度ピークは照射から8.0分後であった。結果を表1に示す。
(実施例7)
実施例2と同様に光重合性粘性液体を調整し(ポリマー含有量39.9質量%)、前段加熱機構を使用せず、光重合性粘性液体温度20℃において紫外線を照射したこと以外は実施例2と同様にして、反射防止積層体を得た。このときの紫外線照射区間での温度ピークは照射から5.1分後であった。結果を表1に示す。
(実施例8)
光重合性粘性液体温度20℃において紫外線を照射したこと以外は実施例3と同様にして、反射防止積層体を得た。このときの紫外線照射区間での温度ピークは照射から6.8分後であった。結果を表1に示す。
(実施例9)
光重合性粘性液体温度20℃において紫外線を照射したこと以外は実施例4と同様にして、反射防止積層体を得た。このときの紫外線照射区間での温度ピークは照射から6.1分後であった。結果を表1に示す。
(実施例10)
メチルメタクリレートモノマー82質量部に対し、メチルメタクリレートポリマービーズ(三菱レイヨン社製、BR−85、重量平均分子量30万)18質量部にしたこと以外は実施例2と同様にして、反射防止積層を得た。このときの紫外線照射区間での温度ピークは照射から10.4分後であった。 ポリマー含有量が低いため、重合時間を要する結果となった。
(実施例11)
紫外線照射装置としてアイグラフィックス社製EGT−061−C1を使用し、120W/cmにて、0.5分間で2J/cmの照射となる強度(67mW/cm)にて6分間紫外線を照射したこと以外は、実施例3と同様に反射防止積層体を作成した。得られた反射防止積層体は平滑であったが、エッジ部から見ると黄色味を帯びた反射防止積層体を得た。このときの紫外線照射区間での温度ピークは照射から4分後であった。
【0160】
紫外線照射量が多いので、得られた反射防止積層体が黄変する結果となった。また、紫外線照射量が多くなることによって、開始剤分解量が増加するため、製品の分子量が低下していることが耐熱性の低下に影響していると考えられる。
(比較例1)
実施例1で用いた反射防止転写フィルムの接着層側をメタクリル樹脂基材(三菱レイヨン社、アクリライトL001)側とし、張り合わせた後、油圧成形機(庄司鉄鋼(株)製)を用いてプレスし、10MPaの圧力をかけ上部、下部の設定温度を120℃として10分間圧力をかけた。フィルム表面に熱伝対を取り付け、フィルム表面温度を測定したところ、10分後の表面温度は、100℃であった。その後、圧力をかけた状態で30℃まで冷却を行った後、フィルムを剥離した。得られた反射防止積層体の反射防止層と樹脂基材との密着性は十分でなく、樹脂基材とハードコート層の界面で密着不良が発生した。また、枚葉の処理であり、処理時間も長時間要することから、生産性が低かった。さらに、不均一な冷却に伴う光学歪が発生した。結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1で用いた反射防止転写フィルムの接着層側へコハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸のモル比15:4の縮合混合物(大阪有機化学工業社、TAS)35質量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業社、C6DA)30質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成社、M305)10質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成社、M400)25質量部、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社、DAROCUR TPO)2質量部からなる紫外線硬化性混合物からなる塗料を、フィルムの幅方向に線状となるように塗布し、(バーコーターNo50)を用いて面状の塗布層を形成した。
【0161】
次いで60℃に加温した2mm板厚のアクリライトL001上に、前記塗布層を形成した反射防止転写フィルムを、塗布層をアクリライトEX001側に向けて前記転写フィルムを重ね、JIS硬度40°のゴムロールを用い、紫外線硬化性混合物を含む塗膜の厚みが32μmとなるように過剰な塗料をしごき出しながら、気泡を含まないように圧着させた。
【0162】
尚、紫外線硬化性混合物を含む塗膜の厚みは、この紫外線硬化性混合物の供給量および展開面積から算出した。
【0163】
次いで、60℃に加温した状態で、120秒経過後、前記転写フィルムを介して出力9.6kWのメタルハライドランプの下20cmの位置を2.5m/minのスピードで通過させて、紫外線硬化性混合物の硬化を行い第2のハードコート層を形成した。
【0164】
その後、前記転写フィルムを剥離すると、反射防止層、第1のハードコート層、接着層は全て、第2のハードコート層へ転写しており、反射防止層、第1のハードコート層、接着層、第2のハードコート層、及びアクリル基材という構成の反射防止積層体を得た。得られた樹脂積層体の第1のハードコート層の膜厚は、7μmであり、第2のハードコート層の膜厚は30μmであった。
【0165】
得られた反射防止積層体の全光線透過率は95%、ヘーズは0.2%であり、透明性に優れたものであった。さらに、反射防止層の擦傷後のヘーズ増分は0.1%であり、傷の本数は3本であった。最小反射率は580nmの波長において0.2%であった。しかしながら、密着性試験を行った結果塗膜の剥離があり、密着性が不良であった。また、反り試験を行った結果、反り量は5mm以上であった。結果を表1に示す。
第2のハードコート層の収縮応力により、反射防止積層体が大きく反ったものと考えられる。
(実施例12)
実施例1において反射防止転写フィルムの代わりに、以下のハードコート転写フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様に積層体を作製した。得られたハードコート積層体の評価結果を表2に示す。
【0166】
ハードコート転写フィルムは、100μmのメラミン剥離層付きPETフィルム(レイコウ社、AC-J)へ、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業社、C6DA)40質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成社、M305)60質量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(チバ・ジャパン社、IRGACURE184)4質量部からなる紫外線硬化性混合物からなる塗料を、(バーコーターNo4)を用いて塗布した。
【0167】
その後、9.6kWの高圧水銀ランプの下20cmの位置を2.5m/minのスピードで通過させてハードコート層を形成し、ハードコート転写フィルムを得た。結果を表2に示す。
(実施例13)
実施例1において反射防止転写フィルムの代わりに、以下の帯電防止転写フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様に積層体を作製した。得られた帯電防止積層体の評価結果を表2に示す。
【0168】
帯電防止転写フィルムは、100μmのメラミン剥離層付きPETフィルム(レイコウ社、AC-J)へ、オリゴチオフェン誘導体含有ハードコート塗料(信越ポリマー社、セルブジーダHC−A01)をフィルムへ(バーコーターNo4)を用いて塗布した。
【0169】
その後、80℃で5分乾燥させた後、9.6kWの高圧水銀ランプの下20cmの位置を2.5m/minのスピードで通過させてハードコート層を形成し、帯電防止転写フィルムを得た。結果を表2に示す。
(実施例14)
・フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物を含む紫外線硬化性混合物の調整
分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成社、M400)50部、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社、M309)30部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業社、C6DA)20部、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物(ダイキン工業社、オプツールDAC)固形分として0.4部、活性エネルギー線分解重合開始剤:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社、DAROCUR TPO)2部を混合し、紫外線硬化性混合物を得た。なお、オプツールDACは、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール80質量%を含む。
・剥離可能な撥水層が積層された積層フィルムの製造
フッ素含有コーティング剤(住友スリーエム社、ノベックEGC−1720)を用い、厚み100μmのPETフィルム(帝人デュポンフィルム社、テイジンテトロンフィルムOX)の易接着処理面に、バーコーターを用いて乾燥膜厚が10nmとなるように塗布した。次いで、このフィルムを60℃の熱風乾燥炉で10分間乾燥し、更に室温で3時間放置し、被膜が積層されたPETフィルムを得た。上記で調整した紫外線硬化性混合物を100μmのPETフィルムの皮膜が形成された面に塗布した。次いで、厚み25μmのPETフィルム(帝人デュポンフィルム社、テイジンテトロンフィルムG2C)の非コロナ処理面が紫外線硬化性混合物の塗付面に接触するように、紫外線硬化性混合物の塗付面上に被覆し、プレスロールの下を0.25m/分の速度で通過させて、得られる撥水層の膜厚が10μmになるように塗工した。次いで、厚み100μmのPETフィルム、皮膜、紫外線硬化性混合物、及び厚み25μmのPETフィルムが積層された状態で1分間保持した。この後、得られた積層体を出力120W/cmのメタルハライドランプの下24cmの位置を0.25m/分の速度で通過させて紫外線硬化性混合物を硬化させた。次いで、厚み25μmのPETフィルムを剥離し、PETフィルム上にフッ素含有コーティング剤「ノベックEGC−1720」を乾燥させて得られる皮膜及び剥離可能な撥水層が積層された積層フィルムを得た。
【0170】
本フィルムを転写フィルムとして使用したこと以外は、実施例1と同様の光重合性液体、鋳型及び製造条件で樹脂基材を作成し、転写フィルムの皮膜と撥水層の界面で剥離し、樹脂基材の上に撥水層が積層された積層体を得た。評価結果を表3に示す。
(実施例15)
「オプツールDAC」の固形分量を2部としたこと以外は、実施例14と同様の方法で、樹脂基材の上に撥水層が積層された積層体を得た。評価結果を表3に示す。
(実施例16)
「オプツールDAC」の固形分量を0.1部としたこと以外は、実施例14と同様の方法で、樹脂基材の上に撥水層が積層された積層体を得た。評価結果を表3に示す。
(比較例3)
「オプツールDAC」を0部としたこと以外は、実施例14と同様の方法で、樹脂基材の上に撥水層が積層された積層体を得た。評価結果を表3に示す。
【0171】
【表1】

【0172】
【表2】

【0173】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明の方法によって得られる積層体は、携帯電話、液晶ディスプレイ等の表示装置の面板などの光学用シートとして、透明性、平滑性、耐熱性、密着性、低反り性が要求される用途に好適である。
【符号の説明】
【0175】
1 供給ダイ
2 光重合性液体
2′ 機能性層が被覆された積層体
3 エンドレスベルト
4 紫外線照射装置
5 機能性転写フィルム
5′ 活性エネルギー線透過性フィルム
6 機能性転写フィルム繰り出し装置
7 活性エネルギー線透過性フィルム巻取り装置
8 上面押し付けロール
8′ 下面押し付けロール
9 前段加熱機構
10 後段加熱機構
11 主プーリ
12 主プーリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線重合性液体を鋳型に供給する第一の工程、供給された活性エネルギー線重合性液体上に、活性エネルギー線透過性フィルムの片面に剥離可能な機能性層が形成された機能性転写フィルムの機能性層側が接するようにして該フィルムを被せる第二の工程、該フィルムの上から活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線重合性液体を硬化させ樹脂基材とする第三の工程、機能性層と樹脂基材とが一体化した樹脂積層体を鋳型と活性エネルギー線透過性フィルムから剥離する第四の工程を含む樹脂積層体の製造方法。
【請求項2】
機能性層が、反射防止機能、防眩機能、ハードコート機能、帯電防止機能、及び汚れ防止機能の中の少なくとも一つの機能を有する層である請求項1に記載の樹脂積層体の製造方法。
【請求項3】
機能性層の上に、接着層が形成されたフィルムを用いる請求項1または2に記載の樹脂積層体の製造方法。
【請求項4】
活性エネルギー線照射後に100℃以上の熱処理工程を含む請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂積層体の製造方法。
【請求項5】
樹脂基材がメチルメタクリレート単位を50質量%以上含有するアクリル系樹脂基材である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂積層体の製造方法。
【請求項6】
鋳型がエンドレスベルトである請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂積層体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6に記載の製造方法により得られる樹脂積層体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−31575(P2011−31575A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182520(P2009−182520)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】