説明

糸張力センサ

【課題】糸張力センサの取付けに起因する測定エラーを回避する。
【解決手段】ロッド形状の力伝達エレメント2と、該力伝達エレメントの運動を糸の走行方向に対して垂直な方向で案内するガイド手段3,4と、力伝達エレメント2の第2の端部と作用結合している測定手段9と、該測定手段を受容するための受容手段7,8と、ハウジング11が設けられ、該ハウジング内に、ロッド形状の力伝達エレメント2、ガイド手段3,4、測定手段9及び受容手段7,8が配置されている、走行する糸の糸張力を測定する糸張力センサ1において、糸張力センサ1が、ガイド手段3,4を保持するための保持手段6を有しており、該保持手段がハウジング11に固定され、受容手段7,8が、保持手段6との堅い結合部だけによって保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行する糸の糸張力を測定する糸張力センサであって、ロッド形状の力伝達エレメントが設けられていて、該力伝達エレメントの第1の端部が、走行する糸と作用結合しており、ロッド形状の力伝達エレメントの運動を該力伝達エレメントの長手方向において糸の走行方向に対して垂直な方向で案内するガイド手段が設けられており、ロッド形状の力伝達エレメントの第2の端部と作用結合している測定手段が設けられており、該測定手段を受容するための受容手段が設けられており、さらにハウジングが設けられていて、該ハウジング内に、ロッド形状の力伝達エレメント、ガイド手段、測定手段及び受容手段が配置されている形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
糸張力センサは例えば、糸を例えば紡績コップである繰出しボビンから、少なくとも1つの綾巻きパッケージである巻上げパッケージに巻き返す糸巻返し機(Spulmaschine)において使用される。巻上げパッケージの品質のためには、所定の糸張力を維持することが極めて重要である。所定の糸張力を維持するためには、糸張力を調整することが公知である。そのためには糸張力を、糸張力センサを用いて測定することが必要である。
【0003】
DE19716134C2に開示された糸張力センサでは、緊張下にある糸は変向ポイントにおいて変向され、変向ポイントにおいて糸に対して垂直方向で発生する力は、力測定装置に導入されて、そこで測定される。力測定装置はプレート形状の力センサを有しており、この力センサの中央領域はダイヤフラムとして形成されていて、ダイヤフラムの伸びに応働して圧電抵抗式に作動する測定ブリッジを有している。測定される糸の横方向力は、力センサのダイヤフラムに導入される。変向ポイントと力測定装置との間には、変向ポイントと力測定装置とを断熱するために、ロッド形状の力伝達エレメントが設けられている。この力伝達エレメントは、ダイヤフラム形の複数のガイドエレメントにおいて案内される。これらのガイドエレメントは縁部側において、ハウジング壁における相応な溝に押し込まれて支承されている。プレート形状の力センサもまた同様に、ハウジング壁における相応な溝に位置している。
【0004】
糸張力センサのハウジングが糸巻返し機の作業部か又は他の繊維機械に、走行する糸と共に取り付けられると、ハウジングには応力の発生することがある。この応力は力センサに伝わる。そしてこの応力によって直に測定ブリッジの測定値に影響が与えられ、ひいては測定エラーを生ぜしめることがある。同様に、このような応力によって、力伝達エレメントと力センサもしくは該力センサにおける測定ブリッジとの間における接触ポイントが僅かにずれてしまうことがある。このようなことによっても測定エラーの発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】DE19716134C2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ゆえに本発明の課題は、糸張力センサの取付けに起因する測定エラーを回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は請求項1の特徴部記載の構成によって解決される。本発明の別の有利な態様は、従属請求項に記載されている。
【0008】
前記課題を解決するために本発明の構成では、冒頭に述べた形式の糸張力センサにおいて、糸張力センサが、ガイド手段を保持するための保持手段を有しており、該保持手段がハウジングに固定されており、受容手段が、保持手段との堅い結合部だけによって保持されているようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明による解決策によって、測定手段を受容する受容手段を、もはやハウジングに固定とする必要がなくなる。それというのは、受容手段は、力伝達エレメントのガイド手段を保持する保持手段との結合部によって保持されるからである。つまり受容手段はもはやハウジングと直に結合されるのではなく、間接的に結合される。これによって測定手段を備えた受容手段は、ハウジングから遮断されることになる。そしてハウジングの応力が受容手段に伝達されることは、十分に回避することができる。測定手段はハウジングを介してではなく、受容手段、保持手段及びガイド手段を介して、ロッド形状の力伝達エレメントに結合されているので、力伝達エレメントと測定手段との間における接触ポイントが移動することはもはやあり得ない。本発明による解決策によって、取付けに起因するハウジングの応力によって生じる測定エラーは、回避することができる。
【0010】
ハウジングにおける保持手段の固定部が遊びを有していると、特に有利である。保持手段はハウジング内におけるその取付け後にも、なおある程度の運動空間を有している。これによってハウジングの応力が保持手段に伝達されることは阻止され、ひいては、間接的に受容手段に伝達されることも阻止される。
【0011】
本発明の別の態様では、保持手段は、円筒形のスリーブとして形成されている。この場合ガイド手段は、ロッド形状の力伝達エレメントの長手方向軸線が円筒形のスリーブの周面に対して平行に配置されているように、形成されていてよい。有利にはハウジングは、円筒形のスリーブを受容するために該スリーブに相応する円筒形の切欠きを有している。
【0012】
円筒形のスリーブはこの場合、前記切欠き内に滑動しながら軸方向に挿入可能であり、かつロッド形状の力伝達エレメントの長手方向軸線の方向において固定することができる。
【0013】
ロッド形状の力伝達エレメントの長手方向軸線に対して垂直な方向において、移動を防止すべくスリーブを付加的に固定することは不要である。ハウジングの切欠き内におけるスリーブの配置及び長手方向における固定によって、スリーブは十分に保持される。この配置形式には、力伝達エレメントの長手方向軸線に対して垂直な方向において力が吸収されるという利点があり、そしてこれによりこのような力が、従来技術のように測定を劣化させることはなくなる。このような力は、例えば走行する糸によって加えられることがある。スリーブとして形成された保持手段をこのように固定することによって、横方向力は、測定に対する不都合な影響なしに受け止められることができる。それというのは、測定手段は本発明による連結装置によって、スリーブの僅かな位置変化しか生ぜしめないからである。
【0014】
本発明の別の有利な態様では、測定手段は、ロッド形状の力伝達エレメントとの相互作用によって変形可能である変形エレメントを有している。
【0015】
変形エレメントは例えば撓みバーとして形成されている。
【0016】
本発明の別の態様では、測定手段は、変形時に固有抵抗が変化する測定エレメントを有しており、測定エレメントは変形エレメントに組み込まれている。測定エレメントは、圧電抵抗式の半導体を有していてもよい。測定エレメントはまた、ストレインゲージとして形成されていてもよい。
【0017】
測定エレメントの抵抗変化、ひいては変形エレメントの変形を検出するために、本発明の別の態様では、測定手段は、測定エレメントの抵抗を測定するためのホイートストンブリッジを有している。変形エレメントの変形から糸張力を導き出すことができる。
【0018】
本発明の択一的な態様では、測定手段は、ロッド形状の力伝達エレメントの位置を検出するポジションセンサを有している。力伝達エレメントのポジションは、糸張力に関する情報を与える。ポジションセンサは、例えばホールセンサとして形成されていてよい。
【0019】
本発明の別の有利な態様では、ガイド手段は少なくとも1つのダイヤフラムを有している。
【0020】
別の有利な態様では、少なくとも1つのダイヤフラムは、ロッド形状の力伝達エレメントが糸との非接触時に規定された位置において保持されるように、形成されている。
【0021】
少なくとも1つのダイヤフラムは、有利にはポリカーボネートから製造されている。ダイヤフラムはこの場合、該ダイヤフラムが大きな戻し力を加えることができるように製造することができる。これによってロッド形状の力伝達エレメントは、糸が力伝達エレメントに対して力を加えなくなるやいなや、規定された位置に移動させられ、そこで保持される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による糸張力センサを示す側面図である。
【図2】図1に示した糸張力センサを分解して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
図1及び図2には、糸巻返し機の作業部において使用される本発明による糸張力センサ1が示されている。この糸張力センサ1はハウジングカバー12を備えたハウジング11を有している。このハウジングカバー12はハウジング11とリベット19を用いて堅く結合することができる。ハウジング11は孔17を有している。この孔17及び相応なねじを用いて、糸張力センサ1のハウジング11は、糸巻返し機の作業部のフレームに固定することができる。ハウジング11はさらに、電気的な接続体を通すための開口21を有している。以下においてさらに詳しく述べる本発明にとって重要な構成部材の他に、ハウジング11には、評価電子装置10が配置されている。
【0025】
糸張力センサ1は、ロッド形状の力伝達エレメント2を有している。両方のダイヤフラム3,4は、力伝達エレメント2のためのガイド手段として機能する。ダイヤフラム3,4はスリーブ6によって保持され、このスリーブ6と堅く結合されている。ダイヤフラム4の領域にスリーブ6はさらに、真ん中に孔22を備えたスポーク状の装置27を有している。この孔22によって力伝達エレメント2は付加的に案内される。
【0026】
ダイヤフラム3,4はポリカーボネートから製造されているので、糸が力伝達エレメント2に対して力を加えない場合に、ダイヤフラム3,4は力伝達エレメント2を規定されたポジションに移動させることできる。
【0027】
図示の糸張力センサ1は、圧電抵抗式のホイートストンブリッジを組み込まれた撓みバー9を有している。この撓みバー9は測定手段として働く。力伝達エレメント2に対する接触点としては測定球24が働く。糸張力センサ1の運転時に測定球24は、力伝達エレメント2からの力がさらに導かれるようにダイヤフラム4に装着された装着体25と接触している。撓みバー9は、一端でガラスプレート8に接着されている。このガラスプレート8自体は湾曲部材7と堅く結合されている。そしてガラスプレート8と湾曲部材7とは、撓みバー9のための受容手段を形成している。スリーブ6は、ねじ山付孔26を備えた平坦部23を有しており、この平坦部23には湾曲部材7がねじ18を用いて固定することができる。
【0028】
ハウジング11は切欠き20を有しており、この切欠き20は、該切欠き20がスリーブ6の形状に相応しかつ該スリーブ6を受容できるように、成形されている。これによってスリーブ6は切欠き20内に押し込むこともしくは挿入することができる。力伝達エレメント2の糸側の端部には、測定アイ13が配置され、この測定アイ13には、糸張力センサ1の運転時に糸が接触しながら走行する。さらに保護ダイヤフラム5が設けられていて、この保護ダイヤフラム5はガイドダイヤフラム3を覆っていて、糸張力センサ1の内部を塵埃や繊維フライに対して保護する。保護ダイヤフラム5の上にはさらに保持リング14が配置されている。この保持リング14はピン15を用いて回動不能に固定されており、このピン15はハウジング11のガイドアイ16を通して押し嵌められる。保持リング14の固定によってスリーブ6は、軸方向において、つまり糸走行方向に対して垂直な方向において固定されている。
【符号の説明】
【0029】
1 糸張力センサ、 2 力伝達エレメント、 3,4 ダイヤフラム、 5 保護ダイヤフラム、 6 スリーブ、 7 湾曲部材、 8 ガラスプレート、 9 撓みバー、 10 評価電子装置、 11 ハウジング、 12 ハウジングカバー、 13 測定アイ、 14 保持リング、 15 ピン、 16 ガイドアイ、 17 孔、 18 ねじ、 19 リベット、 20 切欠き、 21 開口、 22 孔、 23 平坦部、 24 測定球、 25 装着体、 26 ねじ山付孔、 27 スポーク状の装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する糸の糸張力を測定する糸張力センサ(1)であって、
ロッド形状の力伝達エレメント(2)が設けられていて、該力伝達エレメント(2)の第1の端部が、走行する糸と作用結合しており、
ロッド形状の力伝達エレメント(2)の運動を該力伝達エレメント(2)の長手方向において糸の走行方向に対して垂直な方向で案内するガイド手段(3,4)が設けられており、
ロッド形状の力伝達エレメント(2)の第2の端部と作用結合している測定手段(9)が設けられており、
該測定手段(9)を受容するための受容手段(7,8)が設けられており、
さらにハウジング(11)が設けられていて、該ハウジング(11)内に、ロッド形状の力伝達エレメント(2)、ガイド手段(3,4)、測定手段(9)及び受容手段(7,8)が配置されている形式のものにおいて、
糸張力センサ(1)が、ガイド手段(3,4)を保持するための保持手段(6)を有しており、
該保持手段(6)がハウジング(11)に固定されており、
受容手段(7,8)が、保持手段(6)との堅い結合部だけによって保持されている
ことを特徴とする糸張力センサ(1)。
【請求項2】
ハウジング(11)における保持手段(6)の固定部が遊びを有している、請求項1記載の糸張力センサ(1)。
【請求項3】
保持手段は、円筒形のスリーブ(6)として形成されている、請求項1又は2記載の糸張力センサ(1)。
【請求項4】
ガイド手段(3,4)は、ロッド形状の力伝達エレメント(2)の長手方向軸線が円筒形のスリーブ(6)の周面に対して平行に配置されているように、形成されている、請求項3記載の糸張力センサ(1)。
【請求項5】
ハウジング(11)は、円筒形のスリーブ(6)を受容するために該スリーブ(6)に相応する円筒形の切欠き(20)を有している、請求項4記載の糸張力センサ(1)。
【請求項6】
円筒形のスリーブ(6)は、ロッド形状の力伝達エレメント(2)の長手方向軸線の方向において固定されている、請求項5記載の糸張力センサ(1)。
【請求項7】
測定手段は、ロッド形状の力伝達エレメント(2)との相互作用によって変形可能である変形エレメント(9)を有している、請求項1から6までのいずれか1項記載の糸張力センサ(1)。
【請求項8】
変形エレメントは撓みバー(9)として形成されている、請求項7記載の糸張力センサ(1)。
【請求項9】
測定手段は、変形時に固有抵抗が変化する測定エレメントを有しており、測定エレメントは変形エレメント(9)に組み込まれている、請求項7又は8記載の糸張力センサ(1)。
【請求項10】
測定エレメントは、圧電抵抗式の半導体を有している、請求項9記載の糸張力センサ(1)。
【請求項11】
測定エレメントは、ストレインゲージとして形成されている、請求項9記載の糸張力センサ(1)。
【請求項12】
測定手段は、測定エレメントの抵抗を測定するためのホイートストンブリッジを有している、請求項9から11までのいずれか1項記載の糸張力センサ(1)。
【請求項13】
測定手段は、ロッド形状の力伝達エレメント(2)の位置を検出するポジションセンサを有している、請求項1から6までのいずれか1項記載の糸張力センサ(1)。
【請求項14】
ポジションセンサは、ホールセンサとして形成されている、請求項13記載の糸張力センサ(1)。
【請求項15】
ガイド手段は少なくとも1つのダイヤフラムを有している、請求項1から14までのいずれか1項記載の糸張力センサ(1)。
【請求項16】
少なくとも1つのダイヤフラムは、ロッド形状の力伝達エレメントが糸との非接触時に規定された位置において保持されるように、形成されている、請求項15記載の糸張力センサ(1)。
【請求項17】
少なくとも1つのダイヤフラムは、ポリカーボネートから製造されている、請求項15又は16記載の糸張力センサ(1)。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−50450(P2013−50450A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−189951(P2012−189951)
【出願日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【出願人】(307031976)エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (105)
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D−42897 Remscheid, Germany
【Fターム(参考)】