窓開閉検出装置
【課題】設置現場で簡単且つ確実に、実際の設置状況に対応した正確な磁力レベルの初期登録を可能とする。
【解決手段】初期登録作業は、クレセント錠の開閉レバーを解錠位置に操作してマグネットを遠ざけた状態でカバー部材を開いて登録スイッチ60を操作し、1分以内にカバー部材を閉じた状態で開閉レバーを施錠位置に操作してマグネットを近づける。登録処理部74は、登録スイッチ60の操作で動作し、施錠検出用ホールセンサ48で検出した磁力レベルVsを不揮発メモリ68に初期登録し、登録した磁力レベルVsに基づいて解錠と施錠の判定閾値THを設定する。電源安定タイミング設定部74は電池44から供給される電源電圧を変動させる回路動作の停止タイミングを判別して施錠検出用ホールセンサ48により検出した磁力レベルを取得させる。
【解決手段】初期登録作業は、クレセント錠の開閉レバーを解錠位置に操作してマグネットを遠ざけた状態でカバー部材を開いて登録スイッチ60を操作し、1分以内にカバー部材を閉じた状態で開閉レバーを施錠位置に操作してマグネットを近づける。登録処理部74は、登録スイッチ60の操作で動作し、施錠検出用ホールセンサ48で検出した磁力レベルVsを不揮発メモリ68に初期登録し、登録した磁力レベルVsに基づいて解錠と施錠の判定閾値THを設定する。電源安定タイミング設定部74は電池44から供給される電源電圧を変動させる回路動作の停止タイミングを判別して施錠検出用ホールセンサ48により検出した磁力レベルを取得させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓の開閉状態をホールセンサなどの磁気検知素子を使用して検出する窓開閉検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、監視対象としての窓の開閉を検出して無線により監視盤に送信して警報させる無線式の窓開閉検出装置が知られている。このような窓開閉検出装置にあっては、窓ガラスに配置したマグネットの磁力を磁気検知素子で検出し、検出磁力が低下したときに窓開閉と判断して異常検出信号を警報盤に無線送信して警報させる。また監視対象として窓に設けたクレセント錠の開閉レバーに配置したマグネットの磁力を別の磁気検知素子で検出し、開閉レバーが開放されてマグネットが磁気検知素子から離れることで検出磁力が低下したときにクレセント錠の開放と判断して異常検出信号を警報盤に無線送信して警報させている。
【0003】
従来の窓開閉装置に使用される磁気検知素子は主に磁力の強弱に応じて接点を機械的にオン、オフするリードスイッチを使用していたが、近年にあっては、ホール効果を利用して磁力を検出するホールセンサを採用することが検討されている。
【0004】
ホールセンサを磁気検知素子として使用する場合、検出対象とするマグネットに近いほど強い磁力がホールセンサを通過することで高いセンサ出力が得られる。
【0005】
しかしながら、クレセント錠の開閉レバーに設けたマグネットの磁力をホールセンサで検出する場合、窓の縦枠に設置する窓開閉検出装置は、クレセント錠の開閉レバーの操作を妨げないようにするため、例えば閉鎖位置にある開閉レバーの先端から30mm程度は離して設置する必要がある。
【0006】
このように窓開閉検出装置に対するマグネットの位置が離れると、磁力は距離の2乗に比例して減衰する関係にあるため、装置内に配置したホールセンサを通過する磁力が低下し、充分な検出出力が得られなくなる。
【0007】
この問題を解決するため本願発明者にあっては、ホールセンサの前面に円錐状の集磁体を配置し、マグネットからの距離が大きくなってもホールセンサに充分な磁力を通して検出出力を高めるようにした装置を提案している(特願2008−278878)。
【0008】
また窓開閉検出装置は電池により駆動しており、窓開閉検出装置は窓側面の縦枠に取り付けることから縦に長方体となり、クレセント錠に相対する下端側にホールセンサを配置するため、その後方となる上側に電池を収納する構造をとっている。
【0009】
また、窓開閉検出装置によりクレセント錠を監視するためには、クレセント錠の開閉レバーを施錠位置にセットしてマグネットが最小距離に近接した状態でのホールセンサにより検出される磁力レベルを初期登録し、初期登録した磁力レベルに基づいて施錠と解錠を判定する判定閾値を設定する。
【0010】
このような磁力レベルの初期登録は、製造工程の最終段階で、クレセント錠につき想定される施錠状態での最小距離にマグネットを配置して磁力レベルを初期登録して出荷することが考えられる。
【特許文献1】特開2003−281636号公報
【特許文献2】特開2001−14990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような製造工程最終段階で磁力レベルを初期登録した場合には次の問題がある。
【0012】
まず実際に設置する窓に設けているクレセント錠には様々なタイプがあり、一義的にクレセント錠を施錠したときの開閉レバーに設けたマグネットとの最小距離を想定して磁力レベルを初期登録しても、実際に設置した場合の磁力レベルと大きくことなる場合があり、適切な判定閾値の設定ができない恐れがある。
【0013】
また、クレセント錠の開閉レバーに設けたマグネットの磁力レベルを検出するホールセンサは、例えば一定の電源電圧を印加することで、センサを通過する磁束に比例した磁力レベル検出信号を出力しており、同じ磁束の強さであっても、電源電圧が変動すると異なったレベルの磁力レベル検出信号が出力される。
【0014】
一方、窓開閉検出装置は電池を電源として動作しており、ホールセンサの駆動に低電圧回路や定電流回路を設けることは、回路構成を複雑化してコストアップとなり、消費電流も増加することから、電池電圧を直接供給している。このためクレセント錠の閉鎖状態に対応したマグネットの配置位置を設定して磁力レベルを初期登録する場合、窓開閉検出装置に設けている無線送信回路、LED駆動回路などが動作すると、消費電流が増加することで電池電圧が変動し、ホールセンサで検出している磁力レベルも変動し、正しい磁力レベルの初期登録ができない恐れがある。
【0015】
特に、電池としてリチウム電池を使用した場合、電池温度が低下していると、電池の内部抵抗が大きくなり、消費電流の増加に対し電池電圧が大きく低下し、ホールセンサで検出している磁力レベルに大きな誤差を生じ、初期登録した磁力レベルに基づいて設定する解錠と施錠を判定する判定閾値が不適切なレベルに設定される恐れがある。
【0016】
本発明は、設置現場で簡単且つ確実に、実際の設置状況に対応した磁力レベルの正確な初期登録を可能とする窓開閉検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、監視対象物の状態を監視する窓開閉検出装置に於いて、
監視対象物に配置したマグネットと、
マグネットの磁力レベルを検出する磁気検知素子及び処理回路部を備えた装置本体と、
装置本体に対し着脱自在なカバー部材と、
装置本体に設けられた登録操作部と、
装置本体に設けられた電池と、
を備え、
処理回路部に、
登録操作部により登録モードを設定した際に動作し、磁気検知素子により検出した磁力レベルを測定し、測定した磁力レベルに基づいて監視対象物の状態を検出する判定閾値を設定する登録処理部と、
電池から供給される電源電圧を変動させる回路動作の停止タイミングを判別して登録処理部に磁気検知素子により検出した磁力レベルを取得させる電源安定タイミング設定部と、
磁気検知素子で検出した磁力レベルと判定閾値との比較により監視対象物の状態を判定する施錠監視部と、
を備えたことを特徴とする。
【0018】
ここで、電源安定タイミング設定部は、少なくとも無線送信部及び表示部の動作が停止しているタイミングを判別して磁気検知素子により検出した磁力レベルを取得させる。
【0019】
本発明の窓開閉検出装置は、更に、装置本体に第1表示部と第2表示部を備え、
登録処理部は、登録操作部の操作により動作を開始した際に、第1表示部を点滅動作し、
電源変動抑制部は、第1表示部の点滅動作における表示停止タイミングで且つ無線送信部の動作が停止しているタイミングを判別して磁気検知素子により検出した磁力レベルを取得させる。
【0020】
電源安定タイミング設定部は、前記磁気検知素子により検出した磁力レベルを取得する間、電池から供給される電源電圧を変動させる回路動作停止させるようにしても良い。磁気検知素子はホールセンサである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、窓開閉検出装置を設置場所の窓に設置した状態で所定の手順に従って登録作業を行うと、監視対象物であるクレセント錠の開閉レバーを施錠位置に操作した状態での開閉レバーに設けたマグネットの磁力レベルが磁気検知素子であるホールセンサにより検出されて初期登録され、初期登録された磁力レベルに基づき適正な判定閾値を設定することができる。
【0022】
この磁力レベルを初期登録するとき、無線送信部や表示部の動作が停止しているタイミングを判別して磁気検知素子であるホールセンサで検出した磁力レベルの取り込みを行っているため、無線送信部や表示部の動作による消費電流の増加で電池電圧が低下変動しているタイミングを外し、電池電圧が安定しているタイミングでホールセンサで検出している磁力レベルを取り込んで初期登録することができ、電池電圧の変動により誤差を生じた磁力レベルの初期登録を確実に回避し、正しい磁力レベルが初期登録されることで、これに基づいて設定する施錠監視の判定閾値を適切なレベルに設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は本発明による窓開閉検出装置の設置状態を示した説明図である。図1において、本発明の窓開閉検出装置10は監視対象とする窓サッシ12a,12bの縦枠に両面テープ又はビスなどにより固定される。窓開閉検出装置10の上側には、窓サッシ12a,12bを閉じた状態で、相対する位置に窓開閉検出マグネット14を両面テープで貼り付けており、窓開閉検出マグネット14の磁力を内蔵した磁気検知素子としてホールセンサにより検出している。
【0024】
窓サッシ12a,12bを開くと、窓開閉検出マグネット14が窓開閉検出装置10から離れることで磁力が低下し、この磁力の低下をホールセンサで検出して窓開を示す検出信号を別途設置された監視装置に無線で送信して警報させる。
【0025】
また窓開閉検出装置10はその下端を窓サッシ12a,12bに設けているクレセント錠16に近接するように配置し、クレセント錠16の開閉レバー18に貼り付けたクレセント錠検出マグネット20の磁力を下端側に内蔵したホールセンサで検出している。
【0026】
クレセント錠16は開閉レバー18を図示の垂直方向に回した操作位置で窓サッシ12a,12bを施錠しており、このときクレセント錠検出マグネット20は窓開閉検出装置10に最も近接してホールセンサで検出する磁力が最大となり、施錠状態を検出している。
【0027】
開閉レバー18を下側に回してクレセント錠16を開錠すると、クレセント錠検出マグネット20が離れることで磁力が低下し、この磁力の低下をホールセンサで検出して解錠状態を示す検出信号を監視装置に無線送信して警報させる。
【0028】
図2は図1の設置状態におけるホールセンサとマグネットの関係を示した説明図であり、図2(A)に平面を示し、図2(B)に横方向から見た状態を示している。
【0029】
図2(A)に示すように、本実施形態の窓開閉検出装置10は内側に位置する窓サッシ12aの縦枠に両面テープ又はビスにより取り付けられ、窓開閉検出装置10の右側面に相対して窓サッシ12bのガラス面に窓開閉検出マグネット14を両面テープで接着している。
【0030】
窓開閉検出装置10に内蔵した窓開閉検出用ホールセンサ46は図2(B)に示すように、窓開閉検出マグネット14に有効検出面を相対するようにセンサ基板45に実装しており、窓サッシ12a,12bを閉じた図示の状態で、装置側面からの距離dは最小となり、窓開閉検出マグネット14は破線で示す磁力線の方向に応じて例えばプラス極性で最大となる磁力レベル検出信号を出力している。
【0031】
窓閉における最小距離dは、窓サッシの構造や窓開閉検出装置10の取り付け状態により変化するが、本実施形態にあっては、規定範囲内の距離に配置されたときの磁力レベルに対し窓閉の判定結果が効率よく得られるように、増幅回路52による増幅率や判定閾値を設定している。
【0032】
なお、図2とは逆に、窓サッシ12bが内側で、窓サッシ12aが外側となる場合いには、内側となる窓サッシ12bの右端の縦枠に反対向きに窓開閉検出装置10が設置され、この場合には窓サッシ12aのガラス面に貼り付けた窓開閉検出マグネット14による磁力線は窓開閉検出用ホール素子46を左から右に逆方向に通過し、窓開閉検出用ホールセンサ46からはマイナスとなる逆極性の磁力レベル検出信号が出力される。
【0033】
図3は本発明による窓開閉検出装置の実施形態を示した組立分解図である。図3において、本実施形態の窓開閉検出装置10は装置本体22とカバー部材24で構成される。
【0034】
装置本体22は、底部側から、ベース30、金属製のプレートロックカバー32、ボディケース36、アンテナ40を備えた回路基板38及び本体カバー40を組み立てており、更に電池44が着脱自在に設けられる。カバー部材24のクレセント錠側に位置する端部には、円錐状の集磁体26がホルダー部材28に組み込み固定された状態で収納される。
【0035】
回路基板38の上部側にはセンサ基板45が起立され、ここに窓開閉検出用ホールセンサ46及び処理回路部を実装している。また回路基板38の下端にはクレセント錠検出用ホール素子48を設置し、また上部側に起立したセンサ基板45には窓開閉検出用ホール素子46を配置している。
【0036】
図4は本実施形態による窓開閉検出装置10について、カバー部材24を装置本体22から外した状態を示した説明図である。装置本体22の上部には、赤色LEDと緑LEDの2色LEDを用いた表示部56、施錠検出用ホールセンサ48で検出した磁力レベルを初期登録する登録処理を実行させる登録スイッチ60、カバー部材24の開閉を検出するタンパスイッチ64が設けられている。装置本体22はカバー部材24の嵌め込みを受けて嵌合固定する。
【0037】
カバー部材24は装置本体22に対し開閉自在であり、正面中央に表示窓56aを設け、装置本体22の表示部56の表示状態が見えるようにしている。
【0038】
図5は本実施形態による窓開閉検出装置の回路構成を示したブロック図である。図5において、制御部として設けられたプロセッサ50はワンチップマイコンとして知られたコンピュータであり、1チップにCPU、ROM,RAM、AD変換ポート、各種の入出力ポートなどを備えており、本実施形態ではEEPROMなどの不揮発メモリ68を外付けしている。
【0039】
プロセッサ50に対しては窓開閉検出用ホールセンサ46で検出した窓ガラスに設けた窓開閉検出マグネット14による磁力レベル検出信号が増幅回路52で増幅された後にAD変換ポート70に与えられ、デジタル変換した磁力レベル(AD変換値)を得ている。
【0040】
また、施錠検出用ホールセンサ48で検出したクレセント錠16の開閉レバー18に設けたクレセント錠検出マグネット20による磁力レベル検出信号が増幅回路54で増幅された後にAD変換ポート72に与えられ、デジタル変換した磁力レベル(AD変換値)を得ている。
【0041】
図6は図5の施錠検出用ホールセンサ48と増幅回路54の詳細を示した回路図である。図6において、施錠検出用ホールセンサ48は4つの抵抗rをブリッジ接続した等価回路で表すことができ、磁場に応じた抵抗rの変化により、磁場の強さに応じて直線的に変化する出力電圧が得られる。
【0042】
出力電圧の極性は施錠検出用ホールセンサ48を通過する磁力線の方向により、磁場の増加に対し出力電圧が増加するプラス極性の出力電圧と、磁場の増加に対し出力電圧が減少するマイナス極性の出力電圧となる。また施錠検出用ホールセンサ48に電池44から直接電池電圧Vcを供給しており、このため本実施形態にあっては、定電圧駆動であり、電池電圧Vcの変動による影響を大きく受ける。
【0043】
施錠検出用ホールセンサ48の出力電圧は増幅回路54で増幅され、プロセッサ50のAD変換ポート72でサンプリングされて8ビットのAD変換データに変換される。
【0044】
増幅回路54はオペアンプ82、抵抗R1,R2,R3,R4により差動増幅回路を構成している。ここでR1=R3、R2=R4であり、電圧増幅利得Gは、G=R2/R1で与えられる。
【0045】
なお、窓開閉用ホールセンサ46と増幅回路52についても、図6と同じ回路が使用される。
【0046】
再び図5を参照するに、プロセッサ50に対しては、表示部56、周波数切替スイッチ58、登録スイッチ60、テストスイッチ62、タンパスイッチ64、及び無線送信部66が設けられている。
【0047】
表示部56は第1表示部となる赤色LED56aと第2表示部となる緑色LED56bの2色LEDを設けており、例えば窓開や解錠などの異常検出で赤色LED56aを点灯し、その後の正常復帰で緑色LED56bを点灯する。また施錠検出用ホールセンサ48で検出した磁力レベルの初期登録の際に登録状態を表示する。周波数切替スイッチ58は無線送信部66について予め準備された複数の使用可能チャネルのいずれか1つを選択する。
【0048】
登録スイッチ60は本実施形態の窓開閉検出装置10の使用開始時にクレセント錠16の施錠監視に必要な磁力レベルを登録するための登録モードの設定に使用される。テストスイッチ62はリードスイッチが使用されており、テスト用のマグネットを近づけるとテストスイッチ62が動作してテスト用電文を無線送信部66から監視盤に送信させる。タンパスイッチ64はカバー部材24の開閉を検出するスイッチである。
【0049】
無線送信部66には送信回路が設けられ、監視状態を監視盤に対して無線通信を行う。
【0050】
不揮発メモリ68は装置の窓開閉判定に必要な判定閾値や、クレセント錠の施錠監視に必要な磁力レベルの初期登録で使用する有効レベルなどのデータが予め記憶され、クレセント錠の施錠監視に必要な初期登録が済むと、図示のように磁力レベルVs及び判定閾値THが記憶される。
【0051】
プロセッサ50にはCPUによるプログラムの実行により実現される機能として、登録処理部74、電源安定タイミング設定部75、窓開閉監視部76、施錠監視部78及び通信制御部80が設けられている。
【0052】
登録処理部74は、図1のように、窓開閉検出装置10、窓開閉検出マグネット14及びクレセント錠検出マグネット20の取り付け配置が完了した後、クレセント錠16の開閉レバー18を解錠位置に操作した状態とし、この状態で図3に示したようにカバー部材24を外して装置本体22の登録スイッチ60を操作すると、登録モードが設定され、登録処理が実行される。
【0053】
登録モードが開始されると表示部56の赤色LED56aが点滅を始める。この赤色LED56aの点滅は、後の説明で明らかにするように、初期登録のための磁力レベルを取り込む際に、動作停止タイミングを確保できるようにしたものであり、このため必ず点滅動作とし、点灯動作としてはならない。
【0054】
赤色LEDが点滅している間、カバー部材24を装置本体22に装着し、クレセント錠16の開閉レバー18を施錠位置に操作してクレセント錠検出マグネット20を近づけた状態とする。
【0055】
登録処理部74は登録モードの動作中は、施錠検出用ホールセンサ48で検出した磁力レベルを取得し、予め設定した所定の有効レベルと比較し、有効レベルである場合には、不揮発メモリ68に磁力レベルVsとして記憶する。なお、2回目以降の磁力レベルは不揮発メモリ68の磁力レベルVsに上書きされる。
【0056】
不揮発メモリ68に磁力レベルVsが有効に初期登録されると、表示部56の緑色LED56bが点灯し、初期登録完了を知らせる。初期登録が完了すると、登録処理部74は、初期登録した磁力レベルVsに所定比率を乗じた値を算出し、クレセント錠の施錠解錠を判断する判定閾値THとして不揮発メモリ68に登録し、施錠監視部78によるクレセント錠の施錠監視を開始させる。
【0057】
一方、登録スイッチ60の操作により登録モードを設定している所定時間の間に、カバー部材24を閉じてクレセント錠16の開閉レバー18を施錠位置に戻す操作を行わなかった場合には、有効レベルの磁力レベルが得られないために、磁力レベルの初期登録が完了せず、登録モードを設定している所定時間以内を経過したときに、赤色LED56aを点滅から点灯に切り替え、初期登録の失敗を表示し、登録処理のエラー状態をセットすると共に、施錠監視処理部78によるクレセント錠の施錠監視を解除する。
【0058】
この場合には、開閉レバー18を解錠位置に戻し、カバー部材24を開いて登録スイッチ60を操作することで、再度、磁力レベルの初期登録を行うことになる。
【0059】
このような登録処理部74による磁力レベルの初期登録のために必要な方法の作業手順は次のようになる。
(1)開閉レバー18を解錠位置に操作してクレセント錠検出マグネット20を最大距離に設定する。
(2)カバー部材24を開いて登録スイッチ60を操作する。
(3)登録スイッチ60の操作から所定時間以内に、カバー部材24を装置本体22に閉じた状態で開閉レバー18を施錠位置に操作してクレセント錠検出マグネット20を最小距離に設定する。
【0060】
窓開閉監視部76は窓開閉検出用ホールセンサ46から得られた磁力レベルを不揮発メモリ68からの判定閾値と比較し、窓の開又は閉を判定し、判定結果を示す電文を無線送信部66から監視盤に送信して警報又は警報解除を行わせる。
【0061】
更に、窓開閉監視部76は外部から強力な磁石を近づけることで磁力レベルが閾値以下としないようにして窓をあけるような所謂不正行為に対処するため、磁力レベルが扉閉での磁力レベルに対し所定比率大きい閾値を超えた時にも窓開と見做して窓開を示す電文を送信するようにしている。また、施錠及び解錠時の磁力レベルに基づき通常使用状態の磁力レベルの適正範囲を設定し、磁力レベルが適正範囲から上下に外れた場合には不正行為が発生したと判定するようにしても良い。つまり、適正使用範囲の上限値を施錠時の磁力レベルよりも所定比率分高い値に設定し、下限値を解錠時の零点レベルよりも所定比率小さい値に設定して、適正範囲内に磁力レベルがあるかを検出して不正行為を判定するようにしてもよい。これはクレセント錠の磁力レベルの測定に限らず窓開閉検出の磁力レベルの測定においても適用できる。
【0062】
施錠監視部78は施錠検出用ホールセンサ48から得られた磁力レベルの初期登録に基づき登録処理部74により設定した判定閾値THと比較し、閾値TH以下となった場合にクレセント錠の解錠と判断して解錠を示す電文を無線送信部66から監視装置に送信して警報させる。また、施錠監視部78は、解錠を検出した後に、正常に戻った場合にも、その旨の電文を監視装置に無線送信する。
【0063】
通信制御部80は窓開閉監視部76で窓開又は窓閉を判定した場合、施錠監視部78で解錠又は施錠を判定した場合にそれぞれの状態変化を示す電文を送信し、これ加え、一定時間間隔ごとに定期通報の電文を送信させる。
【0064】
図7は、本実施形態におけるクレセント錠検出マグネット20とクレセント錠検出用ホールセンサ48の関係を示した説明図である。図7において、窓開閉検出装置10における装置本体22のクレセント錠側の端部には施錠検出用ホールセンサ48が配置され、その前方(下方)にカバー部材24に収納した円錐状の集磁体26を配置している。また施錠検出用ホールセンサ48の後方(上方)には電池44が配置されている。
【0065】
クレセント錠16の開閉レバー18に設けたクレセント錠検出マグネット20は、開閉レバー18の施錠状態で図示のカバー部材24の外端面から距離hに位置し、この施錠位置での距離hが最小距離となる。クレセント錠検出マグネット20からの磁束は集磁体26の大径入射面に入った後、反対側の小径出射面に収束されて施錠検出用ホールセンサ48を通過する。
【0066】
このようなクレセント錠検出マグネット20による磁束は施錠検出用ホールセンサ48で磁力に応じた電圧信号として検出され、増幅回路で増幅した後にAD変換ポートにより磁力レベル(AD変換値)として読み込まれる。
なお、工場出荷後に装置本体とマグネットを近接して配置した場合には内部の回路や構成部品、あるいは装置本体の取付面が磁化することが考えられ、そのときホールセンサが検出する磁力レベルが増加するオフセットを生ずる。
【0067】
図8は図5のAD変換ポート70による磁力レベル検出信号のAD変換特性を示したグラフ図である。図5に示したクレセント錠検出用ホールセンサ48は磁力線の通過方向によりプラス極性の磁力レベル検出信号とマイナス極性の磁力レベル検出信号を出力する。
【0068】
施錠検出用ホールセンサ48からの磁力レベル検出信号は増幅回路54で増幅される。増幅回路54としては図6に示したように差動増幅回路が使用される。増幅回路54で増幅された磁力レベル検出信号(電圧信号)はAD変換ポート72により例えば8ビットの磁力レベルデータに変換される。
【0069】
このAD変換ポート72の変換特性は、図8の縦軸に示すように、10進AD変換値として0〜256の値を持ち、入力するプラス極性の磁力レベル検出信号0〜+VmaxをAD変換値128〜256に変換し、入力するマイナス極性の磁力レベル検出信号0〜−VmaxをAD変換値128〜0に変換する。
【0070】
図9は図8に示した装置端面からクレセント錠検出マグネット20までの距離hに対するクレセント錠検出用ホールセンサ48で検出した磁力レベルの関係を示したグラフ図である。なお、実際のAD変換ポート70の変換特性は図8のようになるが、図9にあっては、説明を簡単にするため、磁化レベル検出信号の極性に関らず、AD変換値を0〜128として示している。
【0071】
図9の特性Aは、周辺部材の磁化により影響を受けている場合であり、図7のクレセント錠検出マグネット20までの距離hをh=0〜40mmと変化させた場合の磁力レベルとなるAD変換値を示している。
【0072】
ここで例えばクレセント錠検出マグネット20までの距離hがh=20mmであったとすると、特性AのP点に対応した磁力レベルVsが初期登録される。また判定閾値THは、初期登録した磁力レベルVsの所定比率を乗じて下げた値として設定される。
【0073】
一方、特性Bは磁化による影響を受けていない場合であり、この場合、磁化レベルだけ下がった特性となっている。本実施形態にあっては、周辺部材の磁化によるオフセットを含む特性Aを対象に磁力レベルの初期登録を行っており、工場出荷段階での磁力レベルの初期登録で磁化をふくまない特性Bに従って実際と異なる磁力レベルの初期登録が行われることを防止する。
【0074】
もし、磁化による影響を含まない特性Bに従った磁力レベルの初期登録が同じく距離hについて行われると、登録した磁力レベルに所定の比率を掛けて設定される判定閾値は特性Aで計算した判定閾値より低めとなり、クレセント錠の解錠の検出感度が低下し、クレセント錠を解錠方向にかなり回さないと解錠が検出されず、解錠検出が遅れるなどの不具合が生ずる。
【0075】
図10は図5のプロセッサによる本実施形態の窓開閉検出処理を示したフローチャートである。
【0076】
図10において、電池44の装着により電源が投入されると、ステップS1で初期化処理と自己診断処理が実行され、異常が無ければステップS2に進み、不揮発メモリ68に記憶されている窓開閉の判定閾値などを含むデータを読み込む。
【0077】
続いてステップS3に進み、登録モードか否か判定し、登録モードであればステップS4に進み、施錠検出用ホールセンサ48による磁力レベルの初期登録に基づくクレセント錠16の開閉検出のための閾値設定を含む登録処理を実行する。登録モードは前述したように、図3のように、カバー部材24を開いて登録スイッチ60を操作することで開始される。
【0078】
続いてステップS5で所定の監視周期への到達の有無を判定しており、監視周期への到達を判定するとステップS6で電池44に対するローバッテリ監視処理を実行する。このとき電池電圧が規定電圧以下に低下していると、ローバッテリを示す電文を監視盤に無線送信して障害表示を行わせる。
【0079】
次にステップS7で窓開閉監視処理を実行し、窓開又は窓閉を判定すると、その内容を示す電文を監視盤に送信する。更にステップS8で施錠監視処理を実行し、解錠またはその後の施錠を判定すると、その内容を示す電文を監視盤に送信する。続いてステップS9で定期通報時間経過かを判別し、経過を判別した場合にはステップS10に進み、定期通報電文を監視盤に送信する定期通報処理を行う。
【0080】
図11は図10のステップS4における登録処理の詳細を示したフローチャートである。図11において、まずステップS11で登録スイッチ60のオン操作を判別しており、磁力レベルの初期登録のため、開閉レバー18を解錠位置に操作してクレセント錠検出マグネット20を最大距離に設定し、カバー部材24を開いて登録スイッチ60を操作すると、登録スイッチオンが判別されてステップS12に進み、赤色LED56aを点滅し、ステップS13で登録モードをスタートする。
【0081】
登録モードではステップS14で登録モードのスタートで起動したタイマにより登録可能期間である所定時間が経過したか否か判別しており、所定時間が経過するまでの間、ステップS15に進み、ステップS12で点滅を開始した赤色LED56aが消灯タイミングにあるか否か判別する。
【0082】
ステップS15で消灯タイミングを判別するとステップS16に進み、無線送信部66が通信停止中にあるか否か判別し、通信停止中を判別するとステップS17に進み、そのとき施錠検出用ホールセンサ48で検出した磁力レベルをAD変換ポート72から取り込んでレジスタに保持する。
【0083】
このため赤色LED56aが消灯タイミングにあり、且つ無線通信部66の動作が停止している動作電流の増加により電池電圧Vccが低下変動せずに安定しているタイミングを判別して正確な磁力レベルを取り込むことができる。
【0084】
続いて、レジスタに保持した磁力レベルをステップS18で予め設定した所定の有効レベルと比較し、有効レベルである場合には、ステップS19に進み、不揮発メモリ68に磁力レベルVsとして記憶する。
【0085】
なお、実際の処理にあっては、有効レベルである磁力レベルが複数回連続して取得できた場合に、最後に取得した磁力レベルを不揮発メモリ68に初期登録する。
【0086】
不揮発メモリ68に磁力レベルVsが有効に初期登録されると、ステップS20で表示部56の緑色LED56bを点灯し、初期登録完了を知らせる。初期登録が完了すると、ステップS21で初期登録した磁力レベルVsに所定比率を乗じた値を算出し、クレセント錠の施錠解錠を判断する判定閾値THとして不揮発メモリ68に登録し、ステップS22で施錠監視部78によるクレセント錠の施錠監視を開始させる。
【0087】
一方、登録スイッチ60の操作により登録モードを設定している登録可能期間である所定時間間に、カバー部材24を閉じてクレセント錠16の開閉レバー18を施錠位置に戻す操作を行わなかった場合には、ステップS18で有効レベルを超える磁力レベルが得られないために、ステップS14で登録可能期間の経過を判別したときにステップS23に進んで赤色LED56aを点滅から点灯に切り替えて初期登録の失敗を表示し、ステップS24で登録処理のエラー状態を登録すると共に、施錠監視処理部78によるクレセント錠の施錠監視を解除する。
【0088】
なお、上記の実施形態にあっては、赤色LED56aが消灯し且つ無線送信部66が通信停止となる電源安定タイミングを判別して磁力レベルを取り込んで初期登録しているが、登録モードの動作中について、無線送信部66の動作を強制的に停止するようにしても良い。
【0089】
また、上記の実施形態にあっては、初期登録した磁力レベルに所定比率を掛けて判定閾値を設定しているが、ホールセンサ自体のオフセットが予め判明している場合には、オフセットを工場出荷段階で測定して不揮発メモリに記憶しておき、初期登録した磁力レベルから判定閾値を算出する際に、磁力レベルからオフセットを差し引いて磁力レベル変化量を求め、この変化量に所定比率を掛けた値にオフセットを加算して判定閾値THとしても良い。
【0090】
また上記の実施形態は登録モード時に無線送信部の動作が停止しているタイミングを判別して磁気検知素子により検出した磁力レベルを取得するようにしているが、これに限らず、登録終了した後の通常監視状態の磁力レベルの測定においても、無線送信部や表示回路の動作が停止しているタイミングで行ってもよい。
【0091】
また上記の実施形態はクレセント施錠監視の判定閾値の設定を例にとるものであったが、窓開閉監視についても、同様に設置現場で磁力レベルを初期登録して窓開閉の判定閾値を設定するようにしても良い。
【0092】
また、本発明はその目的と利点を損なうことの無い適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明による窓開閉検出装置の設置状態を示した説明図
【図2】図1の窓開閉検出におけるホールセンサとマグネットの関係を示した説明図
【図3】本発明による窓開閉検出装置の実施形態を示した組立分解図
【図4】本実施形態による窓開閉検出装置についてカバー部材を装置本体から外した状態を示した説明図
【図5】本実施形態による窓開閉検出装置の回路構成を示したブロック図
【図6】図5に設けた施錠検出用ホールセンサとその増幅回路の詳細を示した回路図
【図7】本実施形態におけるクレセント錠検出マグネットとホールセンサの関係を示した説明図
【図8】図4のAD変換ポートによる磁力レベル検出信号のAD変換特性を示したグラフ図
【図9】本実施形態における装置下端からクレセント錠検出マグネットまでの距離に対するホールセンサで検出した磁力レベルの関係を示したグラフ図
【図10】図5のプロセッサによる本実施形態の窓開閉検出処理を示したフローチャート
【図11】図10のステップS4における登録処理の詳細を示したフローチャート
【符号の説明】
【0094】
10:窓開閉検出装置
12a,12b:窓サッシ
14:窓開閉検出マグネット
16:クレセント錠
18:開閉レバー
20:クレセント錠検出マグネット
22:装置本体
24:カバー部材
26:集磁体
28:ホルダー部材
40:アンテナ
44:電池
46:窓開閉検出用ホールセンサ
48:施錠検出用ホールセンサ
56:表示部
58:周波数切替スイッチ
60:登録スイッチ
75:電源安定タイミング判定部
76:開閉監視部
78:施錠監視部
80:通信制御部
82:オペアンプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓の開閉状態をホールセンサなどの磁気検知素子を使用して検出する窓開閉検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、監視対象としての窓の開閉を検出して無線により監視盤に送信して警報させる無線式の窓開閉検出装置が知られている。このような窓開閉検出装置にあっては、窓ガラスに配置したマグネットの磁力を磁気検知素子で検出し、検出磁力が低下したときに窓開閉と判断して異常検出信号を警報盤に無線送信して警報させる。また監視対象として窓に設けたクレセント錠の開閉レバーに配置したマグネットの磁力を別の磁気検知素子で検出し、開閉レバーが開放されてマグネットが磁気検知素子から離れることで検出磁力が低下したときにクレセント錠の開放と判断して異常検出信号を警報盤に無線送信して警報させている。
【0003】
従来の窓開閉装置に使用される磁気検知素子は主に磁力の強弱に応じて接点を機械的にオン、オフするリードスイッチを使用していたが、近年にあっては、ホール効果を利用して磁力を検出するホールセンサを採用することが検討されている。
【0004】
ホールセンサを磁気検知素子として使用する場合、検出対象とするマグネットに近いほど強い磁力がホールセンサを通過することで高いセンサ出力が得られる。
【0005】
しかしながら、クレセント錠の開閉レバーに設けたマグネットの磁力をホールセンサで検出する場合、窓の縦枠に設置する窓開閉検出装置は、クレセント錠の開閉レバーの操作を妨げないようにするため、例えば閉鎖位置にある開閉レバーの先端から30mm程度は離して設置する必要がある。
【0006】
このように窓開閉検出装置に対するマグネットの位置が離れると、磁力は距離の2乗に比例して減衰する関係にあるため、装置内に配置したホールセンサを通過する磁力が低下し、充分な検出出力が得られなくなる。
【0007】
この問題を解決するため本願発明者にあっては、ホールセンサの前面に円錐状の集磁体を配置し、マグネットからの距離が大きくなってもホールセンサに充分な磁力を通して検出出力を高めるようにした装置を提案している(特願2008−278878)。
【0008】
また窓開閉検出装置は電池により駆動しており、窓開閉検出装置は窓側面の縦枠に取り付けることから縦に長方体となり、クレセント錠に相対する下端側にホールセンサを配置するため、その後方となる上側に電池を収納する構造をとっている。
【0009】
また、窓開閉検出装置によりクレセント錠を監視するためには、クレセント錠の開閉レバーを施錠位置にセットしてマグネットが最小距離に近接した状態でのホールセンサにより検出される磁力レベルを初期登録し、初期登録した磁力レベルに基づいて施錠と解錠を判定する判定閾値を設定する。
【0010】
このような磁力レベルの初期登録は、製造工程の最終段階で、クレセント錠につき想定される施錠状態での最小距離にマグネットを配置して磁力レベルを初期登録して出荷することが考えられる。
【特許文献1】特開2003−281636号公報
【特許文献2】特開2001−14990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような製造工程最終段階で磁力レベルを初期登録した場合には次の問題がある。
【0012】
まず実際に設置する窓に設けているクレセント錠には様々なタイプがあり、一義的にクレセント錠を施錠したときの開閉レバーに設けたマグネットとの最小距離を想定して磁力レベルを初期登録しても、実際に設置した場合の磁力レベルと大きくことなる場合があり、適切な判定閾値の設定ができない恐れがある。
【0013】
また、クレセント錠の開閉レバーに設けたマグネットの磁力レベルを検出するホールセンサは、例えば一定の電源電圧を印加することで、センサを通過する磁束に比例した磁力レベル検出信号を出力しており、同じ磁束の強さであっても、電源電圧が変動すると異なったレベルの磁力レベル検出信号が出力される。
【0014】
一方、窓開閉検出装置は電池を電源として動作しており、ホールセンサの駆動に低電圧回路や定電流回路を設けることは、回路構成を複雑化してコストアップとなり、消費電流も増加することから、電池電圧を直接供給している。このためクレセント錠の閉鎖状態に対応したマグネットの配置位置を設定して磁力レベルを初期登録する場合、窓開閉検出装置に設けている無線送信回路、LED駆動回路などが動作すると、消費電流が増加することで電池電圧が変動し、ホールセンサで検出している磁力レベルも変動し、正しい磁力レベルの初期登録ができない恐れがある。
【0015】
特に、電池としてリチウム電池を使用した場合、電池温度が低下していると、電池の内部抵抗が大きくなり、消費電流の増加に対し電池電圧が大きく低下し、ホールセンサで検出している磁力レベルに大きな誤差を生じ、初期登録した磁力レベルに基づいて設定する解錠と施錠を判定する判定閾値が不適切なレベルに設定される恐れがある。
【0016】
本発明は、設置現場で簡単且つ確実に、実際の設置状況に対応した磁力レベルの正確な初期登録を可能とする窓開閉検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、監視対象物の状態を監視する窓開閉検出装置に於いて、
監視対象物に配置したマグネットと、
マグネットの磁力レベルを検出する磁気検知素子及び処理回路部を備えた装置本体と、
装置本体に対し着脱自在なカバー部材と、
装置本体に設けられた登録操作部と、
装置本体に設けられた電池と、
を備え、
処理回路部に、
登録操作部により登録モードを設定した際に動作し、磁気検知素子により検出した磁力レベルを測定し、測定した磁力レベルに基づいて監視対象物の状態を検出する判定閾値を設定する登録処理部と、
電池から供給される電源電圧を変動させる回路動作の停止タイミングを判別して登録処理部に磁気検知素子により検出した磁力レベルを取得させる電源安定タイミング設定部と、
磁気検知素子で検出した磁力レベルと判定閾値との比較により監視対象物の状態を判定する施錠監視部と、
を備えたことを特徴とする。
【0018】
ここで、電源安定タイミング設定部は、少なくとも無線送信部及び表示部の動作が停止しているタイミングを判別して磁気検知素子により検出した磁力レベルを取得させる。
【0019】
本発明の窓開閉検出装置は、更に、装置本体に第1表示部と第2表示部を備え、
登録処理部は、登録操作部の操作により動作を開始した際に、第1表示部を点滅動作し、
電源変動抑制部は、第1表示部の点滅動作における表示停止タイミングで且つ無線送信部の動作が停止しているタイミングを判別して磁気検知素子により検出した磁力レベルを取得させる。
【0020】
電源安定タイミング設定部は、前記磁気検知素子により検出した磁力レベルを取得する間、電池から供給される電源電圧を変動させる回路動作停止させるようにしても良い。磁気検知素子はホールセンサである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、窓開閉検出装置を設置場所の窓に設置した状態で所定の手順に従って登録作業を行うと、監視対象物であるクレセント錠の開閉レバーを施錠位置に操作した状態での開閉レバーに設けたマグネットの磁力レベルが磁気検知素子であるホールセンサにより検出されて初期登録され、初期登録された磁力レベルに基づき適正な判定閾値を設定することができる。
【0022】
この磁力レベルを初期登録するとき、無線送信部や表示部の動作が停止しているタイミングを判別して磁気検知素子であるホールセンサで検出した磁力レベルの取り込みを行っているため、無線送信部や表示部の動作による消費電流の増加で電池電圧が低下変動しているタイミングを外し、電池電圧が安定しているタイミングでホールセンサで検出している磁力レベルを取り込んで初期登録することができ、電池電圧の変動により誤差を生じた磁力レベルの初期登録を確実に回避し、正しい磁力レベルが初期登録されることで、これに基づいて設定する施錠監視の判定閾値を適切なレベルに設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は本発明による窓開閉検出装置の設置状態を示した説明図である。図1において、本発明の窓開閉検出装置10は監視対象とする窓サッシ12a,12bの縦枠に両面テープ又はビスなどにより固定される。窓開閉検出装置10の上側には、窓サッシ12a,12bを閉じた状態で、相対する位置に窓開閉検出マグネット14を両面テープで貼り付けており、窓開閉検出マグネット14の磁力を内蔵した磁気検知素子としてホールセンサにより検出している。
【0024】
窓サッシ12a,12bを開くと、窓開閉検出マグネット14が窓開閉検出装置10から離れることで磁力が低下し、この磁力の低下をホールセンサで検出して窓開を示す検出信号を別途設置された監視装置に無線で送信して警報させる。
【0025】
また窓開閉検出装置10はその下端を窓サッシ12a,12bに設けているクレセント錠16に近接するように配置し、クレセント錠16の開閉レバー18に貼り付けたクレセント錠検出マグネット20の磁力を下端側に内蔵したホールセンサで検出している。
【0026】
クレセント錠16は開閉レバー18を図示の垂直方向に回した操作位置で窓サッシ12a,12bを施錠しており、このときクレセント錠検出マグネット20は窓開閉検出装置10に最も近接してホールセンサで検出する磁力が最大となり、施錠状態を検出している。
【0027】
開閉レバー18を下側に回してクレセント錠16を開錠すると、クレセント錠検出マグネット20が離れることで磁力が低下し、この磁力の低下をホールセンサで検出して解錠状態を示す検出信号を監視装置に無線送信して警報させる。
【0028】
図2は図1の設置状態におけるホールセンサとマグネットの関係を示した説明図であり、図2(A)に平面を示し、図2(B)に横方向から見た状態を示している。
【0029】
図2(A)に示すように、本実施形態の窓開閉検出装置10は内側に位置する窓サッシ12aの縦枠に両面テープ又はビスにより取り付けられ、窓開閉検出装置10の右側面に相対して窓サッシ12bのガラス面に窓開閉検出マグネット14を両面テープで接着している。
【0030】
窓開閉検出装置10に内蔵した窓開閉検出用ホールセンサ46は図2(B)に示すように、窓開閉検出マグネット14に有効検出面を相対するようにセンサ基板45に実装しており、窓サッシ12a,12bを閉じた図示の状態で、装置側面からの距離dは最小となり、窓開閉検出マグネット14は破線で示す磁力線の方向に応じて例えばプラス極性で最大となる磁力レベル検出信号を出力している。
【0031】
窓閉における最小距離dは、窓サッシの構造や窓開閉検出装置10の取り付け状態により変化するが、本実施形態にあっては、規定範囲内の距離に配置されたときの磁力レベルに対し窓閉の判定結果が効率よく得られるように、増幅回路52による増幅率や判定閾値を設定している。
【0032】
なお、図2とは逆に、窓サッシ12bが内側で、窓サッシ12aが外側となる場合いには、内側となる窓サッシ12bの右端の縦枠に反対向きに窓開閉検出装置10が設置され、この場合には窓サッシ12aのガラス面に貼り付けた窓開閉検出マグネット14による磁力線は窓開閉検出用ホール素子46を左から右に逆方向に通過し、窓開閉検出用ホールセンサ46からはマイナスとなる逆極性の磁力レベル検出信号が出力される。
【0033】
図3は本発明による窓開閉検出装置の実施形態を示した組立分解図である。図3において、本実施形態の窓開閉検出装置10は装置本体22とカバー部材24で構成される。
【0034】
装置本体22は、底部側から、ベース30、金属製のプレートロックカバー32、ボディケース36、アンテナ40を備えた回路基板38及び本体カバー40を組み立てており、更に電池44が着脱自在に設けられる。カバー部材24のクレセント錠側に位置する端部には、円錐状の集磁体26がホルダー部材28に組み込み固定された状態で収納される。
【0035】
回路基板38の上部側にはセンサ基板45が起立され、ここに窓開閉検出用ホールセンサ46及び処理回路部を実装している。また回路基板38の下端にはクレセント錠検出用ホール素子48を設置し、また上部側に起立したセンサ基板45には窓開閉検出用ホール素子46を配置している。
【0036】
図4は本実施形態による窓開閉検出装置10について、カバー部材24を装置本体22から外した状態を示した説明図である。装置本体22の上部には、赤色LEDと緑LEDの2色LEDを用いた表示部56、施錠検出用ホールセンサ48で検出した磁力レベルを初期登録する登録処理を実行させる登録スイッチ60、カバー部材24の開閉を検出するタンパスイッチ64が設けられている。装置本体22はカバー部材24の嵌め込みを受けて嵌合固定する。
【0037】
カバー部材24は装置本体22に対し開閉自在であり、正面中央に表示窓56aを設け、装置本体22の表示部56の表示状態が見えるようにしている。
【0038】
図5は本実施形態による窓開閉検出装置の回路構成を示したブロック図である。図5において、制御部として設けられたプロセッサ50はワンチップマイコンとして知られたコンピュータであり、1チップにCPU、ROM,RAM、AD変換ポート、各種の入出力ポートなどを備えており、本実施形態ではEEPROMなどの不揮発メモリ68を外付けしている。
【0039】
プロセッサ50に対しては窓開閉検出用ホールセンサ46で検出した窓ガラスに設けた窓開閉検出マグネット14による磁力レベル検出信号が増幅回路52で増幅された後にAD変換ポート70に与えられ、デジタル変換した磁力レベル(AD変換値)を得ている。
【0040】
また、施錠検出用ホールセンサ48で検出したクレセント錠16の開閉レバー18に設けたクレセント錠検出マグネット20による磁力レベル検出信号が増幅回路54で増幅された後にAD変換ポート72に与えられ、デジタル変換した磁力レベル(AD変換値)を得ている。
【0041】
図6は図5の施錠検出用ホールセンサ48と増幅回路54の詳細を示した回路図である。図6において、施錠検出用ホールセンサ48は4つの抵抗rをブリッジ接続した等価回路で表すことができ、磁場に応じた抵抗rの変化により、磁場の強さに応じて直線的に変化する出力電圧が得られる。
【0042】
出力電圧の極性は施錠検出用ホールセンサ48を通過する磁力線の方向により、磁場の増加に対し出力電圧が増加するプラス極性の出力電圧と、磁場の増加に対し出力電圧が減少するマイナス極性の出力電圧となる。また施錠検出用ホールセンサ48に電池44から直接電池電圧Vcを供給しており、このため本実施形態にあっては、定電圧駆動であり、電池電圧Vcの変動による影響を大きく受ける。
【0043】
施錠検出用ホールセンサ48の出力電圧は増幅回路54で増幅され、プロセッサ50のAD変換ポート72でサンプリングされて8ビットのAD変換データに変換される。
【0044】
増幅回路54はオペアンプ82、抵抗R1,R2,R3,R4により差動増幅回路を構成している。ここでR1=R3、R2=R4であり、電圧増幅利得Gは、G=R2/R1で与えられる。
【0045】
なお、窓開閉用ホールセンサ46と増幅回路52についても、図6と同じ回路が使用される。
【0046】
再び図5を参照するに、プロセッサ50に対しては、表示部56、周波数切替スイッチ58、登録スイッチ60、テストスイッチ62、タンパスイッチ64、及び無線送信部66が設けられている。
【0047】
表示部56は第1表示部となる赤色LED56aと第2表示部となる緑色LED56bの2色LEDを設けており、例えば窓開や解錠などの異常検出で赤色LED56aを点灯し、その後の正常復帰で緑色LED56bを点灯する。また施錠検出用ホールセンサ48で検出した磁力レベルの初期登録の際に登録状態を表示する。周波数切替スイッチ58は無線送信部66について予め準備された複数の使用可能チャネルのいずれか1つを選択する。
【0048】
登録スイッチ60は本実施形態の窓開閉検出装置10の使用開始時にクレセント錠16の施錠監視に必要な磁力レベルを登録するための登録モードの設定に使用される。テストスイッチ62はリードスイッチが使用されており、テスト用のマグネットを近づけるとテストスイッチ62が動作してテスト用電文を無線送信部66から監視盤に送信させる。タンパスイッチ64はカバー部材24の開閉を検出するスイッチである。
【0049】
無線送信部66には送信回路が設けられ、監視状態を監視盤に対して無線通信を行う。
【0050】
不揮発メモリ68は装置の窓開閉判定に必要な判定閾値や、クレセント錠の施錠監視に必要な磁力レベルの初期登録で使用する有効レベルなどのデータが予め記憶され、クレセント錠の施錠監視に必要な初期登録が済むと、図示のように磁力レベルVs及び判定閾値THが記憶される。
【0051】
プロセッサ50にはCPUによるプログラムの実行により実現される機能として、登録処理部74、電源安定タイミング設定部75、窓開閉監視部76、施錠監視部78及び通信制御部80が設けられている。
【0052】
登録処理部74は、図1のように、窓開閉検出装置10、窓開閉検出マグネット14及びクレセント錠検出マグネット20の取り付け配置が完了した後、クレセント錠16の開閉レバー18を解錠位置に操作した状態とし、この状態で図3に示したようにカバー部材24を外して装置本体22の登録スイッチ60を操作すると、登録モードが設定され、登録処理が実行される。
【0053】
登録モードが開始されると表示部56の赤色LED56aが点滅を始める。この赤色LED56aの点滅は、後の説明で明らかにするように、初期登録のための磁力レベルを取り込む際に、動作停止タイミングを確保できるようにしたものであり、このため必ず点滅動作とし、点灯動作としてはならない。
【0054】
赤色LEDが点滅している間、カバー部材24を装置本体22に装着し、クレセント錠16の開閉レバー18を施錠位置に操作してクレセント錠検出マグネット20を近づけた状態とする。
【0055】
登録処理部74は登録モードの動作中は、施錠検出用ホールセンサ48で検出した磁力レベルを取得し、予め設定した所定の有効レベルと比較し、有効レベルである場合には、不揮発メモリ68に磁力レベルVsとして記憶する。なお、2回目以降の磁力レベルは不揮発メモリ68の磁力レベルVsに上書きされる。
【0056】
不揮発メモリ68に磁力レベルVsが有効に初期登録されると、表示部56の緑色LED56bが点灯し、初期登録完了を知らせる。初期登録が完了すると、登録処理部74は、初期登録した磁力レベルVsに所定比率を乗じた値を算出し、クレセント錠の施錠解錠を判断する判定閾値THとして不揮発メモリ68に登録し、施錠監視部78によるクレセント錠の施錠監視を開始させる。
【0057】
一方、登録スイッチ60の操作により登録モードを設定している所定時間の間に、カバー部材24を閉じてクレセント錠16の開閉レバー18を施錠位置に戻す操作を行わなかった場合には、有効レベルの磁力レベルが得られないために、磁力レベルの初期登録が完了せず、登録モードを設定している所定時間以内を経過したときに、赤色LED56aを点滅から点灯に切り替え、初期登録の失敗を表示し、登録処理のエラー状態をセットすると共に、施錠監視処理部78によるクレセント錠の施錠監視を解除する。
【0058】
この場合には、開閉レバー18を解錠位置に戻し、カバー部材24を開いて登録スイッチ60を操作することで、再度、磁力レベルの初期登録を行うことになる。
【0059】
このような登録処理部74による磁力レベルの初期登録のために必要な方法の作業手順は次のようになる。
(1)開閉レバー18を解錠位置に操作してクレセント錠検出マグネット20を最大距離に設定する。
(2)カバー部材24を開いて登録スイッチ60を操作する。
(3)登録スイッチ60の操作から所定時間以内に、カバー部材24を装置本体22に閉じた状態で開閉レバー18を施錠位置に操作してクレセント錠検出マグネット20を最小距離に設定する。
【0060】
窓開閉監視部76は窓開閉検出用ホールセンサ46から得られた磁力レベルを不揮発メモリ68からの判定閾値と比較し、窓の開又は閉を判定し、判定結果を示す電文を無線送信部66から監視盤に送信して警報又は警報解除を行わせる。
【0061】
更に、窓開閉監視部76は外部から強力な磁石を近づけることで磁力レベルが閾値以下としないようにして窓をあけるような所謂不正行為に対処するため、磁力レベルが扉閉での磁力レベルに対し所定比率大きい閾値を超えた時にも窓開と見做して窓開を示す電文を送信するようにしている。また、施錠及び解錠時の磁力レベルに基づき通常使用状態の磁力レベルの適正範囲を設定し、磁力レベルが適正範囲から上下に外れた場合には不正行為が発生したと判定するようにしても良い。つまり、適正使用範囲の上限値を施錠時の磁力レベルよりも所定比率分高い値に設定し、下限値を解錠時の零点レベルよりも所定比率小さい値に設定して、適正範囲内に磁力レベルがあるかを検出して不正行為を判定するようにしてもよい。これはクレセント錠の磁力レベルの測定に限らず窓開閉検出の磁力レベルの測定においても適用できる。
【0062】
施錠監視部78は施錠検出用ホールセンサ48から得られた磁力レベルの初期登録に基づき登録処理部74により設定した判定閾値THと比較し、閾値TH以下となった場合にクレセント錠の解錠と判断して解錠を示す電文を無線送信部66から監視装置に送信して警報させる。また、施錠監視部78は、解錠を検出した後に、正常に戻った場合にも、その旨の電文を監視装置に無線送信する。
【0063】
通信制御部80は窓開閉監視部76で窓開又は窓閉を判定した場合、施錠監視部78で解錠又は施錠を判定した場合にそれぞれの状態変化を示す電文を送信し、これ加え、一定時間間隔ごとに定期通報の電文を送信させる。
【0064】
図7は、本実施形態におけるクレセント錠検出マグネット20とクレセント錠検出用ホールセンサ48の関係を示した説明図である。図7において、窓開閉検出装置10における装置本体22のクレセント錠側の端部には施錠検出用ホールセンサ48が配置され、その前方(下方)にカバー部材24に収納した円錐状の集磁体26を配置している。また施錠検出用ホールセンサ48の後方(上方)には電池44が配置されている。
【0065】
クレセント錠16の開閉レバー18に設けたクレセント錠検出マグネット20は、開閉レバー18の施錠状態で図示のカバー部材24の外端面から距離hに位置し、この施錠位置での距離hが最小距離となる。クレセント錠検出マグネット20からの磁束は集磁体26の大径入射面に入った後、反対側の小径出射面に収束されて施錠検出用ホールセンサ48を通過する。
【0066】
このようなクレセント錠検出マグネット20による磁束は施錠検出用ホールセンサ48で磁力に応じた電圧信号として検出され、増幅回路で増幅した後にAD変換ポートにより磁力レベル(AD変換値)として読み込まれる。
なお、工場出荷後に装置本体とマグネットを近接して配置した場合には内部の回路や構成部品、あるいは装置本体の取付面が磁化することが考えられ、そのときホールセンサが検出する磁力レベルが増加するオフセットを生ずる。
【0067】
図8は図5のAD変換ポート70による磁力レベル検出信号のAD変換特性を示したグラフ図である。図5に示したクレセント錠検出用ホールセンサ48は磁力線の通過方向によりプラス極性の磁力レベル検出信号とマイナス極性の磁力レベル検出信号を出力する。
【0068】
施錠検出用ホールセンサ48からの磁力レベル検出信号は増幅回路54で増幅される。増幅回路54としては図6に示したように差動増幅回路が使用される。増幅回路54で増幅された磁力レベル検出信号(電圧信号)はAD変換ポート72により例えば8ビットの磁力レベルデータに変換される。
【0069】
このAD変換ポート72の変換特性は、図8の縦軸に示すように、10進AD変換値として0〜256の値を持ち、入力するプラス極性の磁力レベル検出信号0〜+VmaxをAD変換値128〜256に変換し、入力するマイナス極性の磁力レベル検出信号0〜−VmaxをAD変換値128〜0に変換する。
【0070】
図9は図8に示した装置端面からクレセント錠検出マグネット20までの距離hに対するクレセント錠検出用ホールセンサ48で検出した磁力レベルの関係を示したグラフ図である。なお、実際のAD変換ポート70の変換特性は図8のようになるが、図9にあっては、説明を簡単にするため、磁化レベル検出信号の極性に関らず、AD変換値を0〜128として示している。
【0071】
図9の特性Aは、周辺部材の磁化により影響を受けている場合であり、図7のクレセント錠検出マグネット20までの距離hをh=0〜40mmと変化させた場合の磁力レベルとなるAD変換値を示している。
【0072】
ここで例えばクレセント錠検出マグネット20までの距離hがh=20mmであったとすると、特性AのP点に対応した磁力レベルVsが初期登録される。また判定閾値THは、初期登録した磁力レベルVsの所定比率を乗じて下げた値として設定される。
【0073】
一方、特性Bは磁化による影響を受けていない場合であり、この場合、磁化レベルだけ下がった特性となっている。本実施形態にあっては、周辺部材の磁化によるオフセットを含む特性Aを対象に磁力レベルの初期登録を行っており、工場出荷段階での磁力レベルの初期登録で磁化をふくまない特性Bに従って実際と異なる磁力レベルの初期登録が行われることを防止する。
【0074】
もし、磁化による影響を含まない特性Bに従った磁力レベルの初期登録が同じく距離hについて行われると、登録した磁力レベルに所定の比率を掛けて設定される判定閾値は特性Aで計算した判定閾値より低めとなり、クレセント錠の解錠の検出感度が低下し、クレセント錠を解錠方向にかなり回さないと解錠が検出されず、解錠検出が遅れるなどの不具合が生ずる。
【0075】
図10は図5のプロセッサによる本実施形態の窓開閉検出処理を示したフローチャートである。
【0076】
図10において、電池44の装着により電源が投入されると、ステップS1で初期化処理と自己診断処理が実行され、異常が無ければステップS2に進み、不揮発メモリ68に記憶されている窓開閉の判定閾値などを含むデータを読み込む。
【0077】
続いてステップS3に進み、登録モードか否か判定し、登録モードであればステップS4に進み、施錠検出用ホールセンサ48による磁力レベルの初期登録に基づくクレセント錠16の開閉検出のための閾値設定を含む登録処理を実行する。登録モードは前述したように、図3のように、カバー部材24を開いて登録スイッチ60を操作することで開始される。
【0078】
続いてステップS5で所定の監視周期への到達の有無を判定しており、監視周期への到達を判定するとステップS6で電池44に対するローバッテリ監視処理を実行する。このとき電池電圧が規定電圧以下に低下していると、ローバッテリを示す電文を監視盤に無線送信して障害表示を行わせる。
【0079】
次にステップS7で窓開閉監視処理を実行し、窓開又は窓閉を判定すると、その内容を示す電文を監視盤に送信する。更にステップS8で施錠監視処理を実行し、解錠またはその後の施錠を判定すると、その内容を示す電文を監視盤に送信する。続いてステップS9で定期通報時間経過かを判別し、経過を判別した場合にはステップS10に進み、定期通報電文を監視盤に送信する定期通報処理を行う。
【0080】
図11は図10のステップS4における登録処理の詳細を示したフローチャートである。図11において、まずステップS11で登録スイッチ60のオン操作を判別しており、磁力レベルの初期登録のため、開閉レバー18を解錠位置に操作してクレセント錠検出マグネット20を最大距離に設定し、カバー部材24を開いて登録スイッチ60を操作すると、登録スイッチオンが判別されてステップS12に進み、赤色LED56aを点滅し、ステップS13で登録モードをスタートする。
【0081】
登録モードではステップS14で登録モードのスタートで起動したタイマにより登録可能期間である所定時間が経過したか否か判別しており、所定時間が経過するまでの間、ステップS15に進み、ステップS12で点滅を開始した赤色LED56aが消灯タイミングにあるか否か判別する。
【0082】
ステップS15で消灯タイミングを判別するとステップS16に進み、無線送信部66が通信停止中にあるか否か判別し、通信停止中を判別するとステップS17に進み、そのとき施錠検出用ホールセンサ48で検出した磁力レベルをAD変換ポート72から取り込んでレジスタに保持する。
【0083】
このため赤色LED56aが消灯タイミングにあり、且つ無線通信部66の動作が停止している動作電流の増加により電池電圧Vccが低下変動せずに安定しているタイミングを判別して正確な磁力レベルを取り込むことができる。
【0084】
続いて、レジスタに保持した磁力レベルをステップS18で予め設定した所定の有効レベルと比較し、有効レベルである場合には、ステップS19に進み、不揮発メモリ68に磁力レベルVsとして記憶する。
【0085】
なお、実際の処理にあっては、有効レベルである磁力レベルが複数回連続して取得できた場合に、最後に取得した磁力レベルを不揮発メモリ68に初期登録する。
【0086】
不揮発メモリ68に磁力レベルVsが有効に初期登録されると、ステップS20で表示部56の緑色LED56bを点灯し、初期登録完了を知らせる。初期登録が完了すると、ステップS21で初期登録した磁力レベルVsに所定比率を乗じた値を算出し、クレセント錠の施錠解錠を判断する判定閾値THとして不揮発メモリ68に登録し、ステップS22で施錠監視部78によるクレセント錠の施錠監視を開始させる。
【0087】
一方、登録スイッチ60の操作により登録モードを設定している登録可能期間である所定時間間に、カバー部材24を閉じてクレセント錠16の開閉レバー18を施錠位置に戻す操作を行わなかった場合には、ステップS18で有効レベルを超える磁力レベルが得られないために、ステップS14で登録可能期間の経過を判別したときにステップS23に進んで赤色LED56aを点滅から点灯に切り替えて初期登録の失敗を表示し、ステップS24で登録処理のエラー状態を登録すると共に、施錠監視処理部78によるクレセント錠の施錠監視を解除する。
【0088】
なお、上記の実施形態にあっては、赤色LED56aが消灯し且つ無線送信部66が通信停止となる電源安定タイミングを判別して磁力レベルを取り込んで初期登録しているが、登録モードの動作中について、無線送信部66の動作を強制的に停止するようにしても良い。
【0089】
また、上記の実施形態にあっては、初期登録した磁力レベルに所定比率を掛けて判定閾値を設定しているが、ホールセンサ自体のオフセットが予め判明している場合には、オフセットを工場出荷段階で測定して不揮発メモリに記憶しておき、初期登録した磁力レベルから判定閾値を算出する際に、磁力レベルからオフセットを差し引いて磁力レベル変化量を求め、この変化量に所定比率を掛けた値にオフセットを加算して判定閾値THとしても良い。
【0090】
また上記の実施形態は登録モード時に無線送信部の動作が停止しているタイミングを判別して磁気検知素子により検出した磁力レベルを取得するようにしているが、これに限らず、登録終了した後の通常監視状態の磁力レベルの測定においても、無線送信部や表示回路の動作が停止しているタイミングで行ってもよい。
【0091】
また上記の実施形態はクレセント施錠監視の判定閾値の設定を例にとるものであったが、窓開閉監視についても、同様に設置現場で磁力レベルを初期登録して窓開閉の判定閾値を設定するようにしても良い。
【0092】
また、本発明はその目的と利点を損なうことの無い適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明による窓開閉検出装置の設置状態を示した説明図
【図2】図1の窓開閉検出におけるホールセンサとマグネットの関係を示した説明図
【図3】本発明による窓開閉検出装置の実施形態を示した組立分解図
【図4】本実施形態による窓開閉検出装置についてカバー部材を装置本体から外した状態を示した説明図
【図5】本実施形態による窓開閉検出装置の回路構成を示したブロック図
【図6】図5に設けた施錠検出用ホールセンサとその増幅回路の詳細を示した回路図
【図7】本実施形態におけるクレセント錠検出マグネットとホールセンサの関係を示した説明図
【図8】図4のAD変換ポートによる磁力レベル検出信号のAD変換特性を示したグラフ図
【図9】本実施形態における装置下端からクレセント錠検出マグネットまでの距離に対するホールセンサで検出した磁力レベルの関係を示したグラフ図
【図10】図5のプロセッサによる本実施形態の窓開閉検出処理を示したフローチャート
【図11】図10のステップS4における登録処理の詳細を示したフローチャート
【符号の説明】
【0094】
10:窓開閉検出装置
12a,12b:窓サッシ
14:窓開閉検出マグネット
16:クレセント錠
18:開閉レバー
20:クレセント錠検出マグネット
22:装置本体
24:カバー部材
26:集磁体
28:ホルダー部材
40:アンテナ
44:電池
46:窓開閉検出用ホールセンサ
48:施錠検出用ホールセンサ
56:表示部
58:周波数切替スイッチ
60:登録スイッチ
75:電源安定タイミング判定部
76:開閉監視部
78:施錠監視部
80:通信制御部
82:オペアンプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象物の開閉状態を監視する窓開閉検出装置に於いて、
監視対象に配置したマグネットと、
前記マグネットの磁力レベルを検出する磁気検知素子及び処理回路部を備えた装置本体と、
前記装置本体に設けられた登録操作部と、
前記装置本体に設けられた電池と、
を備え、
前記処理回路部に、
前記登録操作部により登録モードを設定した際に動作し、前記磁気検知素子により検出した磁力レベルを測定し、測定した前記磁力レベルに基づいて前記監視対象物の状態を検出する判定閾値を設定する登録処理部と、
前記電池から供給される電源電圧を変動させる回路動作の停止タイミングを判別して前記登録処理部に前記磁気検知素子により検出した磁力レベルを取得させる電源安定タイミング設定部と、
前記磁気検知素子で検出した磁力レベルと前記判定閾値との比較により前記監視対象物の状態を判定する施錠監視部と、
を備えたことを特徴とする窓開閉検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の窓開閉検出装置に於いて、前記電源安定タイミング設定部は、少なくとも無線送信部及び表示部の動作が停止しているタイミングを判別して前記磁気検知素子により検出した磁力レベルを取得させることを特徴とする窓開閉検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の窓開閉検出装置に於いて、
前記装置本体に第1表示部と第2表示部を備え、
前記登録処理部は、前記登録操作部の操作により動作を開始した際に、前記第1表示部を点滅動作し、
前記電源変動抑制部は、前記第1表示部の点滅動作における表示停止タイミングで且つ前記無線送信部の動作が停止しているタイミングを判別して前記磁気検知素子により検出した磁力レベルを取得させることを特徴とする窓開閉検出装置。
【請求項4】
請求項1記載の窓開閉検出装置に於いて、前記電源安定タイミング設定部は、前記磁気検知素子により検出した磁力レベルを取得する間、前記電池から供給される電源電圧を変動させる回路動作を停止させることを特徴とする窓開閉検出装置。
【請求項5】
請求項1記載の窓開閉検出装置に於いて、前記磁気検知素子はホールセンサであることを特徴とする窓開閉検出装置。
【請求項1】
監視対象物の開閉状態を監視する窓開閉検出装置に於いて、
監視対象に配置したマグネットと、
前記マグネットの磁力レベルを検出する磁気検知素子及び処理回路部を備えた装置本体と、
前記装置本体に設けられた登録操作部と、
前記装置本体に設けられた電池と、
を備え、
前記処理回路部に、
前記登録操作部により登録モードを設定した際に動作し、前記磁気検知素子により検出した磁力レベルを測定し、測定した前記磁力レベルに基づいて前記監視対象物の状態を検出する判定閾値を設定する登録処理部と、
前記電池から供給される電源電圧を変動させる回路動作の停止タイミングを判別して前記登録処理部に前記磁気検知素子により検出した磁力レベルを取得させる電源安定タイミング設定部と、
前記磁気検知素子で検出した磁力レベルと前記判定閾値との比較により前記監視対象物の状態を判定する施錠監視部と、
を備えたことを特徴とする窓開閉検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の窓開閉検出装置に於いて、前記電源安定タイミング設定部は、少なくとも無線送信部及び表示部の動作が停止しているタイミングを判別して前記磁気検知素子により検出した磁力レベルを取得させることを特徴とする窓開閉検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の窓開閉検出装置に於いて、
前記装置本体に第1表示部と第2表示部を備え、
前記登録処理部は、前記登録操作部の操作により動作を開始した際に、前記第1表示部を点滅動作し、
前記電源変動抑制部は、前記第1表示部の点滅動作における表示停止タイミングで且つ前記無線送信部の動作が停止しているタイミングを判別して前記磁気検知素子により検出した磁力レベルを取得させることを特徴とする窓開閉検出装置。
【請求項4】
請求項1記載の窓開閉検出装置に於いて、前記電源安定タイミング設定部は、前記磁気検知素子により検出した磁力レベルを取得する間、前記電池から供給される電源電圧を変動させる回路動作を停止させることを特徴とする窓開閉検出装置。
【請求項5】
請求項1記載の窓開閉検出装置に於いて、前記磁気検知素子はホールセンサであることを特徴とする窓開閉検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−129008(P2010−129008A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305788(P2008−305788)
【出願日】平成20年11月30日(2008.11.30)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【出願人】(591273269)株式会社サーキットデザイン (29)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月30日(2008.11.30)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【出願人】(591273269)株式会社サーキットデザイン (29)
【Fターム(参考)】
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