説明

空中撮影装置および空中撮影方法

【課題】 風の影響を受け易い気球を用いても構築物の最適な設置場所や高さを選定することが可能な空中撮影装置および空中撮影方法を提供する。
【解決手段】 地表Gから上空に向かって上昇可能な気球2と、気球2に連結される屈曲可能な連結部材4と、地表G側に固定され連結部材4の巻き取りおよび巻き出しを可能とし気球2の上昇高さを調整する高度調整手段5と、気球2に設けられ上空における気球2の停留位置が高度調整手段5の真上となるように気球2を移動させる推力発生手段2A〜2Dと、地表Gに対する気球2の上昇高さを測定する測長手段4aと、気球2に設けられ周囲を撮影する撮像手段3とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、気球を用いて周囲を空中撮影する空中撮影装置および空中撮影方法に関し、とくに構築物の最適な設置場所や高さを選定することが可能な空中撮影装置および空中撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯基地局など通信用の鉄塔を建設する候補地および鉄塔高を選定する方法として、気球による調査が行われている。気球を使用して空中撮影をする技術の一例として、複数のカメラを放射状に配置して360°の空中撮影が瞬時に行えるようにした技術(例えば、特許文献1参照。)や、地上側から上空の気球に対して電源を供給できるようにした技術(例えば、特許文献2参照。)が知られている。
【0003】
図7は、気球を用いて通信用の鉄塔を建設する候補地などを選定する従来技術を示している。図7に示すように、気球による調査は、候補地に鉄塔頂上に見立てた気球を上空に向けて上げ、調査地点AないしEから気球を撮影して気球が可視できるかを確認し、すべての調査地点A〜Eで気球が可視できる場合は、候補地として選定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−274397号公報
【特許文献2】特開2000−326899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、気球による調査は、上述のように候補地で気球を上空に向けて上げ、主な地点で気球を可視できるか否かを写真に撮るという方式であるが、車などにより複数の調査地点に移動するのに手間がかかるし、主な調査地点で気球を可視できるかの判断しかできない。また、主な地点で気球を撮影するときに、風があると気球が流れて正確な気球の可視高さがわからず、風がおさまるのを待たなくてはならず、調査にかなりの時間を要するという問題がある。
【0006】
特許文献1、2は、上空における気球の停留位置を把握することができないので、地表から撮影高さを正確に把握することができず、構築物の最適な設置場所や高さを選定することができない。
【0007】
そこで、本発明は、風の影響を受け易い気球を用いても構築物の最適な設置場所や高さを選定することが可能な空中撮影装置および空中撮影方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、地表から上空に向かって上昇可能な気球と、前記気球に連結される屈曲可能な連結部材と、前記地表側に固定され前記連結部材の巻き取りおよび巻き出しを可能とし前記気球の上昇高さを調整する高度調整手段と、前記気球に設けられ前記上空における前記気球の停留位置が前記高度調整手段の真上となるように前記気球を移動させる推力発生手段と、前記地表に対する前記気球の上昇高さを測定する測長手段と、前記気球に設けられ周囲を撮影する撮像手段と、を備えた、ことを特徴とする空中撮影装置である。
【0009】
この発明によれば、上空における気球の停留位置が高度調整手段の真上となるように推力発生手段によって制御されるので、気球の上昇高さの測定は、風の影響を受けることがなくなる。そして、撮像手段によって周囲を撮影する際には、高度調整手段の真上に位置する気球の上昇高さが測長手段により測定され、周囲の撮影時における正確な気球の上昇高さを把握することが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空中撮影装置において、前記気球の前記上空における停留位置を自動で検知し、前記気球が前記高度調整手段に対して真上にくるように前記気球の停留位置を自動で調整する自動撮影手段を備えた、ことを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の発明は、地表から上空に向かって気球を上昇させ、前記気球に連結される屈曲可能な連結部材を前記地表側に固定された高度調整手段によって巻き取りおよび巻き出すことにより前記気球の上昇高さを調整するとともに、前記上空における前記気球の停留位置が前記高度調整手段の真上となるように推力発生手段によって前記気球を移動させ、前記気球に設けられた撮像手段によって周囲を撮影する際の前記地表に対する前記気球の上昇高さを測長手段により測定することを特徴とする空中撮影方法である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1および3に記載の発明によれば、周囲の撮影時における正確な気球の上昇高さを把握することが可能となるので、構築物の最適な設置場所や高さを選定することができる。したがって、従来のように車などにより複数の調査地点に移動することも不要となり、鉄塔などの構築物の最適な設置場所や高さを選定する時間や労力を軽減することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、気球の上空における停留位置を自動で検知し、気球が高度調整手段に対して真上にくるように気球の停留位置を自動で調整するようにしているので、周囲を空中から撮影する際の労力をさらに軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係わる空中撮影装置の概略構成図である。
【図2】図1の高度調整手段の拡大斜視図である。
【図3】図1の連結部材の拡大斜視図である。
【図4】図1の気球の平面図である。
【図5】図1の空中撮影装置の自動撮影手段のブロック図である。
【図6】図5の自動撮影手段による空撮の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】気球を用いた従来の地形調査方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、この発明の実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1ないし図4は、本発明の実施の形態1を示している。空中撮影装置1は、気球2と、推力発生手段としてのプロペラ2A〜2Dと、撮像手段してのデジタルカメラ3と、連結部材としてのロープ4と、測長手段4aと、高度調整手段5と、を有している。
【0017】
気球2は、空気よりも軽いヘリウムガスなどの気体を風船に充填して浮力を得るものであり、地表Gから上空に向かって上昇可能となっている。気球2の外形は、図1においては球体をしているが飛行船のように楕円形などであってもよい。気球2は、例えば直径が2〜3mに設定されている。
【0018】
気球2には、屈曲可能な連結部材としてのロープ4が連結されている。ロープ4は、軽量でかつ引張り強度の高い樹脂などから構成されている。連結部材4の長さは、撮影高度(地表Gから約30m〜50m)に応じた長さに設定されている。
【0019】
地表G側には、ロープ4の巻き取りおよび巻き出しを可能とし、気球2の上昇高さを調整する高度調整手段5が固定されている。高度調整手段5は、ロープ4を巻き取る回転ドラムから構成されている。図2に示すように、高度調整手段5は、支持軸5aと、筒部5bと、フランジ部5cと、固定部5d、固定板5eとを有している。筒部5bは、ロープ4を巻きつける部位である。筒部5bは、支持軸5aに対して回動自在に支持されている。筒部5bの軸方向の両端には、フランジ部5cが設けられている。支持軸5aの両端部は、固定部5dを介して固定板5eに連結されている。固定板5eは、ペグ5e1を介して地表G側に固定されている。
【0020】
高度調整手段5は、筒部5bが支持軸5aを中心として軸心回りに回動することにより、ロープ4の巻き取りおよび巻き出しが可能となっている。高度調整手段5は、筒部5bの回動によるロープ4の巻き取りおよび巻き出しを行うことで、上昇した気球2を任意の高さに調整する機能を有している。筒部5bの回動は、人力で行う構成としてもよいし、電動機で行う構成としてもよい。
【0021】
気球2の外面側には、複数の推力発生手段としてのプロペラ2A〜2Dが取り付けられている。プロペラ2A〜2Dは、上空における気球2の停留位置が高度調整手段5の真上となるように気球2を移動させる機能を有している。図1および図4に示すように、プロペラ2A〜2Dは、気球2の上下方向の中央部で、かつ周方向に90°おきに設けられている。プロペラ2A〜2Dは、地上からの遠隔操作によって独立して制御することが可能となっている。この実施の形態1においては、プロペラ2A〜2Dは、電動式のプロペラから構成されており、気球2に搭載された電池(図示略)を電源として回転駆動する。
【0022】
ロープ4には、地表Gに対する気球2の上昇高さを測定する測長手段4aが形成されている。測長手段4aは、この実施の形態1においては、ロープ4と、このロープ4の表面に付された目盛から構成されている。図1に示すように、ロープ4は目盛を付すことによりスケール(巻尺)の機能を果たすことになり、一目で気球2の上昇高さを把握することが可能となる。測長手段4aは、ロープ4に付された目盛の他に、高度調整手段5の筒部5bの回転量を検出し、この回転量に基づき気球2の上昇高さを算出する測定器などから構成してもよい。
【0023】
気球2には、その周囲を撮影する撮像手段としてのデジタルカメラ3が搭載されている。デジタルカメラ3は、上昇した気球2からその周囲を水平方向に360°撮影(空撮)し、この撮像信号をケーブル4bを介して地表G側に設けられたパーソナルコンピュータ10に送るようになっている。デジタルカメラ3は、地表G側から遠隔操作が可能となっている。ケーブル4bは、図3に示すように、固定バンド4cを介してロープ4に固定されている。
【0024】
つぎに、空中撮影装置1を用いた空中撮影方法について説明する。
【0025】
まず、空中撮影装置1を携帯電話基地局に適した候補地に搬入し、高度調整手段5を地表G側に固定する。つぎに、高度調整手段5によってロープ4を徐々に巻き出し、上空に向かって気球2を上昇させる。ここで、風が吹いていない場合は、気球2は垂直に上昇するが、風が吹いている場合は、気球2が風によって流され高度調整手段5の真上に位置しない。この場合は、プロペラ2A〜2Dの少なくともいずれかを遠隔操作によって制御し、高度調整手段5の真上にくるように気球2を移動させる。そして、気球2が高度調整手段5の真上にくるように調整しながら、気球2を所定の高度まで上昇させる。
【0026】
デジタルカメラ3による周囲の空中撮影は、地表G側からの遠隔操作により行う。ここで、デジタルカメラ3によって周囲の空中撮影は、気球2が高度調整手段5の真上に位置していることを確認するとともに、気球2の上昇高度を測長手段4aによって把握した後に行う。デジタルカメラ3からの撮像信号は、ケーブル4bを介して地表G側のパーソナルコンピュータ10に送られ、パーソナルコンピュータ10に空中撮影した周囲の画像が表示される。
【0027】
デジタルカメラ3による周囲の空中撮影は、複数の高度ごとに行い、高度毎に撮影された画像に基づいて、携帯電話基地局の候補地における鉄塔などの構築物の最適な設置場所や高さを選定する。デジタルカメラ3による周囲の空中撮影が終了すると、高度調整手段5によってロープ4が巻き取られ、気球2は徐々に降下する。高度調整手段5によってロープ4が完全に巻き取られた状態では、気球2は地表Gに降下し、気球2は作業者によって回収される。
【0028】
このように、上空における気球2の停留位置は、高度調整手段5の真上となるようにプロペラ2A〜2Dによって制御されるので、周囲の空中撮影時における正確な気球2の高度を把握することが可能となり、構築物の最適な設置場所や高さを選定することができる。したがって、従来のように車などにより複数の調査地点に移動することも不要となり、携帯電話基地局の候補地における鉄塔などの構築物の最適な設置場所や高さを選定する時間や労力を軽減することができる。
【0029】
また、気球2を用いた空中撮影は、エンジンを搭載したラジコン飛行機とは異なり、騒音がほとんど発生しないので、早朝などの使用にも適している。
【0030】
(実施の形態2)
図5および図6は、本発明の実施の形態2を示している。実施の形態2が実施の形態1と異なるところは、自動撮影手段20の有無であり、その他の部分は実施の形態1に準じるので、準じる部分に実施の形態1と同一の符号を付すことにより、準じる部分の説明を省略する。
【0031】
図5に示すように、自動撮影手段20は、高度測定手段21と、角度測定手段22と、方向測定手段23と、停留位置制御手段24と、撮影制御手段25と、を有している。高度測定手段21は、気球2の上昇高さを電気的に検出するものであり、その出力信号は停留位置制御手段24に入力可能となっている。角度測定手段22は、地表Gに対するロープ4の角度を電気的に検出するものであり、その出力信号は停留位置制御手段24に入力可能となっている。方向測定手段23は、高度調整手段5に対するロープ4の上昇方向を電気的に検出するものであり、その出力信号は停留位置制御手段24に入力可能となっている。
【0032】
角度測定手段22と方向測定手段23は、たとえばジャイロスコープを利用した機器から構成されており、角度測定手段22と方向測定手段23はロープ4の揺れに追従可能な計測アーム(図示略)に取り付けられている。
【0033】
停留位置制御手段24は、高度測定手段21と角度測定手段22と方向測定手段23からの出力信号に基づき、プロペラ2A〜2Dを制御し、高度調整手段5の真上にくるように気球2を移動させる機能を有している。また、停留位置制御手段24は、予め設定された高度に気球2が到達した場合は、撮影制御手段25に空中撮影が可能である旨の信号を出力するようになっている。撮影制御手段25は、停留位置制御手段24からの信号に基づき、デジタルカメラ3に撮影指令信号を出力する機能を有している。
【0034】
図6は、自動撮影手段20における空中撮影の処理手順を示している。図6のステップS100においては、角度測定手段22によってロープ4の角度測定が行われる。つぎに、ステップS101に進み、方向測定手段23によってロープ4の方向測定が行われる。そして、ステップS102においては、角度測定手段22と方向測定手段23からの信号に基づき、気球2が高度調整手段5の真上にあるか否かが停留位置制御手段24によって判定される。
【0035】
ステップS102において、気球2が高度調整手段5の真上にあると判断された場合は、ステップS104に進み、気球2による撮影高度が予め設定された高度であるか否かが判断される。ここで、気球2による撮影高度が所定の高度であると判断された場合は、ステップS106に進み、デジタルカメラ3による周囲の空中撮影が行われる。ステップS102において、気球2が高度調整手段5の真上にないと判断された場合は、ステップS103に進み、プロペラ2A〜2Dを利用して気球2を移動させ、気球2が高度調整手段5の真上にくるように気球2の停留位置を変更し、ステップS102に戻る。
【0036】
ステップS102では、プロペラ2A〜2Dを利用して移動させた気球2が高度調整手段5の真上にあるか否かを判断し、気球2が高度調整手段5の真上にきている場合は、ステップS104に進み、デジタルカメラ3による周囲の空中撮影が行われる。そして、上記と同じ手順により、予め設定された複数の高度での空中撮影が行われる。
【0037】
このように、自動撮影手段20を用いることにより、気球2が高度調整手段5に対して真上にくるように気球2の停留位置を自動で調整することができるので、周囲を空中撮影する際の労力をさらに軽減することが可能となる。
【0038】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、実施の形態1における空中撮影装置1は、デジタルカメラ3とパーソナルコンピュータ10は、ケーブル4bを介して接続されているが、無線によってデジタルカメラ3とパーソナルコンピュータ10とをつなぐ構成としてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 空中撮影装置
2 気球
2A〜2D 推力発生手段(プロペラ)
3 撮像手段(デジタルカメラ)
4 連結部材(ロープ)
4a 測長手段
5 高度調整手段
20 自動撮影手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表から上空に向かって上昇可能な気球と、
前記気球に連結される屈曲可能な連結部材と、
前記地表側に固定され前記連結部材の巻き取りおよび巻き出しを可能とし前記気球の上昇高さを調整する高度調整手段と、
前記気球に設けられ前記上空における前記気球の停留位置が前記高度調整手段の真上となるように前記気球を移動させる推力発生手段と、
前記地表に対する前記気球の上昇高さを測定する測長手段と、
前記気球に設けられ周囲を撮影する撮像手段と、
を備えた、ことを特徴とする空中撮影装置。
【請求項2】
前記気球の前記上空における停留位置を自動で検知し、前記気球が前記高度調整手段に対して真上にくるように前記気球の停留位置を自動で調整する自動撮影手段を備えた、ことを特徴とする請求項1に記載の空中撮影装置。
【請求項3】
地表から上空に向かって気球を上昇させ、前記気球に連結される屈曲可能な連結部材を前記地表側に固定された高度調整手段によって巻き取りおよび巻き出すことにより前記気球の上昇高さを調整するとともに、前記上空における前記気球の停留位置が前記高度調整手段の真上となるように推力発生手段によって前記気球を移動させ、前記気球に設けられた撮像手段によって周囲を撮影する際の前記地表に対する前記気球の上昇高さを測長手段により測定することを特徴とする空中撮影方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−185968(P2011−185968A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47802(P2010−47802)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(596133119)中電プラント株式会社 (101)
【Fターム(参考)】