説明

空気圧縮機

【課題】
ドレン排出時の騒音と、周囲への水や圧縮空気の飛散を防止することができる空気圧縮機を提供する。
【解決手段】
圧縮空気を貯留するタンク部と、外部より吸入した空気を圧縮して圧縮空気を生成し前記タンク部に圧縮空気を供給するための圧縮空気生成部と、該圧縮空気生成部を駆動するためのモータを有する駆動部と、前記タンク部内の圧縮空気およびドレンを排出するためのドレン排出装置20を備えた空気圧縮機において、ドレン排出装置20のドレン排出口20a近傍にドレン排出時の騒音を低減する消音吸水部材24を設ける。消音吸水部材24として、例えばスポンジを用い、ドレン排出時の消音と共に、排出されるドレンを吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釘打機等の空気工具を駆動するために必要な圧縮空気を生成するのに好適な空気圧縮機に関し、特に、圧縮空気を貯留するタンク部からドレン排出を行う際に、騒音の防止と、周囲への水や圧縮空気の飛散の防止をすることができる空気圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気工具等を駆動する空気圧縮機は、モータ等の駆動部における回転出力軸の回転運動が、圧縮空気生成部におけるクランク軸を介してシリンダ内のピストンの往復運動として変換され、ピストンの往復運動によってシリンダの吸気弁から吸い込んだ空気を圧縮するように構成される。シリンダ内で圧縮された圧縮空気はシリンダの排気弁からパイプを通して空気タンクに吐出され、空気タンク内に貯留される。
【0003】
空気圧縮機が2つの空気タンクから構成される場合は、お互い離間して平行に設けられる長胴型の2つの空気タンクと、2つの空気タンクを一定の距離をおいて連結するフレームを有し、そのフレームの上側に、モータ等の駆動部と、圧縮空気生成部が設けられる。圧縮空気生成部で圧縮された空気は、一方の空気タンクに吐出される。2つの空気タンクは、お互いがパイプで連通され、圧縮空気を一方の空気タンクからパイプを介して他方の空気タンクに流入させることによって、双方の空気タンク内の圧力が同一に保たれる。釘打機等の空気工具は、このタンク内に貯留された圧縮空気を利用して動作させるものである。このような空気圧縮機は、例えば下記特許文献1に開示されている。
【0004】
一般に、空気は圧縮されると高温になるため、空気タンク内に吐出された高温の圧縮空気が膨張および冷却されることにより、圧縮空気中に含まれる水蒸気がドレン(水分)としてタンク内の底部に蓄積されていく。このドレンをタンク内に滞留させたままでいると、空気タンク内の錆び、腐食が発生するおそれがある。そこで、空気タンク内の錆び付きを防止するために、作業者は作業終了後または移動時にはドレン排出口のドレンコックを開き、空気タンク内の圧縮空気とドレンを抜く必要がある。
【0005】
【特許文献1】特開2006−125237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の可搬型の空気圧縮機における圧縮空気およびドレン抜きの作業において、ドレン排出口のドレンコックを開くと、高圧の圧縮空気はタンク外へ急激に放出、膨張されるため、大きな音とともに錆び、摩耗粉を含んだ空気、ドレンが排出され、周囲に飛散することがある。これにより、地面や床が水浸しになったり、作業現場の汚れを引き起こす要因となっていた。そこで従来のドレン抜き作業においては、急激な空気やドレンの排出を防ぐために、作業者が徐々にドレンコックを開いて排出具合を調整することが多く、排出に気を遣うばかりか排出に要する時間も長くかかっていた。
【0007】
本発明の目的は、ドレン排出装置から排出されるドレンが周囲に飛散することを防止することができ、周囲を汚すことなくドレン抜き作業を短時間で安全にすることができる空気圧縮機を提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、ドレン排出装置のドレン排出時の騒音を低減することができる空気圧縮機を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、ドレン排出装置の設置場所を工夫することにより作業者の使い勝手の良い空気圧縮機を提供することにある。
【0010】
本発明の上記及びその他の目的ならびに新規な特徴は、以下の明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を説明すれば、以下の通りである。
【0012】
本発明によれば、圧縮空気を貯留するタンク部と、外部より吸入した空気を圧縮して圧縮空気を生成しタンク部に圧縮空気を供給する圧縮空気生成部と、圧縮空気生成部を駆動するモータ等からなる駆動部と、タンク部内の圧縮空気およびドレンを排出するためのドレン排出装置を備えた空気圧縮機において、ドレン排出装置の排出口にドレン排出時の騒音を低減するとともに飛散するドレンを集水することができる消音集水手段を設けた。
【0013】
消音集水手段は、音を吸収すると共にドレンを飛散させずに集める機能を実現するもので、吸水可能な素材の吸音材、例えばスポンジやその他の素材で実現できる。また、集水の方法は、吸収してその素材が水を保持するだけでなく、飛散を防止して水を所定の場所に導いて貯める方法でも良い。消音集水手段は、吸水可能な又は吸水しない吸音材を収容するハウジングを有し、ハウジングの底部を水をためることができる形状、例えばカップ状、トレイ状とする。尚、ハウジングを設ける目的は排出された水を周囲にこぼすことなく貯めることにあるので、その形状の設計は比較的自由である。
【0014】
また、空気圧縮機がタンクを2つ有する場合、お互い離間して平行に設けられる長胴型のタンクとし、消音集水手段を2つのタンクの間に設置する。そして、2つのタンクの上部からそれぞれ接続される2つの連通管と、2つの連通管を連結するマニホールドを、2つのタンクの間に設け、ドレン排出装置をマニホールドに取り付ける。この際、2つの連通管の長さを同じとすれば、特に好ましい。
【0015】
また、本発明の別の構成によれば、圧縮空気を貯留するタンク部と、外部より吸入した空気を圧縮して圧縮空気を生成しタンク部に圧縮空気を供給する圧縮空気生成部と、圧縮空気生成部を駆動する駆動部と、タンク部内の圧縮空気およびドレンを排出するためのドレン排出装置を備えた空気圧縮機において、ドレン排出装置の排出口に、ドレン排出時に噴出する水を集める集水手段を設ける。集水手段は、水をためることができるハウジングと、ドレン排出装置の排出口に直接またはその近傍に設けられる吸水手段を有する。この吸水手段としてスポンジなどを用いることができるが、消音効果を重視しない場合は、水の飛散を防止するという観点からその材質を決めればよい。
【0016】
さらに、本発明によれば、集水手段は、ドレンが飛び散らないようする飛散防止手段と、ドレンを貯めるための貯水手段によっても構成できる。この場合、集水したドレンをコップ、トレイ、など任意の形状の貯水手段に集めて貯める構成とすれば良い。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、ドレン排出装置の排出口にドレン排出時の騒音を低減するとともに集水可能な消音集水手段を設けたため、ドレンの飛散を防止できるとともに発生する音も低減できるので、周囲に迷惑を掛けることなく短時間で安全にドレン抜き作業ができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、消音集水手段として、消音作用を有し、ドレンを吸水可能な素材としたので、一つの素材を設けるという単純な構成で消音と吸水の双方の効果を得ることができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、上記素材を吸水可能なスポンジ状の材料としたので、安価な材料によって消音と吸水の双方の効果を得ることができる消音集水手段が実現できる。
【0020】
請求項4の発明によれば、吸水可能な素材を収容するハウジングを有し、ハウジングの底部は水をためることができる形状にしたので、スポンジなどの消音作用及び吸水作用を有する消音吸水部材で吸収されたドレンが周囲にこぼれることを効果的に防止することができる。
【0021】
請求項5の発明によれば、消音集水手段は、前記2つのタンク間に設けられるため、消音集水手段が空気圧縮機の本体から突出しないので、コンパクトで使い勝手の良い空気圧縮機を提供することができる。
【0022】
請求項6の発明によれば、2つのタンクの上部からそれぞれ接続される2つの連通管と2つの連通管を連結するマニホールドを設け、ドレン排出装置をマニホールドに取り付けるため、ドレン排出装置を設けるためにタンクに形成する取り出し口を省略でき、製造コストを低く抑えることができる。
【0023】
請求項7の発明によれば、空気圧縮機のドレン排出装置の排出口に、ドレン排出時に噴出する水を集める集水手段を設けたため、ドレンの飛散を防止でき、周囲に迷惑を掛けることなく短時間で安全にドレン抜き作業ができる。
【0024】
請求項8の発明によれば、集水手段は、水をためることができるハウジングと、ハウジングに収容されドレン排出装置の排出口に設けられる吸水手段を有するため、吸水作用を有する吸水材で吸収されたドレンが周囲にこぼれることを効果的に防止することができる。
【0025】
請求項9の発明によれば、集水手段は、ドレンが飛び散らないようする飛散防止手段と、ドレンを貯めるための貯水手段を有するため、吸水材を使わずにドレンが周囲にこぼれることを防止し、集水することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の空気圧縮機の一実施形態を図1〜図6を用いて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明を省略する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態を示す空気圧縮機を示す平面図であり、図2はその空気圧縮機の側面図(但し、下半分は図1のB−B部の断面を示す)であり、図3はその空気圧縮機の正面図である。
【0028】
図1〜図3に示すように、本発明にかかる空気圧縮機1は、圧縮空気を貯留するタンク部11と、圧縮空気を生成し前記タンク部11に供給するための圧縮空気生成部(以下、単に「圧縮部」と称する場合がある)5と、圧縮空気生成部5を駆動するためのモータを有する駆動部3と、主電源スイッチ17と、駆動部3を構成するモータの起動・停止(オン・オフ)を制御する制御回路部4とを具備する。図面上、二点鎖線で示されているのが本体カバー16である。タンク部11下方には、空気圧縮機1を床の上に置き易くするため脚部34が設けられる。タンク部11側方には、空気圧縮機1の移動を容易にするため運搬ハンドル18が設けられる。
【0029】
主電源スイッチ17は、空気圧縮機1に供給される商用交流電源をオン又はオフにするために設けられ、主電源スイッチ17を介して制御回路部4および駆動部3等へ電気が供給される。
【0030】
駆動部3を構成するモータは、例えば、ホール素子等の検出手段(図示せず)によって前記モータのロータの回転位置を検出して、この検出信号によってモータのステータコイルへの電気の供給を制御するDCブラシレス方式のモータであり、その電気の供給は制御回路部においてインバータ制御によって制御する。
【0031】
制御回路部4は、図示しない電源用回路部品、モータの運転をインバータ制御するための半導体スイッチング素子やその他の回路素子部品によって構成されており、半導体スイッチング素子などの発熱部品を、アルミニウムなどの熱伝導性の良好な材料によって形成されたハウジング内に配置される。
【0032】
モータ回転軸の一端は前記圧縮部5のクランクケース6を貫通しており、そこの先端には冷却用のファン32が取り付けられ、モータ回転軸の他端には冷却用のファン31が取り付けられる。
【0033】
タンク部11は圧縮空気を貯留するもので、図1、図3から理解できるように、平行に配置された一対の長胴状、あるいは円筒状のタンク11a、11bにより構成される。圧縮空気は圧縮空気生成部(圧縮部)5で生成され、その吐出口より吐出管(空気流通路)10を通してタンク部11に供給される。吐出管10とタンク部11は、一方のタンク11bに設けられた雌ネジ部36に継手を介して接続される。供給された圧縮空気は、タンク部11内で、例えば3.0〜4.2MPaの圧力を有する。
【0034】
タンク部11には安全弁(逃がし弁)12(図1)が取り付けられており、タンク部11内の圧力が異常に高くなったときに、その圧縮空気の一部を外部に吐出させて、異常な圧力上昇を防止する。
【0035】
双方のタンク11a、11bには、圧縮空気取り出し口となるカプラ15aおよび15bが設けられており、それらには、ホース(図示せず)を介して釘打機等の空気工具(図示せず)が接続される。本実施形態では、カプラは上下に2つずつ設けられるが、カプラの数や、配置する場所は任意に設定して良い。
【0036】
カプラ15aおよび15bの隣には、減圧弁14aおよび14bがそれぞれ設けられ、減圧弁14aおよび14bは、その入口側(タンク側)の圧縮空気の圧力の大きさにかかわらず、出口側(カプラ側)の圧縮空気の最高圧力を一定に抑える機能を持つ。例えば、減圧弁14a、14bが最高圧力2.0MPaのものを使用した場合、タンク10a、10b内の圧縮空気の圧力が2.0MPa以上であっても、減圧弁14a、14bからは2.0MPa以下の圧縮空気しか出力されない。従って、減圧弁14a及び14bの出口側からは、タンク10a、10b内の圧力にかかわらず、上記の最高圧力以下の圧力を持つ圧縮空気が得られる。カプラ15aおよび15bの近傍には、圧力計13aおよび13bが取り付けられており、減圧弁14aおよび14bの出口側の圧力をモニタできる。
【0037】
圧縮部5は、図1に示されるように、二つの圧縮機7、8により構成され、一段目の圧縮機7と二段目の圧縮機8はクランクケース6を介し、それぞれ対向するように配置される。一段目の圧縮機7はクランクケース6内部を経由して吸い込まれた外部空気(大気圧)を圧縮し、第1の吐出管9を経由して二段目の圧縮機8へ圧縮空気を送り込む。二段目の圧縮機8は一段目の圧縮機7から供給される圧縮空気を、例えば3.0〜4.2MPaの許容最高圧力まで圧縮して第2の吐出管10を経由してタンク11b内に供給する。
【0038】
二つのタンク11a、11bは、連通管21a、21bおよびマニホールド22を介して連通され、一方のタンク11b内部に供給された圧縮空気を連通管21b、マニホールド22、連通管21aを経由させてタンク11aに流入させることにより、二つのタンク11a、11b内部の圧力は同一に維持される。尚、連通管21b、マニホールド22、連通管21a間の通路は常に開放されている。
【0039】
図4は、図1に示した空気圧縮機1のA−A部の断面図であり、そのドレン排出構造を示し、図5は、図3に示したC−C部の断面図を示す。図4、図5に示すように、二つのタンク11a、11bにはそれぞれ外周部に雌ネジ部27a、27bが溶接等により形成されており、タンク内部に溜まったドレン、圧縮空気をタンク11a、11b外部へ排出するためのドレン排出管26a、26bが継手25a、25bの一端に係合される。図4に示すようにドレン排出管26a、26bは、ドレンを効果的に排出するために、その一方の開口はタンク11a、11bの底部付近に位置する。継手25a、25bはタンク11a、11bの雌ネジ部27a、27bにねじ嵌合される。連通管21a、21bは一端が継手25a、25bにより接続され、他端は継手28a、28bに接続される。継手28a、28bは、マニホールド22にねじ嵌合される。
【0040】
マニホールド22には、その内部に流路が形成され、その流路から分岐するように形成される流路に雌ネジ部58が形成され、この雌ネジ部58にドレン排出装置20がねじ嵌合される。マニホールド22は二つのタンク11a、11b間のスペースに配置され、取付けネジ29によって二つのタンク11a、11b間を連結するフレームに固定される。
【0041】
ドレン排出装置20にはドレン排出口20aが形成され、ドレンコック23の手動操作によって開閉され、ドレン排出管26aから連通管21aおよびマニホールド22内部の流路を経由してドレン排出口20aへ、および、ドレン排出管26bから連通管21bおよびマニホールド22内部の流路を経由してドレン排出口20aへの2つの流路によって、二つのタンク11a、11b内のドレン、圧縮空気を同時に外部へ排出させることができる。
【0042】
このように、ドレンを排出する管路を二つのタンク11a、11bから同じ長さで形成したので、2つのタンクからのドレン排出経路長が等しく、一方のタンクからのドレンだけが多く排出され、他方にドレンの多く残留するというような排出の偏りを防止でき、効率よくドレン排出をすることができる。また、ドレン排出のために設けられるタンク部に設けられる穴を省略できるので、製造コストを安く抑えることができる。
【0043】
さらに、ドレン排出口20aの下方にはハウジング30で区切られた部屋に、消音吸水部材24が載置される。消音吸水部材24は、例えばスポンジ状の材料とすることでき、その場合吸水口かを期待できと共に、手で潰すなど変形させることができるため簡単にハウジング11c内に収めることができる。このように吸音だけでなく、吸水効果のある部材が、消音集水効果のある手段としての役割を果たす。
【0044】
図6は、ハウジング30と消音吸水部材24からなる消音集水手段の詳細を示す斜視図である。ハウジング30は、2面にだけ開口部を有する直方体であり、横方向にある1つの開口部には折り返し部40が形成され、ドレン排出時に消音吸水部材24が落下したり飛び出したりすることを防止する。載置される消音吸水部材24の一部には、消音吸水部材24をハウジング30にセットする際に、ドレン排出口20aに当たらずにスムーズに入れることができるように、ドレン排出口20aの形状に対応した切り抜き部41が形成される。そのため、消音吸水部材24を容易にハウジング30にセットすることができる。
【0045】
尚、図5に示す実施形態では、切り抜き部41の底面42と、ドレン排出口20aの開口部43が接しているが、必ずしもこれに限定する必要はなく、消音効果、及び/又は、吸水効果を十分に達成できるのであれば、これらを所定の距離だけ離しても、または、その付近に有効な空間が形成されるように設置しても良い。本実施形態では、切り抜き部41がドレン排出口20aの開口部からハウジング30の背面方向(折り返し部40からみて対面側の方向)に向かって形成されるので、排出されるドレンが、ハウジング30の外部に飛び散ることを効果的に防止できる。
【0046】
ドレン排出作業には、ドレンコック23をひねることにより、図5の矢印51aで示す流路が開放され、タンク11a、11b内の高圧の空気が、矢印51a、51bの方向に流れて消音吸水部材24を介して大気中に放出される。このように、高圧の空気は、直接大気中に排出されるのではなく、ドレン排出装置20から吸音効果のある消音吸水部材24を介して排出されるので、ドレン排出時の騒音を著しく低減することができる。
【0047】
また、ドレン排出時には、高圧の空気と共に、圧縮空気中に含まれる水蒸気やタンクの底にたまった水が噴き出すことがあるが、消音吸水部材24を、スポンジ等の水分を吸収する素材にて形成すれば、音と共に水分が消音吸水部材24によって吸収されるため、周囲へのドレンの飛散を防止でき、作業者に被害を与える可能性を著しく低減できる。
【0048】
さらに、ハウジング30は図6に示すようにその形状が箱形であり、開口部近傍には、折り返し部40が形成される。そのため、消音吸水部材24に吸収され、重力によりハウジング30の底面方向に移動する水が、ハウジング30の底部に溜まってこぼれない効果もある。従って、ドレン排出装置20からの水が有効に集水、貯水され、床に水がこぼれることを有効に防止することができる。
【0049】
ドレン排出作業後は、作業者は、消音吸水部材24をハウジング30から取り出し、手で消音吸水部材24を絞ることにより吸水されたドレンを廃水することができる。尚、ハウジング30の下に、さらに水の受皿を設置すれば、床への水漏れをより完全に防ぐことができる。
【0050】
次に、図7、8を用いて、本発明の別の実施形態を説明する。図7は、本発明の第2の実施形態を示す空気圧縮機を示す部分平面図であり、図8は、ハウジングの別の例を示す図である。
【0051】
図7において、二つのタンク11a、11bの外周部に溶接等によりそれぞれ形成された雌ネジ部27a、27bに継手25a、25bがねじ嵌合され、二つのタンク11a、11bを直接連通させる連通管21を継手25a、25bに接続する。ドレン排出装置50は、二つのタンク11a、11bの一方の外周部に溶接等により形成された雌ネジ部54にねじ嵌合させ、ドレン排出装置50に接続された延長管53の排出口が、消音吸水部材24aの内部に位置するように配置する。消音吸水部材24aは、例えば、図8に示すようにハウジング30aに載置する構造とすることができる。消音吸水部材24aには、円筒形の切り抜き部41aが形成され、その切り抜き部41aの底部に接して、又は、その底部に近接するように延長管53の排出口が設置される。
【0052】
この実施形態では、ハウジング30aは、図6で示すハウジング30に比べて上面がなく、また背面側上部にも開口がある。しかし、ハウジング30aは箱形であり、底部に開口や穴が無いため、消音吸水部材24bが吸収したドレンが周囲にこぼれることは無い。
【0053】
尚、図7のドレン排出装置50と消音吸水部材24aの構成は、タンクが一つしかない空気圧縮機においても同様に用いることができる。また、二つのタンク11a、11bがある装置に適用する場合は、図7に示すように2つのタンク11a、11bの間であって、2つのタンク11a、11bの前端部又は後端部付近に設置すれば、スペース効率が良いだけでなく、作業者がアクセスしやすい場所となるため使い勝手がよい。
【0054】
また、本実施形態による空気圧縮機では、図1、2に示すように制御回路4が、ドレン排出装置20、50と離れた位置であって、タンク11a、11bの上方にあるので、ドレンが飛散して、制御回路4に水分がついてしまう可能性をさらに低減させることができる。
【0055】
さらに、ハウジング30aを鉄、アルミ、ステンレスなどの金属で形成すれば、二つのタンク11a、11bを固定するフレームの機能を兼用するようにすることができる。例えば、図7においては、ハウジング30aの両端をタンクに溶接すれば良い。また、ハウジング30aをプラスチックなどの材質にし、フレームに着脱可能に取り付ければ、集められた水を捨てるのが容易になる。
【0056】
以上の本発明の実施形態より明らかなように、本発明の空気圧縮機によれば、ドレン排出装置のドレン排出口近傍に、ドレン排出時の騒音を低減し、飛散するドレンを集水する消音吸水部材を設けたことによりドレン排出時の騒音を防止することができる。これにより、周囲に迷惑を掛けることなく短時間でドレン抜き作業することができる。
【0057】
また、消音吸水部材を吸水可能なスポンジ状の材料にすることで、圧縮空気、ドレンが地面や床へ飛散することなく、作業現場の汚れを防止することができる。
【0058】
更に、本発明によれば、消音吸水部材を容易に取り出すことができるようにしたので、排出された水分を吸収した消音部材から容易に水分を排水することができる。
【0059】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【0060】
例えば、本実施形態では消音吸水部材24、24aとしてスポンジの例を説明したが、スポンジ同様に、吸音効果、及び/又は、吸水効果を有する部材であれば、任意の部材を用いることができる。
【0061】
さらに、ハウジング30の形状を工夫して、排出された水が周囲に拡散しないような形状とすれば、消音吸水部材24の代わりに、グラスウールや、ネットなどのように、吸水効果が期待できないが水の飛散を防止できる材質とすることができ、それによって集水されたドレンを、その下方に設けたトレイや受け皿で受けるようにできる。
【0062】
さらに、排気時の騒音が問題とならないような場合には、主な目的として吸水効果あるいは集水効果だけをねらってハウジング30の形状や構成を配慮しても良い。
【0063】
さらに、本実施形態ではタンクの数が2つであるが、タンクが3つ以上であっても、各タンクから連通管を接続し、それらの連通管を共通のマニホールドに接続し、このマニホールドにドレン排出装置を設けるように構成できる。この際、各連通管の長さをほぼ同等にすれば、排出口効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態を示す空気圧縮機を示す平面図。
【図2】図1の空気圧縮機の側面図(但し、下半分は図1のB−B部の断面を示す)。
【図3】図1の空気圧縮機の正面図。
【図4】図1の空気圧縮機のドレン排出構造を示すA−A部の断面図。
【図5】図3に示した空気圧縮機のドレン排出構造を示すC−C部の断面図。
【図6】図1のハウジング30と消音吸水部材24の詳細を示す斜視図。
【図7】本発明の第2の実施形態を示す空気圧縮機を示す部分平面図。
【図8】ハウジング30の別の例を示す図。
【符号の説明】
【0065】
1 空気圧縮機 2 電源コード 3 駆動部
4 制御回路部 5 圧縮部(圧縮空気生成部) 6 クランクケース
7 一段目圧縮部 8 二段目圧縮部 9 一段目吐出管
10 二段目吐出管 11 タンク部 11a、11b タンク
11c ハウジング 12 安全弁(逃がし弁) 13a、13b 圧力計
14a、14b 減圧弁 15a、15b 圧縮空気取出し口(カプラ)
16 本体カバー 17 主電源スイッチ 18 運搬ハンドル
20、50 ドレン排出装置 20a ドレン排出口 21a、21b 連通管
22 マニホールド 23 ドレンコック 24、24a 消音吸水部材
25a、25b 継手 26a、26b ドレン排出管 27 取付けネジ
28a、28b 継手 29 ネジ 30、30a ハウジング
31、32 ファン 33 フレーム 34 脚部
40 折り返し部 41、41a 切り抜き部
42 (切り抜き部41の)底面 43 (ドレン排出口20aの)開口部
53 延長管 54 雌ネジ部 58 雌ねじ部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気を貯留するタンク部と、外部より吸入した空気を圧縮して圧縮空気を生成し前記タンク部に圧縮空気を供給する圧縮空気生成部と、該圧縮空気生成部を駆動する駆動部と、前記タンク部内の圧縮空気およびドレンを排出するためのドレン排出装置を備えた空気圧縮機において、
前記ドレン排出装置の排出口にドレン排出時の騒音を低減するとともに集水可能な消音集水手段を設けたことを特徴とする空気圧縮機。
【請求項2】
前記消音集水手段は、消音作用を有し、ドレンを吸水可能な消音吸水部材を有することを特徴とする請求項1に記載の空気圧縮機。
【請求項3】
前記消音吸水部材は、スポンジ状の材料であることを特徴とする請求項1に記載の空気圧縮機。
【請求項4】
前記消音集水手段は、前記消音吸水部材を収容するハウジングを有し、該ハウジングの底部は水をためることができる形状であることを特徴とする請求項2に記載の空気圧縮機。
【請求項5】
前記タンク部は、お互い離間して平行に設けられる長胴型の2つのタンクであり、前記消音集水手段は、前記2つのタンク間に設けられることを特徴とする請求項4に記載の空気圧縮機。
【請求項6】
前記2つのタンクの上部からそれぞれ接続される2つの連通管と前記2つの連通管を連結するマニホールドを設け、前記ドレン排出装置は前記マニホールドに設けられることを特徴とする請求項5に記載の空気圧縮機。
【請求項7】
圧縮空気を貯留するタンク部と、外部より吸入した空気を圧縮して圧縮空気を生成し前記タンク部に圧縮空気を供給する圧縮空気生成部と、該圧縮空気生成部を駆動する駆動部と、前記タンク部内の圧縮空気およびドレンを排出するためのドレン排出装置を備えた空気圧縮機において、
前記ドレン排出装置の排出口に、ドレン排出時に噴出する水を集める集水手段を設けたことを特徴とする空気圧縮機。
【請求項8】
前記集水手段は、水をためることができるハウジングと、該ハウジングに収容され前記ドレン排出装置の排出口に設けられる吸水手段であることを特徴とする請求項7に記載の空気圧縮機。
【請求項9】
前記集水手段は、ドレンが飛び散らないようする飛散防止手段と、ドレンを貯めるための貯水手段を有することを特徴とする請求項7に記載の空気圧縮機。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−185678(P2009−185678A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25898(P2008−25898)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】