説明

管理システム

【課題】 新規に持ち込まれた物品の登録作業を簡単にし、かつ、読取速度を高速に保って迅速で効率的な商品管理を可能にすること。
【解決手段】 無線タグ63の存否を確認は、タグUIDを読み取るだけであり、リーダ装置21を比較的高速の第1モードで動作させることができる。つまり、新規なタグUIDが検出されない限り、リーダ装置21による無線タグ63の読み取りを迅速化することができるので、商品61の管理を迅速で信頼性の高いものとすることができる。一方、新規なタグUIDが検出された場合、リーダ装置21を第2モードで動作させ、新規なタグUIDに関連づけられたその商品61のタグユーザデータを収集することができるので、本物品管理システム10の管理対象となる商品61に関するデータベースすなわちタグデータマスタの自動的で迅速な蓄積が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグを用いた管理システムに関し、特に物品に関するユーザ情報を随時蓄積可能で高速処理が可能な管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の物品管理装置として、RF−ID素子を内蔵した図書分類ラベルと、書架に設置したRF−ID読み取り装置とを備え、図書類の保管管理を行うシステムが存在する(特許文献1参照)。この保管管理システムでは、RF−ID読み取り装置が読み取り制御部とアンテナユニット部とに分離しており、アンテナユニット部において、複数のアンテナを切り替えながらRF−ID素子を読み取る。なお、新規の図書類を登録する際には、図書類登録プログラムの起動等によって、コンピュータ端末の入力部から図書類名等の諸情報をデータベースに入力するとともに、RF−ID素子に図書類固有の分類コードを記録し照合する。
【特許文献1】特開平10−334198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のような保管管理システムでは、新規の図書類を書架に配置する前に、コンピュータ端末を介して登録作業を行ったり、RF−ID素子に分類コードを記録する作業が必要であり、新規図書類の導入手続きが煩雑である。つまり、上記保管管理システムでは、新規登録の手続きが煩雑になり、特に流通する商品を扱うシステムに転用する場合には、商品の円滑な流通が妨げられる可能性がある。
【0004】
なお、上記のような流通する商品に関する諸情報をその商品に貼り付けたRF−ID素子に予め書き込んでおき、商品が流通する過程でRF−ID素子から随時情報を読み取ることによって、新規に搬入された商品の登録を自動化することも考えられるが、RF−ID素子に記録されたデータの増加分だけリーダ/ライタによる読取速度が低下する。特に、店舗等に展示されている商品については、狭い空間に多数配置される可能性があり、また単一のリーダ/ライタでなるべく多くの商品を検出することが望ましいが、これに伴って読取速度が低下すると、迅速で効率的な商品管理が困難になり、商品管理システムの信頼性を低下させるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、新規に持ち込まれた物品の登録作業を簡単にし、かつ、読取速度を高速に保って迅速で効率的な商品管理を可能にする管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る管理システムは、(a)固有のID情報を保持するID領域と物品に関連する付加情報を保持可能なユーザ領域とを含む無線タグからID情報及び付加情報を読み取り可能であるとともに、ID情報を読み取る第1モードとID情報及び付加情報を読み取る第2モードとで動作可能な情報読取手段と、(b)ID領域と付加情報とを記録可能なデータベースと、(c)情報読取手段に第1モードの動作を行わせることによって無線タグから読み取ったID情報がデータベースに記録されていない場合に、情報読取手段に第2モードの動作を行わせることによって無線タグからID情報及び付加情報を読み取らせる読取切替手段とを備える。なお、データベースは、コンピュータ等に設けた記憶装置中の所定の記憶エリアに保管される。
【0007】
上記管理システムでは、読取切替手段が、情報読取手段に第1モードの動作を行わせることによって読み取ったID情報がデータベースに記録されていない場合に、情報読取手段に第2モードの動作を行わせることによってID情報及び付加情報を読み取らせるので、新規なID情報が検出された場合にのみ、付加情報の収集及び蓄積を行うことになる。よって、新規なID情報が検出されない限り、情報読取手段を比較的高速の第1モードで動作させることができ、無線タグの存否を迅速に検出することができるので、物品の管理を迅速で信頼性の高いものとすることができる。また、新規なID情報が検出された場合、情報読取手段を第2モードで動作させ、その物品のID情報に関連づけられた付加情報を収集することができるので、管理対象となる物品に関するデータベースの自動的で迅速な蓄積が可能になる。
【0008】
本発明の具体的な態様によれば、上記管理システムにおいて、情報読取手段が第2モードで動作することによってID情報及び付加情報を読み取った場合に、読み取ったID情報及び付加情報を、データベースに一組のタグ情報として追加記録する。この場合、データベースおいて、これまで本システムの管理下に置かれた物品に関する情報を一組のタグ情報として規格化して管理することができる。
【0009】
本発明の別の態様によれば、情報読取手段が、情報読取手段に第1モードで周期的に無線タグからID情報を読み取らせる。この場合、無線タグの存否を周期的に検出することができ、情報読取手段の検出エリア内ある無線タグの検出周期を短くすることができる。
【0010】
本発明のさらに別の態様によれば、情報読取手段が、情報読取手段に第1モードで無線タグからID情報を読み取らせた結果として得たID情報のリストを検出タグデータとして常時更新する。この場合、各時刻において、管理システムの監視下に置かれている無線タグすなわち物品等を把握することができる。
【0011】
本発明のさらに別の態様によれば、検出タグデータの増減を差分データとして常時更新するとともに、検出タグデータの変動を状態遷移ログとして逐次保管する情報制御手段をさらに備える。この場合、本管理システムの監視下に置かれている無線タグすなわち物品等の増減及びその履歴を逐次把握することができる。
【0012】
本発明のさらに別の態様によれば、情報制御手段が、差分データが検出タグデータの減少を示す場合に物品の移動を示す移動信号を出力する。この場合、管理システムの監視下に置かれている物品等の移動や持ち出し等を検出することができる。
【0013】
本発明のさらに別の態様によれば、情報制御手段が、所定のタイミング以前にデータベースに記録されたID情報に関して、差分データの管理対象外とする。この場合、上記所定のタイミングの後に存在が検出された物品のみを管理対象とすることができる。
【0014】
本発明のさらに別の態様によれば、情報読取手段が、ID領域及びユーザ領域のほかに、応答が許容される信号を特定する制限情報を保持可能な選択応答領域を含む無線タグに対して、制限情報に対応する所定の信号を送信することによってID情報及び付加情報を読み取る。無線タグが本管理システムの監視下に置かれていな種類のものである場合、無線タグが応答しないので、無線タグの検出周期をさらに短くすることができる。
【0015】
本発明のさらに別の態様によれば、情報読取手段によって読み取られる付加情報には、無線タグを取り付けた物品に関する商品名及び価格が含まれる。この場合、本管理システムの監視下に置かれている無線タグを付した物品の商品名及び価格をデータベースに蓄積することができ、必要に応じて参照することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る物品管理システムの構造を説明するブロック図である。
【0017】
この物品管理システム10は、店舗等に設置される複数のリーダ装置21と、各リーダ装置21にそれぞれ接続される複数のアンテナ切替器22と、各アンテナ切替器22から分岐される多数のアンテナ23と、各リーダ装置21に対する通信を可能にするネットワーク31と、ネットワーク31を介して各リーダ装置21を制御する制御コンピュータ33とを備える。
【0018】
図2は、図1の物品管理システム10の管理対象の一部である展示棚の構造を説明する正面図である。図示の展示棚50は、本体部分51の適所に複数段の棚部52を有している。各棚部52には、アンテナ53(図1のアンテナ23に対応)が埋め込まれており、棚部52上の物品又は製品である各商品61に個別に設けた無線タグ63をそれぞれ検出することができるようになっている。つまり、各棚部52上に新しい商品61が載置されると、この新しい商品61がアンテナ53を介して図1のリーダ装置21で検出される。また、各棚部52上に既に載置されている商品61が取り除かれると、この取り除かれた商品61がアンテナ53を介してリーダ装置21で検出される。
【0019】
図1において、リーダ装置21は、情報読取手段として、所定の検出圏内に近接した無線タグ63からID情報等を読み取ることができる。リーダ装置21の構造については、詳細な説明は省略するが、アンテナ用の送受信回路と、信号処理用のマイコンチップと、ネットワーク接続用の通信回路とを備えており、アンテナ切替器22及びアンテナ23を介して無線タグ63に必要な信号を送信するとともに、無線タグ63からの応答信号を受け取る。なお、無線タグ63は、アンテナと、送受信回路と、IC回路とを備えており、リーダ装置21からの指令信号に応じて記憶したデータ等に基づく応答信号を出力する。
【0020】
アンテナ切替器22は、複数のアンテナ23を順次切り替えて動作させるためのものである。これにより、一台のリーダ装置21によって、アンテナ切替器22を介してこれに接続されたすべてのアンテナ23による無線タグ63の検出を可能にする。アンテナ切替器22は、スイッチ素子等の電子回路を備えており、予め定めた順序でアンテナ23を順次アクティブにして、リーダ装置21から各アンテナ23への時系列的な出力を可能にするとともに、各アンテナ23からリーダ装置21への同期した入力を可能にする。なお、アンテナ切替器22は、1段で構成される必要はなく、2段以上で構成することができる。このように、アンテナ切替器22を多段に構成することで、リーダ装置21に対して簡易に多数のアンテナ23を接続することができる。
【0021】
アンテナ23は、上述のように、商品61が載置される棚部52等に目立たないように取り付けられる。アンテナ23の形状やサイズは、検出対象である無線タグ63の応答周波数や検出距離に応じて適宜設定される。なお、図2の例では、アンテナ23を棚部52に取り付けたが、検出対象である無線タグ63の配置や姿勢等に応じてアンテナ23を検出漏れの少ない多様な箇所に取り付けることができる。また、図2の例では、店舗のように商品61が静的に配置される場合について説明したが、搬送されたり流通される商品61の場合も、このような商品61を一時的に載置する場所や商品61が通過するゲートにアンテナ23を配置することができ、無線タグ63及びリーダ装置21を介して商品61の位置や移動状態を検出することができる。
【0022】
ネットワーク31は、例えば有線の通信回路網であり、複数のリーダ装置21と制御コンピュータ33との間に介在して、これらの間でコマンドやデータの送受信を可能にする役割を有する。なお、このネットワーク31は、詳細な説明を省略するが、この物品管理システム10で扱う商品61の量や制御コンピュータ33の管理下で動作させるリーダ装置21の個数に応じて適当な通信速度が確保されるような適度の容量の双方向通信システムとなっている。
【0023】
制御コンピュータ33は、リーダ装置21を適当なタイミングで、かつ、必要な動作モードで動作させることによって、商品61に関する情報を集めるためのものであり、読取切替手段や情報制御手段として機能する。制御コンピュータ33は、一般的なコンピュータと同様に、CPU33a、メモリ33b、通信制御部33c、内部記憶装置33d、表示装置33e、入力装置33f、及び外部記憶装置33gを備えている。以上において、メモリ33bと内部記憶装置33dと外部記憶装置33gとは、制御コンピュータ33における記憶装置を構成する。
【0024】
CPU33aは、記憶装置33b,33d,33g、通信制御部33c、入力装置33f等との間で相互にデータの授受が可能になっている。また、CPU33aは、入力装置33fからの指示に基づいて、記憶装置33b,33d,33gから所定のプログラムやデータを読み出し、これらプログラム及びデータに基づく各種処理を実行する。
【0025】
具体的に説明すると、CPU33aは、後述するタグ管理プログラムにおいて、入力装置33fからの指示に基づいて通信制御部33cを適宜動作させ、リーダ装置21に必要な動作を行うようなコマンドを出力する。リーダ装置21側では、アンテナ切替器22を適宜動作さてアンテナ23を切り替えつつ無線タグ63からタグ情報を収集する。この際、リーダ装置21は、無線タグ63からタグ情報のうちUIDのみを読み出す第1モード(高速モード)と、無線タグ63からタグ情報のうちUID及びユーザデータの双方を読み出す第2モード(低速モード)とを切り替えて動作する。また、CPU33aは、リーダ装置21を動作させて収集したUID及びユーザデータを編集しつつ蓄積してタグデータマスタ等のデータベースを作成する。タグデータマスタの詳細については後述する。
【0026】
メモリ33bは、本実施形態の物品管理システム10を動作させる基本プログラム等を複数記憶しているROMと、アプリケーションプログラム、入力指示、入力データ、処理結果等を一時格納するワークメモリ等のRAMとを備える。内部記憶装置33dや外部記憶装置33gは、磁気的、或いは光学的な手法によってアプリケーションプログラムやデータを保持することができるドライブをそれぞれ備えている。特に外部記憶装置33gは、記録媒体に対して情報の書込み及び読取りを行うことができるようになっており、駆動される記録媒体は、外部記憶装置33gに固定的に設けたもの、若しくは着脱自在に装着するものとできる。
【0027】
通信制御部33cは、LANアダプタ等によって構成され、ネットワーク31との間において適当なプロトコルによる通信を可能にしている。
【0028】
表示装置33eは、オペレータに提示されるディスプレイにより構成され、CPU33aから出力されるデータに基づいて必要な表示を行う。
【0029】
入力装置33fは、オペレータによって操作されるキーボード等から構成され、表示装置33eを利用したGIU操作により、本実施形態の物品管理システム10を管理するオペレータの意思を反映した指令信号をCPU33aに出力する。
【0030】
図3〜図5は、図1に示す物品管理システム10の具体的な動作例を説明するフローチャートである。
【0031】
制御コンピュータ33において、CPU33aからリーダ装置21に読取コマンドが出力され、比較的迅速な第1モードで、アンテナ23を介して無線タグ63の読み取りが行われる(ステップS1)。つまり、リーダ装置21によって、各商品61に設けた無線タグ63に記録されたタグ情報のうちUIDすなわちタグUIDのみが読み出される。この際、リーダ装置21の制御下でアンテナ切替器22によるアンテナ23の切替が行われ、各アンテナ23の検出エリアに存在する無線タグ63を順次検出することができる。なお、各アンテナ23の検出エリア内にある複数の無線タグ63からの応答のコリジョンを防止するため例えばタイムスロット方式等が用いられる。
【0032】
CPU33aは、リーダ装置21から通信制御部33c等を介してタグUIDの検出結果を受け取ると、このタグUIDをタグデータマスタ中から検索する(ステップS2)。ここで、タグデータマスタとは、この物品管理システム10が一度でも検出した無線タグ63について、タグUIDとこれに付随するユーザデータすなわちタグユーザデータとの関連を保持するためのテーブルである。具体的に説明すると、このタグユーザデータには、例えば、本物品管理システム10が受信した無線タグ63の「タグUID」と、本システムが受信した無線タグ63の「ユーザデータ」と、タグUIDやユーザデータを受信したリーダ装置21のIDである「読取R/W−ID」と、タグUIDやユーザデータを受信したアンテナ23の番号である「読取R/W−No.」と、タグUIDやユーザデータを受信した時刻である「登録時」とが含まれる。このタグデータマスタは、例えば内部記憶装置33dの所定記憶領域において更新されつつ保管されている。なお、タグUIDは、各無線タグ63に割り振られた固有のID情報であり、タグユーザデータは、各無線タグ63を貼り付けた商品61に関する付加情報であり、例えば商品名、単価、商品コード等の各種情報を含む。タグユーザデータは、図示を省略するリーダ・ライタ装置等を利用して記録される。例えば、無線タグ63を商品61に貼り付けた後に、上述のリーダ・ライタ装置を利用して無線タグ63に対して書き込みを行うことによって、タグユーザデータを記録・保存することができる。図6は、無線タグ63に内蔵されたマイコンチップに記録されたタグ情報の一例を概念的に説明する図であり、無線タグ63は、そのマイコンチップの記憶領域MA内に、ID情報であるタグUIDを保持するID領域MA1と、付加情報であるタグユーザデータを保持可能なユーザ領域MA2と、その他の領域MA3とを備えている。
【0033】
リーダ装置21によって1以上の無線タグ63が検出された場合であって、その無線タグ63のタグUIDが内部記憶装置33d中の現在のタグデータマスタ中に存在しない場合、すなわちステップS1で今回検出されたタグUIDが以前に検出されていない場合、CPU33aは、読取切替手段として、タグデータマスタ中に該当データが存在しないと判断する(ステップS3)。
【0034】
今回検出されたタグUIDが既存のタグデータマスタ中に存在しないと判断された場合、このタグUIDが未蓄積のタグUIDであるとして、対応する無線タグ63をターゲットとして、この無線タグ63に対するデータ取り込みが行われる(ステップS4)。具体的には、CPU33aの制御下で内部記憶装置33dから特定のすなわち未蓄積のタグUIDを検出したリーダ装置21に読取コマンドが出力され、比較的遅い第2モードで、特定のアンテナ23を介して無線タグ63の読み取りが行われる。つまり、リーダ装置21によって、上記未蓄積のタグUIDを有する無線タグ63からタグUIDとともにタグユーザデータが読み出される。以上では、未蓄積のタグUIDを検出した特定のリーダ装置21やアンテナ23に対してデータ取り込みを行わせているが、リーダ装置21やアンテナ23を特定しないで未蓄積のタグUIDに対応する無線タグ63からタグユーザデータを読み出すこともできる。
【0035】
次に、新たに取得したタグUIDと対応するタグユーザデータとを、タグデータマスタに新規なレコードとして追加する(ステップS5)。つまり、CPU33aは、ステップS4で得たタグUID及びタグユーザデータを一組として、内部記憶装置33dに設けたタグデータマスタに保管する。なお、タグデータマスタは、徐々に蓄積されるものであり、オペレータが特別の指示を行わない限り、過去に蓄積されたタグ情報が累積的に残存することになる。
【0036】
次に、本物品管理システム10の履歴として、状態遷移ログテーブルに対して存在レコードが追加される(ステップS6)。つまり、CPU33aは、ステップS5でタグデータマスタに新たなタグUIDが追加されたことを、時刻等の付帯情報とともに内部記憶装置33dに設けた状態遷移ログテーブルに追加記録する。ここで、状態遷移ログテーブルとは、後述する差分データ格納用テーブルへのアクセス履歴(追加/削除の履歴)を保持するデータ領域を本来意味するが、新たなタグUIDによって発生するタグデータマスタへのアクセス履歴(新規登録)を保持するデータ領域を意味することにもなる。
【0037】
なお、読取切替手段であるCPU33aによって、今回検出されたタグUIDが既存のタグデータマスタ中に存在すると判断された場合、このタグUIDが蓄積済みのタグUIDであるとして、ステップS4〜S6の処理を省略する。
【0038】
以上の図3に示すフローチャートは、新たなデータを読み取るための処理となっており、結果的にタグデータマスタを作成する工程を説明するものとなっている。つまり、図3に示す処理を周期的に繰り返すことにより、本物品管理システム10の監視下における無線タグ63の存否を確認しつつ、新たなタグUIDについては、タグユーザデータとともにタグデータマスタに対する追加保管を行うことができる。この場合、無線タグ63の存否を確認は、タグUIDを読み取るだけであり、リーダ装置21を比較的高速の第1モードで動作させることができる。つまり、新規なタグUIDが検出されない限り、リーダ装置21による無線タグ63の読み取りを迅速化することができ、無線タグ63ひいては商品61の所在や移動を迅速かつ的確に把握することができるので、商品61の管理を迅速で信頼性の高いものとすることができる。一方、新規なタグUIDが検出された場合、リーダ装置21を第2モードで動作させ、新規なタグUIDに関連づけられたその商品61のタグユーザデータを収集することができるので、本物品管理システム10の管理対象となる商品61に関するデータベースすなわちタグデータマスタの自動的で迅速な蓄積が可能になる。
【0039】
次に、図4に移って、本物品管理システム10によって現在検出されている無線タグ63の状況すなわち読取実績が更新される。このため、まず無線タグ63の検出状況を記録する検出タグデータ格納テーブル中の既存レコードを一旦全件削除するとともに(ステップS11)、リーダ装置21による今回取得のタグUIDを検出タグデータ格納テーブルを全件更新する(ステップS12)。具体的には、CPU33aの制御下で内部記憶装置33dに設けた検出タグデータ格納テーブルのレコードが消去され、今回取得のタグUIDのリストが新たなレコードとして検出タグデータ格納テーブルに書き込みされる。ここで、検出タグデータ格納テーブルは、本物品管理システム10の読取処理の1周期内で検出された無線タグ63から得たタグ情報を保持するためのものであり、1周期毎に更新される。この検出タグデータ格納テーブルには、例えば、本物品管理システム10が受信した無線タグ63の「タグUID」と、本システムが受信した無線タグ63の「ユーザデータ」と、タグUIDを受信したリーダ装置21のIDである「読取R/W−ID」と、タグUIDを受信したアンテナ23の番号である「読取R/W−No.」と、タグUIDを受信した時刻である「登録時」とが含まれる。
【0040】
次に、図5に移って、本物品管理システム10による無線タグ63の検出状況の変化がチェックされ結果が保管される。
【0041】
まず、無線タグ63の増減に関する基礎的な情報を取得するべく、タグデータマスタと検出タグデータ格納テーブルとを比較して差分データを得る(ステップS21)。具体的には、情報制御手段であるCPU33aの制御下で内部記憶装置33dに保持されたタグデータマスタと検出タグデータ格納テーブルとが比較され、タグデータマスタルにのみ存在するタグUIDを検出して差分データとする。この差分データは、暫定的なものであり、メモリ33bに保管される。
【0042】
次に、今回の読取処理におけるタグUIDの増減を判定する目的で、上記のようにして得た差分データと、既に存在する差分タグデータ格納テーブルをと逐次比較する(ステップS22)。具体的には、情報制御手段であるCPU33aがメモリ33bや内部記憶装置33dを参照して、今回の読取処理(今周期)のステップS21で得た差分データと、前回の読取処理(前周期)で更新された既存の差分タグデータ格納テーブルとを比較して、それぞれの差分に存在するタグUIDが今回追加されたものか、今回削除されたものか、変化していないのかを判断する。ここで、差分タグデータ格納テーブルは、読取処理の各周期間において差分データを保持するためのものであり、無線タグ63についての「検出→未検出」の状態変化によってデータが追加され、「未検出→検出」の状態変化によってデータが削除される。この差分タグデータ格納テーブルには、例えば、検出から未検出へ遷移した無線タグ63の「タグUID」と、検出から未検出へ遷移した無線タグ63の「ユーザデータ」と、最終検出時のリーダ装置21のIDである「読取R/W−ID」と、最終検出時のアンテナ23の番号である「読取R/W−No.」と、検出から未検出へ遷移した時刻である「登録時」とが含まれる。
【0043】
以上のような比較結果に応じて、対応するタグUIDの処理を変更する(ステップS23)。
【0044】
例えば、ステップS21で得た差分データが既存の差分タグデータ格納テーブルに比較して減少している場合、すなわち既存の差分タグデータ格納テーブルにのみ存在するタグUIDについては、本物品管理システム10の監視エリアに今回搬入されたものと判断され、差分タグデータ格納テーブルから当該タグUIDに対応するレコードを削除して差分タグデータ格納テーブルを更新する(ステップS24)。その後、本物品管理システム10の履歴として、状態遷移ログテーブルに対して存在レコードが追加される(ステップS25)。つまり、情報制御手段としてのCPU33aは、ステップS24で差分タグデータ格納テーブルのレコードが削除されたこと(例えば、タグデータマスタに新たなタグUIDが追加された場合や、監視エリアから持ち出された商品61が再度監視エリアに戻された場合が該当する)を、時刻等の付帯情報とともに内部記憶装置33dに設けた状態遷移ログテーブルに追加記録する。ここで、状態遷移ログテーブルとは、差分データ格納用テーブルへのアクセス履歴(追加/削除の履歴)を保持するデータ領域を意味する。この状態遷移ログテーブルには、例えば、「検出→未検出」又は「未検出→検出」へ遷移した無線タグ63の「タグUID」と、「検出→未検出」又は「未検出→検出」へ遷移した検出から未検出へ遷移した無線タグ63の「ユーザデータ」と、状態遷移が確認されたリーダ装置21のIDである「読取R/W−ID」と、状態遷移が確認されたアンテナ23の番号である「読取R/W−No.」と、状態遷移の確認された時刻である「登録時」とが含まれる。
【0045】
一方、ステップS21で得た差分データが既存の差分タグデータ格納テーブルに比較して増加している場合、すなわち差分データにのみ存在するタグUIDについては、本物品管理システム10の監視エリアから今回除去されたものと判断され、差分タグデータ格納テーブルに対して当該タグUIDに対応するレコードを追加して差分タグデータ格納テーブルを更新する(ステップS27)。その後、本物品管理システム10の履歴として、状態遷移ログテーブルに対して不在レコードが追加される(ステップS28)。このようなタグUIDについて、これが持ち出しが許可されていないリストに載っている場合、CPU33aは、対象物の移動を示す移動信号を出力する。具体的には、商品61の無許可持ち出し等として、警報が発せられる。
【0046】
なお、ステップS21で得た差分データと既存の差分タグデータ格納テーブルとが一致している場合、すなわち差分データと既存の差分タグデータ格納テーブルとに共通して存在しないタグUIDについては、本物品管理システム10の監視エリアに滞在したまま維持されたと判断され、特別な処理を行わない。
【0047】
以上のような処理を繰り返すことにより、増減したタグUIDや維持されたタグUIDについての記録処理が完了し、一連の処理を終了する(ステップS29)。以上のような処理は、本物品管理システム10による商品61の監視が必要である限り繰り返され、これに伴って、内部記憶装置33d中に保管されたタグデータマスタ、検出タグデータ格納テーブル、差分タグデータ格納テーブル、及び状態遷移ログテーブルが随時最新の情報に更新される。
【0048】
図7は、主に図3に示すフローチャート(ステップS1〜S6)における処理の一例を示すチャートであり、新たなタグ情報が読み取られタグデータマスタが更新されている。なお図示のチャートにおいて、横方向に配列される表示領域の左から順に、アンテナ23上で検出されたタグ情報(「アンテナ上データ」)、制御コンピュータ33のメモリ33bに保管されるタグ情報(「PC内メモリエリア」)、上記タグデータマスタ、上記検出タグデータ格納テーブル、上記差分タグデータ格納テーブル、及び状態遷移ログテーブルが配置されている。
【0049】
図示の例では、展示棚50の棚部52上に3つの商品61が新たに置かれ、タグデータマスタが検索されている。その後、3つの商品61がタグデータマスタに存在しないと判定され、PC内メモリエリアからタグデータマスタにデータが転送され、タグデータマスタが最新情報に更新される。なお、結果的に、状態遷移ログテーブルに対して状態遷移を示す情報が追加される。
【0050】
図8は、図7の処理後に追加の処理を行った場合を例示するチャートであり、追加のタグ情報が読み取られタグデータマスタが再度更新されている。この例では、展示棚50の棚部52上に3つの商品61が既に存在する状態で1つの商品61が新たに置かれ、タグデータマスタが検索されている。その後、1つの商品61がタグデータマスタに存在しないと判定され、PC内メモリエリアからタグデータマスタにデータが転送され、タグデータマスタが最新情報に更新される。なお、結果的に、状態遷移ログテーブルに対して状態遷移を示す情報が追加される。
【0051】
図9は、主に図5に示すフローチャート(ステップS21〜S29)における処理の一例を示すチャートであり、タグデータマスタの更新はないがタグ情報の変化が生じている。この例では、展示棚50の棚部52上にあった4つの商品61から1つの商品61が取り去られ、3つの商品61が棚部52上に残っている。この結果、検出タグデータ格納テーブルが一旦全件削除され、残った3つの商品61に対応するものに更新される。
【0052】
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、上記実施形態では、物品管理システム10を商品の展示、販売等における管理用に用いたが、商品以外の対象物の管理(例えば人物の入退室管理)に応用することもできる。
【0053】
また、上記実施形態では、リーダ装置21によって商品61に設けた無線タグ63から情報を読み出すだけであったが、リーダ装置21を書き込み可能にすることで、無線タグ63のユーザ領域MA2に商品名等以外の情報を追加的に書き込むことができ、タグユーザデータの更新が可能になる。つまり、ユーザ領域MA2に記録される情報は、用途に応じて多様に設定することができ、事後的に変更することができる。なお、このように変更されたタグユーザデータは、制御コンピュータ33の制御下で定期的にチェックすることができ、タグデータマスタのタグユーザデータに反映させることができる。例えば、差分タグデータ格納テーブルに変更があった場合にタグユーザデータの変更を自動的にチェックするといった手法も可能である。
【0054】
また、上記実施形態では、無線タグ63の記憶領域MA内に設けたその他の領域MA3に何も保管していないが、この領域MA3には、AFI情報領域を設けることができる。このAFI情報領域にAFI使用フラグを設定するとともに本システムの対象品であることを示す特定のAFI値を指定する。かかるAFI使用フラグが立っている場合、イベントリ要求を受けた無線タグ63は、このAFI値がイベントリ要求中のAFI値と一致する場合にのみ、タグUID等をリーダ装置21に返信する。このようにすれば、物品管理システム10の対象外の商品61等が検出されることを回避でき、さらに検出・管理速度を高速化することができる。
【0055】
また、上記実施形態では、無線タグ63の非検出への遷移をすべて差分タグデータ格納テーブルによってチェックしているが、このようなチェックを特定の無線タグ63について予め外しておくもともできる。例えば本物品管理システム10の起動直後に存在する特定の無線タグ63をリスト化しておき、このようなリスト中の無線タグ63が差分タグデータ格納テーブルすなわち差分データによってチェックされたり、タグユーザデータに載ることを予め防止することで、許可なき持ち出しでないにも拘わらず不要な警報が鳴る等の自体の発生を防止できる。
【0056】
また、上記実施形態では、タグユーザデータが自動的に作成されるとしたが、予め或いは事後的にオペレータの操作によってタグユーザデータを追加蓄積することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施形態に係る物品管理システムの構造を説明するブロック図である。
【図2】図1の物品管理システムによって管理される対象を説明する正面図である。
【図3】図1の物品管理システムの動作を概念的に説明するフローチャートである。
【図4】図1の物品管理システムの動作を概念的に説明するフローチャートである。
【図5】図1の物品管理システムの動作を概念的に説明するフローチャートである。
【図6】無線タグに記録されたタグ情報の一例を概念的に説明する図であり、
【図7】図1の物品管理システムの第1の動作例を説明する概念図である。
【図8】図1の物品管理システムの第2の動作例を説明する概念図である。
【図9】図1の物品管理システムの第3の動作例を説明する概念図である。
【符号の説明】
【0058】
10…物品管理システム、 21…リーダ装置、 22…アンテナ切替器、 23,53…アンテナ、 31…ネットワーク、 33…制御コンピュータ、 33b…メモリ、 33c…通信制御部、 33d…内部記憶装置、 33e…表示装置、 33f…入力装置、 33g…外部記憶装置、 61…商品、 63…無線タグ、 MA…記憶領域、 MA1…領域、 MA2…ユーザ領域、 MA3…その他の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有のID情報を保持するID領域と対象物に関連する付加情報を保持可能なユーザ領域とを含む無線タグからID情報及び付加情報を読み取り可能であるとともに、ID情報を読み取る第1モードとID情報及び付加情報を読み取る第2モードとで動作可能な情報読取手段と、
ID領域と付加情報とを記録可能なデータベースと、
前記情報読取手段に前記第1モードの動作を行わせることによって無線タグから読み取ったID情報が前記データベースに記録されていない場合に、前記情報読取手段に第2モードの動作を行わせることによって無線タグからID情報及び付加情報を読み取らせる読取切替手段と
を備える管理システム。
【請求項2】
前記情報読取手段が前記第2モードで動作することによってID情報及び付加情報を読み取った場合に、読み取ったID情報及び付加情報を、前記データベースに一組のタグ情報として追加記録する請求項1記載の管理システム。
【請求項3】
前記情報読取手段は、前記情報読取手段に前記第1モードで周期的に無線タグからID情報を読み取らせる請求項2記載の管理システム。
【請求項4】
前記情報読取手段は、前記情報読取手段に前記第1モードで無線タグからID情報を読み取らせた結果として得たID情報のリストを検出タグデータとして常時更新する請求項1から請求項3のいずれか一項記載の管理システム。
【請求項5】
前記検出タグデータの増減を差分データとして常時更新するとともに、前記検出タグデータの変動を状態遷移ログとして逐次保管する情報制御手段をさらに備える請求項4記載の管理システム。
【請求項6】
前記情報制御手段は、前記差分データが前記検出タグデータの減少を示す場合に、対象物の移動を示す移動信号を出力する請求項5記載の管理システム。
【請求項7】
前記情報制御手段は、所定のタイミング以前に前記データベースに記録されたID情報に関して、前記差分データの管理対象外とする請求項5及び請求項6のいずれか一項記載の管理システム。
【請求項8】
前記情報読取手段は、前記ID領域及び前記ユーザ領域のほかに応答が許容される信号を特定する制限情報を保持可能な選択応答領域を含む無線タグに対して、前記制限情報に対応する所定の信号を送信することによってID情報及び付加情報を読み取る請求項1から請求項7のいずれか一項記載の管理システム。
【請求項9】
前記情報読取手段によって読み取られる付加情報には、無線タグを取り付けた対象物に関する商品名及び価格が含まれる請求項1から請求項8のいずれか一項記載の管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−310483(P2007−310483A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136727(P2006−136727)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000108649)タカヤ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】