説明

空気浄化装置

【課題】 空気中に含まれる化学物質を酸化または分解する機能とフィルター機能とを組み合わせ、酸化または分解したガスを選択的に順次排出することができ、長寿命で、効果的に空気中の有害成分を無害化して空気浄化を行うことが可能な空気浄化装置を提供することである。
【解決手段】 空気浄化装置は、被処理対象成分を含む空気を装置外から装置内に導入する気体ポンプ101と、気体ポンプ101によって導入された空気中の被処理対象成分を高分子から低分子に分解するように空気を処理する放電部102と、放電部102によって処理された空気を装置内から装置外に放出する前に通過させるゼオライトフィルター105とを備え、ゼオライトフィルター105は、直径が0.1nm以上1nm以下の微細な孔を有する材料を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には空気浄化装置に関し、特定的には外部から取り入れた空気を放電または光触媒により分解し、フィルターを通じて、処理された成分を選択的に外部空間に放出する空気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅を構成する建材や、家具などに使用される接着剤、断熱材などに、様々な化学物質が使用され、これらが住空間に放出されることが問題となっている。これらは、たとえばホルムアルデヒドやトルエンなどの化学物質に代表される物質であり、目、鼻、のど等への刺激、頭痛等の多様な症状を生じさせ、いわゆる「シックハウス症候群」を引き起こすとされている。
【0003】
従来、空気中に含まれる汚染化学物質を除去する方法としては、活性炭による吸着を利用するものが普及している。
【0004】
また、放電により発生させた活性なガスである、たとえばプラズマを生成し、このプラズマにより上記の汚染化学物質を分解除去する方式が知られている。
【0005】
たとえば、特開2004−24609号公報(特許文献1)には、処理対象成分を含有した被処理ガスに対して放電を行う放電部と、放電部で放電された被処理ガス中の処理対象成分を吸着してその処理対象成分に放電部での放電により生じた活性ガスを反応させる触媒部とを有する放電式ガス処理装置が開示されている。このガス処理装置においては、放電により発生した活性ガスと、被処理対象成分とが反応して酸化され、触媒部を通じて処理され、放出される。
【0006】
また、特開2002−172152号公報(特許文献2)には、長靴の脱臭殺菌装置において、オゾン発生器から生成されるオゾンによって脱臭殺菌した後の空気を、オゾン分解触媒または活性炭の層に通過させて放出する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−24609号公報
【特許文献2】特開2002−172152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の技術において活性炭を用いる方法では、活性炭の表面に吸着することが可能な物質の量に限界があり、活性炭の交換を定期的に行わなければならないという問題があった。
【0008】
一方、特開2004−24609号公報に開示された放電式ガス処理装置において、放電により被処理ガス中に含まれる成分を酸化または分解する処理方法では、反応速度が必ずしも速くないため、酸化または分解されない被処理ガス成分が触媒を通じて外部に漏出する可能性があった。
【0009】
また、特開2002−172152号公報に開示された長靴の脱臭殺菌装置において、オゾン等と、オゾン分解触媒または活性炭とを組み合わせる方法では、空気中の有害成分が充分に分解されない状態で、被処理対象成分がオゾン分解触媒または活性炭に達し、吸着された後、再脱離して大量に放出されるという問題が生じる。
【0010】
本発明の目的は、空気中に含まれる化学物質を酸化または分解する機能とフィルター機能とを組み合わせ、酸化または分解したガスを選択的に順次排出することができ、長寿命で、効果的に空気中の有害成分を無害化して空気浄化を行うことが可能な空気浄化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に従った空気浄化装置は、被処理対象成分を含む空気を装置外から装置内に導入する導入部と、この導入部によって導入された空気中の被処理対象成分を高分子から低分子に分解するように空気を処理する処理部と、この処理部によって処理された空気を装置内から装置外に放出する前に通過させるフィルター部とを備え、このフィルター部は、直径が0.1nm以上1nm以下の微細な孔を有する材料を含むことを特徴とする。
【0012】
このような材料を用いることにより、空気中の分子の最大原子間距離(分子を構成する原子間の最大の距離)が上記の微細な孔よりも小さい分子は、上記のフィルターを容易に通過することができるようになる。一般に有害とされる高分子は、分解により二酸化炭素などの低分子で毒性が極めて小さい物質に変化するため、無害化した二酸化炭素をフィルターに容易に通過させることが可能になる。
【0013】
この発明においては、空気中に含まれる有機化学物質である高分子の有害化学物質は、フィルター部の孔を通過し難いため、装置内部で分解処理を長時間行うことができる。また、高分子の有害化学物質が低分子の無害な成分に分解されると、フィルター部を通過しやすくなり、空気中に素早く放出させることができるので、大量の空気浄化を行うことができる。
【0014】
この発明の空気浄化装置において分解される前の高分子の最大原子間距離が上記の微細な孔の直径より大きく、分解された後の低分子の最大原子間距離が上記の微細な孔の直径より小さいことを特徴とするのが好ましい。この場合、分解処理により低分子に変化させられた分子を優先的に孔に通過させることができる。特に、空気中に含まれる有機化学物質である、トルエンやキシレン等の有害化学物質は、上記のように限定された微細な孔を有するフィルター部を通過し難いため、装置内部で分解処理を長時間行うことができる。また、空気中に含まれる有機化学物質が低分子の無害な成分に分解されると、フィルター部を通過しやすくなり、空気中に素早く放出させることができるので、大量の空気浄化を行うことができる。
【0015】
また、この発明の空気浄化装置は低分子として二酸化炭素を通過させることを特徴とするのが好ましい。この場合、本発明の空気浄化装置では空気中の有機化学物質から最終的に分解され生成される物質の一つが二酸化炭素であり、二酸化炭素を優先的に通過させることができるため、良好な空気清浄技術を実現できる。
【0016】
さらに、この発明の空気浄化装置において微細な孔を有する材料はゼオライトを含むのが好ましい。特に好ましくは、ゼオライトは、DDR型ゼオライトを含む。より好ましくは、本発明においては、直径が0.1nm以上1nm以下の微細な孔を有する材料として、DDR型ゼオライトを含む。
【0017】
なお、ゼオライトは沸石とも表現され、アルカリ金属やアルカリ土類金属を含む、アルミニウムの含水ケイ酸塩鉱物であって、立体網目状結晶構造をもち、原子が数個の大きさの細孔を有することが特徴である。
【0018】
ゼオライトの細孔を利用することにより、水の吸着や、脱臭に用いることが可能であるが、さらに気体分子のフィルターとして使用することも可能である。その場合、ゼオライトは結晶構造が多数あり、結晶構造を選択することにより、特定のガスを効率よく通過させることが可能となる。
【0019】
上記作用を利用し、空気中の化学物質を分解した後、たとえば二酸化炭素などの低分子をゼオライトを含むフィルター部に通過させ排出することにより、無害化された空気を放出することが可能な空気浄化装置を実現できる。
【0020】
なお、ゼオライトの種類としては、ゼオライトは、その結晶構造により、LTA、MFI、MOR、AFI、FER、FAU、DDRといった数多くの種類が存在している。これらの中でDDR(Deca−Dodecasil 3R)は、主成分がシリカからなる結晶であり、その細孔は酸素8員環を含む多面体によって形成されているとともに、酸素8員環の細孔径は4.4×3.6オングストロームであることが知られている。
【0021】
この構造的特徴から、特にDDR型ゼオライトは、二酸化炭素などの低分子ガスを通過させやすいため、本発明は、好ましくはゼオライトを主な材料としてフィルター部を構成すし、DDR型ゼオライトを含むことを特徴としており、優れたフィルター機能を提供し、清浄な空気を放出する空気浄化装置を提供することができる。
【0022】
なお、上記DDRゼオライトは、用いるゼオライトの中の成分比としては、20%以上であることが好ましい。
【0023】
この発明において、フィルター部の外表面は凹凸形状を有するように形成されているのが好ましい。この場合、優れたフィルター機能を提供し、清浄な空気を放出する空気浄化装置を提供することができる。
【0024】
また、この発明において、フィルター部は、少なくとも上流側に配置されたゼオライトを含む第1のフィルター部と、下流側に配置された活性炭を含む第2のフィルター部とを有するのが好ましい。この場合、ゼオライトを含む第1のフィルター部を通過した排出ガスを、活性炭を含む第2のフィルター部を通過させることにより、フィルター部を通過した高分子のガスの濃度を大きく低下させることが可能になり、装置の性能向上を実現することができる。
【0025】
さらに、この発明における空気浄化装置において処理部は、被処理対象成分を含む空気に対して放電を行う放電部を含むのが好ましい。あるいは、処理部は、被処理対象成分を含む空気に対して光触媒材料を用いて処理するのが好ましい。この場合、分解処理を行う機構は、放電または光触媒材料を用いることを特徴としており、高い空気浄化性能を提供することができる。
【0026】
この発明の空気浄化装置においては、処理部とフィルター部とが一体化された空気通過部が本体から分離可能に構成されているのが好ましい。この場合、処理部が劣化した場合に、安価で安全に交換可能とした装置を実現することができる。
【0027】
さらに、この発明の空気浄化装置においては、空気通過部が本体に組み入れられたときに導入部と空気通過部とが電気的に接続され、電力が導入部と空気通過部とに供給されるように構成されているのが好ましい。この場合、空気通過部と導入部とが一体化された場合に、空気通過部にて要する電力を導入部から供給することができ、導入部と空気通過部とが連動して動作することができる。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、酸化または分解したガスを選択的に順次排出することができ、長寿命で、効果的に空気中の有害成分を無害化して空気浄化を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1としての空気浄化装置の概念的な構成を示す図である。
【0030】
図1において、空気浄化装置は、気体ポンプ101と反応室104とを備える。反応室104の入口側には、被処理対象成分を含む空気を装置外から装置内に導入する導入部としての気体ポンプ101が配置され、出口側には、処理部によって処理された空気を装置内から装置外に放出する前に通過させるフィルター部としてのゼオライトフィルター105と活性炭フィルター106とが配置されている。フィルター部は、上流側に配置された第1のフィルター部としてのゼオライトフィルター105と、下流側に配置された第2のフィルター部としての活性炭フィルター106とから構成されている。導入部によって導入された空気中の被処理対象成分を高分子から低分子に分解するように空気を処理する処理部としての放電部102は反応室104内に配置され、高電圧発生装置103に電気的に接続されている。
【0031】
この空気浄化装置において、気体ポンプ101により外部より吸引された空気は、反応室104に送り込まれる。反応室104では、沿面放電電極107と108に印加された交流電圧による放電から、プラズマ、オゾン、イオン、ラジカル等の活性なガスが発生する。この活性ガスと、外部より吸引された空気に含まれている有機化学物質とが反応し、有機化学物質が酸化反応あるいは分解反応を生じ、その結果、低分子の化学物質または二酸化炭素に変化する化学反応が生じる。
【0032】
以上の反応の一例として、トルエン(CHCH)と、放電により生成された酸素ラジカルとの反応を図2に示す。この図では、トルエンが、放電部により生成された酸素ラジカルと反応し、ベンゼン、水、二酸化炭素に分解される反応式が示されている。
【0033】
実際には、トルエンは酸素ラジカルと反応し、様々な物質に分解されるが、複数の反応により、時間経過とともに、その構成要素である炭素と水素の多くは、二酸化炭素と水に分解される。
【0034】
なお、図1における反応室104内で処理された空気は、反応室104内の気圧が高いため、ゼオライトフィルター105を通じて外部に拡散しようとするが、このフィルターは細孔を有するゼオライトが構成要素として配置されているため、分子径が小さい水または二酸化炭素は速い速度で通過し、外部に早く放出される。一方、ベンゼン等の分子径が大きい物質は、ゼオライトフィルター105の細孔を通過することが難しく、大半が反応室104に留まる。
【0035】
しかし、ベンゼンは反応室104内にて活性ガスとしての酸素ラジカルとの長時間の反応により分解され、次第にHOあるいはCOに分解され、ゼオライトフィルター105の細孔部を通じて最終的に外部に放出される。
【0036】
ここでゼオライトフィルター105を構成するゼオライトの種類と細孔径の関係について説明する。
【0037】
ゼオライトは、その結晶構造から、LTA、MFI、MOR、AFI、FER、FAU、DDR等の種類が存在している。その中でDDR(Deca-Dodecasil 3R)型は、主成分がシリカからなり、酸素8員環を含む多面体で細孔が形成されており、その大きさは4.4×3.6オングストローム(0.45×0.36nm)である。
【0038】
この細孔は、ゼオライト中では比較的小さなものであり、二酸化炭素(CO)やメタン(CH4)などの低分子を通過させるフィルターとして有効性が期待されている。
【0039】
以上の理由から、この実施の形態においては、ゼオライトフィルター105を構成する材料として、ゼオライトを利用するが、ゼオライトの種類としては、DDR型が最も適しており、二酸化炭素を効果的に通過させることが可能で、充分に分解していない化学物質を反応室104内に長時間滞留させ、酸化分解作用を長時間行わせることを可能としている。
【0040】
なお、この実施の形態においては、ゼオライトフィルター105の下流側に吸着剤として活性炭を含む活性炭フィルター106を配置している。活性炭フィルター106は、ゼオライトフィルター105を通過した微量の高分子の化学物質を吸着する機能を有するもので、本空気浄化装置から放出される空気の安全性をより向上させる機能を有している。
【0041】
次に、ゼオライトフィルター105の作製方法について説明する。図3は、実施の形態1にて使用するゼオライトを用いたゼオライトフィルター105部分を取り出したものを示す断面図である。
【0042】
図3に示すように、既存技術で作製した多孔性のセラミックス基板301の上に圧縮形成したゼオライト膜302が配置されている。ゼオライト膜302は、天然産出されるゼオライトまたは人工的に合成されたゼオライトを圧縮、焼結したもので、セラミックス基板301の上に配置され、機械的に損傷しないように保持されている。ゼオライト膜302の厚みは、たとえば数μmから数cmまでの範囲内に設定することが可能である。また、セラミックス基板301はゼオライト膜302を保持するために十分な厚みであることが望ましく、たとえば数mmの厚みに設定される。このような構成にすることにより、ゼオライトフィルターは、図3の上方から下方へ、あるいはその逆方向へ二酸化炭素などの気体が通過しやすいが、トルエン、キシレン等の高分子ガスは通過しにくいという特性を示す。なお、ここで、二酸化炭素の最大原子間距離は約0.23nmであり、一方、トルエンやキシレンなどのベンゼン環を有する分子は、ベンゼン環の最大原子間距離である0.34nmより大きな値を有することから、二酸化炭素などの低分子は上記のフィルターを比較的通過しやすいが、一方、ベンゼン、トルエンなどの高分子は通過しにくいという特性を示す。
【0043】
ゼオライト膜の形成方法としては、上記のように焼結の方法を用いる以外にも他の形成方法を選択することが可能である。たとえば、シリカゾルを含む原料溶液を加熱処理し、セラミックス製の支持体上にDDR型ゼオライトを形成させるような、過熱処理方法を用いてもよい。
【0044】
本発明におけるゼオライトを用いたフィルターは、ゼオライトが構成する細孔をフィルターとして使用することを特徴としているため、ゼオライト粒子間の隙間はできるだけ小さいことが望ましい。そのため、その隙間を埋めるための物質をフィルターに混合してもよい。
【0045】
また、上記の実施の形態において、ゼオライトを有するフィルターの構造として、凹凸形状を有する構造を採用することにより、フィルターの表面積を増加させることができる。この構成により、空気の通過を容易に行わせることが可能になり、処理空気量を増大させることができる。
【0046】
ここで、凹凸形状とは、波状の形状、突起部または窪み部が表面部に多数存在する構造のことをいう。
【0047】
凹凸形状のゼオライトフィルターを製造する方法として、図4に示す製造方法を採用することができる。
【0048】
図4において、セラミックスから形成された多孔性の支持台401の上に、焼結によりゼオライトを形成する方法、または、原料溶液中において加熱することによりゼオライトを形成する方法などを用いて、凹凸形状のゼオライト膜402を形成することができる。支持台401は、たとえば数μm程度の孔が形成されており、空気が容易に通過できる板である。
【0049】
なお、ゼオライト膜402の材質としては、細孔を有するLTA、MFI、MOR、AFI、FER、FAU、DDR等の種類を用いることができるが、特にDDR型を含む構造の場合、細孔が数オングストロームであることから、二酸化炭素を効果的に通過させ、かつ高分子有機化合物を通過させにくいため、この実施の形態の空気浄化装置能を効果的に発揮することができる。
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2としての空気浄化装置の概念的な構成を示す図である。
【0050】
この実施の形態では、実施の形態1と異なり、被処理空気における被処理対象成分を酸化または分解処理する機構として、放電の代わりに光触媒を用いている。すなわち、図5に示すように、実施の形態1の反応室104における放電部102の代わりに、反応室504内には紫外線ランプ502と、酸化チタンを含む光触媒パネル503とが配置されている。紫外線ランプ502から放射された紫外線により、光触媒パネル503に含まれる酸化チタン表面でOHラジカルが発生し、空気に含まれるトルエンなどの有機化合物が分解され、低分子の化合物または二酸化炭素、水などに分解される。
【0051】
この実施の形態でも、実施の形態1と同様の優れた空気清浄効果を安定して得ることができる。
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3としての空気浄化装置の概念的な構成を示す図である。
【0052】
この実施の形態では、実施の形態1において、放電部、すなわち、被処理空気における被処理対象成分を酸化または分解する処理部と、フィルター部とを一体化し、その一体化された空気通過部が本体から分離可能、すなわち交換可能に構成されている。
【0053】
図6に示すように、空気浄化装置は、交換カートリッジ(取り外し時)601、(取り付け時)602が空気浄化装置本体603に分離可能に取り付けられている。空気浄化装置本体602の入口側には、除湿フィルター604と、被処理対象成分を含む空気を装置外から装置内に導入する導入部としての送風機605とが配置され、出口側には、処理部によって処理された空気を装置内から装置外に放出する前に通過させるフィルター部としてのゼオライトフィルター610と活性炭フィルター611とが配置されている。フィルター部は、上流側に配置された第1のフィルター部としてのゼオライトフィルター610と、下流側に配置された第2のフィルター部としての活性炭フィルター611とから構成されている。導入部によって導入された空気中の被処理対象成分を高分子から低分子に分解するように空気を処理する処理部としての放電部606は反応室内に配置され、高圧パルス発生回路607に電気的に接続されている。交換カートリッジ601、602内において高圧パルス発生回路607は接続コネクター部609に接続され、空気浄化装置本体603に交換カートリッジ602が取り付けられたときには、空気浄化装置本体603内の制御部608を介して送風機605に電気的に接続されるように構成されている。
【0054】
以上のように構成された空気浄化装置のカートリッジ交換について説明する。交換カートリッジ602が取り付けられている時、操作スイッチ(図示せず)をONにすると、制御部608からの電気信号により、送風機605と高圧発生回路607とが動作し、空気浄化装置能が有効に動作する。
【0055】
空気浄化装置の使用時間が長くなると、やがて交換カートリッジ602の内部が塵芥等で汚染され、放電効率または空気中の有害物質の分解効率が悪くなる。また、ゼオライトフィルター610の目詰まりや活性炭フィルター611の吸着性能の低下が生じる。これらが生じた場合、この実施の形態では交換カートリッジ602を交換することにより、空気浄化機能を初期状態に戻すことを可能にしている。
【0056】
この実施の形態では、交換カートリッジ602が空気浄化装置本体603に正常に設置されない場合、制御部608はこの状態を検知し、接続コネクター部609への送電または送風機605への送電を停止するように予めプログラミングしておくことにより、感電、または送風機605に付着する塵芥などの周囲への拡散を防止し、安全な装置運転が可能になる。
【0057】
なお、上記実施の形態において、分解除去される物質としてトルエンを例に説明したが、本発明は特に炭素、水素、酸素を主な構成要素とする高分子化合物に対して大きな分解浄化効果を及ぼすものであり、トルエン以外の化学物質、たとえば、アセトアルデヒド、フェノブカルブ、ホルムアルデヒド、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレン、クロルピリホス、フタル酸ジ-n-ブチル、テトラデカン、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、ダイアジノンなどの有害性が認められた物質に対しても大きな除去効果が期待できる。
【実施例】
【0058】
本発明の一つの実施の形態の空気浄化装置を用いて得られた空気清浄効果について説明する。
【0059】
図7は、実施の形態1の空気浄化装置(図1)を稼動させた場合にフィルター部を通過した直後の排出空気中のトルエン濃度の経時変化を示す図である。縦軸は排出空気中のトルエン濃度、横軸は空気浄化装置の使用時間を示す。
【0060】
トルエン濃度は、空気浄化装置の導入部としての吸気口に、トルエン濃度が0.5ppmの空気を導入し、排出される空気のトルエン濃度を検知管により12時間おきに測定したものである。
【0061】
図7において、点線701は導入空気中のトルエン濃度、二点鎖線702はゼオライトフィルター105を使用せず、放電を行わせない状態で、活性炭フィルター106のみで空気浄化を行った場合のトルエン濃度、一点鎖線703は、放電を行わせながら、ゼオライトフィルター105としてDDR型ゼオライトを用い、活性炭フィルター106を使用しないで空気浄化を行った場合のトルエン濃度、実線704は放電を行わせながら、ゼオライトフィルター105としてDDR型のゼオライトを用い、ゼオライトフィルター105の下流側に活性炭フィルター106を配置して空気浄化を行った場合のトルエン濃度を示す。
【0062】
二点鎖線702の場合、活性炭フィルター106は時間経過とともに空気浄化性能が低下し、排出される空気中のトルエン濃度が時間経過とともに高くなることがわかる。
【0063】
一点鎖線703の場合、25日の期間、放出される空気中のトルエン濃度が0.03ppm以下に抑えられることがわかる。また、その期間内に故障などは生じなかった。以上の結果は、空気中に含まれる有機化学物質は、二酸化炭素に代表される低分子の成分に変換され、微細な孔を有する材料で構成されるゼオライトフィルター105を高速で通過し、一方分解されない有機化学物質は、処理部で長時間処理されることを示している。
【0064】
実線704の場合、25日の期間、放出される空気中のトルエン濃度が0.01ppm以下に抑えられることがわかる。また、その期間内に故障などは生じなかった。
【0065】
なお、本実施例で、放電を行わず、DDR型ゼオライトフィルターを用いて空気を通過させた場合、空気中の高分子有機化合物がゼオライトの細孔に詰まり、空気抵抗が大きくなり、空気清浄が行われにくくなるという現象が生じた。このため、この結果は図7には示していない。
【0066】
以上のように、DDR型ゼオライトフィルターと放電を組み合わせることにより、放電により高分子の有機化合物を効果的に分解し、二酸化炭素等の低分子のガスに変換して放出することが可能であることが確認できた。また、ゼオライトとして、DDR型を用いることにより、上記の特性を効果的に発揮することができるが、フィルターに配置されるゼオライトとしてはDDR型以外のものを使用してもよい。その場合、ゼオライトに含まれる微細孔の大きさが0.1nm〜1nmである材料を選ぶことにより、空気中に含まれる有機化学物質が分解された後に生成される二酸化炭素等の低分子のガスを優先的に排出することができる。
【0067】
なお、この発明の実施の形態1では、ゼオライトフィルター105の下流側に活性炭を含む吸着剤として活性炭フィルター106を配置している。このため、空気浄化を行うと、空気中の成分は活性炭に吸着されるため、図7に示す実線704のトルエンの濃度は、実際の排出口では0.001ppm以下に低濃度化される。この結果、住空間に再放出される空気中のトルエン濃度を非常に低くすることが可能になる。この場合、活性炭の上流部にて既に高分子有機化合物は低濃度化されているため、活性炭の寿命を長く保つことが可能であり、メンテナンス回数を減らすことができる。
【0068】
以上に開示された実施の形態や実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態や実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施の形態1としての空気浄化装置の概念的な構成を示す図である。
【図2】トルエンの分解反応式を示す図である。
【図3】ゼオライトフィルターの一つの実施の形態を示す断面図である。
【図4】ゼオライトフィルターのもう一つの実施の形態を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2としての空気浄化装置の概念的な構成を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態3としての空気浄化装置の概念的な構成を示す図である。
【図7】実施の形態1の空気浄化装置を稼動させた場合にフィルター部を通過した直後の排出空気中のトルエン濃度の経時変化を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
101:気体ポンプ、102,606:放電部、105,610:ゼオライトフィルター、106,611:活性炭フィルター、402:凹凸形状のゼオライト膜、502:紫外線ランプ、503:光触媒パネル、601:交換カートリッジ(取り外し時)、602:交換カートリッジ(取り付け時)、603:空気浄化装置本体、605:送風機。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理対象成分を含む空気を装置外から装置内に導入する導入部と、
前記導入部によって導入された空気中の被処理対象成分を高分子から低分子に分解するように空気を処理する処理部と、
前記処理部によって処理された空気を装置内から装置外に放出する前に通過させるフィルター部とを備え、
前記フィルター部は、直径が0.1nm以上1nm以下の微細な孔を有する材料を含むことを特徴とする、空気浄化装置。
【請求項2】
前記分解される前の高分子の最大原子間距離が前記微細な孔の直径より大きく、前記分解された後の低分子の最大原子間距離が前記微細な孔の直径より小さいことを特徴とする、請求項1に記載の空気浄化装置。
【請求項3】
低分子として二酸化炭素を通過させることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の空気浄化装置。
【請求項4】
前記微細な孔を有する材料は、ゼオライトを含む、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の空気浄化装置。
【請求項5】
前記ゼオライトは、DDR型ゼオライトを含む、請求項4に記載の空気浄化装置。
【請求項6】
前記フィルター部の外表面は凹凸形状を有するように形成されている、請求項4または請求項5に記載の空気浄化装置。
【請求項7】
前記フィルター部は、少なくとも上流側に配置されたゼオライトを含む第1のフィルター部と、下流側に配置された活性炭を含む第2のフィルター部とを有する、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の空気浄化装置。
【請求項8】
前記処理部は、被処理対象成分を含む空気に対して放電を行う放電部を含む、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の空気浄化装置。
【請求項9】
前記処理部は、被処理対象成分を含む空気に対して光触媒材料を用いて処理する、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の空気浄化装置。
【請求項10】
前記処理部と前記フィルター部とが一体化された空気通過部が本体から分離可能に構成されている、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の空気浄化装置。
【請求項11】
前記空気通過部が本体に組み入れられたときに前記導入部と前記空気通過部とが電気的に接続され、電力が前記導入部と前記空気通過部とに供給されるように構成されている、請求項10に記載の空気浄化装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−158677(P2006−158677A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354806(P2004−354806)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】