説明

窒素化合物分解触媒及び窒素化合物処理方法

【課題】 大気汚染物質のNOxやNOの副生を極力抑えながら、排ガス中の窒素化合物を効率よく窒素に分解することのできる窒素化合物分解触媒、及び窒素化合物含有排ガスの処理方法を提供する。
【解決手段】 酸化マンガンと酸化セリウムとゼオライトを含有する窒素化合物分解触媒であり、酸化マンガンの含有量がMnO換算で1〜80重量%、且つ酸化セリウムの含有量がCeO換算で1〜30重量%である。この触媒を用いることによって、NOxやNOの副生を極力抑えながら、90%を超える窒素化合物分解率で排ガス中の窒素化合物を酸化分解して除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種排ガス中に含まれるアンモニアやアミン等の窒素化合物を無害な窒素に分解する窒素化合物分解触媒、及びその窒素化合物分解触媒を用いた排ガス中の窒素化合物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電設備、下水処理設備、アミン製造設備、食品製造設備、し尿処理設備、コークス炉製造設備などから排出される排ガス中のアンモニアやアミン等の窒素化合物は有害物質であり、これら設備の配管を腐食するなど悪影響が大きい。そのため、これらの排ガス中の窒素化合物を効率よく除去する技術の開発が望まれている。
【0003】
排ガス中のアンモニアを除去する方法として、例えば、特公昭57−058213号公報、特開平02−198638号公報、特公平06−004138号公報、特開平07−328440号公報などには、白金、パラジウムなどの貴金属をアルミナ、シリカ、チタニアなどの担体に担持した貴金属系触媒を用いる方法や、銅、ニッケル、コバルトなどの酸化物を触媒活性成分として分散担持したアンモニア分解触媒を用いる方法が提案されている。
【0004】
しかし、上記した従来のアンモニア分解触媒は、高温条件下やアンモニア濃度に対する酸素過剰条件下では、アンモニアの酸化によって大気汚染物質である窒素酸化物NOxが多量に発生するという欠点があった。しかも、白金やパラジウムなどの貴金属系触媒は、コストが高くなるなどの問題もあった。また、銅やニッケルなどの卑金属酸化物系触媒は、低温での活性が低く、その場合に大気汚染物質であるNOxやNOの発生を招くという問題があった。
【0005】
そこで、アンモニア分解時における窒素酸化物NOxの副生を防止するため、例えば、特開平05−146634号公報、特開平08−131832号公報、特開2003−24784号公報、特開2003−200050号公報には、チタン、バナジウム、タングステン、モリブデンなどの脱硝触媒成分と、白金、パラジウム、ロジウムなどの酸化触媒成分とを組み合わせたアンモニア分解触媒が提案されている。しかしながら、このようなアンモニア分解触媒は、酸化触媒成分が貴金属を含むため高価であるという問題があった。
【0006】
また、排ガス中のアミン類を除去する方法としては、例えば、特開2001−54786号公報、特開平10−249197号公報、特開平08−33842号公報などには、白金、パラジウムなどの貴金属系触媒を用いる方法が提案されている。しかしながら、アンモニア処理の場合と同様にアミン類の酸化によって大気汚染物質である窒素酸化物NOxが多量に発生し、また白金やパラジウムなどの貴金属を使用するため高価であるという問題があった。
【0007】
【特許文献1】特公昭57−058213号公報
【特許文献2】特開平02−198638号公報
【特許文献3】特公平06−004138号公報
【特許文献4】特開平07−328440号公報
【特許文献5】特開平05−146634号公報
【特許文献6】特開平08−131832号公報
【特許文献7】特開2003−24784号公報
【特許文献8】特開2003−200050号公報
【特許文献9】特開2001−54786号公報
【特許文献10】特開平10−249197号公報
【特許文献11】特開平08−33842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑み、大気汚染のもととなる窒素酸化物のNOxやNOの副生を極力抑え、排ガス中の窒素化合物を効率よく窒素に分解除去することのできる窒素化合物分解触媒、及びその触媒を使用した窒素化合物処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明が提供する窒素化合物分解触媒は、酸化マンガンと酸化セリウムとゼオライトを含有することを特徴とするものである。上記本発明の窒素化合物分解触媒においては、酸化マンガンの含有量がMnO換算で1〜80重量%であり、酸化セリウムの含有量がCeO換算で1〜30重量%であることが好ましい。
【0010】
また、本発明が提供する窒素化合物処理方法は、排ガス中の窒素化合物を触媒により分解して除去する窒素化合物処理方法であって、上記本発明の窒素化合物分解触媒、即ち、酸化マンガンと酸化セリウムとゼオライトを含有することを特徴とする窒素化合物分解触媒を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高温や低温などの温度条件にかかわらず、また排ガス中の窒素化合物濃度に対して酸素過剰の条件下であっても、大気汚染のもととなるNOやNOのような窒素酸化物NOx及びNOの副生を極力抑えながら、排ガス中の窒素化合物を効率よく窒素に分解することができ、貴金属を含まない安価な窒素化合物分解触媒を提供することができる。
【0012】
従って、本発明の窒素化合物分解触媒を用いることによって、火力発電設備、下水処理設備、アミン製造設備、食品製造設備、し尿処理設備、コークス炉製造設備などから排出される各種排ガスを処理して、その排ガス中に含まれる窒素化合物を無害な窒素に分解することができ、しかも大気汚染のもととなるNOやNOのような窒素酸化物NOx、及びNOの副生を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の窒素化合物分解触媒は、酸化マンガンと酸化セリウムとゼオライトとを含むものである。酸化マンガンと酸化セリウムとゼオライトは、これらが単に混合された状態でもよいし、酸化マンガンと酸化セリウムがゼオライトに担持された状態であってもよい。窒素化合物分解触媒中における酸化マンガンの含有量は、MnO換算で触媒全体に対して1〜80重量%の範囲が好ましい。また、酸化セリウムの含有量は、CeO換算で触媒全体に対して1〜30重量%の範囲であることが好ましい。
【0014】
上記酸化マンガンの含有量がMnO換算で1重量%未満では、十分な窒素化合物分解能が得られない。酸化マンガンの含有量の増加に伴って窒素化合物分解能も向上するが、80重量%を超えると窒素化合物の酸化によって大気汚染物質であるNOxやNOの副生が顕著に増加するため好ましくない。また、上記酸化セリウムの含有量については、CeO換算で1重量%未満では添加による窒素化合物の分解効果が十分に得られず、逆に30重量%を超えると、窒素化合物の酸化によって大気汚染物質であるNOxやNOの副生が顕著に増加するため好ましくない。
【0015】
また、ゼオライトとしては、特に制限はないが、そのSiO/Alモル比が10以上のものを用いることにより、長期にわたって優れた分解性能を維持することができる。ゼオライトのSiO/Alモル比は大きいほど好ましいが、種類により入手可能な上限があり、一般的には十分な耐久性が得られるという点で10〜600の範囲が更に好ましい。また、ゼオライトの種類については、βゼオライト、モルデナイト、フェリエライト、ZSM−5、Yゼオライトなどが好適に使用できる。尚、これらのゼオライトの製造方法については、特に限定されるものではない。
【0016】
本発明において、酸化マンガンと酸化セリウムとゼオライトとを含有させるための方法は特に限定されず、従来から知られている方法を用いることができる。例えば、酸化マンガンと酸化セリウムとゼオライトの混合状態の触媒を得るには、酸化マンガン粉末と酸化セリウム粉末とゼオライト粉末を機械的に混合する物理混合法などを用いることができる。
【0017】
また、ゼオライトに酸化マンガンと酸化セリウムを担持させる場合には、例えば、ゼオライトにマンガンとセリウムの水溶性塩の水溶液を含浸させる含浸法や、マンガンとセリウムの水溶性塩の水溶液にゼオライトを投入し、撹拌してイオン交換させた後、ろ過及び水洗を行うイオン交換法などがある。これらの方法では、酸化マンガンと酸化セリウムとゼオライトを含有させた後、乾燥・焼成することによって、本発明の窒素化合物分解触媒を調製することができる。
【0018】
上記した触媒調製時の乾燥温度は、特に限定されるものではないが、通常は80〜120℃程度で乾燥する。また、焼成温度は300〜1000℃程度が好ましく、400〜800℃程度が更に好ましい。この乾燥時及び焼成時の雰囲気については、触媒組成に応じて、大気雰囲気、不活性ガス雰囲気、酸素雰囲気、水蒸気雰囲気などの各雰囲気を適宜選択すればよく、これらの各雰囲気を一定時間毎に交互に代えて用いることもできる。
【0019】
本発明による窒素化合物分解触媒は、従来知られている成形方法によって、球状、ハニカム状、ペレット状など、種々の形状に成形することができる。これらの形状並びに大きさなどは、使用条件に応じて任意に選択すればよい。また、排ガスの流れ方向に対して多数の貫通孔を有する耐火性一体構造の支持基体の表面に、ウォッシュコート法などにより窒素化合物分解触媒を被覆することも可能である。
【0020】
本発明の窒素化合物処理方法では、上記した窒素化合物分解触媒を排ガスと接触させることによって、排ガス中の窒素化合物、例えば、アンモニア、トリメチルアミンなどのアミン類など、有害悪臭物質を酸化分解して除去することができる。尚、窒素化合物を含む排ガスを処理する際のガス空間速度(SV)については、特に限定されるものではないが、SV1,000〜100,000/hの範囲とすることが好ましい。また、窒素化合物分解の反応温度は200〜500℃程度でよく、特に300〜400℃の範囲が好ましい。
【実施例】
【0021】
[本発明の窒素化合物分解触媒の調製]
30gのイオン交換水に、硝酸マンガン(II)六水和物16.8gと硝酸セリウム(III)六水和物4.3gを溶解し、この溶液にSiO/Alモル比20のモルデナイト粉末10gを浸漬した後、溶液を撹拌しながら加熱して水分を蒸発させ、更に110℃で通風乾燥し、次に大気中にて500℃で3時間焼成した。得られた触媒を加圧成型した後、粉砕して粒度を350〜500μmに整粒し、酸化マンガンの含有量がMnO換算で触媒全体の30重量%、酸化セリウムの含有量がCeO換算で触媒全体の10重量%である本発明の触媒1を得た。
【0022】
また、上記触媒1と同様に窒素化合物分解触媒を調製する際に、酸化マンガンの含有量をMnO換算で触媒全体の1重量%とした以外は上記触媒1の場合と同様にして、本発明の触媒2を得た。尚、この触媒2において、酸化セリウムの含有量はCeO換算で触媒全体の10重量%である。
【0023】
30gのイオン交換水に、硝酸セリウム(III)六水和物10.2gを溶解し、この溶液にSiO/Alモル比20のモルデナイト4gと二酸化マンガン32.2gをメノー乳鉢にて物理混合した粉末を浸漬した後、撹拌しながら加熱して水分を蒸発させ、更に110℃で通風乾燥し、次に空気中にて500℃で3時間焼成した以外は上記触媒1の場合と同様にして、本発明の触媒3を得た。尚、この触媒3において、酸化マンガンの含有量はMnO換算で触媒全体の80重量%、酸化セリウムの含有量はCeO換算で触媒全体の10重量%である。
【0024】
上記触媒1と同様に窒素化合物分解触媒を調製する際に、酸化セリウムの含有量をCeO換算で触媒全体の1重量%とした以外は上記触媒1の場合と同様にして、本発明の触媒4を得た。また、同じく酸化セリウムの含有量がCeO換算で触媒全体の30重量%とした以外は上記触媒1の場合と同様にして、本発明の触媒5を得た。これらの触媒4及び触媒5において、酸化マンガンの含有量はMnO換算で触媒全体の30重量%である。更に、上記触媒1と同様に窒素化合物分解触媒を調製する際に、SiO/Alモル比240のモルデナイトを用いた以外は上記触媒1の場合と同様にして、本発明の触媒6を得た。
【0025】
上記触媒1と同様に窒素化合物分解触媒を調製する際に、モルデナイトに代えてSiO/Alモル比150のβゼオライトを用いた以外は上記触媒1の場合と同様にして、本発明の触媒7を得た。同じく、モルデナイトに代えてSiO/Alモル比470のβゼオライトを用いた以外は上記触媒1の場合と同様にして、本発明の触媒8を得た。同じくモルデナイトに代えてSiO/Alモル比80のZSM−5を用いた以外は上記触媒1の場合と同様にして、本発明の触媒9を得た。また、同じくモルデナイトに代えてSiO/Alモル比560のYゼオライトを用いた以外は上記触媒1の場合と同様にして、本発明の触媒10を得た。これらの触媒6〜10において、酸化マンガンの含有量はMnO換算で触媒全体の30重量%、酸化セリウムの含有量はCeO換算で触媒全体の10重量%である。
【0026】
次に、SiO/Alモル比が20のモルデナイト粉末10gと、二酸化マンガン粉末5gと、酸化セリウム粉末1.7gをメノー乳鉢にて物理混合した。この混合物を加圧成形した後、粉砕して粒度を350〜500μmに整粒し、本発明による触媒11とした。尚、この触媒11において、酸化マンガンの含有量はMnO換算で触媒全体の30重量%、酸化セリウムの含有量はCeO換算で触媒全体の10重量%である。
【0027】
上記触媒11と同様に窒素化合物分解触媒を調製する際に、酸化マンガンの含有量をMnO換算で触媒全体の80重量%とした以外は上記触媒11の場合と同様にして、本発明の触媒12を得た。また、同じく酸化マンガンの含有量をMnO換算で触媒全体の30重量%とし、酸化セリウムの含有量をCeO換算で触媒全体の1重量%とした以外は上記触媒11の場合と同様にして、本発明の触媒13を得た。更に、同じく酸化マンガンの含有量をMnO換算で触媒全体の30重量%とし、酸化セリウムの含有量をCeO換算で触媒全体の30重量%とした以外は上記触媒11の場合と同様にして、本発明の触媒14を得た。
【0028】
上記触媒11と同様に窒素化合物分解触媒を調製する際に、モルデナイトに代えてSiO/Alモル比150のβゼオライトを用いた以外は上記触媒11の場合と同様にして、本発明の触媒15を得た。同じくモルデナイトに代えてSiO/Alモル比80のZSM−5を用いた以外は上記触媒11の場合と同様にして、本発明の触媒16を得た。また、同じくモルデナイトに代えてSiO/Alモル比560のYゼオライトを用いた以外は上記触媒11の場合と同様にして、本発明の触媒17を得た。これらの触媒15〜17において、酸化マンガンの含有量はMnO換算で触媒全体の30重量%、酸化セリウムの含有量はCeO換算で触媒全体の10重量%である。
【0029】
[比較例の窒素化合物分解触媒の調製]
上記触媒1と同様に窒素化合物分解触媒を調製する際に、酸化マンガンの含有量をMnO換算で触媒全体の0.1重量%とした以外は上記触媒1の場合と同様にして、比較例の触媒C1を得た。また、上記触媒3と同様に窒素化合物分解触媒を調製する際に、酸化マンガンの含有量をMnO換算で触媒全体の90重量%とした以外は上記触媒3の場合と同様にして、比較例の触媒C2を得た。
【0030】
上記触媒1と同様に窒素化合物分解触媒を調製する際に、酸化セリウムの含有量をCeO換算で触媒全体の0.1重量%とした以外は上記触媒1の場合と同様にして、比較例の触媒C3を得た。また同様に、酸化セリウムの含有量をCeO換算で触媒全体の40重量%とした以外は上記触媒1の場合と同様にして、比較例の触媒C4を得た。
【0031】
上記触媒1と同様に窒素化合物分解触媒を調製する際に、モルデナイトに代えてSiO/Alモル比150のβゼオライトを用い、且つ酸化マンガンの含有量がMnO換算で触媒全体の0.1重量%とした以外は上記触媒1の場合と同様にして、比較例の触媒C5を得た。また、同じくモルデナイトに代えてSiO/Alモル比80のZSM−5を用い、且つ酸化セリウムの含有量がCeO換算で触媒全体の40重量%とした以外は上記触媒1の場合と同様にして、比較例の触媒C6を得た。
【0032】
30gのイオン交換水に硝酸セリウム(III)六水和物2.8gを溶解し、この溶液にSiO/Alモル比20のモルデナイト10gを浸漬した後、撹拌しながら加熱して水分を蒸発させ、更に110℃で通風乾燥し、次に空気中にて500℃で3時間焼成した以外は上記触媒1の場合と同様にして、比較例の触媒C7を得た。尚、この比較例の触媒C7は、酸化マンガンを含まず、酸化セリウムの含有量はCeO換算で触媒全体の10重量%である。
【0033】
30gのイオン交換水に硝酸マンガン(II)六水和物14.4gを溶解し、この溶液にSiO/Alモル比20のモルデナイト10gを浸漬した後、撹拌しながら加熱して水分を蒸発させ、更に110℃で通風乾燥し、次に空気中にて500℃で3時間焼成した以外は上記触媒1の場合と同様にして、比較例の触媒C8を得た。尚、この比較例の触媒C8は、酸化セリウムを含まず、酸化マンガンの含有量はMnO換算で触媒全体の30重量%である。
【0034】
上記した本発明の触媒1〜17及び比較例の触媒C1〜C8の各組成を下記表1にまとめて示した。
【0035】
【表1】

【0036】
[触媒の評価試験]
上記した本発明の触媒1〜17及び比較例の触媒C1〜C8について、アンモニア分解能を評価した。即ち、各触媒をそれぞれ内径6mmの石英ガラス製反応管に充填して触媒体を形成し、これを常圧固定床流通反応装置に装着した。この反応管内に、モデル排ガスとしてNH:5,000ppm、O:17%、HO:12%、残部:Nからなる混合ガスを、ガス温度300℃、空間速度50,000/hで通過させ、アンモニアの分解処理を行った。得られた結果を、下記表2に示す。
【0037】
尚、アンモニア分解率は下記数式1、NOx生成率は下記数式2、及びNO生成率は下記数式3に従って算出した。
[数式1]
アンモニア分解率(%)=(入口NH濃度−出口NH濃度)/入口NH濃度×100
[数式2]
NOx生成率(%)=(出口NO濃度+出口NO濃度)/入口NH濃度×100
[数式3]
O生成率(%)=出口NO濃度×2/入口NH濃度×100
【0038】
【表2】

【0039】
上記表1及び表2から分かるように、酸化マンガンと酸化セリウムとゼオライトを含有する本発明の触媒1〜17では、酸化マンガンがMnO換算で1〜80重量%且つ酸化セリウムがCeO換算で1〜30重量%であるとき、90%を超えるアンモニア分解率で排ガス中のアンモニアを窒素に分解することができ、しかも、モデル排ガスのように高温条件下や酸素過剰条件下であっても、大気汚染物質である窒素酸化物NOxやNOの副生を抑制することができた。
【0040】
一方、比較例の触媒C1、C5、C7は、酸化マンガンの含有量がMnO換算で1重量%未満のため、アンモニア分解率が著しく低下した。また、比較例の触媒C2は、逆に酸化マンガンの含有量がMnO換算で80重量%を超えるため、アンモニア分解率は高いが、NOxやNOの副生が極めて多くなった。
【0041】
更に、比較例の触媒C3、C8は、酸化セリウムの含有量がCeO換算で1重量%未満であるため、アンモニア分解率が著しく低下した。また、比較例の触媒C4、C6では、逆に酸化セリウムの含有量がCeO換算で30重量%を超えているため、アンモニア分解率は高いが、NOxやNOの副生が大幅に増加した。
【0042】
次に、上記した本発明の触媒1と、比較例の触媒C1〜C4について、トリメチルアミン分解能を評価した。即ち、各触媒をそれぞれ内径6mmの石英ガラス製反応管に充填して触媒体を形成し、これを常圧固定床流通反応装置に装着した。この反応管内に、モデル排ガスとしてトリメチルアミン(CH)N:500ppm、O:17%、HO:12%、残部:Nからなる混合ガスを、ガス温度300℃、空間速度50,000/hで通過させ、トリメチルアミンの分解処理を行った。得られた結果を下記表3に示す。
【0043】
尚、トリメチルアミン分解率は下記数式4、NOx生成率は下記数式5、及びNO生成率は下記数式6に従って算出した。
[数式4]
トリメチルアミン分解率(%)=(入口(CH)N濃度−出口(CH)N濃度)/入口(CH)N濃度×100
[数式5]
NOx生成率(%)=(出口NO濃度+出口NO濃度)/入口(CH)N濃度×100
[数式6]
O生成率(%)=出口NO濃度×2/入口(CH)N濃度×100
【0044】
【表3】

【0045】
上記表1及び表3から分るように、本発明の触媒1は、排ガス中のトリメチルアミンを窒素に分解することができ、しかも、高温条件下や酸素過剰条件下であっても、大気汚染物質である窒素酸化物NOxやNOの副生を抑制することができた。
【0046】
一方、比較例の触媒C1、C3は、酸化マンガンまたは酸化セリウムの含有量が1重量%未満のため、トリメチルアミン分解率が著しく低下した。また、比較例の触媒C2、C4は、逆に酸化マンガンまたは酸化セリウムの含有量がそれぞれMnO換算で80重量%、CeO換算で30%を超えるため、トリメチルアミン分解率は高いが、NOxやNOの副生が極めて多くなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化マンガンと、酸化セリウムと、ゼオライトを含有することを特徴とする窒素化合物分解触媒。
【請求項2】
酸化マンガンの含有量がMnO換算で1〜80重量%であり、酸化セリウムの含有量がCeO換算で1〜30重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の窒素化合物分解触媒。
【請求項3】
排ガス中の窒素化合物を触媒により分解して除去する窒素化合物処理方法であって、請求項1又は2に記載の窒素化合物分解触媒を用いることを特徴とする窒素化合物処理方法。

【公開番号】特開2007−268520(P2007−268520A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34544(P2007−34544)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(596032177)住鉱エコエンジ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】