簡易基礎及びそれを用いた基礎工事方法
【課題】コンクリートを用いないで容易に施工が可能な簡易基礎を提供することである。また、長期間の使用にも耐え得る低コストな簡易基礎を提供することである。
【解決手段】簡易基礎1は、金属製である。簡易基礎1は、土壌中に傾斜した状態で打ち込まれる第1の打ち込み杭10a,10b,10c,10dと、第1の打ち込み杭10a,10b,10c,10dが挿入され、被支持体を上部で取り付けるための支持部2とを備える。支持部2は、中空であり、被支持体を取り付ける部分から打ち込み杭10が挿入される部分に向けて椀状となっている。さらに、支持部2は、第1の打ち込み杭10a,10b,10c,10dを案内するための案内部3a,3b,3c,3dを含む。
【解決手段】簡易基礎1は、金属製である。簡易基礎1は、土壌中に傾斜した状態で打ち込まれる第1の打ち込み杭10a,10b,10c,10dと、第1の打ち込み杭10a,10b,10c,10dが挿入され、被支持体を上部で取り付けるための支持部2とを備える。支持部2は、中空であり、被支持体を取り付ける部分から打ち込み杭10が挿入される部分に向けて椀状となっている。さらに、支持部2は、第1の打ち込み杭10a,10b,10c,10dを案内するための案内部3a,3b,3c,3dを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の基礎に関し、より特定的には、杭を用いた簡易基礎及びそれを用いた基礎工事方法に関する。
【背景技術】
【0002】
緑地帯や、湿地帯、沼地帯、河川敷、里山などに、橋や歩道、階段、柵、ベンチ、テーブル、遊具などの建造物を構築して、公園などが構築されることがある。これらの建造物を支持するためには、基礎が必要である。通常の家屋などであれば、地盤を掘削して、捨てコンクリートを打ち、当該捨てコンクリートの上に組まれた枠体に生コンクリートを流し込んで、基礎を形成する手法がとられる。しかし、上記のような緑地帯などでは、生コンクリートの搬入車の進入が困難であるし、また、進入できたとしても自然環境を破壊することとなり好ましくない。さらに、コンクリートで形成された基礎は、建造物が不要になった際、除去することが極めて困難である。したがって、コンクリートで形成された基礎がそのまま自然環境に残されることとなり、環境破壊へと繋がる。
【0003】
そこで、簡易的な基礎が様々提案されている。特許文献1において、円柱又は四角柱、三角柱のフォームに、四本のガイドスリーブが差し込まれて、当該フォームにコンクリートが注入されることによって形成された簡易基礎が提案されている(特許文献1のFIG.4等参照)。当該ガイドスリーブを通るようにして、杭が地盤に打ち込まれることによって、当該フォーム及び杭が、その上に固定される建造物の基礎となる。
【0004】
特許文献2において、断面コの字状に形成されたブラケットが柱に固定され、当該ブラケットに設けられたホールに杭が差し込まれ、当該杭が地盤に打ち込まれることによって、基礎が構築される技術が開示されている(特許文献2のFIG.1等参照)。特許文献2において、断面H状のブラケットも提案されている(特許文献2のFIG.3等参照)。また、特許文献2において、四角柱の構造物に対して杭を打ち込む簡易基礎も提案されている(特許文献2のFIG.8及び9等参照)。
【0005】
特許文献3において、コンクリートで固められた基礎に杭を差し込み、当該杭を地盤に打ち込む簡易基礎が提案されている。特許文献3において、プラスチックで形成された上下のフォームに、テーパー状のダボを挿入しておいて、コンクリートを注入して、杭を挿入するための穴が形成された基礎が製造される(特許文献3のFIG.2等参照)。コンクリートが固まった後、上下のフォーム及びダボが取り外され、当該ダボによってできた穴に少し細めの杭が挿入され、地盤に打ち込まれる(特許文献3のFIG.3等参照)。
【0006】
特許文献4には、コンクリート壁の基礎となる技術が開示されている。特許文献4において、対向する2枚の足場部材にスリーブが通されており、当該2枚の足場部材の間に、コンクリート壁が形成される(特許文献4のFIG.1及び3等参照)。当該スリーブに杭が挿入されて、当該杭が地盤に打ち込まれる(特許文献4のFIG.3等参照)。
【0007】
特許文献5には、温室用の簡易基礎が開示されている。特許文献5における簡易基礎は、ブロック状のコンクリートから形成されたヘッド部と、当該ヘッド部に挿入される2本以上の杭とを含む。当該杭が地盤に打ち込まれることによって、当該簡易基礎が温室の基礎となる。
【0008】
特許文献6には、上フランジと下フランジとを有する胴部に、スリーブが取り付けられ、当該スリーブに杭が差し込まれる構造の簡易基礎が提案されている(特許文献6の図1等参照)。また、複数の上フランジ及び下フランジを連結するための連結部材によって、耐力を強化する簡易基礎も開示されている(特許文献6の図3、図4及び図5)。耐力が強化された簡易基礎において、アンカーボルトによる固定方法も開示されている(特許文献6の図6参照)
【0009】
図18は、特許文献7に開示されている簡易基礎を示す斜視図である。図18に示すように、特許文献7には、上部固定板900、下部固定板901、及び上部固定板900と下部固定板901とに連結された複数のスリーブ902を含む簡易基礎が提案されている(特許文献7の図3等参照)。スリーブ902に杭903が差し込まれ、杭903が地盤に打ち込まれることによって、地盤への固定が実現される。
【特許文献1】米国特許第5039256号明細書
【特許文献2】米国特許第5395184号明細書
【特許文献3】米国特許第6910832号明細書
【特許文献4】米国特許第7076925号明細書
【特許文献5】特開2002−30679号公報
【特許文献6】特開2005−299214号公報
【特許文献7】特開2005−299215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に係る簡易基礎は、施工現場に運搬されるまでに、フォームにコンクリートが注入され、固められていなければならない。よって、コンクリートで固められた重量物を、施工現場まで運搬しなければならない。このように簡易基礎自体が重量物であるため、施工に不便であるだけでなく、施工現場までの運搬が困難である。
【0011】
特許文献2に係る簡易基礎は、コンクリートを用いていない。しかし、ブラケット自体は、柱の側面にボルトなどで固定されることとなる。建造物の垂直荷重に対して、側面をボルトで固定するだけでは、強度面で不安が残る。また、橋や歩道などは、木材でできている場合が多いので、側面でのボルト固定だけでは、木材が劣化したときに基礎としての機能が果たせなくなる。特許文献2のFIG.8には、水平に置かれた四角柱状の基礎が開示されているが、輸送に不便である。また、特許文献2のFIG.9には、垂直に立てられた四角柱の基礎が開示されているが、輸送に不便である。また、特許文献2のFIG.9には、建造物の固定方法については、具体的に開示されていない。
【0012】
特許文献3に係る簡易基礎についても、特許文献1に係る簡易基礎と同様の問題を有する。
【0013】
特許文献4に係る簡易基礎は、コンクリート壁にのみ利用可能であり、橋や歩道等のあらゆる建造物の基礎に利用することはできない。
【0014】
特許文献5に係る簡易基礎も、ヘッド部はコンクリートで構成されているので、特許文献1に係る簡易基礎と同様の問題を有する。
【0015】
特許文献6に係る簡易基礎においては、コンクリートを用いていないものの、上下フランジを連結するための連結部材が必要となり、構造が複雑となる。特許文献6には、上下フランジと連結部材とをボルトの他、溶接によって固定することも開示されているが、構造が複雑であることに変わりなく、製造コストの面で問題がある。
【0016】
特許文献7に係る簡易基礎においては、カバー904に建造物の荷重がかかることとなる。カバー904にかかった荷重は、上部固定板900にかかることとなる。上部固定板900にかかった荷重は、水平方向とスリーブ902の方向とに分解される。上部固定板900は、直線上の板部材であるので、水平方向へ分解された力は、スリーブ902の方向に分解された力に比べて小さい。したがって、多くの荷重は、スリーブ902にかかることとなる。そのため、上部固定板900とスリーブ902との接合部分905や、下部固定板901とスリーブ902との接合部分906に、多くの荷重がかかる可能性がある。よって、長年の使用によって、接合部分905及び906が破断する可能性がある。
【0017】
それゆえ、本発明の目的は、できる限り、コンクリートを用いない容易に施工が可能な簡易基礎を提供することである。また、本発明の他の目的は、長期間の使用にも耐え得る低コストな簡易基礎を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明は、下記のような特徴を有する。本発明は、被支持体を支持するための金属製の簡易基礎であって、土壌中に傾斜した状態で打ち込まれる1以上の打ち込み杭と、打ち込み杭が挿入され、被支持体を上部で取り付けるための支持部とを備え、支持部は、中空であり、被支持体を取り付ける部分から打ち込み杭が挿入される部分に向けて椀状となっている。
【0019】
本発明では、被支持体を取り付ける部分から打ち込み杭が挿入される部分に向けて椀状構造とすることによって、被支持体の荷重を分散させることができ、支持部の強度を向上させることができる。よって、コンクリートを用いない簡易基礎が提供されることとなる。支持体を介して杭が打ち込まれることによって、本発明の簡易基礎は、打ち込み杭の摩擦力によって、杭基礎として機能する。また、支持部自体の支持力も存在するので、本発明の簡易基礎は、補助的には、直接基礎としての機能も有する。打ち込み杭が支持地盤にまで達していれば、支持地盤による抗力も、杭基礎の実現に作用する。緑地帯や、湿地帯、沼地帯、河川敷、里山などに、橋や歩道、階段、柵、ベンチ、テーブル、遊具などの被支持体を構築する場合、地盤が軟弱であることが多い。本発明の簡易基礎を用いれば、このような軟弱地盤であっても、被支持体を支持することが可能となる。このような軟弱地盤での施工は困難な場合が多いので、簡便に施工することが要求される。本発明の簡易基礎は、コンクリートを用いないので、軽量である。よって、施工現場までの運搬が容易であったり、施工現場に生コン車を進入させたりする必要がない。そのため、容易な施工が実現されることとなる。また、本発明の簡易基礎は、金属製であるので、被支持体が不要になった場合、回収してリサイクルすることが可能となり、環境破壊防止に有用である。さらに、本発明の簡易基礎は、全体が金属製であり、コンクリートが使用されないので、低コストに提供されることとなる。
【0020】
好ましくは、支持部は、打ち込み杭を案内するための筒状の1以上の案内部を含み、各案内部は、打ち込み杭の傾斜角度に応じて傾斜して配置されており、少なくとも椀状の部分で接合されているとよい。
【0021】
このように、筒状の案内部を設けることで、打ち込み杭を適切な傾斜角度で土壌中に打ち込むことができ、施工が容易なものとなる。さらに、本発明では、案内部と支持部との接合部分は、椀状の部分に位置している。椀状の部分では、被支持体の荷重の大半は、椀状の接線方向に分解される。そのため、案内部の進行方向に分解される荷重は、接線方向に分解される荷重に比べ小さくなる。よって、案内部に直接加わる荷重をできる限り小さくすることができる。これにより、案内部と支持部との接合部分の破断を防止することができ、支持部の強度を向上させることが可能となり、長期間の使用にも耐え得る簡易基礎が提供されることとなる。
【0022】
好ましくは、支持部は、中空の略球体状又は略楕円球体状であるとよい。
【0023】
このように、支持部を中空の略球体状又は略楕円球体状にすることによって、被支持体を取り付ける部分から打ち込み杭が挿入される部分に向けて椀状となる支持部を提供することができる。略球体状又は略楕円球体状の中空の支持部は、製造も容易であり、さらに、低コストに簡易基礎を提供することができる。また、略球体状又は略楕円球体状の支持部は、それ自体、強固な形状であるので、長期間の使用に耐え得る簡易基礎が提供されることとなる。
【0024】
好ましくは、支持部は、内部が視認できるように上部に設けられた穴部と、下方から穴部に向かって挿入されるアンカーボルトと、アンカーボルトを貫通させると共に、穴部を閉じるための蓋部とを含む。
【0025】
打ち込む杭を挿入する際、穴部から視認することによって、打ち込み杭を適切な位置に打ち込むことができる。また、アンカーボルトを挿入する際、穴部から視認することによって、アンカーボルトの位置を確認することができる。よって、施工を容易に行うことができる。
【0026】
好ましくは、蓋部の外径の少なくとも一部は、穴部の内径の少なくとも一部よりも小さい。
【0027】
これにより、穴部と蓋部との間に空隙ができることとなるので、蓋部を動かすことができる。よって、被支持体を取る付ける際に、アンカーボルトの位置を微調整することができ、施工性が向上する。
【0028】
好ましくは、支持部は、アンカーボルトに取り付けられる被支持体を固定するための取り付け金具をさらに含み、取り付け金具は、アンカーボルトに取り付けるナットを締めるための空隙部を有する。
【0029】
これによって、取り付け金具に、アンカーボルト及び被支持体に取り付けることができる。
【0030】
好ましくは、支持部は、打ち込み杭を案内するための筒状の1以上の案内部をさらに含み、各案内部は、打ち込み杭の傾斜角度に応じて傾斜して配置されており、略球体状又は略楕円球体状の上半分及び/又は下半分で接合されている。
【0031】
このように、筒状の案内部を設けることで、打ち込み杭を適切な傾斜角度で土壌中に打ち込むことができ、施工が容易なものとなる。さらに、本発明では、案内部と支持部との接合部分は、略球体状又は略楕円球体状の上半分及び/又は下半分に位置している。すなわち、当該接合部分は、支持部の椀状部分に位置することとなる。椀状の部分では、被支持体の荷重の大半は、椀状の接線方向に分解される。そのため、案内部の進行方向に分解される荷重は、接線方向に分解される荷重に比べ小さくなる。よって、案内部に直接加わる荷重をできる限り小さくすることができる。これにより、案内部と支持部との接合部分の破断を防止することができ、支持部の強度を向上させることが可能となり、長期間の使用にも耐え得る簡易基礎が提供されることとなる。
【0032】
好ましくは、案内部は、隣り合う案内部同士が均等な角度で配置されている。
【0033】
これにより、被支持体の加重を複数の打ち込み杭に均等に分散させることができる。よって、安定的に、被支持体を支持することができる簡易基礎が提供されることとなる。
【0034】
好ましくは、案内部の傾斜角度は、水平面に対して、40度〜60度であるとよい。
【0035】
これにより、鉛直支持力及び水平支持力を適切なものとすることができ、被支持体の沈下や水平移動を防止することができる。
【0036】
好ましくは、打ち込み杭は、筒状の第1の打ち込み杭と第1の打ち込む杭の内径よりも小さい外径を有する第2の打ち込み杭との1以上の組からなり、第2の打ち込み杭は、第1の打ち込み杭が打ち込まれた後、第1の打ち込み杭の筒状内部を介して、土壌に打ち込まれるとよい。
【0037】
これにより、第1の打ち込み杭が打ち込まれた後、第2の打ち込み杭を打ち込むことができ、第1の打ち込み杭のみが打ち込まれた場合に比べて、支持力をより強くすることができる。
【0038】
好ましくは、第2の打ち込み杭は、筒状であり、さらに、第1の打ち込み杭の内径よりも小さい第1の凸部と、第2の打ち込み杭の内径よりも小さい第2の凸部とを有し、第1及び第2の打ち込み杭を打ち込む際に、第1及び第2の杭の土壌側先端に取り付けられる土壌側先端部材を備える。
【0039】
このように土壌側先端部材を用いることによって、第1の打ち込み杭が打ち込まれた際に、第1の打ち込み杭の中に土壌が侵入するのを防止することができる。したがって、第2の打ち込み杭を打ち込む際には、第1の打ち込み杭の中に、第2の打ち込み杭を挿入して、さらに、奥まで第2の打ち込み杭を打ち込むことができる。よって、第2の打ち込み杭の打設点を下げることができ、作業性が向上する。
【0040】
好ましくは、支持部は、第1及び第2の打ち込み杭を案内するための筒状の1以上の案内部を含み、第2の打ち込み杭は、筒状であり、さらに、案内部の内径よりも大きい外径を有する先端部を含む打設側先端部材を備える。
【0041】
これにより、第1及び2の打ち込み杭を打ち込む際に、打設側先端を保護することができる。また、打設が容易となる。
【0042】
好ましくは、第1の打ち込み杭の打設側先端に取り付けられるキャップ部材をさらに備える。
【0043】
これにより、打ち込み杭内部に異物が混入することを防止することができる。
【0044】
一実施形態として、支持部は、上下に分離可能な上部支持部と下部支持部とを含み、上部支持部と下部支持部とは、土壌への設置時に接合されるとよい。
【0045】
これにより、簡易基礎の施工性が向上する。また、サイズが比較的大きい簡易基礎が必要な場合は、このような上下分離型の支持部を用いれば、施工性がさらに向上する。
【0046】
また、本発明は、被支持体を支持するための金属製の簡易基礎であって、土壌中に傾斜した状態で打ち込まれる1以上の打ち込み杭と、略球体状又は略楕円球体状であり、打ち込み杭が挿入され、被支持体を上部で取り付けるための支持部と、打ち込み杭の傾斜角度に応じて傾斜して配置されており、略球体状又は略楕円球体状の上半分及び/又は下半分で支持部に接合されている打ち込み杭を案内するための筒状の1以上の案内部とを備え、支持部の内部の少なくとも一部には、発砲スチロールが埋め込まれている。
【0047】
このように、発泡スチロールの浮力によって、簡易基礎が沈下するのを防止することができる。
【0048】
また、本発明は、被支持体を支持するための金属製の簡易基礎であって、土壌中に傾斜した状態で打ち込まれる1以上の打ち込み杭と、略球体状又は略楕円球体状であり、打ち込み杭が挿入され、被支持体を上部で取り付けるための支持部とを備え、支持部の内部の少なくとも一部には、コンクリートが注入されている。
【0049】
これにより、支持力の強化を図ることができる。
【0050】
また、本発明は、被支持体を支持するための金属製の簡易基礎であって、土壌中に傾斜した状態で打ち込まれる1以上の打ち込み杭と、上下に分離可能な略球体状又は略楕円球体状であり、打ち込み杭が挿入され、被支持体を上部で取り付けるための支持部とを備え、支持部において、分離可能な少なくとも下側の略半球状部又は略半楕円球状部には、コンクリートが注入されている。
【0051】
このように、下半分にコンクリートが注入されることによって、運搬の負担は、支持部全体にコンクリートが注入されている場合に比べて、軽減する。
【0052】
また、本発明は、被支持体の基礎を構築するための基礎工事方法であって、被支持体を取り付ける部分から1以上の打ち込み杭が挿入される部分に向けて椀状となっている中空の支持部を設置する工程と、支持部に設けられた孔に打ち込み杭を挿入して、打ち込み杭を土壌中に打ち込む工程とを備える。
【0053】
好ましくは、打ち込み杭を土壌中に打ち込む工程では、打ち込み杭の傾斜角度に応じて支持部に傾斜して接合されており、少なくとも椀状の部分で接合されている筒状の案内部に、打ち込み杭を挿入して、打ち込み杭を土壌中に打ち込むとよい。
【0054】
好ましくは、打ち込み杭は、筒状の第1の打ち込み杭と第1の打ち込む杭の内径よりも小さい外径を有する第2の打ち込み杭との1以上の組からなり、第2の打ち込み杭は、第1の打ち込み杭が打ち込まれた後、第1の打ち込み杭の筒状内部を介して、土壌に打ち込まれるとよい。
【0055】
好ましくは、支持部は、上下に分離可能な略球体状又は略楕円球体状であり、支持部を設置する工程では、下側の略半球状部又は略半楕円球状部と、上側の略半球状部又は略半楕円球状部とを結合した後、支持部が設置されるとよい。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、たとえば、略球体状や略楕円球体状を有する椀状の中空の支持部を用いることによって、コンクリートを用いなくても、強固な支持力を有する施工が容易な簡易基礎が提供されることとなる。また、打ち込み杭を案内するための案内部を椀状の部分で接合することによって、案内部と支持部との接合部分の破断を防止することができ、支持部の強度をさらに向上させることが可能となり、結果、長期間の使用にも耐え得る簡易基礎が提供されることとなる。さらに、第1の及び第2の打ち込み杭を用いることによって、支持力を強化することができる。第1及び2の打ち込み杭を打ち込む際には、土壌側先端部材を用いることによって、第2の打ち込み杭の打設点を低くすることができ、作業性が向上する。また、打設側先端部材を用いることによって、第1及び第2の打ち込み杭の打設が容易となる。
【0057】
本発明のこれらおよび他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る簡易基礎1の構造を示す斜視図である。簡易基礎1は、上部で被支持体である建造物を支持するための基礎であり、鉄などの金属製である。図1に示すように、簡易基礎1は、支持部2と、蓋部4と、取り付け金具5と、ワッシャー6と、ナット7と、アンカーボルト8とを備える。
【0059】
図2は、支持部2の構造を示す斜視図である。図3は、支持部2の構造を示す正面図である。図4は、支持部2の構造を示す平面図である。図5は、支持部2の構造を示す底面図である。支持部2は、案内部3a,3b,3c,3dと、穴部9とを含む。支持部2は、中空の略球体状である。案内部3a,3b,3c,3dは、それぞれ、第1の打ち込み杭10a,10b,10c,10d(後述の図7参照)を案内するための筒状のパイプである。第1の打ち込み杭10a,10b,10c,10dは、土壌中に傾斜した状態で打ち込まれる。案内部3a,3b,3c,3dは、第1の打ち込み杭10a,10b,10c,10dの傾斜角度に応じて傾斜して配置されている。支持部2には、案内部3a,3b,3c,3dに応じた穴が穿孔されており、当該穴に案内部3a,3b,3c,3dが挿入され、支持部2との接触部分である略球体状の上半分(たとえば、図2に示すU1)及び下半分(たとえば、図2に示すU2)で接合されている。接合の方法としては、溶接やボルト締めなど、あらゆる周知の方法が利用可能である。
【0060】
穴部9は、支持部2の内部が視認できるように、支持部2の上部に設けられている。穴部9は、蓋部4によって閉ざされる。アンカーボルト8は、支持部2の下方の穴10から、挿入される。蓋部9には、アンカーボルト8を貫通させるための穴(後述の図6に示す穴4a)が設けられている。穴4aから突き出たアンカーボルト8に、取り付け金具5が差し込まれる。取り付け金具5は、ワッシャー6及びナット7によって、蓋部4の上に固定される。取り付け金具5は、被支持体をボルトやビス等で固定するための複数の穴5aを有している。
【0061】
図3に示すように、案内部3bは、水平面に対して、傾斜角度θとなるように、支持部2の球体上部から、球体下部に向けて配置されている。案内部3a,3c,3dについても、同様に、傾斜角θとなるように、支持部2の球体上部から、球体下部に向けて配置されている。図3に示すように、案内部3a,3bを正面方向に投影した場合、案内部3aと案内部3bとの間の角度は、たとえば、80度となっている。この場合、傾斜角度θは、50度であるとする。鉛直支持力及び水平支持力を考慮すると、傾斜角度θは、40度〜60度であるのが好ましいが、それに限定されるものではない。
【0062】
図4及び図5に示すように、上面方向又は底面方向に、案内部3a,3b,3c,3dを投影した場合、案内部3a,3b,3c,3dは、隣り合う案内部同士が均等な角度で配置されていることが分かる。たとえば、隣り合う案内部同士が90度の角度を有するように配置されているとよい。これによって、被支持体の荷重が均等に分散されることとなる。
【0063】
図4に示すように、案内部3a,3b,3c,3dは、穴10から挿入されるアンカーボルト8が、穴部9まで貫通することができるように、アンカーボルト8の進路を避けるようにして、配置されている。穴部9からは、支持部2の内部が視認可能である。したがって、アンカーボルト8の挿入が容易となる。
【0064】
図6は、支持部2における穴部9及び蓋部4の構造を示す拡大断面図である。蓋部4は、大小の円盤を重ね合わせたような断面階段状の形状である。穴部9は、断面階段状になっており、上部の穴が下部の穴よりも大きくなっている。図6に示すように、蓋部4を穴部9に重ねた場合、隙間4c及び隙間4bが生じるように、穴部9と蓋部4との大きさは設計されている。蓋部4の外径の少なくとも一部は、穴部9の内径の少なくとも一部よりも小さくすることによって、このような隙間を生じさせることができる。ナット7を緩め、蓋4の位置をずらすことによって、被支持体を取り付け金具5に取り付ける際、取り付け金具5の位置を微調整することができる。これによって、被支持体を最適の位置に固定することが可能となる。
【0065】
図1に示すように、取り付け金具5は、底板部5cと天板部5bとを有している。底板部5cにアンカーボルト8を挿入するための穴が設けられている。天板部5bは、被支持体の底部分となる。底板部5cと天板部5bとの間の空隙部において、アンカーボルト8がナット7によって閉められる。したがって、ナット7を緩めることができるようになっている。
【0066】
図7は、打ち込み杭が挿入された状態の簡易基礎1の構造を示す正面図である。第1の打ち込み杭10a,10b,10c,10dは、筒状のパイプである。第1の打ち込み杭10a,10b,10c,10dの外径は、案内部3a,3b,3c,3dの内径よりも小さくなっている。第1の打ち込み杭10a,10b,10c,10dは、それぞれ、案内部3a,3b,3c,3dに挿入されて、杭打ち機やハンマーなどで土壌に打ち込まれる。なお、第1の打ち込み杭10a,10b,10c,10dと案内部3a,3b,3c,3dとは、ボルトや溶接などによって接合されても良い。
【0067】
図8は、アンカーボルト8の位置を明記した簡易基礎1の構造を示す正面図である。図8に示すように、アンカーボルト8は、案内部3a,3b,3c,3dと接触しないように、上部に突き抜かれる。
【0068】
図9は、案内部3a,3b,3c,3d及び第1の打ち込み杭10a,10b,10c,10dの位置関係を示す図である。案内部3a,3b,3c,3dは、均等な角度で配置されているので、第1の打ち込み杭10a,10b,10c,10dも、均等な角度で、土壌に打ち込まれることとなる。したがって、被支持体の荷重が分散されることとなる。たとえば、図9に示すように案内部が4つである場合、案内部3aと案内部3bとが、平面図方向に投射した場合、平行になるように配置されている。また、案内部3cと案内部3dとが、平面図方向に投射した場合、平行になるように配置されている。そして、案内部3a及び案内部3bと案内部3c及び案内部3dとが、平面図方向に投射した場合、垂直に交わるように配置されている。このような配置によって、案内部3a,3b,3c,3dは、均等な角度で配置されることとなる。たとえば、案内部3aは、案内部3b及び3c用に設けられた球体上部の孔の直下に貫通しないように、球体下部側に貫通されている。案内部3b,3c,3dについても同様である。このように、球体に設けられた孔が、球体上部及び下部において、均一に配置されることによって、球体自体の強度が低下しないこととなる。なお、案内部3a,3b,3c,3dの配置方法は、これに限られるものではない。
【0069】
図10は、第2の打ち込み杭11a,11bが打ち込まれるときの様子を示す図である。なお、図10では、図面を分かりやすくするために、案内部3c,3dに打ち込まれるべき第1及び第2の打ち込み杭が省略されている。第1の打ち込み杭10aと第2の打ち込み杭11aとが組になっている。第2の打ち込み杭11a,11bは、第1の打ち込み杭10a,10bよりも長い。また、第1の打ち込み杭10bと第2の打ち込み杭11bとが組になっている。第2の打ち込み杭11a,11bの外径は、それぞれ、第1の打ち込み杭10a,10bの内径よりも小さい。土壌に掘られた穴に、支持部2が埋め込まれ、第1の打ち込み杭10a,10bが打ち込まれた後、第1の打ち込み杭10a,10bの筒状の内部を介して、第2の打ち込み杭11a,11bが打ち込まれる。案内部3c,3dについても同様である。このように、鉛直支持力及び/又は水平支持力が足らない場合、第1の打ち込み杭が打ち込まれた後、第2の打ち込み杭を打ち込むことができる。なお、第1及び第2の打ち込み杭と案内部3a,3b,3c,3dとは、ボルトや溶接などによって接合されても良い。なお、図10では、第2の打ち込み杭11a,11bの方が第1の打ち込み杭10a,10bよりも長いとしたが、第2の打ち込み杭11a,11bの方が第1の打ち込み杭10a,10bよりも短くてもよい。第2の打ち込み杭11a,11bの方が第1の打ち込み杭10a,10bよりも短い場合、第2の打ち込み杭11a,11bを打ち込む際、第2の打ち込み杭11a,11bの打設側に第2の打ち込み杭11a,11bを押進させる補助杭を当接させて、第2の打ち込み杭11a,11bを押進させるとよい。
【0070】
図11Aは、第1及び第2の打ち込み杭が打ち込まれる際に使用される土壌側先端部材13の正面図である。図11Bは、土壌側先端部材13の底面図である。図11Cは、土壌側先端部材13の平面図である。土壌側先端部材13が使用される場合、各第2の打ち込み杭は、筒状である。土壌側先端部材13は、各第1及び第2の打ち込み杭の土壌側先端に取り付けられる。土壌側先端部材13の先端部分は、尖部13aとなっている。土壌側先端部材13は、各第1の打ち込み杭の内径よりも小さい外径を有する凸部13bと、各第2の打ち込み杭の内径よりも小さい外径を有する凸部13cとを含む。
【0071】
まず、第1の打ち込み杭の先端に、土壌側先端部材13が取り付けられ、案内部に挿入されて、第1の打ち込み杭が打ち込まれる。第1の打ち込み杭が打ち込まれた状態において、土壌側先端部材13は、土壌中で、第1の打ち込み杭の先端に位置する。土壌側先端部材13が第1の打ち込み杭の先端に位置しているので、第1の打ち込み杭の内部には、土壌は侵入していない。したがって、第2の打ち込み杭を打ち込む際、第1の打ち込み杭の先端まで、第2の打ち込み杭をスムーズに挿入することができる。したがって、第1の打ち込み杭よりも長い第2の打ち込み杭を打ち込む際であっても、打設点を高くしなくてもよい。第2の打ち込み杭が第1の打ち込み杭に挿入されると、凸部13cが第2の打ち込み杭に入ることとなる。その後、第2の打ち込み杭が土壌中に打ち込まれることとなる。このように、土壌側先端部材13を用いることによって、打設点を高くすることなく第2の打ち込み杭をスムーズに打ち込むことができる。
【0072】
なお、凸部13bと凸部13cとは、共通であっても良い。すなわち、土壌側先端部材13は、尖部13aから、第2の打ち込み杭の内径よりも小さい外径を有する凸部を突出していればよい。ただし、土壌側先端部材13のずれを考慮すると、凸部13bの外径と第1の打ち込み杭の内径とは、ほぼ同一であり、凸部13cの外径と第2の打ち込み杭の内径とは、ほぼ同一であることとが好ましい。
【0073】
図12Aは、第1及び第2の打ち込み杭が打ち込まれる際に使用される打設側先端部材14の正面図である。図12Bは、打設側先端部材14の底面図である。図12Cは、打設側先端部材14の平面図である。打設側先端部材14が使用される場合、各第2の打ち込み杭は、筒状である。打設側先端部材14は、各第1及び第2の打ち込み杭の打設側先端に取り付けられる。打設側先端部材14は、各第1の打ち込み杭の内径よりも小さい外径を有する凸部14bと、各第2の打ち込み杭の内径よりも小さい外径を有する凸部14cとを含む。
【0074】
まず、第1の打ち込み杭の打設側先端に、打設側先端部材14が取り付けられ、第1の打ち込み杭が案内部に挿入される。打設側先端部材14の先端部14aが打設されることによって、第1の打ち込み杭が土壌に打ち込まれる。先端部14aの外径は、案内部の内径よりも大きい。したがって、第1の打ち込み杭が打ち込まれたとしても、打設側先端部材14は、案内部の中に入ってしまうことはない。第1の打ち込み杭が打ち込まれた後、打設側先端部材14を案内部から取り出す。その後、第2の打ち込み杭を第1の打ち込み杭と同様にして打ち込む。このように、打設側先端部材14の先端部14aの外径は、案内部の内径よりも大きいので、第1及び第2の打ち込み杭を順次打ち込むことができる。
【0075】
なお、凸部14bと凸部14cとは、共通であっても良い。すなわち、打設側先端部材14は、先端部14aから、第2の打ち込み杭の内径よりも小さい外径を有する凸部を突出していればよい。ただし、打設側先端部材14のずれを考慮すると、凸部14bの外径と第1の打ち込み杭の内径とは、ほぼ同一であり、凸部14cの外径と第2の打ち込み杭の内径とは、ほぼ同一であることとが好ましい。
【0076】
図13Aは、第1の打ち込み杭の打設側先端に取り付けられるキャップ部材15の平面図である。図13Bは、キャップ部材15の正面図である。図13Cは、キャップ部材15の背面図である。キャップ部材15は、第1の打ち込み杭の外径と略同一の凹部15aを有している。凹部15aに第1の打ち込み杭が挿入される。キャップ部材15が第1の打ち込み杭の打設側先端に取り付けられるので、第1の打ち込み杭に不要物が侵入するのを防止することができ、簡易基礎の劣化防止に役立つ。
【0077】
以上のように、第1の実施形態においては、中空の支持部2を用い、中空の支持部2に打ち込み杭を挿入して、基礎を構築することとなる。したがって、コンクリートを用いない、容易に施工が可能な簡易基礎が提供されることとなる。また、第1の実施形態では、案内部3a,3b,3c,3dによって、打ち込み杭が案内されることとなるので、施工の容易さは、さらに向上する。
【0078】
また、支持部2は略球体状であるので、支持部2にかかる荷重は、球面の接線方向と、球体の中心方向とに分解される。球体構造の場合、アーチ構造と同様、荷重の多くは、球面の接線方向に分解され、球体を圧縮する力となる。すなわち、球体の中心方向に分解された力は、球面の接線方向に分解された力に比べて、大幅に小さい。このように、支持部2の中心方向に向かう力は小さいので、支持部2自体が、長期間の使用によって破壊されるといったことを防止可能である。よって、コンクリートを用いなくても、支持部自体の強度が向上した簡易基礎が提供されることとなる。
【0079】
さらに、第1の実施形態では、案内部3a,3b,3c,3dが略球体状の上半分及び下半分で接合されている。球体の中心方向に分解される力、すなわち、案内部3a,3b,3c,3dにかかる力は、接線方向に働く力に比べて小さい。そのため、案内部3a,3b,3c,3dと支持部2との接合部分において、案内部3a,3b,3c,3dの進路方向に平行に加わる力は、垂直に加わる力に比べて小さくなる。案内部3a,3b,3c,3dにおいて垂直に加わる力は球体全体で支えることとなるので、垂直に加わる力により接合部分の破壊に与える影響は、小さい。一方、平行に加わる力は接合部分のみで支える必要があるので、平行に加わる力により接合部分の破壊に与える影響は、大きい。しかし、本実施形態では、平行に加わる力が小さいので、接合部分の破壊をできる限り防止することができる。結果、長期間の使用にも耐え得る簡易基礎が提供されることとなる。
【0080】
また、第1の実施形態に係る簡易基礎は、基本的には、球体、パイプ、及び板金といった汎用的な金属製材料を加工することによって、製造可能であるので、低コストなものとなる。また、リサイクルが可能である。
【0081】
なお、支持部の形状は、略球体状に限るものではない。たとえば、支持部は、略楕円球体状であってもよい。支持部が中空であれば、コンクリートを用いない簡易基礎は実現可能であり、略球体状や略楕円球体状に限定されるものでもない。支持部自体の荷重に対する耐力を考慮すると、支持部において、被支持体を取り付ける部分(第1の実施形態では、蓋部4及び穴部9)から、打ち込む杭が挿入される部分(第1の実施形態では、案内部3a,3b,3c,3d)に向けて、少なくとも、椀状になっているとよい。支持部の上部が椀状となることによって、被支持体の荷重が椀状表面全体に分散され、支持部自体が荷重によって、破壊されるということを防止できると期待できる。その場合、被支持体の下部の形状は、特に限られるものではなく、椀状であってもよいし、平坦状であってもよいし、角柱状であってもよい。
【0082】
支持部の上部が椀状である場合において、案内部を設ける際、案内部は、打ち込み杭の傾斜角度に応じて傾斜して配置されており、少なくとも、椀状の部分で接合されているとよい。支持部の上部を椀状にして、椀状部分で案内部を接合することによって、案内部に平行に加わる力を垂直に加わる力に比べて小さくすることができる。したがって、接合部分の破壊をできる限り防止することができる。結果、長期間の使用にも耐え得る簡易基礎が提供されることとなる。
【0083】
(第2の実施形態)
図14は、本発明の第2の実施形態に係る簡易基礎1aを示す斜視図である。図14において、第1の実施形態と同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を付し説明を省略することとする。第1の実施形態で説明したように、支持部を、少なくとも上部が椀状となるように、略球体状や略楕円球体状にすることによって、支持部自体の強度を向上させることができる。
【0084】
したがって、図14に示すように、案内部3a,3b,3c,3dを設けずに、打ち込み杭を挿入するための穴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bだけを設けて、打ち込み杭が打設されてもよい。
【0085】
図14において、穴31aから挿入された打ち込み杭は、穴31bから抜け出て、土壌に打ち込まれる。穴32aから挿入された打ち込み杭は、穴32bから抜け出て、土壌に打ち込まれる。穴33aから挿入された打ち込み杭は、穴33bから抜け出て、土壌に打ち込まれる。穴34aから挿入された打ち込み杭は、穴34bから抜け出て、土壌に打ち込まれる。打ち込み杭が打ち込まれる際、穴部9(図14上は視認できない)から、打ち込み杭の位置を確認することができるので、適切な穴に打ち込み杭を挿入することができる。
【0086】
第2の実施形態に示すように、本発明では、支持部が中空であって、被支持体を取り付ける部分(図14では、蓋部4及び穴部9)から打ち込み杭が挿入される部分(図14では、穴31a,32a,33a,34a)に向けて、椀状になっていれば、コンクリートを用いることなく、支持部自体の強度を向上させることができる簡易基礎が提供されることとなる。
【0087】
(第3の実施形態)
図15A及び15Bは、第3の実施形態に係る簡易基礎での支持部41の構造を示す正面図である。図15A及び15Bに示す構造以外は、第2の実施形態と同様である。第3の実施形態において、略球体状の支持部41は、上部支持部41aと下部支持部41bとに分離可能である。上部支持部41a及び下部支持部41bは、それぞれ、フランジ継ぎ手41c及び41dを有する。上下に分離された支持部41は、接合部42及び43において、ボルトとナットなどで接合される。なお、図15Bにおいて、上部支持部41aと下部支持部41bとは、辺縁の2箇所で接合されることとしたが、接合の箇所は、これに限られるものではない。上部支持部41aと下部支持部41bとは、辺縁の少なくとも1箇所で接合されていればよい。また、接合方法も、ボルトとナットに限らず、溶接や接着等、あらゆる周知の方法を用いてよい。上部支持部41aと下部支持部41bとが結合した後、支持部41が土壌に設置される。なお、穴44aと穴44bとが対応している。穴45aと穴45b(図面上視認できない)とが対応している。穴46aと穴46b(図面上視認できない)とが対応している。穴47a(図面上視認できない)と穴47bとが対応している。対応する穴に、打ち込み杭が挿入されることとなる。
【0088】
図16A及び16Bは、第3の実施形態に係る他の簡易基礎での支持部51の構造を示す正面図である。図16A及び16Bに示す構造以外は、第2の実施形態と同様である。略楕円球体状の支持部51は、上部支持部51aと下部支持部51bとに分離可能である。上部支持部51a及び下部支持部51bは、それぞれ、フランジ継ぎ手51c及び51dを有する。上下に分離された支持部51は、接合部52及び53において、ボルトとナットなどで接合される。なお、図16Bにおいて、上部支持部51aと下部支持部51bとは、辺縁の2箇所で接合されることとしたが、接合の箇所は、これに限られるものではない。上部支持部51aと下部支持部51bとは、辺縁の少なくとも1箇所で接合されていればよい。また、接合方法も、ボルトとナットに限らず、溶接や接着等、あらゆる周知の方法を用いてよい。上部支持部51aと下部支持部51bとが結合した後、支持部51が土壌に設置される。穴54aと穴54bとが対応している。穴55aと穴55b(図面上視認できない)とが対応している。穴56aと穴56b(図面上視認できない)とが対応している。穴57a(図面上視認できない)と穴57bとが対応している。対応する穴に、打ち込み杭が挿入されることとなる。
【0089】
第3の実施形態に示すように、支持部を上下に分離可能な構造とすることによって、施工現場には、分離された状態で支持部を運搬してもよい。よって、略球体状や略楕円球体状の支持部を運搬する場合に比べ、運搬用の荷台のスペースを有効に活用することができる。第3の実施形態においても、支持部の上部が椀状であればよいので、下部支持部の形状は特に限定されない。
【0090】
なお、第3の実施形態において、上下の支持部が接合された後、案内部が対応する穴に接合されてもよい。
【0091】
(変形例)
上記第1〜第3の実施形態に対して、以下のような変形例が考えられる。たとえば、支持部の内部の少なくとも一部に発砲スチロールが埋め込まれているとよい。これにより、沼地などで簡易基礎が沈み込むことを防止することが期待できる。
【0092】
また、生コン車の進入が可能な施工現場においては、場合によっては、支持部の内部の少なくとも一部にコンクリートが注入されていてもよい。これにより、さらなる支持力の強化を図ることができる。この場合、穴部9から、コンクリートを注入すればよい。搬入前にコンクリートが注入されていても良い。
【0093】
また、第3の実施形態のように、上下に分離可能な支持部を用いる場合、少なくとも下側の略半球状支持部又は略半楕円球状支持部に、コンクリートが注入されていてもよい。この場合は、案内部を用いる実施形態では、施工現場での注入だけでなく、搬入前にコンクリートを注入しておくことも可能である。コンクリート部分が下半分のみになるので、運搬の負担は、ある程度軽減される。
【0094】
上記各実施形態において、打ち込み杭は、一本以上であればよく、好ましくは、複数であるとよい。打ち込み杭の数に合わせて、案内部が設けられていればよい。また、打ち込み杭は、筒状でなくてもよい。打ち込み杭及び案内部は、円柱状に限られるものではなく、角柱状であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【0095】
(サイズ例)
上記第1〜第3の実施形態において、以下のようなサイズを有する簡易基礎が提供可能である。まず、第1の実施形態に示したように略球体状の支持部2を用いる場合、支持部2の外径として、8インチ(203.2mm)、10インチ(254.0mm)、12インチ(304.8mm)、14インチ(355.6mm)を用いたサイズ例が考えられる。
【0096】
次に、第3の実施形態に示したような略楕円球体状の支持部51を用いる場合のサイズを考える。図17は、支持部51のサイズの規定の仕方を示す断面図である。図17に示すように、支持部51は、上部支持部51a及び下部支持部51bについて、内径Dと、中央部の内半径Rと、フランジ部の長さLと、隅の丸みの半径rと、フランジ部以外の高さHとで規定される。なお、内半径Rの中心は、内径D上に設けられている必要はない。たとえば、R=D、r=0.1D、H=0.194Dとなる。Rが400mmから1500mmまでの間、50mm間隔で、上部支持部51a及び下部支持部51bが提供される。Rが1500mmから3000mmまでの間、100mm間隔で、上部支持部51a及び下部支持部51bが提供される。
【0097】
このように、本発明の簡易基礎をあらゆるサイズで提供することによって、橋や歩道、階段、柵、ベンチ、テーブル、遊具などの建造物の基礎として有効に利用される。ベンチや柵などの小型の建造物であれば、小さいサイズの簡易基礎を用いるとよい。中規模の橋桁などの建造物に対しては、大きいサイズの分離型の簡易基礎を用いるとよい。
【0098】
(実験例)
第1の実施形態に示す簡易基礎1を実際に製造して、載荷試験を行い、極限支持力を測定した。試験に用いた簡易基礎1において、球体の支持部2の直径は、267mmであるとした。打ち込み杭の長さは、1m、2m、及び3mの3通りとした。1mの打ち込み杭(4本の第1の打ち込み杭10a)それぞれの直径は、42.7mmとした。2mの打ち込み杭(4本の第1の打ち込み杭10a)それぞれの直径は、42.7mmとした。3mの打ち込み杭の内、4本の第1の打ち込み杭10aのそれぞれの直径は42.7mmとし、4本の第1の打ち込み杭10aのそれぞれの杭長は2mとした。さらに、3mの打ち込み杭の内、4本の第2の打ち込み杭11aのそれぞれの直径は34.0mmとした。第2の打ち込み杭11aの杭長は3mとしたが、第1の打ち込み杭10aの先端から突出している長さは1mとしたので、全体の杭長は、3mとなった。なお、案内部3a〜3dの長さは、それぞれ0.3mであるとした。そのため、打設された打ち込み杭が土壌と接して基礎として有効に機能する長さは、杭長−0.3mである。
【0099】
試験は、兵庫県の某ゴルフ場内の砂質土の敷地内で秘密裏に行われた。試験は、以下のような手順で行われた。まず、スウェーデン式サウンディング試験(JIS A 1221に準拠)を行って、簡易基礎1を設置する場所が軟弱地盤であるかを確認した。次に、当該地盤に簡易基礎1を設置し、打ち込み杭を打設して、平板載荷試験(地盤工学会基準 JGS 1521−2003に準拠)を行った。平板載荷試験は、杭長が1m、2m、及び3mの簡易基礎1に対して行われた。
【0100】
スウェーデン式サウンディング試験の試験結果を表1に示す。表1では、No.1の地点、及びNo.1の近くのNo.2の地点について、深度に対するN値が示されている。No.1の地点では、深度が2.90mになるとN値が24.3となっている。また、No.2の地点では、深度が2.50mになるとN値が11.4となっている。したがって、深度が2.50m以上は、試験層としては不適切である。試験で用いた簡易基礎1において、案内部3a〜3dの傾斜角度は、40度としている。そのため、打ち込み杭の先端の深部は、最大でも約2mとなる。深度が2.90m(No.1の地点)及び2.50m(No.2の地点)を除いた試験層は、平均3.0のN値を有する。したがって、試験層は、砂質土の軟弱な地盤であった。よって、簡易基礎1の効果を検証するのに適した地盤であった。
【表1】
【0101】
次に、平板載荷試験を行った。載荷装置は、載荷板、油圧ジャッキ、スタンドパイプ及び反力装置によって構成される。簡易基礎1の上に直径300mm・厚さ25mmの鋼製円板を載荷板として載せ、分離式油圧ジャッキを当該載荷板の上に設置し、当該油圧ジャッキと反力装置との間にスタンドパイプを配置して、油圧ジャッキの反力を反力装置で受け止めることとした。反力装置として、バックホウを用いた。載荷板、油圧ジャッキ、スタンドパイプ及び反力装置は、偏心荷重が加わらないように組み立てられた。計測装置は、荷重計及び沈下量計測装置によって構成される。不動梁に沈下量計測装置を取り付けて、簡易基礎の沈下量を計測した。上記のような試験装置を設置して、最大載荷重を10.5tとし、荷重ピッチを1.3125tとし、8段階の多サイクル方式で載荷試験を行った。載荷試験の結果を、表2に示す。
【表2】
【0102】
表2の結果に基づいて、極限支持力及び長期許容支持力を算出した結果を表3に示す。長期許容支持力は、極限支持力の1/3とした。
【表3】
【0103】
表3に示すように、一つの簡易基礎1によって、1.31t〜2.62tの長期許容支持力が得られた。本出願人が施工した過去の建造物の実績では、載荷重は、一般的に、0.5t〜3.5tである。過去の実績において、本実施例に係る一以上の簡易基礎を用いれば、十分に、軟弱地盤であったとしても、建造物を支持することが可能であることが立証された。
【0104】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明によれば、できる限り、コンクリートを用いない容易に施工が可能な簡易基礎が提供されることとなり、建築や土木などの分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る簡易基礎1の構造を示す斜視図
【図2】支持部2の構造を示す斜視図
【図3】支持部2の構造を示す正面図
【図4】支持部2の構造を示す平面図
【図5】支持部2の構造を示す底面図
【図6】支持部2における穴部9及び蓋部4の構造を示す拡大断面図
【図7】打ち込み杭が挿入された状態の簡易基礎1の構造を示す正面図
【図8】アンカーボルト8の位置を明記した簡易基礎1の構造を示す正面図
【図9】案内部3a,3b,3c,3d及び第1の打ち込み杭10a,10b,10c,10dの位置関係を示す図
【図10】第2の打ち込み杭11a,11bが打ち込まれるときの様子を示す図
【図11A】第1及び第2の打ち込み杭が打ち込まれる際に使用される土壌側先端部材13の正面図
【図11B】土壌側先端部材13の底面図
【図11C】土壌側先端部材13の平面図
【図12A】第1及び第2の打ち込み杭が打ち込まれる際に使用される打設側先端部材14の正面図
【図12B】打設側先端部材14の底面図
【図12C】打設側先端部材14の平面図
【図13A】第1の打ち込み杭の打設側先端に取り付けられるキャップ部材15の平面図
【図13B】キャップ部材15の正面図
【図13C】キャップ部材15の背面図
【図14】本発明の第2の実施形態に係る簡易基礎1aを示す斜視図
【図15A】第3の実施形態に係る簡易基礎での支持部41の構造を示す正面図
【図15B】第3の実施形態に係る簡易基礎での支持部41の構造を示す正面図
【図16A】第3の実施形態に係る他の簡易基礎での支持部51の構造を示す正面図
【図16B】第3の実施形態に係る他の簡易基礎での支持部51の構造を示す正面図
【図17】支持部51のサイズの規定の仕方を示す断面図
【図18】特許文献7に開示されている簡易基礎を示す斜視図
【符号の説明】
【0107】
1,1a 簡易基礎
2,41,51 支持部
3a,3b,3c,3d 案内部
4 蓋部
4c,4b 隙間
5 取り付け金具
6 ワッシャー
7 ナット
8 アンカーボルト
9 穴部
10 穴
10a,10b,10c,10d 第1の打ち込み杭
11a,11b 第2の打ち込み杭
12 被支持体
13 土壌側先端部材
13a 尖部
13b,13c,14b,14c 凸部
14 打設側先端部材
14a 先端部
15 キャップ部材
15a 凹部
31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34b 穴
41a,51a 上部支持部
41b,51b 下部支持部
42,43,52,53 接合部
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の基礎に関し、より特定的には、杭を用いた簡易基礎及びそれを用いた基礎工事方法に関する。
【背景技術】
【0002】
緑地帯や、湿地帯、沼地帯、河川敷、里山などに、橋や歩道、階段、柵、ベンチ、テーブル、遊具などの建造物を構築して、公園などが構築されることがある。これらの建造物を支持するためには、基礎が必要である。通常の家屋などであれば、地盤を掘削して、捨てコンクリートを打ち、当該捨てコンクリートの上に組まれた枠体に生コンクリートを流し込んで、基礎を形成する手法がとられる。しかし、上記のような緑地帯などでは、生コンクリートの搬入車の進入が困難であるし、また、進入できたとしても自然環境を破壊することとなり好ましくない。さらに、コンクリートで形成された基礎は、建造物が不要になった際、除去することが極めて困難である。したがって、コンクリートで形成された基礎がそのまま自然環境に残されることとなり、環境破壊へと繋がる。
【0003】
そこで、簡易的な基礎が様々提案されている。特許文献1において、円柱又は四角柱、三角柱のフォームに、四本のガイドスリーブが差し込まれて、当該フォームにコンクリートが注入されることによって形成された簡易基礎が提案されている(特許文献1のFIG.4等参照)。当該ガイドスリーブを通るようにして、杭が地盤に打ち込まれることによって、当該フォーム及び杭が、その上に固定される建造物の基礎となる。
【0004】
特許文献2において、断面コの字状に形成されたブラケットが柱に固定され、当該ブラケットに設けられたホールに杭が差し込まれ、当該杭が地盤に打ち込まれることによって、基礎が構築される技術が開示されている(特許文献2のFIG.1等参照)。特許文献2において、断面H状のブラケットも提案されている(特許文献2のFIG.3等参照)。また、特許文献2において、四角柱の構造物に対して杭を打ち込む簡易基礎も提案されている(特許文献2のFIG.8及び9等参照)。
【0005】
特許文献3において、コンクリートで固められた基礎に杭を差し込み、当該杭を地盤に打ち込む簡易基礎が提案されている。特許文献3において、プラスチックで形成された上下のフォームに、テーパー状のダボを挿入しておいて、コンクリートを注入して、杭を挿入するための穴が形成された基礎が製造される(特許文献3のFIG.2等参照)。コンクリートが固まった後、上下のフォーム及びダボが取り外され、当該ダボによってできた穴に少し細めの杭が挿入され、地盤に打ち込まれる(特許文献3のFIG.3等参照)。
【0006】
特許文献4には、コンクリート壁の基礎となる技術が開示されている。特許文献4において、対向する2枚の足場部材にスリーブが通されており、当該2枚の足場部材の間に、コンクリート壁が形成される(特許文献4のFIG.1及び3等参照)。当該スリーブに杭が挿入されて、当該杭が地盤に打ち込まれる(特許文献4のFIG.3等参照)。
【0007】
特許文献5には、温室用の簡易基礎が開示されている。特許文献5における簡易基礎は、ブロック状のコンクリートから形成されたヘッド部と、当該ヘッド部に挿入される2本以上の杭とを含む。当該杭が地盤に打ち込まれることによって、当該簡易基礎が温室の基礎となる。
【0008】
特許文献6には、上フランジと下フランジとを有する胴部に、スリーブが取り付けられ、当該スリーブに杭が差し込まれる構造の簡易基礎が提案されている(特許文献6の図1等参照)。また、複数の上フランジ及び下フランジを連結するための連結部材によって、耐力を強化する簡易基礎も開示されている(特許文献6の図3、図4及び図5)。耐力が強化された簡易基礎において、アンカーボルトによる固定方法も開示されている(特許文献6の図6参照)
【0009】
図18は、特許文献7に開示されている簡易基礎を示す斜視図である。図18に示すように、特許文献7には、上部固定板900、下部固定板901、及び上部固定板900と下部固定板901とに連結された複数のスリーブ902を含む簡易基礎が提案されている(特許文献7の図3等参照)。スリーブ902に杭903が差し込まれ、杭903が地盤に打ち込まれることによって、地盤への固定が実現される。
【特許文献1】米国特許第5039256号明細書
【特許文献2】米国特許第5395184号明細書
【特許文献3】米国特許第6910832号明細書
【特許文献4】米国特許第7076925号明細書
【特許文献5】特開2002−30679号公報
【特許文献6】特開2005−299214号公報
【特許文献7】特開2005−299215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に係る簡易基礎は、施工現場に運搬されるまでに、フォームにコンクリートが注入され、固められていなければならない。よって、コンクリートで固められた重量物を、施工現場まで運搬しなければならない。このように簡易基礎自体が重量物であるため、施工に不便であるだけでなく、施工現場までの運搬が困難である。
【0011】
特許文献2に係る簡易基礎は、コンクリートを用いていない。しかし、ブラケット自体は、柱の側面にボルトなどで固定されることとなる。建造物の垂直荷重に対して、側面をボルトで固定するだけでは、強度面で不安が残る。また、橋や歩道などは、木材でできている場合が多いので、側面でのボルト固定だけでは、木材が劣化したときに基礎としての機能が果たせなくなる。特許文献2のFIG.8には、水平に置かれた四角柱状の基礎が開示されているが、輸送に不便である。また、特許文献2のFIG.9には、垂直に立てられた四角柱の基礎が開示されているが、輸送に不便である。また、特許文献2のFIG.9には、建造物の固定方法については、具体的に開示されていない。
【0012】
特許文献3に係る簡易基礎についても、特許文献1に係る簡易基礎と同様の問題を有する。
【0013】
特許文献4に係る簡易基礎は、コンクリート壁にのみ利用可能であり、橋や歩道等のあらゆる建造物の基礎に利用することはできない。
【0014】
特許文献5に係る簡易基礎も、ヘッド部はコンクリートで構成されているので、特許文献1に係る簡易基礎と同様の問題を有する。
【0015】
特許文献6に係る簡易基礎においては、コンクリートを用いていないものの、上下フランジを連結するための連結部材が必要となり、構造が複雑となる。特許文献6には、上下フランジと連結部材とをボルトの他、溶接によって固定することも開示されているが、構造が複雑であることに変わりなく、製造コストの面で問題がある。
【0016】
特許文献7に係る簡易基礎においては、カバー904に建造物の荷重がかかることとなる。カバー904にかかった荷重は、上部固定板900にかかることとなる。上部固定板900にかかった荷重は、水平方向とスリーブ902の方向とに分解される。上部固定板900は、直線上の板部材であるので、水平方向へ分解された力は、スリーブ902の方向に分解された力に比べて小さい。したがって、多くの荷重は、スリーブ902にかかることとなる。そのため、上部固定板900とスリーブ902との接合部分905や、下部固定板901とスリーブ902との接合部分906に、多くの荷重がかかる可能性がある。よって、長年の使用によって、接合部分905及び906が破断する可能性がある。
【0017】
それゆえ、本発明の目的は、できる限り、コンクリートを用いない容易に施工が可能な簡易基礎を提供することである。また、本発明の他の目的は、長期間の使用にも耐え得る低コストな簡易基礎を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明は、下記のような特徴を有する。本発明は、被支持体を支持するための金属製の簡易基礎であって、土壌中に傾斜した状態で打ち込まれる1以上の打ち込み杭と、打ち込み杭が挿入され、被支持体を上部で取り付けるための支持部とを備え、支持部は、中空であり、被支持体を取り付ける部分から打ち込み杭が挿入される部分に向けて椀状となっている。
【0019】
本発明では、被支持体を取り付ける部分から打ち込み杭が挿入される部分に向けて椀状構造とすることによって、被支持体の荷重を分散させることができ、支持部の強度を向上させることができる。よって、コンクリートを用いない簡易基礎が提供されることとなる。支持体を介して杭が打ち込まれることによって、本発明の簡易基礎は、打ち込み杭の摩擦力によって、杭基礎として機能する。また、支持部自体の支持力も存在するので、本発明の簡易基礎は、補助的には、直接基礎としての機能も有する。打ち込み杭が支持地盤にまで達していれば、支持地盤による抗力も、杭基礎の実現に作用する。緑地帯や、湿地帯、沼地帯、河川敷、里山などに、橋や歩道、階段、柵、ベンチ、テーブル、遊具などの被支持体を構築する場合、地盤が軟弱であることが多い。本発明の簡易基礎を用いれば、このような軟弱地盤であっても、被支持体を支持することが可能となる。このような軟弱地盤での施工は困難な場合が多いので、簡便に施工することが要求される。本発明の簡易基礎は、コンクリートを用いないので、軽量である。よって、施工現場までの運搬が容易であったり、施工現場に生コン車を進入させたりする必要がない。そのため、容易な施工が実現されることとなる。また、本発明の簡易基礎は、金属製であるので、被支持体が不要になった場合、回収してリサイクルすることが可能となり、環境破壊防止に有用である。さらに、本発明の簡易基礎は、全体が金属製であり、コンクリートが使用されないので、低コストに提供されることとなる。
【0020】
好ましくは、支持部は、打ち込み杭を案内するための筒状の1以上の案内部を含み、各案内部は、打ち込み杭の傾斜角度に応じて傾斜して配置されており、少なくとも椀状の部分で接合されているとよい。
【0021】
このように、筒状の案内部を設けることで、打ち込み杭を適切な傾斜角度で土壌中に打ち込むことができ、施工が容易なものとなる。さらに、本発明では、案内部と支持部との接合部分は、椀状の部分に位置している。椀状の部分では、被支持体の荷重の大半は、椀状の接線方向に分解される。そのため、案内部の進行方向に分解される荷重は、接線方向に分解される荷重に比べ小さくなる。よって、案内部に直接加わる荷重をできる限り小さくすることができる。これにより、案内部と支持部との接合部分の破断を防止することができ、支持部の強度を向上させることが可能となり、長期間の使用にも耐え得る簡易基礎が提供されることとなる。
【0022】
好ましくは、支持部は、中空の略球体状又は略楕円球体状であるとよい。
【0023】
このように、支持部を中空の略球体状又は略楕円球体状にすることによって、被支持体を取り付ける部分から打ち込み杭が挿入される部分に向けて椀状となる支持部を提供することができる。略球体状又は略楕円球体状の中空の支持部は、製造も容易であり、さらに、低コストに簡易基礎を提供することができる。また、略球体状又は略楕円球体状の支持部は、それ自体、強固な形状であるので、長期間の使用に耐え得る簡易基礎が提供されることとなる。
【0024】
好ましくは、支持部は、内部が視認できるように上部に設けられた穴部と、下方から穴部に向かって挿入されるアンカーボルトと、アンカーボルトを貫通させると共に、穴部を閉じるための蓋部とを含む。
【0025】
打ち込む杭を挿入する際、穴部から視認することによって、打ち込み杭を適切な位置に打ち込むことができる。また、アンカーボルトを挿入する際、穴部から視認することによって、アンカーボルトの位置を確認することができる。よって、施工を容易に行うことができる。
【0026】
好ましくは、蓋部の外径の少なくとも一部は、穴部の内径の少なくとも一部よりも小さい。
【0027】
これにより、穴部と蓋部との間に空隙ができることとなるので、蓋部を動かすことができる。よって、被支持体を取る付ける際に、アンカーボルトの位置を微調整することができ、施工性が向上する。
【0028】
好ましくは、支持部は、アンカーボルトに取り付けられる被支持体を固定するための取り付け金具をさらに含み、取り付け金具は、アンカーボルトに取り付けるナットを締めるための空隙部を有する。
【0029】
これによって、取り付け金具に、アンカーボルト及び被支持体に取り付けることができる。
【0030】
好ましくは、支持部は、打ち込み杭を案内するための筒状の1以上の案内部をさらに含み、各案内部は、打ち込み杭の傾斜角度に応じて傾斜して配置されており、略球体状又は略楕円球体状の上半分及び/又は下半分で接合されている。
【0031】
このように、筒状の案内部を設けることで、打ち込み杭を適切な傾斜角度で土壌中に打ち込むことができ、施工が容易なものとなる。さらに、本発明では、案内部と支持部との接合部分は、略球体状又は略楕円球体状の上半分及び/又は下半分に位置している。すなわち、当該接合部分は、支持部の椀状部分に位置することとなる。椀状の部分では、被支持体の荷重の大半は、椀状の接線方向に分解される。そのため、案内部の進行方向に分解される荷重は、接線方向に分解される荷重に比べ小さくなる。よって、案内部に直接加わる荷重をできる限り小さくすることができる。これにより、案内部と支持部との接合部分の破断を防止することができ、支持部の強度を向上させることが可能となり、長期間の使用にも耐え得る簡易基礎が提供されることとなる。
【0032】
好ましくは、案内部は、隣り合う案内部同士が均等な角度で配置されている。
【0033】
これにより、被支持体の加重を複数の打ち込み杭に均等に分散させることができる。よって、安定的に、被支持体を支持することができる簡易基礎が提供されることとなる。
【0034】
好ましくは、案内部の傾斜角度は、水平面に対して、40度〜60度であるとよい。
【0035】
これにより、鉛直支持力及び水平支持力を適切なものとすることができ、被支持体の沈下や水平移動を防止することができる。
【0036】
好ましくは、打ち込み杭は、筒状の第1の打ち込み杭と第1の打ち込む杭の内径よりも小さい外径を有する第2の打ち込み杭との1以上の組からなり、第2の打ち込み杭は、第1の打ち込み杭が打ち込まれた後、第1の打ち込み杭の筒状内部を介して、土壌に打ち込まれるとよい。
【0037】
これにより、第1の打ち込み杭が打ち込まれた後、第2の打ち込み杭を打ち込むことができ、第1の打ち込み杭のみが打ち込まれた場合に比べて、支持力をより強くすることができる。
【0038】
好ましくは、第2の打ち込み杭は、筒状であり、さらに、第1の打ち込み杭の内径よりも小さい第1の凸部と、第2の打ち込み杭の内径よりも小さい第2の凸部とを有し、第1及び第2の打ち込み杭を打ち込む際に、第1及び第2の杭の土壌側先端に取り付けられる土壌側先端部材を備える。
【0039】
このように土壌側先端部材を用いることによって、第1の打ち込み杭が打ち込まれた際に、第1の打ち込み杭の中に土壌が侵入するのを防止することができる。したがって、第2の打ち込み杭を打ち込む際には、第1の打ち込み杭の中に、第2の打ち込み杭を挿入して、さらに、奥まで第2の打ち込み杭を打ち込むことができる。よって、第2の打ち込み杭の打設点を下げることができ、作業性が向上する。
【0040】
好ましくは、支持部は、第1及び第2の打ち込み杭を案内するための筒状の1以上の案内部を含み、第2の打ち込み杭は、筒状であり、さらに、案内部の内径よりも大きい外径を有する先端部を含む打設側先端部材を備える。
【0041】
これにより、第1及び2の打ち込み杭を打ち込む際に、打設側先端を保護することができる。また、打設が容易となる。
【0042】
好ましくは、第1の打ち込み杭の打設側先端に取り付けられるキャップ部材をさらに備える。
【0043】
これにより、打ち込み杭内部に異物が混入することを防止することができる。
【0044】
一実施形態として、支持部は、上下に分離可能な上部支持部と下部支持部とを含み、上部支持部と下部支持部とは、土壌への設置時に接合されるとよい。
【0045】
これにより、簡易基礎の施工性が向上する。また、サイズが比較的大きい簡易基礎が必要な場合は、このような上下分離型の支持部を用いれば、施工性がさらに向上する。
【0046】
また、本発明は、被支持体を支持するための金属製の簡易基礎であって、土壌中に傾斜した状態で打ち込まれる1以上の打ち込み杭と、略球体状又は略楕円球体状であり、打ち込み杭が挿入され、被支持体を上部で取り付けるための支持部と、打ち込み杭の傾斜角度に応じて傾斜して配置されており、略球体状又は略楕円球体状の上半分及び/又は下半分で支持部に接合されている打ち込み杭を案内するための筒状の1以上の案内部とを備え、支持部の内部の少なくとも一部には、発砲スチロールが埋め込まれている。
【0047】
このように、発泡スチロールの浮力によって、簡易基礎が沈下するのを防止することができる。
【0048】
また、本発明は、被支持体を支持するための金属製の簡易基礎であって、土壌中に傾斜した状態で打ち込まれる1以上の打ち込み杭と、略球体状又は略楕円球体状であり、打ち込み杭が挿入され、被支持体を上部で取り付けるための支持部とを備え、支持部の内部の少なくとも一部には、コンクリートが注入されている。
【0049】
これにより、支持力の強化を図ることができる。
【0050】
また、本発明は、被支持体を支持するための金属製の簡易基礎であって、土壌中に傾斜した状態で打ち込まれる1以上の打ち込み杭と、上下に分離可能な略球体状又は略楕円球体状であり、打ち込み杭が挿入され、被支持体を上部で取り付けるための支持部とを備え、支持部において、分離可能な少なくとも下側の略半球状部又は略半楕円球状部には、コンクリートが注入されている。
【0051】
このように、下半分にコンクリートが注入されることによって、運搬の負担は、支持部全体にコンクリートが注入されている場合に比べて、軽減する。
【0052】
また、本発明は、被支持体の基礎を構築するための基礎工事方法であって、被支持体を取り付ける部分から1以上の打ち込み杭が挿入される部分に向けて椀状となっている中空の支持部を設置する工程と、支持部に設けられた孔に打ち込み杭を挿入して、打ち込み杭を土壌中に打ち込む工程とを備える。
【0053】
好ましくは、打ち込み杭を土壌中に打ち込む工程では、打ち込み杭の傾斜角度に応じて支持部に傾斜して接合されており、少なくとも椀状の部分で接合されている筒状の案内部に、打ち込み杭を挿入して、打ち込み杭を土壌中に打ち込むとよい。
【0054】
好ましくは、打ち込み杭は、筒状の第1の打ち込み杭と第1の打ち込む杭の内径よりも小さい外径を有する第2の打ち込み杭との1以上の組からなり、第2の打ち込み杭は、第1の打ち込み杭が打ち込まれた後、第1の打ち込み杭の筒状内部を介して、土壌に打ち込まれるとよい。
【0055】
好ましくは、支持部は、上下に分離可能な略球体状又は略楕円球体状であり、支持部を設置する工程では、下側の略半球状部又は略半楕円球状部と、上側の略半球状部又は略半楕円球状部とを結合した後、支持部が設置されるとよい。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、たとえば、略球体状や略楕円球体状を有する椀状の中空の支持部を用いることによって、コンクリートを用いなくても、強固な支持力を有する施工が容易な簡易基礎が提供されることとなる。また、打ち込み杭を案内するための案内部を椀状の部分で接合することによって、案内部と支持部との接合部分の破断を防止することができ、支持部の強度をさらに向上させることが可能となり、結果、長期間の使用にも耐え得る簡易基礎が提供されることとなる。さらに、第1の及び第2の打ち込み杭を用いることによって、支持力を強化することができる。第1及び2の打ち込み杭を打ち込む際には、土壌側先端部材を用いることによって、第2の打ち込み杭の打設点を低くすることができ、作業性が向上する。また、打設側先端部材を用いることによって、第1及び第2の打ち込み杭の打設が容易となる。
【0057】
本発明のこれらおよび他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る簡易基礎1の構造を示す斜視図である。簡易基礎1は、上部で被支持体である建造物を支持するための基礎であり、鉄などの金属製である。図1に示すように、簡易基礎1は、支持部2と、蓋部4と、取り付け金具5と、ワッシャー6と、ナット7と、アンカーボルト8とを備える。
【0059】
図2は、支持部2の構造を示す斜視図である。図3は、支持部2の構造を示す正面図である。図4は、支持部2の構造を示す平面図である。図5は、支持部2の構造を示す底面図である。支持部2は、案内部3a,3b,3c,3dと、穴部9とを含む。支持部2は、中空の略球体状である。案内部3a,3b,3c,3dは、それぞれ、第1の打ち込み杭10a,10b,10c,10d(後述の図7参照)を案内するための筒状のパイプである。第1の打ち込み杭10a,10b,10c,10dは、土壌中に傾斜した状態で打ち込まれる。案内部3a,3b,3c,3dは、第1の打ち込み杭10a,10b,10c,10dの傾斜角度に応じて傾斜して配置されている。支持部2には、案内部3a,3b,3c,3dに応じた穴が穿孔されており、当該穴に案内部3a,3b,3c,3dが挿入され、支持部2との接触部分である略球体状の上半分(たとえば、図2に示すU1)及び下半分(たとえば、図2に示すU2)で接合されている。接合の方法としては、溶接やボルト締めなど、あらゆる周知の方法が利用可能である。
【0060】
穴部9は、支持部2の内部が視認できるように、支持部2の上部に設けられている。穴部9は、蓋部4によって閉ざされる。アンカーボルト8は、支持部2の下方の穴10から、挿入される。蓋部9には、アンカーボルト8を貫通させるための穴(後述の図6に示す穴4a)が設けられている。穴4aから突き出たアンカーボルト8に、取り付け金具5が差し込まれる。取り付け金具5は、ワッシャー6及びナット7によって、蓋部4の上に固定される。取り付け金具5は、被支持体をボルトやビス等で固定するための複数の穴5aを有している。
【0061】
図3に示すように、案内部3bは、水平面に対して、傾斜角度θとなるように、支持部2の球体上部から、球体下部に向けて配置されている。案内部3a,3c,3dについても、同様に、傾斜角θとなるように、支持部2の球体上部から、球体下部に向けて配置されている。図3に示すように、案内部3a,3bを正面方向に投影した場合、案内部3aと案内部3bとの間の角度は、たとえば、80度となっている。この場合、傾斜角度θは、50度であるとする。鉛直支持力及び水平支持力を考慮すると、傾斜角度θは、40度〜60度であるのが好ましいが、それに限定されるものではない。
【0062】
図4及び図5に示すように、上面方向又は底面方向に、案内部3a,3b,3c,3dを投影した場合、案内部3a,3b,3c,3dは、隣り合う案内部同士が均等な角度で配置されていることが分かる。たとえば、隣り合う案内部同士が90度の角度を有するように配置されているとよい。これによって、被支持体の荷重が均等に分散されることとなる。
【0063】
図4に示すように、案内部3a,3b,3c,3dは、穴10から挿入されるアンカーボルト8が、穴部9まで貫通することができるように、アンカーボルト8の進路を避けるようにして、配置されている。穴部9からは、支持部2の内部が視認可能である。したがって、アンカーボルト8の挿入が容易となる。
【0064】
図6は、支持部2における穴部9及び蓋部4の構造を示す拡大断面図である。蓋部4は、大小の円盤を重ね合わせたような断面階段状の形状である。穴部9は、断面階段状になっており、上部の穴が下部の穴よりも大きくなっている。図6に示すように、蓋部4を穴部9に重ねた場合、隙間4c及び隙間4bが生じるように、穴部9と蓋部4との大きさは設計されている。蓋部4の外径の少なくとも一部は、穴部9の内径の少なくとも一部よりも小さくすることによって、このような隙間を生じさせることができる。ナット7を緩め、蓋4の位置をずらすことによって、被支持体を取り付け金具5に取り付ける際、取り付け金具5の位置を微調整することができる。これによって、被支持体を最適の位置に固定することが可能となる。
【0065】
図1に示すように、取り付け金具5は、底板部5cと天板部5bとを有している。底板部5cにアンカーボルト8を挿入するための穴が設けられている。天板部5bは、被支持体の底部分となる。底板部5cと天板部5bとの間の空隙部において、アンカーボルト8がナット7によって閉められる。したがって、ナット7を緩めることができるようになっている。
【0066】
図7は、打ち込み杭が挿入された状態の簡易基礎1の構造を示す正面図である。第1の打ち込み杭10a,10b,10c,10dは、筒状のパイプである。第1の打ち込み杭10a,10b,10c,10dの外径は、案内部3a,3b,3c,3dの内径よりも小さくなっている。第1の打ち込み杭10a,10b,10c,10dは、それぞれ、案内部3a,3b,3c,3dに挿入されて、杭打ち機やハンマーなどで土壌に打ち込まれる。なお、第1の打ち込み杭10a,10b,10c,10dと案内部3a,3b,3c,3dとは、ボルトや溶接などによって接合されても良い。
【0067】
図8は、アンカーボルト8の位置を明記した簡易基礎1の構造を示す正面図である。図8に示すように、アンカーボルト8は、案内部3a,3b,3c,3dと接触しないように、上部に突き抜かれる。
【0068】
図9は、案内部3a,3b,3c,3d及び第1の打ち込み杭10a,10b,10c,10dの位置関係を示す図である。案内部3a,3b,3c,3dは、均等な角度で配置されているので、第1の打ち込み杭10a,10b,10c,10dも、均等な角度で、土壌に打ち込まれることとなる。したがって、被支持体の荷重が分散されることとなる。たとえば、図9に示すように案内部が4つである場合、案内部3aと案内部3bとが、平面図方向に投射した場合、平行になるように配置されている。また、案内部3cと案内部3dとが、平面図方向に投射した場合、平行になるように配置されている。そして、案内部3a及び案内部3bと案内部3c及び案内部3dとが、平面図方向に投射した場合、垂直に交わるように配置されている。このような配置によって、案内部3a,3b,3c,3dは、均等な角度で配置されることとなる。たとえば、案内部3aは、案内部3b及び3c用に設けられた球体上部の孔の直下に貫通しないように、球体下部側に貫通されている。案内部3b,3c,3dについても同様である。このように、球体に設けられた孔が、球体上部及び下部において、均一に配置されることによって、球体自体の強度が低下しないこととなる。なお、案内部3a,3b,3c,3dの配置方法は、これに限られるものではない。
【0069】
図10は、第2の打ち込み杭11a,11bが打ち込まれるときの様子を示す図である。なお、図10では、図面を分かりやすくするために、案内部3c,3dに打ち込まれるべき第1及び第2の打ち込み杭が省略されている。第1の打ち込み杭10aと第2の打ち込み杭11aとが組になっている。第2の打ち込み杭11a,11bは、第1の打ち込み杭10a,10bよりも長い。また、第1の打ち込み杭10bと第2の打ち込み杭11bとが組になっている。第2の打ち込み杭11a,11bの外径は、それぞれ、第1の打ち込み杭10a,10bの内径よりも小さい。土壌に掘られた穴に、支持部2が埋め込まれ、第1の打ち込み杭10a,10bが打ち込まれた後、第1の打ち込み杭10a,10bの筒状の内部を介して、第2の打ち込み杭11a,11bが打ち込まれる。案内部3c,3dについても同様である。このように、鉛直支持力及び/又は水平支持力が足らない場合、第1の打ち込み杭が打ち込まれた後、第2の打ち込み杭を打ち込むことができる。なお、第1及び第2の打ち込み杭と案内部3a,3b,3c,3dとは、ボルトや溶接などによって接合されても良い。なお、図10では、第2の打ち込み杭11a,11bの方が第1の打ち込み杭10a,10bよりも長いとしたが、第2の打ち込み杭11a,11bの方が第1の打ち込み杭10a,10bよりも短くてもよい。第2の打ち込み杭11a,11bの方が第1の打ち込み杭10a,10bよりも短い場合、第2の打ち込み杭11a,11bを打ち込む際、第2の打ち込み杭11a,11bの打設側に第2の打ち込み杭11a,11bを押進させる補助杭を当接させて、第2の打ち込み杭11a,11bを押進させるとよい。
【0070】
図11Aは、第1及び第2の打ち込み杭が打ち込まれる際に使用される土壌側先端部材13の正面図である。図11Bは、土壌側先端部材13の底面図である。図11Cは、土壌側先端部材13の平面図である。土壌側先端部材13が使用される場合、各第2の打ち込み杭は、筒状である。土壌側先端部材13は、各第1及び第2の打ち込み杭の土壌側先端に取り付けられる。土壌側先端部材13の先端部分は、尖部13aとなっている。土壌側先端部材13は、各第1の打ち込み杭の内径よりも小さい外径を有する凸部13bと、各第2の打ち込み杭の内径よりも小さい外径を有する凸部13cとを含む。
【0071】
まず、第1の打ち込み杭の先端に、土壌側先端部材13が取り付けられ、案内部に挿入されて、第1の打ち込み杭が打ち込まれる。第1の打ち込み杭が打ち込まれた状態において、土壌側先端部材13は、土壌中で、第1の打ち込み杭の先端に位置する。土壌側先端部材13が第1の打ち込み杭の先端に位置しているので、第1の打ち込み杭の内部には、土壌は侵入していない。したがって、第2の打ち込み杭を打ち込む際、第1の打ち込み杭の先端まで、第2の打ち込み杭をスムーズに挿入することができる。したがって、第1の打ち込み杭よりも長い第2の打ち込み杭を打ち込む際であっても、打設点を高くしなくてもよい。第2の打ち込み杭が第1の打ち込み杭に挿入されると、凸部13cが第2の打ち込み杭に入ることとなる。その後、第2の打ち込み杭が土壌中に打ち込まれることとなる。このように、土壌側先端部材13を用いることによって、打設点を高くすることなく第2の打ち込み杭をスムーズに打ち込むことができる。
【0072】
なお、凸部13bと凸部13cとは、共通であっても良い。すなわち、土壌側先端部材13は、尖部13aから、第2の打ち込み杭の内径よりも小さい外径を有する凸部を突出していればよい。ただし、土壌側先端部材13のずれを考慮すると、凸部13bの外径と第1の打ち込み杭の内径とは、ほぼ同一であり、凸部13cの外径と第2の打ち込み杭の内径とは、ほぼ同一であることとが好ましい。
【0073】
図12Aは、第1及び第2の打ち込み杭が打ち込まれる際に使用される打設側先端部材14の正面図である。図12Bは、打設側先端部材14の底面図である。図12Cは、打設側先端部材14の平面図である。打設側先端部材14が使用される場合、各第2の打ち込み杭は、筒状である。打設側先端部材14は、各第1及び第2の打ち込み杭の打設側先端に取り付けられる。打設側先端部材14は、各第1の打ち込み杭の内径よりも小さい外径を有する凸部14bと、各第2の打ち込み杭の内径よりも小さい外径を有する凸部14cとを含む。
【0074】
まず、第1の打ち込み杭の打設側先端に、打設側先端部材14が取り付けられ、第1の打ち込み杭が案内部に挿入される。打設側先端部材14の先端部14aが打設されることによって、第1の打ち込み杭が土壌に打ち込まれる。先端部14aの外径は、案内部の内径よりも大きい。したがって、第1の打ち込み杭が打ち込まれたとしても、打設側先端部材14は、案内部の中に入ってしまうことはない。第1の打ち込み杭が打ち込まれた後、打設側先端部材14を案内部から取り出す。その後、第2の打ち込み杭を第1の打ち込み杭と同様にして打ち込む。このように、打設側先端部材14の先端部14aの外径は、案内部の内径よりも大きいので、第1及び第2の打ち込み杭を順次打ち込むことができる。
【0075】
なお、凸部14bと凸部14cとは、共通であっても良い。すなわち、打設側先端部材14は、先端部14aから、第2の打ち込み杭の内径よりも小さい外径を有する凸部を突出していればよい。ただし、打設側先端部材14のずれを考慮すると、凸部14bの外径と第1の打ち込み杭の内径とは、ほぼ同一であり、凸部14cの外径と第2の打ち込み杭の内径とは、ほぼ同一であることとが好ましい。
【0076】
図13Aは、第1の打ち込み杭の打設側先端に取り付けられるキャップ部材15の平面図である。図13Bは、キャップ部材15の正面図である。図13Cは、キャップ部材15の背面図である。キャップ部材15は、第1の打ち込み杭の外径と略同一の凹部15aを有している。凹部15aに第1の打ち込み杭が挿入される。キャップ部材15が第1の打ち込み杭の打設側先端に取り付けられるので、第1の打ち込み杭に不要物が侵入するのを防止することができ、簡易基礎の劣化防止に役立つ。
【0077】
以上のように、第1の実施形態においては、中空の支持部2を用い、中空の支持部2に打ち込み杭を挿入して、基礎を構築することとなる。したがって、コンクリートを用いない、容易に施工が可能な簡易基礎が提供されることとなる。また、第1の実施形態では、案内部3a,3b,3c,3dによって、打ち込み杭が案内されることとなるので、施工の容易さは、さらに向上する。
【0078】
また、支持部2は略球体状であるので、支持部2にかかる荷重は、球面の接線方向と、球体の中心方向とに分解される。球体構造の場合、アーチ構造と同様、荷重の多くは、球面の接線方向に分解され、球体を圧縮する力となる。すなわち、球体の中心方向に分解された力は、球面の接線方向に分解された力に比べて、大幅に小さい。このように、支持部2の中心方向に向かう力は小さいので、支持部2自体が、長期間の使用によって破壊されるといったことを防止可能である。よって、コンクリートを用いなくても、支持部自体の強度が向上した簡易基礎が提供されることとなる。
【0079】
さらに、第1の実施形態では、案内部3a,3b,3c,3dが略球体状の上半分及び下半分で接合されている。球体の中心方向に分解される力、すなわち、案内部3a,3b,3c,3dにかかる力は、接線方向に働く力に比べて小さい。そのため、案内部3a,3b,3c,3dと支持部2との接合部分において、案内部3a,3b,3c,3dの進路方向に平行に加わる力は、垂直に加わる力に比べて小さくなる。案内部3a,3b,3c,3dにおいて垂直に加わる力は球体全体で支えることとなるので、垂直に加わる力により接合部分の破壊に与える影響は、小さい。一方、平行に加わる力は接合部分のみで支える必要があるので、平行に加わる力により接合部分の破壊に与える影響は、大きい。しかし、本実施形態では、平行に加わる力が小さいので、接合部分の破壊をできる限り防止することができる。結果、長期間の使用にも耐え得る簡易基礎が提供されることとなる。
【0080】
また、第1の実施形態に係る簡易基礎は、基本的には、球体、パイプ、及び板金といった汎用的な金属製材料を加工することによって、製造可能であるので、低コストなものとなる。また、リサイクルが可能である。
【0081】
なお、支持部の形状は、略球体状に限るものではない。たとえば、支持部は、略楕円球体状であってもよい。支持部が中空であれば、コンクリートを用いない簡易基礎は実現可能であり、略球体状や略楕円球体状に限定されるものでもない。支持部自体の荷重に対する耐力を考慮すると、支持部において、被支持体を取り付ける部分(第1の実施形態では、蓋部4及び穴部9)から、打ち込む杭が挿入される部分(第1の実施形態では、案内部3a,3b,3c,3d)に向けて、少なくとも、椀状になっているとよい。支持部の上部が椀状となることによって、被支持体の荷重が椀状表面全体に分散され、支持部自体が荷重によって、破壊されるということを防止できると期待できる。その場合、被支持体の下部の形状は、特に限られるものではなく、椀状であってもよいし、平坦状であってもよいし、角柱状であってもよい。
【0082】
支持部の上部が椀状である場合において、案内部を設ける際、案内部は、打ち込み杭の傾斜角度に応じて傾斜して配置されており、少なくとも、椀状の部分で接合されているとよい。支持部の上部を椀状にして、椀状部分で案内部を接合することによって、案内部に平行に加わる力を垂直に加わる力に比べて小さくすることができる。したがって、接合部分の破壊をできる限り防止することができる。結果、長期間の使用にも耐え得る簡易基礎が提供されることとなる。
【0083】
(第2の実施形態)
図14は、本発明の第2の実施形態に係る簡易基礎1aを示す斜視図である。図14において、第1の実施形態と同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を付し説明を省略することとする。第1の実施形態で説明したように、支持部を、少なくとも上部が椀状となるように、略球体状や略楕円球体状にすることによって、支持部自体の強度を向上させることができる。
【0084】
したがって、図14に示すように、案内部3a,3b,3c,3dを設けずに、打ち込み杭を挿入するための穴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bだけを設けて、打ち込み杭が打設されてもよい。
【0085】
図14において、穴31aから挿入された打ち込み杭は、穴31bから抜け出て、土壌に打ち込まれる。穴32aから挿入された打ち込み杭は、穴32bから抜け出て、土壌に打ち込まれる。穴33aから挿入された打ち込み杭は、穴33bから抜け出て、土壌に打ち込まれる。穴34aから挿入された打ち込み杭は、穴34bから抜け出て、土壌に打ち込まれる。打ち込み杭が打ち込まれる際、穴部9(図14上は視認できない)から、打ち込み杭の位置を確認することができるので、適切な穴に打ち込み杭を挿入することができる。
【0086】
第2の実施形態に示すように、本発明では、支持部が中空であって、被支持体を取り付ける部分(図14では、蓋部4及び穴部9)から打ち込み杭が挿入される部分(図14では、穴31a,32a,33a,34a)に向けて、椀状になっていれば、コンクリートを用いることなく、支持部自体の強度を向上させることができる簡易基礎が提供されることとなる。
【0087】
(第3の実施形態)
図15A及び15Bは、第3の実施形態に係る簡易基礎での支持部41の構造を示す正面図である。図15A及び15Bに示す構造以外は、第2の実施形態と同様である。第3の実施形態において、略球体状の支持部41は、上部支持部41aと下部支持部41bとに分離可能である。上部支持部41a及び下部支持部41bは、それぞれ、フランジ継ぎ手41c及び41dを有する。上下に分離された支持部41は、接合部42及び43において、ボルトとナットなどで接合される。なお、図15Bにおいて、上部支持部41aと下部支持部41bとは、辺縁の2箇所で接合されることとしたが、接合の箇所は、これに限られるものではない。上部支持部41aと下部支持部41bとは、辺縁の少なくとも1箇所で接合されていればよい。また、接合方法も、ボルトとナットに限らず、溶接や接着等、あらゆる周知の方法を用いてよい。上部支持部41aと下部支持部41bとが結合した後、支持部41が土壌に設置される。なお、穴44aと穴44bとが対応している。穴45aと穴45b(図面上視認できない)とが対応している。穴46aと穴46b(図面上視認できない)とが対応している。穴47a(図面上視認できない)と穴47bとが対応している。対応する穴に、打ち込み杭が挿入されることとなる。
【0088】
図16A及び16Bは、第3の実施形態に係る他の簡易基礎での支持部51の構造を示す正面図である。図16A及び16Bに示す構造以外は、第2の実施形態と同様である。略楕円球体状の支持部51は、上部支持部51aと下部支持部51bとに分離可能である。上部支持部51a及び下部支持部51bは、それぞれ、フランジ継ぎ手51c及び51dを有する。上下に分離された支持部51は、接合部52及び53において、ボルトとナットなどで接合される。なお、図16Bにおいて、上部支持部51aと下部支持部51bとは、辺縁の2箇所で接合されることとしたが、接合の箇所は、これに限られるものではない。上部支持部51aと下部支持部51bとは、辺縁の少なくとも1箇所で接合されていればよい。また、接合方法も、ボルトとナットに限らず、溶接や接着等、あらゆる周知の方法を用いてよい。上部支持部51aと下部支持部51bとが結合した後、支持部51が土壌に設置される。穴54aと穴54bとが対応している。穴55aと穴55b(図面上視認できない)とが対応している。穴56aと穴56b(図面上視認できない)とが対応している。穴57a(図面上視認できない)と穴57bとが対応している。対応する穴に、打ち込み杭が挿入されることとなる。
【0089】
第3の実施形態に示すように、支持部を上下に分離可能な構造とすることによって、施工現場には、分離された状態で支持部を運搬してもよい。よって、略球体状や略楕円球体状の支持部を運搬する場合に比べ、運搬用の荷台のスペースを有効に活用することができる。第3の実施形態においても、支持部の上部が椀状であればよいので、下部支持部の形状は特に限定されない。
【0090】
なお、第3の実施形態において、上下の支持部が接合された後、案内部が対応する穴に接合されてもよい。
【0091】
(変形例)
上記第1〜第3の実施形態に対して、以下のような変形例が考えられる。たとえば、支持部の内部の少なくとも一部に発砲スチロールが埋め込まれているとよい。これにより、沼地などで簡易基礎が沈み込むことを防止することが期待できる。
【0092】
また、生コン車の進入が可能な施工現場においては、場合によっては、支持部の内部の少なくとも一部にコンクリートが注入されていてもよい。これにより、さらなる支持力の強化を図ることができる。この場合、穴部9から、コンクリートを注入すればよい。搬入前にコンクリートが注入されていても良い。
【0093】
また、第3の実施形態のように、上下に分離可能な支持部を用いる場合、少なくとも下側の略半球状支持部又は略半楕円球状支持部に、コンクリートが注入されていてもよい。この場合は、案内部を用いる実施形態では、施工現場での注入だけでなく、搬入前にコンクリートを注入しておくことも可能である。コンクリート部分が下半分のみになるので、運搬の負担は、ある程度軽減される。
【0094】
上記各実施形態において、打ち込み杭は、一本以上であればよく、好ましくは、複数であるとよい。打ち込み杭の数に合わせて、案内部が設けられていればよい。また、打ち込み杭は、筒状でなくてもよい。打ち込み杭及び案内部は、円柱状に限られるものではなく、角柱状であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【0095】
(サイズ例)
上記第1〜第3の実施形態において、以下のようなサイズを有する簡易基礎が提供可能である。まず、第1の実施形態に示したように略球体状の支持部2を用いる場合、支持部2の外径として、8インチ(203.2mm)、10インチ(254.0mm)、12インチ(304.8mm)、14インチ(355.6mm)を用いたサイズ例が考えられる。
【0096】
次に、第3の実施形態に示したような略楕円球体状の支持部51を用いる場合のサイズを考える。図17は、支持部51のサイズの規定の仕方を示す断面図である。図17に示すように、支持部51は、上部支持部51a及び下部支持部51bについて、内径Dと、中央部の内半径Rと、フランジ部の長さLと、隅の丸みの半径rと、フランジ部以外の高さHとで規定される。なお、内半径Rの中心は、内径D上に設けられている必要はない。たとえば、R=D、r=0.1D、H=0.194Dとなる。Rが400mmから1500mmまでの間、50mm間隔で、上部支持部51a及び下部支持部51bが提供される。Rが1500mmから3000mmまでの間、100mm間隔で、上部支持部51a及び下部支持部51bが提供される。
【0097】
このように、本発明の簡易基礎をあらゆるサイズで提供することによって、橋や歩道、階段、柵、ベンチ、テーブル、遊具などの建造物の基礎として有効に利用される。ベンチや柵などの小型の建造物であれば、小さいサイズの簡易基礎を用いるとよい。中規模の橋桁などの建造物に対しては、大きいサイズの分離型の簡易基礎を用いるとよい。
【0098】
(実験例)
第1の実施形態に示す簡易基礎1を実際に製造して、載荷試験を行い、極限支持力を測定した。試験に用いた簡易基礎1において、球体の支持部2の直径は、267mmであるとした。打ち込み杭の長さは、1m、2m、及び3mの3通りとした。1mの打ち込み杭(4本の第1の打ち込み杭10a)それぞれの直径は、42.7mmとした。2mの打ち込み杭(4本の第1の打ち込み杭10a)それぞれの直径は、42.7mmとした。3mの打ち込み杭の内、4本の第1の打ち込み杭10aのそれぞれの直径は42.7mmとし、4本の第1の打ち込み杭10aのそれぞれの杭長は2mとした。さらに、3mの打ち込み杭の内、4本の第2の打ち込み杭11aのそれぞれの直径は34.0mmとした。第2の打ち込み杭11aの杭長は3mとしたが、第1の打ち込み杭10aの先端から突出している長さは1mとしたので、全体の杭長は、3mとなった。なお、案内部3a〜3dの長さは、それぞれ0.3mであるとした。そのため、打設された打ち込み杭が土壌と接して基礎として有効に機能する長さは、杭長−0.3mである。
【0099】
試験は、兵庫県の某ゴルフ場内の砂質土の敷地内で秘密裏に行われた。試験は、以下のような手順で行われた。まず、スウェーデン式サウンディング試験(JIS A 1221に準拠)を行って、簡易基礎1を設置する場所が軟弱地盤であるかを確認した。次に、当該地盤に簡易基礎1を設置し、打ち込み杭を打設して、平板載荷試験(地盤工学会基準 JGS 1521−2003に準拠)を行った。平板載荷試験は、杭長が1m、2m、及び3mの簡易基礎1に対して行われた。
【0100】
スウェーデン式サウンディング試験の試験結果を表1に示す。表1では、No.1の地点、及びNo.1の近くのNo.2の地点について、深度に対するN値が示されている。No.1の地点では、深度が2.90mになるとN値が24.3となっている。また、No.2の地点では、深度が2.50mになるとN値が11.4となっている。したがって、深度が2.50m以上は、試験層としては不適切である。試験で用いた簡易基礎1において、案内部3a〜3dの傾斜角度は、40度としている。そのため、打ち込み杭の先端の深部は、最大でも約2mとなる。深度が2.90m(No.1の地点)及び2.50m(No.2の地点)を除いた試験層は、平均3.0のN値を有する。したがって、試験層は、砂質土の軟弱な地盤であった。よって、簡易基礎1の効果を検証するのに適した地盤であった。
【表1】
【0101】
次に、平板載荷試験を行った。載荷装置は、載荷板、油圧ジャッキ、スタンドパイプ及び反力装置によって構成される。簡易基礎1の上に直径300mm・厚さ25mmの鋼製円板を載荷板として載せ、分離式油圧ジャッキを当該載荷板の上に設置し、当該油圧ジャッキと反力装置との間にスタンドパイプを配置して、油圧ジャッキの反力を反力装置で受け止めることとした。反力装置として、バックホウを用いた。載荷板、油圧ジャッキ、スタンドパイプ及び反力装置は、偏心荷重が加わらないように組み立てられた。計測装置は、荷重計及び沈下量計測装置によって構成される。不動梁に沈下量計測装置を取り付けて、簡易基礎の沈下量を計測した。上記のような試験装置を設置して、最大載荷重を10.5tとし、荷重ピッチを1.3125tとし、8段階の多サイクル方式で載荷試験を行った。載荷試験の結果を、表2に示す。
【表2】
【0102】
表2の結果に基づいて、極限支持力及び長期許容支持力を算出した結果を表3に示す。長期許容支持力は、極限支持力の1/3とした。
【表3】
【0103】
表3に示すように、一つの簡易基礎1によって、1.31t〜2.62tの長期許容支持力が得られた。本出願人が施工した過去の建造物の実績では、載荷重は、一般的に、0.5t〜3.5tである。過去の実績において、本実施例に係る一以上の簡易基礎を用いれば、十分に、軟弱地盤であったとしても、建造物を支持することが可能であることが立証された。
【0104】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明によれば、できる限り、コンクリートを用いない容易に施工が可能な簡易基礎が提供されることとなり、建築や土木などの分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る簡易基礎1の構造を示す斜視図
【図2】支持部2の構造を示す斜視図
【図3】支持部2の構造を示す正面図
【図4】支持部2の構造を示す平面図
【図5】支持部2の構造を示す底面図
【図6】支持部2における穴部9及び蓋部4の構造を示す拡大断面図
【図7】打ち込み杭が挿入された状態の簡易基礎1の構造を示す正面図
【図8】アンカーボルト8の位置を明記した簡易基礎1の構造を示す正面図
【図9】案内部3a,3b,3c,3d及び第1の打ち込み杭10a,10b,10c,10dの位置関係を示す図
【図10】第2の打ち込み杭11a,11bが打ち込まれるときの様子を示す図
【図11A】第1及び第2の打ち込み杭が打ち込まれる際に使用される土壌側先端部材13の正面図
【図11B】土壌側先端部材13の底面図
【図11C】土壌側先端部材13の平面図
【図12A】第1及び第2の打ち込み杭が打ち込まれる際に使用される打設側先端部材14の正面図
【図12B】打設側先端部材14の底面図
【図12C】打設側先端部材14の平面図
【図13A】第1の打ち込み杭の打設側先端に取り付けられるキャップ部材15の平面図
【図13B】キャップ部材15の正面図
【図13C】キャップ部材15の背面図
【図14】本発明の第2の実施形態に係る簡易基礎1aを示す斜視図
【図15A】第3の実施形態に係る簡易基礎での支持部41の構造を示す正面図
【図15B】第3の実施形態に係る簡易基礎での支持部41の構造を示す正面図
【図16A】第3の実施形態に係る他の簡易基礎での支持部51の構造を示す正面図
【図16B】第3の実施形態に係る他の簡易基礎での支持部51の構造を示す正面図
【図17】支持部51のサイズの規定の仕方を示す断面図
【図18】特許文献7に開示されている簡易基礎を示す斜視図
【符号の説明】
【0107】
1,1a 簡易基礎
2,41,51 支持部
3a,3b,3c,3d 案内部
4 蓋部
4c,4b 隙間
5 取り付け金具
6 ワッシャー
7 ナット
8 アンカーボルト
9 穴部
10 穴
10a,10b,10c,10d 第1の打ち込み杭
11a,11b 第2の打ち込み杭
12 被支持体
13 土壌側先端部材
13a 尖部
13b,13c,14b,14c 凸部
14 打設側先端部材
14a 先端部
15 キャップ部材
15a 凹部
31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34b 穴
41a,51a 上部支持部
41b,51b 下部支持部
42,43,52,53 接合部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被支持体を支持するための金属製の簡易基礎であって、
土壌中に傾斜した状態で打ち込まれる1以上の打ち込み杭と、
前記打ち込み杭が挿入され、前記被支持体を上部で取り付けるための支持部とを備え、
前記支持部は、中空であり、前記被支持体を取り付ける部分から前記打ち込み杭が挿入される部分に向けて椀状となっていることを特徴とする、簡易基礎。
【請求項2】
前記支持部は、中空の略球体状又は略楕円球体状であることを特徴とする、請求項1に記載の簡易基礎。
【請求項3】
前記支持部は、
内部が視認できるように上部に設けられた穴部と、
下方から前記穴部に向かって挿入されるアンカーボルトと、
前記アンカーボルトを貫通させると共に、前記穴部を閉じるための蓋部とを含む、請求項2に記載の簡易基礎。
【請求項4】
前記蓋部の外径の少なくとも一部は、前記穴部の内径の少なくとも一部よりも小さいことを特徴とする、請求項3に記載の簡易基礎。
【請求項5】
前記支持部は、前記アンカーボルトに取り付けられる前記被支持体を固定するための取り付け金具をさらに含み、
前記取り付け金具は、前記アンカーボルトに取り付けるナットを締めるための空隙部を有する、請求項3に記載の簡易基礎。
【請求項6】
前記支持部は、前記打ち込み杭を案内するための筒状の1以上の案内部をさらに含み、
前記案内部は、前記打ち込み杭の傾斜角度に応じて傾斜して配置されており、略球体状又は略楕円球体状の上半分及び/又は下半分で接合されていることを特徴とする、請求項2に記載の簡易基礎。
【請求項7】
前記案内部は、隣り合う前記案内部同士が均等な角度で配置されていることを特徴とする、請求項6に記載の簡易基礎。
【請求項8】
前記案内部の傾斜角度は、水平面に対して、40度〜60度であることを特徴とする、請求項6に記載の簡易基礎。
【請求項9】
前記支持部は、上下に分離可能な上部支持部と下部支持部とを含み、
前記上部支持部と前記下部支持部とは、土壌への設置時に接合されることを特徴とする、請求項2に記載の簡易基礎。
【請求項10】
前記打ち込み杭は、筒状の第1の打ち込み杭と前記第1の打ち込む杭の内径よりも小さい外径を有する第2の打ち込み杭との1以上の組からなり、
前記第2の打ち込み杭は、前記第1の打ち込み杭が打ち込まれた後、前記第1の打ち込み杭の筒状内部を介して、土壌に打ち込まれることを特徴とする、請求項1に記載の簡易基礎。
【請求項11】
前記第2の打ち込み杭は、筒状であり、
さらに、前記第1の打ち込み杭の内径よりも小さい第1の凸部と、前記第2の打ち込み杭の内径よりも小さい第2の凸部とを有し、前記第1及び第2の打ち込み杭を打ち込む際に、前記第1及び第2の杭の土壌側先端に取り付けられる土壌側先端部材を備える、請求項10に記載の簡易基礎。
【請求項12】
前記支持部は、前記第1及び第2の打ち込み杭を案内するための筒状の1以上の案内部を含み、
前記第2の打ち込み杭は、筒状であり、
さらに、前記案内部の内径よりも大きい外径を有する先端部を含む打設側先端部材を備える、請求項10に記載の簡易基礎。
【請求項13】
前記第1の打ち込み杭の打設側先端に取り付けられるキャップ部材をさらに備える、請求項10に記載の簡易基礎。
【請求項14】
前記支持部は、前記打ち込み杭を案内するための筒状の1以上の案内部を含み、
前記案内部は、前記打ち込み杭の傾斜角度に応じて傾斜して配置されており、少なくとも前記椀状の部分で接合されていることを特徴とする、請求項1に記載の簡易基礎。
【請求項15】
被支持体を支持するための金属製の簡易基礎であって、
土壌中に傾斜した状態で打ち込まれる1以上の打ち込み杭と、
略球体状又は略楕円球体状であり、前記打ち込み杭が挿入され、前記被支持体を上部で取り付けるための支持部と、
前記打ち込み杭の傾斜角度に応じて傾斜して配置されており、略球体状又は略楕円球体状の上半分及び/又は下半分で前記支持部に接合されている前記打ち込み杭を案内するための筒状の1以上の案内部とを備え、
前記支持部の内部の少なくとも一部には、発砲スチロールが埋め込まれていることを特徴とする、簡易基礎。
【請求項16】
被支持体を支持するための金属製の簡易基礎であって、
土壌中に傾斜した状態で打ち込まれる1以上の打ち込み杭と、
略球体状又は略楕円球体状であり、前記打ち込み杭が挿入され、前記被支持体を上部で取り付けるための支持部と、
前記打ち込み杭の傾斜角度に応じて傾斜して配置されており、略球体状又は略楕円球体状の上半分及び下半分で前記支持部に接合されている前記打ち込み杭を案内するための筒状の1以上の案内部とを備え、
前記支持部の内部の少なくとも一部には、コンクリートが注入されていることを特徴とする、簡易基礎。
【請求項17】
被支持体を支持するための金属製の簡易基礎であって、
土壌中に傾斜した状態で打ち込まれる1以上の打ち込み杭と、
上下に分離可能な略球体状又は略楕円球体状であり、前記打ち込み杭が挿入され、前記被支持体を上部で取り付けるための支持部とを備え、
前記支持部において、分離可能な少なくとも下側の略半球状部又は略半楕円球状部には、コンクリートが注入されていることを特徴とする、簡易基礎。
【請求項18】
被支持体の基礎を構築するための基礎工事方法であって、
前記被支持体を取り付ける部分から1以上の打ち込み杭が挿入される部分に向けて椀状となっている中空の支持部を設置する工程と、
前記支持部に設けられた孔に前記打ち込み杭を挿入して、前記打ち込み杭を土壌中に打ち込む工程とを備える、基礎工事方法。
【請求項19】
前記打ち込み杭を土壌中に打ち込む工程では、前記打ち込み杭の傾斜角度に応じて前記支持部に傾斜して接合されており、少なくとも前記椀状の部分で接合されている筒状の1以上の案内部に、前記打ち込み杭を挿入して、前記打ち込み杭を土壌中に打ち込むことを特徴とする、請求項18に記載の基礎工事方法。
【請求項20】
前記打ち込み杭は、筒状の第1の打ち込み杭と前記第1の打ち込む杭の内径よりも小さい外径を有する第2の打ち込み杭との1以上の組からなり、
前記第2の打ち込み杭は、前記第1の打ち込み杭が打ち込まれた後、前記第1の打ち込み杭の筒状内部を介して、土壌に打ち込まれることを特徴とする、請求項18に記載の基礎工事方法。
【請求項21】
前記支持部は、上下に分離可能な略球体状又は略楕円球体状であり、
前記支持部を設置する工程では、下側の略半球状部又は略半楕円球状部と、上側の略半球状部又は略半楕円球状部とを結合した後、前記支持部が設置されることを特徴とする、請求項18に記載の基礎工事方法。
【請求項1】
被支持体を支持するための金属製の簡易基礎であって、
土壌中に傾斜した状態で打ち込まれる1以上の打ち込み杭と、
前記打ち込み杭が挿入され、前記被支持体を上部で取り付けるための支持部とを備え、
前記支持部は、中空であり、前記被支持体を取り付ける部分から前記打ち込み杭が挿入される部分に向けて椀状となっていることを特徴とする、簡易基礎。
【請求項2】
前記支持部は、中空の略球体状又は略楕円球体状であることを特徴とする、請求項1に記載の簡易基礎。
【請求項3】
前記支持部は、
内部が視認できるように上部に設けられた穴部と、
下方から前記穴部に向かって挿入されるアンカーボルトと、
前記アンカーボルトを貫通させると共に、前記穴部を閉じるための蓋部とを含む、請求項2に記載の簡易基礎。
【請求項4】
前記蓋部の外径の少なくとも一部は、前記穴部の内径の少なくとも一部よりも小さいことを特徴とする、請求項3に記載の簡易基礎。
【請求項5】
前記支持部は、前記アンカーボルトに取り付けられる前記被支持体を固定するための取り付け金具をさらに含み、
前記取り付け金具は、前記アンカーボルトに取り付けるナットを締めるための空隙部を有する、請求項3に記載の簡易基礎。
【請求項6】
前記支持部は、前記打ち込み杭を案内するための筒状の1以上の案内部をさらに含み、
前記案内部は、前記打ち込み杭の傾斜角度に応じて傾斜して配置されており、略球体状又は略楕円球体状の上半分及び/又は下半分で接合されていることを特徴とする、請求項2に記載の簡易基礎。
【請求項7】
前記案内部は、隣り合う前記案内部同士が均等な角度で配置されていることを特徴とする、請求項6に記載の簡易基礎。
【請求項8】
前記案内部の傾斜角度は、水平面に対して、40度〜60度であることを特徴とする、請求項6に記載の簡易基礎。
【請求項9】
前記支持部は、上下に分離可能な上部支持部と下部支持部とを含み、
前記上部支持部と前記下部支持部とは、土壌への設置時に接合されることを特徴とする、請求項2に記載の簡易基礎。
【請求項10】
前記打ち込み杭は、筒状の第1の打ち込み杭と前記第1の打ち込む杭の内径よりも小さい外径を有する第2の打ち込み杭との1以上の組からなり、
前記第2の打ち込み杭は、前記第1の打ち込み杭が打ち込まれた後、前記第1の打ち込み杭の筒状内部を介して、土壌に打ち込まれることを特徴とする、請求項1に記載の簡易基礎。
【請求項11】
前記第2の打ち込み杭は、筒状であり、
さらに、前記第1の打ち込み杭の内径よりも小さい第1の凸部と、前記第2の打ち込み杭の内径よりも小さい第2の凸部とを有し、前記第1及び第2の打ち込み杭を打ち込む際に、前記第1及び第2の杭の土壌側先端に取り付けられる土壌側先端部材を備える、請求項10に記載の簡易基礎。
【請求項12】
前記支持部は、前記第1及び第2の打ち込み杭を案内するための筒状の1以上の案内部を含み、
前記第2の打ち込み杭は、筒状であり、
さらに、前記案内部の内径よりも大きい外径を有する先端部を含む打設側先端部材を備える、請求項10に記載の簡易基礎。
【請求項13】
前記第1の打ち込み杭の打設側先端に取り付けられるキャップ部材をさらに備える、請求項10に記載の簡易基礎。
【請求項14】
前記支持部は、前記打ち込み杭を案内するための筒状の1以上の案内部を含み、
前記案内部は、前記打ち込み杭の傾斜角度に応じて傾斜して配置されており、少なくとも前記椀状の部分で接合されていることを特徴とする、請求項1に記載の簡易基礎。
【請求項15】
被支持体を支持するための金属製の簡易基礎であって、
土壌中に傾斜した状態で打ち込まれる1以上の打ち込み杭と、
略球体状又は略楕円球体状であり、前記打ち込み杭が挿入され、前記被支持体を上部で取り付けるための支持部と、
前記打ち込み杭の傾斜角度に応じて傾斜して配置されており、略球体状又は略楕円球体状の上半分及び/又は下半分で前記支持部に接合されている前記打ち込み杭を案内するための筒状の1以上の案内部とを備え、
前記支持部の内部の少なくとも一部には、発砲スチロールが埋め込まれていることを特徴とする、簡易基礎。
【請求項16】
被支持体を支持するための金属製の簡易基礎であって、
土壌中に傾斜した状態で打ち込まれる1以上の打ち込み杭と、
略球体状又は略楕円球体状であり、前記打ち込み杭が挿入され、前記被支持体を上部で取り付けるための支持部と、
前記打ち込み杭の傾斜角度に応じて傾斜して配置されており、略球体状又は略楕円球体状の上半分及び下半分で前記支持部に接合されている前記打ち込み杭を案内するための筒状の1以上の案内部とを備え、
前記支持部の内部の少なくとも一部には、コンクリートが注入されていることを特徴とする、簡易基礎。
【請求項17】
被支持体を支持するための金属製の簡易基礎であって、
土壌中に傾斜した状態で打ち込まれる1以上の打ち込み杭と、
上下に分離可能な略球体状又は略楕円球体状であり、前記打ち込み杭が挿入され、前記被支持体を上部で取り付けるための支持部とを備え、
前記支持部において、分離可能な少なくとも下側の略半球状部又は略半楕円球状部には、コンクリートが注入されていることを特徴とする、簡易基礎。
【請求項18】
被支持体の基礎を構築するための基礎工事方法であって、
前記被支持体を取り付ける部分から1以上の打ち込み杭が挿入される部分に向けて椀状となっている中空の支持部を設置する工程と、
前記支持部に設けられた孔に前記打ち込み杭を挿入して、前記打ち込み杭を土壌中に打ち込む工程とを備える、基礎工事方法。
【請求項19】
前記打ち込み杭を土壌中に打ち込む工程では、前記打ち込み杭の傾斜角度に応じて前記支持部に傾斜して接合されており、少なくとも前記椀状の部分で接合されている筒状の1以上の案内部に、前記打ち込み杭を挿入して、前記打ち込み杭を土壌中に打ち込むことを特徴とする、請求項18に記載の基礎工事方法。
【請求項20】
前記打ち込み杭は、筒状の第1の打ち込み杭と前記第1の打ち込む杭の内径よりも小さい外径を有する第2の打ち込み杭との1以上の組からなり、
前記第2の打ち込み杭は、前記第1の打ち込み杭が打ち込まれた後、前記第1の打ち込み杭の筒状内部を介して、土壌に打ち込まれることを特徴とする、請求項18に記載の基礎工事方法。
【請求項21】
前記支持部は、上下に分離可能な略球体状又は略楕円球体状であり、
前記支持部を設置する工程では、下側の略半球状部又は略半楕円球状部と、上側の略半球状部又は略半楕円球状部とを結合した後、前記支持部が設置されることを特徴とする、請求項18に記載の基礎工事方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−30428(P2009−30428A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148509(P2008−148509)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(505118970)ミロモックル産業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(505118970)ミロモックル産業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
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