説明

系統連系インバータ

【課題】 制御プログラムが盗まれる事態を未然に防止することができる系統連系インバータを提供する。
【解決手段】 系統連系インバータの起動ごとに、リモコン50内の制御プログラムが本体側のRAM44にダウンロードされて記憶される。系統連系インバータの停止時は、RAM44内の制御プログラムが消滅する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽電池等の発電出力を交流に変換して商用電源系統に連系出力する系統連系インバータに関する。
【背景技術】
【0002】
直流電圧を交流に変換して負荷に供給する電源装置として、太陽電池の出力を交流に変換し、それを商用電源系統に連系出力する系統連系インバータがある(例えば、特許文献1,2,3)。この系統連系インバータには制御部が搭載されており、その制御部のメモリに系統連系制御を実行する制御プログラムが格納されている。
【特許文献1】特開2005−94253号公報
【特許文献2】特開平6−165392号公報
【特許文献3】特開2004−350429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
系統連系インバータは発電機器例えば太陽電池とともに屋外に設置されることが多い。屋外に設置されていると、防犯が不十分となり、装置そのものが盗難にあうおそれがある。また、制御プログラムが第三者により不正に読取られて盗まれる可能性がある。系統連系制御のための制御プログラムは、電力会社への売電などを行う場合に必要不可欠である。
【0004】
この発明は、上記事情を考慮したもので、系統連系インバータやその制御プログラムが盗まれる事態を未然に防ぐことができる系統連系インバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明の系統連系インバータは、太陽電池の出力を交流に変換して商用電源系統に連系出力するものであって、屋外に設置され、当該系統連系インバータを収容する筐体と、この筐体に収容された揮発性の記憶手段と、上記筐体に収容され、上記記憶手段に記憶された制御プログラムに基づき当該系統連系インバータを制御する制御部と、上記筐体内の制御部と接続され、屋内に設置されて当該系統連系インバータの運転・停止を指示するとともに、上記制御部の制御に必要な制御プログラムを記憶したリモートコントロール式の操作器と、当該系統連系インバータの起動ごとに、上記操作器内の制御プログラムを前記記憶手段にダウンロードして記憶する制御手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0006】
この発明の系統連系インバータによれば、制御プログラムが屋内のリモートコントロール式の操作器に記憶されているので、このような系統連系インバータを盗んだとしても使用できないため、盗むメリットがなくなり、盗難を防止できる。また、制御プログラムそのものが盗まれる(コピーされる)事態も未然に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[1]以下、この発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。
当該系統連系インバータが収容される筐体を図1および図2に示している。図1は前方から見た図、図2は上方から見た図である。この筐体は家屋の外壁面等に取り付け固定される。
【0008】
箱状の筐体1の前面は開口され、その前部開口に蓋体2が開閉自在に設けられている。通常、蓋体2は、閉じられた状態で、ボルトにより筐体1に固定されている。蓋体2の前面に、操作表示部3およびキー入力パッド4が設けられている。操作表示部3は、運転切替スイッチおよび表示器を有している。キー入力パッド4は、蓋体2の内側にあるロック機構(電子錠ともいう)5の開閉に必要な暗証データ(パスワード、ID番号など)を入力するためのもので、テンキーのほかに、チェックボタン、クリアボタン、ログインボタン、モデファイボタンを有している。テンキーで暗証データが入力されて、チェックボタンがオンされると、入力された暗証データが予め登録されている暗証データ(後述のEEPROM42に記憶されている)と一致するかどうかチェックされ、一致した場合、ロック機構5のロックが解除される。テンキーで暗証データが入力されて、ログインボタンがオンされると、入力された暗証データが予め登録されている暗証データと一致するかどうかチェックされ、一致の場合に暗証データの更新の受け入れが許容される。この状態でテンキーから新たな暗証データが入力され、続いてモデファイボタンがオンされることにより、予め登録されている暗証データが上記新たな暗証データに更新される。
【0009】
一方、筐体1に収容される系統連系インバータの要部およびその周辺部を図2に示している。
【0010】
10は太陽電池(PV)で、家屋の屋根等に設置されており、光を受けることにより、直流電圧を出力する。この出力がコンデンサ11に印加され、そのコンデンサ11の電圧が昇圧チョッパー13に供給される。昇圧チョッパー13は、直流リアクトル14、トランジスタたとえばIGBT15、逆流防止用ダイオード16、およびコンデンサ17を有するいわゆるDC−DCコンバータであり、制御部であるMCU40から供給される所定周期のPWM信号に応じてIGBT15がオン,オフすることにより、入力電圧(直流電圧)を所定レベルの直流電圧に昇圧する。この出力がインバータ20に供給される。インバータ20は、4つのトランジスタたとえばIGBT21,22,23,24からなるフルブリッジ回路、およびIGBT21,22,23,24にそれぞれ逆並列接続された還流ダイオードDを有し、制御部であるMCU40から供給されるPWM信号に応じたIGBT21,22,23,24のオン,オフにより、入力電圧(直流電圧)を系統電源電圧、周波数に合わせた交流電圧に変換する。
【0011】
このインバータ20の出力端にノイズフィルタとなる交流リアクトル25とコンデンサ26が接続され、そのコンデンサ26に第1スイッチ手段たとえばリレー接点27,28および出力用コンデンサ29,30を介して系統出力端子(100V/200V)31が接続されている。そして、系統出力端子31に商用電源系統(単相三線式交流200V)が接続される。なお、商用電源系統には、各種電気機器が接続される。また、上記コンデンサ26に、第2スイッチ手段たとえばリレー接点32および出力用コンデンサ33を介して自立運転出力端子(100V)34が設けられている。この自立運転出力端子34は、災害、停電などで商用電源が遮断された場合に各種電気機器を運転可能とするためのものである。なお、自立運転時にはリレー接点27が開となり、リレー接点32が閉となる。
【0012】
上記リレー接点27,28,32は、MCU40により制御される。そして、リレー接点27とリレー接点28との間の通電路における系統電圧(および周波数)、太陽電池10の出力電圧・電流、および昇圧チョッパー13の昇圧電圧が、それぞれMCU40により制御、監視される。
【0013】
MCU40には、さらに、上記操作表示部3、キー入力パッド4、ドライバ41、EEPROM42、リモートコントロール式の操作器(以下、リモコンという)50、および検出器60が接続されている。ドライバ41は、上記蓋体2のロック機構5を開閉駆動するモータ等である。EEPROM42は、ロック機構5の開閉に必要な暗証データを記憶している。リモコン50は、屋内に設置されるもので、図4に示すように、液晶表示部51および操作部52を有し、当該系統連系インバータとは信号線で接続され、その運転・停止を指示するとともに、MCU40の制御に必要な制御プログラムを記憶している。操作部52の運転切替ボタンをオンするごとに運転モードが切り替わるようになっており、例えば連系運転が設定された場合は液晶表示部51の“連系運転”の文字が点灯する。この点灯状態を図示点々で示している。なお、検出器60は、蓋体2の内側の仕切板2aの侵入・離脱を光学的に検出するフォトカプラである。
【0014】
MCU40およびリモコン50の要部の構成を図5に示している。
まず、MCU40は、ROM43、揮発性メモリたとえばRAM44、および通信制御部45を有している。ROM43には、当該系統連系インバータの起動に必要なブートプログラムが記憶されている。RAM44は、当該系統連系インバータの制御に必要な制御プログラムの記憶用である。
【0015】
リモコン50は、上記液晶表示部51および操作部52のほかに、CPU53、ROM54、および通信制御部55を有している。ROM54には、当該リモコン50の動作に必要なリモコン制御プログラム、およびMCU40の制御に必要な制御プログラムが記憶されている。
【0016】
つぎに、上記の構成の作用を図6のフローチャートを参照しながら説明する。
リモコン50の操作によって系統連系インバータが起動すると(ステップ101のYES)、リモコン50のROM54に記憶されている制御プログラムが通信制御部55,45を介して破線で示すようにMCU40のRAM44に高速でダウンロードされて記憶される(ステップ102)。このダウンロードが完了すると(ステップ103のYES)、ダウンロードされた制御プログラムに誤りがないかどうかを検査するベリファイ処理が実行される(ステップ104)。このベリファイ処理において、誤りがなければ(ステップ105のYES)、MCU40の制御による系統連系インバータの運転が許可される(ステップ106)。ベリファイ処理において誤りがあれば(ステップ105のNO)、運転が禁止される(ステップ107)。
【0017】
こうして、系統連系インバータの起動ごとに、リモコン50内の制御プログラムが本体側のRAM44にダウンロードされて記憶される。系統連系インバータの停止時は、RAM44への電力供給が絶たれ、RAM44内の制御プログラムは消滅する。
【0018】
したがって、系統連系インバータの停止時には、第三者がRAM44から制御プログラムを不正に読取ろうとしても、RAM44には制御プログラムが無いので、制御プログラムが盗まれることがない。なお、リモコン50からダウンロードされる制御プログラムは、系統連系インバータの動作を制御するすべてのプログラムであってもよいし、重要な部分的プログラムであってもよい。
【0019】
[2]第2実施形態について説明する。
図7に示すように、リモコン50のROM54に、当該リモコン50の動作に必要なリモコン制御プログラム、MCU40の制御に必要な制御プログラム、およびMCU40の制御に必要な制御用データ(各種パラメータ等)が記憶されている。
【0020】
この場合、系統連系インバータの起動ごとに、リモコン50内の制御プログラムおよび制御用データが破線で示すように本体側のRAM44にダウンロードされて記憶される。系統連系インバータの停止時は、RAM44内の制御プログラムおよび制御用データが消滅する。
【0021】
したがって、系統連系インバータの停止時に、第三者がRAM44から制御プログラムおよび制御用データを不正に読取ろうとしても、RAM44には制御プログラムおよび制御用データが無いので、制御プログラムおよび制御用データが盗まれることがない。
【0022】
他の構成、作用、効果は、第1実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
【0023】
[3]第3実施形態について説明する。
図8に示すように、MCU40のROMに、系統連系インバータの認証データ(製造番号、機種番号など)が記憶されている。同じ認証データが、リモコン50のROM54にも記憶されている。
【0024】
この場合、図9のフローチャートに示すように、系統連系インバータが起動すると(ステップ101のYES)、MCU40のROM43から認証データが読出されるとともに、通信制御部45、通信制御部55を介してリモコン50に送信される。リモコン50のCPU53は、自分のROM54からも認証データを読出してそれを解読処理部56で解読し、解読した認証データと送られてきた認証データとを比較する(ステップ111)。この比較結果が一致した場合に(ステップ112のYES)、リモコン50のCPU53は、ROM54から制御プログラムおよび制御用データを読出し且つ解読処理部56で解読し、MCU40に高速で送信される。こうして、制御プログラムおよび制御用データは、破線で示すように、ダウンロードされてRAM44に記憶される(ステップ102)。比較結果が不一致の場合は(ステップ112のNO)、リモコン50のCPU53は、ROM54から制御プログラムおよび制御用データを送信せず、運転が行われない(禁止される)(ステップ107)。
【0025】
認証データの一致をダウンロードの条件とすることにより、リモコン50内の制御プログラムおよび制御用データが系統連系インバータ以外の外部機器たとえばパーソナルコンピュータなどに不正に取込まれてしまう事態を回避することができる。
【0026】
他の構成、作用、効果は、第1および第2実施形態と同じである。よって、その詳細な説明は省略する。
【0027】
[4]第4実施形態について説明する。
図10のフローチャートに示すように、系統連系インバータが起動すると(ステップ101のYES)、MCU40のROMから認証データが読出されるとともに、リモコン50のROM54からも認証データが読出され、両認証データが互いに比較される(ステップ111)。比較結果が一致の場合(ステップ112のYES)、筐体1の蓋体2が閉じているか否かが検出器60によって検出される(ステップ113)。蓋体2が閉じていれば(ステップ113のYES)、リモコン50のROM54から制御プログラムおよび制御用データがMCU40のRAM44にダウンロードされて記憶される(ステップ102)。比較結果が不一致の場合(ステップ112のNO)、あるいは蓋体2が開いている場合(ステップ113のNO)、ダウンロードが実行されず、運転が禁止される(ステップ107)。
【0028】
認証データの一致、および蓋体2が閉じていることをダウンロードの条件としていることにより、リモコン50内の制御プログラムおよび制御用データが外部機器に不正に読取られる不具合を高い安全性をもって防ぐことができる。
【0029】
他の構成、作用、効果は、第1、第2、および第3実施形態と同じである。よって、その詳細な説明は省略する。
【0030】
なお、この発明は、上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】各実施形態の蓋体を前方から見た図。
【図2】各実施形態の筐体を上方から見た図。
【図3】各実施形態における系統連系インバータの制御回路およびその周辺部のブロック図。
【図4】各実施形態のリモコンの構成を示す図。
【図5】第1実施形態のMCUおよびリモコンの要部の構成を示すブロック図。
【図6】第1実施形態の作用を説明するためのフローチャート。
【図7】第2実施形態のMCUおよびリモコンの要部の構成を示すブロック図。
【図8】第3実施形態のMCUおよびリモコンの要部の構成を示すブロック図。
【図9】第3実施形態の作用を説明するためのフローチャート。
【図10】第4実施形態の作用を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0032】
1…筐体、2…蓋体、3…操作表示部、4…キー入力パッド、5…ロック機構、10…太陽電池、13…昇圧チョッパー、20…インバータ、27,28,32…リレー接点、31…系統出力端子、34…自立運転出力端子、40…MCU、50…リモコン、60…検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池の出力を交流に変換して商用電源系統に連系出力する系統連系インバータにおいて、
屋外に設置され、当該系統連系インバータを収容する筐体と、
前記筐体に収容された揮発性の記憶手段と、
前記筐体に収容され、前記記憶手段に記憶された制御プログラムに基づき当該系統連系インバータを制御する制御部と、
前記筐体内の制御部と接続され、屋内に設置されて当該系統連系インバータの運転・停止を指示するとともに、前記制御部の制御に必要な制御プログラムを記憶したリモートコントロール式の操作器と、
当該系統連系インバータの起動ごとに、前記操作器内の制御プログラムを前記記憶手段にダウンロードして記憶する制御手段と、
を備えていることを特徴とする系統連系インバータ。
【請求項2】
前記筐体は、開閉自在な蓋体およびその蓋体のロック機構を有していることを特徴とする請求項1に記載の系統連系インバータ。
【請求項3】
前記蓋体の開閉を検出する検出器と、
前記検出器で閉状態が検出されている場合に前記ダウンロードを許容し、前記検出器で開状態が検出されている場合に前記ダウンロードを禁止する制御手段と、
をさらに備えていることを特徴とする請求項2に記載の系統連系インバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−59084(P2008−59084A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232620(P2006−232620)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(399023877)東芝キヤリア株式会社 (320)
【Fターム(参考)】