説明

窒化ガリウムの気相成長方法

【課題】 大きな直径を有する複数枚の基板(4インチ基板、6インチ基板)の表面に、1000℃以上の温度で窒化ガリウムの気相成長を行なっても、基板が割れず高品質の結晶成長が可能な気相成長方法を提供する。
【解決手段】 前記のような基板を保持するためのサセプタ、該サセプタの対面、該基板を加熱するためのヒータ、該サセプタと該サセプタの対面の間隙からなる反応炉、原料ガス導入部、及び反応ガス排出部を有する気相成長装置を用いた窒化ガリウムの気相成長方法であって、基板表面の温度、基板表面と該基板の対面表面との温度差を適切な範囲内に設定し、かつ基板の位置における原料ガスの線速を適切な範囲内となるように原料ガスの供給を調整して基板表面に窒化ガリウム層の形成を行なう気相成長方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を保持するサセプタ、基板を加熱するためのヒータ、原料ガス導入部、反応炉、及び反応ガス排出部等を備えた気相成長装置(MOCVD装置)を用いた気相成長方法に関し、さらに詳細には、前記の気相成長装置を用いて4インチの基板、または6インチの基板の表面に窒化ガリウム結晶層の気相成長を行なう気相成長方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機金属化合物気相成長法(MOCVD法)は、分子線エピタキシー法(MBE法)と並び窒化物半導体の結晶成長によく用いられる。特に、MOCVD法は、MBE法に比べて結晶成長速度も速く、またMBE法のように高真空装置等も必要ないことから、産業界の化合物半導体量産装置において広く用いられている。近年、青色または紫外LED及び青色または紫外レーザーダイオードの普及にともない、窒化ガリウム、窒化インジウムガリウム、窒化アルミニウムガリウムの量産性を向上させるために、MOCVD法の対象となる基板の大口径化、多数枚化が数多く研究されている。
【0003】
このような気相成長装置としては、例えば特許文献1〜5に示すように、基板を保持するためのサセプタ、基板を加熱するためのヒータ、サセプタの中心部に設けられた原料ガス導入部、サセプタとサセプタの対面の間隙からなる反応炉、及びサセプタより外周側に設けられた反応ガス排出部を有する気相成長装置を挙げることができる。その他、例えば特許文献6に示すように、サセプタ、ヒータ、原料ガスの反応管内への供給方向が基板に平行となるように配置された原料ガス導入部、及び反応ガス排出部を有する横形反応管からなる気相成長装置を挙げることができる。これらの気相成長装置においては、複数の基板ホルダーがサセプタに設けられており、駆動手段によってサセプタが自転するとともに、基板ホルダーが自公転する構成となっている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−175992号公報
【特許文献2】特開2007−96280号公報
【特許文献3】特開2007−243060号公報
【特許文献4】特開2010−232624号公報
【特許文献5】特開2011−18895号公報
【特許文献6】特開2002−299244
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
気相成長装置の反応炉においては、各種原料ガスは高温に熱せられた基板表面で分解し、基板表面において結晶化する。しかし、基板の大口径化(4インチ基板、6インチ基板)、多数枚化にともない、特に1000℃以上の気相成長温度が必要な窒化ガリウム層の形成において基板が割れやすいという不都合が発生した。
従って、本発明が解決しようとする課題は、前述のような気相成長装置であって、大きな直径を有する複数枚の基板(4インチ基板、6インチ基板)の表面に、1000℃以上の温度で窒化ガリウムの気相成長を行なっても、基板が割れず高品質の結晶成長が可能な窒化ガリウムの気相成長方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、これらの課題を解決すべく鋭意検討した結果、大きな直径を有する基板を複数枚用いた場合の基板の割れは、基板表面とその対面表面との温度差に大きく影響すること、さらに基板の位置における原料ガスの線速に影響すること、及び、これらを適切な範囲でコントロールすることにより、基板が割れず高品質の窒化ガリウムの結晶膜が再現性良く得られることを見出し、本発明の窒化ガリウムの気相成長方法に到達した。
【0007】
すなわち本発明は、4インチの複数枚の基板を保持するためのサセプタ、該サセプタの対面、該基板を加熱するためのヒータ、該サセプタと該サセプタの対面の間隙からなる反応炉、原料ガス導入部、及び反応ガス排出部を有する気相成長装置を用いた窒化ガリウムの気相成長方法であって、基板表面の温度を900〜1100℃、基板表面と該基板の対面表面との温度差を300〜600℃に設定し、かつ基板の位置における原料ガスの線速を0.2〜2m/sとなるように原料ガスの供給を調整して4インチの基板表面に窒化ガリウム層の形成を行なうことを特徴とする窒化ガリウムの気相成長方法である。
【0008】
また、本発明は、6インチの複数枚の基板を保持するためのサセプタ、該サセプタの対面、該基板を加熱するためのヒータ、該サセプタと該サセプタの対面の間隙からなる反応炉、原料ガス導入部、及び反応ガス排出部を有する気相成長装置を用いた窒化ガリウムの気相成長方法であって、基板表面の温度を900〜1100℃、基板表面と該基板の対面表面との温度差を350〜600℃に設定し、かつ基板の位置における原料ガスの線速を0.3〜3m/sとなるように原料ガスの供給を調整して6インチの基板表面に窒化ガリウム層の形成を行なうことを特徴とする窒化ガリウムの気相成長方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の窒化ガリウムの気相成長方法は、大きな直径を有する複数枚の基板(4インチ基板、6インチ基板)の表面に、同時に1000℃以上の温度で窒化ガリウムの気相成長を行なっても、従来からの欠点であった基板の割れが発生することなく、高品質の結晶成長が可能である。従って、本発明の気相成長方法により、窒化ガリウム等の窒化物半導体を効率よく量産することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、大きな直径を有する複数枚の基板(4インチ基板、6インチ基板)を保持するためのサセプタ、該サセプタの対面、該基板を加熱するためのヒータ、該サセプタと該サセプタの対面の間隙からなる反応炉、原料ガス導入部、及び反応ガス排出部を有する気相成長装置を用いた窒化ガリウムの気相成長方法に適用される。
以下、本発明の気相成長方法を、特許文献1〜5に示すような形態の気相成長装置(サセプタの中心部に設けられた原料ガス導入部から原料ガスを供給する)を例に挙げ、図1〜図4に基づいて詳細に説明するが、本発明がこれらにより限定されるものではない。
【0011】
尚、図1、図2は、本発明の気相成長方法に使用される気相成長装置の一例を示す垂直断面図である。(図1は、回転発生部10を回転させることにより、サセプタ2を回転させる機構を有する気相成長装置であり、図2は、サセプタ回転軸12を回転させることにより、サセプタ2を回転させる機構を有する気相成長装置である。)図3は、図1、図2における基板の近辺の拡大断面図である。図4は、本発明に使用される気相成長装置のサセプタの形態の例を示す構成図である。
【0012】
本発明の窒化ガリウムの気相成長方法は、図1、図2に示すように、複数枚の基板1(4インチ基板、6インチ基板)を保持するためのサセプタ2、サセプタの対面3、基板を加熱するためのヒータ4、サセプタの中心部に設けられた原料ガス導入部5、サセプタと該サセプタの対面の間隙からなる反応炉6、及びサセプタより外周側に設けられた反応ガス排出部7を有する気相成長装置を用いた気相成長方法である。但し、原料ガス導入部、及び反応ガス排出部は、他の形態(例えば特許文献6に記載されたような形態)とすることもできる。
【0013】
そして、前記のような気相成長装置において、4インチ基板の表面に窒化ガリウムの成長を行なう場合は、基板表面の温度を900〜1100℃、基板表面とその対面表面との温度差を300〜600℃に設定し、かつ基板の位置における原料ガスの線速を0.2〜2m/sとなるように原料ガスの供給を調整して気相成長を行ない、6インチ基板の表面に窒化ガリウムの成長を行なう場合は、基板表面の温度を900〜1100℃、基板表面とその対面表面との温度差を350〜600℃に設定し、かつ基板の位置における原料ガスの線速を0.3〜3m/sとなるように原料ガスの供給を調整して気相成長を行なう方法である。
【0014】
尚、本発明の気相成長方法において、基板の対面表面とは、基板の外郭円内に相当する対面の表面を示すものである。また、基板の位置における原料ガスの線速とは、基板の中心部の位置において、キャリアガスを含めた全ガスのサセプタ中心部から周辺部へ流れる、25℃のガスの状態に換算した線速を示すものである。また、本発明において、「4インチ基板」とは実質的に直径が3.5〜5インチ程度の基板、「6インチ基板」とは実質的に直径が5〜7インチ程度の基板を示すものである。
【0015】
図1、図2に示すような気相成長装置により、各々の基板の表面に窒化ガリウムの成長を行なう際に、基板表面とその対面表面との温度差が前記の下限値(4インチ基板:300℃、6インチ基板:350℃)より小さい場合は基板の対面表面に固体析出物が多く堆積する虞があり、上限値(600℃)より大きい場合は基板が割れやすくなる虞がある。また、基板の位置における原料ガスの線速が前記の下限値(4インチ基板:0.2m/s、6インチ基板:0.3m/s)より小さい場合は、基板が割れやすくなる虞があり、上限値(4インチ基板:2m/s、6インチ基板:3m/s)より大きい場合は、基板は割れにくいが流速が速すぎて原料が無駄になる。
【0016】
本発明の気相成長方法において、基板の対面8の温度を前述のような範囲にコントロールするために、通常は冷媒を流通する流路9が設けられる。流路9は、通常はサセプタの対面3の内部に設置される。流路9を構成する配管は1本であっても複数本であってもよい。また、配管の構成については、特に限定されることはなく、例えば、複数本の配管がサセプタの対面の中心部から放射状に設置されたもの、あるいは渦巻き状に設置されたもの等を挙げることができる。冷媒の流れる方向は、特に限定されることはない。流路9に通す冷媒としては、任意の高沸点溶媒が用いられ、特に沸点90℃以上の溶媒が好ましい。このような冷媒としては、水、有機溶媒、油等を例示することができる。
【0017】
また、本発明に使用される気相成長装置の反応炉において、原料ガスが接触する部分の材料(例えば、サセプタ2、サセプタの対面3等)としては、カーボン系材料として、カーボン、パイロリティックグラファイト(PG)、グラッシカーボン(GC)、窒化物系材料として、窒化アルミニウム(AlN)、ボロンナイトライド(BN)、窒化ケイ素(Si)、炭化物系材料として、炭化ケイ素(SiC)、ボロンカーバイト(BC)、その他の材料として、石英、モリブデン、銅、アルミナが用いられる。また、前記の材料を2種以上組み合わせた複合材料としては、PGコートカーボン、GCコートカーボン、SiCコートカーボンが用いられる。これらの中で、サセプタ(基板)の材料としては、SiCコートカーボン、石英を用いることが好ましい。
【0018】
また、本発明に使用される気相成長装置のサセプタとその対面の間隙(反応炉の高さ)については、特に制限されることはないが、通常は15mm以下、好ましくは10mm以下である。例えば、図3に示すように、基板の上流側の位置15において6〜10mm、基板の下流側の位置16において2〜5mmと設定することができる。
【0019】
本発明におけるサセプタの形態は、例えば図4に示すように、複数枚の基板(基板ホルダー)を保持するための空間を周辺部に有する円盤状のものである。気相成長を行なう際には、4インチ基板(基板ホルダー)、6インチ基板(基板ホルダー)がこの空間部に挿入される。図1に示すような気相成長装置においては、外周に歯車を有する円盤(サセプタ2を回転させる回転発生部10)が、サセプタの外周の歯車と噛合うように設置されており、外部のモータ等を通じて円盤を回転させることにより、サセプタが回転する構成になっている。本発明におけるサセプタの対面3は、通常はサセプタの直径と同等か多少大きいものが用いられる。
【0020】
本発明の気相成長方法において、原料ガスとなる有機金属化合物(トリメチルガリウム、トリエチルガリウム等)、アンモニア、及びキャリヤガス(水素、窒素等の不活性ガス、またはこれらの混合ガス)等は、図1、図2に示すように、外部からの配管11により原料ガス導入部5に供給され、さらに原料ガス導入部5から反応炉6に導入されて、反応後のガスは排出部7から外部に排出される。尚、原料ガス導入部の各ガス噴出口は、図1、図2では3個の上下平行噴出タイプであるが、本発明においては、噴出口数、形態等の条件に限定されることはない。また、本発明において、窒化ガリウムの気相成長を行なう際には、原料ガス導入部の仕切りの先端部材17の温度が100〜300℃、好ましくは150〜250℃に設定される。このように設定することにより、さらに基板割れを防止する効果が向上する。
【0021】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明がこれらにより限定されるものではない。
【実施例】
【0022】
[実施例1]
(気相成長装置の製作)
ステンレス製の反応容器の内部に、円板状のサセプタ(SiCコートカーボン製、直径600mm、厚さ20mm、4インチの基板を5枚保持可能)、冷媒を流通する構成を備えたサセプタの対面(SiCコートカーボン製)、ヒータ、原料ガスの導入部(カーボン製)、反応ガス排出部等を設けて、図1に示すような気相成長装置を製作した。また、4インチサイズのサファイア(厚さ1.2mm)よりなる基板を5枚気相成長装置にセットした。尚、冷媒を流通する構成として、配管1本を中心部から周辺部に向かって渦巻き状に配置した。
【0023】
(気相成長実験)
このような気相成長装置を用いて、基板の位置における間隙が10mm以下となるようにサファイア基板5枚をサセプタに保持し、基板の表面に窒化ガリウム(GaN)の成長を行なった。対面の冷却用配管への冷却水循環を開始した後、水素を流しながら基板表面の温度を1050℃まで上昇させ、基板のクリーニングを行なった。この間、基板表面とその対面表面との温度差を500℃以内となるようにした。続いて、基板表面の温度を510℃まで下げて、原料ガスとしてトリメチルガリウム(TMG)とアンモニア、キャリヤガスとして水素を用いて、サファイア基板上にGaNから成るバッファー層を約20nmの膜厚で成長させた。
【0024】
バッファー層成長後に、TMGのみ供給を停止し、基板表面の温度を1050℃(±10℃)まで上昇させた。その後、原料ガス導入部の仕切りの先端部材の温度を200℃(±10℃)となるように設定し、原料ガスとして、TMG、アンモニア等(キャリアガスとして、水素、窒素を含む)を反応炉に流して、アンドープGaNを1時間成長させた。尚、基板の位置における原料ガスの線速は0.8m/sであった。また、バッファー層を含めた全ての成長は基板を自公転させながら行なった。この間、サセプタの対面の冷却用配管への冷却水循環量を調節して、基板の対面の表面温度が600℃(±10℃)となるように設定した。
以上のように窒化ガリウムを成長させた後、温度を下げ、基板を反応容器から取り出した。5枚の基板に割れは発生していなかった。また、サセプタの対面の表面には、結晶はほとんど見られなかった。
【0025】
[実施例2、3]
実施例1と同一の気相成長装置(4インチの基板5枚を保持可能)を用いて、気相成長実験を行なった。実施例1の窒化ガリウムの気相成長において、基板の対面の表面温度が各々500(±10℃)(実施例2)、700(±10℃)(実施例2)となるように設定したほかは実施例1と同様にして気相成長実験を行なった。その結果、いずれの場合も、5枚の基板に割れは発生していなかった。また、サセプタの対面の表面には、結晶はほとんど見られなかった。
【0026】
[実施例4、5]
実施例1と同一の気相成長装置(4インチの基板5枚を保持可能)を用いて、気相成長実験を行なった。実施例1の窒化ガリウムの気相成長において、基板の位置における原料ガスの線速が各々0.4m/s(実施例4)、1.6m/s(実施例5)となるように設定したほかは実施例1と同様にして気相成長実験を行なった。その結果、いずれの場合も、5枚の基板に割れは発生していなかった。また、サセプタの対面の表面には、結晶はほとんど見られなかった。
【0027】
[実施例6]
実施例1の窒化ガリウムの気相成長装置の製作において、サセプタを6インチの基板4枚を保持可能なものに替えたほかは実施例1と同様にして気相成長装置を製作した。この気相成長装置のサセプタに、6インチサイズのサファイア(厚さ1.2mm)よりなる基板を4枚気相成長装置にセットした後、基板の位置における原料ガスの線速が0.6m/sとなるように設定したほかは実施例1と同様にして気相成長実験を行なった。その結果、4枚の基板に割れは発生していなかった。また、サセプタの対面の表面には、結晶はほとんど見られなかった。
【0028】
[実施例7、8]
実施例6と同一の気相成長装置(6インチの基板4枚を保持可能)を用いて、気相成長実験を行なった。実施例6の窒化ガリウムの気相成長において、基板の対面の表面温度が各々500(±10℃)(実施例7)、650(±10℃)(実施例8)となるように設定したほかは実施例6と同様にして気相成長実験を行なった。その結果、いずれの場合も、4枚の基板に割れは発生していなかった。また、サセプタの対面の表面には、結晶はほとんど見られなかった。
【0029】
[実施例9、10]
実施例6と同一の気相成長装置(6インチの基板4枚を保持可能)を用いて、気相成長実験を行なった。実施例6の窒化ガリウムの気相成長において、基板の位置における原料ガスの線速が各々0.6m/s(実施例9)、2.4m/s(実施例10)となるように設定したほかは実施例6と同様にして気相成長実験を行なった。その結果、いずれの場合も、4枚の基板に割れは発生していなかった。また、サセプタの対面の表面には、結晶はほとんど見られなかった。
【0030】
[比較例1]
実施例1と同一の気相成長装置(4インチの基板5枚を保持可能)を用いて、気相成長実験を行なった。実施例1の窒化ガリウムの気相成長において、基板の対面の表面温度が400(±10℃)となるように設定したほかは実施例1と同様にして気相成長実験を行なった。しかし、GaNを1時間成長させる前に基板が割れたので気相成長実験を中止した。
【0031】
[比較例2]
実施例1と同一の気相成長装置(4インチの基板5枚を保持可能)を用いて、気相成長実験を行なった。実施例1の窒化ガリウムの気相成長において、基板の対面の表面温度が800(±10℃)となるように設定したほかは実施例1と同様にして気相成長実験を行なった。その結果、5枚の基板に割れは発生していなかったが、サセプタの対面の表面には結晶が付着していることがわかった。
【0032】
[比較例3]
実施例1と同一の気相成長装置(4インチの基板5枚を保持可能)を用いて、気相成長実験を行なった。実施例1の窒化ガリウムの気相成長において、基板の位置における原料ガスの線速が0.1m/sとなるように設定したほかは実施例1と同様にして気相成長実験を行なった。しかし、GaNを1時間成長させる前に基板が割れたので気相成長実験を中止した。
【0033】
[比較例4]
実施例6と同一の気相成長装置(6インチの基板4枚を保持可能)を用いて、気相成長実験を行なった。実施例6の窒化ガリウムの気相成長において、基板の対面の表面温度が400(±10℃)となるように設定したほかは実施例6と同様にして気相成長実験を行なった。しかし、GaNを1時間成長させる前に基板が割れたので気相成長実験を中止した。
【0034】
[比較例5]
実施例6と同一の気相成長装置(6インチの基板4枚を保持可能)を用いて、気相成長実験を行なった。実施例6の窒化ガリウムの気相成長において、基板の対面の表面温度が750(±10℃)となるように設定したほかは実施例6と同様にして気相成長実験を行なった。その結果、4枚の基板に割れは発生していなかったが、サセプタの対面の表面には結晶が付着していることがわかった。
【0035】
[比較例6]
実施例6と同一の気相成長装置(6インチの基板4枚を保持可能)を用いて、気相成長実験を行なった。実施例6の窒化ガリウムの気相成長において、基板の位置における原料ガスの線速が0.2m/sとなるように設定したほかは実施例6と同様にして気相成長実験を行なった。しかし、GaNを1時間成長させる前に基板が割れたので気相成長実験を中止した。
【0036】
以上のように、本発明の気相成長方法は、大きな直径を有する複数枚の基板(4インチ基板、6インチ基板)の表面に、1000℃以上の温度で窒化ガリウムの気相成長を行なっても、基板が割れず高品質の結晶成長が可能なことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の気相成長方法に使用される気相成長装置の一例を示す垂直断面図
【図2】本発明の気相成長方法に使用される図1以外の気相成長装置の一例を示す垂直断面図
【図3】図1、図2における基板の近辺の拡大断面図
【図4】本発明に使用される気相成長装置のサセプタの形態の例を示す構成図
【符号の説明】
【0038】
1 基板
2 サセプタ
3 サセプタの対面
4 ヒータ
5 原料ガス導入部
6 反応炉
7 反応ガス排出部
8 基板の対面
9 冷媒を流通する流路
10 回転発生部
11 ガス配管
12 サセプタ回転軸
13 均熱板
14 基板ホルダー
15 基板の上流側の位置における間隙
16 基板の下流側の位置における間隙
17 原料ガス導入部の仕切りの先端部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4インチの複数枚の基板を保持するためのサセプタ、該サセプタの対面、該基板を加熱するためのヒータ、該サセプタと該サセプタの対面の間隙からなる反応炉、原料ガス導入部、及び反応ガス排出部を有する気相成長装置を用いた窒化ガリウムの気相成長方法であって、基板表面の温度を900〜1100℃、基板表面と該基板の対面表面との温度差を300〜600℃に設定し、かつ基板の位置における原料ガスの線速を0.2〜2m/sとなるように原料ガスの供給を調整して4インチの基板表面に窒化ガリウム層の形成を行なうことを特徴とする窒化ガリウムの気相成長方法。
【請求項2】
6インチの複数枚の基板を保持するためのサセプタ、該サセプタの対面、該基板を加熱するためのヒータ、該サセプタと該サセプタの対面の間隙からなる反応炉、原料ガス導入部、及び反応ガス排出部を有する気相成長装置を用いた窒化ガリウムの気相成長方法であって、基板表面の温度を900〜1100℃、基板表面と該基板の対面表面との温度差を350〜600℃に設定し、かつ基板の位置における原料ガスの線速を0.3〜3m/sとなるように原料ガスの供給を調整して6インチの基板表面に窒化ガリウム層の形成を行なうことを特徴とする窒化ガリウムの気相成長方法。
【請求項3】
気相成長装置の原料ガス導入部の仕切りの先端部材の温度を100〜300℃に設定する請求項1または請求項2に記載の窒化ガリウムの気相成長方法。
【請求項4】
気相成長装置の原料ガス導入部がサセプタの中心部に設けられ、反応ガス排出部がサセプタより外周側に設けられた請求項1または請求項2に記載の窒化ガリウムの気相成長方法。
【請求項5】
基板の位置における原料ガスの線速は、25℃のガスに換算した値である請求項1または請求項2に記載の窒化ガリウムの気相成長方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−30632(P2013−30632A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165881(P2011−165881)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000229601)日本パイオニクス株式会社 (96)
【Fターム(参考)】