説明

窓枠の製造方法

航空機の外装シェルに据え付けられる窓枠、すなわち、1つ以上の外側フランジと、1つの内側フランジと、これら2つのフランジに対して直角をなしてこれら2つのフランジの間に配置された1つの垂直フランジと、を備えた窓枠の製造方法において、先ず、複数の、個々のサブストラクチャからなる半完成部材を作成する。次に、これを成形型に挿入して、その内部に圧力及び温度下で樹脂を注入する。このように連続的に作成した構成材は成形型内で硬化する。半完成部材は層構造をもち、それはウェブ材料、繊維束、あるいは繊維束とウェブ材料との組み合わせを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願については、2004年8月9日に提出された米国特許仮出願第60/600,103号の出願日の利益を請求するとともに、その開示内容を参照することによってここに援用し、そして、2004年5月24日に提出されたドイツ特許出願第10 2004 025 381号の出願日の利益を請求するとともに、その開示内容を参照することによってここに援用する。
【0002】
本発明は、航空機の外装シェルに設置される窓枠の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
今日製造されて運航している殆どの航空機では、アルミニウム製の窓枠が使用され、それは、鍛造、トルーイング(形直し)、及びカッピングによって作成された部分を備える。窓枠は、全部で3つの部分、つまり、外側のフランジと、内側のフランジと、そして、これら2つのフランジに対して直角をなし、かつそれらの間に配置された垂直フランジから成る。窓枠は通常、外側のフランジに亘って2列のリベットで、航空機構造体、つまり航空機の外装シェルに接続される。窓要素は、内側のフランジに置かれ、それは通常、2枚の窓ガラスと、これらの間に配置されたシーリングと、を備える。そして、この窓要素は、リテイナ又はダウンホルダを介してその位置で固定され、このダウンホルダは窓枠と接続される。
【0004】
このような窓枠は、窓要素を固定するだけでなく、歪みの増大を吸収する機能も有し、この歪みの増大は、荷重を伝達する外装シェルに設けられた、窓用の比較的大きい切欠部の端で起こる。そのため、窓枠の外側のフランジは、ある面では、この切欠部を補強する役目をもち、他面では、外側のフランジを介して、枠と外装シェルとがリベットにより互いに接続される。既知のアルミニウム窓枠は通常、鍛造によって製造されるため、リベットの力分布に適した枠形状の断面分布を得ることができず、その理由は、簡易なリベット締めを可能にするために、フランジの傾きが最大で約2度にもなり得るからである。
【0005】
内側のフランジは、窓要素を受け入れる役割を果たし、ここで、傾かせることにより窓の取り付けが簡単になる。同時に、客室に広がる、内側の圧力からの現存する荷重が、この内側のフランジを介して航空機の外装シェルへと伝達される。
【0006】
垂直フランジは、できるだけ小さい重量で外装シェルにおける張力を最小限に抑えるために、通常、枠に関する補強リブとして専ら機能する。また、この垂直フランジには通常、アイボルトが付設されるとともに、これを用いて窓要素用のダウンホルダ又はリテイナがその位置に保持される。同時に、垂直フランジはまた、窓要素を取り付ける際のガイドとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、このような窓枠を簡易に、かつ適応性があってしかも費用効率よく製造することを可能にする、窓枠の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の例示的な実施形態によると、航空機の外装シェルに設置される窓枠の製造方法が提供され、この窓枠は、1つ以上の外側のフランジと、1つの内側のフランジと、これらのフランジに対して直角をなしてこれらフランジの間に配置された1つの垂直フランジと、を備え、これによって、航空機構造体との接続が、外側のフランジを介して行われるとともに、内側のフランジには、保持される窓要素が付設され、この窓要素が垂直フランジを介して保持される。
【0009】
ある態様によると、最初に、複数の、個々のサブストラクチャ(基礎構造物)からなる半完成部材を作成し、次に、これを成形型に入れ、その中に、圧力及び温度下で樹脂を注入する。次いで、このように作成された構成材が成形型内で硬化する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、繊維組成の構造に作成される複数の異なる窓枠を、費用効率よく製造することを可能にし、これにより、現在まで使用されているアルミニウムの窓枠と比較して、50パーセントまでの軽量化を達成することができる。この大幅な軽量化の可能性を秘めているにもかかわらず、このような構成材の費用は、アルミニウムを鍛造した部材から作られた窓枠と比較して、高くならない。
【0011】
同時に、平均壁厚が5mmであって、公差が僅かに約0.2mmとされる、本発明に係る繊維窓枠を作成することができ、これは、約4パーセントの製造公差に相当する。これに対して、アルミニウムを鍛造した枠では、製造方法にも依るが、約1.5mmの公差が許容され、これは、上記と同じ壁厚において約30パーセントの製造公差に相当する。したがって、本発明によれば、個々の窓枠間の重量のばらつきが実質的に低減されるだけでなく、同時に、航空機への枠の据え付けや枠への窓要素の取り付けが簡単になる。そして、達成し得る更なる利点として、本発明に係る窓枠について安全性の向上や、断熱性の大幅な向上が挙げられる。
【0012】
以下に、本発明について、添付図面に示した実施形態を参照して、さらに詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に示す窓枠1は、繊維構造で作成されており、既知のアルミニウムを鍛造した枠と同様に、1つの外側のフランジ2と、1つの内側のフランジ3と、これら2つのフランジの間に配置された1つの垂直フランジ4と、を有する。但し、従来のアルミニウム窓枠とは対照的に、この場合の外側のフランジ2は、均一な周方向のエッジを有する。また、この外側のフランジ2は、対応するアルミニウムを鍛造した部材と対照的に、半径方向での異なる領域において様々な厚さを有する。これにより、リベット締めやシェルの切欠部の領域において、実質的に向上した材料の利用がもたらされる。図2は、詳細な断面図において、それをより明確に示しており、航空機の外装シェル5におけるこのような窓枠1の据え付け位置を示している。本図に示されているのは、枠を外装シェル5に接続するためのリベット位置6、そして、2枚の窓ガラス7及び8であり、これらの窓ガラスは、シーリング9とともに窓要素を形成する。
【0014】
窓枠1は、いわゆる「レジントランスファ成形」、即ちRTM技術によって製造される。これに関して、最初に、プリフォーム(予備成形物)と称するモールド部材10を繊維から作成する。次に、これを2部品の成形型に入れ、成形型を閉じ、圧力及び温度下で樹脂を成形型に注入する。完成した構成材1は、引き続いて成形型内で硬化する。
【0015】
プリフォームは、いわゆるサブプリフォーム技術で作成され、このサブプリフォーム技術では、完成した窓枠1が、図3の分解図に示すように、個々のサブストラクチャ要素、つまりサブプリフォーム11乃至17を組み合わせて構成される。図4は、個々のサブストラクチャ11乃至17を組み合わせて完成した繊維組成の窓枠1について、その構造を示す断面図である。比較的多くの、異なるサブストラクチャによって、このように作成された窓枠1に課される様々な高さの仕様に対して、簡単に適応することができる。したがって、例えば、より小さい荷重の場合には、サブプリフォーム、あるいはサブストラクチャ要素14を取り去ることができ、反対に、より厳密な仕様の場合には、1以上のサブストラクチャ要素14又は場合によっては15をも付設することができる。これにより生じる厚さの違いは、個々のサブプリフォームの接続可能性(connectibility)を良好にすることで補償される。壁厚が異なる場合に、領域全体の補償のために、航空機のシェル5をサブプリフォーム15に対して平行に変位させることができ、これにより、良好な接続可能性がもたらされる。
【0016】
上記プリフォームは、原理上、3つの異なる方法で、
ウェブ(織物)の半完成部材から、
繊維束から、
ウェブの半完成部材と繊維束との組み合わせから、作成することができる。
【0017】
図5は、ウェブの半完成部材からなる窓枠1の層構造を示す断面図である。本図において、符号20は、内側のフランジにおける0°のハブを示し、符号21は、全ての外側領域における±60°の層及び外側のフランジ2から内側のフランジ3へと延びる、±60°の層を示し、符号22は、垂直フランジ4の領域における0°の層及び90°の層を示す。これらの層方向は、外側のフランジ2と、内側のフランジ3と、垂直フランジ4の境界で測定される。この領域以外では、曲線状に配置されるウェブの半完成部材について、以下の事実が与えられる。
垂直フランジ4:
全ての繊維は、それらが測定された方向のままである。
内側のフランジ3及び外側のフランジ2
0°の繊維は、それらが測定された方向のままである。
±45°の繊維は、それらが測定された方向のままであるが、曲がっている。
±60°の繊維は、それらが測定された方向のままであるが、曲がっている。
【0018】
図6は、繊維束を有する、荷重に適合した層構造を示しており、ここではまた、繊維束の層構造についての断面図を示す。本図において、符号20は、内側のフランジにおける0°のコアを示し、符号23は、全ての外側領域における±60°の層及び外側のフランジ2から内側のフランジ3へと延びる、±60°の層とを有する繊維束を示しており、符号24は、垂直フランジ4の領域における0°の層及び90°の層を有する繊維束を示し、符号25は、外側のフランジ2の領域における±45°の層を有する繊維束を示す。これらの層方向については、外側のフランジ2と、内側のフランジ3と、垂直フランジ4の境界で測定される。繊維が荷重方向に沿うように繊維の進行方向を達成するために、窓枠1には、ある構造が選定され、これを要約すると以下のようになる。
外側のフランジ2:
リベット締めの領域において、擬似等方性の放射状構造
垂直フランジ4:
主荷重を受けるための0°のコア
外側における±60°の層
内側のフランジ3:
主に0°方向
外側における±60°の層
補強のための90°
【0019】
このように、それぞれ配置された繊維に対して、以下の詳細が与えられる。
垂直フランジ4:
全ての繊維は、それらが測定された方向のままである。
内側のフランジ3及び外側のフランジ2:
0°の繊維は、それらが測定された方向のままである。
±45°の繊維は、それらの角度を±60°に変更する。
±60°の繊維は、それらの角度を±70°に変更する。
【0020】
最後に、図7は、ウェビングと繊維束との組み合わせを有する層構造を示す。ここでまた、符号20は、内側のフランジにおける0°のハブのウェブ層を示し、また、符号27は、0°のコイル状プッシュ(coiled push)を示し、符号28は、±60°のウェブ層を示し、符号29は、0°及び90°のウェブ層を示す。
【0021】
このようにして作成された窓枠1は、一般的なアルミニウム窓枠に比べて、略同じ製造費用で、約50パーセント軽量化される。その公差は、これに対応するアルミニウム構成材の公差よりも本質的に小さいものとされる。同時に、この枠は、一般的なアルミニウム窓枠よりも高い安全性と、さらに良好な断熱性を提供するものである。
【0022】
尚、「備える」という語は、他の要素や工程を排除するのではなく、そして、「1つ」を意味する不定冠詞が複数個の要素を排除しないことに留意されたい。また、各種の実施形態に関連して記載した要素を組み合わせてもよい。
【0023】
請求項における参照符号が、該請求項の範囲を限定すると解釈されてはならないことにも留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】窓枠を示す斜視図である。
【図2】図1による窓枠の据え付け位置での詳細を示す断面図である。
【図3】図1の窓枠の構造を示す分解斜視図である。
【図4】図1の窓枠を示す詳細な断面図である。
【図5】第一のプリフォームの構造を示す断面図である。
【図6】第二のプリフォームの構造を示す断面図である。
【図7】第三のプリフォームの構造を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機構造体を有する航空機の外装シェルに据え付けられる窓枠を製造する方法であって、
前記窓枠が、外側のフランジと、内側のフランジと、垂直フランジと、を備え、該垂直フランジは、前記内側のフランジ及び前記外側のフランジに対して略直角をなし、かつ前記内側のフランジと前記外側のフランジとの間に配置されており、前記外側のフランジは、前記窓枠を航空機に接続させるために、前記航空機構造体への接続に適合され、窓要素は、支持のための前記内側のフランジで終端とされ、
複数の、個々のサブストラクチャ(11乃至17)からなる半完成部材を提供するステップと、
前記半完成部材を成形型に挿入するステップと、
前記成形型に樹脂を注入するとともに、この注入が圧力及び温度下で行われるステップと、
注入後の前記半完成部材を前記成形型の中で硬化させて、前記窓枠(1)を形成するステップと、を有する方法。
【請求項2】
前記した複数の、個々のサブストラクチャを組み立てて、前記半完成部材を提供するステップをさらに有し、
前記した複数の、個々のサブストラクチャは、前記半完成部材を前記成形型に挿入する前に組み立てられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記した複数の、個々のサブストラクチャを接続するために、熱可塑性溶接を行うステップをさらに有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ウェブ材料から作成される層構造をもった前記半完成部材を提供するステップをさらに有する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
繊維束で作成される層構造をもった前記半完成部材を提供するステップをさらに有する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
繊維束とウェブ材料との組み合わせからなる層構造をもった前記半完成部材を提供するステップをさらに有する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−500233(P2008−500233A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517109(P2007−517109)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005606
【国際公開番号】WO2005/115728
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(504467484)エアバス・ドイチュラント・ゲーエムベーハー (268)
【Fターム(参考)】