説明

筒形濾過装置

【課題】濾過エレメントに付いた被濾過物を濾過エレメントから容易に分離することができる筒形濾過装置を提供することを課題とする。
【解決手段】筒形濾過装置50に用いる濾過エレメント60は、筒体10に所定ピッチP1で巻かれるワイヤ40からなる。
【効果】濾過エレメント60はワイヤ40で構成されるので、ワイヤ40を筒体10から解くこと、又はワイヤ40を筒体10に巻くことが簡単である。すなわち、濾過エレメント60で切削油を濾過した後、被濾過物が付いたワイヤ40を筒体10から簡単に解くことができる。解かれたワイヤ40にブラシローラ100を当てると、ワイヤ40に付いた被濾過物をワイヤ40から容易に除去できる。したがって、濾過エレメント60に付いた被濾過物を濾過エレメント60から容易に除去できる筒形濾過装置50を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を濾過する筒形濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
筒形の濾過エレメントを有する筒形濾過装置が知られている(例えば、特許文献1(図2)参照。)。
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図9は従来の技術の基本原理を説明する図であり、筒形濾過装置200では、円筒状の容器201下部に設けた原水流入部202から原水が流入され、この原水が外スクリーン203に設けた複数の目開き204に通されることで濾過され、濾過された原水が濾過エレメントに通されることで更に濾過され、濾過後の処理水が内スクリーン205の複数の孔206を通じて処理水流出経路207へ流出される。
【0004】
筒形濾過装置200の運転後、外スクリーン203の外周面に、複数の目開き204を塞ぐように被濾過物が付く。この被濾過物を除去するためには、先ず内スクリーン205に連結された駆動部208のモータ209を起動し、このモータ209で発生した動力をチェーン伝動機構211を介して内スクリーン205及び外スクリーン203に伝達する。つまり、外スクリーン203が回転することにより、外スクリーン203の外周面に付いた被濾過物が、容器201内に取付けた複数のスクレーパ212で除去される。
【0005】
しかし、外スクリーン203は、回転時にスクレーパ212と干渉しないように、スクレーパ212との間に一定の隙間を空けて容器201に設けられる。すなわち、スクレーパ212で被濾過物を除去した後でも、外スクリーン203の外周面に被濾過物が残り易くなる。対策として、外スクリーン203の内側から逆洗水を供給することが挙げられるが、除去作業に時間を要するため、メンテナンス費用の増大を招く。
【0006】
そこで、外スクリーン203(濾過エレメント)に付いた被濾過物を濾過エレメントから容易に除去することが筒形濾過装置が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−321893公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、濾過エレメントに付いた被濾過物を濾過エレメントから容易に分離することができる筒形濾過装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、筒外の液体を筒内へ流入させる、又は筒内の液体を筒外へ流出させることで、前記液体を濾過する筒形濾過装置において、前記筒形濾過装置は、濾過エレメントを支える筒体と、この筒体に巻かれる前記濾過エレメントとからなり、前記濾過エレメントは、前記筒体に所定ピッチで巻かれるワイヤからなり、前記筒形濾過装置は、さらに、前記筒体の外に配置され前記筒体から解かれ且つ前記筒体に巻かれる前記ワイヤを案内するアイドラと、前記筒体の外に配置され前記アイドラで案内されるワイヤを清掃するブラシローラとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、筒形濾過装置に用いられる濾過エレメントは、筒体に所定ピッチで巻かれるワイヤからなる。濾過エレメントはワイヤで構成されるので、ワイヤを筒体から解くこと、又はワイヤを筒体に巻くことが簡単である。すなわち、濾過エレメントで液体を濾過した後、被濾過物が付いたワイヤを筒体から簡単に解くことができる。解かれたワイヤにブラシローラを当てることで、ワイヤに付いた被濾過物をワイヤから容易に除去することができる。したがって、濾過エレメントに付いた被濾過物を濾過エレメントから容易に除去することができる筒形濾過装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る筒体の平面図である。
【図2】筒体の斜視図である。
【図3】筒形濾過装置の平面図である。
【図4】図3の4部拡大図である。
【図5】図3の5−5線断面図である。
【図6】切削油タンクの断面図である。
【図7】筒外の液体を筒内へ流入させてから濾過後の液体を筒外へ流出させるまでの作用を説明する図である。
【図8】図1の変更例を説明する図である。
【図9】従来の技術の基本原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。以下では液体は切削油で説明する。
【実施例】
【0013】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、筒体10は、左右に延ばされている軸11と、この軸11の左側に左スポーク部12を介して取付けられているリング状の左枠13と、軸11の右側に右スポーク部14を介して取付けられているリング状の右枠15と、左枠13と右枠15の間に渡されている複数の棒部材16、17、18、19とからなる。このような筒体10に、濾過エレメント(後述)としてのワイヤ40が巻付けられる。
【0014】
筒体10は、左枠13と右枠15の間に複数の棒部材16、17、18、19を渡すことで、濾過時に液体が通る開口21、22、23を有している。また、筒体10は、開口21、22、23により軽量化が簡単に実現できる。
【0015】
なお、筒体10は、実施例では、左枠13と右枠15の間に棒部材16、17、18、19を渡して構成したが、棒部材16、17、18、19の代わりに円筒部材を用いてもよい。円筒部材を用いる場合にも、開口21、22、23と同様の開口を設ける必要がある。次に棒部材16、17、18、19の全長にワイヤ40を巻付けてなる筒体10を図2で説明する。
【0016】
図2に示されるように、筒体10に、濾過エレメント60としてのワイヤ40が所定ピッチ(後述)で巻かれている。
【0017】
矢印(1)のように濾過エレメント60に向けて液体を流入させ、矢印(2)のように筒体10の左端開口24、25、26、27から流出させ、矢印(3)のように筒体10の右端開口から流出させる。すなわち、筒外の液体を筒内へ流入させることで、液体を濾過する。
【0018】
なお、実施例では筒外の液体を筒内へ流入させて液体を濾過するようにしたが、その他に筒内の液体を筒外へ流出させることで液体を濾過するようにしてもよい。次にワイヤ40の解き及び巻きを自動で実施できる筒形濾過装置を図3で説明する。
【0019】
図3に示されるように、筒形濾過装置50は、軸11の左端が左軸受部71で支持され、軸11の右端が右軸受部72で支持されることにより、2つの軸受部71、72で支持されている。
【0020】
筒形濾過装置50は、さらに、筒体10の外に配置され筒体10の右端に相当する部位に回転自在に設けられていると共に筒体10から解かれるワイヤ40を案内する右アイドラ80と、筒体10の外に配置され筒体10の左端部に相当する部位に回転自在に設けられていると共に筒体10に巻かれるワイヤ40を案内する左アイドラ90と、筒体10の外に配置され筒体10の左端に相当する部材に配置されていると共に右アイドラ80及び左アイドラ90で案内されるワイヤ40を清掃するブラシローラ100とを備える。
【0021】
軸11を駆動源で駆動することにより筒体10を回転させてワイヤ40を走行させる方式と、筒体10は空転自在にしておきワイヤ40を駆動源で駆動することによりワイヤ40を走行させる方式とがある。いずれの方式も適用可能である。本例では後者(ワイヤ40を駆動源で駆動させる方式)の具体例を説明する。
【0022】
ブラシローラ100は、ブラシ支持部101に取付けられているブラシ用モータ102で駆動されることで、回転可能となる部材である。
右アイドラ80に対向するように、ワイヤ40の走行の駆動源となる駆動ローラ111が配置されている。この駆動ローラ111は、駆動ローラ支持部112に取付けられている駆動用モータ113で駆動されることで、回転可能となる部材である。
【0023】
駆動用モータ113は、巻付け状態にあるワイヤ40が筒体10から解かれるようなトルクを、駆動ローラ111に与える。なお、ワイヤ40は駆動ローラ111に90°程度巻付けておく。駆動ローラ111に対するワイヤ40の巻付け角をより大きくしてもよい。
【0024】
駆動用モータ113を起動させると、駆動ローラ111の回転によりワイヤ40が矢印(4)のように引かれる。引かれたワイヤ40は矢印(5)のように送られる。次にワイヤ40は左アイドラ90に案内されて矢印(6)のように筒体10に巻かれる。
【0025】
加えて、左枠13の内側面114は、手前側から奥側に向けて下っている傾斜角θ1で形成されている。ワイヤ40が筒体10に巻かれるとき、左枠13の手前側に当たるので、筒体10に対するワイヤ40の巻きが円滑になる。さらに、右枠15の内側面115は、手前側から奥側に向けて下っている傾斜角θ2で形成されている。ワイヤ40が筒体10から解かれるとき、右枠15の手前側に当たるので、筒体10からのワイヤ40の解きが円滑になる。
【0026】
そして、ブラシローラ100の近傍に、ブロー支持部116で支持したブロー装置117が設けられている。濾過後のワイヤ40についた被濾過物は、ブラシローラ100で除去されるが、ワイヤ40をブロー装置117でエアブローすることで被濾過物に除去が更に促進される。
【0027】
筒形濾過装置50は、ワイヤ40を筒体10に所定ピッチP1で常に巻いているので、駆動用モータ113によりワイヤ40を走行させているときであっても、濾過機能を発揮することができる。駆動用モータ113を低速度で連続運転させておくことで、特別なメンテナンスが不要となるため、メンテナンスに掛かる工数を削減することができる。次にワイヤ40の巻付けピッチを図4で説明する。
【0028】
図4に示されるように、ワイヤ40同士は、所定ピッチP1で筒体(図3、符号10)に巻付けられている。加えて、ワイヤ40同士の隙間118は、距離C1で表される。隙間118で被濾過物を捕捉する。隙間118の距離C1は、被濾過物の粒径に応じて任意に変更することが可能な距離である。次に筒体の開口を図5で説明する。
【0029】
図5に示されるように、筒体10に、反時計回りの順番に、開口22、23、28、29、31、32、33、21が設けられている。
【0030】
W1は、反時計回りの順番に、筒体10に設けた棒部材18、19、34、35、36、37、16、17の各々の幅寸法である。なお、棒部材18、19、34、35、36、37、16、17は、実施例では断面形状を長方形としたが、この長方形よりも更に断面積が小さい円形にしてもよい。更に断面積が小さい円形にすれば、濾過効率の向上が期待できる。
【0031】
これまでに筒形濾過装置の装置単体の構造を説明してきた。ところで、工場内で使用される工作機械は、大量の切削油を使用する。使用後の切削油は、切屑等と共に切削油タンクに回収される。回収された切削油は、再利用を目的として濾過される。すなわち、本発明の筒形濾過装置は、切削油の濾過に適用できる。切削油の濾過に本発明の筒形濾過装置を適用した例を図6で説明する。
【0032】
図6に示されるように、筒形濾過装置50が切削油タンク121内に設けられている。
切削油タンク121は、筒形濾過装置50を囲うように形成され筒体10を回転自在に支持するタンク本体122と、このタンク本体122の上端に設けられ筒形濾過装置50を覆うタンクカバー123とからなる。
【0033】
タンク本体122の左部に、濾過後の切削油124を貯める左貯留部125が設けられ、タンク本体122の右部に、濾過後の切削油124を貯める右貯留部126が設けられている。
【0034】
タンク本体122の左上壁127に、左上Oリング溝128が設けられ、左下壁129に、左下Oリング溝131が設けられている。加えて、タンク本体122の右上壁132に、右上Oリング溝133が設けられ、右下壁134に、右下Oリング溝135が設けられている。さらに、左枠13の外側面136と、左上壁127及び左下壁129とは、左上Oリング137及び左下Oリング138で密封されている。そして、右枠15の外側面139と、右上壁132及び右下壁134とは、右上Oリング141及び右下Oリング142で密封されている。つまり、濾過後の切削油124と、濾過前の切削油が混じることを防止できる。
【0035】
なお、実施例ではワイヤ40を駆動用モータ113で駆動することによりワイヤ40を走行させるようにしたが、駆動用モータ113の代わりに通常切削油タンク121に設けられるスクレーパコンベアの駆動力を採用してもよい。スクレーパコンベアは切削油タンク121内に沈殿したスラッジ等を回収するコンベアである。スクレーパコンベアの駆動力を用いる場合、ワイヤ40の走行は、スクレーパコンベアの回転に同期する。
【0036】
以上に述べた筒形濾過装置50の作用を次に述べる。
図7において、(a)に示されるように、切屑等を含んだ切削油150、150が、矢印(7)のように濾過エレメント60及び開口28、33を通過して筒体10の内部に流入する。
【0037】
(b)に示されるように、ワイヤ40同士の隙間118で、切屑やスラッジ等の被濾過物151が捕捉されている。
(c)に示されるように、濾過後の切削油は、矢印(8)のように筒体10の左端開口25及び右端開口38から流出する。
【0038】
筒形濾過装置50に用いられる濾過エレメント60は、筒体10に所定ピッチP1で巻かれるワイヤ40からなる。濾過エレメント60はワイヤ40で構成されるので、ワイヤ40を筒体10から解くこと、又はワイヤ40を筒体10に巻くことが簡単である。すなわち、濾過エレメント60で切削油150を濾過した後、被濾過物151が付いたワイヤ40を筒体10から簡単に解くことができる。解かれたワイヤ40にブラシローラ(図3、符号100)を当てることで、ワイヤ40に付いた被濾過物151をワイヤ40から容易に除去することができる。したがって、濾過エレメント60に付いた被濾過物151を濾過エレメント60から容易に除去することができる筒形濾過装置50を提供できる。
【0039】
これまで説明した筒形濾過装置50では、筒体10の左枠(図3、符号13)の内側面(図3、符号114)に傾斜を設け、右枠(図3、符号15)の内側面(図3、符号115)に傾斜を設けた。これらの傾斜の設置目的は、ワイヤ40の巻き及び解きを円滑に実施するためである。このワイヤ40の巻き及び解きが更に円滑になる例を図8で説明する。
【0040】
図8において、図1と共通の構造は符号を流用して詳細な説明を省略する。主たる変更点は、左枠の端面を外側から内側へ先細り形状にしたことである。
【0041】
筒体160では、左枠161の端面162が、外側から内側へ先細り形状に形成されている。端面162が先細り形状であるので、ワイヤ(図1、符号40)が端面162の最も外側に接触すると、ワイヤは先細り形状の下り傾斜に沿って内側へ移動する。すなわち、ワイヤが筒体160に更に円滑に巻かれる。
【0042】
一方、右枠の端面が、外側から内側へ先細り形状に形成されている場合には、ワイヤが筒体160から更に円滑に解かれる効果が発揮される。
【0043】
尚、本発明に係る液体は、実施の形態では切削油に適用したが、機械類に用いる潤滑油にも適用可能であり、一般の油類に適用することは差し支えない。加えて、本発明に係る液体は、汚泥を含んだ汚水や固形物を含んだ雨水等にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の筒形濾過装置は、切削油の濾過に好適である。
【符号の説明】
【0045】
10…筒体、40…ワイヤ、50…筒形濾過装置、60…濾過エレメント、80、90…アイドラ、100…ブラシローラ、150…液体、P1…所定ピッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒外の液体を筒内へ流入させる、又は筒内の液体を筒外へ流出させることで、前記液体を濾過する筒形濾過装置において、
前記筒形濾過装置は、濾過エレメントを支える筒体と、この筒体に巻かれる前記濾過エレメントとからなり、
前記濾過エレメントは、前記筒体に所定ピッチで巻かれるワイヤからなり、
前記筒形濾過装置は、さらに、前記筒体の外に配置され前記筒体から解かれ且つ前記筒体に巻かれる前記ワイヤを案内するアイドラと、前記筒体の外に配置され前記アイドラで案内されるワイヤを清掃するブラシローラとを備えることを特徴とする筒形濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−120951(P2012−120951A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271853(P2010−271853)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】