説明

管状体の埋設工法

【課題】 大口径管状体の敷設に好適な管状体の埋設工法であって、管状体を浅埋設しても、地下水位の高い地盤において、あるいは地震発生時の地盤の液状化現象に際して、その浮き上がりを防止することが可能な管状体の埋設工法を提供する。
【解決手段】 本発明の管状体の埋設工法は、地盤を掘削して形成された溝の支持地盤上に管状体を敷設した後、長尺連結部材で連結された土嚢を、長尺連結部材が管状体上部に当接し、土嚢が管状体の両側面の支持地盤上にそれぞれ位置するように載置し、これを管状体の長手方向に沿って繰り返し配列させた後、埋め戻すことによって行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大口径管状体の敷設に好適に利用できる管状体の埋設工法に関する。さらに詳しくは、管状体を浅埋設しても地下水位の高い地盤において、あるいは地震発生時の地盤の液状化現象に際して、その浮き上がりを防止することが可能な管状体の埋設工法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、地中に大口径の管状体を埋設する場合、原地盤を大きく掘削する必要があり、とくに地下水位の高い地盤において、あるいは地震発生時の地盤の液状化現象に際して、管状体の浮上に抵抗するために管状体を深く埋設し、大量の土被りを確保することが必要とされている。このため埋設溝の掘削には多量の土砂の掘り出しと運搬が必要となっており、工費が嵩むと共に工期も長期化するという問題点を抱えている。
【0003】
また大口径管状体の埋設においては、地盤の崩れを防止し、掘削溝を維持するために、矢板を打ち込んで工事が行われることが多い。その場合、管状体が敷設され、埋戻し材で埋め戻された後、一般には矢板が引き抜かれるが、矢板の引き抜きによって土圧分布が急激に変化するため、管状体が変形することがあり、また地下水位の高い地盤では管状体に大きな浮力を発生させるので不安定となることがある。そのため埋戻し材として、砂、砂質土、礫質土、砕石等の良質な土質材料を使用して締め固めを行うことが必要になる場合があった。
【0004】
上記のような欠点を改善するため、管状体の浮上防止策を施し、管状体を浅溝に埋設することによって埋設工事の効率化を図る試みがなされている。例えば本出願人の一人は、ジオテキスタイルを使用する地中構造物の浅埋設工法を提案した(特許文献1)。この提案によれば、矢板引き抜き時の土圧変化が低減され、地中における管状体の安定性が高められ、地盤の液状化現象に対しても管状体の浮上を効果的に抑制できるため、浅埋設が可能となり、工期の短縮と工費縮減が達成できるものであった。しかしながらジオテキスタイルの敷設等に伴う作業が煩雑であること、また通常は掘り出された土砂の埋戻しができないなどの問題点があり、さらに安価で作業効率の優れた管埋設工法の開発が求められていた。
【0005】
【特許文献1】特開平11−101369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる要請に応えるものであって、その目的とするところは、簡単な作業で、地盤の液状化現象に対しても効果的に管状体の浮上を防止することが可能であり、とくに大口径管状体の浅埋設に有効な管状体の埋設工法を提供することにある。本発明の別の目的は、埋設溝の掘削により掘り出された土砂を埋戻しに使用することができ、したがって土砂の運搬、廃棄といったコストがかかり、しかも環境に悪影響を及ぼすような問題を低減乃至は防止することが可能な管状体の埋設工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明によれば、地盤を掘削して形成された溝の支持地盤上に管状体を敷設するに際し、長尺連結部材で一体化された複数の土嚢を、長尺連結部材が管状体上部に当接し、かつ複数の土嚢の少なくとも一部が管状体の両側面の支持地盤上に分かれて位置するように載置し、これを管状体の長手方向に沿って繰り返し配列した後、埋め戻すことを特徴とする管状体の埋設工法が提供される。
【0008】
土嚢は、一般には土質材料を充填した状態で所定位置に載置される。この場合の土質材料としては、好ましくは掘削土壌が使用される。しかしながら未充填の土嚢袋を所定位置に載置した後、埋め戻し前に、載置個所で流動性ある土質材料を土嚢袋に流し込んで土嚢を作製することもできる。
【0009】
複数の土嚢を一体化させる上記長尺連結部材は、管状体への接触面積の大きいベルト状物又はシート状物であることが好ましい。複数の土嚢の一体化は、ベルト状又はシート状の長尺連結部材により互いに連結させることによって行うことができる。また、土嚢を管状体と共に、ベルト状又はシート状の長尺連結部材に囲い込んで一体化することもできる。このような目的に使用されるベルト状又はシート状の長尺連結部材として、ジオグリッドが好適に使用される。上記長尺連結部材はまた、管状体の浮上防止をより効果的なものとするために、緊張状態で管状体上部に当接するように土嚢を載置することが好ましい。管状体の浮上防止をより効果的なものとするためにはまた、上記載置された土嚢の上に、長尺連結部材で連結されていない別の土嚢を積み上げた後、埋め戻すことも効果的である。
【0010】
本発明の管状体の埋設工法は、矢板が打ち込まれた地盤を掘削して形成された溝に管状体を敷設する場合に好適に利用できる。さらにこのような矢板が、埋戻し材で埋め戻された後、引き抜かれるような工法においても好適に利用することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、大口径管状体の埋設においても地盤を大きく掘削する必要がなく、地下水位の高い地盤において、あるいは地震発生時の地盤の液状化現象に対しても管状体の浮上を効果的に防止することができる。また埋設工事が簡単で、しかも運搬、廃棄等の対象となる掘削土壌の量も低減されているので、工費が低減され、また工期も短期間で終了させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に示す実施例により本発明を具体的に説明する。
【0013】
図1は、掘削溝1に管状体6を敷設し、ベルト状の長尺連結部材7で連結された土嚢8を管状体の両側面の支持地盤5上に載置した状態を示す断面図である。図1において、埋設工事現場の地盤2に所定の溝幅Wを確保して、矢板3を地盤2に打ち込み、これら両側の矢板3間の地盤を掘削して、掘削溝1を形成する。掘削溝1の底面地盤4の上部に、砂や砕石などの支持力の高い材料を投入して支持地盤5を形成し、さらにその上に管状体6を敷設する。管状体6としては、例えばFRPM管、鋼管、ダクタイル鋳鉄管、コンクリート管などが使用される。本発明においては、管状体6として、種々の口径のものに適用可能であり、例えば口径100〜400cmの如き大口径のものに適用することができる。
【0014】
次に長尺連結部材7で連結された土嚢8を、長尺連結部材7が管状体6上部に当接し、土嚢8が管状体6の両側面に位置するように支持地盤5上に載置する。図3に示すように、これを管状体6の長手方向に沿って、所定間隔で配列させる。この場合、勿論隙間をおかずに連続的に配列させてもよい。この土嚢8の載置に際し、管状体の浮上防止を効果的ならしめるために、長尺連結部材7が管状体6上部に緊張状態で当接するように載置することが好ましい。また土嚢8の重心が管状体6の中心部より下方に位置するようにするのが好ましい。このためには長尺連結部材7の長さを適当に調整することが必要である。
【0015】
長尺連結部材7と土嚢8は、予め一体化したものを用意しておいてもよいが、図2に示すように、土嚢8に引掛部11を設けておき、工事現場において、該引掛部11を介して結束などによりベルト状の長尺連結部材7と連結させ、両者を一体化させることができる。
【0016】
土嚢8には、開閉自在の開口部を設けておき、工事現場において開口部から土嚢中に掘削土壌を充填し、開口部を閉じて使用することが好ましい。一般に掘削土壌は液状化現象を起こすため、埋戻し材として使用できないが、土嚢に充填して用いればこれが防止されるため、掘削土壌の運搬、廃棄等の操作を軽減させることができる。土嚢には、同様に廃棄処理に問題を起こしている建築廃材などを使用することもでき、これにより環境への負荷を低減させることができる。
【0017】
大口径管状体を敷設する場合は、浮上防止に必要とされる土嚢重量も大きくなり、人力での作業が困難となるため、上記土嚢の載置に際しては、クレーン等の機械力により長尺連結部材7で連結された土嚢8の長尺連結部材部を吊り上げ、載置する必要がある。このため長尺連結部材7は作業性が良好であることに加え、土嚢重量に耐える強度を有するものが必要である。また土嚢重量を管状体6の上部表面に分散して負荷させるようにすることが望ましい。そのため長尺連結部材7としては、ロープ状、ベルト状、シート状のものなどを使用することができるが、例えば幅が3〜50cm程度の幅広ベルト状又はシート状のものを使用するのが最も好ましい。また上記吊り上げ作業性を考慮すれば、長尺連結部材7で連結されている二つの土嚢は、ほぼ等重量であることが望ましい。
【0018】
さらに長尺連結部材7及び土嚢8は、地中において耐久性を有するものであることが望ましい。これら強度、耐久性を勘案すると、これらの構成材料としては、ポリオレフィン、芳香族ポリエステル、ポリアミド、FRP等を使用することが好ましい。また長尺連結部材7としては、防錆処理をした鋼製材料(帯鋼)を使用することもできる。
【0019】
ここに長尺連結部材で一体化されている一方の土嚢に充填する内容物の重量は、次式で表される必要重量Gより若干大きめとするのが好ましい。
G=(U−P−S)/n
(式中、Gは土嚢の必要重量(トン)、Uは土壌液状化時における管状体1m当たりの浮上力(トン)であって、土壌の種類によっても異なるが、管状体口径をR(m)とするときに、近似的にU=πRで表される。Pは管状体1m当たりの重量(トン)、Sは管状体1m当たりの上載土重量(トン)、nは管状体長手方向1m当たりの土嚢の載置個数)
【0020】
土嚢8の載置、配列が終了した後、管状体上方の溝部空間に埋戻し材を入れて埋戻すことにより、埋設工事は終了する。埋設工事終了後は、必要に応じ矢板を引き抜くことができる。また必要に応じ埋戻し部の締め固めを行うことができる。埋戻し材としては、山砂、砕石、流動化処理土、ソイルセメント、エアモルタルなどの1種又は2種以上を選ぶことができ、また2層以上の異なる層構成で埋め戻すことができる。
【0021】
図4は本発明の他の実施例を示すもので、長尺連結部材7で連結された土嚢8を、長尺連結部材7が管状体6上部に当接し、土嚢8が管状体6の両側面の支持地盤5上に載置したのち、連結されていない土嚢9を土嚢8上に載置するものである。土嚢9には、土嚢8と同様に掘削土壌を充填使用することができるので、掘削土壌処理の負荷を一層低減することができるとともに、土嚢8の管状体浮上防止効果を一層高める働きをする。したがってこの実施例によれば、土嚢8に充填する内容物重量を若干減じても差し支えない。土嚢9を載置した後は、図1の実施例と同様に掘削溝1の上部空間に埋戻し材10を搬入して埋戻し、埋設工事は終了する。埋戻し終了後の矢板の引き抜き及び埋戻し部の締め固めは、任意に行うことができる。
【0022】
図5は、本発明の土嚢として使用可能な円柱状土嚢12を示す図面である。土嚢12の上部には開閉自在の開口部13と、その側部には、クレーンで吊り上げるためのワイヤ取り付け部となる取手14が設けられている。図6は、本発明の土嚢として使用可能な他の円柱状土嚢15を示す図面である。土嚢15の上部には同様に開閉自在の開口部16が設けられており、またその下部から上方に伸びる吊り上げ用のバンド17が設けられている。いずれも作業現場で掘削土壌を充填することが可能であり、また土嚢載置に際してはクレーン作業が可能である。
【0023】
図7及び図8は、上述の円柱状土嚢12を管状体18の両側面に2段づつ積み重ね、長手方向に連続的に載置したことを示す図面であり、図7は斜視図、図8は断面図である。4個の土嚢12は、幅広無端ベルト状のジオグリッド19の両端部に2個づつ収納されて連結され、管状体18の側面の支持地盤5上に2段重ねで載置されている。二重構造となっているジオグリッド中央連結部は、管状体18上部に緊張状態で当接している。ジオグリッドとしては、耐久性及び強度を考慮すると、ポリオレフィンの孔開きシートを一軸又は二軸に延伸して得られるものを使用するのが好ましい。
【0024】
図5や図6で示すような円柱状の土嚢においては、非常に長尺の、例えば4〜50m長さのものを使用することもできる。この場合は、図7及び図8の変形として、図7(図8)の土嚢同様、適宜個所で同様の長尺連結材により連結されている未充填の長尺土嚢袋2個を、管状体の両側に載置後、それぞれの土嚢袋の先端部に設けられた開閉可能な開口部より、流動性ある土質材料、例えば流動化処理土、流動性のあるソイルセメントあるいはグラウトを土嚢袋に注入し、開口部を閉じることにより、載置個所で長尺土嚢を作製することができる。土嚢作成後は、同様に埋め戻し材により埋め戻すことによって、管状体を埋設することができる。
【0025】
図9は、本発明で使用可能な他の土嚢20を示す図面であり、その上部には開閉可能な開口部21が設けられており、その側面部には2個のベルト通し22が設けられている。土嚢20を支持地盤上に載置するに際して、土嚢の開口部21より土質材料を充填した後開口部を閉じ、2個の土嚢を、それぞれの土嚢の下部を巻き込むようにベルト24をベルト通し22に通して連結する。次いでベルト24の中央部を吊り上げて、土嚢20を載置個所に運び、図10に示すようにベルト24が管状体23上部に当接するようにしながら土嚢20を管状体23の両側に載置する。これを管状体の長手方向に沿って、連続的に、あるいは間隔を置いて繰り返し配列した後、同様に埋め戻し材で埋め戻し、管状体を埋設する。
【0026】
図11は、本発明の埋設工法の他の例を示す図面である。支持地盤5の施工場所に大きい凹所を設けておき、その上にジオグリッド27を敷き、さらにその上に土嚢26を並べておく。管状体25をその中央部に載置した後、ジオグリッド27を両側から上方に畳み挙げて管状体の上部で連結することによって、土嚢26が管状体25の下部と両側に載置された状態となり、複数の土嚢は管状体とともに連結一体化される。このような一体化構造を管状体の長手方向に沿って繰り返し設けた後、同様に埋め戻し材で埋め戻し、管状体を埋設する。
【0027】
以上のような種々の管状体の埋設工法は、2種以上組み合わせて適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る管状体の埋設工法の1例を示す図面である。
【図2】引掛部を有する土嚢を長尺連結部材で連結した1例を示す図面である。
【図3】図1の例において、土嚢が管状体の長手方向に配列されていることを示す斜視図である。
【図4】本発明に係る管状体の埋設工法の他の例を示す図面である。
【図5】本発明で使用される土嚢の一例を示す図面である。
【図6】本発明で使用される土嚢の他例を示す図面である。
【図7】本発明の管状体の埋設工法の他の例を示す斜視図である。
【図8】上記図面の断面図である。
【図9】本発明で使用される土嚢の他例を示す図面である。
【図10】本発明の管状体の埋設工法の他の例を示す斜視図である。
【図11】本発明の管状体の埋設工法の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 掘削溝
2 地盤
3 矢板
4 掘削溝底面地盤
5 支持地盤
6 管状体
7 長尺連結部材
8 土嚢
9 土嚢
10 埋戻し材
11 引掛部
12 土嚢
14 取手
15 土嚢
17 吊り上げ用ベルト
18 管状体
19 ジオグリッド
20 土嚢
22 ベルト通し
23 管状体
24 ベルト
25 管状体
26 土嚢
27 ジオグリッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を掘削して形成された溝の支持地盤上に管状体を敷設するに際し、長尺連結部材で一体化された複数の土嚢を、長尺連結部材が管状体上部に当接し、かつ複数の土嚢の少なくとも一部が管状体の両側面の支持地盤上に分かれて位置するように載置し、これを管状体の長手方向に沿って繰り返し配列した後、埋め戻すことを特徴とする管状体の埋設工法。
【請求項2】
複数の土嚢の一体化が、ベルト状又はシート状の長尺連結部材により連結されてなるものである請求項1記載の管状体の埋設工法。
【請求項3】
複数の土嚢が、管状体と共に、ベルト状又はシート状の長尺連結部材に囲みこまれて一体化されてなるものである請求項1記載の管状体の埋設工法。
【請求項4】
ベルト状又はシート状の長尺連結部材が、ジオグリッドである請求項2又は3記載の管状体の埋設工法。
【請求項5】
長尺連結部材が、緊張状態で管状体上部に当接していることを特徴とする請求項1〜4記載の管状体の埋設工法。
【請求項6】
土嚢の内容物が、掘削土壌である請求項1〜5記載の管状体の埋設工法。
【請求項7】
未充填の土嚢袋を載置した後、埋め戻し前に、載置個所で流動性ある土質材料を土嚢袋に注入し、土嚢を作製することを特徴とする請求項1〜5記載の管状体の埋設工法。
【請求項8】
長尺連結部材で一体化された土嚢の上部に、別の土嚢を積み上げた後、埋め戻すことを特徴とする請求項1〜5記載の管状体の埋設工法。
【請求項9】
上記溝が、矢板が打ち込まれた地盤を掘削して形成されたものである請求項1〜8記載の管状体の埋設工法。
【請求項10】
埋め戻した後、矢板が引き抜かれることを特徴とする請求項9記載の管状体の埋設工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−57733(P2006−57733A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240302(P2004−240302)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(301035976)独立行政法人農業工学研究所 (9)
【出願人】(000175021)三井化学産資株式会社 (47)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)