説明

簡易スロープ

【課題】折り畳み可能なスロープの一方に荷重が加わっても一体的に荷重を支えるように作用し、軽量化を図るのに有効であり、さらには折り畳んだスロープ同士の干渉音の発生を抑えた簡易スロープの提供を目的とする。
【解決手段】通行方向に沿った回動軸により折り畳み可能な簡易スロープ1であって、第1パネル体11は、回動軸側の側縁部に固定した第1ヒンジレール12を有し、第2パネル体21は、回動軸側の側縁部に固定した第2ヒンジレール22を有し、第1及び第2ヒンジレールは前記パネル体との固定部22aと、当該固定部から延在した通行方向の筒部22bをそれぞれ有し、且つ当該両方の筒部を交互に部分的に切り欠くことで、直線状に交互嵌合配置し、前記交互嵌合配置した各筒部にシャフト部材30を挿入し回動連結したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段差がある通路の上段部と下段部の間、あるいは車両の昇降口等と地上との間に架け渡して使用する簡易スロープに関し、特に、スロープとして使用しない時には折り畳んで車両に搭載したり、通路の近くに収納しておくことができる簡易スロープに係る。
【背景技術】
【0002】
折り畳んで携帯可能とし、使用時に展開使用する簡易スロープとしては特許文献1のようなものが公知である。
同公報に記載の携帯スロープ(簡易スロープ)は、一対のスロープ板の突き合せ部にヒンジ部材を設け、各スロープ板の側端面に沿って相互に離間した複数のストッパ部材を設けたものである。
その荷重伝播構造を図10にて説明する。
一対のパネル体101,102のうち、例えば一方のパネル体101に荷重fが加わるとストッパ部材104とパネル体101との接触面aを経由してストッパ部材104と他方のパネル体102との固定部材104aの締結部bに伝播する。
この際に接触面aと締結部bとの間に所定の距離が必然的に生じ、特に蝶番103の回動部分が必要なことから一対のパネル体101,102との間に隙間dが必要なこともあり、ストッパ部材104に締結部bを中心として下方向の回動力が生じ、これによりパネル体102にはモーメント力Mが生じることになる。
よって、ストッパ部材には剥離方向の大きい力が加わり、大きい締結強度や材料剛性が必要となる。
また、パネル体102にはモーメント力Mによる浮き上がり現象が生じやすい問題を有する。
【0003】
また、一対のスロープ体をヒンジ部材で連結し、折り畳んだ場合にヒンジ部の蝶番とピンとの間にラジアル方向とスラスト方向のガタが生じやすく、このような状態で車両等に搭載すると、走行時や運搬時等の振動にて一対の重ね合せたパネル体間に干渉異音が発生しやすい問題もあった。
なお、特許文献2には軸杆に湾曲部と形成し、連結筒に圧接係止させた構造を開示するが、スラスト方向のガタを抑えることができないばかりか、湾曲の大きさを適切に設定するのが難しく、開閉に大きな力が必要となる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−342016号公報
【特許文献2】特開2001−193337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、折り畳み可能なスロープの一方に荷重が加わっても一体的に荷重を支えるように作用し、軽量化を図るのに有効であり、さらには折り畳んだスロープ同士の干渉音の発生を抑えた簡易スロープの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る簡易スロープは、通行方向に沿った回動軸により折り畳み可能な簡易スロープであって、第1パネル体は、回動軸側の側縁部に固定した第1ヒンジレールを有し、第2パネル体は、回動軸側の側縁部に固定した第2ヒンジレールを有し、第1及び第2ヒンジレールは前記パネル体との固定部と、当該固定部から延在した通行方向の筒部をそれぞれ有し、且つ当該両方の筒部を交互に部分的に切り欠くことで、直線状に交互嵌合配置し、前記交互嵌合配置した各筒部にシャフト部材を挿入し回動連結したことを特徴とする。
【0007】
ここで簡易スロープとは、使用しないときには複数のパネル体を折り畳むことが可能で、折り畳んだ状態で車両等に搭載し持ち運んだり、店舗や建築物等の出入口近くに収納しておくことができ、使用時には複数のパネル体を面一状に展開し、車両と地上、通路の段差部等に架け渡し、車椅子の走行や足の不自由な人が安全に歩行しやすいようにすることができるものをいう。
また、通路途中に溝や不安全箇所があり、その間の仮舗装手段としても用いることができる。
【0008】
本発明にて第1及び第2パネル体と表現したのは、複数のパネル体に分割したことを意味し、3つ以上に分割した場合も包含する。
【0009】
また、第1及び第2ヒンジレールの両方の筒部を交互に部分的に切り欠くとは、パネル体の側縁部との固定部を概ねそのまま残し、筒部のみを切り欠くことで残った一方の筒部が他方の切り欠き部に入り込むように配置したことをいい、切り欠き部の通行方向寸法は必ずしも全部が同一である必要はない。
【0010】
本発明に係る簡易スロープは通行方向に沿った回動軸により複数パネル体が折り畳み可能になっているものであり、例えば車両の床面と地上等の間に架け渡し展開使用する場合に各パネル体の一端側が車両の床面面等にそれぞれ載置され、他端側が地上等にそれぞれ接地することになる。
また、本発明においてヒンジレールとパネル体との固定方法は、リベット止め、ビス止め、溶接等各種方法が採用でき、また固定部を上片部と下片部との断面コ字状にし、パネル体の端部を上下方向から挟み込むように配置し、固定するとより強固に固定できる。
【0011】
本発明に係る簡易スロープにあって、第1及び第2パネル体の左右方向外側の側縁部は、第1及び第2フランジレールをそれぞれ有し、第1及び第2フランジレールは、展開使用時に上方に突出したフランジ部をそれぞれ有し、当該両方のフランジレールは、上面が内側になるように折り畳み収納した際に一方のフランジ部の内側に他方のフランジ部が位置するものであってもよい。
ここで、第1及び第2パネル体を概ね面一になるように展開した際に左右方向の各外側に位置するように配置した第1及び第2フランジレールに有するフランジ部は車走行時の脱輪防止として作用する。
従って、上面(通行面)が内側になるように両方のパネル体を折り畳むと、フランジ部同士が対向するようになるが、一方のフランジ部の内側に他方のフランジ部が位置するように左右幅寸法を設定するとフランジ部同士の干渉を防ぎ、折り畳み方向の厚み寸法を小さく抑えることができる。
ここで、左右方向とは通行方向とは直交する方向をいい、ヒンジレールに対してフランジレール側を外側と表現する。
なお、内側に位置するフランジ部の上方突出寸法を外側に位置するフランジ部の上方突出寸法より小さくすると、折り畳み時の厚み寸法が小さくなり、ここで、外側に位置するフランジ部を有するフランジレールに、内側に位置するフランジ部の先端部が入り込む通行方向の凹部を形成するとさらに厚み寸法が小さくなる。
【0012】
本発明にあって、折り畳み収納時に対向する第1及び第2ヒンジレールの重なり部に反力が生じる弾性部材を配設してもよい。
第1パネル体と第2パネル体を折り畳んで重ね合せる場合に、第1及び第2ヒンジレールの重なり部内側に弾性部材を設けると、回動中心となるシャフト部材から、弾性部材までの距離よりもそのフランジレールまでの距離の方がパネル体の幅寸法だけ大きいので、てこの原理により、フランジレール側の小さな折り畳み力にて大きな反発力が対向するフランジレール間に生じる。
これにより、筒部とシャフト部材との間のラジアル方向のみならず、スラスト方向のガタ振動を抑えることができるので、車両に収納搭載持に車両の振動によりパネル体間の干渉異音が生じたり、持ち運び時にパネル体間にガタや干渉異音が発生するのを防止する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る簡易スロープにあっては、第1パネル体と第2パネル体との側縁部をそれぞれ第1及び第2ヒンジレールの固定部に固定しつつ、交互に嵌合配置した筒部にシャフト部材を挿入することで回動自在に連結したので、一方のパネル体に荷重が加わり、この一方のヒンジレールに伝播した力は交互に嵌合配置された筒部及びシャフト部材を介して他方のパネル体に伝わる。
従って、一方のヒンジレールに加わった押し下げ方向の力は回動中心にシャフト部材が有するので、そのまま他方のヒンジレールを押し下げる方向の力になる。
これにより、他方のパネル体に従来のような浮き上がり方向のモーメント力が生じるのを小さく抑え、スロープ全体で荷重を受けることになり、個々のパネル体の剛性を小さく設定できるので全体としてコンパクト化、軽量化を図ることができる。
また、ヒンジレールの固定部を断面コ字状に形成し、パネル体の側縁部を上下からくわえ込むように固定するとさらに荷重の均一伝播性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る簡易スロープの使用時の外観斜視図を示す。
【図2】ヒンジレール部の要部拡大図を示す。
【図3】簡易スロープの接地側から見た正面図を示す。
【図4】簡易スロープの側面図を示す。
【図5】パネル体を構成する部品説明図を示す。
【図6】フランジレール及びヒンジレールとパネルとの固定部を示す。
【図7】パネル体を折り畳んだ状態図を示す。
【図8】ヒンジレール部の要部拡大図を示す。
【図9】簡易スロープをバンドで固定した例を示す。
【図10】従来のヒンジ構造例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る簡易スロープの構造例を以下図面に基づいて説明する。
図1は、車両のサイドドアやリアドアを開けて上段となる床面2と下段となる地上3との段差部に架け渡した使用状態を示す。
簡易スロープ1は、第1パネル体11と第2パネル体21とが通行方向に沿ったシャフト部材30を回動軸にして上面(通行面)を内側にして折り畳み可能になっている。
【0016】
第1パネル体11と第2パネル体21との回動中心付近の要部拡大図を図2(a)に示し、断面図を図8(a)に示す。
第1パネル体11の回動軸側の側縁部が第1ヒンジレール12の固定部12aと固定連結され、この固定部12aから第2パネル体21側であって、斜め上方(上面側)に延在させた筒部12bを有する。
第2パネル体21の回動軸側の側縁部は、第2ヒンジレール22の固定部22aと固定連結され、この固定部22aから第1パネル体11側であって斜め上方に延在させた筒部22bを有する。
上記、筒部12bと筒部22bとは、図2(a)に示すように交互に部分的に切り欠かれ、一方の筒部の切り欠き部の間に他方の残された筒部が交互に入り込むように直線状に嵌合配置し、これらの筒部12b,22bの内側にシャフト部材30を挿入し、相互に回動自在に軸連結した構造になっている。
本実施例では、第1ヒンジレール12と第2ヒンジレール22とを一本のシャフト部材30にて回動連結した例になっているが、簡易スロープの全長が長い場合には、通行方向に沿って複数に分割してシャフト連結してもよい。
【0017】
本実施例のパネル体とヒンジレールとの固定連結構造は、図8(a)に示すように第1ヒンジレール12の固定部12aは、上片部112aと下片部212aとを有する断面コ字形状に形成し、この上片部112aと下片部212aとの間に第1パネル体11の側縁部が挟み込まれるように配置し、リベット等の固定部材15にて固定された例になっている。
第2ヒンジレール22も第1ヒンジレール12と同様に、上片部122aと下辺部222aとの間に第2パネル体21の側縁部が挟み込まれ、リベット等の固定部材25により固定される。
これにより、例えば、一方の第2パネル体21に荷重Fが加わると、パネル体21の側縁部が第2ヒンジレール22の固定部22aのコ字形状内側にくい込まれるように連結されていることもあって、第2ヒンジレール22をそのまま押し下げ方向のFとして伝播する。
この際にシャフト部材30は回動中心に位置し、交互の筒部12b,22bがシャフト連結されているので、概ねそのまま第1ヒンジレール12を介して第1パネル体11に押し下げ方向の力Fとして伝播される。
よって、荷重Fを左右のパネル体にて支えることになる。
【0018】
第1及び第2パネル体11,21の左右方向外側の側縁部にはそれぞれ、第1フランジレール13と第2フランジレール23とが固定されている。
図3に示すように第1フランジレール13は、第1パネル体11との固定部13aと、この固定部13aから上方にL字状に突出したフランジ部13bを有し、第2フランジレール23は、第2パネル体21との固定部23aとこの固定部23aから上方にL字状に突出したフランジ部23bを有する。
本実施例では、固定部13a,23bとパネル体の固定方法としてリベット15,25を用いた例になっている。
また、本実施例では図7に示すようにフランジ部23bの突出高さがフランジ部13bの突出高さよりも低く、且つ、フランジ部23bの先端部がフランジ部13bの内側に設けた凹部13cに入り込むようになっている。
これにより、折り畳んだ際に厚み寸法がさらに小さくなる。
【0019】
本実施例では、上記ヒンジレール及びフランジレールともにアルミ押出材を用いて製作され、軽量化が図られている。
また、パネル体も以下説明するようにアルミ押出材を面一状態に嵌合連結した構造例になっている。
図4及び図5に示すように第1パネル体11は、スロープの上段側に位置する上端パネル111と、下段側に位置する下端パネル311との間に複数の中間パネル211とを相互に面一状に嵌合連結してある。
本実施例では、上記各パネルが中空断面になっているが、必ずしも中空断面でなくてもよい。
上端パネル111は、車両の床面等上段側に載置される載置面部111aと中間パネル211との嵌合凹部111cを有し、その間に補強リブ部111bを有する。
中間パネル211は一方に嵌合凸部211aと、他方に嵌合凹部211cを有し、その間に補強リブ211bを有する。
下端パネル311は、地上との接地面311cと嵌合凸部311aを有する。
なお、嵌合凸部と凹部との組み合せは上記とは逆に設けてもよい。
図6(a)は第2フランジレール23と中間パネル211との連結部断面図を示し、図6(b)は持ち手部14と第1フランジレールとの連結部断面図を示す。
図6(c)は下端パネル付近のヒンジレール平面図を示す。
図6(d)は第1ヒンジレール12の筒部12bを切り欠いた部分の断面図を示す。
【0020】
簡易スロープ1は、上面側を内側にして2つ折りに折り畳めるようになっていて、図1に示すように左右のフランジレール13,23にバンド状の持ち手部14,24を取り付け、この持ち手部14,24との間にマジックテープ(登録商標)等の着脱自在部材を設けて折り畳んだ状態で出入口の近くに立て掛け収納することもでき、図9に示すように車両に設けた搭載ブラケット51,52にバンド50を用いて搭載することも可能である。
車両等に搭載する場合に振動によりパネル体同士の干渉異音が生じないように、図2(b)及び図8(b)に示すようにヒンジレール12,22の重ね合せ部に弾性材40を取り付けるとよい。
弾性材40は、図8(b)に示すように一対のパネル体を折り畳んだ際に2つのヒンジレール12,22間に反発力が生じ、シャフト部材30と筒部12b,22bとのガタを抑えるように作用する。
この場合にシャフト部材30からフランジ部までの距離がこのシャフト部材30から弾性材40までの距離よりも数十倍大きいから、てこの原理により、パネル体の開閉に大きな反力とはならないが、軸部のガタを抑えるのに充分な反力を得ることができる。
【符号の説明】
【0021】
1 簡易スロープ
11 第1パネル体
12 第1ヒンジレール
13 第1フランジレール
13c 凹部
15 固定部材
21 第2パネル体
22 第2ヒンジレール
22a 固定部
22b 筒部
23 第2フランジレール
24 持ち手部
30 シャフト部材
50 バンド
111 上端パネル
112a 上片部
211 中間パネル
212a 下辺部
311 下端パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通行方向に沿った回動軸により折り畳み可能な簡易スロープであって、
第1パネル体は、回動軸側の側縁部に固定した第1ヒンジレールを有し、
第2パネル体は、回動軸側の側縁部に固定した第2ヒンジレールを有し、
第1及び第2ヒンジレールは前記パネル体との固定部と、当該固定部から延在した通行方向の筒部をそれぞれ有し、且つ当該両方の筒部を交互に部分的に切り欠くことで、直線状に交互嵌合配置し、前記交互嵌合配置した各筒部にシャフト部材を挿入し回動連結したことを特徴とする簡易スロープ。
【請求項2】
第1及び第2パネル体の左右方向外側の側縁部は、第1及び第2フランジレールをそれぞれ有し、
第1及び第2フランジレールは、展開使用時に上方に突出したフランジ部をそれぞれ有し、当該両方のフランジレールは、上面が内側になるように折り畳み収納した際に一方のフランジ部の内側に他方のフランジ部が位置するものであることを特徴とする請求項1記載の簡易スロープ。
【請求項3】
折り畳み収納時に対向する第1及び第2ヒンジレールの重なり部に反力が生じる弾性部材を配設したことを特徴とする請求項1又は2記載の簡易スロープ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−110371(P2011−110371A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272211(P2009−272211)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000100791)アイシン軽金属株式会社 (137)
【Fターム(参考)】