説明

空調装置および空調制御方法

【課題】空調に際し電気ヒータの熱を利用する場合と燃料電池の廃熱を利用する場合とを適切に判断し、エネルギー効率の向上を図ることを目的とする。
【解決手段】要求される暖房能力の暖房を第1運転モード(連携状態)で行うとしたときに、前記冷媒の温度の変化に起因する前記燃料電池の消費電力の変化量を推定し(S150、S160)、前記要求される暖房能力の暖房を前記第2運転モード(独立状態)で行うとしたときに、前記電気ヒータの消費電力を推定し(S170)、前記推定された前記燃料電池の消費電力の変化量が前記推定された前記電気ヒータの消費電力より小さい場合に(S180,YES)、前記第1運転モードを採用し、前記推定された前記燃料電池の消費電力の変化量が前記推定された前記電気ヒータの消費電力以上である場合に(S180,NO)、前記第2運転モードを採用する(S195)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池を備える燃料電池搭載装置に設けられる空調装置、および燃料電池搭載装置の空調制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池を搭載した車両において、燃料電池の廃熱を車室内の温度調節の熱源に利用する技術が知られている。詳しくは、燃料電池が途中に配置された冷却水循環路を流れる冷却水をヒータコアに供給し、ヒータコアにより温度調節された空気を車室内に供給する(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
さらに、特許文献2では、ヒータコアの上流側に電気ヒータを設けることで、ヒータコアに流入する冷却水を補助的に加熱可能とする構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−315524号公報
【特許文献2】特開2004−98991号公報
【0005】
前記従来の技術において、燃料電池から発生する電気によって電気ヒータを駆動する構成とすれば、電気ヒータ駆動用の別電源を設ける必要がない。しかしながら、この場合、電気ヒータを使えば燃料電池の発電量が増えることから、エネルギー効率が必ずしもよいとは限らない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、空調に際し電気ヒータの熱を利用する場合と燃料電池の廃熱を利用する場合とを適切に判断し、エネルギー効率の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するために以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1] 燃料電池を備える燃料電池搭載装置に設けられる空調装置であって、ヒータコアを通って冷媒を循環させる第1循環回路と、前記燃料電池を通って冷媒を循環させる第2循環回路と、前記第1循環回路に配置され、前記第1循環回路中の冷媒を加熱し得る電気ヒータと、前記第1循環回路と前記第2循環回路とを連携することで、前記燃料電池の廃熱を利用して暖房を行う第1運転モードと、前記第1循環回路と前記第2循環回路とを切り離し前記電気ヒータをオン状態とすることで、前記電気ヒータの熱を利用して暖房を行う第2運転モードとの間で、運転モードの切り換えを行う運転モード切換部と前記運転モード切換部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、要求される暖房能力の暖房を前記第1運転モードで行うとしたときに、前記冷媒の温度の変化に起因する前記燃料電池の消費電力の変化量を推定する第1演算部と、前記要求される暖房能力の暖房を前記第2運転モードで行うとしたときに、前記電気ヒータの消費電力を推定する第2演算部と、前記第1演算部により推定された前記変化量が前記第2演算部により推定された前記電気ヒータの消費電力より小さい場合に、前記第1運転モードを採用する旨の指令を前記運転モード切換部に送り、前記第1演算部により推定された前記変化量が前記第2演算部により推定された前記電気ヒータの消費電力以上である場合に、前記第2運転モードを採用する旨の指令を前記運転モード切換部に送る指令制御部とを備えることを特徴とする空調装置。
【0009】
ここで、「連携」とは、第1循環回路と前記第2循環回路との間で熱のやりとりを行わせることである。適用例1に記載の空調装置によれば、要求される暖房能力の暖房を燃料電池の廃熱を利用して暖房を行う第1運転モードで行うとしたときの燃料電池の消費電力の変化量と、要求される暖房能力の暖房を電気ヒータの熱を利用して暖房を行う第2運転モードで行うとしたときの電気ヒータの消費電力とを比較して、前者が後者より小さい場合に、燃料電池の廃熱を利用して暖房がなされ、前者が後者以上である場合に、電気ヒータの熱を利用して暖房がなされることになる。このために、燃料電池と電気ヒータのうちから、消費電力が少ない方の熱源を選択して利用することができる。したがって、本実施例の空調装置によれば、装置全体でのエネルギー効率を高めることができる。
【0010】
[適用例2] 燃料電池を備える燃料電池搭載装置に設けられる空調装置であって、ヒータコアを通って冷媒を循環させる第1循環回路と、前記燃料電池を通って冷媒を循環させる第2循環回路と、前記第1循環回路に配置され、前記第1循環回路中の冷媒を加熱し得る電気ヒータと、前記第1循環回路と前記第2循環回路とを連携することで、前記燃料電池の廃熱を利用して暖房を行う第1運転モードと、前記第1循環回路と前記第2循環回路とを切り離し前記電気ヒータをオン状態とすることで、前記電気ヒータの熱を利用して暖房を行う第2運転モードとの間で、運転モードの切り換えを行う運転モード切換部と前記運転モード切換部を制御する制御部と、前記燃料電池の冷媒の温度を検出する温度センサと、を備え、前記制御部は、前記温度センサにより検出された前記冷媒の温度が所定値より大きいか否かを判定する判定部と、前記判定部により前記冷媒の温度が所定値より大きいと判定された場合に、前記第1運転モードを採用する旨の指令を前記運転モード切換部に送り、前記冷媒の温度が所定値以下であると判定された場合に、前記第2運転モードを採用する旨の指令を前記運転モード切換部に送る指令制御部とを備えることを特徴とする空調装置。
【0011】
適用例2に記載の空調装置によれば、燃料電池の冷媒の温度が所定値より大きい場合に、燃料電池の廃熱を利用して暖房がなされ、燃料電池の冷媒の温度が所定値以下である場合に、電気ヒータの熱を利用して暖房がなされることになる。一般に、燃料電池の廃熱を熱源として利用する場合、燃料電池の冷媒の温度が低くなればなるほど暖房効率が低下する。これに対して、適用例2に記載の空調装置によれば、燃料電池の廃熱を熱源として利用したときに効率の悪い冷却水温の領域では、電気ヒータの熱を利用することから、装置全体でのエネルギー効率を高めることができ、電費を向上することができる。
【0012】
[適用例3] 適用例2に記載の空調装置であって、前記燃料電池の冷却水温と燃料電池の消費電力との相関において、燃料電池の消費電力が最小となるときの冷却水温を、前記所定値として予め定めた、空調装置。
【0013】
適用例3に記載の空調装置によれば、燃料電池の消費電力が最小となる適正温度以下の領域で、電気ヒータの熱を利用することから、よりエネルギー効率を高めることができる。
【0014】
[適用例4] 適用例1ないし3のいずれかに記載の空調装置であって、前記燃料電池搭載装置は、燃料電池搭載車両であり、前記電気ヒータは、燃料電池から発生する電気によって駆動される構成である、空調装置。
【0015】
一般に、燃料電池から発生する電気によって駆動される電気ヒータの熱を利用して車室内を暖房しようとしたとき、燃料電池の発電量を増加する必要があるが、適用例4に記載の空調装置では、燃料電池搭載車両全体としてエネルギー効率を高めることができる。
【0016】
[適用例5] 燃料電池と、ヒータコアを通って冷媒を循環させる第1循環回路と、前記燃料電池を通って冷媒を循環させる第2循環回路と、前記第1循環回路に配置され、前記第1循環回路中の冷媒を加熱し得る電気ヒータと、前記第1循環回路と前記第2循環回路とを連携することで、前記燃料電池の廃熱を利用して暖房を行う第1運転モードと、前記第1循環回路と前記第2循環回路とを切り離し前記電気ヒータをオン状態とすることで、前記電気ヒータの熱を利用して暖房を行う第2運転モードとの間で、運転モードの切り換えを行う運転モード切換部とを備える燃料電池搭載装置の空調制御方法において、要求される暖房能力の暖房を前記第1運転モードで行うとしたときに、前記冷媒の温度の変化に起因する前記燃料電池の消費電力の変化量を推定し、前記要求される暖房能力の暖房を前記第2運転モードで行うとしたときに、前記電気ヒータの消費電力を推定し、前記推定された前記燃料電池の消費電力の変化量が前記推定された前記電気ヒータの消費電力より小さい場合に、前記第1運転モードを採用する旨の指令を前記運転モード切換部に送り、前記推定された前記燃料電池の消費電力の変化量が前記推定された前記電気ヒータの消費電力以上である場合に、前記第2運転モードを採用する旨の指令を前記運転モード切換部に送ることを特徴とする空調制御方法。
【0017】
[適用例6] 燃料電池と、ヒータコアを通って冷媒を循環させる第1循環回路と、前記燃料電池を通って冷媒を循環させる第2循環回路と、前記第1循環回路に配置され、前記第1循環回路中の冷媒を加熱し得る電気ヒータと、前記第1循環回路と前記第2循環回路とを連携することで、前記燃料電池の廃熱を利用して暖房を行う第1運転モードと、前記第1循環回路と前記第2循環回路とを切り離し前記電気ヒータをオン状態とすることで、前記電気ヒータの熱を利用して暖房を行う第2運転モードとの間で、運転モードの切り換えを行う運転モード切換部とを備える燃料電池搭載装置の空調制御方法において、前記燃料電池の冷媒の温度を検出し、前記検出された前記冷媒の温度が所定値より大きい場合に、前記第1運転モードを採用する旨の指令を前記運転モード切換部に送り、前記冷媒の温度が所定値以下であると判定された場合に、前記第2運転モードを採用する旨の指令を前記運転モード切換部に送ることを特徴とする空調制御方法。
【0018】
適用例5に記載の空調制御方法によれば、適用例1に記載の空調装置と同様に、全体でのエネルギー効率を高めることができる。適用例6に記載の空調制御方法によれば、適用例2に記載の空調装置と同様に、全体でのエネルギー効率を高めることができる。
【0019】
さらに、本発明は、上記適用例1ないし6以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、本発明の空調装置を車両以外の移動体や定置用装置に設けた形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施例としての空調システム10の構成を示す説明図である。
【図2】空調システム10における冷媒流路の独立状態の一態様を示す説明図である。
【図3】空調システム10における冷媒流路の連携状態を示す説明図である。
【図4】運転モード切換処理を示すフローチャートである。
【図5】FC冷却水温低下量ΔTWと要求暖房熱量Qとの相関を示すグラフである。
【図6】FC冷却水温とFC消費電力との相関を示すグラフである。
【図7】第2実施例における運転モード切換処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら、実施例に基づき説明する。
【0022】
A.第1実施例:
A1.ハードウェア構成:
図1は、本発明の第1実施例としての空調システム10の構成を示す説明図である。この空調システム10は、燃料電池により得られた電力を駆動用電力として用いる電気自動車に搭載されて用いられる。空調システム10は、燃料電池(以下「FCとも呼ぶ)スタック20と、第1循環回路C1と、第2循環回路C2と、2つの循環回路C1,C2を接続させる2つの冷媒流路(第5,9冷媒流路)65,69と、空調機構50と、制御ユニット100とを備えている。
【0023】
燃料電池スタック20は、固体高分子電解質型の燃料電池であり、膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)を有する単セルが複数積層された構成を備えている。燃料電池スタック20には、図示しない水素ガスタンクから、燃料ガスとしての水素ガスが燃料ガス流路22を介して供給される。また、燃料電池スタック20には、図示しないエアコンプレッサにより、酸化剤ガスとしての空気が酸化剤ガス流路24を介して供給される。燃料電池スタック20には、上述した燃料ガスおよび酸化剤ガスに加えて、冷却媒体(以下、単に「冷媒」とも呼ぶ)が供給され、発電に伴い昇温した各単セルが冷媒によって冷却される。本実施例では、冷媒として水にエチレングリコールなどを添加した不凍液を用いるものとするが、不凍液に換えて、純水等の任意の冷却水を利用することもできる。また、冷却水に換えて二酸化炭素などの気体を冷媒としてもよい。
【0024】
燃料電池スタック20には、負荷40が電気的に接続されており、燃料電池スタック20における電気化学反応により生じた電力が負荷40に供給される。ここで、負荷40とは、例えば、図示しない電気自動車の駆動用モータ、後述する2つの電動ファン31,32、電気ヒータ55、および2つのポンプ32,54等を意味する。
【0025】
第1循環回路C1は、燃料電池スタック20を冷却するための冷媒の流通路であり、第1〜4冷媒流路61,62,63,64により構成されている。第1循環回路C1には、第1ポンプ32と、ラジエータ30と、第1三方弁33とが接続されている。
【0026】
第1冷媒流路61の一方端は第1三方弁33と接続され、他方端は燃料電池スタック20の冷媒流入口と接続されており、第1三方弁33から流出される冷媒を燃料電池スタック20に流入させる。第2冷媒流路62の一方端は燃料電池スタック20の冷媒流出口と接続され、他方端は第3,4冷媒流路63,64に分岐しており、燃料電池スタック20から流出される冷媒を、第3冷媒流路63および第4冷媒流路64に流入させる。また、第2冷媒流路62は、第5冷媒流路65および第9冷媒流路69とも接続されており、燃料電池スタック20から流出される冷媒を第2循環回路C2に送出すると共に、第2循環回路C2から流出される冷媒を第3冷媒流路63または第4冷媒流路64に流入させる。
【0027】
第3冷媒流路63の下流側の端部(第2冷媒流路62と反対側の端部)と第4冷媒流路64の下流側の端部(第2冷媒流路62と反対側の端部)とは、第1三方弁33に接続されている。
【0028】
第1三方弁33は、3つの冷媒流路61,63,64に接続された電磁弁であり、弁の開度を調整することにより、第3冷媒流路63から第1冷媒流路61へ流通する冷媒と、第4冷媒流路64から第1冷媒流路61へ流通する冷媒との流量比を調整する。
【0029】
ラジエータ30は、第3冷媒流路63に配置されている。ラジエータ30の近傍には、第1電動ファン31が配置されている。ラジエータ30は、第2冷媒流路62を介して燃料電池スタック20から送られてくる冷媒を、第1電動ファン31からの風により冷却し、冷媒の熱を車外へと放出する。ここで、第4冷媒流路64にはラジエータが配置されていないことからも分かるように、第4冷媒流路64は、ラジエータ30をバイパスして、第2冷媒流路62と第1冷媒流路61とを接続するバイパス回路である。したがって、第4冷媒流路64を通過する冷媒の放熱量は、第3冷媒流路63を通過する冷媒の放熱量に比べて少ない。
【0030】
第1ポンプ32は、第1冷媒流路61に配置され、第3冷媒流路63および第4冷媒流路64から送られてきた冷媒を燃料電池スタック20へと送出する。図1において、太い実線の矢印は、冷媒の流れを示している。図1の例では、冷媒は、第1循環回路C1において、燃料電池スタック20,第2冷媒流路62,第3冷媒流路63,第1冷媒流路61の順序で循環している。なお、図2に示すように、空調システム10では、第2冷媒流路62から流出された冷媒が第3冷媒流路63に流入せず、全て第4冷媒流路64に流入する場合もある。第3冷媒流路63へ流入させるか第4冷媒流路64へ流入させるかは、第1三方弁33を制御することで切り換えることができる。
【0031】
第2循環回路C2は、空調機構50に用いられる冷媒の流通路であり、第6〜8冷媒流路66,67,68により構成されている。第2循環回路C2には、第2三方弁58と、第2ポンプ54と、電気ヒータ55と、ヒータコア51とが接続されている。ヒータコア51は、空調機構50に含まれる暖房用熱交換器である。
【0032】
第6冷媒流路66の一方端は第2三方弁58と接続され、他方端はヒータコア51の冷媒流入口と接続されており、第2三方弁58から流出される冷媒を、ヒータコア51に流入させる。第7冷媒流路67の一方端はヒータコア51の冷媒流出口と接続され、他方端は第8,9冷媒流路68,69に分岐しており、ヒータコア51から流出される冷媒を、第8冷媒流路68または第9冷媒流路69に流入させる。
【0033】
なお、第5冷媒流路65は、第2冷媒流路62および第2三方弁58と接続されており、第2冷媒流路62から流出される冷媒を第2三方弁58に流入させる。第9冷媒流路69は、第7冷媒流路67および第2冷媒流路62と接続されており、第7冷媒流路67から流出される冷媒を第2冷媒流路62に流入させる。すなわち、第5冷媒流路65および第9冷媒流路69は、第1循環回路C1と第2循環回路C2とを接続させる。
【0034】
第2三方弁58は、3つの冷媒流路65,66,68に接続された電磁弁であり、弁の開度を調整することにより、第6冷媒流路66と第5冷媒流路65とを接続し、第6冷媒流路66と第8冷媒流路68を接続しない状態と、第6冷媒流路66と第8冷媒流路68とを接続し、第6冷媒流路66と第5冷媒流路65を接続しない状態とのいずれかに切り替える。
【0035】
第2ポンプ54は、第6冷媒流路66に配置され、第5冷媒流路65または第8冷媒流路68から送られてきた冷媒をヒータコア51へと送出する。電気ヒータ55は、第2ポンプ54とヒータコア51との間に配置されており、第6冷媒流路66を流通する冷媒を温める。
【0036】
空調機構50は、前述したヒータコア51と、第2電動ファン52と、ケーシング53とを備えている。ヒータコア51は、加熱用熱交換機であり、第2循環回路C2を流通する冷媒の熱によって昇温される。第2電動ファン52は、ヒータコア51に対して送風することにより、ケーシング53の外部(車室内)に向けてヒータコア51により温められた空気を送出する。なお、空調機構50は、図示しないダクトを介して、各種吹出口(ベンチレーター,フット,デフロスタ等)と接続され、これら吹出口から温風を送出する。
【0037】
図1の例では、第2三方弁58は、第6冷媒流路66と第8冷媒流路68とを接続し、第6冷媒流路66と第5冷媒流路65を接続しない状態となっており、冷媒は、第2循環回路C2において、第6冷媒流路66、電気ヒータ55、ヒータコア51、第7冷媒流路67、第8冷媒流路68の順序で循環している。すなわち、図1の例では、第1循環回路C1および第2循環回路C2において、それぞれ独立して冷媒が循環されている。以下、このように、空調システム10において、第1循環回路C1と第2循環回路C2とで互いに独立して冷媒が循環されている状態を「独立状態」と呼ぶ。
【0038】
なお、この独立状態においても、前述したように、第4冷媒流路64が閉じて第3冷媒流路63が開いている態様(以下、「図1の態様」と呼ぶ)と、第3冷媒流路63が閉じて第4冷媒流路64が開いている態様(以下、「図2の態様」と呼ぶ)とがある。すなわち、独立状態であってラジエータ30が利用される図1の態様と、独立状態であってラジエータ30の利用されない図2の態様とがある。
【0039】
一方、図3に示すように、第2三方弁58を制御することにより、第1循環回路C1と第2循環回路C2とが物理的に接続され、第1循環回路C1と第2循環回路C2との間で冷媒のやりとりが行われる構成とすることができる。詳しくは、このときには、第2三方弁58は、第6冷媒流路66と第5冷媒流路65とを接続し、第6冷媒流路66と第8冷媒流路68を接続しない状態となっており、第1循環回路C1と第2循環回路C2との間で冷媒のやりとりが行われる。この構成を、以下「連携状態」と呼ぶ。この連携状態時においては、燃料電池スタック20の廃熱を利用してヒータコア51による暖房を行うことができる。
【0040】
なお、この連携状態時には、第1三方弁33を制御することで、第1循環回路C1においては、第2冷媒流路62から流出された冷媒が第3冷媒流路63に流入せず、全て第4冷媒流路64に流入する構成としている。これは、ヒータコア51に流入する冷媒が、ラジエータ30で冷却されることを防いでいる。
【0041】
制御ユニット100は、CPU(Central Processing Unit)101と、メモリ102と、入出力回路103とを主に備えている。入出力回路103は、各種アクチュエータや各種センサを制御用信号線(図示せず)を介して接続している。各種アクチュエータとしては、2つの電動ファン31,32、電気ヒータ55、2つのポンプ32,54、2つの三方弁33,38等がある。各種センサとしては、各種の温度センサや電圧センサ(図示せず)や電流センサ(図示せず)等がある。本実施例では、燃料電池スタック20の冷媒流入口に設けられた第1温度センサ34、燃料電池スタック20の冷媒流出口に設けられた第2温度センサ35、ヒータコア51の冷媒流入口に設けられた第3温度センサ56、ヒータコア51の冷媒流出口に設けられた第4温度センサ57、車内温度センサ(図示せず)、車外温度センサ(図示せず)、日射量センサ(図示せず)等が各種温度センサとして設けられている。
【0042】
メモリ102には、主として空調システム10を制御するための図示しないコンピュータプログラムが格納されており、CPU101は、このコンピュータプログラム(例えば、後述する運転モード切換処理のコンピュータプログラム)を実行することにより、第1演算部111,第2演算部112,および指令制御部113として機能する。また、メモリ102には、後述する第1マップMP1と第2マップMP2とが予め格納されている。
【0043】
A2.ソフトウェア構成:
図4は、運転モード切換処理を示すフローチャートである。この運転モード切換処理は、制御ユニット100のCPU101により実行されるもので、所定時間毎に繰り返し実行される。処理が開始されると、CPU101は、まず、暖房要求があるか否かを判定する(ステップS110)。ここで、「暖房要求」とは、暖房が必要であるという要求である。詳しくは、ユーザにより図示しない操作パネルから行われたエアコンスイッチのオン操作と室内温度設定の操作とを受けて、暖房が必要であると判断されたときに、暖房要求があったものと判断する。
【0044】
ステップS110で、暖房要求がないと判定されたときには、CPU101は、第3運転モードに運転モードを切り換える処理を行う(ステップS120)。第3運転モードとは、冷媒流路の態様を図1の態様とした上で、電気ヒータ55をオフ状態とするモードである。詳しくは、CPU101は、第1三方弁33と第2三方弁25を制御して、独立状態で、かつ第4冷媒流路64を閉じて第3冷媒流路63を開いた状態とし、その上で、電気ヒータ55をオフ状態とする。この第3運転モードによれば、燃料電池スタック20にはラジエータ30で冷却された冷媒が流入し、ヒータコア51には加熱されていない冷媒が流入する。なお、第3運転モードにおいては、第2ポンプ54の運転を停止して、ヒータコア51への冷媒の流入を停止する構成とすることもできる。
【0045】
一方、ステップS110で、暖房要求があると判定されたときには、CPU101は、要求暖房熱量Qを算出する処理を行う(ステップS130)。要求暖房熱量Qは、要求される暖房能力の暖房を行うのに必要な熱量であり、周知の方法にて演算する。例えば、車内温度とユーザによる設定温度との差に、車外温度、日射量等を考慮して要求暖房熱量Qを算出する。
【0046】
ステップS130の実行後、CPU101は、燃料電池スタック20の冷媒流出口に設けられた第2温度センサ35から冷媒の温度TWを取り込む(ステップS140)。本実施例では、この第2温度センサ35の検出値を燃料電池の冷却水温の温度とするもので、上記冷媒の温度TWを、以下、FC冷却水温TWと呼ぶ。
【0047】
続いて、CPU101は、ステップS130で算出された要求暖房熱量QとステップS140で取り込んだFC冷却水温TWに基づいて、要求される暖房能力の暖房を連携状態(図3に示す状態で、前述したようにラジエータ30が関与しない状態。以下、同様)で行うとしたときのFC冷却水温TW*を推定する処理を行う(ステップS150)。連携状態では、燃料電池スタック20から流出した冷媒がヒータコア51に送られることから、燃料電池スタック20を循環する冷媒の温度は低下する。この低下量(以下、「FC冷却水温低下量」と呼ぶ)ΔTWは、要求暖房熱量Qと相関がある。
【0048】
図5は、FC冷却水温低下量ΔTWと要求暖房熱量Qとの相関を示すグラフである。横軸は要求暖房熱量Qを示し、縦軸はFC冷却水温低下量ΔTWを示す。図示するように、要求暖房熱量Qが大きくなるほど、FC冷却水温低下量ΔTWは漸次上昇する。このグラフは、実験等により予め求めることができ、第1マップMP1としてメモリ102に記憶される。ステップS150では、ステップS130で算出された要求暖房熱量Qを第1マップMP1に照らし合わせて、要求暖房熱量Qに対応するFC冷却水温低下量ΔTWを求め、その後、ステップS140で取り込んだFC冷却水温TWからFC冷却水温低下量ΔTWを引くことで、連携後のFC冷却水温TW*を推定する。
【0049】
続いて、CPU101は、ステップS140で取り込んだFC冷却水温(すなわち現在のFC冷却水温)TWとステップS160で求めた連携後の冷却水温TW*とに基づいて、FC冷却水温低下で増加するFC消費電力変化分ΔPを算出する(ステップS160)。
【0050】
図6は、燃料電池における冷却水温と消費電力との相関を示すグラフである。図6において、横軸は冷却水温(FC冷却水温)を示し、縦軸は消費電力(FC消費電力)を示す。FC冷却水温は、ステップS140で取り込んだFC冷却水温TWに相当する。ここで、FC消費電力は燃料電池の発生電力と同義である。
【0051】
図示するように、FC冷却水温TWが所定の温度(以下、「適正温度」と呼ぶ)TWαのとき、FC消費電力は最も小さくて済む。適正温度TWαは、予め定められた温度である。FC冷却水温TWが適正温度TWαより小さいとき、小さくなるほどFC消費電力は大きくなり、FC冷却水温TWが適正温度TWαより大きいとき、大きくなるほどFC消費電力は大きくなる。これは、燃料電池の発電性能は温度に依存し、適正温度TWαからずれると(大きくなっても小さくなっても)、発電性能が低下するためである。
【0052】
図6に示すグラフは、実験等により予め求めることができ、第2マップMP2としてメモリ102に記憶される。ステップS160では、ステップS140およびS150で取り込んだ現在のFC冷却水温TWと連携後のFC冷却水温TW*とを第2マップMP2に照らし合わせて、連携後のFC冷却水温TW*に対応するFC消費電力P2から、現在のFC冷却水温TWに対応するFC消費電力P1を引くことにより、FC冷却水温低下で変化するFC消費電力変化分ΔPを求める。図6の例では、FC消費電力変化分ΔPは正の値となる。
【0053】
その後、CPU101は、ステップS130で算出された要求暖房熱量Qに基づいて、要求される暖房能力の暖房を独立状態で行うとしたときの電気ヒータ55の消費電力Eを推定する処理を行う(ステップS170)。要求暖房熱量Qと電気ヒータ消費電力Eとは相関の関係があることから、ステップS170では、要求暖房熱量Qに正の定数αを掛けることにより電気ヒータ消費電力Eを求める。なお、電気ヒータ消費電力Eには上限があり、要求暖房熱量Qが所定の上限熱量Qmaxを上回ったときには、上限値Emaxとする。
【0054】
ステップS170の実行後、CPU101は、ステップS160で算出したFC消費電力変化分ΔPが、ステップS170で算出した電気ヒータ消費電力Eを下回るか否かを判定する(ステップS180)。ここで、FC消費電力変化分ΔPが電気ヒータ消費電力Eを下回ると判定されたときには、CPU101は、第1運転モードに運転モードを切り換える処理を行う(ステップS190)。第1運転モードとは、冷媒流路の態様を図3に示した連携状態とした上で、電気ヒータをオフ状態とするモードである。詳しくは、CPU101は、第1三方弁33と第2三方弁25を制御して、連携状態で、かつ第3冷媒流路63を閉じて第4冷媒流路64を開いた状態とし、その上で、電気ヒータをオフ状態とする。この第1運転モードによれば、燃料電池スタック20の廃熱を利用してヒータコア51による暖房を行うことができる。
【0055】
すなわち、ステップS180で、FC消費電力変化分ΔPが電気ヒータ消費電力Eを下回ると判定されたということは、暖房に際してFC消費電力を利用した方が、消費電力が少なくて済むということであることから、ステップS190で、連携状態とすることで、燃料電池スタック20の廃熱を利用するように構成している。
【0056】
一方、FC消費電力変化分ΔPが電気ヒータ消費電力E以上であると判定されたときには、CPU101は、第2運転モードに運転モードを切り換える処理を行う(ステップS195)。第2運転モードとは、冷媒流路の態様を図2の態様とした上で、電気ヒータ55をオン状態とするモードである。詳しくは、CPU101は、第1三方弁33と第2三方弁25を制御して、独立状態で、かつ第3冷媒流路63を閉じて第4冷媒流路64を開いた状態とし、その上で、電気ヒータ55をオフ状態とする。この第2運転モードによれば、燃料電池スタック20にはラジエータ30を介していない冷媒が流入し、ヒータコア51には電気ヒータ55により加熱された冷媒が流入する。
【0057】
すなわち、ステップS180で、FC消費電力変化分ΔPが電気ヒータ消費電力E以上であると判定されたということは、暖房に際して電気ヒータ55を利用した方が、消費電力が少なくて済むということであることから、ステップS195で、独立状態とした上で電気ヒータ55の熱を利用するように構成している。
【0058】
ステップS120、S190、またはS195の実行後、CPU101は、処理を「リターン」に進めて、この運転モード切換処理を一旦終了する。
【0059】
以上のように構成した運転モード切換処理におけるステップS150およびS160の処理が第1演算部111(図1)に、ステップS170の処理が第2演算部112(図1)に、ステップS180ないしS195の処理が指令制御部113(図1)にそれぞれ相当する。また、本実施例における第1三方弁33と第2三方弁25と電気ヒータ55等が適用例1における「運転モード切換部」に相当する。
【0060】
A3.実施例効果:
以上、詳述したように、第1実施例の空調システム10によれば、要求される暖房能力の暖房を燃料電池スタック20の廃熱を利用して暖房を行う第1運転モードで行うとしたときのFC消費電力変化量ΔPと、要求される暖房能力の暖房を電気ヒータ55の熱を利用して暖房を行う第2運転モードで行うとしたときの電気ヒータ55の消費電力とを比較して、前者が後者より小さい場合に、燃料電池スタック20の廃熱を利用して暖房がなされ、前者が後者以上である場合に、電気ヒータ55の熱を利用して暖房がなされることになる。このために、燃料電池スタック20と電気ヒータ55のうちから、消費電力が少ない方の熱源を選択して利用することができる。したがって、本実施例の空調システム10によれば、システム全体でのエネルギー効率を高めることができ、電費を向上することができる。
【0061】
B.第2実施例:
本発明の第2実施例について、次に説明する。第2実施例におけるハードウェア構成は第1実施例と同一である。第1実施例と比較して相違するのは、ソフトウェア構成である運転モード切換処理の内容だけである。運転モード切換処理について、以下に詳しく説明する。なお、説明において、第1実施例と同一の構成については第1実施例と同一の符号を用いる。
【0062】
図7は、運転モード切換処理を示すフローチャートである。この運転モード切換処理は、第1実施例と同じく、制御ユニット100のCPU101により実行されるもので、所定時間毎に繰り返し実行される。処理が開始されると、CPU101は、まず、暖房要求があるか否かを判定する(ステップS210)。このステップS210の処理は、第1実施例におけるステップS110の処理と同一である。
【0063】
ステップS210で、暖房要求がないと判定されたときには、CPU101は、第1実施例と同じく、第3運転モードに運転モードを切り換える処理を行う(ステップS220)。一方、ステップS210で、暖房要求があると判定されたときには、CPU101は、燃料電池スタック20の冷媒流出口に設けられた第2温度センサ35から冷媒の温度(FC冷却水温)TWを取り込む(ステップS230)。このステップS230の処理は、第1実施例におけるステップS140の処理と同一である。
【0064】
ステップS230の実行後、CPU101は、ステップS230で取り込んだFC冷却水温TWが、予め定めた所定値TWαより大きいか否かを判定し(ステップS240)、FC冷却水温TWが所定値TWαより大きいと判定されたときには、第1運転モードに運転モードを切り換える処理を行う(ステップS250)。このステップS250の処理は、第1実施例におけるステップS190の処理と同一である。一方、ステップS240で、FC冷却水温TWが所定値TWα以下であると判定されたときには、CPU101は、第2運転モードに運転モードを切り換える処理を行う(ステップS260)。このステップS260の処理は、第1実施例におけるステップS195の処理と同一である。
【0065】
前記所定値TWαは、第1実施例の図6において説明した適正温度TWαに相当する。一般に、燃料電池の廃熱をヒータコアの熱源として利用する場合、FC冷却水温が低くなればなるほど暖房効率が低下する。このため、本実施例では、適正温度TWα、すなわち、消費電力が最も小さくなる適正温度TWαよりFC冷却水温TWが大きいときには、ステップS250により第1運転モードに切り換えることにより、燃料電池スタック20の廃熱をヒータコア51の熱源として利用する構成とし、一方、FC冷却水温TWが適正温度TWα以下であるときには、ステップS260により第2運転モードに切り換えることにより、電気ヒータ55の熱をヒータコア51の熱源として利用する構成とした。
【0066】
したがって、この第2実施例によれば、燃料電池スタック20の廃熱をヒータコア51の熱源として利用したときに効率の悪い冷却水温の領域では、電気ヒータ55の熱を利用することから、システム全体でのエネルギー効率を高めることができ、電費を向上することができる。
【0067】
C.変形例:
なお、この発明は上記の第1および第2実施例やそれらの変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0068】
・第1変形例:
上記各実施例では、燃料電池スタック20の冷却水温を、燃料電池スタック20の冷媒流出口に設けられた第2温度センサ35の検出値としているが、必ずしもこれに限る必要はなく、例えば、燃料電池スタック20の冷媒流入口に設けられた第1温度センサ34の検出値でもよく、燃料電池スタック20の冷却水温に対応するパラメータであればいずれのパラメータとすることもできる。
【0069】
・第2変形例:
上記第2実施例では、FC冷却水温TWの閾値を、FC消費電力が最も小さくなる適正温度TWαとしていたが、必ずしもこれに限る必要はなく、燃料電池スタック20の廃熱を熱源として利用したときに効率の悪くなる領域を判定可能な閾値であれば、どのような所定値とすることもできる。
【0070】
・第3変形例:
上記各実施例では、2つの循環回路C1,C2を連携するために、第2三方弁58を制御して、第1循環回路C1と第2循環回路C2とを物理的に接続して、2つの循環回路C1,C2間で冷媒を行き来させていたが、本発明はこれに限定されるものではない。第1循環回路C1と第2循環回路C2とに接続された熱交換機を配置し、かかる熱交換器を介して2つの循環回路C1,C2を互いに連携させる(熱のやりとりを行わせる)こともできる。この場合、第1循環回路C1,C2の少なくとも一方において、熱交換機をバイパスする流路を設け、かかるバイパス流路に冷媒を流通させることによって、独立状態を形成することもできる。
【0071】
・第4変形例:
上記各実施例では、制御ユニット100は、燃料電池スタック20を有する冷却装置用、および車室内の送風に利用される空調機構50用の両方に利用されていたが、それぞれ個別の制御ユニットにより構成してもよい。この場合、各制御ユニット間で必要な情報(温度センサ35の検出値等)を通信する構成とするのが好ましい。
【0072】
・第5変形例:
上記各実施例では、空調システム10は、電気自動車に搭載されて用いられていたが、これに換えて、ハイブリッド自動車、船舶、ロボットなどの各種移動体に適用することもできる。また、燃料電池スタック20を定置型電源として用い、空調システム10をビルや一般住宅等の建物における空調装置として適用することもできる。
【0073】
・第6変形例:
上記各実施例では、電気ヒータ55は、燃料電池スタック20から発生する電気によって駆動される構成としていたが、これに換えて、電気ヒータ用の別電源を設ける構成としてもよい。この構成においても、前記別電源を含めたシステム全体でのエネルギー効率を高めることができる。
【0074】
・第7変形例:
上記各実施例では、燃料電池スタック20として固体高分子型燃料電池を用いたが、リン酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、固体酸化物形燃料電池等、種々の燃料電池を用いることができる。
【0075】
・第8変形例:
上記各実施例において、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。また、これとは逆に、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよい。
【0076】
なお、前述した各実施例および各変形例における構成要素の中の、独立請求項で記載された要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0077】
10…空調システム
20…燃料電池スタック
22…燃料ガス流路
24…酸化剤ガス流路
25…第2三方弁
30…ラジエータ
31…第1電動ファン
32…第1ポンプ
33…第1三方弁
34…第1温度センサ
35…第2温度センサ
40…負荷
50…空調機構
51…ヒータコア
52…第2電動ファン
53…ケーシング
54…第2ポンプ
55…電気ヒータ
56…第3温度センサ
57…第4温度センサ
58…第2三方弁
61…第1冷媒流路
62…第2冷媒流路
63…第3冷媒流路
64…第4冷媒流路
65…第5冷媒流路
66…第6冷媒流路
67…第7冷媒流路
68…第8冷媒流路
69…第9冷媒流路
100…制御ユニット
101…CPU
102…メモリ
103…入出力回路
111…第1演算部
112…第2演算部
113…指令制御部
Q…要求暖房熱量
E…電気ヒータ消費電力
C1…第1循環回路
C2…第2循環回路
TW…FC冷却水温
TWα…適正温度
MP1…第1マップ
MP2…第2マップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池を備える燃料電池搭載装置に設けられる空調装置であって、
ヒータコアを通って冷媒を循環させる第1循環回路と、
前記燃料電池を通って冷媒を循環させる第2循環回路と、
前記第1循環回路に配置され、前記第1循環回路中の冷媒を加熱し得る電気ヒータと、
前記第1循環回路と前記第2循環回路とを連携することで、前記燃料電池の廃熱を利用して暖房を行う第1運転モードと、前記第1循環回路と前記第2循環回路とを切り離し前記電気ヒータをオン状態とすることで、前記電気ヒータの熱を利用して暖房を行う第2運転モードとの間で、運転モードの切り換えを行う運転モード切換部と
前記運転モード切換部を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
要求される暖房能力の暖房を前記第1運転モードで行うとしたときに、前記冷媒の温度の変化に起因する前記燃料電池の消費電力の変化量を推定する第1演算部と、
前記要求される暖房能力の暖房を前記第2運転モードで行うとしたときに、前記電気ヒータの消費電力を推定する第2演算部と、
前記第1演算部により推定された前記変化量が前記第2演算部により推定された前記電気ヒータの消費電力より小さい場合に、前記第1運転モードを採用する旨の指令を前記運転モード切換部に送り、前記第1演算部により推定された前記変化量が前記第2演算部により推定された前記電気ヒータの消費電力以上である場合に、前記第2運転モードを採用する旨の指令を前記運転モード切換部に送る指令制御部と
を備えることを特徴とする空調装置。
【請求項2】
燃料電池を備える燃料電池搭載装置に設けられる空調装置であって、
ヒータコアを通って冷媒を循環させる第1循環回路と、
前記燃料電池を通って冷媒を循環させる第2循環回路と、
前記第1循環回路に配置され、前記第1循環回路中の冷媒を加熱し得る電気ヒータと、
前記第1循環回路と前記第2循環回路とを連携することで、前記燃料電池の廃熱を利用して暖房を行う第1運転モードと、前記第1循環回路と前記第2循環回路とを切り離し前記電気ヒータをオン状態とすることで、前記電気ヒータの熱を利用して暖房を行う第2運転モードとの間で、運転モードの切り換えを行う運転モード切換部と
前記運転モード切換部を制御する制御部と、
前記燃料電池の冷媒の温度を検出する温度センサと、
を備え、
前記制御部は、
前記温度センサにより検出された前記冷媒の温度が所定値より大きいか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記冷媒の温度が所定値より大きいと判定された場合に、前記第1運転モードを採用する旨の指令を前記運転モード切換部に送り、前記冷媒の温度が所定値以下であると判定された場合に、前記第2運転モードを採用する旨の指令を前記運転モード切換部に送る指令制御部と
を備えることを特徴とする空調装置。
【請求項3】
請求項2に記載の空調装置であって、
前記燃料電池の冷却水温と燃料電池の消費電力との相関において、燃料電池の消費電力が最小となるときの冷却水温を、前記所定値として予め定めた、空調装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の空調装置であって、
前記燃料電池搭載装置は、燃料電池搭載車両であり、
前記電気ヒータは、燃料電池から発生する電気によって駆動される構成である、空調装置。
【請求項5】
燃料電池と、
ヒータコアを通って冷媒を循環させる第1循環回路と、
前記燃料電池を通って冷媒を循環させる第2循環回路と、
前記第1循環回路に配置され、前記第1循環回路中の冷媒を加熱し得る電気ヒータと、
前記第1循環回路と前記第2循環回路とを連携することで、前記燃料電池の廃熱を利用して暖房を行う第1運転モードと、前記第1循環回路と前記第2循環回路とを切り離し前記電気ヒータをオン状態とすることで、前記電気ヒータの熱を利用して暖房を行う第2運転モードとの間で、運転モードの切り換えを行う運転モード切換部と
を備える燃料電池搭載装置の空調制御方法において、
要求される暖房能力の暖房を前記第1運転モードで行うとしたときに、前記冷媒の温度の変化に起因する前記燃料電池の消費電力の変化量を推定し、
前記要求される暖房能力の暖房を前記第2運転モードで行うとしたときに、前記電気ヒータの消費電力を推定し、
前記推定された前記燃料電池の消費電力の変化量が前記推定された前記電気ヒータの消費電力より小さい場合に、前記第1運転モードを採用する旨の指令を前記運転モード切換部に送り、前記推定された前記燃料電池の消費電力の変化量が前記推定された前記電気ヒータの消費電力以上である場合に、前記第2運転モードを採用する旨の指令を前記運転モード切換部に送ることを特徴とする空調制御方法。
【請求項6】
燃料電池と、
ヒータコアを通って冷媒を循環させる第1循環回路と、
前記燃料電池を通って冷媒を循環させる第2循環回路と、
前記第1循環回路に配置され、前記第1循環回路中の冷媒を加熱し得る電気ヒータと、
前記第1循環回路と前記第2循環回路とを連携することで、前記燃料電池の廃熱を利用して暖房を行う第1運転モードと、前記第1循環回路と前記第2循環回路とを切り離し前記電気ヒータをオン状態とすることで、前記電気ヒータの熱を利用して暖房を行う第2運転モードとの間で、運転モードの切り換えを行う運転モード切換部と
を備える燃料電池搭載装置の空調制御方法において、
前記燃料電池の冷媒の温度を検出し、
前記検出された前記冷媒の温度が所定値より大きい場合に、前記第1運転モードを採用する旨の指令を前記運転モード切換部に送り、前記冷媒の温度が所定値以下であると判定された場合に、前記第2運転モードを採用する旨の指令を前記運転モード切換部に送ることを特徴とする空調制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−178365(P2011−178365A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47494(P2010−47494)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】