説明

粘着テープ

【課題】接着信頼性の高い粘着テープを提供する。
【解決手段】粘着テープ10は、中空無機微粒子18および気泡20を含有する感圧接着剤層12を有する。粘着テープ10は、100%モジュラスが13.0N/cm以上であり、せん断接着力が80N/cm以上である。中空無機微粒子18は、中空ガラスバルーンである。これにより、高いせん断接着力が求められる、例えば、自動車や建造物などに適用できるとともに、高い初期弾性率を有することで加工性や作業性の向上が図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、常温での接着力やせん断強度が必要とされる用途、例えば、自動車、機械部品、電化製品、建材等の種々の分野において、部材間の接合に感圧性接着テープ又はシート(以下、「感圧性接着部材」と称する)が用いられている。このような感圧性接着部材は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分として含有する粘着剤組成物を紫外線で硬化させることで作製される。また、紫外線で反応を行う際の反応性の観点などから、感圧性接着剤層の全体に直径が20〜150μm程度の紫外線を透過させる微粒子を分散させた感圧接着テープが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭57−17030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述の感圧性接着部材は、用いられる部材や場所によっては、はく離に対する接着力だけでなく、高いせん断強度も求められることがある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、接着信頼性の高い粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の粘着テープは、中空無機微粒子および気泡を含有する感圧接着剤層を有する粘着テープであって、100%モジュラスが13.0N/cm以上であり、せん断接着力が80N/cm以上である。
【0007】
この態様によると、高いせん断接着力が求められる、例えば、自動車や建造物などの接着用途に適用できるとともに、高い初期弾性率を有することで加工性や作業性の向上が図られる。その結果、このような粘着テープを用いることで高い接着信頼性が得られる。また、この態様によると、中空の無機微粒子が用いられているため、特に構造材の接着用途として比較的厚みのある製品形態として加工されている場合であっても、軽量化に寄与する。
【0008】
中空無機微粒子は、中空ガラスバルーンであってもよい。これにより、せん断強度や保持力などの他の特性を損なうことなく、高温接着力を向上させることが可能になる。また、無機塩類からなる微粒子と比較した場合、アルカリ溶出等による粘着特性への影響を低減できる。また、無機微粒子が中空ガラスバルーンであることで、各製造工程における加工性の低下が抑制される。
【0009】
前記中空無機微粒子は、前記感圧接着剤層1gあたりの総表面積が3.5×10〜6.0×10[cm]であってもよい。これにより、粘着力を損なうことなくせん断接着力を高めることができる。
【0010】
中空無機微粒子は、その平均粒径が20〜80μmであってもよい。これにより、せん断強度や保持力などの他の特性を損なうことなく、感圧接着剤層の単位重量あたりの中空無機微粒子の表面積を大きくすることができる。
【0011】
感圧接着剤層は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とするアクリル系ポリマーを含有していてもよい。これにより、感圧接着剤層を粘着剤として用いるために別途粘着処理を施す必要がなくなるため、比較的簡便な方法で粘着剤を製造することが可能となり、生産効率が向上する。
【0012】
アクリル系ポリマーは、活性エネルギー線の作用により重合されたものであってもよい。これにより、迅速で均一な重合が可能となり、生産効率が向上する。
【0013】
気泡は、その総和が感圧接着剤層の全体積に対して5〜40体積%となるように含有してもよい。気泡が含有されることで、曲面や凹凸面に対して良好な接着性を発揮することができるとともに、優れた耐反発性を発揮することができる。また、含有される気泡の量を感圧接着剤層の全体積に対して5体積%以上とすることで、前述の特性をより確実に発揮させることができる。また、含有される気泡の量を感圧接着剤層の全体積に対して40体積%以下とすることで、感圧接着剤層を表裏に貫通する気泡の存在が低減され、接着性能や外観の見栄えの悪化が抑制される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、接着信頼性の高い粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施の形態に係る粘着テープの一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面や表を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0017】
[感圧性接着部材]
本実施の形態に係る感圧性接着部材は、粘着剤や支持材の主たる組成物に、柔軟で耐久性に優れた材料が用いられることで、温度変化に伴う被着体の歪みや変形に追従し、強い接着力と高耐久性、高耐熱性を発揮することができる。なお、本実施の形態に係る感圧性接着部材は、その形状が特に限定されるものではなく、テープのように細長い形状以外にも、シート形状であってもよい。以下では、片面のみが感圧接着面となっているテープ状の粘着テープについて説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態に係る粘着テープの一部断面図である。図1に示すように、粘着テープ10は、粘着剤としての感圧接着剤層12と、感圧接着剤層12を支持する支持層としての基材14とを備える。感圧接着剤層12は、粘着性組成物16と、粘着性組成物16に含有されている中空無機微粒子18と、粘着性組成物16の内部に形成されている気泡20とを有する。
【0019】
なお、本実施の形態に係る粘着テープは、図1に示すような片面のみが感圧接着面(粘着面)となっている形態だけでなく、両面が感圧接着面となっている形態であってもよい。その際、感圧接着面を構成する感圧接着剤層は、両面とも同じ種類であってもよいし異なる種類であってもよい。このような粘着テープは、一枚のセパレータ(はく離ライナー)のみにより感圧接着面が保護されたシングルセパレータタイプであってもよく、二枚のセパレータにより両面の感圧接着面が保護された構成を有するダブルセパレータタイプであってもよい。
【0020】
また、粘着テープは、基材がない感圧接着剤層のみであってもよい。この場合は、その接着面を表裏二枚のセパレータにより保護するとよい。
【0021】
また、基材14は、感圧接着剤層12に含まれる粘着性組成物16と同様の組成物からなっていてもよく、中空無機微粒子18や気泡20が適宜含まれていてもよい。また、粘着テープ10は、ロール状に巻回された形態で形成されていてもよく、シートが積層された形態で形成されていてもよい。なお、粘着テープ10をロール状に巻回された形態にする場合、例えば、感圧接着剤層12を、セパレータや基材の背面側に形成されたはく離処理層により保護した状態でロール状に巻回することにより作製ができる。
【0022】
なお、粘着テープ10は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層(例えば、中間層、下塗り層など)を有していてもよい。
【0023】
本実施の形態に係る粘着テープ10は、100%モジュラスが13.0N/cm以上である。100%モジュラスの上限は30N/cm以下、より好ましくは25N/cm以下であるとよい。また、粘着テープ10は、せん断接着力が80N/cm以上である。なお、本実施の形態で用いられる100%モジュラスやせん断接着力の数値は、感圧接着剤層12のみで測定した値である。各数値の測定方法については後述する実施例において説明する。
【0024】
[感圧接着剤層]
(ベースポリマー)
感圧接着剤層12に含まれる粘着性組成物16は、ベースポリマーが含まれている。ベースポリマーは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。ベースポリマーとしては、公知のアクリル系感圧性接着剤におけるベースポリマーを好適に用いることができる。アクリル系感圧性接着剤では、通常、ベースポリマーとして、アクリル系ポリマー[特に、(メタ)アクリル酸エステルを単量体主成分とするアクリル系ポリマー]を含有している。該アクリル系ポリマーにおいて、(メタ)アクリル酸エステルは、1種のみが用いられていてもよく、2種以上が組み合わせられて用いられていてもよい。このような(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを好適に用いることができる。前記アクリル系ポリマーにおける(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステル[好ましくは(メタ)アクリル酸C2-14アルキルエステル、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸C2-10アルキルエステル]などが挙げられる。
【0025】
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルや、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0026】
なお、(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル系ポリマーの単量体主成分として用いられているので、(メタ)アクリル酸エステル[特に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル]の割合は、例えば、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して60重量%以上(好ましくは80重量%以上)であることが好ましい。これにより、粘着剤として用いるために別途粘着処理を施す必要がなくなるため、比較的簡便な方法で粘着剤を製造することが可能となり、生産効率が向上する。
【0027】
前記アクリル系ポリマーでは、モノマー成分として、極性基含有単量体や多官能性単量体などの各種の共重合性単量体が用いられていてもよい。モノマー成分として、共重合性単量体を用いることにより、例えば、被着体への接着力を向上させたり、粘着剤(感圧接着剤層)の凝集力を高めたりすることができる。共重合性単量体は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0028】
前述の極性基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有単量体又はその無水物(無水マレイン酸など);(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどの水酸基含有単量体;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有単量体;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリンの他、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール等の複素環含有ビニル系単量体などが挙げられる。極性基含有単量体としては、アクリル酸等のカルボキシル基含有単量体又はその無水物が好適である。
【0029】
極性基含有単量体の使用量としては、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して30重量%以下(例えば、1〜30重量%)であり、好ましくは3〜20重量%である。極性基含有単量体の使用量が、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して30重量%を超えると、例えば、アクリル系感圧性接着剤の凝集力が高くなりすぎ、感圧接着性が低下するおそれがある。なお、極性基含有単量体の使用量が少なすぎると(例えば、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して1重量%未満であると)、例えば、アクリル系感圧性接着剤の凝集力が低下し、高いせん断力が得られなくなる。アクリル系感圧性接着剤の凝集力を調整するために、多官能性単量体を用いることも可能である。
【0030】
前述の多官能性単量体としては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0031】
多官能性単量体の使用量としては、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して2重量%以下(例えば、0.01〜2重量%)であり、好ましくは0.02〜1重量%である。多官能性単量体の使用量が、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して2重量%を超えると、例えば、アクリル系感圧性接着剤の凝集力が高くなりすぎ、感圧接着性が低下するおそれがある。なお、多官能性単量体の使用量が少なすぎると(例えば、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して0.01重量%未満であると)、例えば、アクリル系感圧性接着剤の凝集力が低下するおそれがある。
【0032】
また、極性基含有単量体や多官能性単量体以外の共重合性単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニル;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有単量体;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有単量体;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有単量体;フッ素原子含有(メタ)アクリレート;ケイ素原子含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0033】
(重合開始剤)
上述のアクリル系ポリマーは、公知あるいは慣用の重合方法により調整することができる。重合方法としては、例えば、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、光重合法などが挙げられる。本実施の形態に係る感圧接着剤層12の製造では、作業性や安定した気泡構造を得る観点から、ベースポリマーとしてのアクリル系ポリマーの調製に際して、熱重合開始剤や光重合開始剤(光開始剤)などの重合開始剤を用いた熱や活性エネルギー線による硬化反応を利用することが好ましい。すなわち、本実施の形態に係る粘着性組成物16には、熱重合開始剤や光重合開始剤などの重合開始剤が含まれている。
【0034】
このように、粘着性組成物16に重合開始剤(熱重合開始剤や光重合開始剤など)が含まれていると、粘着性組成物16は熱や活性エネルギー線により硬化が可能となる。そのため、中空無機微粒子18が混合された状態で粘着性組成物16が硬化されるため、中空無機微粒子18が安定して含有された感圧接着剤層12を容易に形成することができる。
【0035】
このような重合開始剤としては、重合時間を短くすることができる利点などから、光重合開始剤を好適に用いることができる。すなわち、活性エネルギー線を用いた重合を利用して、中空無機微粒子18や気泡20を安定して内包する感圧接着剤層12を形成することが好ましい。なお、重合開始剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0036】
このような光重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などを用いることができる。
【0037】
具体的には、ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。
【0038】
また、ベンゾイン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾインなどが含まれる。;ベンジル系光重合開始剤には、例えば、ベンジルなどが含まれる。ベンゾフェノン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが含まれる。ケタール系光重合開始剤には、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが含まれる。チオキサントン系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが含まれる。
【0039】
光重合開始剤の使用量としては、光重合によってアクリル系ポリマーを形成することができる限り特に限定されないが、例えば、粘着性組成物16中のベースポリマーを形成するための全モノマー成分[特に、(メタ)アクリル酸エステルを単量体主成分とするアクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分]100重量部に対して0.01〜5重量部(好ましくは0.03〜3重量部)の範囲から選択することができる。
【0040】
光重合開始剤の活性化に際しては、活性エネルギー線を粘着性組成物16に照射することが重要である。このような活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に、紫外線が好適である。また、活性エネルギー線の照射エネルギーや、その照射時間などは、特に限定されるものではなく、光重合開始剤を活性化させて、モノマー成分の反応を生じさせることができればよい。このように、活性エネルギー線の作用により重合されることで、迅速で均一な重合が可能となり、生産効率が向上する。
【0041】
なお、熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤[例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドなど]、過酸化物系重合開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエートなど)、レドックス系重合開始剤などが挙げられる。熱重合開始剤の使用量としては、特に限定されるものではなく、従来、熱重合開始剤として利用可能な範囲であればよい。
【0042】
上述のように感圧接着剤層12は、各種重合によって中空無機微粒子18を分散した状態で安定して硬化されるため、凝集力や耐熱性が向上する。
【0043】
(中空無機微粒子)
本発明者が鋭意検討した結果、本実施の形態に係る感圧接着剤層12に含まれている中空無機微粒子18の表面積の総和は、感圧接着剤層(粘着剤)1gあたり3.5×10〜6.0×10[cm]であるとよいことが明らかになった。このような感圧接着剤層12を備えた粘着テープ10や基材のない感圧接着剤層12は、通常の粘着力を損なうことなく高いせん断強度を有する。
【0044】
粘着性組成物16に中空無機微粒子18を含有させる方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、感圧接着剤層12を構成する粘着性組成物16を形成後に、粘着性組成物16に中空無機微粒子18を配合・混合する方法が挙げられる。また、他の方法としては、アクリル系ポリマーを形成する、アクリル系モノマー混合物又はそれらの一部が重合した部分重合物に、中空無機微粒子18を配合・混合する方法などが挙げられる。これらの方法のうち、作業性の観点から、アクリル系ポリマーを形成する、アクリル系モノマー混合物又はそれらの一部が重合した部分重合物に、中空無機微粒子18を配合・混合する方法が好ましい。
【0045】
本実施の形態に係る感圧接着剤層12に含まれる微粒子としては、例えば、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化窒素などの炭化物粒子;窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素などの窒化物粒子;アルミナ、ジルコニウムなどの酸化物に代表されるセラミック粒子;炭化カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラス、シリカ、疎水性シリカなどの無機微粒子などを挙げることができる。特に、中空無機微粒子18としては、中空ガラスバルーン等のガラス製の中空バルーン;中空アルミナバルーン等の化合物の中空バルーン;中空セラミックバルーン等などを挙げることができる。
【0046】
これら微粒子の中でも、紫外線反応を用いる際の重合の効率や重みなどの観点から、中空無機微粒子を用いることが好ましい。より好ましくは、中空ガラスバルーンを用いることで、せん断強度や保持力などの感圧接着剤層12として必要な強度や特性を損なうことなく、高温接着力を向上させることが可能となる。
【0047】
中空無機微粒子18は、その平均粒径は特に限定されるものではないが、感圧接着剤層12に求められる所望の物性に応じて選択すればよい。例えば、中空無機微粒子18の平均粒径は、1〜500μmの範囲であればよく、好ましくは、5〜200μmの範囲、より好ましくは、20〜80μm、さらに好ましくは30〜50μmの範囲であるとよい。これにより、感圧接着剤層12のせん断強度や保持力などの特性を損なうことなく、感圧接着剤層12の単位重量あたりの中空無機微粒子18の表面積を大きくすることができる。
【0048】
中空無機微粒子18の平均粒径の測定方法は以下の通りである。はじめに、コールター粒度測定器(レーザー回折法)により、粒度分布の測定が行われる。その後、測定により求められた体積度数分布から、平均粒径が算出される。
【0049】
中空無機微粒子18は、その比重は特に限定されるものではないが、感圧接着剤層12に求められる所望の物性に応じて選択すればよい。例えば、中空無機微粒子18の比重は、0.1〜0.8g/cmの範囲であればよく、好ましくは、0.15〜0.50g/cmの範囲であるとよい。これにより、感圧接着剤層12のせん断強度や保持力などの特性を損なうことなく、感圧接着剤層12の単位重量あたりの中空無機微粒子18の表面積を大きくすることができる。中空無機微粒子18の比重が0.1g/cmより大きい場合、より好ましくは、0.15g/cmより大きい場合、アクリル系モノマー混合物又はそれらの一部が重合した部分重合物に中空無機微粒子18を配合して混合する際に、中空無機微粒子18の浮き上がりが抑えられる。そのため、感圧接着剤層12において中空無機微粒子18が均一に分散される。また、中空無機微粒子18の比重が上述の範囲以上であることで、ガラス強度がある程度確保され、中空無機微粒子18自体の割れが抑制される。
【0050】
一方、中空無機微粒子18の比重が0.8g/cmより小さい場合、より好ましくは、0.50g/cmより小さい場合、紫外線の透過率がある程度以上確保されるため、紫外線反応の効率の低下が抑制される。また、より安価な材料を用いることが可能なため、製造コストを抑えることができる。また、中空無機微粒子18が分散されている感圧接着剤層12の重量の増加が抑えられるため、製造時や使用時の作業性が向上し、粘着テープが使用される機器の軽量化にも寄与する。
【0051】
中空無機微粒子18の比重の測定方法は以下の通りである。はじめに、ペンタピクノメータを用いて、気相置換法により真比重の測定が行われる。置換媒体としてガスが封入され、気体の状態方程式よりサンプル体積が求められる。求められた体積値aと電子天秤で測定された重量値bより、以下の式(1)に示すように比重δが計算される。
比重δ=b[g]/a[cm]・・・式(1)
【0052】
なお、中空無機微粒子18は、その表面に各種の表面処理(例えば、シリコーン系化合物やフッ素系化合物等による低表面張力化処理など)が施されていてもよい。
【0053】
中空無機微粒子18の使用量としては、粘着性組成物16のベースポリマーであるアクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分100重量部に対して、1重量部以上、好ましくは、5重量部以上であるとよい。粘着性組成物16に対して中空無機微粒子18を前述の範囲以上の割合で分散させることで、含有されている中空無機微粒子18の表面積の総和を増大させることができるとともに、気泡を微分散しやすくなる。
【0054】
一方、中空無機微粒子18の使用量としては、アクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分100重量部に対して、15重量部以下、好ましくは、13重両部以下、より好ましくは、10重量部以下であるとよい。粘着性組成物16に対して中空無機微粒子18を前述の範囲以下の割合で分散させることで、感圧接着剤層12を粘着テープ10に用いた際に、感圧接着剤層12と被着体との間に生じる凹凸が減少し、接着面積の減少による接着力の低下が抑制される。
【0055】
中空無機微粒子18として用いられる中空ガラスバルーンとしては、「フジバルーン H−35」、「フジバルーン H−40」(いずれも富士シリシア化学株式会社製)などが挙げられる。
【0056】
本実施の形態に係る感圧接着剤層12又は感圧接着剤層12を備えた粘着テープ10は、前述の中空ガラスバルーンを単独で又は2種以上混合させることで、中空ガラスバルーンの表面積の総和が感圧接着剤層1gあたり3.5×10〜6.0×10[cm]となるようにしている。これにより、接着力や保持力などの他の特性を損なうことがなく、せん断接着力を向上させることが可能となる。
【0057】
感圧接着剤層(粘着剤)1gあたりの中空無機微粒子18の総表面積Sの計算方法は以下に示す通りである。
中空無機微粒子18の平均粒径を2r[cm]、比重をδ[g/cm]、添加配合部数をα、混合されるモノマーや各種剤の配合部数の総和をβとすると、
中空無機微粒子の粒子1球当たりの重さm=4/3×π×r×δ[g]
中空無機微粒子1gに含まれる粒子の数N=1/m
中空無機微粒子の粒子1球当たりの表面積s=4×π×r[cm
中空無機微粒子1gに含まれる粒子の総表面積S=N×s[cm
感圧接着剤層(粘着剤)1gに含まれる中空無機微粒子の重さM=α/β[g]
感圧接着剤層(粘着剤)1gあたりの総表面積S[cm]=S×M=(3×α)/(β×r×δ)
【0058】
(気泡)
本実施の形態に係る感圧接着剤層12は、適宜気泡20を含有している。感圧接着剤層12に混合可能な気泡20の量としては、特に限定されるものではないが、使用用途などに応じて適宜選択される。本実施の形態に係る気泡20は、感圧接着剤層12の全体積に対して5〜40体積%、好ましくは8〜30体積%含まれているとよい。感圧接着剤層12は、気泡20の混合量が5体積%以上の場合、前述の特性をより確実に発揮させることができる。また、含有される気泡20の量を感圧接着剤層12の全体積に対して40体積%以下とすることで、感圧接着剤層12を表裏に貫通する気泡の存在が低減され、接着性能や外観の見栄えの悪化が抑制される。
【0059】
感圧接着剤層12に混合される気泡20は、基本的には、独立気泡タイプの気泡であることが望ましいが、独立気泡タイプの気泡と連続気泡タイプの気泡とが混在していてもよい。
【0060】
また、気泡20としては、通常、球状(特に真球状)の形状を有しているが、いびつな形状の球状を有していてもよい。気泡20において、その平均気泡径(直径)としては、特に限定されるものではないが、例えば、1〜1000μm(好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは30〜300μm)の範囲から選択される。なお、気泡の平均気泡径(直径)は、電子顕微鏡等で得られるテープサンプル断面の画像より測定される。
【0061】
なお、気泡中に含まれる気体成分(気泡を形成するガス成分;「気泡形成ガス」と称する場合がある)としては、特に限定されるものではないが、窒素、二酸化炭素、アルゴンなどの不活性ガスの他、空気などの各種気体成分が用いられる。気泡形成ガスとしては、気泡形成ガスを粘着性組成物16と混合した後に、重合反応等の反応を行う場合は、その反応を阻害しないものが好ましい。気泡形成ガスとしては、反応を阻害しないことや、コスト的な観点などから、窒素が好適である。
【0062】
(界面活性剤)
感圧接着剤層12や感圧接着剤層12を構成する粘着性組成物16は、それらを含む粘着テープ10の用途に応じて適宜種々の添加剤が含まれていてもよい。例えば、中空無機微粒子18とベースポリマーとの間の密着性や摩擦抵抗の低減、気泡の混合性や安定性の観点から、本実施の形態に係る感圧接着剤層12や粘着性組成物16には、界面活性剤が適宜添加される。
【0063】
このような界面活性剤としては、例えば、イオン性界面活性剤、炭化水素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。中でも、フッ素系界面活性剤が好ましく、特に分子中にオキシC2−3アルキレン基およびフッ素化炭化水素基を有するフッ素系界面活性剤が好ましい。また、フッ素系界面活性剤は、1種のみ使用されていてもよいし、2種以上を組み合わせて使用されていてもよい。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、商品名「サーフロンS−393」(AGCセイケミカル株式会社製)が好適である。
【0064】
フッ素系界面活性剤の使用量(固形分)としては、特に限定されるものではないが、例えば、粘着性組成物16中のベースポリマーを形成するための全モノマー成分[特に、(メタ)アクリル酸エステルを単量体主成分とするアクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分]100重量部に対して0.01〜2重量部(好ましくは0.03〜1.5重量部、さらに好ましくは0.05〜1重量部)の範囲から選択することができる。フッ素系界面活性剤の使用量が気泡20を含有する粘着性組成物16中のベースポリマー100重量部に対して0.01重量部未満であると、気泡20の混合性が低下して十分な量の気泡20を粘着性組成物16に混合することが困難になる。一方、フッ素系界面活性剤の使用量が気泡20を含有するベースポリマー100重量部に対して2重量部を超えると、接着性能が低下する。
【0065】
本実施の形態では、感圧接着剤層12に気泡20を安定的に混合して存在させるために、気泡20は、粘着性組成物16に配合する最後の成分として配合して混合させることが好ましい。特に、気泡20を混合する前の粘着性組成物16の粘度としては、混合された気泡20を安定的に保持することが可能な粘度であれば特に限定されるものではないが、例えば、粘度計としてBH粘度計を用いて、ローター:No.5ローター、回転数:10rpm、測定温度:30℃の条件で測定された粘度としては、5〜50Pa・s(好ましくは10〜40Pa・s)であることが望ましい。気泡20が混合される粘着性組成物16の粘度(BH粘度計、No.5ローター、10rpm、30℃)が、5Pa・s未満であると、粘度が低すぎて、混合した気泡がすぐに合一して系外に抜けてしまう場合があり、一方、50Pa・sを超えていると、気泡20を含有する感圧接着剤層12の形成が困難となる。
【0066】
なお、気泡を混合する前のアクリル系モノマー混合物の粘度は、例えば、アクリルゴム、増粘性添加剤などの各種ポリマー成分等を配合する方法、ベースポリマーを形成するためのモノマー成分[例えば、アクリル系ポリマーを形成させるための(メタ)アクリル酸エステルなどのモノマー成分など]を一部重合させる方法などにより、調整することができる。
【0067】
具体的には、例えば、ベースポリマーを形成するためのモノマー成分[例えば、アクリル系ポリマーを形成させるための(メタ)アクリル酸エステルなどのモノマー成分など]と、重合開始剤(例えば、光重合開始剤など)とを混合してモノマー混合物を調製し、該モノマー混合物に対して重合開始剤の種類に応じた重合反応を行って、一部のモノマー成分のみが重合した組成物(シロップ)を調製する。その後、該シロップに、フッ素系界面活性剤や中空無機微粒子18と、必要に応じて各種添加剤とを配合して、気泡を安定的に含有することが可能な適度な粘度を有する粘着性組成物16の前駆体を調製することができる。そして、この粘着性組成物16の前駆体に気泡を導入して混合させることにより、気泡20が均一に分散された感圧接着剤層12が得られる。
【0068】
気泡を混合する方法としては、特に限定されるものではないが、公知の気泡混合方法を利用することができる。例えば、装置の例としては、中央部に貫通孔を持った円盤上に、細かい歯が多数ついたステータと、このステータと対向しており、円盤上にステータと同様の細かい歯がついているローターと、を備えた装置などが挙げられる。この装置におけるステータ上の歯と、ローター上の歯との間に気泡を含有する粘着性組成物16を導入し、ローターを高速回転させながら、気泡を形成させるためのガス成分(気泡形成ガス)を貫通孔を通して粘着性組成物16の前駆体中に導入する。これにより、気泡が細かく分散され混合された粘着性組成物16が得られる。
【0069】
なお、気泡の合一を抑制又は防止するためには、気泡の混合から、気泡を含有する感圧接着剤層12の形成までの工程を一連の工程として連続的に行うことが好ましい。すなわち、感圧接着剤層12は、前述のようにして気泡を混合させて気泡を含有する粘着性組成物16を調製した後、続いて、その気泡を含有する粘着性組成物16を用いて、公知の形成方法を利用して得られる。具体的には、例えば、気泡が混合されている粘着性組成物16を所定の面上に塗布し、必要に応じて乾燥や硬化等を行うことにより、気泡を含有する感圧接着剤層12が形成される。なお、気泡20を含有する感圧接着剤層12の形成に際しては、前述のように、熱線や活性エネルギー線の照射により硬化させる方法が好ましい。
【0070】
前述の気泡を含有する粘着性組成物16は、気泡の合一が起こり難く、十分な量の気泡を安定的に含有しているので、粘着性組成物16を構成するベースポリマーや添加剤などを適宜選択することにより、粘着テープ10における感圧接着剤層12を形成するための材料として好適に利用することができる。また、前述の気泡を含有する粘着性組成物16は、粘着性組成物16を構成するベースポリマーや添加剤などを適宜選択することにより、基材14(特に、感圧性接着部材に用いられる気泡を含有する基材)を形成するための材料としても好適に利用することができる。
【0071】
(他の添加剤)
本実施の形態に係る感圧接着剤層12には、ベースポリマー、重合開始剤、中空無機微粒子、界面活性剤等の他に、感圧接着剤層12の用途に応じて、適宜な添加剤が含まれていてもよい。例えば、感圧接着剤層12が粘着テープ10に用いられる場合、粘着テープ10の種類に応じて、架橋剤(例えば、ポリイソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤など)、粘着付与剤(例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂、などからなる常温で固体、半固体あるいは液状のもの)、可塑剤、前述の中空無機微粒子以外の充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、着色剤(顔料や染料など)などの適宜な添加剤が感圧接着剤層12に含まれていてもよい。
【0072】
例えば、光重合開始剤を用いて感圧接着剤層12を形成する場合、感圧接着剤層12を着色させるために、光重合を疎外させない程度の顔料(着色顔料)を使用することができる。感圧接着剤層12の着色として、黒色が望まれる場合には、例えば、カーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックの使用量としては、着色度合いや、光重合反応を阻害しない観点から、例えば、粘着性組成物16中のベースポリマーを形成するための全モノマー[特に(メタ)アクリル酸エステルを単量体主成分とするアクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分]100重量部に対して0.15重量部以下(例えば、0.001〜0.15重量部)、好ましくは0.01〜0.1重量部の範囲から選択することが望ましい。
【0073】
なお、上述してきた感圧接着剤層12は、単層、積層のいずれの形態を有していてもよい。また、感圧接着剤層12の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、200〜5000μm(好ましくは300〜4000μm、さらに好ましくは400〜3000μm)の範囲から選択することができる。感圧接着剤層12の厚みが200μmよりも小さいと、クッション性が低下して、曲面や凹凸面に対する接着性が低下する。一方、感圧接着剤層12の厚みが5000μmよりも大きいと、均一な厚みの層が得られにくくなる。
【0074】
[基材]
本実施の形態に係る粘着テープ10に用いられる基材14は、特に限定されるものではないが、例えば、紙などの紙系基材;布、不織布、ネットなどの繊維系基材(その原料としては、特に限定されるものではないが、例えば、マニラ麻、レーヨン、ポリエステル、パルプ繊維などを適宜選択することができる);金属箔、金属板などの金属系基材;プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材;ゴムシートなどのゴム系基材;発泡シートなどの発泡体や、これらの積層体(特に、プラスチック系基材と他の基材との積層体や、プラスチックフィルム(又はシート)同士の積層体など)等の適宜な薄葉体を用いることができる。
【0075】
プラスチックのフィルムやシートにおける素材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα−オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);酢酸ビニル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられる。これらの素材は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0076】
なお、基材として、プラスチック系基材が用いられている場合は、延伸処理等により伸び率などの変形性を制御していてもよい。また、基材としては、感圧接着剤層12が活性エネルギー線による硬化により形成される場合は、活性エネルギー線の透過を阻害しないものを使用することが好ましい。
【0077】
基材の表面は、感圧接着剤層12との密着性を高めるため、慣用の表面処理、例えば、コロナ処理、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的方法による酸化処理等が施されていてもよく、下塗り剤やはく離剤等によるコーティング処理等が施されていてもよい。
【0078】
基材の厚さは、強度や柔軟性、使用目的などに応じて適宜に選択すればよく、例えば、一般的には1000μm以下(例えば、1〜1000μm)、好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは3〜300μm程度であるが、これらに限定されるものではない。なお、基材は単層、積層いずれの形態を有していてもよい。
【0079】
なお、基材に感圧接着剤を含ませる場合には、公知の感圧性接着剤(例えば、アクリル系感圧性接着剤、ゴム系感圧性接着剤、ビニルアルキルエーテル系感圧性接着剤、シリコン系感圧性接着剤、ポリエステル系感圧性接着剤、ポリアミド系感圧性接着剤、ウレタン系感圧性接着剤、フッ素系感圧性接着剤、エポキシ系感圧性接着剤など)を用いて、公知の形成方法を利用して基材を形成することができる。また、感圧性接着剤の厚みは、特に限定されるものではなく、目的や使用方法などに応じて適宜選択することができる。
【0080】
[セパレータ]
本実施の形態では、感圧接着剤層12や粘着テープ10の接着面(粘着面)を保護するために、セパレータ(はく離ライナー)が用いられていてもよい。なお、セパレータは必ずしも設けられていなくてもよい。セパレータは、セパレータにより保護されている接着面を利用する際に(すなわち、セパレータにより保護されている感圧接着剤層12に被着体を貼着する際に)剥がされる。
【0081】
このようなセパレータとしては、慣用のはく離紙などを使用できる。具体的には、セパレータとしては、例えば、はく離処理剤によるはく離処理層を少なくとも一方の表面に有する基材の他、フッ素系ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等)からなる低接着性基材や、無極性ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂など)からなる低接着性基材などを用いることができる。なお、セパレータは、感圧接着剤層12を支持するための基材として用いることも可能である。
【0082】
セパレータとしては、例えば、はく離ライナー用基材の少なくとも一方の面にはく離処理層が形成されているセパレータを好適に用いることができる。このようなはく離ライナー用基材としては、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム等)、オレフィン系樹脂フィルム(ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等)、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム(ナイロンフィルム)、レーヨンフィルムなどのプラスチック系基材フィルム(合成樹脂フィルム)や、紙類(上質紙、和紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙、トップコート紙など)の他、これらを、ラミネートや共押し出しなどにより、複層化したもの(2〜3層の複合体)等が挙げられる。
【0083】
一方、はく離処理層を構成するはく離処理剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、シリコーン系はく離処理剤、フッ素系はく離処理剤、長鎖アルキル系はく離処理剤などを用いることができる。はく離処理剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なお、セパレータの厚さや、形成方法などは特に限定されない。
【0084】
[アクリル系感圧性接着部材]
本実施の形態に係る感圧性接着部材のうち、粘着性組成物や基材にアクリル系ポリマーが含有されている場合、低温(例えば、−20〜5℃程度の温度)での初期接着性に優れる。また、感圧接着剤層や基材に気泡が含有されている場合、応力緩和性が向上することにより、高い耐反発性が発揮される。また、曲面や凹凸面および被着体の屈曲に対して追従しやすくなるため、接着に十分な面積を確保することができる。また、応力分散性に優れるため、高いせん断力が得られる。特に、本実施の形態に係る感圧性接着部材は、中空無機微粒子を適度に含んだ感圧接着剤層12を有しているので、優れた常温接着力やせん断接着力を有する。
【0085】
アクリル系感圧性接着部材は、また、塗膜(例えば、耐酸性雨塗膜、自動車用塗膜など)、塗料板、樹脂板、鋼板等の金属板、塗装板(例えば、前述の樹脂板、鋼板等の金属板などの表面に前述の耐酸性雨塗膜、自動車用塗膜などの塗膜を設けたもの)などの接着が困難な被着体に対する初期接着性優れている。特に、自動車のボディーなどの自動車塗装板に対する初期接着性に優れている。
【0086】
被着体である塗膜としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル・メラミン系、アルキド・メラミン系、アクリル・メラミン系、アクリル・ウレタン系、アクリル・多酸硬化剤系などの各種塗膜が挙げられる。
【0087】
また、本実施の形態に係るアクリル系感圧性接着部材が用いられる接着の困難な被着体の形状については、特に限定されるものではない。例えば、接着の困難な被着体は、平面状、三次元の曲面状などの形状を有する被着体であってもよいし、あるいは、平面状、三次元の曲面状などの形状を有する成形品に塗装処理を施したものであってもよい。
【0088】
このようなアクリル系感圧性接着部材は、例えば、自動車塗装板に貼り付けて、塗膜を保護したり、装飾を付与したりする方法で用いられる。また、アクリル系感圧性接着部材を介して、自動車塗装板に物品を接合・固定するために用いることも可能である。前述の物品としては、例えば、自動車の外装部品(特にウェザーストリップなどの柔軟なゴム製中空部材など)、ボディーの保護用部品や装飾部品が挙げられる。
【0089】
[製造方法の概略]
本実施の形態に係る粘着性組成物16は、所定の面状に塗布され、紫外線を照射して光重合させることにより硬化され、感圧接着剤層12を形成する。感圧接着剤層12は、それ自体が感圧接着性を有し、粘着化された感圧接着剤層となる。粘着性組成物16は被着体上に直接塗布されてもよく、又はいったんはく離紙上に塗布され硬化されてもよい。はく離紙上に形成された感圧接着剤層12を被着体に転写することもできる。なお、光重合の際の紫外線照射量は200〜3000mJ/cm程度である。このとき、粘着性組成物16の厚さは中空無機微粒子18の粒径以上であれば任意であるが、100〜3000μm程度が好ましい。
【0090】
粘着性組成物16を基材14などに塗布する際は、作業を円滑に行うために増粘することが好ましい。増粘は、例えば、アクリルゴム、増粘性添加剤などの各種ポリマー成分を配合する方法、ベースポリマーを形成するためのモノマー成分[例えば、アクリル系ポリマーを形成させるための(メタ)アクリル酸エステルなどのモノマー成分など]を一部重合させる方法などにより、調整することができる。
【実施例】
【0091】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0092】
(実施例1)
モノマー成分として、2−エチルヘキシルアクリレート:90重量部、およびアクリル酸:10重量部が混合されたモノマー混合物に、光重合開始剤として、商品名「イルガキュアー651」(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製):0.05重量部、商品名「イルガキュアー184」(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製):0.05重量部を配合した後、粘度(BH粘度計、No.5ローター、10rpm、測定温度:30℃)が約15Pa・sになるまで紫外線(UV)を照射して、一部が重合した組成物(シロップ、以下、「部分重合モノマーシロップ」と称する場合がある)を作製した。
【0093】
この部分重合モノマーシロップ100重量部に、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)を0.08重量部添加した後、さらに中空ガラスバルーン(平均粒径40μm、商品名「フジバルーン H−40」(富士シリシア化学株式会社製))を、部分重合モノマーシロップ100重量部に対して12.5重量部となるような割合で添加した。
【0094】
中空ガラスバルーン添加後の部分重合モノマーシロップに、フッ素系界面活性剤(商品名「サーフロンS−393」(AGCセイケミカル株式会社製))を0.7重量部添加して、中空無機微粒子を含有した粘着性組成物を得た。その後、前述の細かい歯がついたステータとローターとを備えた気泡混合装置を用いて、粘着性組成物を装置の貫通孔から導入された窒素ガスとともに攪拌することで、気泡が分散混合された粘着性組成物が得られた。なお、気泡は粘着性組成物あるいは感圧接着剤層の全体積に対して約20体積%であった。
【0095】
気泡を含有した粘着性組成物を、セパレータのはく離処理面に塗布した。セパレータとしては、片面がはく離処理されているポリエチレンテレフタレート製基材(商品名「MRF」、三菱ポリエステルフィルム株式会社製、又は、商品面「MRN」、三菱ポリエステルフィルム株式会社製)を使用した。
【0096】
セパレータに塗布された粘着性組成物を、照度5mW/cmの紫外線(東芝株式会社製「ブラックライト」)を用いて両面から3分間照射し[UVチェッカー(商品名「UVR−T1」、株式会社トプコン製)、最大感度:350nmで測定]、粘着性組成物を硬化させて、厚さ800μmの感圧接着剤層を得た。この際、商品名「イルガキュアー651」(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製):0.04重量部を光重合開始剤として追加した。また、その他の添加成分として、酸化防止剤(商品名「イルガノックス1010」(チバ・スペシャリティーケミカルズ):0.5重量部)、顔料(商品名「AT DN101」(大日精化):0.02重量部)、顔料分散溶媒(2−エチルヘキシルアクリレート:0.18重量部)を添加した。
【0097】
(実施例2)
実施例1で添加されている商品名「フジバルーン H−40」の中空ガラスバルーンの代わりに、商品名「フジバルーン H−35」(富士シリシア化学株式会社製)の中空ガラスバルーンを部分重合モノマーシロップ100重量部に対して12.5重量部となるような割合で添加した。その他の配合や製造方法については、実施例1と同様である。
【0098】
(比較例)
実施例1で添加されている商品名「フジバルーン H−40」の中空ガラスバルーンの代わりに、商品名「セルスターZ−27」(東海工業株式会社製)の中空ガラスバルーンを部分重合モノマーシロップ100重量部に対して9.5重量部となるような割合で添加した。その他の配合や製造方法については、実施例1と同様である。
【0099】
なお、実施例1、実施例2、比較例における各材料の配合量や添加されているガラスバルーンの物性値の詳細については表1に記載の通りである。
【0100】
[評価]
(100%モジュラスおよび引っ張り強さ)
実施例1、実施比較例2、比較例において作成された感圧接着剤層を用いて、JIS K 6251に基づいた評価を行った。具体的には、感圧接着剤層のフィルムをダンベル状試験片3号の形状に打ち抜き、評価サンプルとした。万能引張試験機(ミネベア(株)製、「TG−1kNB」)を用いて、原長(測定長)20mm、試料幅5mm、引張速度500mm/分で引張試験を行い、引っ張り強さ[N/cm]、伸び率[%]を測定した。
【0101】
なお、試験回数は各試料につき3回ずつ行い、各測定値はその平均値とした。また、応力−ひずみ曲線より100%モジュラスを読み取った。実施例および比較例の測定値の結果は表1に記載の通りである。
【0102】
【表1】

【0103】
実施例1、実施例2の感圧接着剤層で作成したサンプルは、表1に示すように、100%モジュラスが14.5N/cmである。これにより、打ち抜き加工や切断加工が容易となる。この場合、100%モジュラスは13N/cm以上であればよい。一方、比較例の感圧接着剤層で作成したサンプルは、表1に示すように、100%モジュラスが12.7N/cmであり、各実施例と比較して値が低い。したがって、各実施例の感圧接着剤層は、100%モジュラスが比較例より高く、自動車や建造物などの高い接着信頼性の求められる用途に好適に用いられることができる。
【0104】
次に、本発明者は、感圧接着剤層に含有された中空無機微粒子の総表面積がせん断接着力に与える影響について検討した。そのために、ここでは、粘着性組成物に添加される中空無機微粒子の種類や配合量を変化させて種々の感圧接着剤層を作製した。表1には、各実施例および比較例に添加された中空ガラスバルーンの特性(平均粒径、比重)、添加された中空ガラスバルーンの感圧接着剤層1gあたりの総表面積、等が示されている。
【0105】
(せん断接着力)
実施例1、実施例2および比較例の感圧接着剤層をそれぞれ厚みが0.8mmとなるように調整して、両面がはく離ライナーで保護された感圧性接着部材とした。そして、各感圧性接着部材を、長さ25mm×幅25mmの試験片の形に切断してサンプルとした。その後、粒度280番の研磨紙で磨いたSUS板をトルエンにて表面をふき取り、切り取ったサンプルの片方のはく離ライナーを剥がし、その面をSUS板に重さ5kg重のローラーを片道圧着してサンプルを貼り付けた。ついでもう片方のはく離ライナーを剥がしさらにSUS板を5kg重のローラーを片道圧着してサンプルを貼り付け、試験片を得た。試験片を23℃で30分間放置後、23℃、65%R.H.の雰囲気下でせん断方向にはく離するために要する力(せん断接着力)を測定した(引張速度:50mm/min)。各実施例および比較例の測定値の結果は表1に記載の通りである。
【0106】
各実施例および比較例における感圧接着剤層1gあたりの中空無機微粒子の表面積の総和と、せん断接着力との関係を検討すると、中空無機微粒子の表面積の総和が粘着剤1gあたり3.5×10[cm/g]以上であれば、十分なせん断接着力(せん断強度)が得られていることがわかる。また、その際のせん断接着力が80N/cm以上であれば、自動車や建造物などの高い接着信頼性が求められる分野に好適に用いることができる。また、中空無機微粒子の表面積の総和が粘着剤1gあたり6.0×10[cm]以下であるとよい。これであれば、感圧接着剤層と被着体との間の接着面積が速やかに広がり、圧着直後から良好な接着力(粘着力)が得られる。
【0107】
(常温接着力)
実施例および比較例の感圧接着剤層を幅25mm、長さ100mmに切断してサンプルとした。得られたサンプルの接着面にはく離処理を施していない厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート基材を貼り合わせた。粒度280番の研磨紙で磨いたSUS板をトルエンにて表面をふき取り、そこにサンプルを重さ5kg重のローラーを片道圧着してサンプルを貼り付けた。そのサンプルを23℃で30分間放置後、23℃、65%R.H.の雰囲気下ではく離に要する力を測定した(はく離角度180°、引張速度:50mm/min)。各実施例の感圧接着剤層で作成したサンプルにおけるはく離力については、実用上問題のない所望の性能を満たすものであった。
【0108】
(高温接着力)
実施例および比較例の感圧接着剤層を幅25mm、長さ100mmに切断してサンプルとした。得られたサンプルの接着面にはく離処理を施していない厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート基材を貼り合わせた。粒度280番の研磨紙で磨いたSUS板をトルエンにて表面をふき取り、そこにサンプルを重さ5kg重のローラーを片道圧着してサンプルを貼り付けた。そのサンプルを23℃で1日放置後、80℃の高温室に30分放置し、恒温槽付き引張試験機にて80℃にて接着力を測定した(はく離角度180°、引張速度:50mm/min)。各実施例の感圧接着剤層で作成したサンプルにおけるはく離力については、実用上問題のない所望の性能を満たすものであった。
【0109】
上述の結果により、中空無機微粒子の表面積の総和が感圧接着剤層1gあたり3.5×10〜6.0×10[cm]である感圧接着剤層であれば、各実施例において所望の常温接着力、高温接着力を満たしつつ、せん断接着力が大きく向上していることがわかる。
【0110】
以上、本発明を実施の形態や実施例をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0111】
10 粘着テープ、 12 感圧接着剤層、 14 基材、 16 粘着性組成物、 18 中空無機微粒子、 20 気泡。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空無機微粒子および気泡を含有する感圧接着剤層を有する粘着テープであって、
100%モジュラスが13.0N/cm以上であり、
せん断接着力が80N/cm以上であることを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
前記中空無機微粒子は、中空ガラスバルーンであることを特徴とする請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記中空無機微粒子は、前記感圧接着剤層1gあたりの総表面積が3.5×10〜6.0×10[cm]であることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記中空無機微粒子は、その平均粒径が20〜80μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記感圧接着剤層は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とするアクリル系ポリマーを含有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記アクリル系ポリマーは、活性エネルギー線の作用により重合されたものであることを特徴とする請求項5に記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記気泡は、その総和が感圧接着剤層の全体積に対して5〜40体積%となるように含有されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の粘着テープ。

【図1】
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【公開番号】特開2011−111594(P2011−111594A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272068(P2009−272068)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】