空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法及び測定装置並びに空間を移動する際の回転方向と回転量測定に適した球体
【課題】 任意の回転方向で回転しながら空間を移動する球体の、回転量と回転方向を高精度で迅速に測定する測定装置と測定方法、並びに回転方向と回転量を測定するために好適な球体を提供できる。
【解決手段】 球体2に、任意の基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントから構成される計測用マーク12を1個又は2個以上付す。移動する球体2の第1の画像を第1の撮影手段6で撮影し、第2の画像を第2の撮影手段8で撮影する。第1の画像と第2の画像に撮影されている計測用マーク12を検出し、計測用マーク12の位置の変化量から球体の回転方向と回転量を計算する。
【解決手段】 球体2に、任意の基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントから構成される計測用マーク12を1個又は2個以上付す。移動する球体2の第1の画像を第1の撮影手段6で撮影し、第2の画像を第2の撮影手段8で撮影する。第1の画像と第2の画像に撮影されている計測用マーク12を検出し、計測用マーク12の位置の変化量から球体の回転方向と回転量を計算する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する技術に関する。特に、特徴あるマークを付した球体を用いて、球体の移動中の画像を撮影し、画像から球体の回転方向と回転量を精度良く測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
球体が空間を移動する場合に回転運動が加わると、その回転方向と回転量は、球体の飛距離と飛行方向に重大な影響を及ぼす。例えば野球においては、ピッチャーは、ボールに様々な方向の回転を与えることで、その軌道が様々に変化する変化球を投げることができる。また、選手がボールを打つときには、ボールにバックスピンかかりすぎると、ボールは上昇し過ぎて飛距離が伸びない。また、ボールが地面から垂直方向の軸を中心として回転する回転がかかると、ボールは回転方向に曲がって飛ぶ。このように、ボールが空間を移動するときの回転特性を知ることによって、ボールの飛距離と飛行方向に対する影響を確認することが可能となる。ひいては、好ましい飛距離と飛行方向を得るためにどのような回転方向と回転量をボールに与えればよいのかを推定し、好ましい回転方向と回転量を与える運動用具の選定や、選手の投球フォームや打撃フォームの修正に役立てることができる。そこで、空間を移動するボール等の球体の回転方向と回転量を測定する技術が開発されている。
【0003】
特許文献1には、3以上の反射部分を設けた球体と、感光性パネルを有する2台以上のカメラと、短い時間間隔で複数回発光するフラッシュと、カメラの画像から球体の位置と速度を計算するコンピュータを備えた球体の飛行特性を測定するモニターシステムが開示されている。特許文献1に示されるモニターシステムは、球体が打ち出された直後と、そこから短い時間が経過した後の合計2回フラッシュを発光させて球体の反射部分に反射させ、感光性パネルで球体の反射光を撮影する。そして1枚の画像に撮影された最初に撮影された反射光の位置と、2回目に撮影された反射光の位置の変化から、球体の移動速度と回転速度を計算する。
【0004】
特許文献1のモニターシステムに用いられる球体の反射部分の形状は、いずれも同一の円形形状をとる形態が開示されている。また、反射部分の配置は、6個の反射部分のうち5個を正五角形の頂点に配置し、残る1個を正五角形の中心に配置する構成が開示されている。反射部分は、球体の一部分にのみ配置されているために、回転速度を測定するためには、撮影時に常にカメラに反射部分が写るように、球体の向きを制御しなければならない。このため実際には、最初に球体を位置決めして静置してから球体を空間に移動させなければならず、また、投げられたボールを打ち返す場合の測定のような、球体のカメラに対する向きを制御することが困難な測定には適用できない。更に、特許文献1の球体の反射部分の配置は、中心の反射部分を回転の中心とすると、72°回転させるたびに元の配置と同一の位置に反射部分が配置されるために、回転角が大きな場合には正確な回転速度の計測が困難である。加えて、特許文献1のカメラは、同一の感光性パネルに飛行時の球体を2回撮影するために、球体の移動速度が速い場合には、時間間隔の短い撮影しか行うことができない。
【0005】
特許文献2には、回転する球体を一方向から所定の時間間隔で2回撮影し、最初の画像と2回目の画像の所定の2点の位置の変化から球体の回転量を演算する回転量測定装置及び測定方法が開示されている。
【0006】
特許文献2の回転量測定装置及び測定方法に用いられる球体の所定の2点は、実施例中では点で示されている。撮影中の球体の回転方向と回転量によっては、このなかの1点若しくは2点が画像に写らないことがあり、その場合には回転量の測定が不可能である。また、球体の回転方向によっては、最初の画像の点が2回目の画像の中のどちらの点に対応しているかの判別が困難になり、点を誤って識別することによって不正確な回転量を計算してしまう危険性を潜在的に有している。
【0007】
更に、特許文献2の回転量測定方法では、撮影された画像から2点を目視で識別してマウス若しくはデジタイザーを用いて手作業で位置を指定している。このような目視による識別と手作業による位置指定は、処理に時間を要し、又誤差が大きい。従って繰り返し回転量を測定する方法及び装置には適用が困難である。
【0008】
特許文献3には、ゴルフボールの表面に凸多角形の識別用マークを付し、移動する球体を2台のカメラで撮影し、得られた最初の画像と2回目の画像の識別用マークの角の位置の変化から球体の回転運動を演算する回転運動測定装置が開示されている。
【0009】
特許文献3の回転運動測定方法に用いられる記号は、明細書中で二等辺三角形の形状が開示されている。また、球体に1個の二等辺三角形が付される構成が開示されている。このために、特許文献3の球体を用いて回転運動を測定するためには、特許文献1のモニターシステムと同様に、カメラに対する球体の向きを制限しなければならない。従って、特許文献3の回転運動測定装置は、測定前に球体を位置決めする工程が必須であり、且つ回転方向と回転量が不確定な測定や回転量が大きな測定には適用できない。また、回転量を測定するための二等辺三角形は、測位ポイントとなる頂点の位置が近接しているために、ボールが回転して二等辺三角形がボールの端部で写るような場合には、頂点の検出精度が悪くなり、回転量の検出誤差が大きくなる恐れを有している。
【0010】
特許文献4には、球体の表面に方向性を備えた中心マークと、中心マークを取り囲む3個以上の回転角度算出マークを付して、移動する球体をカメラで撮影し、得られた最初の画像と2回目の画像の識別用マークの角の位置の変化から球体の位置と速度を演算する回転運動計測方法及び計測装置が開示されている。
【0011】
特許文献4の回転運動計測方法及び計測装置においては、まず中心マークを認識した後に、その周囲の3個以上の回転角度算出マークを認識して、その位置の変化から回転運動の量を求めている。画像から合計4個のマークを識別して位置を確定する処理には時間がかかるために、繰り返し回転運動を測定する方法及び装置には適用が困難である。
【0012】
また、特許文献4の球体には、回転角度算出マークが1個のみ付された形態のみが開示されている。このため、特許文献1及び特許文献3の技術と同様に、測定前に球体を位置決めする工程が必須であり、且つ回転方向と回転量が不確定な測定や回転量の大きな測定には適用できない。
【0013】
【特許文献1】特許第2950450号公報
【特許文献2】特許第2810320号公報
【特許文献3】特許第3235987号公報
【特許文献4】特開2001−304830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するために創作されたものであり、高精度で且つ迅速に空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定できる技術を提供する。更に、球体が任意の回転方向で且つ大きな回転量で回転しながら空間を移動する場合でも、同様に高精度で迅速に球体の回転方向と回転量を測定可能な測定方法及び測定装置並びに当該測定に特に適した球体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(課題を解決するための好ましい手段と作用)
請求項1の発明は、空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する方法であって、移動する球体の表面に、任意の基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントから構成される計測用マークを付す工程と、移動する球体の第1の画像を撮影する第1の撮影工程と、第1の画像の撮影時刻よりも後に、移動する球体の第2の画像を撮影する第2の撮影工程と、第1の画像と第2の画像間の計測用マークの位置の変化量から、球体の回転方向と回転量を計算する工程を備えていることを特徴とする。
【0016】
第1の撮影工程によって得られる第1の画像と、第2の撮影工程によって得られる第2の画像には、任意の基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントを備えた計測用マークを含む球体の画像が記録される。計測用マークの中の基準記号に、画像内で判別しやすい記号を用いることにより、各画像に含まれる計測用マークの位置は、迅速且つ高精度に検出される。基準記号には、画像から識別が可能な任意の文字と符号の適用が可能である。
【0017】
球体が回転しながら移動した場合には、第1の画像と第2の画像の撮影時刻に時間差があることから、第1の画像と第2の画像間の間では、計測用マークの位置に変化が生じる。この変化量から球体の回転方向と回転量を計算することができる。
【0018】
請求項2の発明は、第1の撮影工程と第2の撮影工程の撮影時刻を指示する工程と、第1の画像を指示された時刻で撮影する第1の撮影工程と、第2の画像を指示された時刻で撮影する第2の撮影工程と、第1の画像の撮影時刻と第2の画像の撮影時刻の時間差と、第1の画像と第2の画像間の計測用マークの位置の変化量から、球体の回転方向と単位時間あたりの回転量を計算する工程をさらに備えていることを特徴とする。
【0019】
本発明により、第1の撮影工程と第2の撮影工程を所定の時刻に行い、撮影時刻の明らかな第1の画像と第2の画像を得ることができる。撮影時刻の明らかな第1の画像と第2の画像を用いて球体の回転量を計算することにより、球体の回転方向に加えて単位時間あたりの回転量即ち回転速度が測定可能となる。
【0020】
請求項3の発明は、第1の撮影工程と第2の撮影工程の撮影時刻を指示する工程が、所定の間隔で設けられた第1の球体検出工程と第2の球体検出工程が検出した球体の通過時刻から球体の移動速度を算出する工程と、算出された球体の移動速度に基づいて、第1の撮影工程に好適な第1の画像の撮影時刻を計算して指示する工程と、第2の撮影工程に好適な第2の画像の撮影時刻を計算して指示する工程を備えていることを特徴とする。
【0021】
本発明は、第1と第2の撮影工程の前に、実際に撮影する球体の移動速度を検出している。実際の球体の移動速度が明らかとなるために、第1の撮影工程のために最も好ましい位置を球体が通過する時刻と、第2の撮影工程のために最も好ましい位置を球体が通過する時刻とをそれぞれ正確に計算することが可能となる。この計算結果に基づいて第1の撮影工程と第2の撮影工程を実施することにより、高品質で且つ計測用マークの特定が非常に容易な第1の画像と第2の画像を撮影することができる。
【0022】
計測用マークを構成する基準記号には、点対称性のない文字を使用することができる。また、第1の測位ポイントを基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付し、第2の測位ポイントを矩形領域の他の頂点に配置することができる。
尚、本明細書及び請求の範囲中において、この「矩形領域の頂点」とは、球体に付された基準記号をその正面から撮影した画像上において基準記号を包含する適当な大きさの矩形を想定した場合にその頂点に対応する位置を言うものである。係る位置は基準記号の中心から予め定められた所定の方向及び所定の距離にあり、基準記号の中心と隣り合う矩形領域の頂点を結ぶ図形は、基準記号をその正面から撮影した画像上において二等辺三角形を構成する位置にあることを特徴とする。
【0023】
第1の測位ポイントと第2の測位ポイントを、基準記号から離れた位置に配置することで、各測位ポイントの位置の識別は、より容易になる。第1の測位ポイントを基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付し、第2の測位ポイントを矩形領域の他の頂点に配置することで、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントは、基準記号を囲む矩形の一辺の両端、若しくは基準記号を囲む矩形の対角線上に配置される。このような配置を取ることで、各測位ポイントを画像から検出する作業は基準記号の矩形領域の頂点を重点的に行えば良く、効率よく迅速に測位ポイントの検出が行われる。
【0024】
尚、ここでいう点対称性のない文字とは、文字上でどのような回転中心の点をとって回転させた場合でも、360゜回転させないともとの文字と一致する形状とならない文字のことをいう。また、ここでいう文字とは、ひらがな、カタカナ、漢字、数字、アルファベット、JIS第一水準に規定される簡単な記号と罫線文字などの字の総称である。
【0025】
計測用マークを構成する基準記号に点対称性を有する文字を適用し、第1の測位ポイントを基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付し、第2の測位ポイントを矩形領域の第1の測位ポイントと隣り合う頂点に配置することができる。
【0026】
ここでいう点対称性のある文字とは、文字上に一定の回転中心の点を設定すると、所定の角度で回転させた時にもとの文字と一致する形状となる文字のことをいう。例えば、H,Iのようなアルファベットは、180゜回転させると元の文字と一致する形状となるので、本願発明においては点対称性を有する文字として扱う。点対称性を有する文字を基準記号に適用する場合には、第1の測位ポイントを基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付し、第2の測位ポイントを矩形領域の第1の測位ポイントと隣り合う頂点に配置することで、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントが実質的に基準記号を囲む矩形の一辺の両端に配置されることが好ましい。計測用マークがこのような配置の基準記号と第一の測位ポイントと第二の測位ポイントから構成されることにより、計測用マーク全体としては点対称性を有さなくなる。この結果、仮に球体が第一の撮影工程と第二の撮影工程の間で基準記号が180゜回転していたとしても、画像から第一の測位ポイントと第二の測位ポイントの位置は、基準記号との位置関係から誤りなく識別することができる。
【0027】
請求項6の発明は、第1の画像と第2の画像の中の計測用マークの位置の変化量から、移動する球体の回転方向と回転量を計算する工程に関する。球体の回転方向と回転量を計算する工程は、以下の工程を備えることができる。まず、基準記号の画像を数値化したモデルデータ、及び基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの相対的な位置と距離のデータから構成される計測用マークの配置データを登録する。ここで行われるデータの登録は、初めて回転量と回転方向の測定を行う際に予め実行しておけば、同一のデータをそのまま使い続けることが可能である。また、測定の都度使用する球体に対応したデータを登録することや、球体の基準記号の種類等を一部変更した際に変更分のデータの追加することも可能である。
【0028】
次に、第1の画像上に全体座標系を定義し、第1の画像から球体の外周を識別して、画像の中の球体の位置を特定する。第1の画像の球体の画像の範囲で基準記号とモデルデータのパターンマッチングを行って、基準記号の位置を特定した後に、基準記号の位置と計測用マークの配置データに基づいて第1の測位ポイントを画像上でサーチして位置を検出し、検出した第1の測位ポイントの全体座標系における座標値を記憶する。次に、基準記号の位置と計測用マークの配置データに基づいて第2の測位ポイントを画像上でサーチして位置を検出し、検出した第2の測位ポイントの全体座標系における座標値を記憶する。次に、第1の画像の球体の中心の位置を特定し、球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義し、第1の画像の第1の測位ポイントの座標値と、第2の測位ポイントの座標値を全体座標系から局所座標系の値に変換して記憶する。第2の画像についても、第1の画像と同様の工程によって第2の画像の第1の測位ポイントの座標値と第2の測位ポイントの座標値を記憶し、第1の画像の局所座標系における第1及び第2の測位ポイントの座標値と、第2の画像の局所座標系における第1及び第2の測位ポイントの座標値の変化量から、球体の回転方向と回転量を計算する工程を備えることで、第1の画像と第2の画像の中の計測用マークの位置の変化量から、移動する球体の回転方向と回転量を計算できる。
【0029】
本発明の第1の画像と第2の画像の中の計測用マークの位置の変化量から、移動する球体の回転方向と回転量を計算する工程では、画像の中の球体の画像の範囲で基準記号とモデルデータのパターンマッチングを先に行って、基準記号の位置を特定する。基準記号に識別が容易な記号を使用することにより、パターンマッチングの精度を容易に向上させることが可能であり、また短時間のパターンマッチングで効率よく記号を識別して位置を特定することが可能である。更に本願発明においては、一つの画像の中で位置を特定する作業の回数は3回であり、短時間の画像処理で球体の回転方向と回転量を計算するために必要な座標値を得ることができる。
【0030】
第1の画像の局所座標系における第1及び第2の測位ポイントの座標値と、第2の画像の局所座標系における第1及び第2の測位ポイントの座標値の変化量から球体の回転方向と回転量を計算する工程は、一般的なデジタル画像処理の座標変換アルゴリズムに沿って行われる。この座標変換アルゴリズムは、市販の3次元のCADソフトウェアあるいは汎用の数値演算ソフトウェアに組み込まれており、ソフトウェアのなかで計算を実行することにより3次元の球体の回転方向と回転量を得ることができる。
【0031】
請求項7の発明は、空間を移動する球体の回転方向と回転量を一層精度高く測定する方法である。本発明は、第1の撮影工程と、第2の撮影工程における撮影手段から球体までの距離を特定する工程と、特定された第1の撮影手段から球体までの距離から第1の画像の中の球体の正確な大きさを計算し、計測用マークを識別するためのパターンマッチングに使用するモデルデータを補正する工程と、特定された第2の撮影手段から球体までの距離から第2の画像の中の球体の正確な大きさを計算し、計測用マークを識別するためのパターンマッチングに使用するモデルデータを補正する工程を更に備えていることを特徴とする。
【0032】
撮影手段から球体までの距離は撮影の都度異なる場合があり、その場合には画像に記録されている計測用マークの大きさが画像毎に異なる結果となる。本発明においては、撮影工程毎に撮影手段から球体までの距離を測定して、その距離に基づいて、計測用マークとパターンマッチングを行うモデルデータに対する拡大、縮小等の補正をすることにより、より精度高く計測用マークを識別可能とする。
請求項8の発明は、空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する方法であって、移動する球体の表面に、2個以上の計測用マークを付す工程と、移動する球体の第1の画像を撮影する第1の撮影工程と、第1の画像の撮影時刻よりも後に、移動する球体の第2の画像を撮影する第2の撮影工程と、第1の画像と第2の画像間の計測用マークの位置の変化量から、球体の回転方向と回転量を計算する工程を備えている。本発明の球体に付される計測用マークは、任意の基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントとから構成されており、計測用マークは基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントを結ぶ直線で囲まれる領域が互いに重なり合うことなく配置されている。
【0033】
計測用マークを2個以上付すことにより、好適な計測用マークを選択して好適な位置に配置することで、より正確な計測を行うことができる。また球体が回転して画像にいずれか一方の計測用マークしか撮影されていない場合でも、回転方向と回転量の測定を行うことが可能となる。この結果、第1の撮影工程と第2の撮影工程の間の回転量が大きな球体であっても、回転方向と回転測定を行うことが可能となる。
【0034】
請求項9の発明は、空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する方法であって、第1の撮影工程と第2の撮影工程の撮影時刻を指示する工程と、第1の画像を指示された時刻で撮影する第1の撮影工程と、第2の画像を指示された時刻で撮影する第2の撮影工程と、第1の画像の撮影時刻と第2の画像の撮影時刻の時間差と、第1の画像と第2の画像間の計測用マークの位置の変化量から、球体の回転方向と単位時間あたりの回転量を計算する工程をさらに備えていることを特徴とする。本発明により、球体の回転方向に加えて単位時間あたりの回転量即ち回転速度が測定可能となる。
【0035】
請求項10の発明は、第1の撮影工程と第2の撮影工程の撮影時刻を指示する工程が、所定の間隔で設けられた第1の球体検出工程と第2の球体検出工程が検出した球体の通過時刻から球体の移動速度を算出する工程と、算出された球体の移動速度に基づいて、第1の撮影工程に好適な第1の画像の撮影時刻を計算して指示する工程と、第2の撮影工程に好適な第2の画像の撮影時刻を計算して指示する工程を備えていることを特徴とする。本発明により、第1と第2の撮影工程の前に、実際に撮影する球体の移動速度を検出して、移動速度に基づいて指示した時刻に第1の撮影工程と第2の撮影工程を実施することにより、高品質で計測用マークの特定が非常に容易な第1の画像と第2の画像を撮影することができる。
【0036】
請求項11の発明は、空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法であって、測定の対象となる球体に、計測用マークが6個以上付されており、全ての計測用マークの基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントを結ぶ直線で囲まれる領域の面積の合計値が、球体の表面積の10%以上であることを特徴とする。
【0037】
検証の結果、6個の計測用マークを付し、全ての計測用マークの基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントを結ぶ直線で囲まれる領域の面積の合計値が、球体の表面積の10%以上であれば、球体が移動中に任意の回転をした場合でも、第1の画像と第2の画像の両方に、ほぼ毎回少なくとも1個の計測用マークが撮影されることが明らかとなった。この結果、測定前に球体を位置決めする工程が不要となり、且つ移動中の球体が大きく回転する場合であっても、回転方向と回転量の測定を行うことが可能となった。
【0038】
請求項12の発明は、球体の表面に付される複数の計測用マークを構成する基準記号が、計測用マーク毎に全て異なる記号であり、第1の測位ポイントが基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付されており、第2の測位ポイントが矩形領域の他の頂点に付されており、計測用マークの矩形領域が球体の表面に重なり合うことなく配置されることを特徴とする。
【0039】
球体の表面に付される複数の計測用マークが、全て異なる記号を用いていることにより、最初の画像に対応する基準記号を、誤ることなく第2の画像の中で識別することが可能となる。またその矩形領域が重なることなく配置されることにより、計測用マークに属する測位ポイントを容易に判別することが可能となり、基準記号若しくは測位ポイントを誤って識別する危険性を事前に回避して、正確な回転方向と回転量の測定を行うことが可能となる。
【0040】
球体に付される2個以上の基準記号は、請求項13に示すように、全て点対称性のない文字とすることができる。また、請求項14に示すように、球体に付される基準記号の一部又は全部を、点対称性を有する文字で構成することができる。全て点対称性のない文字を基準記号に用いる場合には、第1の測位ポイントを基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付し、第2の測位ポイントを矩形領域の他の頂点に付し、計測用マークの矩形領域が球体の表面に重なり合うことなく配置することにより、計測用マークに属する測位ポイントを容易に判別することが可能となり、正確な回転方向と回転量の測定を行うことが可能となる。点対称性を有する文字の基準記号を用いる場合には、第1の測位ポイントを基準記号に対する矩形領域の頂点の1つに付し、第2の測位ポイントを矩形領域の第1の測位ポイントと隣り合う頂点に付し、計測用マークの矩形領域が球体の表面に重なり合うことなく配置することで、基準記号の文字の種類にかかわらず正確に回転方向と回転量の測定を行うことが可能となる。
【0041】
請求項15の発明は、第1の画像と第2の画像の中の計測用マークの位置の変化量から、移動する球体の回転方向と回転量を計算する工程に関する。2個以上の計測用マークが付された球体の回転方向と回転量は、以下の工程によって計算することができる。まず、全ての計測用マークに含まれる基準記号の画像を数値化したモデルデータ、及び基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの相対的な位置と距離のデータから構成される計測用マークの配置データを登録する。ここで行われるデータの登録は、初めて回転量と回転方向の測定を行う際に予め実行しておけば、同一のデータをそのまま使い続けることが可能である。また、測定の都度使用する球体に対応したデータを登録することや、球体の基準記号の種類等を一部変更した際に変更分のデータの追加することも可能である。
次に、第1の画像上に全体座標系を定義し、第1の画像から球体の外周を識別して、画像の中の球体の位置を特定する。第1の画像の球体の画像の範囲に含まれる全ての基準記号とモデルデータとのパターンマッチングを行って、基準記号を識別して位置を特定し、基準記号とモデルデータとの相関係数と、基準記号の種類と位置を記憶する。第1の画像に含まれる全ての基準記号について相関係数の高い順に順位付けをおこなう。第2の画像についても、第1の画像と同様の工程によって基準記号とモデルデータとの相関係数と、基準記号の種類と位置を記憶すると共に、第2の画像に含まれる全ての基準記号について相関係数の高い順に順位付けをおこなう。
【0042】
ここで、第1の画像に含まれる基準記号と第2の画像に含まれる基準記号の中から、基準記号の種類が一致し且つモデルデータとの相関係数の最も高い基準記号を選択する。
【0043】
次に、第1の画像から、選択された基準記号を含む計測用マークの第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの位置を特定し、第1の画像に球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義して、選択された基準記号を含む第1の画像の計測用マークの第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの位置を局所座標系に変換して記憶する。第2の画像についても同様に、選択された基準記号を含む計測用マークの第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの位置を特定し、第2の画像に球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義して、選択された基準記号を含む第2の画像の計測用マークの第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの位置を局所座標系に変換して記憶する。最後に、第1の画像の記憶された第1及び第2の測位ポイントと、第2の画像の記憶された第1及び第2の測位ポイントの変化量から、球体の回転方向と回転量を計算する。
【0044】
本発明は、第1の画像に含まれる基準記号と第2の画像に含まれる基準記号の中から、基準記号の種類が一致し且つモデルデータとの相関係数の最も高い基準記号を選択する工程を備えている。モデルデータとの相関係数の高い基準記号は、画像上でのゆがみ、ピントぼけが少なく、より正確に第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの位置を特定可能である。
【0045】
請求項16の発明は、第1の画像と第2の画像の中の計測用マークの位置の変化量から、移動する球体の回転方向と回転量を計算する工程に関する。2個以上の計測用マークが付された球体の回転方向と回転量は、以下の工程によって計算することができる。初めに、計測用マークの画像パターンを数値化したモデルデータを登録する。ここで行われるデータの登録は、初めて回転量と回転方向の測定を行う際に予め実行しておけば、同一のデータをそのまま使い続けることが可能である。また、測定の都度使用する球体に対応したデータを登録することや、球体の基準記号の種類等を一部変更した際に変更分のデータの追加することも可能である。
次に、第1の画像から球体の外周を識別して、球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義する。第1の画像の中の球体の画像の範囲に含まれる全ての計測用マークと、全てのモデルデータとのパターンマッチングを行って、計測用マークを識別して位置を特定し、モデルデータとの相関係数と、計測用マークの基準記号の種類と、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの局所座標系における座標値を記憶する。また、特定された第1の画像の全ての計測用マークについて相関係数の高い順に順位付けを行う。第2の画像についても同様に、球体の外周を識別して、球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義する。第2の画像の中の球体の画像の範囲に含まれる全ての計測用マークと、全てのモデルデータとのパターンマッチングを行って、計測用マークを識別して位置を特定し、モデルデータとの相関係数と、計測用マークの基準記号の種類と、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの局所座標系における座標値を記憶する。また、特定された第2の画像の全ての計測用マークについて相関係数の高い順に順位付けをする。
【0046】
記憶した第1の画像と第2の画像の計測用マークの中から、基準記号が一致し且つモデルデータとの相関係数の最も高い計測用マークの組み合わせを選択する。選択した計測用マークについて、第1の画像と第2の画像における第1及び第2の測位ポイントの変化量から、球体の回転方向と回転量を計算する。
【0047】
本発明の空間を移動する球体の回転方向と回転量の計算方法において予め入力するモデルデータは、基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントを一体化したパターンデータである。画像の中の計測用マークは、基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントを一個のデータとしてモデルデータと比較され、識別され、相関係数が求められる。
【0048】
このため本発明においては、各々の計測用マークで行われるパターンマッチングが1回だけであり、より迅速に球体の回転方向と回転量を計算することができる。また、基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントは、一個のデータとしてパターンマッチングされるために、画像の中で測位ポイントの一方が写っていないような場合には、モデルデータとの相関係数が低くなり、球体の回転方向と回転量の計算には利用されない。 これにより、より精度の高い球体の回転方向と回転量の測定が可能となる。
【0049】
請求項17の発明は、空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する方法であって、第1の撮影工程と、第2の撮影工程における撮影手段から球体までの距離を特定する工程と、特定された距離に基づいて第1の画像の中の球体の正確な大きさを計算することにより、計測用マークを識別するためのパターンマッチングに使用するモデルデータを補正する工程と、特定された距離に基づいて第2の画像の中の球体の正確な大きさを計算することにより、計測用マークを識別するためのパターンマッチングに使用するモデルデータを補正する工程を備えていることを特徴とする。撮影手段から球体までの距離は撮影の都度異なる場合があり、その場合には画像に記録されている計測用マークの大きさが画像毎に異なる結果となる。本発明においては、撮影工程毎に撮影手段から球体までの距離を測定して、その距離に基づいて、計測用マークとパターンマッチングを行うモデルデータを補正することにより、より精度高く計測用マークを識別可能とする。
【0050】
請求項18の発明は、空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する装置に関する。本発明の球体は、任意の記号と、その記号を囲む矩形領域の頂点の1つに配置される第1の測位ポイントと、矩形領域の他の頂点に配置される第2の測位ポイントからなる計測用マークが表面に配置されている。本発明の空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する装置は、移動する球体の第1の画像を撮影する第1の撮影手段と、移動する球体の第2の画像を撮影する第2の撮影手段と、第1の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置と第2の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置の変化量を検出し、検出結果から球体の回転方向と回転量を計算する手段を備えている。
【0051】
請求項19の空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する装置は、球体の移動速度を測定する手段と、球体の移動速度から第1の画像と第2の画像を撮影する好適な時刻を計算して指示する手段と、指示された時刻で第1の画像を撮影する第1の撮影手段と、指示された時刻で第2の画像を撮影する第2の撮影手段と、第1の画像の撮影時刻と第2の画像の撮影時刻の時間差と、第1の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置と、第2の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置の変化量から球体の回転方向と単位時間あたりの回転量を計算する手段を更に備えることを特徴とする。本手段を備えることにより、撮影時刻が明らかで、且つ高品質な球体の画像を得ることが可能となり、球体の回転方向に加えて単位時間あたりの回転量即ち回転速度が正確に測定可能となる。
【0052】
請求項20の空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する装置は、第1の画像の撮影時刻における第1の撮影手段から球体までの距離を特定し、第2の画像の撮影時刻における第2の撮影手段から球体までの距離を特定する距離特定手段と、距離特定手段の結果を入力して、第1の画像と第2の画像の中の球体の正確な大きさを計算し、各々の画像に対してパターンマッチングを行うモデルデータを補正する手段とをさらに備えている。 本手段を備えることにより、より正確なパターンマッチングを行うことが可能となり、空間を移動する球体の回転量即ち回転速度が一層正確に測定可能となる。
【0053】
請求項21の発明は、空間を移動する際の回転方向と回転量測定に適した球体に関する。本発明の球体は、表面に基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントとから構成される計測用マークが2個以上配置されており、基準記号は計測用マーク毎に全て異なる記号となっている。基準記号が点対称性のある文字又は記号である場合には、第1の測位ポイントが基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付されており、第2の測位ポイントが矩形領域の第1の測位ポイントと隣り合う頂点に配置されており、計測用マークの矩形領域が表面に重なり合うことなく配置されている。基準記号が点対称性のない文字又は記号である場合には、第1の測位ポイントが基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付されており、第2の測位ポイントが矩形領域の他の頂点に配置されており、計測用マークの矩形領域が表面に重なり合うことなく配置されている。
【0054】
本発明に係る球体は、回転しながら空間を移動する状態を撮影し、撮影した画像から第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの位置の変化量を測定することにより、空間を移動する際の回転方向と回転量測定を行うことが可能となる。
【0055】
請求項22の発明は、空間を移動する際の回転方向と回転量測定に適した球体に関する。本発明の球体は、複数の計測用マークが6個以上付されており、全ての計測用マークの基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントを結ぶ直線で囲まれる領域の面積が、表面積の10%以上であることを特徴とする。本球体を用いた回転方向と回転量の測定実験においては、本球体が移動中に任意の回転をした場合でも、移動中の球体を撮影した球体に計測用マークが写らずに測定ができない可能性をほぼ無くすことに成功した。
【0056】
尚、本明細書及び特許請求の範囲中において、「空間を移動する球体」としては、野球、テニス、ラグビー、ゴルフ、卓球、バレー、バスケットなどのボールが空中を移動する場合だけでなく、ボーリングやビリヤードなど、球体の下部がフィールド上に接して移動する場合も含むものとする。
【発明の効果】
【0057】
本願発明の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法、空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定装置及び回転方向と回転量測定用の球体を適用することにより、高精度で且つ迅速に球体の回転方向と回転量を測定することが可能となる。更に、球体が任意の回転方向で且つ大きな回転量で回転しながら空間を移動する場合でも、同様に高精度で迅速に球体の回転方向と回転量を測定可能な測定装置と測定方法、並びに回転方向と回転量を測定するために好適な球体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
以下に発明を実施するための最良の形態を列記する。
(形態1) 第1の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置及び第2の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置を識別し記憶する手段は、コンピュータで構成されており、そのコンピュータの記憶装置に画像を解析して各測位ポイントを識別し、測位ポイントの位置を記憶するプログラムが記憶されている。
(形態2) 第1の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置と第2の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置の変化量から球体の回転方向と回転量を計算する手段は、コンピュータで構成されており、そのコンピュータの記憶装置に回転方向と回転量を計算するプログラムが記憶されている。
(形態3) 第1の画像の撮影時刻における第1の撮影手段から球体までの距離を特定し、第2の画像の撮影時刻における第2の撮影手段から球体までの距離を特定する距離特定手段は、球体の進行方向の上方に配置されて空間を移動する球体の軌跡を撮影する手段と、撮影された画像に基づいて、第1の撮影手段から空間を移動する球体までの距離と、第2の撮影手段から空間を移動する球体までの距離を特定する手段で構成される。
(形態4) パターンマッチングに使用される画像データは、拡大、縮小、特定の平面あるいは曲面への投影等によって変形させる加工が可能である。
【実施例】
【0059】
本発明を、野球のボールをバットで打った場合の、打球の回転方向と回転量を測定するために利用する回転量及び回転方向の測定装置に適用した実施例を説明する。本発明が野球のボール以外の球体に適用できることは既に述べた通りである。
【0060】
(第1実施例) 図1に本実施例の回転量及び回転方向の測定装置1(以下、回転測定装置1と略する)とそれが配置された状態を模式的に示す。本実施例の回転測定装置1は、ボール2が最もよく飛ぶと推定される方向に沿って配置される。ボール2の飛ぶと推定される方向は、図1において破線で示されている。本願発明の回転測定装置1は、ボール2と、第1の撮影手段であるカメラ6と、第2の撮影手段であるカメラ8と、球体の回転方向と回転量などを計算する手段であるコンピュータ10と、トリガー信号発生手段4を備えている。カメラ6と、カメラ8と、コンピュータ10と、トリガー信号発生手段4は、通信回線で接続されている。
ボール2の表面には、1個の計測用マーク12が付されている。計測用マーク12を図4に示す。計測用マーク12は、基準記号14である文字Aと、第1の測位ポイント16と、第2の測位ポイント18から構成される。基準記号14である文字Aは点対称性のない文字である。第1の測位ポイント16は、基準記号14を囲む矩形領域の頂点の1つであって、基準記号14から左上に位置する頂点に付されている。第2の測位ポイント18は、基準記号14から左下に位置する頂点に付されている。
【0061】
一対のトリガー信号発生手段4は、トリガー信号発生器4aと光センサー4bと光源4cから構成されている。光センサー4bと光源4cは、ボール2が通過すると推定される経路を挟んで対向するように配置されており、光センサー4bは光源4cの光を受光する。トリガー信号発生器4aは、光センサー4bに接続されており、光センサー4bが出力する光量を入力する。バットで打たれたボール2が経路を通過した場合には、ボール2によって光源の光が遮られて光センサー4bに入射する光が減少し、光センサー4bの出力する値が小さくなる。トリガー信号発生器4aは、光センサー4bの出力値が所定の値以下になったとき、トリガー信号をコンピュータ10に入力する。コンピュータ10は、トリガー信号が入力されると、カメラ6とカメラ8のシャッターを開くタイミングを計算して、カメラ6とカメラ8に入力する。
【0062】
カメラ6とカメラ8はコンピュータ10から入力される撮影指令に基づいてシャッターを開く高速度撮影カメラである。カメラ6とカメラ8は、ボール2が通過すると推定される経路に向けられている。カメラ6は、ボール2が前を通過する時にシャッターを開いて第1の画像を撮影する。カメラ8は、ボール2が前を通過する時にシャッターを開いて第2の画像を撮影する。トリガー信号発生手段4がトリガー信号を出力してから、カメラ6とカメラ8が撮影を開始するまでには、コンピュータ10がシャッターのタイミングを計算するために要する時間と、カメラ6とカメラ8のシャッター操作時間と、各機器の通信時間を合算した時間間隔が必要となる。このために、カメラ6とカメラ8は、コンピュータ10が指定したタイミングでシャッターを開いた場合に、常に前を通過するボール2の画像を確実に撮影できるように、トリガー発生手段4から充分に離れた位置に配置されている。
【0063】
カメラ6とカメラ8の設置間隔は、任意に設定することができる。例えば、回転量が大きくなりそうな測定の場合にはカメラ6とカメラ8の設置間隔を短縮して撮影することで、第1の画像と第2の画像で必ず同じ計測用マークを撮影できる。
第1の画像と第2の画像で同じ計測用マークを撮影するために、カメラ6とカメラ8に広角撮影の可能なカメラを用いて、コンピュータ10がカメラ6とカメラ8にシャッターのタイミングを短い時間間隔で設定することもできる。
【0064】
カメラ6で撮影された第1の画像と、カメラ8で撮影された第2の画像は、コンピュータ10に入力される。コンピュータ10では、第1の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置及び第2の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置を識別し記憶する。コンピュータ10の記憶装置には、第1の画像と第2の画像を解析して各測位ポイントを識別し、測位ポイントの位置を記憶するプログラムが記憶されている。
【0065】
以下に、コンピュータ10に記憶された測位ポイントの識別と位置の記憶を行うプログラムが行う一連の処理の内容を、図2と図3を参照しつつ詳細に説明する。
プログラムが開始すると、ステップS2で基準記号の画像を数値化したモデルデータ、及び基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの相対的な位置と距離のデータから構成される計測用マークの配置データを登録する。ここで行われるデータの登録は、初めて回転量と回転方向の測定を行う際に予め実行しておけば、以後は新たな登録作業を行うことなく同一のデータをそのまま使い続けることが可能である。また、測定の都度使用する球体に対応したデータを登録することや、球体の基準記号の種類等を一部変更した際に変更分のデータの追加することも同様に可能である。
【0066】
ステップS4からステップS23で、第1の画像の測位ポイントの識別と位置の記憶を行う。ステップS4で、第1の画像を読み込む。ステップS6で第1の画像上に全体座標系を定義する。全体座標系は、画像の中心を座標中心とする2次元座標で、基準記号の識別と一時記憶に使用される。ステップS8で、第1の画像からボールの外周を識別して、画像の中の球体の位置を特定する。画像が白黒の場合には、ボールの外周はピクセル毎の二値化処理を行うことにより、識別が可能である。画像がカラーの場合には、ボールの色と色度が一致するデータ範囲を画像上で特定するなど、公知の画像処理工程により、ボールの識別が可能である。ステップS10で、第1の画像の球体の画像の範囲で基準記号とモデルデータのパターンマッチングを行って、ステップS12で基準記号の位置を特定する。ステップS14で、特定した基準記号の位置と、基準記号と測位ポイントの配置データに基づいて第1の測位ポイントを画像上でサーチして検出し、ステップS16で、第1の測位ポイントの全体座標系における座標値を特定して一時記憶する。ステップS18で、特定した基準記号の位置と、基準記号と測位ポイントの配置データに基づいて第2の測位ポイントを画像上でサーチして位置を検出し、ステップS20で、検出した第2の測位ポイントの全体座標系における座標値を特定し、一時記憶する。ステップS22で、第1の画像の球体の中心の位置を特定し、球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義する。ステップS23で、第1の画像の第1の測位ポイントの座標値と、第2の測位ポイントの座標値を全体座標系から局所座標系の値に変換して記憶する。
【0067】
図3のステップS24からS44は、第1の画像についてステップS4からステップS23に行ったものと同様の処理を第2の画像について行うものであり、第2の画像の測位ポイントを識別し、その位置を記憶する処理である。即ち最初にステップS24で、第2の画像を読み込み、ステップS26で第2の画像上に全体座標系を定義する。ステップS28で、第1の画像からボールの外周を識別して、画像の中の球体の位置を特定する。ステップS30で、第2の画像の球体の画像の範囲で基準記号とモデルデータのパターンマッチングを行い、ステップS32で基準記号の位置を特定する。
【0068】
ステップS34で、特定した基準記号の位置と、基準記号と測位ポイントの配置データに基づいて第1の測位ポイントを画像上でサーチして検出し、ステップS36で第1の測位ポイントの全体座標系における座標値を特定して一時記憶する。ステップS38で、特定した基準記号の位置と、基準記号と測位ポイントの配置データに基づいて第2の測位ポイントを画像上でサーチして位置を検出し、ステップS40で検出した第2の測位ポイントの全体座標系における座標値を特定し、一時記憶する。ステップS42で、第2の画像の球体の中心の位置を特定し、球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義する。ステップS44で、第2の画像の第1の測位ポイントの座標値と、第2の測位ポイントの座標値を全体座標系から局所座標系の値に変換して記憶する。
【0069】
ステップS23で記憶した第1の画像の局所座標系における第1及び第2の測位ポイントの座標値と、ステップS44で記憶した第2の画像の局所座標系における第1及び第2の測位ポイントの座標値の変化量から、球体の回転方向と回転量を計算する。
第1の画像の局所座標系における第1及び第2の測位ポイントの座標値と、第2の画像の局所座標系における第1及び第2の測位ポイントの座標値の変化量から球体の回転方向と回転量を計算する工程は、通常のデジタル画像処理の座標変換アルゴリズムに沿って行われる。この計算工程により、3次元の球体の回転方向と回転量を得ることができる。
本実施例のボールに適用可能な計測用マークの一例を、図5から図11に挙げる。図5及び図6には、本実施例の中で使用した基準記号14と同じ文字であるAを使用した計測マークであって、第1の測位ポイント16と第2の測位ポイント18の配置が異なるものを示す。基準記号14の文字Aは点対称性がないので、基準記号14を囲む矩形領域の頂点の1つに付し、第2の測位ポイントを矩形領域の他の任意の頂点に配置することができる。図5には、第1の測位ポイント16を基準記号の左上に配置し、第2の測位ポイント18を基準記号の右上に配置した計測用マークを示す。図6には、第1の測位ポイント16を基準記号の左上に配置し、第2の測位ポイント18を基準記号の右下に配置した計測用マークを示す。
【0070】
図7に、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントを、基準記号上に定義した一例を示す。計測用マーク24は、点対称性のないアルファベット文字Eを基準記号26としており、基準記号26のみで構成される。第1の測位ポイントは文字Eの上部に伸びる横棒と縦棒の交差箇所の中心に定義し、第2の測位ポイントは文字Eの下部に伸びる横棒と縦棒の交差箇所の中心に定義することができる。一般的に第1の測位ポイントと第2の測位ポイントを、基準記号から離れた位置に配置することで、各測位ポイントの位置の識別は、より容易になる。しかし、基準記号の文字の中に、位置の識別が非常に容易なポイントが複数箇所含まれている場合には、測位ポイントを基準記号の中に定義することも可能である。
【0071】
図8と図9に、計測用マークを構成する基準記号に点対称性を有する文字を適用した例を示す。図8と図9は、基準記号30としてアルファベットIを使用した計測マークの一例である。基準記号30の文字Iは点対称性があるので、第1の測位ポイントを基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付したときに、第2の測位ポイントを矩形領域の第1の測位ポイントと隣り合う頂点に配置することができる。図8には、第1の測位ポイント16を基準記号の左上に配置し、第2の測位ポイント18を基準記号の左下に配置した計測用マーク28を示す。図9には、第1の測位ポイント16を基準記号の左上に配置し、第2の測位ポイント18を基準記号の右上に配置した計測用マーク32を示す。
計測用マーク28と計測用マーク32は、基準記号に対して上記のような第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの配置を行うことにより、計測用マーク全体としては点対称性を有さなくなる。この結果、仮に球体が第一の撮影工程と第二の撮影工程の間で基準記号が180゜回転していたとしても、画像から第一の測位ポイントと第二の測位ポイントの位置は、基準記号との位置関係から誤りなく識別することができる。
基準記号は、アルファベット文字に限定されない。図10に、計測用マーク36を構成する基準記号38に数字3を適用した例を示す。このほかにも、ひらがな、漢字等の文字や符号を使用することができる。又、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントは、それぞれが独立した点であるという構成には限定されない。図11の計測用マーク40に示すように、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントを含む棒状のマークで構成し、第1の測位ポイントをその一端に定義し、第2の測位ポイントをその他端に定義することもできる。
【0072】
本実施例におけるボールの回転方向と回転量の測定技術においては、基準記号に非常に一般的な文字Aを用いている。アルファベットは従来から広くそのパターンが画像処理に用いられているので、モデルデータが充実しており、パターンマッチングが容易であり、基準記号の位置を高精度に識別することができる。また、第1の測位ポイントを基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付し、第2の測位ポイントを矩形領域の他の頂点に配置することで、各測位ポイントを画像から検出する作業は基準記号の矩形領域の頂点を重点的に行えば良く、測位ポイントの位置が効率よく検出される。これらの効果によって、本実施例における回転方向と回転量の測定は非常に簡易で、高精度且つ効率よく迅速に行われる。
【0073】
(第2実施例) 図12に本実施例の単位時間当たりの回転量及び回転方向の測定装置41(以下、回転測定装置41と略する)とそれが配置された状態を模式的に示す。第1実施例と同一の構成のものについては、同一符号を付与して重複説明を割愛する。本願発明の回転測定装置41は、ボール42と、第1の撮影手段であるカメラ6と、第2の撮影手段であるカメラ8と、コンピュータ44と、ボール速度検出手段46を備えている。カメラ6と、カメラ8と、コンピュータ44と、ボール速度検出手段46は、通信回線で接続されている。
【0074】
ボール42の表面には、6個の計測用マークが、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントによって定義される矩形領域が、球体の表面に重なり合うことなく付されている。全ての計測用マークは、基準記号である文字と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントから構成されている。計測用マークは、球の中心を原点とする直交座標系を考えた場合に、X,Y,Zの各軸と球体の交点となる位置にそれぞれほぼ一致して配置される。この配置により、6個の計測用マークは球体上で略均等な間隔をとる。
本実施例の回転測定装置41は、1つの計測用マークの位置を計測して回転方向及び回転量を測定するものであり、他の計測用マークとの相対的な位置関係を回転方向及び回転量の測定には用いない。計測用マーク同士の相対的な位置関係を記憶することなく回転方向と回転量の測定を行うことができる。このためボール42の表面の計測用マークの位置は、必ずしも厳密に上記の位置に配置される必要はない。
【0075】
本実施例のボール42は、高精度で迅速に球体の回転方向と回転量を測定する場合に、特に適した球体である。
【0076】
本実施例のボール速度検出手段46は、ボールの通過を検出する第1の検出手段48と、ボール42の通過を検出する第2の検出手段50と、第1の検出手段48と第2の検出手段50の間の距離と、第1の検出手段48が検出した時刻と第2の検出手段50が検出した時刻の差からボール42の移動速度を算出する手段から構成される。ここで、第1の検出手段48には、第1実施例のトリガー信号発生手段4と同様の、信号発生器48aと光センサー48bと光源48cを適用することができる。第2の検出手段50は、第1の検出手段48と同一の仕様で構成することができる。本実施例においては、各光センサー48b、50bに対応する2個の信号発生器を設ける代わりに、図12に示すように信号発生器48aを2つの入力端子を有する構成として、光センサー48bと光センサー50bが出力する光度からその変化を検出し、光センサー48bと光センサー50bの各々に対応するトリガー信号を発生させている。
【0077】
本実施例における第1の検出手段48と第2の検出手段50の間の距離と、第1の検出手段48が検出した時刻と第2の検出手段50が検出した時刻の差からボール42の移動速度を算出する手段は、コンピュータ44に記憶された速度計算プログラムである。速度計算プログラムは、信号発生器48aの出力する信号と、光センサー48bと光センサー50bの距離を元にボール42の移動速度を算出する。
【0078】
更にコンピュータ44は、ボール42の速度の計算結果から、ボール42がカメラ6の前を通過する時刻と、ボール42がカメラ8の前を通過する時刻を計算し、計算結果に基づいて、第1の撮影手段と第2の撮影手段に各々の撮影時刻を指示する。カメラ6とカメラ8は指示された時刻にボール42の画像を撮影して記録する。ここで、カメラ6とカメラ8の設置間隔は、任意に設定することができるので、例えば回転量が大きくなりそうな測定の場合にはカメラ6とカメラ8の設置間隔を短縮しておき、コンピュータ44がカメラ6とカメラ8の好適な撮影時刻を指定することで、第1の画像と第2の画像で同じ計測用マークを確実に撮影し、計測用マークの位置の変化量から球体の回転量と単位時間あたりの回転量を測定することができる。
一方、各計測用マークの配置を初めから極めて正確に行っている場合には、異なる計測用マークが撮影された2枚の画像を元にして球体の回転方向、回転量、及び単位時間あたりの回転量を計測することが可能となる。
【0079】
カメラ6で撮影された第1の画像と、カメラ8で撮影された第2の画像は、コンピュータ44に入力される。コンピュータ44の記憶装置には、第1の画像と第2の画像を解析して、両方の画像に含まれる基準記号を識別し、識別した基準記号を含む計測用マークの測位ポイントの位置を記憶するプログラムが記憶されている。プログラムが実行されると、第1の画像の第1及び第2の測位ポイントと第2の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置が検出されて記憶される。
【0080】
以下に、第1の画像と第2の画像に同一の基準記号が撮影されている場合に行われる、各画像の測位ポイントの識別と位置の記憶のための一連の処理の内容を、図13、図14及び図15を参照しつつ詳細に説明する。この一連の処理は、コンピュータ44の記憶装置に記憶されたプログラムが実行されることによって行われる。
実行されたプログラムは、ステップS52で、全ての計測用マークに含まれる基準記号の画像を数値化したモデルデータ、及び基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの相対的な位置と距離のデータから構成される計測用マークの配置データを登録する。最初にステップS54で、第1の画像を読み込み、ステップS56で、第1の画像上に全体座標系を定義する。ステップS58で、第1の画像から球体の外周を識別して、画像の中の球体の位置を特定する。ステップS60からステップS66の実行ループの中で、第1の画像の球体の画像の範囲に含まれる全ての基準記号とモデルデータとのパターンマッチングを行って、基準記号を識別して位置を特定し、モデルデータとの相関係数と、基準記号の種類と位置を記憶する。更にステップS68で、第1の画像に含まれる全ての基準記号について相関係数の高い順に順位付けを行い、順位付けの結果を含む計測用マークのデータを配列X(i)に記憶する。
第2の画像についても、第1の画像におけるステップS54からステップS68の処理と同様に、ステップS70からステップS84の一連の処理により、第2の画像に含まれる全ての基準記号について、モデルデータとの相関係数と、基準記号の種類と位置を記憶し、第2の画像に含まれる全ての基準記号について相関係数の高い順に順位付けを行い、順位付けの結果を含む計測用マークのデータを配列Y(j)に記憶する。
ステップS86とステップS88において、第1の画像と第2の画像の両方に含まれ、且つモデルデータとの相関係数がいずれの画像においても可能な限り高い基準記号を選択する。その処理の手順は、以下の通りである。まず第1の画像において最もモデルデータと相関係数の高いX(1)の基準記号と、第2の画像において最もモデルデータと相関係数の高いY(1)の基準記号を選択し、両者を比較する。両者の基準記号が一致したときには、X(1)とY(1)の組み合わせを一時記憶する。以下、配列X(i)とY(j)の全ての組み合わせについて、基準記号を比較し、基準記号の一致する全ての組み合わせを一時記憶する(ステップS86)。次に、プログラムはステップS88において、基準記号の一致した全ての組み合わせの中から、モデルデータとの相関係数がいずれの画像においても可能な限り高い基準記号の選択を行う。
【0081】
ここで、本実施例における、ボール42をバットで打ち返したときに撮影された第1の画像の一例を図16に示し、第2の画像の一例を図17に示して、図16と図17から実際に選択される基準記号について説明する。図16の画像からは、X(1)としてボール42の中心に撮影されている基準記号O(文字のオー)を含む計測用マーク60が認識されてそのデータが記憶される。図17の画像からは、Y(1)として基準記号Oを含む計測用マーク60が記憶され、Y(2)として基準記号6を含む計測用マーク62に関するデータが記憶され、Y(3)として基準記号Xを含む計測用マーク64に関するデータが記憶される。ステップS86で、1回目の比較であるX(1)とY(1)の基準記号の比較を行うと基準記号Oが一致するので、X(1)とY(1)の組み合わせを一時記憶する。以下、X(1)とY(2)、及びX(1)とY(3)の基準記号の比較が行われるが、基準記号が一致しないので、これらの組み合わせは記憶されない。ステップS88で、最も相関係数の高いX(i)とY(j)の組み合わせとしてX(1)とY(1)の組み合わせが選択される。この結果、基準記号Oを含む計測用マーク60が選択される。
【0082】
このようにして第1の画像と第2の画像のそれぞれに含まれ、且つモデルデータとの相関係数ができる限り高い基準記号を含む計測用マークが選択されると、処理は図15に進む。
【0083】
まず、第1の画像について、ステップS90で、選択された基準記号を含む計測用マークを選択する。ステップS92で、測位ポイントの配置データに基づいて第1の測位ポイントを画像上でサーチして検出し、ステップS94で第1の測位ポイントの全体座標系における座標値を特定して一時記憶する。ステップS96で測位ポイントの配置データに基づいて第2の測位ポイントを画像上でサーチして位置を検出し、ステップS98で検出した第2の測位ポイントの全体座標系における座標値を特定し、一時記憶する。ステップS100で、第1の画像の球体の中心の位置を特定し、球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義する。ステップS102で、第1の画像の第1の測位ポイントの座標値と、第2の測位ポイントの座標値を全体座標系から局所座標系の値に変換して記憶する。 第2の画像についても第1の画像で行ったステップS90からS102の処理と同様の処理をステップS104からステップS116について行い、選択された計測用マークの第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの位置を局所座標系で記憶する。ステップS102で記憶した第1の画像の局所座標系における第1及び第2の測位ポイントの座標値と、ステップS116で記憶した第2の画像の局所座標系における第1及び第2の測位ポイントの座標値の変化量、及び第1の画像の撮影時刻と第2の画像の撮影時刻から、球体の回転方向と単位時間あたりの回転量を計算することができる。
【0084】
本実施例の回転測定装置は、実際に撮影する球体の移動速度を検出して、第1の撮影工程と第2の撮影工程を最も好ましく正確な画像の得られる時刻に実施している。これにより、高品質で且つ計測用マークの特定が非常に容易な第1の画像と第2の画像を撮影することができ、単位時間当たりの回転量を正確に計算することができる。
【0085】
また、本実施例の回転測定装置において用いられるボールは、6個の計測用マークが均等に配置されているためにそのいずれかの計測用マークが第1の画像と第2の画像に撮影されていれば測定を進めることが可能である。この結果、最初に球体を位置決めして静置してからボールを打つ必要はなく、投げられたボールを打ち返したような場合であっても、ボールの回転方向と単位時間当たりの回転量を測定することができる。
【0086】
(第3実施例) 図18に本実施例の単位時間当たりの回転量及び回転方向の測定装置51(以下、回転測定装置51と略する)とそれが配置された状態を模式的に示す。第1実施例及び第2実施例と同一の構成のものについては、同一符号を付与して重複説明を割愛する。本願発明の回転測定装置51は、ボール54と、第1の撮影手段であるカメラ6と、第2の撮影手段であるカメラ8と、コンピュータ52と、ボール速度検出手段46に加えて、カメラ6及び8の上方に配置されるビデオ53を備えている。
【0087】
本実施例のビデオ53は、カメラ6の前とカメラ8の前をボール54が通過する間の軌道を記録し、記録した画像をコンピュータ52に入力する。コンピュータ52は、ビデオ53が記録した画像から、第1の撮影工程が行われたときのカメラ6から球体までの距離と、第2の撮影工程が行われたときのカメラ8から球体までの距離を特定するプログラムを記憶している。
【0088】
コンピュータ52の記憶手段には、カメラ6とカメラ8から球体までの距離を特定するプログラムと、第1の画像と第2の画像の測位ポイントの識別と位置の記憶を行うプログラムが記憶されている他に、球体上の第1と第2の撮影工程が行われたときの距離に基づいて第1の画像と第2の画像の中の球体の正確な大きさを計算し、計算結果に基づいて記憶している個々のモデルデータを、画像とのパターンマッチングを行うために最も好適な大きさに補正するプログラムを記憶している。補正は、モデルデータの拡大、縮小のほか、得られる画像の種類にあわせて特定の平面若しくは球面等の曲面に投影するといった加工も可能である。コンピュータ52にビデオ53の画像が入力されると、各々の撮影手段とボールとの距離を特定するプログラムが最初に実行される。次に、各々の撮影手段とボールとの距離の計算結果に基づいてパターンマッチングを行うモデルデータを補正するプログラムが実行されて、パターンマッチングのために最適なモデルデータが準備される。
【0089】
本実施例において、コンピュータ52が記憶している計測用マークのモデルデータは、基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントを一体化して記憶しているものである。ボール54の画像の計測用マークのパターンマッチングは、基準記号部分だけでなく、基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントに対しても同時に進められる。
本実施例で使用されるボール54を図19に示す。ボール54の表面には、基準記号である文字と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントから構成される14個の計測用マークが付されている。計測用マークの配置を、球に任意の中心軸を仮想した場合について説明する。中心軸と球体の交点となる場所にそれぞれ1個の計測用マークが配置され、中心軸に対して垂直方向となる球体の赤道上に6個の計測用マークが配置され、更に赤道を緯度0度とした場合の緯度+45度と緯度−45度の緯度線上に、各3個ずつの計測用マークが配置される。図19のボールは、球体の仮想の中心軸と球体の一方の交点に、基準記号Oを含む計測用マークを配置している。計測用マークは、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントによって定義される矩形領域が重なり合う事なく配置される。
本実施例の回転測定装置51は、第2実施例と同様に、1つの計測用マークの位置を計測して回転方向及び回転量を測定するものであり、他の計測用マークとの相対的な位置関係を回転方向及び回転量の測定には用いない。計測用マーク同士の相対的な位置関係を記憶することなく回転方向と回転量の測定を行うことができるので、上記の計測用マークの位置は必ずしもボール54上に厳密に配置される必要はない。
【0090】
本実施例のボール54は、高精度で迅速に球体の回転方向と回転量を測定する場合に、特に適した球体である。
以下に、コンピュータ52に記憶された測位ポイントの識別と位置の記憶を行うプログラムが行う一連の処理の内容を、図20と図21を参照しつつ説明する。実行されたプログラムは、ステップS132で、全ての計測用マークの第1の測位ポイントと第2の測位ポイントのパターンを数値化した補正済のモデルデータを入力し、ステップS134で第1の画像データを入力する。プログラムは、ステップS136で、第1の画像から球体の外周を識別して、球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義する。ステップS138とステップS140で、第1の画像の中の球体の画像の範囲に含まれる全ての計測用マークと、全てのモデルデータとのパターンマッチングを行って、計測用マークを識別する。特定された計測用マークは、ステップS142で、モデルデータとの相関係数と、計測用マークの基準記号の種類と、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの局所座標系における座標値を記憶する。ステップS138からステップS144の実行ループの中で、第1の画像の球体の画像の範囲に含まれる全ての計測用マークとモデルデータとのパターンマッチングを行って、計測用マークを識別して位置を特定し、データを記憶する。更にステップS146で、第1の画像に含まれる識別された全ての計測用マークについて相関係数の高い順に順位付けを行い、計測用マークのデータを配列X(i)に記憶する。
第2の画像についても、第1の画像に行ったステップS134からステップS146の処理と同様に、ステップS148からステップS160の一連の処理により、第2の画像に含まれる全ての計測用マークについて、モデルデータとの相関係数と、基準記号の種類と、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの局所座標系における座標値を記憶し、第2の画像に含まれる全ての基準記号について相関係数の高い順に順位付けを行い、計測用マークを配列Y(j)に記憶する。
ステップS162の処理によって、配列X(i)と配列Y(j)は、配列X(1)と配列Y(1)から順に比較され、第1の画像で特定された計測用マークと第2の画像で特定された計測用マークの中から、基準記号が一致する計測用マークの組み合わせが一時記憶される。ステップS164において、一時記憶された計測用マークの組み合わせの中で、モデルデータとの相関係数の最も高い計測用マークの組み合わせが決定される。
決定された計測用マークのデータを、配列X(i)と配列Y(j)から選択し、選択された各々の計測用マークの第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの局所座標系における座標値を用いることにより、回転方向と単位時間あたりの回転量の計算を行うことができる。
本実施例における回転測定装置は、カメラ6の前をボール54が通過する際に行われる第1の撮影工程と、カメラ8の前をボール54が通過する際に行われる第2の撮影工程を記録するビデオ53を備えている。カメラ6及びカメラ8から球体までの距離は撮影の都度異なる場合があり、その場合には画像に記録されている計測用マークの大きさが画像毎に異なる結果となるが、本実施例においては、撮影工程毎に撮影手段から球体までの距離を測定して、その距離に基づいて、計測用マークとパターンマッチングを行うモデルデータを補正することにより、より精度高く計測用マークを識別可能とする。
【0091】
また、本実施例で使用されるモデルデータは、基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントを一体化したパターンデータである。画像の中の計測用マークは、基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントを一個のデータとしてモデルデータと比較され、識別され、相関係数が求められる。
【0092】
このため本実施例においては、各々の画像の測位ポイントの識別と位置の記憶のためのプログラムで行われるパターンマッチングが1回だけであり、より迅速に計算することができる。また、基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントは、一個のデータとしてパターンマッチングされるために、画像の中で測位ポイントの一方が写っていないような場合には、モデルデータとの相関係数が低くなり、球体の回転方向と回転量の計算には利用されない。これにより、より精度の高い球体の回転方向と回転量の測定が可能となる。
(第4実施例) 本実施例の回転測定装置と画像の撮影工程の構成は、実施例3と同一であり、重複説明を省略する。本実施例の回転測定装置は、画像の識別と計測用マークの位置の記憶のためのプログラムの処理内容が異なっている。
本実施例の回転測定装置のコンピュータは、図22と図23に示すように、画像の識別のために使用されるモデルデータの他に、ボール表面の全計測用マークの正確な配置データを記憶している(ステップS152)。プログラムは、モデルデータと、全検索用マークの配置データを用いて、第1の画像のなかの識別された計測用マークの位置から、第1の画像撮影時のボール表面の全計測用マークの位置を計算により求めて局所座標系で記憶する(ステップS166,168)。第2の画像についても同様に、画像のなかの識別された計測用マークの位置から、第2の画像撮影時のボール表面の全計測用マークの位置を計算により求めて局所座標系で記憶する(ステップS182,184)。第1の画像撮影時の計測用マークの位置と、第2の画像撮影時の計測用マークの位置の変化量から、球体の回転方向と回転量が計算される。
【0093】
本実施例の回転測定装置は、第1の画像撮影時と第2の画像撮影時のボール表面の全計測用マークの位置を計算により求めて局所座標系で記憶することができる。このため、もしも第1の画像で識別された計測用マークが、回転により第2の画像では全て識別されなくなった場合においても、計算結果で求められている別の計測用マークの位置を使用することにより回転方向と回転量を求めることができる。
【0094】
このため、第1実施例から第3実施例までの回転測定装置の場合には、回転量が大きくなりそうな測定の場合には第1の撮影手段と第2の撮影手段の設置間隔を短縮する調整や、第1の画像の撮影時刻と第2の画像の撮影時刻の間隔を短縮する等の調整を行って第1の画像と第2の画像で必ず同じ計測用マークを撮影する必要があったが、本実施例の回転測定装置は、測定前のこのような調整を行うことなく任意の回転量で空間を飛行するボールの測定に適用が可能である。
【0095】
以上、第1実施例から第4実施例において本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。例えば実施例においては、球体の表面に計測用マークを1個と、6個と、14個付す場合について例示したが、球体の表面に2個以上の任意の個数の計測用マークを付した場合であっても、第2実施例から第4実施例の回転測定装置の構成によって、空間を移動する球体の正確な回転方向と回転量の測定を行うことができる。また、球体の表面に1個の計測用マークを付した場合であっても、第2実施例と第3実施例の回転測定装置の構成によって、空間を移動する球体の正確な回転方向と回転量の測定を行うことができる。
同様に、第1実施例の回転測定装置において、2個以上の任意の個数の計測用マークを付した場合には、第2実施例から第4実施例に示した第1の画像と第2の画像の測位ポイントの識別と位置の記憶を行うプログラムのいずれかをコンピュータ10の上で実行することにより、他の回転測定装置の構成は何ら変更することなく、空間を移動する球体の正確な回転方向と回転量の測定を行うことができる。このように、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、実施例に記載の組み合わせに限定されるものではない。
【0096】
また、特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0097】
例えば、計測用マークを構成する第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの配置は、他の計測用マークの測位ポイントとの間で検出を誤る恐れがなく、基準記号からの距離と方向を予め明らかにできる位置であれば、矩形領域の頂点に限定されない。例えば、基準記号の中心から等距離にある2つの点を、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントとして用いることができる。この場合、その中心からの距離、又は、ポイント間の距離及び方向を全ての計測用マークについて等しくすることが好ましいが、これらを計測用マーク毎に異なるものとすることも可能である。
【0098】
例えば、球体の速度を測定する装置として、2組の光源と光センサーと信号発生器を利用しているが、スピードガンを使用することも可能である。
【0099】
例えば、第1の撮影手段と第2の撮影手段に、高解像度のビデオを使用することが可能である。
【0100】
例えば、第1の画像の撮影時刻における第1の撮影手段から球体までの距離を特定し、第2の画像の撮影時刻における第2の撮影手段から球体までの距離を特定する距離特定手段を、第1の撮影手段と第2の撮影手段の上方に配置されて、空間を移動する球体と第1の撮影手段と第2の撮影手段とを撮影する手段と、撮影された画像から距離を特定する計算手段とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】第1実施例の空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する装置の構成を示す図である。
【図2】第1実施例の測位ポイントの識別と位置の記憶を行うプログラムの前半のフロー図である。
【図3】第1実施例の測位ポイントの識別と位置の記憶を行うプログラムの後半のフロー図である。
【図4】計測用マークの構成を示す図である。
【図5】計測用マークの構成を示す図である。
【図6】計測用マークの構成を示す図である。
【図7】計測用マークの構成を示す図である。
【図8】計測用マークの構成を示す図である。
【図9】計測用マークの構成を示す図である。
【図10】計測用マークの構成を示す図である。
【図11】計測用マークの構成を示す図である。
【図12】第2実施例の空間を移動する球体の回転方向と単位時間あたりの回転量を測定する装置の構成を示す図である。
【図13】第2実施例の測位ポイントの識別と位置の記憶を行うプログラムの第1の部分のフロー図である。
【図14】第2実施例の測位ポイントの識別と位置の記憶を行うプログラムの第2の部分のフロー図である。
【図15】第2実施例の測位ポイントの識別と位置の記憶を行うプログラムの第3の部分のフロー図である。
【図16】第2実施例の第1の画像の一例を示す図である。
【図17】第2実施例の第2の画像の一例を示す図である。
【図18】第3実施例の空間を移動する球体の回転方向と単位時間あたりの回転量を測定する装置の構成を示す図である。
【図19】第3実施例のボールの計測用マークの配置を示す図である。
【図20】第3実施例の測位ポイントの識別と位置の記憶を行うプログラムの前半部分のフロー図である。
【図21】第3実施例の測位ポイントの識別と位置の記憶を行うプログラムの後半部分のフロー図である。
【図22】第4実施例の測位ポイントの識別と位置の記憶を行うプログラムの前半部分のフロー図である。
【図23】第4実施例の測位ポイントの識別と位置の記憶を行うプログラムの後半部分のフロー図である。
【符号の説明】
【0102】
1,41,51: 回転測定装置
2,42,54: ボール
4: トリガー信号発生手段
4a: トリガー信号発生器
4b: 光センサー
4c: 光源
6,8: カメラ
10,44,52: コンピュータ
12,20,22,24,28,32,36,40: 計測用マーク
14,26,30,38: 基準記号
16: 第1の測位ポイント
18: 第2の測位ポイント
46: ボール速度検出手段
48: 第1の検出手段
50: 第2の検出手段
53: ビデオ
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する技術に関する。特に、特徴あるマークを付した球体を用いて、球体の移動中の画像を撮影し、画像から球体の回転方向と回転量を精度良く測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
球体が空間を移動する場合に回転運動が加わると、その回転方向と回転量は、球体の飛距離と飛行方向に重大な影響を及ぼす。例えば野球においては、ピッチャーは、ボールに様々な方向の回転を与えることで、その軌道が様々に変化する変化球を投げることができる。また、選手がボールを打つときには、ボールにバックスピンかかりすぎると、ボールは上昇し過ぎて飛距離が伸びない。また、ボールが地面から垂直方向の軸を中心として回転する回転がかかると、ボールは回転方向に曲がって飛ぶ。このように、ボールが空間を移動するときの回転特性を知ることによって、ボールの飛距離と飛行方向に対する影響を確認することが可能となる。ひいては、好ましい飛距離と飛行方向を得るためにどのような回転方向と回転量をボールに与えればよいのかを推定し、好ましい回転方向と回転量を与える運動用具の選定や、選手の投球フォームや打撃フォームの修正に役立てることができる。そこで、空間を移動するボール等の球体の回転方向と回転量を測定する技術が開発されている。
【0003】
特許文献1には、3以上の反射部分を設けた球体と、感光性パネルを有する2台以上のカメラと、短い時間間隔で複数回発光するフラッシュと、カメラの画像から球体の位置と速度を計算するコンピュータを備えた球体の飛行特性を測定するモニターシステムが開示されている。特許文献1に示されるモニターシステムは、球体が打ち出された直後と、そこから短い時間が経過した後の合計2回フラッシュを発光させて球体の反射部分に反射させ、感光性パネルで球体の反射光を撮影する。そして1枚の画像に撮影された最初に撮影された反射光の位置と、2回目に撮影された反射光の位置の変化から、球体の移動速度と回転速度を計算する。
【0004】
特許文献1のモニターシステムに用いられる球体の反射部分の形状は、いずれも同一の円形形状をとる形態が開示されている。また、反射部分の配置は、6個の反射部分のうち5個を正五角形の頂点に配置し、残る1個を正五角形の中心に配置する構成が開示されている。反射部分は、球体の一部分にのみ配置されているために、回転速度を測定するためには、撮影時に常にカメラに反射部分が写るように、球体の向きを制御しなければならない。このため実際には、最初に球体を位置決めして静置してから球体を空間に移動させなければならず、また、投げられたボールを打ち返す場合の測定のような、球体のカメラに対する向きを制御することが困難な測定には適用できない。更に、特許文献1の球体の反射部分の配置は、中心の反射部分を回転の中心とすると、72°回転させるたびに元の配置と同一の位置に反射部分が配置されるために、回転角が大きな場合には正確な回転速度の計測が困難である。加えて、特許文献1のカメラは、同一の感光性パネルに飛行時の球体を2回撮影するために、球体の移動速度が速い場合には、時間間隔の短い撮影しか行うことができない。
【0005】
特許文献2には、回転する球体を一方向から所定の時間間隔で2回撮影し、最初の画像と2回目の画像の所定の2点の位置の変化から球体の回転量を演算する回転量測定装置及び測定方法が開示されている。
【0006】
特許文献2の回転量測定装置及び測定方法に用いられる球体の所定の2点は、実施例中では点で示されている。撮影中の球体の回転方向と回転量によっては、このなかの1点若しくは2点が画像に写らないことがあり、その場合には回転量の測定が不可能である。また、球体の回転方向によっては、最初の画像の点が2回目の画像の中のどちらの点に対応しているかの判別が困難になり、点を誤って識別することによって不正確な回転量を計算してしまう危険性を潜在的に有している。
【0007】
更に、特許文献2の回転量測定方法では、撮影された画像から2点を目視で識別してマウス若しくはデジタイザーを用いて手作業で位置を指定している。このような目視による識別と手作業による位置指定は、処理に時間を要し、又誤差が大きい。従って繰り返し回転量を測定する方法及び装置には適用が困難である。
【0008】
特許文献3には、ゴルフボールの表面に凸多角形の識別用マークを付し、移動する球体を2台のカメラで撮影し、得られた最初の画像と2回目の画像の識別用マークの角の位置の変化から球体の回転運動を演算する回転運動測定装置が開示されている。
【0009】
特許文献3の回転運動測定方法に用いられる記号は、明細書中で二等辺三角形の形状が開示されている。また、球体に1個の二等辺三角形が付される構成が開示されている。このために、特許文献3の球体を用いて回転運動を測定するためには、特許文献1のモニターシステムと同様に、カメラに対する球体の向きを制限しなければならない。従って、特許文献3の回転運動測定装置は、測定前に球体を位置決めする工程が必須であり、且つ回転方向と回転量が不確定な測定や回転量が大きな測定には適用できない。また、回転量を測定するための二等辺三角形は、測位ポイントとなる頂点の位置が近接しているために、ボールが回転して二等辺三角形がボールの端部で写るような場合には、頂点の検出精度が悪くなり、回転量の検出誤差が大きくなる恐れを有している。
【0010】
特許文献4には、球体の表面に方向性を備えた中心マークと、中心マークを取り囲む3個以上の回転角度算出マークを付して、移動する球体をカメラで撮影し、得られた最初の画像と2回目の画像の識別用マークの角の位置の変化から球体の位置と速度を演算する回転運動計測方法及び計測装置が開示されている。
【0011】
特許文献4の回転運動計測方法及び計測装置においては、まず中心マークを認識した後に、その周囲の3個以上の回転角度算出マークを認識して、その位置の変化から回転運動の量を求めている。画像から合計4個のマークを識別して位置を確定する処理には時間がかかるために、繰り返し回転運動を測定する方法及び装置には適用が困難である。
【0012】
また、特許文献4の球体には、回転角度算出マークが1個のみ付された形態のみが開示されている。このため、特許文献1及び特許文献3の技術と同様に、測定前に球体を位置決めする工程が必須であり、且つ回転方向と回転量が不確定な測定や回転量の大きな測定には適用できない。
【0013】
【特許文献1】特許第2950450号公報
【特許文献2】特許第2810320号公報
【特許文献3】特許第3235987号公報
【特許文献4】特開2001−304830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するために創作されたものであり、高精度で且つ迅速に空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定できる技術を提供する。更に、球体が任意の回転方向で且つ大きな回転量で回転しながら空間を移動する場合でも、同様に高精度で迅速に球体の回転方向と回転量を測定可能な測定方法及び測定装置並びに当該測定に特に適した球体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(課題を解決するための好ましい手段と作用)
請求項1の発明は、空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する方法であって、移動する球体の表面に、任意の基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントから構成される計測用マークを付す工程と、移動する球体の第1の画像を撮影する第1の撮影工程と、第1の画像の撮影時刻よりも後に、移動する球体の第2の画像を撮影する第2の撮影工程と、第1の画像と第2の画像間の計測用マークの位置の変化量から、球体の回転方向と回転量を計算する工程を備えていることを特徴とする。
【0016】
第1の撮影工程によって得られる第1の画像と、第2の撮影工程によって得られる第2の画像には、任意の基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントを備えた計測用マークを含む球体の画像が記録される。計測用マークの中の基準記号に、画像内で判別しやすい記号を用いることにより、各画像に含まれる計測用マークの位置は、迅速且つ高精度に検出される。基準記号には、画像から識別が可能な任意の文字と符号の適用が可能である。
【0017】
球体が回転しながら移動した場合には、第1の画像と第2の画像の撮影時刻に時間差があることから、第1の画像と第2の画像間の間では、計測用マークの位置に変化が生じる。この変化量から球体の回転方向と回転量を計算することができる。
【0018】
請求項2の発明は、第1の撮影工程と第2の撮影工程の撮影時刻を指示する工程と、第1の画像を指示された時刻で撮影する第1の撮影工程と、第2の画像を指示された時刻で撮影する第2の撮影工程と、第1の画像の撮影時刻と第2の画像の撮影時刻の時間差と、第1の画像と第2の画像間の計測用マークの位置の変化量から、球体の回転方向と単位時間あたりの回転量を計算する工程をさらに備えていることを特徴とする。
【0019】
本発明により、第1の撮影工程と第2の撮影工程を所定の時刻に行い、撮影時刻の明らかな第1の画像と第2の画像を得ることができる。撮影時刻の明らかな第1の画像と第2の画像を用いて球体の回転量を計算することにより、球体の回転方向に加えて単位時間あたりの回転量即ち回転速度が測定可能となる。
【0020】
請求項3の発明は、第1の撮影工程と第2の撮影工程の撮影時刻を指示する工程が、所定の間隔で設けられた第1の球体検出工程と第2の球体検出工程が検出した球体の通過時刻から球体の移動速度を算出する工程と、算出された球体の移動速度に基づいて、第1の撮影工程に好適な第1の画像の撮影時刻を計算して指示する工程と、第2の撮影工程に好適な第2の画像の撮影時刻を計算して指示する工程を備えていることを特徴とする。
【0021】
本発明は、第1と第2の撮影工程の前に、実際に撮影する球体の移動速度を検出している。実際の球体の移動速度が明らかとなるために、第1の撮影工程のために最も好ましい位置を球体が通過する時刻と、第2の撮影工程のために最も好ましい位置を球体が通過する時刻とをそれぞれ正確に計算することが可能となる。この計算結果に基づいて第1の撮影工程と第2の撮影工程を実施することにより、高品質で且つ計測用マークの特定が非常に容易な第1の画像と第2の画像を撮影することができる。
【0022】
計測用マークを構成する基準記号には、点対称性のない文字を使用することができる。また、第1の測位ポイントを基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付し、第2の測位ポイントを矩形領域の他の頂点に配置することができる。
尚、本明細書及び請求の範囲中において、この「矩形領域の頂点」とは、球体に付された基準記号をその正面から撮影した画像上において基準記号を包含する適当な大きさの矩形を想定した場合にその頂点に対応する位置を言うものである。係る位置は基準記号の中心から予め定められた所定の方向及び所定の距離にあり、基準記号の中心と隣り合う矩形領域の頂点を結ぶ図形は、基準記号をその正面から撮影した画像上において二等辺三角形を構成する位置にあることを特徴とする。
【0023】
第1の測位ポイントと第2の測位ポイントを、基準記号から離れた位置に配置することで、各測位ポイントの位置の識別は、より容易になる。第1の測位ポイントを基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付し、第2の測位ポイントを矩形領域の他の頂点に配置することで、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントは、基準記号を囲む矩形の一辺の両端、若しくは基準記号を囲む矩形の対角線上に配置される。このような配置を取ることで、各測位ポイントを画像から検出する作業は基準記号の矩形領域の頂点を重点的に行えば良く、効率よく迅速に測位ポイントの検出が行われる。
【0024】
尚、ここでいう点対称性のない文字とは、文字上でどのような回転中心の点をとって回転させた場合でも、360゜回転させないともとの文字と一致する形状とならない文字のことをいう。また、ここでいう文字とは、ひらがな、カタカナ、漢字、数字、アルファベット、JIS第一水準に規定される簡単な記号と罫線文字などの字の総称である。
【0025】
計測用マークを構成する基準記号に点対称性を有する文字を適用し、第1の測位ポイントを基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付し、第2の測位ポイントを矩形領域の第1の測位ポイントと隣り合う頂点に配置することができる。
【0026】
ここでいう点対称性のある文字とは、文字上に一定の回転中心の点を設定すると、所定の角度で回転させた時にもとの文字と一致する形状となる文字のことをいう。例えば、H,Iのようなアルファベットは、180゜回転させると元の文字と一致する形状となるので、本願発明においては点対称性を有する文字として扱う。点対称性を有する文字を基準記号に適用する場合には、第1の測位ポイントを基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付し、第2の測位ポイントを矩形領域の第1の測位ポイントと隣り合う頂点に配置することで、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントが実質的に基準記号を囲む矩形の一辺の両端に配置されることが好ましい。計測用マークがこのような配置の基準記号と第一の測位ポイントと第二の測位ポイントから構成されることにより、計測用マーク全体としては点対称性を有さなくなる。この結果、仮に球体が第一の撮影工程と第二の撮影工程の間で基準記号が180゜回転していたとしても、画像から第一の測位ポイントと第二の測位ポイントの位置は、基準記号との位置関係から誤りなく識別することができる。
【0027】
請求項6の発明は、第1の画像と第2の画像の中の計測用マークの位置の変化量から、移動する球体の回転方向と回転量を計算する工程に関する。球体の回転方向と回転量を計算する工程は、以下の工程を備えることができる。まず、基準記号の画像を数値化したモデルデータ、及び基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの相対的な位置と距離のデータから構成される計測用マークの配置データを登録する。ここで行われるデータの登録は、初めて回転量と回転方向の測定を行う際に予め実行しておけば、同一のデータをそのまま使い続けることが可能である。また、測定の都度使用する球体に対応したデータを登録することや、球体の基準記号の種類等を一部変更した際に変更分のデータの追加することも可能である。
【0028】
次に、第1の画像上に全体座標系を定義し、第1の画像から球体の外周を識別して、画像の中の球体の位置を特定する。第1の画像の球体の画像の範囲で基準記号とモデルデータのパターンマッチングを行って、基準記号の位置を特定した後に、基準記号の位置と計測用マークの配置データに基づいて第1の測位ポイントを画像上でサーチして位置を検出し、検出した第1の測位ポイントの全体座標系における座標値を記憶する。次に、基準記号の位置と計測用マークの配置データに基づいて第2の測位ポイントを画像上でサーチして位置を検出し、検出した第2の測位ポイントの全体座標系における座標値を記憶する。次に、第1の画像の球体の中心の位置を特定し、球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義し、第1の画像の第1の測位ポイントの座標値と、第2の測位ポイントの座標値を全体座標系から局所座標系の値に変換して記憶する。第2の画像についても、第1の画像と同様の工程によって第2の画像の第1の測位ポイントの座標値と第2の測位ポイントの座標値を記憶し、第1の画像の局所座標系における第1及び第2の測位ポイントの座標値と、第2の画像の局所座標系における第1及び第2の測位ポイントの座標値の変化量から、球体の回転方向と回転量を計算する工程を備えることで、第1の画像と第2の画像の中の計測用マークの位置の変化量から、移動する球体の回転方向と回転量を計算できる。
【0029】
本発明の第1の画像と第2の画像の中の計測用マークの位置の変化量から、移動する球体の回転方向と回転量を計算する工程では、画像の中の球体の画像の範囲で基準記号とモデルデータのパターンマッチングを先に行って、基準記号の位置を特定する。基準記号に識別が容易な記号を使用することにより、パターンマッチングの精度を容易に向上させることが可能であり、また短時間のパターンマッチングで効率よく記号を識別して位置を特定することが可能である。更に本願発明においては、一つの画像の中で位置を特定する作業の回数は3回であり、短時間の画像処理で球体の回転方向と回転量を計算するために必要な座標値を得ることができる。
【0030】
第1の画像の局所座標系における第1及び第2の測位ポイントの座標値と、第2の画像の局所座標系における第1及び第2の測位ポイントの座標値の変化量から球体の回転方向と回転量を計算する工程は、一般的なデジタル画像処理の座標変換アルゴリズムに沿って行われる。この座標変換アルゴリズムは、市販の3次元のCADソフトウェアあるいは汎用の数値演算ソフトウェアに組み込まれており、ソフトウェアのなかで計算を実行することにより3次元の球体の回転方向と回転量を得ることができる。
【0031】
請求項7の発明は、空間を移動する球体の回転方向と回転量を一層精度高く測定する方法である。本発明は、第1の撮影工程と、第2の撮影工程における撮影手段から球体までの距離を特定する工程と、特定された第1の撮影手段から球体までの距離から第1の画像の中の球体の正確な大きさを計算し、計測用マークを識別するためのパターンマッチングに使用するモデルデータを補正する工程と、特定された第2の撮影手段から球体までの距離から第2の画像の中の球体の正確な大きさを計算し、計測用マークを識別するためのパターンマッチングに使用するモデルデータを補正する工程を更に備えていることを特徴とする。
【0032】
撮影手段から球体までの距離は撮影の都度異なる場合があり、その場合には画像に記録されている計測用マークの大きさが画像毎に異なる結果となる。本発明においては、撮影工程毎に撮影手段から球体までの距離を測定して、その距離に基づいて、計測用マークとパターンマッチングを行うモデルデータに対する拡大、縮小等の補正をすることにより、より精度高く計測用マークを識別可能とする。
請求項8の発明は、空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する方法であって、移動する球体の表面に、2個以上の計測用マークを付す工程と、移動する球体の第1の画像を撮影する第1の撮影工程と、第1の画像の撮影時刻よりも後に、移動する球体の第2の画像を撮影する第2の撮影工程と、第1の画像と第2の画像間の計測用マークの位置の変化量から、球体の回転方向と回転量を計算する工程を備えている。本発明の球体に付される計測用マークは、任意の基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントとから構成されており、計測用マークは基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントを結ぶ直線で囲まれる領域が互いに重なり合うことなく配置されている。
【0033】
計測用マークを2個以上付すことにより、好適な計測用マークを選択して好適な位置に配置することで、より正確な計測を行うことができる。また球体が回転して画像にいずれか一方の計測用マークしか撮影されていない場合でも、回転方向と回転量の測定を行うことが可能となる。この結果、第1の撮影工程と第2の撮影工程の間の回転量が大きな球体であっても、回転方向と回転測定を行うことが可能となる。
【0034】
請求項9の発明は、空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する方法であって、第1の撮影工程と第2の撮影工程の撮影時刻を指示する工程と、第1の画像を指示された時刻で撮影する第1の撮影工程と、第2の画像を指示された時刻で撮影する第2の撮影工程と、第1の画像の撮影時刻と第2の画像の撮影時刻の時間差と、第1の画像と第2の画像間の計測用マークの位置の変化量から、球体の回転方向と単位時間あたりの回転量を計算する工程をさらに備えていることを特徴とする。本発明により、球体の回転方向に加えて単位時間あたりの回転量即ち回転速度が測定可能となる。
【0035】
請求項10の発明は、第1の撮影工程と第2の撮影工程の撮影時刻を指示する工程が、所定の間隔で設けられた第1の球体検出工程と第2の球体検出工程が検出した球体の通過時刻から球体の移動速度を算出する工程と、算出された球体の移動速度に基づいて、第1の撮影工程に好適な第1の画像の撮影時刻を計算して指示する工程と、第2の撮影工程に好適な第2の画像の撮影時刻を計算して指示する工程を備えていることを特徴とする。本発明により、第1と第2の撮影工程の前に、実際に撮影する球体の移動速度を検出して、移動速度に基づいて指示した時刻に第1の撮影工程と第2の撮影工程を実施することにより、高品質で計測用マークの特定が非常に容易な第1の画像と第2の画像を撮影することができる。
【0036】
請求項11の発明は、空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法であって、測定の対象となる球体に、計測用マークが6個以上付されており、全ての計測用マークの基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントを結ぶ直線で囲まれる領域の面積の合計値が、球体の表面積の10%以上であることを特徴とする。
【0037】
検証の結果、6個の計測用マークを付し、全ての計測用マークの基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントを結ぶ直線で囲まれる領域の面積の合計値が、球体の表面積の10%以上であれば、球体が移動中に任意の回転をした場合でも、第1の画像と第2の画像の両方に、ほぼ毎回少なくとも1個の計測用マークが撮影されることが明らかとなった。この結果、測定前に球体を位置決めする工程が不要となり、且つ移動中の球体が大きく回転する場合であっても、回転方向と回転量の測定を行うことが可能となった。
【0038】
請求項12の発明は、球体の表面に付される複数の計測用マークを構成する基準記号が、計測用マーク毎に全て異なる記号であり、第1の測位ポイントが基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付されており、第2の測位ポイントが矩形領域の他の頂点に付されており、計測用マークの矩形領域が球体の表面に重なり合うことなく配置されることを特徴とする。
【0039】
球体の表面に付される複数の計測用マークが、全て異なる記号を用いていることにより、最初の画像に対応する基準記号を、誤ることなく第2の画像の中で識別することが可能となる。またその矩形領域が重なることなく配置されることにより、計測用マークに属する測位ポイントを容易に判別することが可能となり、基準記号若しくは測位ポイントを誤って識別する危険性を事前に回避して、正確な回転方向と回転量の測定を行うことが可能となる。
【0040】
球体に付される2個以上の基準記号は、請求項13に示すように、全て点対称性のない文字とすることができる。また、請求項14に示すように、球体に付される基準記号の一部又は全部を、点対称性を有する文字で構成することができる。全て点対称性のない文字を基準記号に用いる場合には、第1の測位ポイントを基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付し、第2の測位ポイントを矩形領域の他の頂点に付し、計測用マークの矩形領域が球体の表面に重なり合うことなく配置することにより、計測用マークに属する測位ポイントを容易に判別することが可能となり、正確な回転方向と回転量の測定を行うことが可能となる。点対称性を有する文字の基準記号を用いる場合には、第1の測位ポイントを基準記号に対する矩形領域の頂点の1つに付し、第2の測位ポイントを矩形領域の第1の測位ポイントと隣り合う頂点に付し、計測用マークの矩形領域が球体の表面に重なり合うことなく配置することで、基準記号の文字の種類にかかわらず正確に回転方向と回転量の測定を行うことが可能となる。
【0041】
請求項15の発明は、第1の画像と第2の画像の中の計測用マークの位置の変化量から、移動する球体の回転方向と回転量を計算する工程に関する。2個以上の計測用マークが付された球体の回転方向と回転量は、以下の工程によって計算することができる。まず、全ての計測用マークに含まれる基準記号の画像を数値化したモデルデータ、及び基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの相対的な位置と距離のデータから構成される計測用マークの配置データを登録する。ここで行われるデータの登録は、初めて回転量と回転方向の測定を行う際に予め実行しておけば、同一のデータをそのまま使い続けることが可能である。また、測定の都度使用する球体に対応したデータを登録することや、球体の基準記号の種類等を一部変更した際に変更分のデータの追加することも可能である。
次に、第1の画像上に全体座標系を定義し、第1の画像から球体の外周を識別して、画像の中の球体の位置を特定する。第1の画像の球体の画像の範囲に含まれる全ての基準記号とモデルデータとのパターンマッチングを行って、基準記号を識別して位置を特定し、基準記号とモデルデータとの相関係数と、基準記号の種類と位置を記憶する。第1の画像に含まれる全ての基準記号について相関係数の高い順に順位付けをおこなう。第2の画像についても、第1の画像と同様の工程によって基準記号とモデルデータとの相関係数と、基準記号の種類と位置を記憶すると共に、第2の画像に含まれる全ての基準記号について相関係数の高い順に順位付けをおこなう。
【0042】
ここで、第1の画像に含まれる基準記号と第2の画像に含まれる基準記号の中から、基準記号の種類が一致し且つモデルデータとの相関係数の最も高い基準記号を選択する。
【0043】
次に、第1の画像から、選択された基準記号を含む計測用マークの第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの位置を特定し、第1の画像に球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義して、選択された基準記号を含む第1の画像の計測用マークの第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの位置を局所座標系に変換して記憶する。第2の画像についても同様に、選択された基準記号を含む計測用マークの第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの位置を特定し、第2の画像に球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義して、選択された基準記号を含む第2の画像の計測用マークの第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの位置を局所座標系に変換して記憶する。最後に、第1の画像の記憶された第1及び第2の測位ポイントと、第2の画像の記憶された第1及び第2の測位ポイントの変化量から、球体の回転方向と回転量を計算する。
【0044】
本発明は、第1の画像に含まれる基準記号と第2の画像に含まれる基準記号の中から、基準記号の種類が一致し且つモデルデータとの相関係数の最も高い基準記号を選択する工程を備えている。モデルデータとの相関係数の高い基準記号は、画像上でのゆがみ、ピントぼけが少なく、より正確に第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの位置を特定可能である。
【0045】
請求項16の発明は、第1の画像と第2の画像の中の計測用マークの位置の変化量から、移動する球体の回転方向と回転量を計算する工程に関する。2個以上の計測用マークが付された球体の回転方向と回転量は、以下の工程によって計算することができる。初めに、計測用マークの画像パターンを数値化したモデルデータを登録する。ここで行われるデータの登録は、初めて回転量と回転方向の測定を行う際に予め実行しておけば、同一のデータをそのまま使い続けることが可能である。また、測定の都度使用する球体に対応したデータを登録することや、球体の基準記号の種類等を一部変更した際に変更分のデータの追加することも可能である。
次に、第1の画像から球体の外周を識別して、球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義する。第1の画像の中の球体の画像の範囲に含まれる全ての計測用マークと、全てのモデルデータとのパターンマッチングを行って、計測用マークを識別して位置を特定し、モデルデータとの相関係数と、計測用マークの基準記号の種類と、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの局所座標系における座標値を記憶する。また、特定された第1の画像の全ての計測用マークについて相関係数の高い順に順位付けを行う。第2の画像についても同様に、球体の外周を識別して、球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義する。第2の画像の中の球体の画像の範囲に含まれる全ての計測用マークと、全てのモデルデータとのパターンマッチングを行って、計測用マークを識別して位置を特定し、モデルデータとの相関係数と、計測用マークの基準記号の種類と、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの局所座標系における座標値を記憶する。また、特定された第2の画像の全ての計測用マークについて相関係数の高い順に順位付けをする。
【0046】
記憶した第1の画像と第2の画像の計測用マークの中から、基準記号が一致し且つモデルデータとの相関係数の最も高い計測用マークの組み合わせを選択する。選択した計測用マークについて、第1の画像と第2の画像における第1及び第2の測位ポイントの変化量から、球体の回転方向と回転量を計算する。
【0047】
本発明の空間を移動する球体の回転方向と回転量の計算方法において予め入力するモデルデータは、基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントを一体化したパターンデータである。画像の中の計測用マークは、基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントを一個のデータとしてモデルデータと比較され、識別され、相関係数が求められる。
【0048】
このため本発明においては、各々の計測用マークで行われるパターンマッチングが1回だけであり、より迅速に球体の回転方向と回転量を計算することができる。また、基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントは、一個のデータとしてパターンマッチングされるために、画像の中で測位ポイントの一方が写っていないような場合には、モデルデータとの相関係数が低くなり、球体の回転方向と回転量の計算には利用されない。 これにより、より精度の高い球体の回転方向と回転量の測定が可能となる。
【0049】
請求項17の発明は、空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する方法であって、第1の撮影工程と、第2の撮影工程における撮影手段から球体までの距離を特定する工程と、特定された距離に基づいて第1の画像の中の球体の正確な大きさを計算することにより、計測用マークを識別するためのパターンマッチングに使用するモデルデータを補正する工程と、特定された距離に基づいて第2の画像の中の球体の正確な大きさを計算することにより、計測用マークを識別するためのパターンマッチングに使用するモデルデータを補正する工程を備えていることを特徴とする。撮影手段から球体までの距離は撮影の都度異なる場合があり、その場合には画像に記録されている計測用マークの大きさが画像毎に異なる結果となる。本発明においては、撮影工程毎に撮影手段から球体までの距離を測定して、その距離に基づいて、計測用マークとパターンマッチングを行うモデルデータを補正することにより、より精度高く計測用マークを識別可能とする。
【0050】
請求項18の発明は、空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する装置に関する。本発明の球体は、任意の記号と、その記号を囲む矩形領域の頂点の1つに配置される第1の測位ポイントと、矩形領域の他の頂点に配置される第2の測位ポイントからなる計測用マークが表面に配置されている。本発明の空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する装置は、移動する球体の第1の画像を撮影する第1の撮影手段と、移動する球体の第2の画像を撮影する第2の撮影手段と、第1の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置と第2の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置の変化量を検出し、検出結果から球体の回転方向と回転量を計算する手段を備えている。
【0051】
請求項19の空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する装置は、球体の移動速度を測定する手段と、球体の移動速度から第1の画像と第2の画像を撮影する好適な時刻を計算して指示する手段と、指示された時刻で第1の画像を撮影する第1の撮影手段と、指示された時刻で第2の画像を撮影する第2の撮影手段と、第1の画像の撮影時刻と第2の画像の撮影時刻の時間差と、第1の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置と、第2の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置の変化量から球体の回転方向と単位時間あたりの回転量を計算する手段を更に備えることを特徴とする。本手段を備えることにより、撮影時刻が明らかで、且つ高品質な球体の画像を得ることが可能となり、球体の回転方向に加えて単位時間あたりの回転量即ち回転速度が正確に測定可能となる。
【0052】
請求項20の空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する装置は、第1の画像の撮影時刻における第1の撮影手段から球体までの距離を特定し、第2の画像の撮影時刻における第2の撮影手段から球体までの距離を特定する距離特定手段と、距離特定手段の結果を入力して、第1の画像と第2の画像の中の球体の正確な大きさを計算し、各々の画像に対してパターンマッチングを行うモデルデータを補正する手段とをさらに備えている。 本手段を備えることにより、より正確なパターンマッチングを行うことが可能となり、空間を移動する球体の回転量即ち回転速度が一層正確に測定可能となる。
【0053】
請求項21の発明は、空間を移動する際の回転方向と回転量測定に適した球体に関する。本発明の球体は、表面に基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントとから構成される計測用マークが2個以上配置されており、基準記号は計測用マーク毎に全て異なる記号となっている。基準記号が点対称性のある文字又は記号である場合には、第1の測位ポイントが基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付されており、第2の測位ポイントが矩形領域の第1の測位ポイントと隣り合う頂点に配置されており、計測用マークの矩形領域が表面に重なり合うことなく配置されている。基準記号が点対称性のない文字又は記号である場合には、第1の測位ポイントが基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付されており、第2の測位ポイントが矩形領域の他の頂点に配置されており、計測用マークの矩形領域が表面に重なり合うことなく配置されている。
【0054】
本発明に係る球体は、回転しながら空間を移動する状態を撮影し、撮影した画像から第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの位置の変化量を測定することにより、空間を移動する際の回転方向と回転量測定を行うことが可能となる。
【0055】
請求項22の発明は、空間を移動する際の回転方向と回転量測定に適した球体に関する。本発明の球体は、複数の計測用マークが6個以上付されており、全ての計測用マークの基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントを結ぶ直線で囲まれる領域の面積が、表面積の10%以上であることを特徴とする。本球体を用いた回転方向と回転量の測定実験においては、本球体が移動中に任意の回転をした場合でも、移動中の球体を撮影した球体に計測用マークが写らずに測定ができない可能性をほぼ無くすことに成功した。
【0056】
尚、本明細書及び特許請求の範囲中において、「空間を移動する球体」としては、野球、テニス、ラグビー、ゴルフ、卓球、バレー、バスケットなどのボールが空中を移動する場合だけでなく、ボーリングやビリヤードなど、球体の下部がフィールド上に接して移動する場合も含むものとする。
【発明の効果】
【0057】
本願発明の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法、空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定装置及び回転方向と回転量測定用の球体を適用することにより、高精度で且つ迅速に球体の回転方向と回転量を測定することが可能となる。更に、球体が任意の回転方向で且つ大きな回転量で回転しながら空間を移動する場合でも、同様に高精度で迅速に球体の回転方向と回転量を測定可能な測定装置と測定方法、並びに回転方向と回転量を測定するために好適な球体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
以下に発明を実施するための最良の形態を列記する。
(形態1) 第1の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置及び第2の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置を識別し記憶する手段は、コンピュータで構成されており、そのコンピュータの記憶装置に画像を解析して各測位ポイントを識別し、測位ポイントの位置を記憶するプログラムが記憶されている。
(形態2) 第1の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置と第2の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置の変化量から球体の回転方向と回転量を計算する手段は、コンピュータで構成されており、そのコンピュータの記憶装置に回転方向と回転量を計算するプログラムが記憶されている。
(形態3) 第1の画像の撮影時刻における第1の撮影手段から球体までの距離を特定し、第2の画像の撮影時刻における第2の撮影手段から球体までの距離を特定する距離特定手段は、球体の進行方向の上方に配置されて空間を移動する球体の軌跡を撮影する手段と、撮影された画像に基づいて、第1の撮影手段から空間を移動する球体までの距離と、第2の撮影手段から空間を移動する球体までの距離を特定する手段で構成される。
(形態4) パターンマッチングに使用される画像データは、拡大、縮小、特定の平面あるいは曲面への投影等によって変形させる加工が可能である。
【実施例】
【0059】
本発明を、野球のボールをバットで打った場合の、打球の回転方向と回転量を測定するために利用する回転量及び回転方向の測定装置に適用した実施例を説明する。本発明が野球のボール以外の球体に適用できることは既に述べた通りである。
【0060】
(第1実施例) 図1に本実施例の回転量及び回転方向の測定装置1(以下、回転測定装置1と略する)とそれが配置された状態を模式的に示す。本実施例の回転測定装置1は、ボール2が最もよく飛ぶと推定される方向に沿って配置される。ボール2の飛ぶと推定される方向は、図1において破線で示されている。本願発明の回転測定装置1は、ボール2と、第1の撮影手段であるカメラ6と、第2の撮影手段であるカメラ8と、球体の回転方向と回転量などを計算する手段であるコンピュータ10と、トリガー信号発生手段4を備えている。カメラ6と、カメラ8と、コンピュータ10と、トリガー信号発生手段4は、通信回線で接続されている。
ボール2の表面には、1個の計測用マーク12が付されている。計測用マーク12を図4に示す。計測用マーク12は、基準記号14である文字Aと、第1の測位ポイント16と、第2の測位ポイント18から構成される。基準記号14である文字Aは点対称性のない文字である。第1の測位ポイント16は、基準記号14を囲む矩形領域の頂点の1つであって、基準記号14から左上に位置する頂点に付されている。第2の測位ポイント18は、基準記号14から左下に位置する頂点に付されている。
【0061】
一対のトリガー信号発生手段4は、トリガー信号発生器4aと光センサー4bと光源4cから構成されている。光センサー4bと光源4cは、ボール2が通過すると推定される経路を挟んで対向するように配置されており、光センサー4bは光源4cの光を受光する。トリガー信号発生器4aは、光センサー4bに接続されており、光センサー4bが出力する光量を入力する。バットで打たれたボール2が経路を通過した場合には、ボール2によって光源の光が遮られて光センサー4bに入射する光が減少し、光センサー4bの出力する値が小さくなる。トリガー信号発生器4aは、光センサー4bの出力値が所定の値以下になったとき、トリガー信号をコンピュータ10に入力する。コンピュータ10は、トリガー信号が入力されると、カメラ6とカメラ8のシャッターを開くタイミングを計算して、カメラ6とカメラ8に入力する。
【0062】
カメラ6とカメラ8はコンピュータ10から入力される撮影指令に基づいてシャッターを開く高速度撮影カメラである。カメラ6とカメラ8は、ボール2が通過すると推定される経路に向けられている。カメラ6は、ボール2が前を通過する時にシャッターを開いて第1の画像を撮影する。カメラ8は、ボール2が前を通過する時にシャッターを開いて第2の画像を撮影する。トリガー信号発生手段4がトリガー信号を出力してから、カメラ6とカメラ8が撮影を開始するまでには、コンピュータ10がシャッターのタイミングを計算するために要する時間と、カメラ6とカメラ8のシャッター操作時間と、各機器の通信時間を合算した時間間隔が必要となる。このために、カメラ6とカメラ8は、コンピュータ10が指定したタイミングでシャッターを開いた場合に、常に前を通過するボール2の画像を確実に撮影できるように、トリガー発生手段4から充分に離れた位置に配置されている。
【0063】
カメラ6とカメラ8の設置間隔は、任意に設定することができる。例えば、回転量が大きくなりそうな測定の場合にはカメラ6とカメラ8の設置間隔を短縮して撮影することで、第1の画像と第2の画像で必ず同じ計測用マークを撮影できる。
第1の画像と第2の画像で同じ計測用マークを撮影するために、カメラ6とカメラ8に広角撮影の可能なカメラを用いて、コンピュータ10がカメラ6とカメラ8にシャッターのタイミングを短い時間間隔で設定することもできる。
【0064】
カメラ6で撮影された第1の画像と、カメラ8で撮影された第2の画像は、コンピュータ10に入力される。コンピュータ10では、第1の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置及び第2の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置を識別し記憶する。コンピュータ10の記憶装置には、第1の画像と第2の画像を解析して各測位ポイントを識別し、測位ポイントの位置を記憶するプログラムが記憶されている。
【0065】
以下に、コンピュータ10に記憶された測位ポイントの識別と位置の記憶を行うプログラムが行う一連の処理の内容を、図2と図3を参照しつつ詳細に説明する。
プログラムが開始すると、ステップS2で基準記号の画像を数値化したモデルデータ、及び基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの相対的な位置と距離のデータから構成される計測用マークの配置データを登録する。ここで行われるデータの登録は、初めて回転量と回転方向の測定を行う際に予め実行しておけば、以後は新たな登録作業を行うことなく同一のデータをそのまま使い続けることが可能である。また、測定の都度使用する球体に対応したデータを登録することや、球体の基準記号の種類等を一部変更した際に変更分のデータの追加することも同様に可能である。
【0066】
ステップS4からステップS23で、第1の画像の測位ポイントの識別と位置の記憶を行う。ステップS4で、第1の画像を読み込む。ステップS6で第1の画像上に全体座標系を定義する。全体座標系は、画像の中心を座標中心とする2次元座標で、基準記号の識別と一時記憶に使用される。ステップS8で、第1の画像からボールの外周を識別して、画像の中の球体の位置を特定する。画像が白黒の場合には、ボールの外周はピクセル毎の二値化処理を行うことにより、識別が可能である。画像がカラーの場合には、ボールの色と色度が一致するデータ範囲を画像上で特定するなど、公知の画像処理工程により、ボールの識別が可能である。ステップS10で、第1の画像の球体の画像の範囲で基準記号とモデルデータのパターンマッチングを行って、ステップS12で基準記号の位置を特定する。ステップS14で、特定した基準記号の位置と、基準記号と測位ポイントの配置データに基づいて第1の測位ポイントを画像上でサーチして検出し、ステップS16で、第1の測位ポイントの全体座標系における座標値を特定して一時記憶する。ステップS18で、特定した基準記号の位置と、基準記号と測位ポイントの配置データに基づいて第2の測位ポイントを画像上でサーチして位置を検出し、ステップS20で、検出した第2の測位ポイントの全体座標系における座標値を特定し、一時記憶する。ステップS22で、第1の画像の球体の中心の位置を特定し、球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義する。ステップS23で、第1の画像の第1の測位ポイントの座標値と、第2の測位ポイントの座標値を全体座標系から局所座標系の値に変換して記憶する。
【0067】
図3のステップS24からS44は、第1の画像についてステップS4からステップS23に行ったものと同様の処理を第2の画像について行うものであり、第2の画像の測位ポイントを識別し、その位置を記憶する処理である。即ち最初にステップS24で、第2の画像を読み込み、ステップS26で第2の画像上に全体座標系を定義する。ステップS28で、第1の画像からボールの外周を識別して、画像の中の球体の位置を特定する。ステップS30で、第2の画像の球体の画像の範囲で基準記号とモデルデータのパターンマッチングを行い、ステップS32で基準記号の位置を特定する。
【0068】
ステップS34で、特定した基準記号の位置と、基準記号と測位ポイントの配置データに基づいて第1の測位ポイントを画像上でサーチして検出し、ステップS36で第1の測位ポイントの全体座標系における座標値を特定して一時記憶する。ステップS38で、特定した基準記号の位置と、基準記号と測位ポイントの配置データに基づいて第2の測位ポイントを画像上でサーチして位置を検出し、ステップS40で検出した第2の測位ポイントの全体座標系における座標値を特定し、一時記憶する。ステップS42で、第2の画像の球体の中心の位置を特定し、球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義する。ステップS44で、第2の画像の第1の測位ポイントの座標値と、第2の測位ポイントの座標値を全体座標系から局所座標系の値に変換して記憶する。
【0069】
ステップS23で記憶した第1の画像の局所座標系における第1及び第2の測位ポイントの座標値と、ステップS44で記憶した第2の画像の局所座標系における第1及び第2の測位ポイントの座標値の変化量から、球体の回転方向と回転量を計算する。
第1の画像の局所座標系における第1及び第2の測位ポイントの座標値と、第2の画像の局所座標系における第1及び第2の測位ポイントの座標値の変化量から球体の回転方向と回転量を計算する工程は、通常のデジタル画像処理の座標変換アルゴリズムに沿って行われる。この計算工程により、3次元の球体の回転方向と回転量を得ることができる。
本実施例のボールに適用可能な計測用マークの一例を、図5から図11に挙げる。図5及び図6には、本実施例の中で使用した基準記号14と同じ文字であるAを使用した計測マークであって、第1の測位ポイント16と第2の測位ポイント18の配置が異なるものを示す。基準記号14の文字Aは点対称性がないので、基準記号14を囲む矩形領域の頂点の1つに付し、第2の測位ポイントを矩形領域の他の任意の頂点に配置することができる。図5には、第1の測位ポイント16を基準記号の左上に配置し、第2の測位ポイント18を基準記号の右上に配置した計測用マークを示す。図6には、第1の測位ポイント16を基準記号の左上に配置し、第2の測位ポイント18を基準記号の右下に配置した計測用マークを示す。
【0070】
図7に、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントを、基準記号上に定義した一例を示す。計測用マーク24は、点対称性のないアルファベット文字Eを基準記号26としており、基準記号26のみで構成される。第1の測位ポイントは文字Eの上部に伸びる横棒と縦棒の交差箇所の中心に定義し、第2の測位ポイントは文字Eの下部に伸びる横棒と縦棒の交差箇所の中心に定義することができる。一般的に第1の測位ポイントと第2の測位ポイントを、基準記号から離れた位置に配置することで、各測位ポイントの位置の識別は、より容易になる。しかし、基準記号の文字の中に、位置の識別が非常に容易なポイントが複数箇所含まれている場合には、測位ポイントを基準記号の中に定義することも可能である。
【0071】
図8と図9に、計測用マークを構成する基準記号に点対称性を有する文字を適用した例を示す。図8と図9は、基準記号30としてアルファベットIを使用した計測マークの一例である。基準記号30の文字Iは点対称性があるので、第1の測位ポイントを基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付したときに、第2の測位ポイントを矩形領域の第1の測位ポイントと隣り合う頂点に配置することができる。図8には、第1の測位ポイント16を基準記号の左上に配置し、第2の測位ポイント18を基準記号の左下に配置した計測用マーク28を示す。図9には、第1の測位ポイント16を基準記号の左上に配置し、第2の測位ポイント18を基準記号の右上に配置した計測用マーク32を示す。
計測用マーク28と計測用マーク32は、基準記号に対して上記のような第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの配置を行うことにより、計測用マーク全体としては点対称性を有さなくなる。この結果、仮に球体が第一の撮影工程と第二の撮影工程の間で基準記号が180゜回転していたとしても、画像から第一の測位ポイントと第二の測位ポイントの位置は、基準記号との位置関係から誤りなく識別することができる。
基準記号は、アルファベット文字に限定されない。図10に、計測用マーク36を構成する基準記号38に数字3を適用した例を示す。このほかにも、ひらがな、漢字等の文字や符号を使用することができる。又、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントは、それぞれが独立した点であるという構成には限定されない。図11の計測用マーク40に示すように、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントを含む棒状のマークで構成し、第1の測位ポイントをその一端に定義し、第2の測位ポイントをその他端に定義することもできる。
【0072】
本実施例におけるボールの回転方向と回転量の測定技術においては、基準記号に非常に一般的な文字Aを用いている。アルファベットは従来から広くそのパターンが画像処理に用いられているので、モデルデータが充実しており、パターンマッチングが容易であり、基準記号の位置を高精度に識別することができる。また、第1の測位ポイントを基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付し、第2の測位ポイントを矩形領域の他の頂点に配置することで、各測位ポイントを画像から検出する作業は基準記号の矩形領域の頂点を重点的に行えば良く、測位ポイントの位置が効率よく検出される。これらの効果によって、本実施例における回転方向と回転量の測定は非常に簡易で、高精度且つ効率よく迅速に行われる。
【0073】
(第2実施例) 図12に本実施例の単位時間当たりの回転量及び回転方向の測定装置41(以下、回転測定装置41と略する)とそれが配置された状態を模式的に示す。第1実施例と同一の構成のものについては、同一符号を付与して重複説明を割愛する。本願発明の回転測定装置41は、ボール42と、第1の撮影手段であるカメラ6と、第2の撮影手段であるカメラ8と、コンピュータ44と、ボール速度検出手段46を備えている。カメラ6と、カメラ8と、コンピュータ44と、ボール速度検出手段46は、通信回線で接続されている。
【0074】
ボール42の表面には、6個の計測用マークが、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントによって定義される矩形領域が、球体の表面に重なり合うことなく付されている。全ての計測用マークは、基準記号である文字と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントから構成されている。計測用マークは、球の中心を原点とする直交座標系を考えた場合に、X,Y,Zの各軸と球体の交点となる位置にそれぞれほぼ一致して配置される。この配置により、6個の計測用マークは球体上で略均等な間隔をとる。
本実施例の回転測定装置41は、1つの計測用マークの位置を計測して回転方向及び回転量を測定するものであり、他の計測用マークとの相対的な位置関係を回転方向及び回転量の測定には用いない。計測用マーク同士の相対的な位置関係を記憶することなく回転方向と回転量の測定を行うことができる。このためボール42の表面の計測用マークの位置は、必ずしも厳密に上記の位置に配置される必要はない。
【0075】
本実施例のボール42は、高精度で迅速に球体の回転方向と回転量を測定する場合に、特に適した球体である。
【0076】
本実施例のボール速度検出手段46は、ボールの通過を検出する第1の検出手段48と、ボール42の通過を検出する第2の検出手段50と、第1の検出手段48と第2の検出手段50の間の距離と、第1の検出手段48が検出した時刻と第2の検出手段50が検出した時刻の差からボール42の移動速度を算出する手段から構成される。ここで、第1の検出手段48には、第1実施例のトリガー信号発生手段4と同様の、信号発生器48aと光センサー48bと光源48cを適用することができる。第2の検出手段50は、第1の検出手段48と同一の仕様で構成することができる。本実施例においては、各光センサー48b、50bに対応する2個の信号発生器を設ける代わりに、図12に示すように信号発生器48aを2つの入力端子を有する構成として、光センサー48bと光センサー50bが出力する光度からその変化を検出し、光センサー48bと光センサー50bの各々に対応するトリガー信号を発生させている。
【0077】
本実施例における第1の検出手段48と第2の検出手段50の間の距離と、第1の検出手段48が検出した時刻と第2の検出手段50が検出した時刻の差からボール42の移動速度を算出する手段は、コンピュータ44に記憶された速度計算プログラムである。速度計算プログラムは、信号発生器48aの出力する信号と、光センサー48bと光センサー50bの距離を元にボール42の移動速度を算出する。
【0078】
更にコンピュータ44は、ボール42の速度の計算結果から、ボール42がカメラ6の前を通過する時刻と、ボール42がカメラ8の前を通過する時刻を計算し、計算結果に基づいて、第1の撮影手段と第2の撮影手段に各々の撮影時刻を指示する。カメラ6とカメラ8は指示された時刻にボール42の画像を撮影して記録する。ここで、カメラ6とカメラ8の設置間隔は、任意に設定することができるので、例えば回転量が大きくなりそうな測定の場合にはカメラ6とカメラ8の設置間隔を短縮しておき、コンピュータ44がカメラ6とカメラ8の好適な撮影時刻を指定することで、第1の画像と第2の画像で同じ計測用マークを確実に撮影し、計測用マークの位置の変化量から球体の回転量と単位時間あたりの回転量を測定することができる。
一方、各計測用マークの配置を初めから極めて正確に行っている場合には、異なる計測用マークが撮影された2枚の画像を元にして球体の回転方向、回転量、及び単位時間あたりの回転量を計測することが可能となる。
【0079】
カメラ6で撮影された第1の画像と、カメラ8で撮影された第2の画像は、コンピュータ44に入力される。コンピュータ44の記憶装置には、第1の画像と第2の画像を解析して、両方の画像に含まれる基準記号を識別し、識別した基準記号を含む計測用マークの測位ポイントの位置を記憶するプログラムが記憶されている。プログラムが実行されると、第1の画像の第1及び第2の測位ポイントと第2の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置が検出されて記憶される。
【0080】
以下に、第1の画像と第2の画像に同一の基準記号が撮影されている場合に行われる、各画像の測位ポイントの識別と位置の記憶のための一連の処理の内容を、図13、図14及び図15を参照しつつ詳細に説明する。この一連の処理は、コンピュータ44の記憶装置に記憶されたプログラムが実行されることによって行われる。
実行されたプログラムは、ステップS52で、全ての計測用マークに含まれる基準記号の画像を数値化したモデルデータ、及び基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの相対的な位置と距離のデータから構成される計測用マークの配置データを登録する。最初にステップS54で、第1の画像を読み込み、ステップS56で、第1の画像上に全体座標系を定義する。ステップS58で、第1の画像から球体の外周を識別して、画像の中の球体の位置を特定する。ステップS60からステップS66の実行ループの中で、第1の画像の球体の画像の範囲に含まれる全ての基準記号とモデルデータとのパターンマッチングを行って、基準記号を識別して位置を特定し、モデルデータとの相関係数と、基準記号の種類と位置を記憶する。更にステップS68で、第1の画像に含まれる全ての基準記号について相関係数の高い順に順位付けを行い、順位付けの結果を含む計測用マークのデータを配列X(i)に記憶する。
第2の画像についても、第1の画像におけるステップS54からステップS68の処理と同様に、ステップS70からステップS84の一連の処理により、第2の画像に含まれる全ての基準記号について、モデルデータとの相関係数と、基準記号の種類と位置を記憶し、第2の画像に含まれる全ての基準記号について相関係数の高い順に順位付けを行い、順位付けの結果を含む計測用マークのデータを配列Y(j)に記憶する。
ステップS86とステップS88において、第1の画像と第2の画像の両方に含まれ、且つモデルデータとの相関係数がいずれの画像においても可能な限り高い基準記号を選択する。その処理の手順は、以下の通りである。まず第1の画像において最もモデルデータと相関係数の高いX(1)の基準記号と、第2の画像において最もモデルデータと相関係数の高いY(1)の基準記号を選択し、両者を比較する。両者の基準記号が一致したときには、X(1)とY(1)の組み合わせを一時記憶する。以下、配列X(i)とY(j)の全ての組み合わせについて、基準記号を比較し、基準記号の一致する全ての組み合わせを一時記憶する(ステップS86)。次に、プログラムはステップS88において、基準記号の一致した全ての組み合わせの中から、モデルデータとの相関係数がいずれの画像においても可能な限り高い基準記号の選択を行う。
【0081】
ここで、本実施例における、ボール42をバットで打ち返したときに撮影された第1の画像の一例を図16に示し、第2の画像の一例を図17に示して、図16と図17から実際に選択される基準記号について説明する。図16の画像からは、X(1)としてボール42の中心に撮影されている基準記号O(文字のオー)を含む計測用マーク60が認識されてそのデータが記憶される。図17の画像からは、Y(1)として基準記号Oを含む計測用マーク60が記憶され、Y(2)として基準記号6を含む計測用マーク62に関するデータが記憶され、Y(3)として基準記号Xを含む計測用マーク64に関するデータが記憶される。ステップS86で、1回目の比較であるX(1)とY(1)の基準記号の比較を行うと基準記号Oが一致するので、X(1)とY(1)の組み合わせを一時記憶する。以下、X(1)とY(2)、及びX(1)とY(3)の基準記号の比較が行われるが、基準記号が一致しないので、これらの組み合わせは記憶されない。ステップS88で、最も相関係数の高いX(i)とY(j)の組み合わせとしてX(1)とY(1)の組み合わせが選択される。この結果、基準記号Oを含む計測用マーク60が選択される。
【0082】
このようにして第1の画像と第2の画像のそれぞれに含まれ、且つモデルデータとの相関係数ができる限り高い基準記号を含む計測用マークが選択されると、処理は図15に進む。
【0083】
まず、第1の画像について、ステップS90で、選択された基準記号を含む計測用マークを選択する。ステップS92で、測位ポイントの配置データに基づいて第1の測位ポイントを画像上でサーチして検出し、ステップS94で第1の測位ポイントの全体座標系における座標値を特定して一時記憶する。ステップS96で測位ポイントの配置データに基づいて第2の測位ポイントを画像上でサーチして位置を検出し、ステップS98で検出した第2の測位ポイントの全体座標系における座標値を特定し、一時記憶する。ステップS100で、第1の画像の球体の中心の位置を特定し、球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義する。ステップS102で、第1の画像の第1の測位ポイントの座標値と、第2の測位ポイントの座標値を全体座標系から局所座標系の値に変換して記憶する。 第2の画像についても第1の画像で行ったステップS90からS102の処理と同様の処理をステップS104からステップS116について行い、選択された計測用マークの第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの位置を局所座標系で記憶する。ステップS102で記憶した第1の画像の局所座標系における第1及び第2の測位ポイントの座標値と、ステップS116で記憶した第2の画像の局所座標系における第1及び第2の測位ポイントの座標値の変化量、及び第1の画像の撮影時刻と第2の画像の撮影時刻から、球体の回転方向と単位時間あたりの回転量を計算することができる。
【0084】
本実施例の回転測定装置は、実際に撮影する球体の移動速度を検出して、第1の撮影工程と第2の撮影工程を最も好ましく正確な画像の得られる時刻に実施している。これにより、高品質で且つ計測用マークの特定が非常に容易な第1の画像と第2の画像を撮影することができ、単位時間当たりの回転量を正確に計算することができる。
【0085】
また、本実施例の回転測定装置において用いられるボールは、6個の計測用マークが均等に配置されているためにそのいずれかの計測用マークが第1の画像と第2の画像に撮影されていれば測定を進めることが可能である。この結果、最初に球体を位置決めして静置してからボールを打つ必要はなく、投げられたボールを打ち返したような場合であっても、ボールの回転方向と単位時間当たりの回転量を測定することができる。
【0086】
(第3実施例) 図18に本実施例の単位時間当たりの回転量及び回転方向の測定装置51(以下、回転測定装置51と略する)とそれが配置された状態を模式的に示す。第1実施例及び第2実施例と同一の構成のものについては、同一符号を付与して重複説明を割愛する。本願発明の回転測定装置51は、ボール54と、第1の撮影手段であるカメラ6と、第2の撮影手段であるカメラ8と、コンピュータ52と、ボール速度検出手段46に加えて、カメラ6及び8の上方に配置されるビデオ53を備えている。
【0087】
本実施例のビデオ53は、カメラ6の前とカメラ8の前をボール54が通過する間の軌道を記録し、記録した画像をコンピュータ52に入力する。コンピュータ52は、ビデオ53が記録した画像から、第1の撮影工程が行われたときのカメラ6から球体までの距離と、第2の撮影工程が行われたときのカメラ8から球体までの距離を特定するプログラムを記憶している。
【0088】
コンピュータ52の記憶手段には、カメラ6とカメラ8から球体までの距離を特定するプログラムと、第1の画像と第2の画像の測位ポイントの識別と位置の記憶を行うプログラムが記憶されている他に、球体上の第1と第2の撮影工程が行われたときの距離に基づいて第1の画像と第2の画像の中の球体の正確な大きさを計算し、計算結果に基づいて記憶している個々のモデルデータを、画像とのパターンマッチングを行うために最も好適な大きさに補正するプログラムを記憶している。補正は、モデルデータの拡大、縮小のほか、得られる画像の種類にあわせて特定の平面若しくは球面等の曲面に投影するといった加工も可能である。コンピュータ52にビデオ53の画像が入力されると、各々の撮影手段とボールとの距離を特定するプログラムが最初に実行される。次に、各々の撮影手段とボールとの距離の計算結果に基づいてパターンマッチングを行うモデルデータを補正するプログラムが実行されて、パターンマッチングのために最適なモデルデータが準備される。
【0089】
本実施例において、コンピュータ52が記憶している計測用マークのモデルデータは、基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントを一体化して記憶しているものである。ボール54の画像の計測用マークのパターンマッチングは、基準記号部分だけでなく、基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントに対しても同時に進められる。
本実施例で使用されるボール54を図19に示す。ボール54の表面には、基準記号である文字と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントから構成される14個の計測用マークが付されている。計測用マークの配置を、球に任意の中心軸を仮想した場合について説明する。中心軸と球体の交点となる場所にそれぞれ1個の計測用マークが配置され、中心軸に対して垂直方向となる球体の赤道上に6個の計測用マークが配置され、更に赤道を緯度0度とした場合の緯度+45度と緯度−45度の緯度線上に、各3個ずつの計測用マークが配置される。図19のボールは、球体の仮想の中心軸と球体の一方の交点に、基準記号Oを含む計測用マークを配置している。計測用マークは、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントによって定義される矩形領域が重なり合う事なく配置される。
本実施例の回転測定装置51は、第2実施例と同様に、1つの計測用マークの位置を計測して回転方向及び回転量を測定するものであり、他の計測用マークとの相対的な位置関係を回転方向及び回転量の測定には用いない。計測用マーク同士の相対的な位置関係を記憶することなく回転方向と回転量の測定を行うことができるので、上記の計測用マークの位置は必ずしもボール54上に厳密に配置される必要はない。
【0090】
本実施例のボール54は、高精度で迅速に球体の回転方向と回転量を測定する場合に、特に適した球体である。
以下に、コンピュータ52に記憶された測位ポイントの識別と位置の記憶を行うプログラムが行う一連の処理の内容を、図20と図21を参照しつつ説明する。実行されたプログラムは、ステップS132で、全ての計測用マークの第1の測位ポイントと第2の測位ポイントのパターンを数値化した補正済のモデルデータを入力し、ステップS134で第1の画像データを入力する。プログラムは、ステップS136で、第1の画像から球体の外周を識別して、球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義する。ステップS138とステップS140で、第1の画像の中の球体の画像の範囲に含まれる全ての計測用マークと、全てのモデルデータとのパターンマッチングを行って、計測用マークを識別する。特定された計測用マークは、ステップS142で、モデルデータとの相関係数と、計測用マークの基準記号の種類と、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの局所座標系における座標値を記憶する。ステップS138からステップS144の実行ループの中で、第1の画像の球体の画像の範囲に含まれる全ての計測用マークとモデルデータとのパターンマッチングを行って、計測用マークを識別して位置を特定し、データを記憶する。更にステップS146で、第1の画像に含まれる識別された全ての計測用マークについて相関係数の高い順に順位付けを行い、計測用マークのデータを配列X(i)に記憶する。
第2の画像についても、第1の画像に行ったステップS134からステップS146の処理と同様に、ステップS148からステップS160の一連の処理により、第2の画像に含まれる全ての計測用マークについて、モデルデータとの相関係数と、基準記号の種類と、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの局所座標系における座標値を記憶し、第2の画像に含まれる全ての基準記号について相関係数の高い順に順位付けを行い、計測用マークを配列Y(j)に記憶する。
ステップS162の処理によって、配列X(i)と配列Y(j)は、配列X(1)と配列Y(1)から順に比較され、第1の画像で特定された計測用マークと第2の画像で特定された計測用マークの中から、基準記号が一致する計測用マークの組み合わせが一時記憶される。ステップS164において、一時記憶された計測用マークの組み合わせの中で、モデルデータとの相関係数の最も高い計測用マークの組み合わせが決定される。
決定された計測用マークのデータを、配列X(i)と配列Y(j)から選択し、選択された各々の計測用マークの第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの局所座標系における座標値を用いることにより、回転方向と単位時間あたりの回転量の計算を行うことができる。
本実施例における回転測定装置は、カメラ6の前をボール54が通過する際に行われる第1の撮影工程と、カメラ8の前をボール54が通過する際に行われる第2の撮影工程を記録するビデオ53を備えている。カメラ6及びカメラ8から球体までの距離は撮影の都度異なる場合があり、その場合には画像に記録されている計測用マークの大きさが画像毎に異なる結果となるが、本実施例においては、撮影工程毎に撮影手段から球体までの距離を測定して、その距離に基づいて、計測用マークとパターンマッチングを行うモデルデータを補正することにより、より精度高く計測用マークを識別可能とする。
【0091】
また、本実施例で使用されるモデルデータは、基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントを一体化したパターンデータである。画像の中の計測用マークは、基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントを一個のデータとしてモデルデータと比較され、識別され、相関係数が求められる。
【0092】
このため本実施例においては、各々の画像の測位ポイントの識別と位置の記憶のためのプログラムで行われるパターンマッチングが1回だけであり、より迅速に計算することができる。また、基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントは、一個のデータとしてパターンマッチングされるために、画像の中で測位ポイントの一方が写っていないような場合には、モデルデータとの相関係数が低くなり、球体の回転方向と回転量の計算には利用されない。これにより、より精度の高い球体の回転方向と回転量の測定が可能となる。
(第4実施例) 本実施例の回転測定装置と画像の撮影工程の構成は、実施例3と同一であり、重複説明を省略する。本実施例の回転測定装置は、画像の識別と計測用マークの位置の記憶のためのプログラムの処理内容が異なっている。
本実施例の回転測定装置のコンピュータは、図22と図23に示すように、画像の識別のために使用されるモデルデータの他に、ボール表面の全計測用マークの正確な配置データを記憶している(ステップS152)。プログラムは、モデルデータと、全検索用マークの配置データを用いて、第1の画像のなかの識別された計測用マークの位置から、第1の画像撮影時のボール表面の全計測用マークの位置を計算により求めて局所座標系で記憶する(ステップS166,168)。第2の画像についても同様に、画像のなかの識別された計測用マークの位置から、第2の画像撮影時のボール表面の全計測用マークの位置を計算により求めて局所座標系で記憶する(ステップS182,184)。第1の画像撮影時の計測用マークの位置と、第2の画像撮影時の計測用マークの位置の変化量から、球体の回転方向と回転量が計算される。
【0093】
本実施例の回転測定装置は、第1の画像撮影時と第2の画像撮影時のボール表面の全計測用マークの位置を計算により求めて局所座標系で記憶することができる。このため、もしも第1の画像で識別された計測用マークが、回転により第2の画像では全て識別されなくなった場合においても、計算結果で求められている別の計測用マークの位置を使用することにより回転方向と回転量を求めることができる。
【0094】
このため、第1実施例から第3実施例までの回転測定装置の場合には、回転量が大きくなりそうな測定の場合には第1の撮影手段と第2の撮影手段の設置間隔を短縮する調整や、第1の画像の撮影時刻と第2の画像の撮影時刻の間隔を短縮する等の調整を行って第1の画像と第2の画像で必ず同じ計測用マークを撮影する必要があったが、本実施例の回転測定装置は、測定前のこのような調整を行うことなく任意の回転量で空間を飛行するボールの測定に適用が可能である。
【0095】
以上、第1実施例から第4実施例において本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。例えば実施例においては、球体の表面に計測用マークを1個と、6個と、14個付す場合について例示したが、球体の表面に2個以上の任意の個数の計測用マークを付した場合であっても、第2実施例から第4実施例の回転測定装置の構成によって、空間を移動する球体の正確な回転方向と回転量の測定を行うことができる。また、球体の表面に1個の計測用マークを付した場合であっても、第2実施例と第3実施例の回転測定装置の構成によって、空間を移動する球体の正確な回転方向と回転量の測定を行うことができる。
同様に、第1実施例の回転測定装置において、2個以上の任意の個数の計測用マークを付した場合には、第2実施例から第4実施例に示した第1の画像と第2の画像の測位ポイントの識別と位置の記憶を行うプログラムのいずれかをコンピュータ10の上で実行することにより、他の回転測定装置の構成は何ら変更することなく、空間を移動する球体の正確な回転方向と回転量の測定を行うことができる。このように、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、実施例に記載の組み合わせに限定されるものではない。
【0096】
また、特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0097】
例えば、計測用マークを構成する第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの配置は、他の計測用マークの測位ポイントとの間で検出を誤る恐れがなく、基準記号からの距離と方向を予め明らかにできる位置であれば、矩形領域の頂点に限定されない。例えば、基準記号の中心から等距離にある2つの点を、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントとして用いることができる。この場合、その中心からの距離、又は、ポイント間の距離及び方向を全ての計測用マークについて等しくすることが好ましいが、これらを計測用マーク毎に異なるものとすることも可能である。
【0098】
例えば、球体の速度を測定する装置として、2組の光源と光センサーと信号発生器を利用しているが、スピードガンを使用することも可能である。
【0099】
例えば、第1の撮影手段と第2の撮影手段に、高解像度のビデオを使用することが可能である。
【0100】
例えば、第1の画像の撮影時刻における第1の撮影手段から球体までの距離を特定し、第2の画像の撮影時刻における第2の撮影手段から球体までの距離を特定する距離特定手段を、第1の撮影手段と第2の撮影手段の上方に配置されて、空間を移動する球体と第1の撮影手段と第2の撮影手段とを撮影する手段と、撮影された画像から距離を特定する計算手段とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】第1実施例の空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する装置の構成を示す図である。
【図2】第1実施例の測位ポイントの識別と位置の記憶を行うプログラムの前半のフロー図である。
【図3】第1実施例の測位ポイントの識別と位置の記憶を行うプログラムの後半のフロー図である。
【図4】計測用マークの構成を示す図である。
【図5】計測用マークの構成を示す図である。
【図6】計測用マークの構成を示す図である。
【図7】計測用マークの構成を示す図である。
【図8】計測用マークの構成を示す図である。
【図9】計測用マークの構成を示す図である。
【図10】計測用マークの構成を示す図である。
【図11】計測用マークの構成を示す図である。
【図12】第2実施例の空間を移動する球体の回転方向と単位時間あたりの回転量を測定する装置の構成を示す図である。
【図13】第2実施例の測位ポイントの識別と位置の記憶を行うプログラムの第1の部分のフロー図である。
【図14】第2実施例の測位ポイントの識別と位置の記憶を行うプログラムの第2の部分のフロー図である。
【図15】第2実施例の測位ポイントの識別と位置の記憶を行うプログラムの第3の部分のフロー図である。
【図16】第2実施例の第1の画像の一例を示す図である。
【図17】第2実施例の第2の画像の一例を示す図である。
【図18】第3実施例の空間を移動する球体の回転方向と単位時間あたりの回転量を測定する装置の構成を示す図である。
【図19】第3実施例のボールの計測用マークの配置を示す図である。
【図20】第3実施例の測位ポイントの識別と位置の記憶を行うプログラムの前半部分のフロー図である。
【図21】第3実施例の測位ポイントの識別と位置の記憶を行うプログラムの後半部分のフロー図である。
【図22】第4実施例の測位ポイントの識別と位置の記憶を行うプログラムの前半部分のフロー図である。
【図23】第4実施例の測位ポイントの識別と位置の記憶を行うプログラムの後半部分のフロー図である。
【符号の説明】
【0102】
1,41,51: 回転測定装置
2,42,54: ボール
4: トリガー信号発生手段
4a: トリガー信号発生器
4b: 光センサー
4c: 光源
6,8: カメラ
10,44,52: コンピュータ
12,20,22,24,28,32,36,40: 計測用マーク
14,26,30,38: 基準記号
16: 第1の測位ポイント
18: 第2の測位ポイント
46: ボール速度検出手段
48: 第1の検出手段
50: 第2の検出手段
53: ビデオ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する方法であって、
移動する球体の表面に、任意の基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントから構成される計測用マークを付す工程と、
移動する球体の第1の画像を撮影する第1の撮影工程と、
第1の画像の撮影時刻よりも後に、移動する球体の第2の画像を撮影する第2の撮影工程と、
第1の画像と第2の画像間の計測用マークの位置の変化量から、球体の回転方向と回転量を計算する工程を備えていることを特徴とする空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項2】
第1の撮影工程と第2の撮影工程の撮影時刻を指示する工程と、
第1の画像を指示された時刻で撮影する第1の撮影工程と、
第2の画像を指示された時刻で撮影する第2の撮影工程と、
第1の画像の撮影時刻と第2の画像の撮影時刻の時間差と、第1の画像と第2の画像間の計測用マークの位置の変化量から、球体の回転方向と単位時間あたりの回転量を計算する工程をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項3】
第1の撮影工程と第2の撮影工程の撮影時刻を指示する工程が、
球体が、第1の球体検出手段を通過した時刻を検出する第1の球体検出工程と、
球体が、第1の球体検出手段から所定の距離を隔てて設けられた第2の球体検出手段を通過した時刻を検出する第2の球体検出工程と、
第1の球体検出手段と第2の球体検出手段の間の距離と、第1の球体検出手段が検出した時刻と第2の検出手段の検出した時刻の差から球体の移動速度を算出する工程と、
算出された球体の移動速度から第1の画像の好適な撮影時刻を計算して指示する工程と、
算出された球体の移動速度から第2の画像の好適な撮影時刻を計算して指示する工程を備えていることを特徴とする請求項2に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項4】
計測用マークを構成する基準記号が点対称性のない文字であり、第1の測位ポイントが基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付されており、第2の測位ポイントが矩形領域の他の頂点に配置されることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項5】
計測用マークを構成する基準記号が点対称性を有する文字であり、第1の測位ポイントが基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付されており、第2の測位ポイントが矩形領域の第1の測位ポイントと隣り合う頂点に配置されることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項6】
第1の画像と第2の画像の中の計測用マークの位置の変化量から、移動する球体の回転方向と回転量を計算する工程が、
基準記号の画像を数値化したモデルデータ、及び基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの相対的な位置と距離のデータから構成される計測用マークの配置データを登録する工程と、
第1の画像上に全体座標系を定義する工程と、
第1の画像から球体の外周を識別して、画像の中の球体の位置を特定する工程と、
第1の画像の球体の画像の範囲で基準記号とモデルデータのパターンマッチングを行って、基準記号の位置を特定する工程と、
特定した基準記号の位置と計測用マークの配置データに基づいて第1の測位ポイントを画像上でサーチして位置を検出し、検出した第1の測位ポイントの全体座標系における座標値を記憶する工程と、
特定した基準記号の位置と計測用マークの配置データに基づいて第2の測位ポイントを画像上でサーチして位置を検出し、検出した第2の測位ポイントの全体座標系における座標値を記憶する工程と、
第1の画像の球体の中心の位置を特定し、球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義する工程と、
第1の画像の第1の測位ポイントの座標値と、第2の測位ポイントの座標値を全体座標系から局所座標系の値に変換して記憶する工程と、
第2の画像上に全体座標系を定義する工程と、
第2の画像から球体の外周を識別して、画像の中の球体の位置を特定する工程と、
第2の画像の球体の画像の範囲で基準記号とモデルデータのパターンマッチングを行って基準記号の位置を特定する工程と、
特定した基準記号の位置と計測用マークの配置データに基づいて第1の測位ポイントを画像上でサーチして位置を検出し、検出した第1の測位ポイントの全体座標系における座標値を記憶する工程と、
特定した基準記号の位置と計測用マークの配置データに基づいて第2の測位ポイントを画像上でサーチして位置を検出し、検出した第2の測位ポイントの全体座標系における座標値を記憶する工程と、
第2の画像の球体の中心の位置を特定し、球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義する工程と、
第2の画像の第1の測位ポイントの座標値と、第2の測位ポイントの座標値を全体座標系から局所座標系の値に変換して記憶する工程と、
第1の画像の局所座標系における第1及び第2の測位ポイントの座標値と、第2の画像の局所座標系における第1及び第2の測位ポイントの座標値の変化量から、球体の回転方向と回転量を計算する工程を備えることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項7】
空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する方法であって、
第1の撮影工程と、第2の撮影工程における撮影手段から球体までの距離を特定する工程と、
特定された第1の撮影手段から球体までの距離に基づいて、第1の画像の中の球体の正確な大きさを計算し、計測用マークを識別するためのパターンマッチングに使用するモデルデータを補正する工程と、
特定された第2の撮影手段から球体までの距離に基づいて、第2の画像の中の球体の正確な大きさを計算し、計測用マークを識別するためのパターンマッチングに使用するモデルデータを補正する工程をさらに備えていることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項8】
空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する方法であって、
移動する球体の表面に、任意の基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントとから構成される2個以上の計測用マークを付す工程を備えており、計測用マークは基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントを結ぶ直線で囲まれる領域が互いに重なり合うことなく配置されており、
移動する球体の第1の画像を撮影する第1の撮影工程と、
第1の画像の撮影時刻よりも後に、移動する球体の第2の画像を撮影する第2の撮影工程と、
第1の画像と第2の画像間の計測用マークの位置の変化量から、球体の回転方向と回転量を計算する工程を備えていることを特徴とする空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項9】
第1の撮影工程と第2の撮影工程の撮影時刻を指示する工程と、
第1の画像を指示された時刻で撮影する第1の撮影工程と、
第2の画像を指示された時刻で撮影する第2の撮影工程と、
第1の画像の撮影時刻と第2の画像の撮影時刻の時間差と、第1の画像と第2の画像間の計測用マークの位置の変化量から、球体の単位時間あたりの回転量を計算する工程を更に備えていることを特徴とする請求項8に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項10】
第1の撮影工程と第2の撮影工程の撮影時刻を指示する工程が、
球体が、第1の球体検出手段を通過した時刻を検出する第1の球体検出工程と、
球体が、第1の球体検出手段から所定の距離を隔てて設けられた第2の球体検出手段を通過した時刻を検出する第2の球体検出工程と、
第1の球体検出手段と第2の球体検出手段の間の距離と、第1の球体検出手段が検出した時刻と第2の検出手段の検出した時刻の差から球体の移動速度を算出する工程と、
算出された球体の移動速度から第1の画像の好適な撮影時刻を計算して指示する工程と、
算出された球体の移動速度から第2の画像の好適な撮影時刻を計算して指示する工程を備えていることを特徴とする請求項9に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項11】
球体に、計測用マークが6個以上付されており、全ての計測用マークの基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントを結ぶ直線で囲まれる領域の面積の合計値が、球体の表面積の10%以上であることを特徴とする請求項8,9又は10に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項12】
球体の表面に付される複数の計測用マークを構成する基準記号が、計測用マーク毎に全て異なる記号であり、第1の測位ポイントが基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付されており、第2の測位ポイントが矩形領域の他の頂点に付されており、計測用マークの矩形領域が球体の表面に重なり合うことなく配置されることを特徴とする請求項8,9又は10に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項13】
球体の表面に付される複数の計測用マークを構成する基準記号が全て点対称性のない文字であり、第1の測位ポイントが基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付されており、第2の測位ポイントが矩形領域の他の頂点に付されており、計測用マークの矩形領域が球体の表面に重なり合うことなく配置されることを特徴とする請求項8,9又は10に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項14】
球体の表面に付される複数の計測用マークを構成する基準記号は点対称性のない文字若しくは点対称性を有する文字であり、
点対称性のない文字を基準記号とする計測用マークには、第1の測位ポイントが基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付され、第2の測位ポイントが矩形領域の他の頂点に付されており、
点対称性を有する文字を基準記号とする計測用マークには、第1の測位ポイントが基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付され、第2の測位ポイントが矩形領域の第1の測位ポイントと隣り合う頂点に付されており、
計測用マークの矩形領域が球体の表面に重なり合うことなく配置されることを特徴とする請求項8,9又は10に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項15】
第1の画像と第2の画像の中の計測用マークの位置の変化量から、移動する球体の回転方向と回転量を計算する工程が、
全ての計測用マークに含まれる基準記号の画像を数値化したモデルデータ、及び基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの相対的な位置と距離のデータから構成される計測用マークの配置データを登録する工程と、
第1の画像上に全体座標系を定義する工程と、
第1の画像から球体の外周を識別して、画像の中の球体の位置を特定する工程と、
第1の画像の球体の画像の範囲に含まれる全ての基準記号とモデルデータとのパターンマッチングを行って、基準記号を識別して位置を特定し、モデルデータとの相関係数と、基準記号の種類と位置を記憶する工程と、
第1の画像に含まれる全ての基準記号について相関係数の高い順に順位付けをする工程と、
第2の画像上に全体座標系を定義する工程と、
第2の画像から球体の外周を識別して、画像の中の球体の位置を特定する工程と、
第2の画像の球体の画像の範囲に含まれる全ての基準記号とモデルデータとのパターンマッチングを行って、基準記号を識別して位置を特定し、モデルデータとの相関係数と、基準記号の種類と位置を記憶する工程と、
第2の画像に含まれる全ての基準記号について相関係数の高い順に順位付けをする工程と、
第1の画像に含まれる基準記号と第2の画像に含まれる基準記号の中から、基準記号の種類が一致し且つモデルデータとの相関係数の最も高い基準記号を選択する工程と、
選択された基準記号を含む第1の画像の計測用マークの第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの位置を特定する工程と、
第1の画像に球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義する工程と、
選択された基準記号を含む第1の画像の計測用マークの第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの位置を局所座標系に変換して記憶する工程と、
選択された基準記号を含む第2の画像の計測用マークの第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの位置を特定する工程と、
第2の画像に球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義する工程と、
選択された基準記号を含む第2の画像の計測用マークの第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの位置を局所座標系に変換して記憶する工程と、
第1の画像の記憶された第1及び第2の測位ポイントと、第2の画像の記憶された第1及び第2の測位ポイントの変化量から、球体の回転方向と回転量を計算する工程を備えることを特徴とする請求項8,9又は10に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項16】
第1の画像と第2の画像の中の計測用マークの位置の変化量から、移動する球体の回転方向と回転量を計算する工程が、
全ての計測用マークの画像パターンを数値化したモデルデータを登録する工程と、
第1の画像から球体の外周を識別して、球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義する工程と、
第1の画像の中の球体の画像の範囲に含まれる全ての計測用マークと、全てのモデルデータとのパターンマッチングを行って、計測用マークを識別して位置を特定し、モデルデータとの相関係数と、計測用マークの基準記号の種類と、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの局所座標系における座標値を記憶する工程と、
特定された第1の画像の全ての計測用マークについて相関係数の高い順に順位付けをする工程と、
第2の画像から球体の外周を識別して、球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義する工程と、
第2の画像の中の球体の画像の範囲に含まれる全ての計測用マークと、全てのモデルデータとのパターンマッチングを行って、計測用マークを識別して位置を特定し、モデルデータとの相関係数と、計測用マークの基準記号の種類と、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの局所座標系における座標値を記憶する工程と、
特定された第2の画像の全ての計測用マークについて相関係数の高い順に順位付けをする工程と、
第1の画像で特定された計測用マークと第2の画像で特定された計測用マークの中から、基準記号が一致し且つモデルデータとの相関係数の最も高い計測用マークの組み合わせを選択する工程と、
第1の画像の選択された計測用マークの第1及び第2の測位ポイントと、第2の画像の計測用マークの選択された第1及び第2の測位ポイントの変化量から、球体の回転量を計算する工程を備えることを特徴とする請求項8,9又は10に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項17】
空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する方法であって、
第1の撮影工程と、第2の撮影工程における撮影手段から球体までの距離を特定する工程と、
特定された距離に基づいて第1の画像の中の球体の正確な大きさを計算することにより、計測用マークを識別するためのパターンマッチングに使用するモデルデータを補正する工程と、
特定された距離に基づいて第2の画像の中の球体の正確な大きさを計算することにより、計測用マークを識別するためのパターンマッチングに使用するモデルデータを補正する工程を備えていることを特徴とする請求項8,9又は10に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項18】
空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する装置であって、
その球体は、任意の記号と、その記号を囲む矩形領域の頂点の1つに配置される第1の測位ポイントと、矩形領域の他の頂点に配置される第2の測位ポイントからなる計測用マークが、表面に配置されており、
移動する球体の第1の画像を撮影する第1の撮影手段と、移動する球体の第2の画像を撮影する第2の撮影手段と、第1の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置と第2の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置の変化量から球体の回転方向と回転量を計算する手段を備えていることを特徴とする空間を移動する球体の回転量測定装置。
【請求項19】
空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する装置であって、
球体の移動速度を測定する手段と、球体の移動速度から第1の画像と第2の画像を撮影する好適な時刻を計算して指示する手段と、指示された時刻で第1の画像を撮影する第1の撮影手段と、指示された時刻で第2の画像を撮影する第2の撮影手段と、第1の画像の撮影時刻と第2の画像の撮影時刻の時間差と、第1の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置と、第2の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置の変化量から球体の回転方向と単位時間あたりの回転量を計算する手段を備えていることを特徴とする請求項18に記載の空間を移動する球体の回転量の測定装置。
【請求項20】
空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する装置であって、
第1の画像の撮影時刻における第1の撮影手段から球体までの距離を特定し、第2の画像の撮影時刻における第2の撮影手段から球体までの距離を特定する距離特定手段と、
距離特定手段の結果を入力して、第1の画像と第2の画像の中の球体の正確な大きさを計算し、各々の画像に対してパターンマッチングに使用されるモデルデータを補正する手段とをさらに備えていることを特徴とする請求項18又は19に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定装置。
【請求項21】
表面に基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントとから構成される計測用マークが2個以上配置されており、基準記号は計測用マーク毎に全て異なる記号であり、
基準記号が点対称性のある文字又は記号である場合には、第1の測位ポイントが基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付されており、第2の測位ポイントが矩形領域の第1の測位ポイントと隣り合う頂点に配置されており、計測用マークの矩形領域が表面に重なり合うことなく配置されており、
基準記号が点対称性のない文字又は記号である場合には、第1の測位ポイントが基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付されており、第2の測位ポイントが矩形領域の他の頂点に配置されており、計測用マークの矩形領域が表面に重なり合うことなく配置されていることを特徴とする空間を移動する際の回転方向と回転量測定に適した球体。
【請求項22】
複数の計測用マークが6個以上付されており、全ての計測用マークの基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントを結ぶ直線で囲まれる領域の面積が、表面積の10%以上であることを特徴とする請求項21に記載の空間を移動する際の回転方向と回転量測定に適した球体。
【請求項1】
空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する方法であって、
移動する球体の表面に、任意の基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントから構成される計測用マークを付す工程と、
移動する球体の第1の画像を撮影する第1の撮影工程と、
第1の画像の撮影時刻よりも後に、移動する球体の第2の画像を撮影する第2の撮影工程と、
第1の画像と第2の画像間の計測用マークの位置の変化量から、球体の回転方向と回転量を計算する工程を備えていることを特徴とする空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項2】
第1の撮影工程と第2の撮影工程の撮影時刻を指示する工程と、
第1の画像を指示された時刻で撮影する第1の撮影工程と、
第2の画像を指示された時刻で撮影する第2の撮影工程と、
第1の画像の撮影時刻と第2の画像の撮影時刻の時間差と、第1の画像と第2の画像間の計測用マークの位置の変化量から、球体の回転方向と単位時間あたりの回転量を計算する工程をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項3】
第1の撮影工程と第2の撮影工程の撮影時刻を指示する工程が、
球体が、第1の球体検出手段を通過した時刻を検出する第1の球体検出工程と、
球体が、第1の球体検出手段から所定の距離を隔てて設けられた第2の球体検出手段を通過した時刻を検出する第2の球体検出工程と、
第1の球体検出手段と第2の球体検出手段の間の距離と、第1の球体検出手段が検出した時刻と第2の検出手段の検出した時刻の差から球体の移動速度を算出する工程と、
算出された球体の移動速度から第1の画像の好適な撮影時刻を計算して指示する工程と、
算出された球体の移動速度から第2の画像の好適な撮影時刻を計算して指示する工程を備えていることを特徴とする請求項2に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項4】
計測用マークを構成する基準記号が点対称性のない文字であり、第1の測位ポイントが基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付されており、第2の測位ポイントが矩形領域の他の頂点に配置されることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項5】
計測用マークを構成する基準記号が点対称性を有する文字であり、第1の測位ポイントが基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付されており、第2の測位ポイントが矩形領域の第1の測位ポイントと隣り合う頂点に配置されることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項6】
第1の画像と第2の画像の中の計測用マークの位置の変化量から、移動する球体の回転方向と回転量を計算する工程が、
基準記号の画像を数値化したモデルデータ、及び基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの相対的な位置と距離のデータから構成される計測用マークの配置データを登録する工程と、
第1の画像上に全体座標系を定義する工程と、
第1の画像から球体の外周を識別して、画像の中の球体の位置を特定する工程と、
第1の画像の球体の画像の範囲で基準記号とモデルデータのパターンマッチングを行って、基準記号の位置を特定する工程と、
特定した基準記号の位置と計測用マークの配置データに基づいて第1の測位ポイントを画像上でサーチして位置を検出し、検出した第1の測位ポイントの全体座標系における座標値を記憶する工程と、
特定した基準記号の位置と計測用マークの配置データに基づいて第2の測位ポイントを画像上でサーチして位置を検出し、検出した第2の測位ポイントの全体座標系における座標値を記憶する工程と、
第1の画像の球体の中心の位置を特定し、球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義する工程と、
第1の画像の第1の測位ポイントの座標値と、第2の測位ポイントの座標値を全体座標系から局所座標系の値に変換して記憶する工程と、
第2の画像上に全体座標系を定義する工程と、
第2の画像から球体の外周を識別して、画像の中の球体の位置を特定する工程と、
第2の画像の球体の画像の範囲で基準記号とモデルデータのパターンマッチングを行って基準記号の位置を特定する工程と、
特定した基準記号の位置と計測用マークの配置データに基づいて第1の測位ポイントを画像上でサーチして位置を検出し、検出した第1の測位ポイントの全体座標系における座標値を記憶する工程と、
特定した基準記号の位置と計測用マークの配置データに基づいて第2の測位ポイントを画像上でサーチして位置を検出し、検出した第2の測位ポイントの全体座標系における座標値を記憶する工程と、
第2の画像の球体の中心の位置を特定し、球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義する工程と、
第2の画像の第1の測位ポイントの座標値と、第2の測位ポイントの座標値を全体座標系から局所座標系の値に変換して記憶する工程と、
第1の画像の局所座標系における第1及び第2の測位ポイントの座標値と、第2の画像の局所座標系における第1及び第2の測位ポイントの座標値の変化量から、球体の回転方向と回転量を計算する工程を備えることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項7】
空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する方法であって、
第1の撮影工程と、第2の撮影工程における撮影手段から球体までの距離を特定する工程と、
特定された第1の撮影手段から球体までの距離に基づいて、第1の画像の中の球体の正確な大きさを計算し、計測用マークを識別するためのパターンマッチングに使用するモデルデータを補正する工程と、
特定された第2の撮影手段から球体までの距離に基づいて、第2の画像の中の球体の正確な大きさを計算し、計測用マークを識別するためのパターンマッチングに使用するモデルデータを補正する工程をさらに備えていることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項8】
空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する方法であって、
移動する球体の表面に、任意の基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントとから構成される2個以上の計測用マークを付す工程を備えており、計測用マークは基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントを結ぶ直線で囲まれる領域が互いに重なり合うことなく配置されており、
移動する球体の第1の画像を撮影する第1の撮影工程と、
第1の画像の撮影時刻よりも後に、移動する球体の第2の画像を撮影する第2の撮影工程と、
第1の画像と第2の画像間の計測用マークの位置の変化量から、球体の回転方向と回転量を計算する工程を備えていることを特徴とする空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項9】
第1の撮影工程と第2の撮影工程の撮影時刻を指示する工程と、
第1の画像を指示された時刻で撮影する第1の撮影工程と、
第2の画像を指示された時刻で撮影する第2の撮影工程と、
第1の画像の撮影時刻と第2の画像の撮影時刻の時間差と、第1の画像と第2の画像間の計測用マークの位置の変化量から、球体の単位時間あたりの回転量を計算する工程を更に備えていることを特徴とする請求項8に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項10】
第1の撮影工程と第2の撮影工程の撮影時刻を指示する工程が、
球体が、第1の球体検出手段を通過した時刻を検出する第1の球体検出工程と、
球体が、第1の球体検出手段から所定の距離を隔てて設けられた第2の球体検出手段を通過した時刻を検出する第2の球体検出工程と、
第1の球体検出手段と第2の球体検出手段の間の距離と、第1の球体検出手段が検出した時刻と第2の検出手段の検出した時刻の差から球体の移動速度を算出する工程と、
算出された球体の移動速度から第1の画像の好適な撮影時刻を計算して指示する工程と、
算出された球体の移動速度から第2の画像の好適な撮影時刻を計算して指示する工程を備えていることを特徴とする請求項9に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項11】
球体に、計測用マークが6個以上付されており、全ての計測用マークの基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントを結ぶ直線で囲まれる領域の面積の合計値が、球体の表面積の10%以上であることを特徴とする請求項8,9又は10に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項12】
球体の表面に付される複数の計測用マークを構成する基準記号が、計測用マーク毎に全て異なる記号であり、第1の測位ポイントが基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付されており、第2の測位ポイントが矩形領域の他の頂点に付されており、計測用マークの矩形領域が球体の表面に重なり合うことなく配置されることを特徴とする請求項8,9又は10に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項13】
球体の表面に付される複数の計測用マークを構成する基準記号が全て点対称性のない文字であり、第1の測位ポイントが基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付されており、第2の測位ポイントが矩形領域の他の頂点に付されており、計測用マークの矩形領域が球体の表面に重なり合うことなく配置されることを特徴とする請求項8,9又は10に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項14】
球体の表面に付される複数の計測用マークを構成する基準記号は点対称性のない文字若しくは点対称性を有する文字であり、
点対称性のない文字を基準記号とする計測用マークには、第1の測位ポイントが基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付され、第2の測位ポイントが矩形領域の他の頂点に付されており、
点対称性を有する文字を基準記号とする計測用マークには、第1の測位ポイントが基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付され、第2の測位ポイントが矩形領域の第1の測位ポイントと隣り合う頂点に付されており、
計測用マークの矩形領域が球体の表面に重なり合うことなく配置されることを特徴とする請求項8,9又は10に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項15】
第1の画像と第2の画像の中の計測用マークの位置の変化量から、移動する球体の回転方向と回転量を計算する工程が、
全ての計測用マークに含まれる基準記号の画像を数値化したモデルデータ、及び基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの相対的な位置と距離のデータから構成される計測用マークの配置データを登録する工程と、
第1の画像上に全体座標系を定義する工程と、
第1の画像から球体の外周を識別して、画像の中の球体の位置を特定する工程と、
第1の画像の球体の画像の範囲に含まれる全ての基準記号とモデルデータとのパターンマッチングを行って、基準記号を識別して位置を特定し、モデルデータとの相関係数と、基準記号の種類と位置を記憶する工程と、
第1の画像に含まれる全ての基準記号について相関係数の高い順に順位付けをする工程と、
第2の画像上に全体座標系を定義する工程と、
第2の画像から球体の外周を識別して、画像の中の球体の位置を特定する工程と、
第2の画像の球体の画像の範囲に含まれる全ての基準記号とモデルデータとのパターンマッチングを行って、基準記号を識別して位置を特定し、モデルデータとの相関係数と、基準記号の種類と位置を記憶する工程と、
第2の画像に含まれる全ての基準記号について相関係数の高い順に順位付けをする工程と、
第1の画像に含まれる基準記号と第2の画像に含まれる基準記号の中から、基準記号の種類が一致し且つモデルデータとの相関係数の最も高い基準記号を選択する工程と、
選択された基準記号を含む第1の画像の計測用マークの第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの位置を特定する工程と、
第1の画像に球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義する工程と、
選択された基準記号を含む第1の画像の計測用マークの第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの位置を局所座標系に変換して記憶する工程と、
選択された基準記号を含む第2の画像の計測用マークの第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの位置を特定する工程と、
第2の画像に球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義する工程と、
選択された基準記号を含む第2の画像の計測用マークの第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの位置を局所座標系に変換して記憶する工程と、
第1の画像の記憶された第1及び第2の測位ポイントと、第2の画像の記憶された第1及び第2の測位ポイントの変化量から、球体の回転方向と回転量を計算する工程を備えることを特徴とする請求項8,9又は10に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項16】
第1の画像と第2の画像の中の計測用マークの位置の変化量から、移動する球体の回転方向と回転量を計算する工程が、
全ての計測用マークの画像パターンを数値化したモデルデータを登録する工程と、
第1の画像から球体の外周を識別して、球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義する工程と、
第1の画像の中の球体の画像の範囲に含まれる全ての計測用マークと、全てのモデルデータとのパターンマッチングを行って、計測用マークを識別して位置を特定し、モデルデータとの相関係数と、計測用マークの基準記号の種類と、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの局所座標系における座標値を記憶する工程と、
特定された第1の画像の全ての計測用マークについて相関係数の高い順に順位付けをする工程と、
第2の画像から球体の外周を識別して、球体の中心を座標系の中心とする局所座標系を定義する工程と、
第2の画像の中の球体の画像の範囲に含まれる全ての計測用マークと、全てのモデルデータとのパターンマッチングを行って、計測用マークを識別して位置を特定し、モデルデータとの相関係数と、計測用マークの基準記号の種類と、第1の測位ポイントと第2の測位ポイントの局所座標系における座標値を記憶する工程と、
特定された第2の画像の全ての計測用マークについて相関係数の高い順に順位付けをする工程と、
第1の画像で特定された計測用マークと第2の画像で特定された計測用マークの中から、基準記号が一致し且つモデルデータとの相関係数の最も高い計測用マークの組み合わせを選択する工程と、
第1の画像の選択された計測用マークの第1及び第2の測位ポイントと、第2の画像の計測用マークの選択された第1及び第2の測位ポイントの変化量から、球体の回転量を計算する工程を備えることを特徴とする請求項8,9又は10に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項17】
空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する方法であって、
第1の撮影工程と、第2の撮影工程における撮影手段から球体までの距離を特定する工程と、
特定された距離に基づいて第1の画像の中の球体の正確な大きさを計算することにより、計測用マークを識別するためのパターンマッチングに使用するモデルデータを補正する工程と、
特定された距離に基づいて第2の画像の中の球体の正確な大きさを計算することにより、計測用マークを識別するためのパターンマッチングに使用するモデルデータを補正する工程を備えていることを特徴とする請求項8,9又は10に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定方法。
【請求項18】
空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する装置であって、
その球体は、任意の記号と、その記号を囲む矩形領域の頂点の1つに配置される第1の測位ポイントと、矩形領域の他の頂点に配置される第2の測位ポイントからなる計測用マークが、表面に配置されており、
移動する球体の第1の画像を撮影する第1の撮影手段と、移動する球体の第2の画像を撮影する第2の撮影手段と、第1の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置と第2の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置の変化量から球体の回転方向と回転量を計算する手段を備えていることを特徴とする空間を移動する球体の回転量測定装置。
【請求項19】
空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する装置であって、
球体の移動速度を測定する手段と、球体の移動速度から第1の画像と第2の画像を撮影する好適な時刻を計算して指示する手段と、指示された時刻で第1の画像を撮影する第1の撮影手段と、指示された時刻で第2の画像を撮影する第2の撮影手段と、第1の画像の撮影時刻と第2の画像の撮影時刻の時間差と、第1の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置と、第2の画像の第1及び第2の測位ポイントの位置の変化量から球体の回転方向と単位時間あたりの回転量を計算する手段を備えていることを特徴とする請求項18に記載の空間を移動する球体の回転量の測定装置。
【請求項20】
空間を移動する球体の回転方向と回転量を測定する装置であって、
第1の画像の撮影時刻における第1の撮影手段から球体までの距離を特定し、第2の画像の撮影時刻における第2の撮影手段から球体までの距離を特定する距離特定手段と、
距離特定手段の結果を入力して、第1の画像と第2の画像の中の球体の正確な大きさを計算し、各々の画像に対してパターンマッチングに使用されるモデルデータを補正する手段とをさらに備えていることを特徴とする請求項18又は19に記載の空間を移動する球体の回転方向と回転量の測定装置。
【請求項21】
表面に基準記号と、第1の測位ポイントと、第2の測位ポイントとから構成される計測用マークが2個以上配置されており、基準記号は計測用マーク毎に全て異なる記号であり、
基準記号が点対称性のある文字又は記号である場合には、第1の測位ポイントが基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付されており、第2の測位ポイントが矩形領域の第1の測位ポイントと隣り合う頂点に配置されており、計測用マークの矩形領域が表面に重なり合うことなく配置されており、
基準記号が点対称性のない文字又は記号である場合には、第1の測位ポイントが基準記号を囲む矩形領域の頂点の1つに付されており、第2の測位ポイントが矩形領域の他の頂点に配置されており、計測用マークの矩形領域が表面に重なり合うことなく配置されていることを特徴とする空間を移動する際の回転方向と回転量測定に適した球体。
【請求項22】
複数の計測用マークが6個以上付されており、全ての計測用マークの基準記号と第1の測位ポイントと第2の測位ポイントを結ぶ直線で囲まれる領域の面積が、表面積の10%以上であることを特徴とする請求項21に記載の空間を移動する際の回転方向と回転量測定に適した球体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2006−234485(P2006−234485A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47242(P2005−47242)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(303011275)株式会社ジャパーナ (43)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(303011275)株式会社ジャパーナ (43)
【Fターム(参考)】
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