説明

粉体塗料

本発明は、焼成温度の低い紫外(UV)線硬化型または熱硬化型の粉体塗料ポリマー材料および熱に弱くかつ/または可撓性を有する基材用の組成物に関する。より詳細には、このような粉体塗料ポリマー材料および組成物は、結晶性または半結晶性のポリマーをベースとしているが、低温(6O℃〜14O℃)で溶融および流動させ、そして溶融状態で紫外線または熱エネルギーによって硬化させると、完全に非晶質である非結晶性のガラス転移温度(T)の低い高分子マトリックスまたは結晶化度が低くTの低い高分子マトリックスのいずれかを有する(非常に高い)可撓性を有する塗膜となる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、オリゴマーおよび/またはポリマーならびにこれらを含む粉体塗料に好適な組成物ならびにその作製方法に関する。これらのオリゴマーおよび/またはポリマーおよび組成物は、特に(これらに限定されるわけではないが)、放射線および/または熱によって硬化させるのに適している。本発明はまた、塗料、塗装された基材、およびその作製方法にも関する。
【0002】
特に本発明は、粉体塗料に好適な焼成(baking)温度の低い放射線硬化型および/または熱硬化型のオリゴマーおよび/またはポリマーならびに熱に弱くかつ/または可撓性を有する基材に特に好適なこれらを含む組成物に関する。より具体的には、本発明は、熱に曝すと60℃〜180℃、より好ましくは60°〜140℃の温度で溶融して流動し、続いて溶融状態で放射線および/または熱エネルギーによって硬化させると、可撓性が非常に高く、完全に非晶質であるガラス転移温度(T)の低い高分子マトリックスまたは可撓性が非常に高く結晶化度が低くTの低い高分子マトリックスのいずれかを有する塗膜を与えることとなる結晶性または半結晶性のオリゴマーまたはポリマーに関する。本発明はまた、少なくとも1種のこの種の結晶性または半結晶性のオリゴマーおよび/またはポリマーをベースとする粉体塗料に好適な組成物にも関する。
【0003】
粉体塗料組成物は、室温下で流動性を有する乾燥した微粉体形態にあるソリッド塗料組成物である。ソリッド塗料組成物の各粒子は、可能な限り、この組成物の成分をすべて含有していることが必要である。主塗膜形成成分から構成されるバインダーのマトリックス中には、十分に混合された、例えば着色剤、流動化剤、架橋剤等の微量成分が存在する。通常、粉体塗料組成物は、基材表面に適用され、「焼成」または「焼き付け(stoving)」温度と称されることが多い高温下で溶融させることによって連続塗膜を形成する。この焼成温度は、熱硬化型の配合の場合は、典型的には160〜200℃の範囲にあるが、状況に応じてこの範囲から逸脱してもよい。
【0004】
従来の液体系と比較した粉体塗料の明らかな利点は、
1.適用時に粉体を再利用できることから、塗料組成物の材料がほぼ100%利用されること、
2.揮発性有機化合物(VOC)を放出しないこと、
3.吹付けを多量に重ねて行う必要がなく、1回の吹付けで平滑な塗膜を得ることができること、
4.従来法に比べて単位面積当たりのコストが低いこと、
にある(例えば、マイセフ・T・A(Misev,T.A.)、「粉体塗料(Powder Coatings)」、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・リミテッド(John Wiley and Sons Ltd)、チチェスター(Chichester)、(1991年);ハワード・J(Howard,J.)、Surface Coating International(1995年)、417頁参照)。
【0005】
したがって、粉体塗料は経済的であり、エネルギー効率がよく、生態系または環境に優しい表面塗装技術である。これらは乾燥した固形形態にあるため、汚れを生じにくく使用が簡便でもある。
【0006】
粉体塗料は多くの利点を有しているにも拘わらず、通常は金属の塗装に使用され、これよりも低い焼成および/または硬化温度(好ましくは120℃未満)が要求される皮革、木材、プラスチック等の熱に弱い基材の塗装には用いられないのが通常である。しかしながら、従来の熱硬化型粉体では硬化温度をこれよりも低くすることができない。それは、硬化温度が低い場合に用いられる反応性架橋剤が粉体の貯蔵期間に悪影響を及ぼすことになるとともに、焼成および硬化過程における粘度の増大が急速になり過ぎることによって流動にも悪影響が及ぼされるためである。このような条件下においては最適な流動が起こらないため、最終塗膜の平滑性は悪影響を受け、やはり最適なものにはならない。先行技術においては、流動を改善するためにブロック化された架橋剤、例えばブロックトイソシアネート(例えば1974年付のDE−2.542.191号明細書参照)等を使用することが記載されている。このようなブロックトイソシアネートは、イソシアネートが化学反応性を有するようになる温度閾値を上昇させることにより架橋反応を遅延させるものであり、したがって、架橋反応によって粘度が高くなり過ぎる前に塗料材料を流動させるのに十分な時間が得られる。
【0007】
熱に弱い基材を塗装するための低温紫外(UV)線硬化型粉体が提案されている(EP0636669号明細書、米国特許第4129488号明細書、米国特許第4163810号明細書、米国特許第5922473号明細書、米国特許第6005017号明細書、米国特許第6017640号明細書、米国特許第6106905号明細書)。架橋反応は、熱によってではなく、紫外線に曝されることによってのみ開始するので、加熱による流動段階と硬化または架橋反応段階とが分かれている。さらに、UV硬化は非常に高速(秒オーダー)であり、硬化を完結させるために長時間加熱することが不要になる。したがって、UV硬化型粉体の場合、UV硬化させる前にガラス転移温度(T)または融点を超える温度で粉体を十分に流動させて連続した平滑な溶融膜にするためにのみ加熱が必要となる。これにより、熱硬化系よりも焼成温度の低い粉体を配合することが可能になる。
【0008】
現在の粉体塗料は、系の基体樹脂として、非晶質ポリマーまたは少なくとも非晶質のポリマーをベースとしている。この種の粉体塗料系には欠点が2つある。まず1つ目は、室温で貯蔵する際に粉体に耐ブロッキング性を付与する(自由流動性を有する微粉体にする)ためにポリマーのTを高く(普通は50℃超)することが必要とされるため、形成された膜が本質的に硬く、可撓性がないことにある。2つ目は、流動性が低いことにある。
【0009】
非晶質ポリマーを含む配合物の流動性を改善するために、UV硬化型粉体塗料の配合に結晶性ポリマーが添加される場合がある(EP0636669号明細書、米国特許第6790876号明細書、米国特許第6541535号明細書、米国特許第5763099号明細書、米国特許第5811198号明細書)。結晶性ポリマーを使用すると膜に濁りが生じることがある。この濁りおよび斑点が生じる問題を解決するために、通常は結晶性樹脂の量が樹脂系の10重量%未満に制限されるが、その代償として流動性が悪くなり、したがって、より高い焼成温度が必要となる。濁りを低減するかまたはなくすために再結晶化または防曇剤を用いてもよい(米国特許第6136882号明細書)。
【0010】
ポリウレタンアクリレートをベースとするUV硬化型粉体塗料組成物がヴェニング(Wenning)により開示された(米国特許第6747070号明細書)。この樹脂は、ポリエステル骨格および末端のアクリレート基をベースとするポリウレタンである。この組成物における主バインダー樹脂(60〜90重量%)は非晶質であったが、結晶性樹脂(10〜40重量%)もこの配合物に添加された。
【0011】
半結晶性ポリウレタンアクリレート樹脂を含む粉体塗料組成物がホール(Hall)により開示された(米国特許第6525161号明細書)。この系においては、アクリル酸ヒドロキシエチル等のモノヒドロキシアクリレートモノマーによってUV硬化型の官能基が導入された。こうして調製された樹脂は、アクリレート基で末端封止されている。
【0012】
リー(Li)ら[C・リー(C.Li)、R・M・ナガラジャン(R.M.Nagarajan)、C・C・チャン(C.C.Chiang)、S・L・クーパー(S.L.Cooper)、Polym.Engineering Sci、第26巻、第20号(1986年)]およびクーブル(Couvret)ら[D・クーブル(D.Couvret)、J・ブロッセ(J.Brosse),S・シュバリエ(S.Chevalier)、J・セネット(J.Senet)、Eur.Polym.J.、第27巻第2号、193頁(1991年)]は、オリゴマーまたはポリマー骨格の側部にペンダントアクリレート基を導入する彼らの研究について発表している。しかしながら、ペンダント官能基を導入する彼らの研究は、粉体塗料に関連するものでも結晶性オリゴマー/ポリマーに関するものでもない。
【0013】
可撓性が非常に高くかつ/または熱に弱い基材の塗装に特に低温で使用することができ、それにも拘わらず貯蔵安定性を有する粉体塗料組成物に好適なオリゴマーまたはポリマーがあれば望ましいであろう。これまでは、このようなオリゴマーも、ポリマーも、粉体塗料組成物も提供されていなかった。
【0014】
ここにおける(以後も同様に)「熱に弱い基材」とは、その性質のため熱の影響によって部分的または完全に劣化するであろう基材を意味するものとする。したがって、この種の基材は、通常は130℃未満、好ましくは110℃未満の温度で処理することが必要である。熱に弱い基材としては、例えば、皮革、人工皮革、繊維製品、(軟質)プラスチック、紙、厚紙、木材、例えばパーティクルボードや高、中、または低密度ファイバーボード等の複合木材が挙げられる。
【0015】
非常に可撓性の高い基材の例としては、金属線、ゴムおよびゴム様素材が挙げられる。
【0016】
広い態様においては、本発明は、粉体塗料組成物に好適な結晶性または半結晶性のオリゴマーまたはポリマーであって、放射線および/または熱エネルギーによる硬化によって、結晶化度が0%であるかまたは低減された可撓性高分子マトリックスに転化するオリゴマーまたはポリマーを提供する。本発明によるオリゴマーまたはポリマーを硬化させて得られる高分子マトリックスの性質のため、本発明は可撓性基材に適用するのに特に好適である。しかしながら、本発明は可撓性基材を使用することに限定されず、より硬質の基材にも非常に好適に適用することができる。
【0017】
ここにおける(以後も同様に)「高分子マトリックス」とは、厳密に必要とされる他の化学物質のみの存在下に本発明による結晶性または半結晶性のオリゴマーまたはポリマーを硬化または架橋させた後に得られる網目を意味する。したがって、例えばUV硬化に好適な基を備えたオリゴマーまたはポリマーから出発して高分子マトリックスを得ようとする場合、少なくとも光開始剤は「厳密に必要とされる他の化学物質」である。熱硬化に好適な基を備えたオリゴマーまたはポリマーから出発して高分子マトリックスを得ようとする場合、少なくとも架橋剤は「厳密に必要とされる他の化学物質」である。このような意味で、例えば顔料や着色剤が「厳密に必要とされる他の化学物質」ではないことは明らかである。
【0018】
本発明の文脈における「可撓性高分子マトリックス」または「可撓性ポリマー」または「可撓性塗膜」とは、状況に応じて、可撓性が少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも100%のマトリックスまたはポリマーまたは塗膜を意味する。可撓性は、ISO標準527に準ずる(ただし引張試験速度100mm/min、最大引張距離(maximum tensile distance)50mmを用いる)引張破壊伸びとして測定される。マトリックスおよび塗膜の場合、この測定は、顔料を含まないマトリックスまたは塗膜で実施される。可撓性高分子マトリックスまたは可撓性ポリマーについては、ステーブル・マイクロ・システム(Stable Micro System)(SMS)引張試験機を用いて試験を行った。引張強度を以下に示すように算出した。
【数1】


(式中、断面積=平均幅×平均厚さ)
また、引張破壊伸びを以下のように算出した。
【数2】

【0019】
特に本発明は、硬化させることによって結晶化度が0%であるかまたは低減された可撓性の熱硬化型高分子マトリックスに転化する粉体塗料組成物に好適な結晶性または半結晶性のオリゴマーまたはポリマーに関する。
【0020】
さらなる態様においては、本発明は、熱に曝すと60℃〜180℃、より好ましくは60°〜140℃の低温で溶融して流動し、続いて溶融状態で放射線および/または熱エネルギーによって硬化させると、可撓性が非常に高く、完全に非晶質であるガラス転移温度(T)の低い高分子マトリックスまたは可撓性が非常に高く結晶化度が低くTの低い高分子マトリックスのいずれかを与えることとなる結晶性または半結晶性のオリゴマーおよび/またはポリマーであって、融点が160℃以下であり、硬化によりTが30℃以下の可撓性高分子マトリックスを与えるオリゴマーおよび/またはポリマーに関する。好ましくは、融点は120℃未満である。好ましくは、Tは20℃未満である。より好ましくは、融点は120℃未満であり、Tは20℃未満である。好ましくは、このオリゴマーまたはポリマーは、紫外線または熱によって硬化させることができる。
【0021】
一態様においては、本発明は、粉体塗料組成物に好適な結晶性または半結晶性のオリゴマーまたはポリマーであって、このオリゴマーまたはポリマーを硬化させる際に結晶化度が0%であるかまたは低減された可撓性を有する高分子マトリックスを得るためにこのオリゴマーまたはポリマーをさらに重合および/または架橋させるための、オリゴマーまたはポリマー鎖に沿ってランダムに分布するペンダント官能基を含む分岐鎖分子を含む、オリゴマーまたはポリマーを提供する。好ましくは、このオリゴマーまたはポリマーは、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、またはポリウレアである。硬化に対し不活性なペンダント基も存在していてもよい。
【0022】
他の態様においては、本発明は、結晶性または半結晶性のオリゴマーまたはポリマーのモノマーならびに1種またはそれ以上の共重合可能なモノマーを含む粉体塗料に好適な組成物であって、少なくとも1種のモノマーは、この組成物を硬化させる際に結晶化度が0%であるかまたは低減された可撓性ポリマーを得るために樹脂をさらに重合および/または架橋させる、組成物を提供する。
【0023】
好ましい態様においては、本発明は、結晶性または半結晶性のポリウレタン、ポリエステル、ポリアミドポリカーボネート、またはポリウレアのモノマーおよび1種またはそれ以上の共重合可能なモノマーを含む粉体塗料に好適な組成物であって、少なくとも1種の共重合可能なモノマーは少なくとも2個の官能基または反応基および少なくとも1個の分岐基を有し、この共重合可能なモノマーは、この組成物を硬化させる際に結晶化度が0%であるかまたは低減された可撓性高分子マトリックスを得るためにオリゴマーまたはポリマーをさらに重合および/または架橋させる、組成物を提供する。
【0024】
好ましい態様においては、粉体塗料組成物に好適な結晶性または半結晶性のポリウレタンであって、ジイソシアネート、直鎖ジオール、および1種またはそれ以上の分岐ジオールから誘導された単位を含む結晶性または半結晶性のポリウレタンが提供される。この結晶性または半結晶性のポリウレタンを硬化させる際にさらなる重合および/または架橋が起こり、その結果として、結晶化度が0%であるかまたは低減された可撓性高分子マトリックスが得られる。好ましくは、オリゴマーおよび/またはポリマーは、結果として得られる結晶化度が0%であるかまたは低減された可撓性高分子マトリックスのTが低くなるように選択される。好ましくは、Tは30℃未満、より好ましくは、Tは10℃以下、よりさらに好ましくは、0℃以下である。
【0025】
他の好ましい態様においては、粉体塗料組成物に好適な結晶性または半結晶性のポリエステルであって、脂肪族もしくは芳香族ジカルボン酸またはその機能的誘導体(脂肪族または芳香族酸ハライド、酸無水物、エステル等)、直鎖ジオール、および1種またはそれ以上の分岐ジオールから誘導された単位を含む結晶性または半結晶性のポリエステルが提供される。上述したように、これを硬化させることによって、結晶化度が0%であるかまたは低減された可撓性高分子マトリックスが得られる。
【0026】
本発明は、1種またはそれ以上の結晶性または半結晶性のオリゴマーまたはポリマーを含む粉体塗料に好適な組成物であって、その(または各)オリゴマーまたはポリマーが、少なくとも2個の官能性末端基を含む直鎖状であり、上記組成物は、硬化されることによって、結晶化度が0%であるかまたは低減された可撓性高分子マトリックスに転化する、組成物も提供する。例えば、融点の異なる2種の異なるオリゴマーおよび/またはポリマーを使用してもよい。
【0027】
本発明には、本明細書において記載されたオリゴマーまたはポリマーならびに本発明の少なくとも1種のオリゴマーまたはポリマーを含む粉体塗料組成物として好適な塗料組成物の両方が包含される。当業者には明らかであるが、本発明による組成物は、典型的には、塗料組成物に通常用いられる少なくとも1種のさらなる助剤成分を含むであろう。助剤成分の例としては、充填剤、脱ガス剤、分散剤、流動性調整剤、流動性改良剤、レオロジーに影響を与える添加剤(rheology−influencing agent)、消泡剤または脱泡剤、(光)安定剤、増粘剤、湿潤剤、皮はり防止剤、沈降防止剤、凝集防止剤、つや消し剤、接着促進剤、構造用添加剤(structural additive)、光沢付与剤、および触媒が挙げられる。好適な充填剤は、例えば、金属酸化物、ケイ酸塩、炭酸塩、および硫酸塩である。安定剤としては、例えば、一次および/または二次酸化防止剤、UV安定剤(例えばキノン)、(立体障害)フェノール系化合物、亜ホスホン酸エステル、亜リン酸エステル、チオエーテル、およびHALS化合物(ヒンダードアミン光安定剤)を使用することができる。脱ガス剤の例としては、ベンゾインおよびシクロヘキサンジメタノールビスベンゾエートが挙げられる。流動化剤としては、例えばポリアルキルアクリレート、フッ化炭化水素、およびシリコーンオイルが挙げられる。他の好適な添加剤としては、例えば、摩擦耐電を改善するための添加剤、例えばEP−B−0.371.528号明細書に記載されている立体障害第3級アミンが挙げられる。好ましくは、塗料組成物に通常用いられるこの少なくとも1種の助剤成分は、架橋剤、光開始剤、着色剤、または流動化剤を含む群から選択される。場合により、本発明による組成物中には、オリゴマーまたはポリマーおよびこの助剤成分以外の他の成分が存在してもよい。本発明による組成物を構成する成分は、好ましくは、組成物全体のガラス転移温度が室温未満となるように選択される。好ましくは、この組成物は、粉体塗料組成物である。
【0028】
本発明による塗料組成物に添加するのに好適なオリゴマーおよび/またはポリマーは、その中に存在する官能基に応じて、当業者に周知の技法によって硬化させることができる。硬化技法の例は、熱硬化(例えば赤外線による)または放射線硬化(例えば紫外線または電子線(EB)による)である。様々な硬化技法が当業者に周知である。このような硬化を行うための装置は市販されている。
【0029】
好ましい態様においては、粉体塗料組成物に好適なオリゴマーおよび/またはポリマーならびに本発明の組成物は熱または放射線硬化型であり、最も好ましくは紫外線硬化型である。
【0030】
本発明の組成物は貯蔵安定性を有しており、たとえ長期間貯蔵してもブロッキングを全くまたは実質的に全く起こさない。好ましくは、この組成物の融点は、60℃〜180℃、より好ましくは60℃〜140℃である。
【0031】
さらなる態様においては、基材に可撓性塗膜を提供する方法を提供する。その方法は、以下のステップ、
1.本発明による塗料組成物を提供するステップと、
2.この塗料組成物を基材表面に適用するステップと、
3.塗装された基材を熱に曝すことにより塗料組成物を60℃〜180℃の温度で溶融させて流動させるステップと、続いて、
4.溶融状態で放射線および/または熱エネルギーにより硬化させるステップと、を含む。
【0032】
本発明による方法は、可撓性を有しかつ/または熱に弱い基材に可撓性塗膜を付与するのに特に好適である。この塗料組成物は、好ましくは粉体塗料組成物である。基材上における溶融した塗料組成物の硬化は、好ましくは紫外線および/または熱によって実施される。本発明による方法は、基材表面の一部のみの塗装と同様、表面全体の塗装にも同じように好適であることが当業者に理解されるであろう。
【0033】
本発明は、可撓性または熱に弱い基材を塗装するための方法であって、本発明による粉体塗料組成物を提供することと、上記基材を上記組成物で粉体塗装することとを含む方法も提供する。
【0034】
本発明には、本発明による塗料組成物の使用も包含される。好ましくは、この塗料組成物は、可撓性または熱に弱い基材の粉体塗装に使用される。好ましくは、この塗料組成物は、皮革または人工皮革の塗装に使用される。
【0035】
本発明は、本発明による塗料組成物で塗装された基材、好ましくは可撓性を有しかつ/または熱に弱い基材も提供する。この基材は、好ましくは、粉体塗料組成物で塗装されている。
【0036】
本発明者らによる、結晶化度が0%であるかまたは低減された可撓性高分子マトリックスとは、初期の結晶性または半結晶性のオリゴマーまたはポリマーの結晶化度に対し結晶化度が明らかに実質的に低減されていることを意味する。好適には、可撓性高分子マトリックスの結晶化度は約20%以下、好ましくは、本明細書においてさらに説明するように20%未満である。実質的に非結晶性すなわち非晶質のポリマーが好ましい。
【0037】
結晶化度は示差走査熱量分析(DSC)によって測定される。半結晶性ポリマーの結晶化度Cは、以下に示すように算出される。
【数3】


(式中、
ΔΗは、DSCによる融解熱[J/g]の測定値であり、
ΔH100%は、対応する結晶化度100%のポリマーの融解熱[J/g]の文献値である。例えば、W・J・マックナイト(W.J.Macknight)、M・ヤング(M.Yang)、T・カジヤマ(T.Kajiyama)、ACS Polym.、予稿、1968年第9巻、860〜865頁および当該文献に引用されている参考文献を参照されたい)
【0038】
DSC装置は、熱分析データステーションを備えたDSC822eである。DSCモジュールを制御するコンピュータにはウインドウズ(Windows)NTオペレーションシステムがセットアップされており、メトラー・トレド(Mettler Toledo)から提供されたDSC測定用専門職向けSTAReソフトウエアをインストールした。装置の温度較正およびエネルギー設定には水銀およびインジウムを用いた。DSC試料の質量を9〜13mgとし、40μの標準的なアルミニウムパンで分析した。窒素置換を行い、加熱速度を10℃/minとして、−50〜150℃でデータを収集した。比較のため、試料重量が等しくなるようにDSCサーモグラムを標準化した。DSCソフトウエアを用いて、結晶化度、融点、およびガラス転移温度を決定した。
【0039】
オリゴマーまたはポリマーのガラス転移温度を上述のDSC装置および方法によって測定した。ガラス転移温度をSTARe中点から自動的に計算した。STARe中点とは、角の二等分線と測定曲線との交点として定義される。この角の二等分線は、転移前および転移後のベースラインの交点を通過する。
【0040】
本発明は、既存の粉体塗料組成物とは異なる(非常に高い)可撓性を有する高分子マトリックスを与えることとなる貯蔵安定性を有する粉体塗料組成物を提供する。本明細書において提供される粉体塗料組成物は低温で流動および硬化させることが可能であり、したがって、例えば熱に弱い基材の塗装に使用することができる。
【0041】
本発明は、非晶質状態において可撓性骨格鎖を有する(すなわちTが低い)少なくとも1種の結晶性または半結晶性のポリマーまたはオリゴマーをベースとする粉体塗料組成物に関する。これは、Tの高い(典型的には50℃超)非晶質ポリマーをベースとし、流動の改善に有利になるように結晶性ポリマーまたは結晶性架橋剤が添加されている既存の粉体塗料組成物とは異なっている。
【0042】
本発明は、全体の特性を改変するためにさらに変性することが可能な結晶性または半結晶性のオリゴマーおよび/またはポリマーを利用している。このオリゴマーおよび/またはポリマーは粉体塗料組成物に好適な固体であり、このオリゴマーおよび/またはポリマーにより、この粉体に十分な貯蔵安定性(すなわち、ブロッキングしたり互いに接着することがない)が得られる。しかしながら、この結晶性または半結晶性のオリゴマーまたはポリマーは、典型的には60〜180℃、好ましくは140℃未満の温度における溶融および流動ならびに溶融状態における低温硬化の際にさらに重合または反応することとなり、それによって架橋網目ポリマー(「高分子マトリックス」とも称される)となり、Tが低く結晶化度が低いかまたは非晶質の高分子マトリックスに変化する。Tは、好ましくは室温未満、より好ましくは室温よりも10℃低く、よりさらに好ましくは室温よりも20℃低い。「室温」とは、一般に20〜25℃の範囲の温度、より具体的には21℃を意味する)。この塗膜は図1に示すように非常に可撓性が高い。本発明による塗膜は、使用された非晶質ポリマーのTが高い(典型的には50℃超)ために硬質になる傾向がある既存の粉体塗料とは異なっている。本粉体塗料組成物は、好ましくはUV硬化型であるが、オリゴマーおよび/またはポリマーに組み込まれた官能基に応じて熱硬化型であってもよい。UVおよび熱硬化を併用することも可能である。
【0043】
本粉体塗料組成物は、熱に弱くかつ/または可撓性が非常に高い基材の塗装に好適である。図1に、紫外線によって硬化させた本発明の粉体塗料で塗装した皮革試料を折り曲げたものを示す。図1に示すように試料を折り曲げると塗膜が可撓性を有することがよく分かり、塗膜に亀裂も破壊も見られない。
【0044】
本発明により提供される粉体塗料組成物および塗膜は、熱に弱い基材および特に(非常に高い)可撓性を有する基材に好適である。可撓性を有する熱に弱い基材の例としては、皮革、繊維製品、紙、および軟質プラスチックが挙げられる。熱に弱い基材としては、木材、パーティクルボードや高、中、低密度ファイバーボード等の複合木材が挙げられる。可撓性基材の例としては、金属線およびゴムが挙げられる。本発明により提供される粉体塗料組成物および塗膜は、従来の耐熱性基材ならびに耐熱性複合材および部品にも適用することができるが、本発明の利点は、熱に弱くかつ/または可撓性を有する基材上で最も明らかになる。
【0045】
塗料組成物の主樹脂(これは、当然のことながら、製造時に適切なモノマーから形成されるであろう)として選択されるオリゴマーまたはポリマーは、未硬化状態で好適な融点および好適な結晶化度を有するものであれば、任意の好適なオリゴマーまたはポリマーであってもよい。好適な融点は、所要の貯蔵温度を超えるが所望の焼成温度を下回るものであろう。好適な結晶化度は、微粒子粉体配合物のブロッキングを防ぐかまたは最小限に抑えられるような貯蔵安定性を有する粉体塗料を提供することとなるものである。したがって、半結晶性または結晶性のポリマーが好ましく、最も好適である。好適なポリマーとしては、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、およびポリウレアが挙げられるが、それ以外のものを使用してもよい。ポリウレタンが特に好ましい。融点(T)が約120℃未満、より好ましくは約100℃未満のオリゴマーまたはポリマーを使用することが好ましい。硬化後のポリマーについては、ガラス転移温度(T)が約50℃未満、例えばTが室温(20〜25℃)未満であることが好ましく、特に、Tは0℃未満である。使用されるオリゴマーまたはポリマーは、当業者に周知の方法に従い、例えば好適なモノマーの逐次(縮合または付加)重合によって作製することができる。
【0046】
本発明による組成物は、1種またはそれ以上のオリゴマーおよび/またはポリマーを含んでいてもよい。1種を超えるオリゴマーおよび/またはポリマーが使用される場合、ここでは(以後も同様に)、最大量で存在するものを「主樹脂」または「主オリゴマー」または「主ポリマー」と呼ぶことにする。最大量とはグラムで示される量である。
【0047】
本発明の原理は、溶融状態で硬化させる前の組成物中におけるオリゴマーまたはポリマーは結晶性または半結晶性の性質を有しているが、溶融、流動、および硬化後の組成物は可撓性の高い膜を提供する、粉体塗料組成物に好適なオリゴマーまたはポリマーならびにこのオリゴマーまたはポリマーを含む組成物を提供するという概念に基づいている。本発明者らは、本発明による組成物を硬化させた後にTの低い(好ましくはTが室温よりも十分に低い)基本的に非晶質であるかまたは結晶性の低いポリマー網目を硬化後に確実に得られるようにすることによってこのことが達成できることを見出した。
【0048】
オリゴマーまたはポリマー成分の、Tの低い非晶質または低結晶性状態への転化は、例えば、初期の未硬化の組成物中に存在するオリゴマーまたはポリマーをさらに重合および/または架橋させることによって達成することができる。好ましくは、このさらなる重合および/または架橋は、放射線または熱またはこれら2つの組合せによって開始される。好ましくは、硬化は、紫外線または熱またはこれら2つの組合せによって実施される。こうすることにより、好ましくは、硬化膜に高い可撓性を与え、したがって、この膜を可撓性基材に使用するのに特に好適なものにする、基本的に非晶質のポリマー網目が得られる。
【0049】
本発明の目的は、オリゴマーまたはポリマーが、このオリゴマーまたはポリマーの架橋および/またはさらなる重合を可能にする末端官能基を少なくとも有しているという条件下で、所望により、1種またはそれ以上の結晶性または半結晶性のオリゴマーまたはポリマー、例えば、ポリウレタン、ポリエステル(例えばポリカプロラクトン)、ポリアミド、ポリカーボネート、またはポリウレアを用いることによって達成することができる。好ましくは、この種の官能基は、官能価が2以上の好適な連鎖延長剤または架橋剤と一緒にUV硬化(例えばアクリレート基)または熱硬化させることが可能なものである。本発明の範囲においては、アクリレートが言及されている場合はメタクリレートも同様に使用することができると理解されたい。
【0050】
別法として、好ましい実施態様においては、ベースとなる結晶性または半結晶性のオリゴマーまたはポリマーのモノマーは、1種またはそれ以上のさらなる好適なモノマーと好ましくはランダムに共重合される。このモノマーの1種またはそれ以上は、結果として得られるポリマーの結晶化度が低減されており実質的に非晶質の性質を示すように、硬化の際にさらなる重合および/または架橋を起こさせる反応基または官能基を付与する役割を果たす。さらなる好適なモノマーとの共重合により、融点および結晶化度が(純粋なオリゴマーまたはポリマーと比較して)幾分低減された変性オリゴマーまたはポリマーが得られるが、未硬化の変性オリゴマーまたはポリマーは、貯蔵安定性を示すのに十分な結晶性を有し(すなわち、これもやはり結晶性または半結晶性である)、その一方で、可撓性が高くかつ/または熱に弱い基材に使用できるようにより低温における溶融および流動を可能にするという利点を有する。
【0051】
共重合可能なモノマーを用いる場合、少なくとも1つの分岐または側基が存在する1種またはそれ以上の分岐の二官能性モノマー(すなわち、2個の反応基または官能基を有する)を使用することが好ましい。共重合可能なモノマーが使用される場合、モノマーは、結晶性または半結晶性オリゴマーまたはポリマーの骨格に組み込まれることができなければならない。
【0052】
好ましくは、少なくとも1種のモノマーにおいては、1つの分岐または側基は不飽和基、官能基、または反応基を含み、これは硬化の際に(好ましくは熱または紫外線による硬化の際に)、さらなる架橋剤を必要としてまたは必要とせずに、重合および/または架橋反応を起こすことができるものである。好適なモノマーとしては、分岐ジオールが挙げられる。特に好適なのは、1つの分岐鎖に1個またはそれ以上の不飽和基(例えばアクリレートまたはアリル)を含む分岐ジオール化合物であるが、任意の好適な反応基を使用することができる。
【0053】
好ましい実施態様においては、オリゴマーまたはポリマーに必要なモノマーに加えて、2種類のモノマー(モノマーAおよびBと称する)が用いられる。両モノマーは、上述した説明に従うものであってもよいが、好ましくは異なっている。モノマーAは、好ましくは分岐の二官能性化合物であり、少なくとも1つの分岐が上述したような不飽和または反応基を含み、一方、モノマーBは、好ましくは、さらに変性されていない分岐の二官能性化合物である。例えば、モノマーAは、少なくとも1つの分岐がアクリレートまたはアリル基を含むジオールであってもよく、モノマーBは、少なくとも1個の分岐アルキル基を有するジオールであってもよい。これらのモノマーは、例えば、ポリウレタンに必要なモノマーとの共重合に特に好適である。
【0054】
好ましくは、モノマーAは、低温硬化が適用できるように、1種またはそれ以上の紫外線硬化型の官能基(アクリレートまたはアリル基等)を含む。別法として、モノマーAには、カルボン酸−、エポキシ−、イソシアネート−、アミン−、ヒドロキシル基等の熱硬化型の官能基が含まれる。これらは硬化の際に重合および/または架橋を起こすことができるが、通常は、イソシアネートもしくはエポキシもしくは酸無水物系の架橋剤またはこれらの組合せ等のさらなる架橋剤を塗料に配合することが必要である。
【0055】
共重合可能なモノマーの総重量は変化してもよく、例えば、オリゴマーまたはポリマーのモル量を基準として100%までまたはそれ以上であってもよい。ほとんどの用途には、10〜90%の範囲が好適である。
【0056】
好ましい実施態様においては、結晶性または半結晶性のポリウレタンオリゴマーまたはポリマーは、モノマーI、II、A、および場合によりBを含むモノマー組成物を共重合させることによって調製される:
モノマーI:可撓性骨格を有する少なくとも1種のジイソシアネート、例えば、脂肪族ジイソシアネート等、好適にはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI);
モノマーII:可撓性脂肪族骨格またはエーテル結合を含む骨格を有する少なくとも1種のジオール、例えばジエチレングリコール(DEG);
モノマーA:一般式、
CH=CRCOO(CHC(R)(CHOH)
(式中、Rは、−Hまたは−CHであり、
は、Hまたは直鎖もしくは分岐のアルキル基−C2n+1(式中、nは、1〜4の整数)であり、
mは、1〜4の整数である)のUV硬化型アクリレート基を有する少なくとも1種のジオール、
あるいは、熱硬化型樹脂の場合は、一般式、
FG−C(R)(CHOH)
(式中、FGは、架橋剤と一緒に熱硬化させるのに好適な官能基である、カルボン酸−、エポキシ−、イソシアネート−、アミン−、(メタ)アクリレート−、またはヒドロキシル基を表し、
は、直鎖または分岐のアルキル基−C2n+1(式中、nは、1〜4、好ましくは2〜4から選択される整数)である)のジオール
(モノマーAの例としては、2,2−ジヒドロキシメチルブチルアクリレート(DHBA)および2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(BHB)が挙げられる。これらの化合物はポリウレタンと併用するのに特に有用であるが、所望により、他のポリマーと一緒に使用してもよい);
モノマーB:一般式、
HO(CHCR(R)(CHOH
(式中、xおよびyは、1〜6から互いに独立に選択される整数であり、
は、Hまたは直鎖もしくは分岐のアルキル基−C2n+1(式中、nは、1〜4から選択される整数)であり、
は、直鎖または分岐のアルキル基−C2n+1(式中、nは、1〜9から選択される整数)である)のジオール(モノマーBは、例えば、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(BEP)であってもよい)。
【0057】
モノマーIおよびIIは、ポリウレタンがモノマーIおよびIIのみから作製される場合、Tが好ましくは160℃未満であり、かつTが50℃未満、好ましくは室温より十分に低い結晶性または半結晶性になる組である。好適には、ポリウレタンのモル質量が約380〜約4220g/モルの範囲にある場合、Tが約68℃〜125℃の範囲にある−OH末端基を有する直鎖ポリウレタンが得られるように、HDIおよびDEG等の組が使用される。本発明の樹脂用のモノマーとしては、HDIおよびDEGが好ましい。
【0058】
モノマーAが、ペンダント官能基(この官能基は、結果として得られる高分子マトリックスの結晶化度が低減されており実質的に非晶質の性質を有するように、硬化の際にさらなる重合および/または架橋を起こさせるものである)をポリウレタン骨格に導入する役割を果たすことが見出された。このペンダント基は、ポリウレタンが低温における溶融および流動により好適なより低いTを有するように、未硬化のポリウレタンのTおよび結晶化度をモノマーIおよびIIのみから作製されたポリウレタンよりも低下させる役割も果たす。モノマーBは硬化反応には関与しないが、主として、硬化または未硬化のいずれかのポリウレタンのTおよび結晶化度をさらに低下させる(しかしながら、特に硬化後のポリウレタンの結晶化度を低下させる)不活性なペンダント基を導入する役割を果たすことも見出された。
【0059】
モノマーBは必須ではないが、本発明によるポリウレタンを作製するための組成物に添加することが好ましい。それは、一般にこれはモノマーAよりも安価であるが、硬化または未硬化のポリウレタンのいずれかのTおよび結晶化度を低下させるのにモノマーAよりもさらに有効となり得るためである。
【0060】
広い態様においては、この組成物は、ジイソシアネート(モノマーI)およびジオール混合物(3種の異なるジオール、すなわちモノマーII、A、およびB)を含む。ジオールモノマーIIは、好ましくは直鎖のジオールであり、一方、ジオールモノマーAおよびBは、好ましくは両方とも分岐のジオールである。UV硬化型ポリウレタン樹脂の調製におけるジイソシアネート:ジオール(全体)のモル比は、好ましくは1:2〜1.1:1.0であり、それによって、モル質量および結晶化度が異なるポリウレタンを得ることができ、このことは当業者に周知である。より好ましくは、この比は、約2:3〜約1:1、最も好ましくは約2:3である。
【0061】
UV硬化型ポリウレタン樹脂の好ましい実施態様においては、モノマーI、II、A、およびBと称する4種のモノマーが用いられる。モノマーIはHDI、モノマーIIはDEG、モノマーAは2,2−ジヒドロキシメチルブチルアクリレート(DHBA)、モノマーBは2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(BEP)である。4種のモノマーの相対量は変化してもよい。
【0062】
ジオールの総含量におけるモノマーAおよびB(存在する場合)の合計が占める分岐ジオールの(モル)百分率は非常に広範囲に変化してもよいが、好ましくは約10%〜90%の範囲にある。本発明者らは、百分率が30%以上、特に40〜42%の範囲、特に約40%で良好な結果が得られることを見出した。
【0063】
モノマーAおよびBの両方が存在する場合、本発明者らは、AおよびBの混合物中におけるモノマーAのモル分率(すなわち、分岐ジオール中のモノマーAのモル分率)が影響を及ぼすことを見出した。好適には、モノマーAのモル分率は、少なくとも約10%以上、好ましくは少なくとも25%以上である。硬化膜に所望の水準の低い結晶化度を達成するには、通常、約20%〜60%、好ましくは30%〜50%の範囲内の数値が好適である。特に好ましい組成物は、ジイソシアネート対ジオール全体のモル比が約2:3であり、モノマーAおよびモノマーBの合計の(モル)百分率がジオール全体の約40%(すなわち{A+B}/{II+A+B}=40モル%)である。しかしながら、これは、具体的に選択されるモノマーの組合せ、ジイソシアネート対ジオールのモル比、ならびにジオール全体における分岐モノマーAおよびBの百分率に依存してある程度変化するであろう。所定の実験を行うことにより、任意の所与の系に理想的なモル比が明らかになるであろう。
【0064】
モノマーAのみが存在する場合、ジオールの総含量に対するモノマーAのモル分率は、多くの場合、硬化後の塗膜に所望の低い水準の結晶化度を達成するためにかなり高くすることが必要となるであろう。この比率は、例えば、約30%または40%以上、好ましくは50%または60%以上であってもよい。
【0065】
熱硬化を用いる場合、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(BHB)をモノマーAとして選択してもよい。このモノマーの立体障害カルボン酸基は第1級ヒドロキシル基よりも反応性が低く、そのため、上述したUV硬化型アクリレート基とちょうど同じように、硬化の際に好適な架橋剤の存在下にさらに重合および/または架橋することができるペンダントカルボン酸基を有するポリウレタンを調製することができる。この場合も同様に、所定の実験を行うことにより、任意の所与の系に理想的なモル比が明らかになるであろう。
【0066】
塗料組成物がポリエステル系である場合の他の実施態様においては、結晶性または半結晶性のポリエステルオリゴマーまたはポリマーは、脂肪族、環式脂肪族、および/または芳香族カルボン酸、ならびに少なくとも1種のジオールを共重合させることによって調製してもよい。好ましくは、結晶性または半結晶性のポリエステルオリゴマーまたはポリマーは、熱に曝すことにより60℃〜180℃、より好ましくは60°〜140℃の低温で溶融して流動するように、そして、溶融状態で放射線および/または熱エネルギーによって硬化させることにより完全に非晶質であるガラス転移温度(T)の低い高分子マトリックスまたは結晶化度が低くTが低い高分子マトリックスのいずれかを有する非常に可撓性の高い塗膜が得られるように選択される。
【0067】
ポリエステル系塗料組成物の他の好ましい実施態様においては、結晶性または半結晶性のポリエステルオリゴマーまたはポリマーは、以下に示すモノマーI、II、A、および場合によりBを含むモノマー組成物を共重合させることによって調製してもよい。
モノマーI:式HOOC(CHCOOH(式中、mは、0〜16から選択される整数)の少なくとも1種のジカルボン酸もしくはイソフタル酸もしくはテレフタル酸または機能的誘導体(例えば、上述の酸の酸ハライド、酸無水物、メチルまたはエチルエステル等)。
モノマーII:式HO(CHOH(式中、nは、モノマーIがイソフタル酸またはそのエステル形態等の機能的誘導体である場合は、2〜16、好ましくは3〜16であり、モノマーIがテレフタル酸またはそのエステル形態である場合は、5〜16である)の少なくとも1種のジオールまたはジエチレングリコールまたは短鎖長のポリエーテルジオールまたは1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン。
モノマーA:一般式、
CH=CRCOO(CHC(R)(CHOH)
(式中、Rは、Hまたは−CHであり、
は、Hまたは任意の直鎖もしくは分岐のアルキル基−C2n+1(式中、nは、1〜4の整数)であり、
mは、1〜4の整数である)のUV硬化型アクリレート基を有する少なくとも1種のジオール、
あるいは、熱硬化型樹脂の場合は、一般式、
FG−C(R)(CHOH)
(式中、FGは、架橋剤と一緒に熱硬化させるのに好適な官能基である、カルボン酸−、エポキシ−、イソシアネート−、アミン−、(メタ)アクリレート−、またはヒドロキシル基を表し、
は、直鎖または分岐のアルキル基−C2n+1(式中、nは、1〜4、好ましくは2〜4)である)のジオール。
モノマーB:一般式、
HO(CHCR(R)(CHOH
(式中、xおよびyは、1〜6から互いに独立に選択される整数であり、
は、Hまたは直鎖もしくは分岐のアルキル基−C2n+1(式中、nは、1〜4)であり、
は、直鎖または分岐のアルキル基−C2n+1(式中、nは、1〜9)である)のジオール。
【0068】
この場合も同様に、所定の実験を行うことにより、硬化前および硬化後のポリエステルのTおよび結晶化度のバランスに関し任意の所与の系に理想的なモル比が明らかになるであろう。しかしながら、通常は、結晶性または半結晶性のポリウレタンオリゴマーまたはポリマーに関し上で例示した範囲および比率が適用できる。
【0069】
本発明による粉体塗料組成物は、上述したオリゴマーおよび/またはポリマーを用いて配合することができ、これは、好ましくは、室温で安定(好ましくは組成物の融点付近まで安定)な乾燥した自由流動性を有する微粒子粉体の形態にある。この組成物は、当該技術分野において周知の手順に従い配合してもよい(例えば、マイセフ・T・A、「粉体塗料」、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・リミテッド、チチェスター(1991年)参照。したがって、一般的には、モノマー成分をブレンドし、好適な条件下で共重合した後、必要に応じて微量成分をさらにブレンドする。当業者に明らかなように、これらには、架橋剤、光開始剤、着色剤、流動化剤等が含まれていてもよい。この組成物を適用した後、当業者に理解されるように、放射線および/または熱を用いて硬化させる。好ましくは、各種成分を十分に混合した後に、乾燥した微粒子粉体として配合される。
【0070】
粉体塗料配合の例を示す。
【0071】
【表1】

【0072】
本発明の粉体塗料組成物は、好ましくは、融点が約120℃未満、好ましくは約100℃未満である。好適には、この温度は約80℃以下である。このことが達成されるように粉体塗料組成物中のオリゴマーおよび/またはポリマーを選択してもよい。好ましくは、塗料組成物の溶融および流動は、60℃〜140℃の温度で起こる。融点が比較的低いことは、熱に弱い基材上で基材を損傷することなく組成物を使用できるという利点がある。また、未硬化のオリゴマーまたはポリマーが結晶性または半結晶性の性質を有するため、融点を超えた後に良好に流動させることができる。
【0073】
本発明の塗料組成物によって得られる硬化膜は可撓性を有しているため、有利には、基材を曲げても亀裂や割れが生じることなく皮革等の可撓性基材に適用することができる。好ましくは、塗膜の結晶化度は約20%未満、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。場合によっては、結晶化度はゼロまたはほぼゼロ、すなわち塗膜の高分子マトリックスが非晶質または実質的に非晶質となり、これは特に好ましい。実施例から明らかなように、硬化膜の結晶化度は、塗料組成物中の様々な成分、特にモノマーAおよびBの比率を変化させることによって調整することができる。所定の実験を用いることによって、任意の具体的な系に所望の水準の結晶化度を付与することができる。
【0074】
結晶化度は、従来通り、示差走査熱量分析(DSC)によって、オリゴマーまたはポリマーを融解させるエンタルピーの変化をモノマーIおよびIIのみから作製されたオリゴマーまたはポリマーの単結晶の文献値と比較することによって測定することができる。
【0075】
最終硬化膜または塗膜のガラス転移温度(T)は重要な要素である。一般的には、硬化膜のTは低く、例えば約50℃未満、または約30℃以下、好ましくは室温のいずれか(20〜25℃)またはそれ未満、好ましくは実質的に室温未満となるであろう。Tが15℃未満、好ましくは10℃未満、より好ましくは0℃未満であることが望ましい。通常、Tが低くなると、硬化膜または塗膜に良好な可撓性が維持される温度の下限が低下する。
【0076】
以下に示す実施例により本発明の特定の好ましい実施態様を例示する。
【0077】
実施例1
この実施例は、主ポリマーとしてのポリウレタンをベースとする。モノマーAとなる式CH=CHCOOCHC(CHOH)CHCHの2,2−ジヒドロキシメチルブチルアクリレート(DHBA)を、クブレ(Couvret)ら[D・クブレ(D.Couvret)、J・ブロッセ(J.Brosse)、S・シェバリエ(S.Chevalier)、J・セネ(J.Senet)、Eur.Polym.J.、第27第2号、193頁(1991年)]およびF・R・ジャリアーノ(F.R.Galiano)ら[1964年7月10日に公開されたFr.1366079号明細書および1965年10月5日に発行された米国特許第3210327号明細書]により提供された方法に従い、以下に示すように合成した。
【0078】
まず、トルエン(1リットル)等の溶媒中でトリメチロールプロパン(TMP)(268g、2.0モル)を過剰のアセトン(1160g、20モル)と62〜109℃で7.0時間反応させることによって、5−エチル−5−ヒドロキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン(EHDD)を調製した。p−トルエンスルホン酸3.0gを触媒として添加した。過剰量のアセトンは、TMPを基準としたEHDDの収率を向上させるために用いた。粗生成物を蒸留(115℃、5mmHg)してEHDDを得た。
【0079】
次いで、EHDD(121.5g)を用いてクロロホルム(190ml)中で塩化アクリロイル(62.8g)と反応させ、氷/水浴で13時間冷却した。反応混合物にトリエチルアミン(72.6g)を加え、反応によって生じたHClを中和した。これを濾過した後、残渣を蒸留水に溶解し、クロロホルム等の有機溶媒で抽出した。水層を廃棄し、溶媒層を同量の5%塩酸溶液、次いで蒸留水で洗浄した。溶媒層を回収し、MgSOで乾燥した。これを濾過した後、溶媒を除去した。粗生成物を減圧(59℃、0.8mmHg)下で蒸留し、5−アクリロイルオキシメチル−5−エチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン(AEDD)を得た。
【0080】
AEDDを0.5NのHCl水と一緒に45℃で3時間撹拌することによってAEDDの加水分解を実施した。この溶液をKCOで中和した。結果として得られたDHBAをクロロホルムで抽出した。これを濾過し、クロロホルムを除去した後、生成物であるDHBA(すなわちモノマーA)をMgSOで乾燥し、モレキュラーシーブ上で保管した。
【0081】
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を、ジエチレングリコール、モノマーA(上で合成)、およびモノマーB(2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(BEP))を含むジオール混合物と反応させることによって、半結晶性ポリウレタンアクリレートを調製した。この実施例においては、ジイソシアネート対ジオールのモル比を2.0:3.0とし、モノマーA対Bの比を変化させたが、ジオール中のモノマーAおよびBの含量の合計は40モル%に維持した。窒素中、乾燥したフラスコ内でクロロホルムを溶媒として、55±1℃で10時間重合を実施した。
【0082】
次いで、こうして得られたポリウレタンアクリレートを光開始剤すなわちイルガキュア(Irgacure)(登録商標)184(チバ(Ciba))(これはアルファ−ヒドロキシケトンである)と配合し、この試料を赤外線で100℃未満に加熱して流動およびレベリングさせ、紫外線(UV強度は約1J/cmとした)で約20秒間硬化させた。
【0083】
図1に示す皮革試料の塗装に使用した具体的な組成を以下に示す。HDI/DEG/DHBA/BEPのモル比を1.00:0.895:0.577:0.00960としてポリウレタンを調製した。窒素気流中、乾燥したフラスコ内において、55±1℃で5時間重合を実施した。こうして調製された半結晶性ポリウレタンをイルガキュア(登録商標)184を1.5%(w/w)と配合した。塗料配合物を皮革に適用し、強度約1J/cmの紫外線で20秒間加熱および硬化させた。
【0084】
UV硬化前後の結晶化度および融点に対するモノマーAの含量の効果を図2および図3に示すが、UV硬化前では、調製されたポリウレタンの結晶化度および融点がいずれもモノマーAの含量とともに上昇していることがわかる。しかしながら、UV硬化後の架橋したポリマーでは、モノマーAの含量が特定の範囲にある場合に非結晶性となった。架橋ポリマーのTはモノマーAのモル比に応じて約0℃〜−25℃となった。
【0085】
実施例2
この実施例においてポリウレタンアクリレート用に選択されるモノマーは、実施例1と同じである。
【0086】
ただし、この実施例においては、ジイソシアネート対ジオールのモル比を1.1:1.0としてポリウレタンを調製した。溶媒としてのクロロホルム中において60〜61℃で10時間環流することによって重合を実施した。重合が完了した後、80℃の減圧下で溶媒を除去した。モノマーAの含量を変化させる一方で、ジオール中のモノマーAおよびBのモル分率の合計は40%と一定に維持した。
【0087】
次いで、実施例1に記載したように半結晶性ポリマーを配合し、加熱および硬化した。
【0088】
結晶化度および融点に対するモノマーAの含量の効果をそれぞれ図4および図5に示す。図4および5から、硬化前は、モノマーAおよびBの混合物中におけるモノマーAの含量が増加するに従い結晶化度および融点が上昇し、そして横ばいになることが明らかである。
【0089】
UV硬化後については、モノマーAの含量が増加するに従い結晶化度および融点が低下し、Aの含量が約50%を超える(またはジオールの総量におけるAのモル分率が約20%を超える)とポリマーが非結晶性になる。架橋ポリマーのTは、モノマーAのモル分率に応じて約18〜−20℃である。
【0090】
実施例3
この実施例におけるポリウレタンアクリレート用のモノマーについては、実施例1および2と異なる選択をし、ジオールのブレンドにモノマーBを添加しなかった。ジイソシアネート対ジオールのモル比を2.0:3.0とした。それ以外の重合、光開始剤の配合、加熱、および硬化については実施例1と同様に実施した。
【0091】
結晶化度および融点に対するモノマーAの含量の効果を図6および7に示す。結晶化度(図6)は、UV硬化前も硬化後もAの含量が増加するに従い低下しているが、モノマーAの含量が0%から約40%に変化した場合のUV硬化後においてより急激な低下が見られる。一方、UV硬化前の融点は、Aの含量が増加するに従い上昇している。UV硬化後の融点は、モノマーAの含量が約40%に達するまでは、Aの含量に従いわずかに上昇している。その後、融点は、モノマーAの含量が約80%に到達して最終的にポリマーが非結晶になるまで突然降下する(図7参照)。
【0092】
実施例4
この実施例におけるポリウレタンアクリレート用のモノマーの選択は、実施例3と同様にした。この系においては、モノマーBを添加せずにポリウレタンアクリレートを調製した。ジオール中のモノマーAのモル分率を変化させた。ジイソシアネート対ジオールのモル比を1.1:1.0とした。それ以外は、重合、光開始剤の配合、加熱、および硬化を実施例2に記載したように実施した。
【0093】
図8および9から、UV硬化前も硬化後も、モノマーAの含量が増加するに従い結晶化度も融点も低下することがわかる。UV硬化後の結晶化度または融点は硬化前よりも低い。そして興味深いことに、Aの含量が約40%を超えると、ポリマーは硬化後に非結晶となる。架橋ポリマーのTは、モノマーAのモル比に応じて−10℃〜9℃である。
【0094】
実施例5A
この系においては、モノマーAが上述の系と異なっている。2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(BHB)をモノマーAとした。ジイソシアネートであるHDIをジエチレングリコールおよびモノマーA(BHB)を含むジオール混合物と反応させることによって半結晶性ポリウレタンを調製した。この実施例における反応体のモル比を表1に示す。窒素中、乾燥したフラスコ内において、66±1℃で20分間バルク重合を実施した。
【0095】
次いで、半結晶性ポリウレタンを、架橋剤としてのHDI(約3重量%)と配合し、この試料を100℃のオーブンで2時間熱硬化させた。この半結晶性ポリウレタンは硬化後には結晶性を示さず、完全に非晶質であった。硬化樹脂のTは約25℃である。
【0096】
【表2】

【0097】
実施例5B
表1Bに示す成分を用いてポリウレタンを調製した。得られたポリウレタンはヒドロキシル側基を有する。
【0098】
【表3】

【0099】
以下に示す図における結晶化度およびTはすべてDSCで測定したものである。Tは、DSC曲線の融解ピークの開始温度を採用する。融解ピークが複数ある場合は、最も顕著なピークからTを採用する。ピークの大きさが同等であれば、融点が最も高いものをTとして用いる。結晶化度は、ピークが複数ある場合は融解ピークをすべて考慮して測定した。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】ポリウレタンアクリレート樹脂をベースとするUV硬化型粉体塗料で仕上げた皮革試料。
【図2】UV硬化前および硬化後のPUアクリレート樹脂(実施例1)の結晶化度に対するモノマーAの含量の効果。ジオール中におけるモノマーAおよびBのモル分率の合計は一定の40%に維持。
【図3】UV硬化前および硬化後のPUアクリレート樹脂(実施例1)の融点に対するモノマーAの含量の効果。ジオール中におけるモノマーAおよびBのモル分率の合計は一定の40%に維持。
【図4】UV硬化前および硬化後のPUアクリレート樹脂(実施例2)の結晶化度に対するモノマーAの含量の効果。ジオール中におけるモノマーAおよびBのモル分率の合計は一定の40%に維持。
【図5】UV硬化前および硬化後のPUアクリレート樹脂(実施例2)の融点に対するモノマーAの含量の効果。ジオール中におけるモノマーAおよびBのモル分率の合計は一定の40%に維持。
【図6】UV硬化前および硬化後のPUアクリレート樹脂(実施例3)の結晶化度に対するモノマーAの含量の効果。
【図7】UV硬化前および硬化後のPUアクリレート樹脂(実施例3)の融点に対するモノマーAの含量の効果。
【図8】UV硬化前及び硬化後のPUアクリレート樹脂(実施例4)の結晶化度に対するモノマーAの含量の効果。
【図9】UV硬化前および硬化後のポリウレタンアクリレート樹脂(実施例4)の融点に対するモノマーAの含量の効果。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱に曝すと60℃〜180℃の温度で溶融して流動し、続いて溶融状態で放射線および/または熱エネルギーによって硬化させると、可撓性が非常に高く、完全に非晶質であるガラス転移温度(T)の低い高分子マトリックスまたは可撓性が非常に高く結晶化度が低くTの低い高分子マトリックスのいずれかを有する塗膜を与えることとなる結晶性または半結晶性のオリゴマーまたはポリマー。
【請求項2】
粉体塗料組成物に好適な結晶性または半結晶性のオリゴマーまたはポリマーであって、放射線および/または熱エネルギーによって硬化させると、結晶化度が0%であるかまたは低減された可撓性を有する高分子マトリックスに転化するオリゴマーまたはポリマー。
【請求項3】
粉体塗料組成物に好適な結晶性または半結晶性のオリゴマーまたはポリマーであって、前記オリゴマーまたはポリマーを硬化させる際に結晶化度が0%であるかまたは低減された可撓性を有する高分子マトリックスを得るために前記オリゴマーまたはポリマーをさらに重合および/または架橋させるための、前記オリゴマーまたはポリマー鎖に沿ってランダムに分布したペンダント官能基を含む分岐鎖分子を含む、オリゴマーまたはポリマー。
【請求項4】
得られる高分子マトリックスの引張破壊伸びとして測定される可撓性が少なくとも10%であることを特徴とする、請求項1、2、または3に記載の結晶性または半結晶性のオリゴマーまたはポリマー。
【請求項5】
硬化によって結晶化度が0%であるかまたは低減された熱硬化型高分子マトリックスに転化することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の結晶性または半結晶性のオリゴマーまたはポリマー。
【請求項6】
融点が120℃未満であることを特徴とする、請求項1に記載の結晶性または半結晶性のオリゴマーまたはポリマー。
【請求項7】
前記完全に非晶質であるガラス転移温度(T)の低い高分子マトリックスまたは結晶化度が低くTが低い高分子マトリックスのガラス転移温度が30℃以下であることを特徴とする、請求項1、2、または3に記載の結晶性または半結晶性オリゴマーまたはポリマー。
【請求項8】
請求項1、2、または3に記載の少なくとも1種の結晶性または半結晶性のオリゴマーまたはポリマーと、塗料組成物に通常用いられる、架橋剤、光開始剤、着色剤、または流動化剤からなる群から選択される少なくとも1種の助剤成分および場合により他の成分とを含む組成物。
【請求項9】
前記組成物を構成する前記成分が、前記組成物全体のガラス転移温度が室温未満になるように選択されることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
粉体塗料組成物であることを特徴とする、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
基材に可撓性塗膜を提供する方法であって、以下のステップ、
1.請求項8〜10のいずれか一項に記載の塗料組成物を提供するステップと、
2.前記塗料組成物を前記基材の表面に適用するステップと、
3.前記塗装された基材を熱に曝すことによって前記塗料組成物を60℃〜180℃の温度で溶融および流動させるステップと、それに続いて、
4.前記溶融状態で放射線および/または熱エネルギーによって硬化させるステップと、を含む方法。
【請求項12】
請求項8〜10のいずれか一項に記載の塗料組成物で塗装された基材。
【請求項13】
請求項8〜10のいずれか一項に記載の塗料組成物の使用。
【請求項14】
請求項8〜10のいずれか一項に記載の塗料組成物の皮革または人工皮革を塗装するための使用。
【請求項15】
前記オリゴマーまたはポリマーが、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、またはポリウレアであることを特徴とする、請求項1、2、または3に記載の結晶性または半結晶性のオリゴマーまたはポリマー。
【請求項16】
モノマーI、II、A、および場合によりBを含むモノマー組成物を共重合させることにより得られる結晶性または半結晶性のポリウレタンオリゴマーまたはポリマーであって、
モノマーIが、可撓性骨格を有する少なくとも1種のジイソシアネートであり、
モノマーIIが、可撓性脂肪族骨格またはエーテル結合を含む骨格を有する少なくとも1種のジオールであり、
モノマーAが、式、
CH=CRCOO(CHC(R)(CHOH)
(式中、
Rは、−Hまたは−CHであり、
は、−Hまたは直鎖もしくは分岐のアルキル基−C2n+1(式中、nは、1〜4の整数)であり、
mは、1〜4の整数である)のUV硬化型アクリレート基を有する少なくとも1種のジオールであるか、
あるいは、熱硬化型樹脂の場合は、
モノマーAが、式、
FG−C(R)(CHOH)
(式中、
FGは、架橋剤と一緒に熱硬化させるのに好適な官能基であるカルボン酸−、エポキシ−、イソシアネート−、アミン−、(メタ)アクリレート−、またはヒドロキシル基を表し、
は、直鎖または分岐のアルキル基−C2n+1(式中、nは、1〜4から選択される整数)である)のジオールであり、
モノマーBが、一般式、
HO(CHCR(R)(CHOH
(式中、
xおよびyは、1〜6から互いに独立に選択される整数であり、
は、Hまたは直鎖もしくは分岐のアルキル基−C2n+1(式中、nは、1〜4から選択される整数)であり、
は、直鎖または分岐のアルキル基−C2n+1(式中、nは、1〜9から選択される整数)である)のジオールである、結晶性または半結晶性のポリウレタンオリゴマーまたはポリマー。
【請求項17】
モノマーIおよびIIが、融点(T)が160℃未満であり、かつガラス転移温度(T)が50℃未満である結晶性または半結晶性のポリウレタンオリゴマーまたはポリマーが形成されるように選択されることを条件とする、請求項16に記載の結晶性または半結晶性のポリウレタンオリゴマーまたはポリマー。
【請求項18】
モノマーI、II、A、および場合によりBを含むモノマー組成物を共重合させることによって調製される結晶性または半結晶性のポリエステルオリゴマーまたはポリマーであって、
モノマーIが、式HOOC(CHCOOH(式中、mは、0〜16から選択される整数である)の少なくとも1種のジカルボン酸もしくはイソフタル酸もしくはテレフタル酸またはその機能的誘導体であり、
モノマーIIが、式HO(CHOH(式中、nは、モノマーIがイソフタル酸またはそのエステル形態等の機能的誘導体である場合は、2〜16、好ましくは3〜16から選択される整数であり、または、モノマーIがテレフタル酸またはそのエステル形態である場合は、5〜16から選択される整数である)の少なくとも1種のジオールまたはジエチレングリコールまたは短鎖長のポリエーテルジオールまたは1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサンであり、
モノマーAが、一般式、
CH=CRCOO(CHC(R)(CHOH)
(式中、
Rは、Hまたは−CHであり、
は、Hまたは直鎖もしくは分岐のアルキル基−C2n+1であり、
nは、1〜4の整数である)のUV硬化型アクリレート基を有する少なくとも1種のジオールであるか、
あるいは、熱硬化型樹脂の場合は、
モノマーAが、一般式、
FG−C(R)(CHOH)
(式中、
FGは、架橋剤と一緒に熱硬化させるのに好適な官能基であるカルボン酸−、エポキシ−、イソシアネート−、アミン−、(メタ)アクリレート−、またはヒドロキシル基を表し、
は、直鎖または分岐のアルキル基−C2n+1(式中、nは、1〜4から選択される整数)である)のジオールであり、
モノマーBが、一般式、
HO(CHCR(R)(CHOH
(式中、
xおよびyは、1〜6から互いに独立に選択される整数であり、
は、Hまたはアルキル基−C2n+1(式中、nは、1〜4から選択される整数)であり、
は、アルキル基−C2n+1(式中、nは、1〜9から選択される整数)である)のジオールである、結晶性または半結晶性のポリエステルオリゴマーまたはポリマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−537558(P2008−537558A)
【公表日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553544(P2007−553544)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000966
【国際公開番号】WO2006/082080
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ウィンドウズ
2.WINDOWS
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】