説明

管理方法、通信装置および運搬装置

【課題】流動する材料に混入する通信装置を用いて、この流動する材料が格納される場所が変わっても、共に移動する通信装置から得る情報に基づいて、流動する材料の状態を管理する管理方法を提供すること。
【解決手段】流動する状態から硬化した状態に変化する材料の状態を管理する管理方法であって、前記流動する材料に囲まれた状態で前記材料の特定の物理量を測定する測定手段、および前記測定手段によって測定された物理量に応じた情報を、他の装置に電磁誘導を用いた無線通信により送信する通信手段を具備する通信装置を、前記材料が前記流動する状態のときに当該材料に混入させる混入過程と、前記流動する材料が流動する状態のときに前記通信手段によって送信される情報を、前記他の装置によって受信する受信過程と、前記受信過程において受信された情報に応じて材料の状態を報知する報知過程と、を備えることを特徴とする管理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理方法、通信装置および運搬装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの運搬、打設および養生にいたるまで、コンクリートの状態を無線通信の機能を有する装置を用いて把握して管理する技術が開示されている。特許文献1では、生コンクリートプラントから出荷される生コンクリートを運搬するアジテータ車のドラムの内部に、生コンクリートの状態を検出する検出装置を設置し、この検出装置が検出した情報を、ドラムを貫通させたケーブルをとおしてドラム外部に設置するRFID(Radio Frequency IDentification)へ伝達し、さらにこのRFIDとの間で無線通信を行うリーダライタ部が、通信で得た生コンクリートの状態を検出した情報を工場へ通知する技術が開示されている。
【0003】
しかしながら、この技術においては、運搬中の生コンクリートの状態を管理するにとどまる。また、コンクリートの打設においては、生コンクリートの製造から打設までの経過時間の管理、および製造された生コンクリートの性能がこの生コンクリートにより形成される部材に求められている性能の基準を満たしているかどうかを確認して管理することが望ましいが、これらの管理を行う技術については、特許文献1では開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−049499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、流動する材料に混入する通信装置を用いて、この流動する材料が格納される場所が変わっても、共に移動する通信装置から得る情報に基づいて、流動する材料の状態を管理する管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、流動する状態から硬化した状態に変化する材料の状態を管理する管理方法であって、前記流動する材料に囲まれた状態で前記材料の特定の物理量を測定する測定手段、および前記測定手段によって測定された物理量に応じた情報を、他の装置に電磁誘導を用いた無線通信により送信する通信手段を具備する通信装置を、前記材料が前記流動する状態のときに当該材料に混入させる混入過程と、前記流動する材料が流動する状態のときに前記通信手段によって送信される情報を、前記他の装置によって受信する受信過程と、前記受信過程において受信された情報に応じて材料の状態を報知する報知過程と、を備えることを特徴とする管理方法を提供する。この管理方法を用いれば、流動する材料が格納される場所が変わっても、共に移動する通信装置から流動する材料の状態の管理に用いる情報を得ることができる。
【0007】
別の好ましい態様において、前記通信装置は、前記測定手段によって測定された物理量の時間変化に応じた情報を記憶する物理量記憶手段をさらに具備し、前記通信手段は、前記無線通信により、前記物理量記憶手段に記憶された情報を他の装置に送信してもよい。この管理方法を用いれば、他の装置と通信されていない間に蓄えられた流動する材料の状態を示す情報の履歴を取得することができる。
【0008】
別の好ましい態様において、前記通信装置は、前記物理量記憶手段に記憶される物理量の時間変化が特定の態様で変化したことを検出すると、当該特定の態様で変化したときから経過した時間を計測する計測手段をさらに具備し、前記通信手段は、前記無線通信により、前記計測手段に計測された時間に応じた情報を他の装置に送信してもよい。この管理方法を用いれば、作業者が操作しなくとも、通信装置を流動する材料に混入したときから自動的に経過時間の計測および温度履歴情報の蓄積の動作を開始させることができる。
【0009】
別の好ましい態様において、前記通信装置は、前記材料に応じた情報を記憶する材料情報記憶手段をさらに具備し、前記通信手段は、前記無線通信により、前記材料情報記憶手段に記憶された情報を他の装置に送信してもよい。この管理方法を用いれば、通信装置は、混入される流動する材料に応じた情報を格納し、打設前であってもこの情報を他の装置に送信することができる。
【0010】
別の好ましい態様において、前記通信装置は、前記材料情報記憶手段に情報が記憶されると、当該記憶されたときから経過した時間を計測する計測手段をさらに具備し、前記通信手段は、前記無線通信により、前記計測手段に計測された時間に応じた情報を他の装置に送信してもよい。この管理方法を用いれば、材料情報を通信装置に格納したときから自動的に経過時間の計測を開始させることができる。
【0011】
別の好ましい態様において、前記通信装置は、あらかじめ決められた条件を満たしたときから経過した時間を計測する計測手段をさらに具備し、前記通信手段は、前記無線通信により、前記計測手段に計測された時間に応じた情報を他の装置に送信してもよい。この管理方法を用いれば、あらかじめ決められた条件を満たしたときから経過時間の計測を開始させることができる。
【0012】
別の好ましい態様において、前記報知過程において報知された内容に応じた条件を用いて前記材料を硬化させる硬化過程とをさらに備えてもよい。この管理方法を用いれば、流動する材料が硬化するまでの間、この流動する材料の状態を確認しながらこの状態を適切に保つための作業を行うことができる。
【0013】
別の好ましい態様において、前記通信手段によって送信される情報を前記流動する材料が硬化した後に受信する第2受信過程と、前記第2受信過程によって受信された情報に応じて材料の状態を報知する第2報知過程とをさらに備えてもよい。この管理方法を用いれば、打設前の管理の仕組みを用いて、養生後における材料の管理も行うことができる。
【0014】
別の好ましい態様において、前記通信装置は、前記材料を構成する成分の少なくとも一部の成分を有する材料に表面が覆われた筐体をさらに具備してもよい。この管理方法を用いれば、通信装置が硬化した材料と一体化して硬度を保つことができる。
【0015】
別の好ましい態様において、前記筐体は、球状であってもよい。この管理方法を用いれば、通信装置は、流動する材料からの圧力を筐体全体に分散するため、圧力による筐体の変形およびこの変形による通信装置の不具合を防ぐための強度を高めることができる。
【0016】
別の好ましい態様において、流動する状態から硬化した状態に変化する材料の状態を管理する管理方法であって、あらかじめ決められた条件を満たしたときから経過した時間を計測する計測手段、および前記計測手段によって計測された時間に応じた情報を、他の装置に電磁誘導を用いた無線通信により送信する通信手段を具備する通信装置を、前記材料が前記流動する状態のときに当該材料に混入させる混入過程と、前記流動する材料が流動する状態のときに前記通信手段によって送信される情報を、前記他の装置によって受信する受信過程と、前記受信過程において受信された情報に応じて材料の状態を報知する報知過程と、を備えてもよい。この管理方法を用いれば、他の装置と通信されていない間に測定された経過時間を取得することができる。
【0017】
別の好ましい態様において、流動する状態から硬化した状態に変化する材料の状態に応じた特定の物理量を測定する測定手段と、前記測定手段によって測定された物理量に応じた情報を、他の装置に電磁誘導を用いた無線通信により送信する通信手段とを具備し、前記材料が前記流動する状態のときに、当該材料に混入して用いられることを特徴とする通信装置を提供する。この通信装置を用いれば、流動する材料が格納される場所が変わっても、共に移動して流動する材料の管理に用いる情報を送信することができる。
【0018】
別の好ましい態様において、流動する状態から硬化した状態に変化する材料を前記流動する状態で運搬する運搬装置であって、前記材料の状態に応じた特定の物理量を測定する測定手段、および前記測定手段によって測定された物理量に応じた情報を、電磁誘導を用いた無線通信により送信する通信手段を具備する通信装置が混入された前記材料を収容する収容部と、前記収容部の外部に設けられ、前記通信手段によって送信された情報を受信する受信部と、前記受信部によって受信された情報に応じて材料の状態を報知する報知部とを具備することを特徴とする運搬装置を提供する。この運搬装置を用いれば、運搬される流動する材料において、共に移動する通信装置から流動する材料の管理に用いる情報を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】生コンクリートの製造から打設にいたる過程を説明する図である。
【図2】通信装置を説明する図である。
【図3】通信装置と読取装置が通信する様子を示す図である。
【図4】通信装置のブロック図である。
【図5】読取装置のブロック図である。
【図6】本実施形態に係る管理方法のフローチャートである。
【図7】通信装置と読取装置の動作を示すシーケンスチャートである。
【図8】読取装置を搭載した運搬車を説明する図である
【図9】本実施形態における各部の温度変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態>
[構成]
図1は、生コンクリートの製造から打設にいたる過程を説明する図である。まず、図1(a)は、生コンクリート工場の製造設備3を説明する図である。製造設備3は、図示せぬセメントサイロなどの生コンクリートの原料を保管する設備、計量器、およびミキサなどの生コンクリートを製造するための設備を備える。セメント、骨材、水、および混和剤などの生コンクリートの原料6は、それぞれを保管する設備から供給され、計量器で計量されてミキサ30に混入される。ミキサ30は、原料6を混ぜて練り上げ、生コンクリート7を製造する。練り上げられた生コンクリート7は、ホッパ31へ運ばれ、打設現場へ生コンクリート7を運搬する運搬車4へ積み込まれる。
【0021】
図1(b)は、運搬車4を説明する図である。運搬車4は、車両41に回転するドラム40を装備し、生コンクリート7を生コンクリート工場から打設現場まで運搬する。積み込まれた生コンクリート7は、打設現場に到着する前に固まらないように、回転するドラム40の内部に備えられた渦巻状のブレードによりかき混ぜられる。図1(c)は、型枠5を説明する図である。型枠5は、鋼板や木材等で形成される型枠で、打設現場に設置されており、いる。型枠5は、生コンクリート7を予め決められた形状になるように誘導する。生コンクリート7は、型枠5が形成する内部の空間(以下、型枠内空間50という)に流し込まれる。生コンクリート7は、上述した原料6を混ぜ合わせて製造される流動する材料である。製造された当初の生コンクリート7は、流動性があり、型枠内空間50の形状に誘導される。生コンクリート7は、時間の経過とともに水和反応により硬化して硬化コンクリートとなり、基礎、柱、および壁などの建築物の一部の部材を形成する。以下、生コンクリートと硬化コンクリートとを合わせて示すときは、コンクリートという。
【0022】
生コンクリート7は、製造して時間が経過すると、硬化が進んで打設に必要な流動性が損なわれ空隙の発生および不均一な強度などの原因となる場合がある。このため、製造してからの時間を管理することが求められる。また、作業者は、形成する部材の種類および打設時の気温などの要素により、強度および延性などを調整した生コンクリート7を発注する。このとき、作業者は、納品される生コンクリート7が発注どおりのものであるかどうかを管理する必要がある。これらのような生コンクリート7の管理を行うため、本実施形態においては、生コンクリート7に混入する無線通信の機能を備える通信装置を用いる。
【0023】
図2は、通信装置を説明する図である。通信装置10は、無線通信の機能を有する無線タグ110および無線タグ110を格納する筐体120を備え、生コンクリート7の内部に混入される。通信装置10は、生コンクリート7に囲まれた状態で後述する情報を無線通信により送信する。筐体120は、コンクリートの原料であるセメントおよび骨材などを有し、これらの原料が筐体120の表面の部分を覆う球状に形成される。筐体120は、コンクリートの圧力および水分などから無線タグ110を保護する。筐体120は、このように球状に形成することで、材料による圧力を分散させて材料の圧力による変形や無線タグ110の不具合を防ぐための強度を高めることができる。また、筐体120は、生コンクリート7が硬化した際、筐体120の表面が硬化したコンクリートと一体化して、硬化コンクリートの硬度を保つことができる。なお、筐体120は、球状の他に、四面体や六方体、八方体、たまご型など様々な形状であってもよい。また、筐体120は、周囲に接触する物質から伝達される温度を内部に伝達するように形成されている。
【0024】
無線タグ110は、温度センサを有するセンサ部112(図4参照)を備え、筐体120に接する物質から伝達される温度を測定する。無線タグ110は、時刻の情報を出力する時計部117(図4参照)を備え、この時刻の情報に基づいてこの温度が測定されたときの時刻を取得する。無線タグ110は、この測定された温度および取得した時刻が示す時刻によって変化する温度の履歴の情報(以下、温度履歴情報という)を生成する。無線タグ110は、さらに経過した時間を計る計測部113(図4参照)を備え、時間の計測を開始し、この計測の開始から経過した時間(以下、経過時間という。)を計測する。そして、無線タグ110は、後述する動作により、この経過時間および温度履歴情報を示す信号を外部に送信する。通信装置10においては、このように筐体120がセンサ部へ温度を伝達するため、センサ部から外部への測定用の部位を露出させる必要がない。このため、筐体120の加工は、容易に行うことができ、製造コストの上昇が抑えるられる。
【0025】
通信装置10が外部へ通信する無線通信は、電磁誘導方式による通信手段によって、周波数が131kHz程度の長波(LF:Low Frequency)を用いて行う。障害物の影響を受けにくい長波帯の周波数を用いるため、通信装置10と読取装置20は、木や金属を有する型枠5や水分を含むコンクリートなどを間に挟んだ状態でも、通信を行うことができる。また、この通信は双方向に行われ、概ね数mを有効な通信距離とする。この通信装置10が外部へ送信する信号は、無線通信の機能を有しこの有効な通信距離の範囲で操作される読取装置により読み取られる。
【0026】
図3は、通信装置10と読取装置20が通信する様子を示す図である。読取装置20は、無線通信の機能を有し、生コンクリート7に混入された通信装置10が送信した信号を受信し、この信号に示されている情報を読み取る。また、読取装置20は、通信装置10に情報を送信し、通信装置10にこの情報を格納させる。読取装置20が送信する情報の内容については後述する。表示画面241は、液晶などの画面を有し、上述の読み取られた情報や、この情報に基づき読取装置20が生成する情報などを表示する。操作子251は、複数のボタンまたはタッチパネルなどを有し、読取装置20への入力機能を有す。作業者は、操作子251により読取装置20を操作する。この操作により、読取装置20は、通信装置10と各種情報のやり取りおよび各種動作の命令を行う。このように、通信装置10と読取装置20は、互いに通信を行いながら、後述する動作によりコンクリートを管理するひとつのシステム(以下、管理システム1という。)として機能する。
【0027】
図4は、通信装置10のブロック図である。無線タグ110は、温度を検出するセンサ部112や、読取装置20と情報を通信する通信部115などの装置を有し、通信装置10の主要な機能を担う装置である。図に示すとおり、バス101により互いに接続される、制御部111、センサ部112、計測部113、記憶部114、通信部115、電源部116、時計部117を有している。制御部111は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有し、CPUは、ROMに記憶されたプログラムをRAMにロードして実行する。これにより、制御部111は、バス101を介して無線タグ110の各部の制御と、制御部111へ入力される情報の演算およびこの情報の記憶部114への格納などを行う。時計部117は、時刻の情報を生成する機能を有し、あらかじめ決められた間隔で制御部111へこの時刻の情報を出力する。制御部111は、この時刻の情報を用いて、日時などの時刻または時間に応じた制御をする。
【0028】
センサ部112は、温度を測定するセンサを有し、筐体120を介して伝達される通信装置10に接触する物質の温度を測定する。センサ部112は、この温度情報を生成して制御部111へ出力する。計測部113は、経過した時間を計測する機能を有し、制御部111の制御により動作を開始すると、この動作を開始した時点から経過した時間を計測する。記憶部114は、不揮発性メモリなどの記憶手段であって、上述した温度履歴情報および読取装置20から送られてくる生コンクリート7に関する情報などを格納する。この通信装置10を混入する材料である生コンクリート7に関する情報(以下、材料情報という)とは、例えば、生コンクリート7の原料の種類と混合比率などの組成を示す情報、生コンクリート7の重量の情報、および生コンクリート7の種類を示す名称などである。
【0029】
ここで、制御部111は、記憶部114にこの材料情報が格納されると、各部が次の動作を開始するように制御する。この開始される動作は、センサ部112による温度の測定、温度情報の生成および温度情報の出力、および計測部113による時間の計測である。加えて、制御部111による経過時間情報の取得、記憶部114への各種情報の格納、および記憶部114による各種情報の蓄積である。制御部111は、これらの動作を開始した後、これらの動作をあらかじめ決められた間隔で継続的に行うよう各部を制御する。これにより、記憶部114には、上述した温度履歴情報が蓄積される。通信部115は、無線通信の機能を有し、読取装置20との間で無線通信を行う。電源部116は、一次電池を有し、無線タグ110の各部に電力を供給する。このように、電源部116が電力を供給するため、通信装置10が通信をしていないときも各部が動作して温度履歴情報が蓄積される。
【0030】
図5は、読取装置20のブロック図である。制御部210は、CPU、ROM、RAMなどを有し、CPUは、ROMに記憶されたプログラムをRAMにロードして実行する。これにより、制御部210は、バス201を介して、読取装置20の各部について制御する。通信部220は、アンテナ221を有し、このアンテナ221を用いて行う無線通信によって、通信装置10との間で情報のやり取りを行う通信手段である。通信により通信装置10から読み取られた情報は、制御部210へ出力され、制御部210は、この情報を記憶部230へ格納する。
【0031】
記憶部230は、不揮発性メモリなどの記憶手段であって、読み取られた情報を格納し、蓄積する。表示部240は、液晶画面などで形成される表示画面241を有し、読み取られた温度情報や、記憶部230へ格納された情報を表示する。操作部250は、複数のボタンまたはタッチパネルなどの入力機能を持つ操作子251を有し、作業者が読取装置20に対して選択、確認、取り消しなどの指示を行うための操作を行う操作手段である。操作部250は、操作内容を示す情報を制御部210に出力する。インターフェース260は、USB(Universal Serial Bus)などの外部装置と接続する端子を有し、コンピュータなどの外部装置と情報のやり取りを行う際のインターフェースとなる。
続いて、本実施形態に係る管理方法を使用する動作について説明する。
【0032】
[動作]
図6は、本実施形態に係る管理方法のフローチャートである。まず、作業者は、読取装置20を操作して、生コンクリート7の材料情報を通信装置10に格納する。そして、通信装置10は、この材料情報が格納されると、時間の計測、温度の測定および温度履歴情報の蓄積を開始する。管理方法の初期に作業者が通信装置10に対して行うこれらの操作を、初期操作という(ステップS100)。そして、作業者は、ミキサ30により練り上げてホッパ31へ蓄えられた製造直後の生コンクリート7へ通信装置10を混入する(ステップS200)。ここで、初期操作(ステップS100)は、原料がミキサ30により練り上げられて生コンクリート7が完成した直後に行うことが望ましい。こうすることで、通信装置10が計測する経過時間が、生コンクリート7が完成してから経過した時間に近くなり、流動性の管理の精度を高めることができる。
【0033】
混入された通信装置10は、上述した動作により生コンクリート7の温度を測定し、この温度の履歴を示す温度履歴情報を蓄積する。そして、作業者は、読取装置20を操作して、通信装置10からこの蓄積された温度履歴情報、測定された経過時間の情報および格納されている材料情報を示す信号を送信させる。読取装置20は、通信装置10から送信されるこれらの信号を受信して、これらの情報を取得する。(ステップS300)。そして、読取装置20は、これらの情報を受信したときに通信装置10が混入されている生コンクリート7の状態により、この状態に応じて作業者に報知する情報(以下、報知情報という。)を生成する。この報知される情報の具体例は後述する。作業者は、この生成された報知情報を表示画面241に表示させるなどして確認する(ステップS400)。次に、この管理方法における通信装置10と読取装置20との具体的な動作を次に説明する。
【0034】
図7は、通信装置10と読取装置20の動作を示すシーケンスチャートである。読取装置20は、上述した初期操作(ステップS100)における作業者の操作により、通信装置10に対して材料情報の格納を命令する信号をこの材料情報とともに送信する(ステップS110)。通信装置10は、この材料情報を受信すると、記憶部114へ格納する(ステップS120)。通信装置10は、この材料情報を記憶部114へ格納すると、経過時間の計測および温度履歴情報の蓄積を開始する(ステップS130)。
【0035】
続いて、上述した情報取得操作(ステップS300)における作業者の操作により、読取装置20は、蓄積した情報および格納している材料情報の送信を命令する信号を通信装置10に対して送信する(ステップS310)。通信装置10は、この送信を命令する信号を受信すると、蓄積した温度履歴情報および格納している材料情報から読取装置20へ送信する情報を生成し(ステップS320)、この生成した情報を送信する(ステップS330)。読取装置20は、この送信された送信情報を受信して、記憶部230へ格納する(ステップS340)。
【0036】
そして、上述した報知情報の確認(ステップS400)の段階において、読取装置20は、格納した送信情報に基づき報知情報を生成する(ステップS410)。この報知情報は、例えば、通信装置10が混入された時刻および現在の時刻までに経過した時間、または生コンクリート7の材料情報、またはこの送信情報に含まれる温度履歴情報の温度と時刻の関係を示すグラフなどである。読取装置20は、この報知情報からこの情報を表示するための表示情報を生成し、表示画面241へ表示する(ステップS420)。なお、通信装置10は電源部116が供給する電力により常に動き続けているため、例えば温度が変化しなくなるなどの温度履歴情報の異常が検出された場合は、この温度履歴情報を生成した通信装置10に不具合が発生したことを合わせて表示してもよい。さらに、この報知情報生成(ステップS410)以降の動作は、読取装置20と接続するコンピュータなどの外部の装置で行ってもよい。この場合、作業者はこの外部の装置に接続される表示装置上の画面で、報知情報を確認する。この報知情報で示す情報の具体的な例について、次に説明する。
【0037】
図8は、読取装置20を搭載した運搬車4を説明する図である。図8(a)において、読取装置20は、ドラム40の底部の下で車両41の上に備え付けられている。この読取装置20は、あらかじめ決められた間隔で情報取得動作を行うように動作し、通信装置10から送信される情報を取得する。このようにして取得された情報から、読取装置20は、例えば材料および温度履歴情報のグラフを報知情報として表示する。運搬車4の作業者は、読取装置20に表示されるこれらの報知情報を見ながら、打設現場での確認作業などを行う。なお、読取装置20は、作業者の操作により各情報を読み取るように用いてもよい。また、この読取装置20は、図8(b)に示すように、アンテナ221をドラム40の底部の下で車両41の上に備え付け、読取装置20を運転主席から操作してもよい。この場合、アンテナ221と読取装置20の本体は配線222で接続されている。
【0038】
他の例について、図1に戻って説明する。図1(c)に示すような打設現場においては、作業者は、例えば、読取装置20を通信装置10と通信させて情報を読み取らせる。そして、作業者は、表示画面241に表示される報知情報により生コンクリート7の材料情報を確認し、注文どおりの材料であるかどうかを確認する。そして、製造してからの経過時間に対応して、打設の段取りおよび打設後の作業の調整を行う。さらに、作業者は、生コンクリート7を打設してから養生中にいたるまでの硬化する過程における温度履歴情報を通信装置10から読み取ってもよい。作業者は、この読み取った情報を、コンクリートの温度管理のために用いてもよい。この場合、例えば、経過時間に対応する適切な温度をあらかじめ設定して読取装置20に格納しておいてもよい。読取装置20は、この設定した温度と通信装置10から読み取った温度履歴情報との差異があらかじめ決められた値を超える場合に、対応作業が必要な旨を示す報知情報を表示してもよい。この報知情報によって、作業者は、コンクリートの冷却または加熱などの作業を行う。
【0039】
このように、管理システム1を用いて本実施形態に係る管理方法を使用すると、生コンクリート7が格納される場所が運搬車4から型枠5と変わっても、生コンクリート7に混入された通信装置10から情報を取得することができる。この取得できる情報は、生コンクリート7の温度履歴情報および材料情報などである。この読み取りには、水や金属の影響を受けにくい方式による無線通信を用いる。このため、生コンクリート7およびドラム40または型枠5に周囲を囲まれた通信装置10からでも、これらの情報を取得することができる。さらに、一次電池を有する通信装置10を継続して動作させることで、通信装置10は通信を行っていない間も温度履歴情報を蓄積することができる。この温度履歴情報の内容から通信装置10の動作の不具合による情報と正常な動作による情報とを見分けることができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以下のように、さまざまな形態で実施可能である。
<変形例1>
上述した実施形態においては、通信装置10が備えるセンサ部112は温度を測定したが、他に通信装置10の筐体120が接する物質から受ける圧力、またはこの物質のpH(potential Hydrogen)、もしくは水分率などの物理量を測定してもよい。圧力を測定する場合は、筐体120は、自身が接触する物質から受ける圧力を内部に伝達するように形成されている。また、pHおよび水分率を測定する場合は、通信装置10は、センサ部112の一部が筐体120の表面に露出して形成されている。また、ひとつの通信装置10で複数種類のこれらの情報を測定してもよいし、複数の通信装置10でそれぞれ異なるこれらの情報を測定してもよい。これにより、管理システム1は、これら複数の種類の物理量を測定した情報に基づいて、生コンクリート7の品質を管理することができる。
【0041】
<変形例2>
本実施形態においては、生コンクリートに通信装置10を混入させて材料の状態を管理したが、他にも、モルタルまたはセメントなどの材料に混入させてこれらの材料の状態を管理してもよい。また、流動性のある状態から硬化させて部材を形成する材料であれば、エポキシ樹脂または樹脂モルタルなどの樹脂材料またはポリエチレンまたはナイロンなどのプラスチック材料に混入させてこれらの材料の状態を管理してもよい。また、チーズ、豆腐またはゼリーなどの流動する材料を硬化させて形状を持たせる食品の製造時の温度管理に用いてもよい。この場合、例えば、通信装置の比重がこの食品よりも大きくなるように形成して混入したときに流動する材料の底に沈ませて、材料が硬化して完成したのちに食品の底部から取り除くようにする。
【0042】
<変形例3>
本実施形態においては、作業者の初期操作により時間の計測を開始したが、この計測の開始を手動で操作してもよい。この場合、作業者が操作すると読取装置20から計測の開始を命令する信号が通信装置10へ送られて、通信装置10はこの信号を受信すると時間の計測を開始する。また、通信装置10の生コンクリート7への混入を検知して、この検知をしたときに計測を開始してもよい。この場合、通信装置10は、混入前に蓄積した温度履歴情報における混入をあらわす温度変化を検出することで生コンクリート7へ混入したことを検知する。
【0043】
図9は、本実施形態における各部の温度変化の一例を示すグラフである。このグラフの縦軸は温度Tempを示し、横軸は時刻tを示す。図9は、通信装置10が測定する温度MT、生コンクリート7の温度CT、および外気温ATの時間変化を示している。すなわち、この温度MTは、通信装置10に蓄積される温度履歴情報をグラフに表わしたものである。一般に、製造後数時間から数日間経過するまでのコンクリートは、水とセメントの水和反応により発熱している状態のため、図9の温度CTに示されるように、外気温ATに比べて高い温度となる。このため、通信装置10が測定する温度MTは、通信装置10と生コンクリート7が接触すると、通信装置10が生コンクリート7の温度CTを測定する。この結果、このグラフの時刻t1に示されるように、瞬間的に温度MTが上昇する。
【0044】
このように、通信装置10が蓄積する温度履歴情報は、通信装置10が混入されて生コンクリート7と接触する時刻において、外気温を測定しているときとは異なる変化を示す。通信装置10は、この温度変化の違いから、この接触の有無を検出し、これにより生コンクリート7へ混入された時刻を検知する。例えば、通信装置10は、まず温度履歴情報の各時刻における温度の値と、1回前の時刻に測定された温度の値の差(以下、温度の変動量という)を算出する。そして、通信装置10は、この温度の変動量があらかじめ決められた値以上となる時刻を検出する。この検出された時刻の直前には、瞬間的な温度変化、すなわち通信装置10と生コンクリート7との接触があったものとみなされる。このようにして、通信装置10は、温度履歴情報から通信装置10と生コンクリート7の接触を検出する。この場合、生コンクリート7の接触による温度の変化が、気温の変化による温度の変化と区別されるように、温度を測定する時間の間隔が決められているものとする。
【0045】
なお、この他にも、測定される温度の値があらかじめ決められた値以上となった場合を検出してもよい。または、各時刻における温度の変動量が、1回前の時刻における温度の変動量に対してあらかじめ決められた値以上異なる場合を検出してもよい。このように、温度履歴情報が、これら特定の条件を満たす場合に、通信装置10は、通信装置10と生コンクリート7との接触を検出し、自装置が生コンクリート7へ混入された時刻を検知する。これらの条件は、生コンクリート7の温度的な性質や、季節による気温の違いに応じて定めればよい。これにより、通信装置10は、生コンクリート7に実際に混入されたときに時間の計測を開始することができる。
【0046】
<変形例4>
本実施形態においては、表示画面241に表示する画面で視覚的に報知を行ったが、他にも聴覚、触覚で検知される方法で報知を行ってもよい。例えば、通信装置10から受信した情報の内容を、スピーカなどを備えた読取装置20から音声で出力してもよい。また、例えば、生コンクリート7の流動性に悪影響を与える可能性のある経過時間のしきい値を決めておき、このしきい値を超えると、読取装置20は、自装置に備えたブザーを鳴らしてもよい。または、読取装置20は、読取装置20に備えた振動器を振動させるなどの動作をさせてもよい。
<変形例5>
本実施例においては、経過時間の情報、温度履歴情報および材料情報を通信装置10から取得したが、これらの情報の一部を取得するように通信装置10を動作させてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…管理システム、3…製造設備、4…運搬車、5…型枠、6…原料、7…生コンクリート、10…通信装置、20…読取装置、21…外付けアンテナ、22…配線、30…ミキサ、31…ホッパ、40…ドラム、41…車両、50…型枠内空間、110…無線タグ、120…筐体、220…操作子、221…アンテナ、222…配線、241…表示画面、251…操作子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動する状態から硬化した状態に変化する材料の状態を管理する管理方法であって、
前記流動する材料に囲まれた状態で前記材料の特定の物理量を測定する測定手段、および前記測定手段によって測定された物理量に応じた情報を、他の装置に電磁誘導を用いた無線通信により送信する通信手段を具備する通信装置を、前記材料が前記流動する状態のときに当該材料に混入させる混入過程と、
前記流動する材料が流動する状態のときに前記通信手段によって送信される情報を、前記他の装置によって受信する受信過程と、
前記受信過程において受信された情報に応じて材料の状態を報知する報知過程と、
を備えることを特徴とする管理方法。
【請求項2】
前記通信装置は、前記測定手段によって測定された物理量の時間変化に応じた情報を記憶する物理量記憶手段をさらに具備し、
前記通信手段は、前記無線通信により、前記物理量記憶手段に記憶された情報を他の装置に送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の管理方法。
【請求項3】
前記通信装置は、前記物理量記憶手段に記憶される物理量の時間変化が特定の態様で変化したことを検出すると、当該特定の態様で変化したときから経過した時間を計測する計測手段をさらに具備し、
前記通信手段は、前記無線通信により、前記計測手段に計測された時間に応じた情報を他の装置に送信する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の管理方法。
【請求項4】
前記通信装置は、前記材料に応じた情報を記憶する材料情報記憶手段をさらに具備し、
前記通信手段は、前記無線通信により、前記材料情報記憶手段に記憶された情報を他の装置に送信する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の管理方法。
【請求項5】
前記通信装置は、前記材料情報記憶手段に情報が記憶されると、当該記憶されたときから経過した時間を計測する計測手段をさらに具備し、
前記通信手段は、前記無線通信により、前記計測手段に計測された時間に応じた情報を他の装置に送信する
ことを特徴とする請求項4に記載の管理方法。
【請求項6】
前記通信装置は、あらかじめ決められた条件を満たしたときから経過した時間を計測する計測手段をさらに具備し、
前記通信手段は、前記無線通信により、前記計測手段に計測された時間に応じた情報を他の装置に送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の管理方法。
【請求項7】
前記報知過程において報知された内容に応じた条件を用いて前記材料を硬化させる硬化過程と
をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の管理方法。
【請求項8】
前記通信手段によって送信される情報を前記流動する材料が硬化した後に受信する第2受信過程と、
前記第2受信過程によって受信された情報に応じて材料の状態を報知する第2報知過程と
をさらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の管理方法。
【請求項9】
前記通信装置は、前記材料を構成する成分の少なくとも一部の成分を有する材料に表面が覆われた筐体をさらに具備する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の管理方法。
【請求項10】
前記筐体は、球状である
ことを特徴とする請求項9に記載の管理方法。
【請求項11】
流動する状態から硬化した状態に変化する材料の状態を管理する管理方法であって、
あらかじめ決められた条件を満たしたときから経過した時間を計測する計測手段、および前記計測手段によって計測された時間に応じた情報を、他の装置に電磁誘導を用いた無線通信により送信する通信手段を具備する通信装置を、前記材料が前記流動する状態のときに当該材料に混入させる混入過程と、
前記流動する材料が流動する状態のときに前記通信手段によって送信される情報を、前記他の装置によって受信する受信過程と、
前記受信過程において受信された情報に応じて材料の状態を報知する報知過程と、
を備えることを特徴とする管理方法。
【請求項12】
流動する状態から硬化した状態に変化する材料の状態に応じた特定の物理量を測定する測定手段と、
前記測定手段によって測定された物理量に応じた情報を、他の装置に電磁誘導を用いた無線通信により送信する通信手段と
を具備し、
前記材料が前記流動する状態のときに、当該材料に混入して用いられる
ことを特徴とする通信装置。
【請求項13】
流動する状態から硬化した状態に変化する材料を前記流動する状態で運搬する運搬装置であって、
前記材料の状態に応じた特定の物理量を測定する測定手段、および前記測定手段によって測定された物理量に応じた情報を、電磁誘導を用いた無線通信により送信する通信手段を具備する通信装置が混入された前記材料を収容する収容部と、
前記収容部の外部に設けられ、前記通信手段によって送信された情報を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された情報に応じて材料の状態を報知する報知部と
を具備することを特徴とする運搬装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−63955(P2011−63955A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213769(P2009−213769)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】