積層型発光ダイオード装置および反射型発光ダイオードユニット
【課題】 放熱性に優れ高出力化が可能な積層型発光ダイオード装置を提供する。
【解決手段】 高熱伝導性を有する金属製の中空状のホルダケース5内に発光ダイオード2およびダイクロイックミラー3を対向配置してなる複数の反射型発光ダイオードユニット10を、電気的絶縁材からなる連結材4を介して連結して積層型発光ダイオード装置100を構成した。
【解決手段】 高熱伝導性を有する金属製の中空状のホルダケース5内に発光ダイオード2およびダイクロイックミラー3を対向配置してなる複数の反射型発光ダイオードユニット10を、電気的絶縁材からなる連結材4を介して連結して積層型発光ダイオード装置100を構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の反射型発光ダイオードを積層配置してなる積層型発光ダイオード装置および当該積層型発光ダイオード装置に用いて好適な反射型発光ダイオードユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発光素子たる発光ダイオードを光透過性材料かなる封止体に封止し、発光ダイオードの発光面に対向する封止体の面上に反射面を形成してなる反射型発光ダイオードが知られている。また、このような反射型発光ダイオードを光放射方向に複数連設して反射型発光ダイオードを積層配置するとともに、反射型発光ダイオードのそれぞれの反射面にダイクロイックミラーを形成することで、複数の反射型発光ダイオードから発せられた光を同一面から放射可能にした積層型発光ダイオード装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−222767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の積層型発光ダイオード装置においては、発光ダイオードが光透過性材料からなる封止体に封止されているため、発光ダイオードの放熱性が悪く、高出力化が困難であるという問題があった。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、放熱性に優れ高出力化が可能な積層型発光ダイオード装置および反射型発光ダイオードユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、高熱伝導性を有する金属製の中空状のホルダケース内に発光素子およびダイクロイックミラーを対向配置してなる複数の反射型発光ダイオードユニットを、電気的絶縁材からなる連結材を介して連結したことを特徴とする積層型発光ダイオード装置を提供する。
【0006】
また本発明は、上記発明において、前記発光素子を高熱伝導性材から形成されたリードフレームに取り付け、このリードフレームを前記ホルダケースに取り付けたことを特徴とする。
【0007】
また本発明は、上記発明において、前記リードフレームと前記ダイクロイックミラーとの間に、前記ダイクロイックミラーの焦点位置を前記発光素子の配置位置に合わせるための調整用スペーサを設けたことを特徴とする。
【0008】
また本発明は、上記発明において、前記ホルダケースの外側面に放熱フィンを形成したことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上記発明において、前記発光素子と前記ダイクロイックミラーとの間に拡散フィルタを設けたことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上記発明において、前記ダイクロイックミラーは、ガラス基材の表面に所定層数以上の誘電多層膜を形成してなることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、上記発明において、前記ダイクロイックミラーの径を、前記発光素子の外形サイズの約40倍以上としたことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、上記発明において、前記ダイクロイックミラーの光学反射面を、前記光学素子の配置位置を焦点とする非球面形状または放物面形状にしたことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、上記発明において、前記複数の反射型発光ダイオードユニットのそれぞれの発光ダイオードが互いに異なる中心波長の光を放射することを特徴とする。
【0014】
また上記目的を達成するために、本発明は、発光素子の光を反射鏡にて反射して外部放射する反射型発光ダイオードユニットにおいて、高熱伝導性を有する金属製の中空状のホルダケース内に前記発光素子および前記反射鏡を対向配置し、電気的絶縁材からなる連結材を介して、他の反射型発光ダイオードユニットを連結可能に構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高熱伝導性を有する金属製の中空状のホルダケース内に発光素子およびダイクロイックミラーを対向配置してなる複数の反射型発光ダイオードユニットを、電気的絶縁材からなる連結材を介して連結する構成としたため、発光素子の放熱性を高めることでき高出力化が可能になるとともに、反射型発光ダイオードユニット同士の電気的絶縁性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施の形態を示す積層型発光ダイオード装置100の正面および側面を示す概略図であり、図2はその側断面の概略図である。これらの図に示すように、積層型発光ダイオード装置100は、複数の反射型発光ダイオードユニット10を備え(図示例では3つ)、これらの反射型発光ダイオードユニット10が光放射方向Pに沿って積層するように連設されている。
【0017】
図3は反射型発光ダイオードユニット10の分解斜視図である。
反射型発光ダイオードユニット10は、図2および図3に示すように、発光素子たる発光ダイオード2と、この発光ダイオード2を支持するリードフレーム1と、発光ダイオード2の発光面2Aに対向配置される反射鏡たるダイクロイックミラー3と、連結材4とを備え、これらが円筒状(断面角形の筒状でも良い)のホルダケース5に内設されている。このホルダケース5はアルミニウムなどの高熱伝導性を有する金属材から形成され、その外周面(外側面)に多数の放熱フィン7を有する放熱部5Cが形成されている。
【0018】
リードフレーム1は、図4に示すように、円環部1Aと、この円環部1Aの中心Oに配置される略円板状の取付部1Bと、円環部1Aから取付部1Bに向けて延びる三本のアーム部1Cとを備え、これらが例えば銅などの高熱伝導性を有する板材を例えば型抜き成形するなどして一体に形成されている。リードフレーム1の背面には、図4(c)に示すように、発光ダイオード2が取付部1Bに固定され、また、回路用基板6がアーム部1Cに設けられ、回路用基板6を介して外部からの電力が発光ダイオード2に供給される。なお、発光ダイオード2の発光面2Aには拡散フィルタ9が貼り付けられているが、これについては後に詳述する。
【0019】
かかるリードフレーム1は、図3に示すように、発光ダイオード2(発光面2A)を背面側に向けた姿勢でホルダケース5の背面側の開口5Aからホルダケース5内に挿入され、図2に示すように、ホルダケース5の内周面に設けられた掛止片5Bに掛止される。このとき、リードフレーム1の円環部1Aの側周面がホルダケース5の内側面に密着して、発光ダイオード2が発する熱がホルダケース5に伝達されるようになっている。
【0020】
ダイクロイックミラー3は、図2、図3および図6に示すように、特定波長帯域の光のみを選択的に反射し、他の波長帯域の光を透過する凹面状の光学反射面3Aを有するものであり、この光学反射面3Aが発光ダイオード2の発光面2Aに対向するように焦点距離調整用スペーサ8を介在させてホルダケース5に挿入される。光学反射面3Aは、対向配置される発光ダイオード2の放射光波長に対して高反射特性を有し、また、この発光ダイオード2の配置位置を焦点とする放物面(回転放物面)または非球面に形成されている。したがって、各反射型発光ユニット10においては、発光ダイオード2から放射された光が中心軸Nに対して略平行な光として反射され、ホルダケース5の正面側の開口5D(図2参照)から中心軸Nに対して略平行な光として外部放射される。
【0021】
上記焦点距離調整用スペーサ8は、ダイクロイックミラー3の光学反射面3Aの焦点位置を調整するための樹脂製部材である。詳述すると、発光ダイオード2は、製造メーカやその構造(ベアチップや表面実装型チップなど)などによりチップの高さが異なるため、発光ダイオード2(発光面2A)から光学反射面3Aまでの距離、すなわち、焦点距離f(図2参照)が反射型発光ダイオードユニット10ごとに異なり、結果として、反射型発光ダイオードユニット10間で配光特性や照度分布が一致しなくなるという問題がある。
【0022】
そこで、本実施の形態では、リードフレーム1とダイクロイックミラー3との間に焦点距離調整用スペーサ8を介在させて、発光ダイオード2(発光面2A)から光学反射面3Aまでの距離(焦点距離f)を調整し、焦点位置を発光ダイオード2の配置位置に位置合わせ可能な構成としている。
なお、本実施の形態では、焦点距離調整用スペーサ8として複数の円柱状部材(図示例では3本)を用いる構成としたが、これに限らず、リードフレーム1の円環部1Aと略同径の円筒状部材を用いる構成としても良い。
【0023】
連結材4は、例えば樹脂などの電気的絶縁材が円筒状に形成されてなり、図2および図3に示すように一端4Aがホルダケース5の背面側の開口5Aに挿入される。このとき、図2に示すように、連結材4の他端4Bがホルダケース5の背面側の開口5Aから突出し、この他端4Bが、後段の反射型発光ダイオードユニット10のホルダケース5の正面側の開口5Dに挿入されてホルダケース5の掛止部5Bに掛止されることで、反射型発光ダイオードユニット10が連結される。なお、最後段の反射型発光ダイオードユニット10においては、図1および図2に示すように、その後段に他の反射型発光ダイオード10が連結されることがないため、連結材4を設ける必要がない。
【0024】
このようにして複数の反射型発光ダイオードユニット10が積層するように連結材4を介して連結されて、図1および図2に示す積層型発光ダイオード装置100が構成される。そして、この積層型発光ダイオード装置100においては、図2に示すように、各反射型発光ダイオードユニット10が同一の光放射方向Pに光を放射し、また、各反射型発光ダイオードユニット10のダイクロイックミラー3が後段からの光を透過することで、各反射型発光ダイオードユニット10の光が合成されて、最前段の反射型発光ダイオードユニット10の正面から外部放射される。
【0025】
したがって、積層型発光ダイオード装置100にあっては、各反射型発光ダイオードユニット10の放射光が合成されて外部放射されるため、容易に高い光出力が得られる。また、反射型発光ダイオードユニット10のそれぞれの発光ダイオード2として、光の三原色に相当する赤(R:波長660nm)、緑(G:波長525nm)、青(B:波長470nm)のそれぞれの波長の光を用いる構成とすれば、個々の発光ダイオード2を調光することでフルカラーの光源を容易に構成することが可能となる。
【0026】
ここで、上述したように、本実施の形態では、リードフレーム1およびホルダケース5のそれぞれを高熱伝導性を有する例えば銅などの金属により形成されているため、発光ダイオード2が発する熱をリードフレーム1を介してホルダケース5に伝達し、当該ホルダケース5の放熱部5Cから放熱することができ、発光ダイオード2の放熱性の向上が図られている。特に、ホルダケース5の外側面には多数の放熱フィン7を有する放熱部5Cが設けられているため、放熱性のさらなる向上が図られ、発光ダイオード2として高出力なものを用いた場合であっても、高電流時に発光ダイオード2が高温になることがなく、輝度低下などを招くことが無い。
【0027】
なお、放熱部5Cを空冷するための空冷ファンを積層型発光ダイオード装置100の近傍に配置することで、放熱性をより高めることも可能である。
また、発光ダイオード2として、ベアチップを用い、当該発光ダイオード2を絶縁層を介在させずにリードフレーム1に直接取り付けることで、発光ダイオード2とリードフレーム1との間の熱抵抗を下げることができ、放熱性のより一層の向上を図ることができる。
【0028】
具体的には、リードフレームおよび発光ダイオードを透過性樹脂に封止した従来の積層型発光ダイオードにあっては、発光ダイオードから外気に至る経路の熱抵抗が150〜200℃/Wと高い値を示すのに対して、本実施の形態によれば、リードフレーム1の円環部1Aの直径を40mm、その厚さを3mmとするとともに、長さ20mm以上の円筒状のホルダケース5に深さが2mmの放熱フィン7を設ける構成とした場合、発光ダイオード2とリードフレーム1との結合部分(取付部分)から外気に至る経路の熱抵抗を20℃/W以下とすることが可能であり、さらに、ホルダケース5の強制空冷を併用することで10℃/W以下とすることが可能となる。
【0029】
さて、上記のように、リードフレーム1およびホルダケース5を金属材にて形成した場合、反射型発光ダイオードユニット10を連結した際に、各ユニット10間で電気的短絡が生じる恐れがあるものの、本実施の形態では、電気的絶縁材からなる連結材4にて各ユニット10を連結する構成としたため、各ユニット10間の電気的絶縁が図られる。
【0030】
また、この連結材4として、中空部材の一態様である円筒状部材を用いる構成としたため、反射型発光ダイオードユニット10から放射された光の放射経路上に存在する透過性部材は、図7に示すように、光放射方向Pの前段に位置する反射型発光ダイオードユニット10のダイクロイックミラー3のみとなる。すなわち、光が物質を透過する際には、物質の屈折率により光の進行方向が屈折し、特に、平行光にあっては屈折により平行光成分が小さくなってしまうものの、本実施の形態では、ダイクロイックミラー3の厚さを均一にすることで、後段の反射型発光ダイオード10から放射された平行光aが前段のダイクロイックミラー3を透過した場合に、その出力光bに平行光成分を多く含ませることができる。
【0031】
次いで、本実施の形態のダイクロイックミラー3についてより詳細に説明する。
一般に、ダイクロイックミラー3は光透過性を有する基材の表面に蒸着やスパッタリング、CVD(Chemical Vapor Deposition)などの成膜プロセスにより誘電多層膜(例えばTiO2/SiO2多層膜)を形成して波長選択性を有する光学反射面3Aが構成される。このとき、ダイクロイックミラー3の波長選択性、すなわち、波長と反射率(透過率)との関係は誘電多層膜の層数に大きく依存する。すなわち、図8に示すように、誘電多層膜の層数が少ない場合には透過帯域の立ち上がりが緩やかであり、誘電多層膜の層数が多くなるほど透過帯域の立ち上がりが急になる。したがって、後段からダイクロイックミラー3に入射した光を損失なく透過するには(反射成分を少なくするには)、誘電多層膜の層数を多くすることが望ましい。
【0032】
しかしながら、従来の積層型発光ダイオード装置にあっては、反射面の材質がエポキシ樹脂などの透過性樹脂にて構成されているため、成膜プロセスでの発熱の都合上、誘電多層膜の層数が最大20層程度に限られてしまい、透過帯域の急な立ち上がりが実現できず、後段からダイクロイックミラー3に入射した光の損失が大きかった。
【0033】
これに対して本実施の形態では、ダイクロイックミラー3の基材として、透過性樹脂よりも融点が高く、成膜プロセス時の発熱にも十分耐え得るガラスを用いることとし、これにより、誘電多層膜の層数を従来よりも多い30層以上に増やすことを可能としている。この結果、透過帯域の立ち上がりが急なダイクロイックミラー3が得られ、透過損失が抑制される。
【0034】
そして、光放射方向Pの後段からの放射光を透過する急な立ち上がりの透過帯域を有するダイクロイックミラー3を反射型発光ダイオードユニット10に設けて積層型発光ダイオード装置100を構成することで、例えば図9に示すように、各段から放射された放射光が、それよりも光放射方向Pの前段に位置するダイクロイックミラー3のそれぞれを損失が少なく透過し、光出力の高効率化を図ることができる。
【0035】
次いで、発光ダイオード2とダイクロイックミラー3とのサイズの関係について詳述する。図10に示すように、発光ダイオード2のサイズをS、ダイクロイックミラー3の光学反射面3Aの径をS1、当該光学反射面3Aの焦点距離をfとした場合、発光ダイオード2の端より放射されて光学反射面3Aに入射角θ1にて入射した入射光c1は、光学反射面3Aにて反射角θ2にて反射されて反射光c2となる。
【0036】
このとき、パワーLEDのようなサイズSが1mm以上あるチップを発光ダイオード2として用いた場合、ダイクロイックミラーS1のサイズが小さいと、焦点距離fが短くなり、入射角θ1および反射角θ2が共に広くなるため、結果として、配光特性が広がってしまい平行光成分が少なくなる。特に、積層型発光ダイオード装置100にあっては、各反射型発光ダイオードユニット10の平行光成分が主として外部放射されるため、上記のように、各反射型発光ダイオードユニット10において平行光成分が減少すると、積層型発光ダイオード装置100全体の光出力も小さくなり、効率が悪くなる。
【0037】
そこで、本実施の形態では、ダイクロイックミラー3の光学反射面3AのサイズS1を、発光ダイオード2のチップサイズ(外形サイズ)Sの約40倍以上のサイズ(すなわち、S1/S≧40)、とし、焦点距離fを十分に大きくすることとしている。これにより、発光ダイオード2の端から出た光c1の入射角θ1および反射角θ2が狭くなり、反射光c2として平行光成分の多い光が取り出せる。また、S1/S≧40を満たすように構成された反射型発光ダイオードユニット10においては、半値角が2度以下の配光特性を得ることができ、積層型発光ダイオード装置100の光出力効率を高めることが可能となる。
【0038】
ここで、本実施の形態にあっては、前掲図2に示すように、発光ダイオード2の発光面2Aに拡散フィルタ9を貼り付ける構成としている。詳述すると、一般に、発光ダイオード2には、その発光面2Aに配線用の電極(図示せず)が設けられているため、この電極の影響により光源の発光むらが生じ、発光時の照度分布の均斉度が低下する。また、複数の発光ダイオード2を密集させてリードフレーム1に実装した際も同様に、発光ダイオード間に隙間ができるため、この隙間が発光むらの原因となり、照度分布の均斉度の低下を招く。
【0039】
そこで、本実施の形態では、照度分布の均斉度を改善するために、拡散フィルタ9を発光ダイオード2の発光面2Aに設け、発光ダイオード2からダイクロイックミラー3に向けて放射される光の発光むらを改善した後に、当該ダイクロイックミラー3にて反射する構成としている。
このような構成により、各反射型発光ダイオードユニット10から放射される光の均斉度の低下を抑えることができる。
【0040】
また、反射型発光ダイオードユニット10の光放射面のそれぞれ、または、積層型発光ダイオード装置100の光放射面に拡散フィルタを設ける構成でも照度分布の均斉度の低下を抑えることが可能であるものの、この構成においては、ダイクロイックミラー3にて反射された光が拡散されるため、照射範囲が広がり中心光度の低下を招くことになる。
これに対して、本実施の形態によれば、発光ダイオード2からダイクロイックミラー3に向けて放射された光を拡散フィルタ9により拡散する構成としているため、照射範囲の広がりを抑えつつ、照度分布の均斉度を向上することができる。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態によれば、高熱伝導性を有する金属製の中空状のホルダケース5内に発光ダイオード2およびダイクロイックミラー3を対向配置してなる複数の反射型発光ダイオードユニット10を、電気的絶縁材からなる連結材4を介して連結して積層型発光ダイオード装置100を構成としたため、発光ダイオード2の放熱性を高め高出力化が可能になるとともに、反射型発光ダイオードユニット10同士の電気的絶縁性を高めることができる。
【0042】
また、本実施の形態によれば、発光ダイオード2を高熱伝導性材から形成されたリードフレーム1に取り付け、このリードフレーム1をホルダケース5に取り付ける構成としたため、発光ダイオード2が発する熱をリードフレーム1を介してホルダケース5に伝達し、当該ホルダケース5から効率良く放熱させることができる。
特に、本実施の形態によれば、ホルダケース5の外側面に放熱フィン5Bを形成したため、放熱性をより一層向上させることができる。
【0043】
また、本実施の形態によれば、リードフレーム1とダイクロイックミラー3との間に、ダイクロイックミラー3の焦点位置を発光ダイオード2の配置位置に合わせるための焦点距離調整用スペーサ8を設けたため、発光ダイオード2ごとにチップの高さが異なった場合であっても、発光ダイオード2(発光面2A)から光学反射面3Aまでの距離を一定に保つことができ、配光特性や照度分布を各反射型発光ダイオードユニット10間で均一にすることができる。
【0044】
また、本実施の形態によれば、発光ダイオード2とダイクロイックミラー3との間に拡散フィルタ9を設ける構成としたため、反射型発光ダイオードユニット10から放射される光の照射範囲の広がりを抑え、かつ、照度分布の均斉度を向上することができる。
【0045】
また、本実施の形態によれば、ダイクロイックミラー3として、ガラス基材の表面に所定層数以上の誘電多層膜を形成してなるミラーを用いる構成としたため、誘電多層膜の層数を従来よりも多くすることができる(例えば30層以上)。これにより、透過帯域の立ち上がりが急なダイクロイックミラー3が得られ、光の透過損失を抑制することができ、光出力の高効率化を図ることができる。
【0046】
また、本実施の形態によれば、ダイクロイックミラー3の径S1を、発光ダイオード2の外形サイズSの40倍以上とする構成としたため、発光ダイオード2の端から放射されてダイクロイックミラー3に入射する光c1の入射角θ1および反射角θ2を狭くし、反射光c2として平行光成分の多い光を取り出すことができる。
【0047】
また、本実施の形態によれば、ダイクロイックミラー3の光学反射面3Aを、発光ダイオード2の配置位置を焦点とする非球面形状または放物面形状にしたため、反射光を平行光化してホルダケース5から効率良く外部放射させることができる。
【0048】
なお、上述した実施の形態はあくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば、上述した実施の形態において、ホルダケース5内に不活性ガスを充填可能に構成し発光ダイオード2等の腐食などによる劣化を防止する構成としても良い。
【0049】
また例えば、上述した実施の形態において、ダイクロイックミラー3の裏面に、表面側の光学反射面3Aにて反射されずに透過してきた光を裏面にて反射する反射膜を設け、光出力のより一層の高効率化を図る構成としても良い。
また、ダイクロイックミラー3の裏面に、後段の反射型発光ダイオードユニット10から放射された光を損失無く透過させるべく、当該光の反射を防止する反射防止膜を設ける構成とし、光出力の高効率化を図る構成としても良い。
【0050】
また例えば、上述した実施の形態において、反射型発光ダイオードユニット10を3つ連結して積層型発光ダイオード装置100を構成したが、これに限らず、連結(積層)する反射型発光ダイオードユニット10の数は、2つ、或いは、4つ以上であっても良い。
特に、6個の反射型発光ダイオードユニット10を連結し、それぞれが青(波長470nm)、緑(波長525nm)、黄緑(波長570nm)、黄(波長590nm)、赤黄(波長605nm)、赤(波長660nm)の異なる中心波長の光を放射する構成とすることで、青、赤、緑の三光源を組み合わせたときよりも、より広い色相を表現可能となる。
【0051】
本発明に係る積層型発光ダイオード装置100は、例えば、プロジェクター用光源、大型フルカラー表示板、工業・医療などの光ファイバの光源などに応用することが可能である。
【0052】
また、図11に示すように、発光ダイオード2の代わりにフォトダイオード20をリードフレーム1に取り付けることで、ダイクロイックミラー3にて反射された特定波長域の光のみをフォトダイオード20にて検出(受光)する反射型フォトダイオードユニット30を構成するといった応用が可能である。さらに、この反射型フォトダイオードユニット30を複数連結して、各層(各段)にて異なる波長の光を検出する積層型フォトダイオード装置200を構成することも可能である。
そして、例えば、積層型発光ダイオード装置100を光信号送信機とし、また、積層型フォトダイオード装置200を光信号受信機として、異なる波長の光による多重光通信装置を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態に係る積層型発光ダイオード装置の正面および側面を示す図である。
【図2】積層型発光ダイオード装置の断面図である。
【図3】発光ダイオードユニットの分解斜視図である。
【図4】リードフレームの正面、側面および背面を示す図である。
【図5】ホルダケースの正面および側面を示す図である。
【図6】ダイクロイックミラーの正面および側面を示す図である。
【図7】中空の連結材を通過する光路の態様を示す図である。
【図8】ダイクロイックミラーの誘電多層膜層の層数と光学特性との関係を示す図である。
【図9】発光ダイオードユニットの各ダイクロイックミラーの光学特性を示す図である。
【図10】発光ダイオードとダイクロイックミラーとのサイズの関係を説明するための図である。
【図11】本発明の応用例を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1 リードフレーム
2 発光ダイオード
2A 発光面
3 ダイクロイックミラー
3A 光学反射面
4 連結材
5 ホルダケース
7 放熱フィン
8 焦点距離調整用スペーサ
9 拡散フィルタ
10 反射型発光ダイオードユニット
100 積層型発光ダイオード装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の反射型発光ダイオードを積層配置してなる積層型発光ダイオード装置および当該積層型発光ダイオード装置に用いて好適な反射型発光ダイオードユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発光素子たる発光ダイオードを光透過性材料かなる封止体に封止し、発光ダイオードの発光面に対向する封止体の面上に反射面を形成してなる反射型発光ダイオードが知られている。また、このような反射型発光ダイオードを光放射方向に複数連設して反射型発光ダイオードを積層配置するとともに、反射型発光ダイオードのそれぞれの反射面にダイクロイックミラーを形成することで、複数の反射型発光ダイオードから発せられた光を同一面から放射可能にした積層型発光ダイオード装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−222767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の積層型発光ダイオード装置においては、発光ダイオードが光透過性材料からなる封止体に封止されているため、発光ダイオードの放熱性が悪く、高出力化が困難であるという問題があった。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、放熱性に優れ高出力化が可能な積層型発光ダイオード装置および反射型発光ダイオードユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、高熱伝導性を有する金属製の中空状のホルダケース内に発光素子およびダイクロイックミラーを対向配置してなる複数の反射型発光ダイオードユニットを、電気的絶縁材からなる連結材を介して連結したことを特徴とする積層型発光ダイオード装置を提供する。
【0006】
また本発明は、上記発明において、前記発光素子を高熱伝導性材から形成されたリードフレームに取り付け、このリードフレームを前記ホルダケースに取り付けたことを特徴とする。
【0007】
また本発明は、上記発明において、前記リードフレームと前記ダイクロイックミラーとの間に、前記ダイクロイックミラーの焦点位置を前記発光素子の配置位置に合わせるための調整用スペーサを設けたことを特徴とする。
【0008】
また本発明は、上記発明において、前記ホルダケースの外側面に放熱フィンを形成したことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上記発明において、前記発光素子と前記ダイクロイックミラーとの間に拡散フィルタを設けたことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上記発明において、前記ダイクロイックミラーは、ガラス基材の表面に所定層数以上の誘電多層膜を形成してなることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、上記発明において、前記ダイクロイックミラーの径を、前記発光素子の外形サイズの約40倍以上としたことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、上記発明において、前記ダイクロイックミラーの光学反射面を、前記光学素子の配置位置を焦点とする非球面形状または放物面形状にしたことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、上記発明において、前記複数の反射型発光ダイオードユニットのそれぞれの発光ダイオードが互いに異なる中心波長の光を放射することを特徴とする。
【0014】
また上記目的を達成するために、本発明は、発光素子の光を反射鏡にて反射して外部放射する反射型発光ダイオードユニットにおいて、高熱伝導性を有する金属製の中空状のホルダケース内に前記発光素子および前記反射鏡を対向配置し、電気的絶縁材からなる連結材を介して、他の反射型発光ダイオードユニットを連結可能に構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高熱伝導性を有する金属製の中空状のホルダケース内に発光素子およびダイクロイックミラーを対向配置してなる複数の反射型発光ダイオードユニットを、電気的絶縁材からなる連結材を介して連結する構成としたため、発光素子の放熱性を高めることでき高出力化が可能になるとともに、反射型発光ダイオードユニット同士の電気的絶縁性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施の形態を示す積層型発光ダイオード装置100の正面および側面を示す概略図であり、図2はその側断面の概略図である。これらの図に示すように、積層型発光ダイオード装置100は、複数の反射型発光ダイオードユニット10を備え(図示例では3つ)、これらの反射型発光ダイオードユニット10が光放射方向Pに沿って積層するように連設されている。
【0017】
図3は反射型発光ダイオードユニット10の分解斜視図である。
反射型発光ダイオードユニット10は、図2および図3に示すように、発光素子たる発光ダイオード2と、この発光ダイオード2を支持するリードフレーム1と、発光ダイオード2の発光面2Aに対向配置される反射鏡たるダイクロイックミラー3と、連結材4とを備え、これらが円筒状(断面角形の筒状でも良い)のホルダケース5に内設されている。このホルダケース5はアルミニウムなどの高熱伝導性を有する金属材から形成され、その外周面(外側面)に多数の放熱フィン7を有する放熱部5Cが形成されている。
【0018】
リードフレーム1は、図4に示すように、円環部1Aと、この円環部1Aの中心Oに配置される略円板状の取付部1Bと、円環部1Aから取付部1Bに向けて延びる三本のアーム部1Cとを備え、これらが例えば銅などの高熱伝導性を有する板材を例えば型抜き成形するなどして一体に形成されている。リードフレーム1の背面には、図4(c)に示すように、発光ダイオード2が取付部1Bに固定され、また、回路用基板6がアーム部1Cに設けられ、回路用基板6を介して外部からの電力が発光ダイオード2に供給される。なお、発光ダイオード2の発光面2Aには拡散フィルタ9が貼り付けられているが、これについては後に詳述する。
【0019】
かかるリードフレーム1は、図3に示すように、発光ダイオード2(発光面2A)を背面側に向けた姿勢でホルダケース5の背面側の開口5Aからホルダケース5内に挿入され、図2に示すように、ホルダケース5の内周面に設けられた掛止片5Bに掛止される。このとき、リードフレーム1の円環部1Aの側周面がホルダケース5の内側面に密着して、発光ダイオード2が発する熱がホルダケース5に伝達されるようになっている。
【0020】
ダイクロイックミラー3は、図2、図3および図6に示すように、特定波長帯域の光のみを選択的に反射し、他の波長帯域の光を透過する凹面状の光学反射面3Aを有するものであり、この光学反射面3Aが発光ダイオード2の発光面2Aに対向するように焦点距離調整用スペーサ8を介在させてホルダケース5に挿入される。光学反射面3Aは、対向配置される発光ダイオード2の放射光波長に対して高反射特性を有し、また、この発光ダイオード2の配置位置を焦点とする放物面(回転放物面)または非球面に形成されている。したがって、各反射型発光ユニット10においては、発光ダイオード2から放射された光が中心軸Nに対して略平行な光として反射され、ホルダケース5の正面側の開口5D(図2参照)から中心軸Nに対して略平行な光として外部放射される。
【0021】
上記焦点距離調整用スペーサ8は、ダイクロイックミラー3の光学反射面3Aの焦点位置を調整するための樹脂製部材である。詳述すると、発光ダイオード2は、製造メーカやその構造(ベアチップや表面実装型チップなど)などによりチップの高さが異なるため、発光ダイオード2(発光面2A)から光学反射面3Aまでの距離、すなわち、焦点距離f(図2参照)が反射型発光ダイオードユニット10ごとに異なり、結果として、反射型発光ダイオードユニット10間で配光特性や照度分布が一致しなくなるという問題がある。
【0022】
そこで、本実施の形態では、リードフレーム1とダイクロイックミラー3との間に焦点距離調整用スペーサ8を介在させて、発光ダイオード2(発光面2A)から光学反射面3Aまでの距離(焦点距離f)を調整し、焦点位置を発光ダイオード2の配置位置に位置合わせ可能な構成としている。
なお、本実施の形態では、焦点距離調整用スペーサ8として複数の円柱状部材(図示例では3本)を用いる構成としたが、これに限らず、リードフレーム1の円環部1Aと略同径の円筒状部材を用いる構成としても良い。
【0023】
連結材4は、例えば樹脂などの電気的絶縁材が円筒状に形成されてなり、図2および図3に示すように一端4Aがホルダケース5の背面側の開口5Aに挿入される。このとき、図2に示すように、連結材4の他端4Bがホルダケース5の背面側の開口5Aから突出し、この他端4Bが、後段の反射型発光ダイオードユニット10のホルダケース5の正面側の開口5Dに挿入されてホルダケース5の掛止部5Bに掛止されることで、反射型発光ダイオードユニット10が連結される。なお、最後段の反射型発光ダイオードユニット10においては、図1および図2に示すように、その後段に他の反射型発光ダイオード10が連結されることがないため、連結材4を設ける必要がない。
【0024】
このようにして複数の反射型発光ダイオードユニット10が積層するように連結材4を介して連結されて、図1および図2に示す積層型発光ダイオード装置100が構成される。そして、この積層型発光ダイオード装置100においては、図2に示すように、各反射型発光ダイオードユニット10が同一の光放射方向Pに光を放射し、また、各反射型発光ダイオードユニット10のダイクロイックミラー3が後段からの光を透過することで、各反射型発光ダイオードユニット10の光が合成されて、最前段の反射型発光ダイオードユニット10の正面から外部放射される。
【0025】
したがって、積層型発光ダイオード装置100にあっては、各反射型発光ダイオードユニット10の放射光が合成されて外部放射されるため、容易に高い光出力が得られる。また、反射型発光ダイオードユニット10のそれぞれの発光ダイオード2として、光の三原色に相当する赤(R:波長660nm)、緑(G:波長525nm)、青(B:波長470nm)のそれぞれの波長の光を用いる構成とすれば、個々の発光ダイオード2を調光することでフルカラーの光源を容易に構成することが可能となる。
【0026】
ここで、上述したように、本実施の形態では、リードフレーム1およびホルダケース5のそれぞれを高熱伝導性を有する例えば銅などの金属により形成されているため、発光ダイオード2が発する熱をリードフレーム1を介してホルダケース5に伝達し、当該ホルダケース5の放熱部5Cから放熱することができ、発光ダイオード2の放熱性の向上が図られている。特に、ホルダケース5の外側面には多数の放熱フィン7を有する放熱部5Cが設けられているため、放熱性のさらなる向上が図られ、発光ダイオード2として高出力なものを用いた場合であっても、高電流時に発光ダイオード2が高温になることがなく、輝度低下などを招くことが無い。
【0027】
なお、放熱部5Cを空冷するための空冷ファンを積層型発光ダイオード装置100の近傍に配置することで、放熱性をより高めることも可能である。
また、発光ダイオード2として、ベアチップを用い、当該発光ダイオード2を絶縁層を介在させずにリードフレーム1に直接取り付けることで、発光ダイオード2とリードフレーム1との間の熱抵抗を下げることができ、放熱性のより一層の向上を図ることができる。
【0028】
具体的には、リードフレームおよび発光ダイオードを透過性樹脂に封止した従来の積層型発光ダイオードにあっては、発光ダイオードから外気に至る経路の熱抵抗が150〜200℃/Wと高い値を示すのに対して、本実施の形態によれば、リードフレーム1の円環部1Aの直径を40mm、その厚さを3mmとするとともに、長さ20mm以上の円筒状のホルダケース5に深さが2mmの放熱フィン7を設ける構成とした場合、発光ダイオード2とリードフレーム1との結合部分(取付部分)から外気に至る経路の熱抵抗を20℃/W以下とすることが可能であり、さらに、ホルダケース5の強制空冷を併用することで10℃/W以下とすることが可能となる。
【0029】
さて、上記のように、リードフレーム1およびホルダケース5を金属材にて形成した場合、反射型発光ダイオードユニット10を連結した際に、各ユニット10間で電気的短絡が生じる恐れがあるものの、本実施の形態では、電気的絶縁材からなる連結材4にて各ユニット10を連結する構成としたため、各ユニット10間の電気的絶縁が図られる。
【0030】
また、この連結材4として、中空部材の一態様である円筒状部材を用いる構成としたため、反射型発光ダイオードユニット10から放射された光の放射経路上に存在する透過性部材は、図7に示すように、光放射方向Pの前段に位置する反射型発光ダイオードユニット10のダイクロイックミラー3のみとなる。すなわち、光が物質を透過する際には、物質の屈折率により光の進行方向が屈折し、特に、平行光にあっては屈折により平行光成分が小さくなってしまうものの、本実施の形態では、ダイクロイックミラー3の厚さを均一にすることで、後段の反射型発光ダイオード10から放射された平行光aが前段のダイクロイックミラー3を透過した場合に、その出力光bに平行光成分を多く含ませることができる。
【0031】
次いで、本実施の形態のダイクロイックミラー3についてより詳細に説明する。
一般に、ダイクロイックミラー3は光透過性を有する基材の表面に蒸着やスパッタリング、CVD(Chemical Vapor Deposition)などの成膜プロセスにより誘電多層膜(例えばTiO2/SiO2多層膜)を形成して波長選択性を有する光学反射面3Aが構成される。このとき、ダイクロイックミラー3の波長選択性、すなわち、波長と反射率(透過率)との関係は誘電多層膜の層数に大きく依存する。すなわち、図8に示すように、誘電多層膜の層数が少ない場合には透過帯域の立ち上がりが緩やかであり、誘電多層膜の層数が多くなるほど透過帯域の立ち上がりが急になる。したがって、後段からダイクロイックミラー3に入射した光を損失なく透過するには(反射成分を少なくするには)、誘電多層膜の層数を多くすることが望ましい。
【0032】
しかしながら、従来の積層型発光ダイオード装置にあっては、反射面の材質がエポキシ樹脂などの透過性樹脂にて構成されているため、成膜プロセスでの発熱の都合上、誘電多層膜の層数が最大20層程度に限られてしまい、透過帯域の急な立ち上がりが実現できず、後段からダイクロイックミラー3に入射した光の損失が大きかった。
【0033】
これに対して本実施の形態では、ダイクロイックミラー3の基材として、透過性樹脂よりも融点が高く、成膜プロセス時の発熱にも十分耐え得るガラスを用いることとし、これにより、誘電多層膜の層数を従来よりも多い30層以上に増やすことを可能としている。この結果、透過帯域の立ち上がりが急なダイクロイックミラー3が得られ、透過損失が抑制される。
【0034】
そして、光放射方向Pの後段からの放射光を透過する急な立ち上がりの透過帯域を有するダイクロイックミラー3を反射型発光ダイオードユニット10に設けて積層型発光ダイオード装置100を構成することで、例えば図9に示すように、各段から放射された放射光が、それよりも光放射方向Pの前段に位置するダイクロイックミラー3のそれぞれを損失が少なく透過し、光出力の高効率化を図ることができる。
【0035】
次いで、発光ダイオード2とダイクロイックミラー3とのサイズの関係について詳述する。図10に示すように、発光ダイオード2のサイズをS、ダイクロイックミラー3の光学反射面3Aの径をS1、当該光学反射面3Aの焦点距離をfとした場合、発光ダイオード2の端より放射されて光学反射面3Aに入射角θ1にて入射した入射光c1は、光学反射面3Aにて反射角θ2にて反射されて反射光c2となる。
【0036】
このとき、パワーLEDのようなサイズSが1mm以上あるチップを発光ダイオード2として用いた場合、ダイクロイックミラーS1のサイズが小さいと、焦点距離fが短くなり、入射角θ1および反射角θ2が共に広くなるため、結果として、配光特性が広がってしまい平行光成分が少なくなる。特に、積層型発光ダイオード装置100にあっては、各反射型発光ダイオードユニット10の平行光成分が主として外部放射されるため、上記のように、各反射型発光ダイオードユニット10において平行光成分が減少すると、積層型発光ダイオード装置100全体の光出力も小さくなり、効率が悪くなる。
【0037】
そこで、本実施の形態では、ダイクロイックミラー3の光学反射面3AのサイズS1を、発光ダイオード2のチップサイズ(外形サイズ)Sの約40倍以上のサイズ(すなわち、S1/S≧40)、とし、焦点距離fを十分に大きくすることとしている。これにより、発光ダイオード2の端から出た光c1の入射角θ1および反射角θ2が狭くなり、反射光c2として平行光成分の多い光が取り出せる。また、S1/S≧40を満たすように構成された反射型発光ダイオードユニット10においては、半値角が2度以下の配光特性を得ることができ、積層型発光ダイオード装置100の光出力効率を高めることが可能となる。
【0038】
ここで、本実施の形態にあっては、前掲図2に示すように、発光ダイオード2の発光面2Aに拡散フィルタ9を貼り付ける構成としている。詳述すると、一般に、発光ダイオード2には、その発光面2Aに配線用の電極(図示せず)が設けられているため、この電極の影響により光源の発光むらが生じ、発光時の照度分布の均斉度が低下する。また、複数の発光ダイオード2を密集させてリードフレーム1に実装した際も同様に、発光ダイオード間に隙間ができるため、この隙間が発光むらの原因となり、照度分布の均斉度の低下を招く。
【0039】
そこで、本実施の形態では、照度分布の均斉度を改善するために、拡散フィルタ9を発光ダイオード2の発光面2Aに設け、発光ダイオード2からダイクロイックミラー3に向けて放射される光の発光むらを改善した後に、当該ダイクロイックミラー3にて反射する構成としている。
このような構成により、各反射型発光ダイオードユニット10から放射される光の均斉度の低下を抑えることができる。
【0040】
また、反射型発光ダイオードユニット10の光放射面のそれぞれ、または、積層型発光ダイオード装置100の光放射面に拡散フィルタを設ける構成でも照度分布の均斉度の低下を抑えることが可能であるものの、この構成においては、ダイクロイックミラー3にて反射された光が拡散されるため、照射範囲が広がり中心光度の低下を招くことになる。
これに対して、本実施の形態によれば、発光ダイオード2からダイクロイックミラー3に向けて放射された光を拡散フィルタ9により拡散する構成としているため、照射範囲の広がりを抑えつつ、照度分布の均斉度を向上することができる。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態によれば、高熱伝導性を有する金属製の中空状のホルダケース5内に発光ダイオード2およびダイクロイックミラー3を対向配置してなる複数の反射型発光ダイオードユニット10を、電気的絶縁材からなる連結材4を介して連結して積層型発光ダイオード装置100を構成としたため、発光ダイオード2の放熱性を高め高出力化が可能になるとともに、反射型発光ダイオードユニット10同士の電気的絶縁性を高めることができる。
【0042】
また、本実施の形態によれば、発光ダイオード2を高熱伝導性材から形成されたリードフレーム1に取り付け、このリードフレーム1をホルダケース5に取り付ける構成としたため、発光ダイオード2が発する熱をリードフレーム1を介してホルダケース5に伝達し、当該ホルダケース5から効率良く放熱させることができる。
特に、本実施の形態によれば、ホルダケース5の外側面に放熱フィン5Bを形成したため、放熱性をより一層向上させることができる。
【0043】
また、本実施の形態によれば、リードフレーム1とダイクロイックミラー3との間に、ダイクロイックミラー3の焦点位置を発光ダイオード2の配置位置に合わせるための焦点距離調整用スペーサ8を設けたため、発光ダイオード2ごとにチップの高さが異なった場合であっても、発光ダイオード2(発光面2A)から光学反射面3Aまでの距離を一定に保つことができ、配光特性や照度分布を各反射型発光ダイオードユニット10間で均一にすることができる。
【0044】
また、本実施の形態によれば、発光ダイオード2とダイクロイックミラー3との間に拡散フィルタ9を設ける構成としたため、反射型発光ダイオードユニット10から放射される光の照射範囲の広がりを抑え、かつ、照度分布の均斉度を向上することができる。
【0045】
また、本実施の形態によれば、ダイクロイックミラー3として、ガラス基材の表面に所定層数以上の誘電多層膜を形成してなるミラーを用いる構成としたため、誘電多層膜の層数を従来よりも多くすることができる(例えば30層以上)。これにより、透過帯域の立ち上がりが急なダイクロイックミラー3が得られ、光の透過損失を抑制することができ、光出力の高効率化を図ることができる。
【0046】
また、本実施の形態によれば、ダイクロイックミラー3の径S1を、発光ダイオード2の外形サイズSの40倍以上とする構成としたため、発光ダイオード2の端から放射されてダイクロイックミラー3に入射する光c1の入射角θ1および反射角θ2を狭くし、反射光c2として平行光成分の多い光を取り出すことができる。
【0047】
また、本実施の形態によれば、ダイクロイックミラー3の光学反射面3Aを、発光ダイオード2の配置位置を焦点とする非球面形状または放物面形状にしたため、反射光を平行光化してホルダケース5から効率良く外部放射させることができる。
【0048】
なお、上述した実施の形態はあくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば、上述した実施の形態において、ホルダケース5内に不活性ガスを充填可能に構成し発光ダイオード2等の腐食などによる劣化を防止する構成としても良い。
【0049】
また例えば、上述した実施の形態において、ダイクロイックミラー3の裏面に、表面側の光学反射面3Aにて反射されずに透過してきた光を裏面にて反射する反射膜を設け、光出力のより一層の高効率化を図る構成としても良い。
また、ダイクロイックミラー3の裏面に、後段の反射型発光ダイオードユニット10から放射された光を損失無く透過させるべく、当該光の反射を防止する反射防止膜を設ける構成とし、光出力の高効率化を図る構成としても良い。
【0050】
また例えば、上述した実施の形態において、反射型発光ダイオードユニット10を3つ連結して積層型発光ダイオード装置100を構成したが、これに限らず、連結(積層)する反射型発光ダイオードユニット10の数は、2つ、或いは、4つ以上であっても良い。
特に、6個の反射型発光ダイオードユニット10を連結し、それぞれが青(波長470nm)、緑(波長525nm)、黄緑(波長570nm)、黄(波長590nm)、赤黄(波長605nm)、赤(波長660nm)の異なる中心波長の光を放射する構成とすることで、青、赤、緑の三光源を組み合わせたときよりも、より広い色相を表現可能となる。
【0051】
本発明に係る積層型発光ダイオード装置100は、例えば、プロジェクター用光源、大型フルカラー表示板、工業・医療などの光ファイバの光源などに応用することが可能である。
【0052】
また、図11に示すように、発光ダイオード2の代わりにフォトダイオード20をリードフレーム1に取り付けることで、ダイクロイックミラー3にて反射された特定波長域の光のみをフォトダイオード20にて検出(受光)する反射型フォトダイオードユニット30を構成するといった応用が可能である。さらに、この反射型フォトダイオードユニット30を複数連結して、各層(各段)にて異なる波長の光を検出する積層型フォトダイオード装置200を構成することも可能である。
そして、例えば、積層型発光ダイオード装置100を光信号送信機とし、また、積層型フォトダイオード装置200を光信号受信機として、異なる波長の光による多重光通信装置を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態に係る積層型発光ダイオード装置の正面および側面を示す図である。
【図2】積層型発光ダイオード装置の断面図である。
【図3】発光ダイオードユニットの分解斜視図である。
【図4】リードフレームの正面、側面および背面を示す図である。
【図5】ホルダケースの正面および側面を示す図である。
【図6】ダイクロイックミラーの正面および側面を示す図である。
【図7】中空の連結材を通過する光路の態様を示す図である。
【図8】ダイクロイックミラーの誘電多層膜層の層数と光学特性との関係を示す図である。
【図9】発光ダイオードユニットの各ダイクロイックミラーの光学特性を示す図である。
【図10】発光ダイオードとダイクロイックミラーとのサイズの関係を説明するための図である。
【図11】本発明の応用例を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1 リードフレーム
2 発光ダイオード
2A 発光面
3 ダイクロイックミラー
3A 光学反射面
4 連結材
5 ホルダケース
7 放熱フィン
8 焦点距離調整用スペーサ
9 拡散フィルタ
10 反射型発光ダイオードユニット
100 積層型発光ダイオード装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高熱伝導性を有する金属製の中空状のホルダケース内に発光素子およびダイクロイックミラーを対向配置してなる複数の反射型発光ダイオードユニットを、電気的絶縁材からなる連結材を介して連結したことを特徴とする積層型発光ダイオード装置。
【請求項2】
前記発光素子を高熱伝導性材から形成されたリードフレームに取り付け、このリードフレームを前記ホルダケースに取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の積層型発光ダイオード装置。
【請求項3】
前記リードフレームと前記ダイクロイックミラーとの間に、前記ダイクロイックミラーの焦点位置を前記発光素子の配置位置に合わせるための調整用スペーサを設けたことを特徴とする請求項2に記載の積層型発光ダイオード装置。
【請求項4】
前記発光素子と前記ダイクロイックミラーとの間に拡散フィルタを設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の積層型発光ダイオード装置。
【請求項5】
前記ダイクロイックミラーは、ガラス基材の表面に、所定層数以上の誘電多層膜を形成してなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の積層型発光ダイオード装置。
【請求項6】
前記ダイクロイックミラーの径を、前記発光素子の外形サイズの40倍以上としたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の積層型発光ダイオード装置。
【請求項7】
前記ダイクロイックミラーの光学反射面を、前記光学素子の配置位置を焦点とする非球面形状または放物面形状にしたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の積層型発光ダイオード装置。
【請求項8】
前記複数の反射型発光ダイオードユニットのそれぞれの発光ダイオードが互いに異なる中心波長の光を放射することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の積層型発光ダイオード装置。
【請求項9】
発光素子の光を反射鏡にて反射して外部放射する反射型発光ダイオードユニットにおいて、
高熱伝導性を有する金属製の中空状のホルダケース内に前記発光素子および前記反射鏡を対向配置し、電気的絶縁材からなる連結材を介して、他の反射型発光ダイオードユニットを連結可能に構成したことを特徴とする反射型発光ダイオードユニット。
【請求項1】
高熱伝導性を有する金属製の中空状のホルダケース内に発光素子およびダイクロイックミラーを対向配置してなる複数の反射型発光ダイオードユニットを、電気的絶縁材からなる連結材を介して連結したことを特徴とする積層型発光ダイオード装置。
【請求項2】
前記発光素子を高熱伝導性材から形成されたリードフレームに取り付け、このリードフレームを前記ホルダケースに取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の積層型発光ダイオード装置。
【請求項3】
前記リードフレームと前記ダイクロイックミラーとの間に、前記ダイクロイックミラーの焦点位置を前記発光素子の配置位置に合わせるための調整用スペーサを設けたことを特徴とする請求項2に記載の積層型発光ダイオード装置。
【請求項4】
前記発光素子と前記ダイクロイックミラーとの間に拡散フィルタを設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の積層型発光ダイオード装置。
【請求項5】
前記ダイクロイックミラーは、ガラス基材の表面に、所定層数以上の誘電多層膜を形成してなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の積層型発光ダイオード装置。
【請求項6】
前記ダイクロイックミラーの径を、前記発光素子の外形サイズの40倍以上としたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の積層型発光ダイオード装置。
【請求項7】
前記ダイクロイックミラーの光学反射面を、前記光学素子の配置位置を焦点とする非球面形状または放物面形状にしたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の積層型発光ダイオード装置。
【請求項8】
前記複数の反射型発光ダイオードユニットのそれぞれの発光ダイオードが互いに異なる中心波長の光を放射することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の積層型発光ダイオード装置。
【請求項9】
発光素子の光を反射鏡にて反射して外部放射する反射型発光ダイオードユニットにおいて、
高熱伝導性を有する金属製の中空状のホルダケース内に前記発光素子および前記反射鏡を対向配置し、電気的絶縁材からなる連結材を介して、他の反射型発光ダイオードユニットを連結可能に構成したことを特徴とする反射型発光ダイオードユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−318995(P2006−318995A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−137692(P2005−137692)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】
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