説明

節付杭

【課題】節付杭の節部にひび割れが生じることを防止する。
【解決手段】他の部位に比べて径が大きな節部120、拡径部130を少なくとも一以上備えた節付杭110において、少なくとも節部120、拡径部130を構成するコンクリート50を繊維コンクリート51とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面より突出する節部を備えた節付杭に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の荷重を支持する基礎杭として、例えば図7に示すように、杭の鉛直方法中間部や底部に、他の部位に比べて径が大きい節部220や拡径部230を設けた節付杭210が用いられている。このような節付杭210によれば、建物の荷重により下方に向かって押し込み荷重が作用した場合には、杭の外周面に沿って作用する周面摩擦力、及び杭の底部が受ける地盤反力に加えて、節部220の下部に周囲の地盤より支圧力が作用するため、より大きな押込荷重に対して抵抗することができる。また、建物に転倒モーメントが作用し、上方に向かう引抜荷重が作用した場合には、杭の外周面に沿って作用する周面摩擦力に加えて、節部220及び拡径部230の上部に地盤より支圧力が作用するため、より大きな引抜荷重に対して抵抗することができる。
【0003】
本願出願人らは、このような節付杭210の引抜抵抗力を正確に評価する方法として、節部220及び拡径部230に作用する支圧力及びせん断力に基づき算出する方法を提案している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006―322256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような節付杭に引抜荷重や押込荷重が作用した場合は、上記のように節部220や拡径部230に支圧力が作用するため、これら節部220や拡径部230に鉛直方向にひび割れが生じ、構造性能が低下する虞がある。そこで、節部220や拡径部230を補強するために、これらの部位に鉄筋などを埋設することにより補強することも考えられるが、節付杭210を現場において構築する場合には、掘削孔内の節部にあたる部分に鉄筋を配筋することは非常に困難である。
【0005】
本発明は上記の問題に鑑みなされたものであって、節付杭の節部にひび割れが生じるのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の節付杭は、杭本体の表面より突出する節部を一以上備えた節付杭であって、 少なくとも前記節部を構成するコンクリートを、補強繊維が混入された繊維コンクリートとしたことを特徴とする。
【0007】
上記の節付杭において、前記杭本体は円柱状であってもよく、壁状であってもよい。
【0008】
また、前記繊維コンクリートは、鋼繊維コンクリートであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、節部を構成するコンクリートを繊維コンクリートとすることにより、コンクリート部材の引張抵抗力が向上するため、節部に支圧力が作用した場合であっても、節部にひび割れが生じることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の節付杭の一実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の節付杭10を示す斜視図である。同図に示すように、本実施形態の節付杭10は、円柱状に形成された杭軸部40と、長さ方向中間部に形成された節部20と、下端に形成された拡径部30と、を備えてなる。節部20は、杭軸部40に比べて大きな径を有する鉛直部22と、鉛直部の上下端より上下に向かって杭軸部40と径が等しくなるように傾斜する傾斜部21、22とからなる。また、拡径部20は、杭軸部30に比べて大きな径を有する鉛直部32と、上方に向かって杭軸部40と径が等しくなるように傾斜する傾斜部31とからなる。なお、本発明における節部には杭の中間部に設けられた節部20及び杭の下端に設けられた拡径部30が含まれる。
【0011】
図2は、節付杭10の鉛直断面図であり、鋼繊維コンクリートを用いた箇所については灰色で示している。同図に示すように、節付杭10はコンクリート50、51に鉄筋かご60が埋設されてなる。鉄筋かご60は、杭軸部40において十分なかぶり厚さを確保することができるような径を有する円柱状に組まれた鉄筋からなる。また、節部20及び拡径部30にあたる部分を構成するコンクリートには鋼繊維コンクリート51が用いられ、杭軸部40を構成するコンクリートには一般的なコンクリート50が用いられている。鋼繊維コンクリート51は、補強繊維として鋼繊維が混入されたコンクリートであり、これにより、通常のコンクリートに比べて引張耐力が向上されている。
【0012】
このような節付杭10は、以下のようにして構築することができる。図3は、節付杭10を構築する施工手順を説明するための図である。
まず、図3(A)に示すように、拡径機能を備えたバケット100を用いて、節付杭10の形状に合わせた掘削孔70を形成する。
次に、図3(B)に示すように、上記形成した形成した掘削孔60内に鉄筋かご61を挿入する。
【0013】
そして、図3(C)に示すように、コンクリートを打設する。コンクリートは下方より上方に向かって打設する。この際、拡径部30及び節部20にあたる深さでは、打設するコンクリートを鋼繊維コンクリート51とし、杭軸部40にあたる深さでは打設するコンクリートを通常のコンクリート51とする。このようにして上記図2に示すような杭10を構築することができる。
【0014】
図4は、引抜荷重が作用した際の節付杭10及び節付杭10周辺の地盤に作用する応力を示す図である。同図に示すように、節付杭10に引張荷重が作用した場合には、節付杭10の表面全体に亘って、表面に対して平行に下方に向かって周面摩擦力fが作用するとともに、節部20及び拡径部30の上方の傾斜部21、31には表面に対して垂直方向に支圧力fが作用する。このように傾斜部21、31に作用する支圧力f及び周面摩擦力fの鉛直方向成分が、節部20及び拡径部30と杭軸部40の境界より、図中破線で示す面に沿った下向きのせん断力fとして作用する(通常支圧力fの鉛直方向成分が支配的である)。これに対して、本実施形態の節付杭10は、上記のように、節部20及び拡径部30を構成するコンクリートを鋼繊維コンクリート51としたため、鋼繊維コンクリート51の引張耐力により、せん断力fに抵抗することができ、節部20及び拡径部30にひび割れが発生するのを防止することができる。
【0015】
また、図5は、押込荷重が作用した際の節付杭10及び節付杭10周辺の地盤に作用する応力を示す図である。同図に示すように、節付杭10に押込荷重が作用した場合には、節付杭10の表面全体に亘って、表面に対して平行に上方に向かって周面摩擦力fが作用し、拡径部30の下方に地盤反力fが作用し、節部30の下方の傾斜面23には斜め上方に向かって支圧力fが作用する。このように傾斜部21に作用する支圧力f及び周面摩擦力fの鉛直方向成分が、節部20と杭軸部40の境界より、図中破線で示す面に沿った上向きのせん断力fとして作用する(通常支圧力fの鉛直方向成分が支配的である)。これに対して、引張荷重が作用した場合と同様に、節部20を構成するコンクリート50を鋼繊維コンクリート51としたことにより、鋼繊維コンクリート51の引張耐力によりせん断力fに抵抗することができ、節部20及び拡径部30にひび割れが発生するのを防止することができる。
【0016】
以上説明したように、本実施形態の節付杭10によれば、節部20及び拡径部30を構成するコンクリート50を鋼繊維コンクリート51とすることにより、引張耐力が向上されるため、節付杭10に引抜荷重は押込荷重が作用した際に、節部20や拡径部30に発生するせん断力に抵抗することができる。これにより、節部20や拡径部30にひび割れ等が生じることを防止できる。
【0017】
なお、本実施形態では、節部20及び拡径部30を構成するコンクリート50に鋼繊維コンクリート51を用いることとしたが、これに限らず、炭素繊維コンクリートなど、繊維を混入することにより通常のコンクリートに比べて引張耐力が向上されているコンクリートであれば用いることができる。
【0018】
また、本実施形態では、節付杭10の節部20及び拡径部30を構成するコンクリート50のみを鋼繊維コンクリート51とした場合について説明したが、これに限らず、節付杭10を構成するコンクリート50全体を鋼繊維コンクリート51としてもよく、要するに、少なくとも節部20及び拡径部30を構成するコンクリート50が鋼繊維コンクリート51であればよい。
【0019】
また、本実施形態では、杭軸部が円柱状の節付杭に本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、図6に示すような、壁状に形成された壁部101と、壁部101の表面より突出するように節部120及び拡径部130が設けられた節付杭110に対しても本発明を適用することができる。このような場合においても、少なくとも節部120及び拡径部130にあたる部分のコンクリートを鋼繊維コンクリートとすればよい。
【0020】
また、本実施形態では、節部20、120及び拡径部30、130を備えた節付杭10、110に本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、節部20、120及び拡径部30、130の何れかのみを備えた節付杭や、複数の節部20、120を備えた節付杭に対しても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態の節付杭を示す斜視図である。
【図2】節付杭の鉛直断面図である。
【図3】節付杭10を構築する施工手順を説明するための図である。
【図4】引抜荷重が作用した際の節付杭及び節付杭周辺の地盤に作用する応力を示す図である。
【図5】押込荷重が作用した際の節付杭及び節付杭周辺の地盤に作用する応力を示す図である。
【図6】壁状に形成された壁部と、壁部の表面より突出するように節部及び拡径部が設けられた節付杭を示す図である。
【図7】節付杭を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
10、110 節付杭
20、120 節部
21 傾斜部
22 鉛直部
23 傾斜部
30、130 拡径部
31 傾斜部
32 鉛直部
40 杭軸部
50 通常のコンクリート
51 鋼繊維コンクリート
60 鉄筋かご
70 掘削孔
100 バケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭本体の表面より突出する節部を一以上備えた節付杭であって、
少なくとも前記節部を構成するコンクリートを、補強繊維が混入された繊維コンクリートとしたことを特徴とする節付杭
【請求項2】
前記杭本体は円柱状であることを特徴とする請求項1記載の節付杭。
【請求項3】
前記杭本体は壁状であることを特徴とする請求項1記載の節付杭。
【請求項4】
前記繊維コンクリートは、鋼繊維コンクリートであることを特徴とする請求項1から3のうち何れかに記載の節付杭。

【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−114696(P2009−114696A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287556(P2007−287556)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】