説明

系統連系保護システム、系統連系保護装置、及び、パワーコンディショナ

【課題】分散型電源システムが設置された複数戸が入居するマンションといった所定エリア内において、商用電力系統が停電となった場合に、系統連系保護を実行しつつも、電源システムによる電力を有効に活用することができる系統連系保護システムを提供する。
【解決手段】本発明の系統連携保護システム1は、マンション内の複数の電力負荷及び複数の電源を、商用電力系統に対して並列に接続する配電路5と、配電路5と、前記複数の電源との間に設けられ、前記複数の電源が出力する電力を配電路5を流れる電力の位相に同期した交流電力に変換して配電路5側に給電する複数のPCS4と、配電路5において、マンション内の前記複数の電力負荷、及び前記複数の電源に対する主幹の電路に設けられ、マンション内の各電源と商用電力系統との間を開閉する開閉器10と、商用電力系統の異常を検出し、その検出結果に応じて、開閉器10を開閉する制御装置12とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネル等を用いた分散型電源システムにおいて用いられる系統連系保護システム、系統連系保護装置、及び、パワーコンディショナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅に太陽電池パネルを設置し、この太陽電池パネルが出力する直流電力を交流電力に変換して電気事業者による商用電力系統(交流電力系統)と系統連系運転を行う分散型電源システムが普及しつつある。
上記のような家庭用の分散型電源システムにおいて、商用電力系統に停電が発生した場合、安全性の観点から、太陽電池パネルによる発電電力が停電状態の交流電力系統に逆潮流するのを防止する必要がある。このため従来から、商用電力系統側の停電を検知すると、電源システムによる給電を停止して、商用電力系統から解列する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一般に、一戸建ての住宅に設置される分散型電源システムでは、太陽電池パネルは、太陽電池パネルの直流出力を交流電力に変換して交流電力系統との間で系統連系しつつ給電する機能を有しているパワーコンディショナを介して、商用電力系統に接続される。上述の商用電力系統の停電を検知する機能、及びその検知結果に応じて解列する機能は、パワーコンディショナが備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−95933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記家庭用の分散型電源システムは、複数戸が入居するマンション等に対しても設置される場合がある。図7は、複数戸が入居するマンションに分散型電源システムを適用した一例を示す図である。
図7に示すように、複数戸が入居するマンションにおいても、一戸建て住居の場合と同様に、各戸ごとの専用負荷100に対して、太陽電池パネル101と、パワーコンディショナ102とが一組ずつ設置される。
【0006】
各戸それぞれの専用負荷100、及び、太陽電池パネル101が接続されたパワーコンディショナ102は、商用電力系統に接続された配電路103に接続されている。
配電路103には、商用電力系統からの電力を変圧するための変圧器104が設置されている。配電路103は、変圧後の商用電力系統からの電力を各戸それぞれに配電する。また、エレベータや、給排水ポンプ、共用部分の電灯等といった共用負荷105は、配電路103に直接接続されている。
【0007】
上記各戸に設置されているパワーコンディショナ102は、通常、一戸建ての住宅に設置されるものと同様のものが用いられており、商用電力系統の停電の有無を検知し、停電を検知すると、スイッチ102aを開放することで、商用電力系統から太陽電池パネル101といった発電用電源を解列するように構成されている。
このため、仮に、商用電力系統に停電が発生した場合、図7に記載の構成では、各戸ごとのパワーコンディショナ102によって、発電用電源が解列される。
従って、太陽電池パネル101による発電電力は、当然、各戸ごとの専用負荷100に対しては用いることはできず、この発電電力を使用するためには、パワーコンディショナ102においてスイッチ102aよりも太陽電池パネル101側に設けられた外部出力部102bに、電力を要する機器を直接接続する必要があり煩雑である。
【0008】
また、上記のように各戸ごとのパワーコンディショナ102によって、発電用電源を解列する構成では、共用負荷に対しても太陽電池パネル101の発電電力を供給することはできない。さらに、太陽電池パネル101による発電を補助するための発電機106や、余剰電力を蓄電するための蓄電池107等も、配電路103に直接接続したとすると、商用電力系統の停電に応じて解列しなければならないので、これらを商用電力系統の停電時に利用するには、各戸ごとのパワーコンディショナ102よりも太陽電池パネル101側に接続する必要があり、戸別に用意しなければならない。
このように、上記従来のシステムでは、配電路103に直接接続される電源等は、商用電力系統の停電に応じて解列しなければならず、例えば、これら電源による電力を、マンション内の共用設備等に給電することができず、各戸ごと多数の電源が設置されているにも関わらず、その発電電力を有効に活用することができなかった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、太陽電池パネル等による分散型電源システムが設置された複数戸が入居するマンションといった所定エリア内において、商用電力系統が停電となった場合に、系統連系保護を実行しつつも、電源システムによる電力を有効に活用することができる系統連系保護システム、系統連系保護装置、及び、パワーコンディショナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、複数の電力負荷、及び複数の電源を含む所定エリアにおける外部交流電力系統に対する系統連系保護を行う系統連系保護システムであって、前記所定エリア内の複数の電力負荷及び複数の電源を、外部交流電力系統に対して並列に接続する配電路と、前記配電路と、前記複数の電源との間に設けられ、前記複数の電源が出力する電力を前記配電路を流れる電力の位相に同期した交流電力に変換して前記配電路側に給電する複数のパワーコンディショナと、前記配電路において、前記所定エリアに含まれる、前記複数の電力負荷、及び前記複数の電源に対する主幹の電路に設けられ、前記所定エリアと前記外部交流電力系統との間を開閉する開閉器と、前記外部交流電力系統の異常を検出し、その検出結果に応じて、前記開閉器を開閉する制御部と、を備えていることを特徴としている。
【0011】
上記のように構成された系統連系保護システムによれば、制御部が、外部交流電力系統の異常に関する検出結果に応じて、複数の電力負荷、及び複数の電源に対する主幹の電路に設けられた開閉器を開閉することで、所定エリアを外部交流電力系統に対して一括して解列又は連結することができ、系統連系保護を行うことができる。
またこのとき、上記従来例のように、複数の電源を個別に解列する必要がないので、これら複数の電源を配電路に接続した状態を維持することができる。よって、複数の電源は、開閉器より下位において配電路に接続された複数の電力負荷に対し、配電路を介して電力を供給することができる。
以上のように、本発明の系統連系保護システムによれば、所定エリア内において、外部交流電力系統に停電等の異常が生じた場合に、系統連系保護を実行しつつも、複数の電源による電力を有効に活用することができる。
【0012】
(2)前記開閉器は、前記主幹の電路に設けられた変圧器の1次側に設けられていることが好ましく、例えば、変圧器が高圧から単相3線式200V/100Vに変圧するものである場合、各電源は2線200Vを供給するように接続されるので、開閉器が開放された状態では、2次側コイルには各電源からの200Vの電力が供給される。これにより、変圧器の2次側コイルを単巻変圧器として使用することにより、電圧線と中性線との間で100Vを得ることができ、特に新たなデバイス等を設けなくても、各戸の専用負荷や、共用負荷に含まれる100Vの家電製品等に電力を供給することができる。
【0013】
(3)また、前記開閉器は、前記主幹の電路に設けられた変圧器の2次側に設けられていてもよく、この場合、各電源の電力が変圧器に流れることはないので、変圧器による電力ロスを無くすことができ、エネルギ効率を高めることができる。変圧器の2次側の配電路が2線式のときは、この方法が好ましい。
【0014】
(4)上記系統連系保護システムにおいて、制御部が複数の電源を一括して解列した後、外部交流電力系統の復帰に伴って、複数の電源を再接続する際には、外部交流電力系統の電力の位相と、複数の電源による電力の位相とを同期させる必要がある。
このため、前記制御部は、前記複数のパワーコンディショナとの間で通信を行うための通信部と、前記通信部による通信を介して前記パワーコンディショナを制御することで、前記外部交流電力系統に対して前記所定エリアを連結する際に、当該所定エリア内の電源電力を前記外部交流電力系統に同期させる同期処理を行う同期処理部と、を備えていることが好ましい。
この場合、制御部は、通信部による通信によって、配電路側に電源の電力を給電するパワーコンディショナを制御することで、複数の電源を再接続する際に、同期処理を行い、各電源を交流電力系統に同期させることができるので、当該複数の電源を一括して再連結し外部交流電力系統に連系させることができる。
【0015】
(5)(6)前記同期処理は、前記外部交流電力系統に対して前記所定エリアを連結する前に、前記通信部を介して前記複数のパワーコンディショナの内の少なくとも一のパワーコンディショナに、当該一のパワーコンディショナの出力電圧の位相を、前記外部交流電力系統の位相に同期するように調整させることで、他のパワーコンディショナに、当該他のパワーコンディショナの出力電圧の位相を、前記外部交流電力系統の位相に同期するように調整させる処理であってもよいし、前記制御部が、前記通信部を介して、前記複数のパワーコンディショナを一次停止又は再起動させることが可能である場合には、前記同期処理は、前記外部交流電力系統に対して前記所定エリアを連結する前に、前記複数のパワーコンディショナを一次停止させ、前記所定エリアを連結した後に、前記複数のパワーコンディショナを再動作させる処理であってもよい。
【0016】
(7)また、系統連系保護システムにおいて、前記複数の電力負荷は、前記複数の電源に対応して設けられている専用負荷と、前記個別負荷以外の前記所定エリア内で共用される共用負荷とを含んでいるものであってもよい。
この場合、制御部が複数の電源を解列したときにおいて、当該複数の電源は、配電路を介して、専用負荷のみならず、共用負荷に対しても給電することができる。
【0017】
(8)上記系統連系保護システムにおいて、前記複数の電源は、前記複数の電力負荷に対応して設けられている第一の電源と、それ以外の第二の電源とを含んでおり、前記第一の電源が、太陽電池であり、前記第二の電源が、前記所定エリア内に電力を供給するための蓄電池、及び/又は前記所定エリア内に電力を供給するための発電機であってもよい。
この場合、制御部が複数の電源を解列したときにおいて、第二の電源として蓄電池が設置されている場合には、この蓄電池に余剰電力を蓄電し、所定エリア内で余剰電力を共用することができる。また、第二の電源として発電機が設置されている場合も、所定エリア内で発電した電力を共用することができる。このように、本システムでは、上記従来例のように、蓄電池や、発電機を戸別に用意する必要がなく、配電路に蓄電池や発電機を接続すれば、これらによる蓄電や発電による電力を所定エリア内で共用することができる。
【0018】
(9)また、本発明は、所定エリアにおける外部交流電力系統に対する系統連系保護を行う系統連系保護装置であって、前記所定エリアは、複数の電力負荷、及び複数の電源と、前記複数の電力負荷及び複数の電源を外部交流電力系統に対して並列に接続する配電路と、前記配電路と、前記複数の電源との間に設けられ、前記複数の電源が出力する電力を前記配電路を流れる電力の位相に同期した交流電力に変換して前記配電路側に給電する複数のパワーコンディショナと、前記配電路において、前記所定エリアに含まれる、前記複数の電力負荷、及び前記複数の電源に対する主幹の電路に設けられ、前記所定エリアと前記外部交流電力系統との間を開閉する開閉器と、を含んでおり、前記外部交流電力系統の異常を検出する検出部と、前記検出部による検出結果に応じて、前記開閉器を開閉することで、前記所定エリアを前記外部交流電力系統に対して解列又は連結する開閉制御部と、を備えていることを特徴としている。
【0019】
上記構成の系統連系保護装置によれば、上述のように、所定エリア内において、外部交流電力系統が停電となった場合に、系統連系保護を実行しつつも、複数の電源による電力を有効に活用することができる。
【0020】
(10)また、本発明は、上記(4)に記載の系統連系保護システムに用いられるパワーコンディショナであって、前記制御部が送信する、前記所定エリアの電力を前記外部交流電力系統に同期させる同期処理を行うための制御命令を受信する通信部を備え、前記通信部により受信した前記制御命令に基づいた処理を実行することで同期処理を行うことを特徴としている。
【0021】
上記構成のパワーコンディショナによれば、通信部による通信を介した制御部による制御によって、同期処理を実行することができる。この結果、所定エリア内の複数の電源を再接続する際に、外部交流電力系統と同期させることができ、当該複数の電源を一括して再連結し外部交流電力系統に連系させることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、分散型電源システムが設置された複数戸が入居するマンションといった所定エリア内において、商用電力系統が停電となった場合に、系統連系保護を実行しつつも、電源システムによる電力を有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る系統連系保護システムの一例を示すブロック図である。
【図2】図1中、変圧器及び開閉器が設けられている破線H周辺の構成をより詳細に示した図である。
【図3】変圧器を示す模式図である。
【図4】開閉器の他の設置例を示す図である。
【図5】本発明の第二の実施形態に係る系統連系保護システムを示すブロック図である。
【図6】発電機の発電電力を直接調整する場合の構成を示す図である。
【図7】従来からなされていた、複数戸が入居するマンションにおける分散型電源システムの適用例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の第一の実施形態に係る系統連系保護システムの一例を示すブロック図である。この系統連系保護システム1(以下、単にシステム1ともいう)は、複数戸が入居している所定のエリアとしてのマンションに適用されたものであり、各戸ごとの専用負荷2に対して、太陽電池パネル3と、パワーコンディショナ(Power Conditioning System、以下、PCSともいう)4とが一組ずつ設置される。
各戸それぞれの専用負荷2、及び、太陽電池パネル3が接続されたPCS4は、外部交流電力系統である商用電力系統に接続された配電路5に並列接続されている。
【0025】
PCS4は、太陽電池パネル3が出力する直流電力を交流電力に変換するためのインバータ4aを備えており、配電路5側に変換した交流電力を給電する機能を有している。また、PCS4は、配電路5を流れる電力の位相を検知し、太陽電池パネル3が出力する電力を、その検知した位相に同期した交流電力に変換する機能を有しており、配電路5を流れる電力の位相に同期した交流電力を配電路5側に給電する。
また、PCS4は、後述する制御装置12から送信される、当該PCS4に対する制御命令を受信するための通信部4bを備えている。この通信部4bは、PLC(Power Line Communication)モデムとしての機能を有しており、後述の制御装置12との間で電力線通信を行う。通信部4bは、配電路5に接続されており、制御装置12側を親機(上位側通信装置)とする子機(下位側通信装置)として電力線通信を行う。
PCS4は、制御装置12から電力線通信によって送信される制御命令に基づいて、自装置を一時停止又は再動作する機能も有している。
【0026】
配電路5には、各戸それぞれの専用負荷2やPCS4以外に、マンションに設置されたエレベータや、給排水ポンプ、共用部分の電灯等の共用負荷6が接続されている。
また、配電路5には、停電時にマンション全体に対して電力を供給するための発電機7や、各戸の太陽電池パネル3及びPCS4により給電される余剰電力を蓄電するための蓄電池8も接続されている。
発電機7は、例えば、エンジン等の内燃機関の動力による回転力によって発電するものであり、コンバータ71を介してPCS4に接続されている。
蓄電池8は、鉛蓄電池やニッケル水素電池といった二次電池であり、直流−直流変換器81を介してPCS4に接続されている。なお、この蓄電池8には、マンションに固定的に設置されている蓄電池8aと、マンションの駐車場等に設置された電気自動車用の充電設備が備えるPCS4を介して配電路5に接続される電気自動車Cの蓄電池8bとが含まれている。
【0027】
さらに、配電路5において、マンション内の各専用負荷2、共用負荷6といった電力負荷や、太陽電池パネル3、発電機7、蓄電池8といった電源類に対する主幹の電路には、変圧器9と、開閉器10とが設けられている。
【0028】
図2は、図1中、変圧器9及び開閉器10が設けられている破線H周辺の構成をより詳細に示した図である。
変圧器9は、商用電力系統からの電力を変圧するためのものであり、商用電力系統において高圧線によって送電される高電圧の電力を低電圧に変圧する。
開閉器10は、マンション内における電力負荷や電源類と、商用電力系統との間を開閉するものである。本システムでは、開閉器10は、変圧器9の上位に設けられている。
【0029】
開閉器10には、当該開閉器10の開閉制御を行う制御装置12が接続されている。
制御装置12は、CPU(Central Processing Unit)や、記憶装置等を備えたマイコン等からなり、当該制御装置12にインストールされたプログラム等により実現される機能部として、商用電力系統の異常を検出する検出部12aと、その検出結果に応じて開閉器10の開閉制御を行う開閉制御部12bと、開閉器10を閉成する際に各電源の電力を同期させる同期処理部12cと、各PCS4との間で通信を行うための通信部12dとを備えている。
【0030】
制御装置12には、商用電力系統の電流を検出する変流器13、及び商用電力系統の電圧を検出する電圧変成器14が接続されている。検出部12aは、これら変流器13、及び電圧変成器14からの出力を取得し、商用電力系統の電圧、電流、及び位相を監視することで、停電等といった商用電力系統に生じる異常の有無を検出する。
検出部12aは、商用電力系統における異常の有無を検出結果として開閉制御部12bに出力する。
【0031】
開閉制御部12bは、検出部12aから出力される検出結果に応じて、開閉器10を開閉させる。検出部12aからの検出結果が、商用電力系統に異常が無いことを継続的に示している場合、開閉制御部12bは、開閉器10を閉成状態で維持する。
一方、検出結果が、継続的に「異常無し」である状態から、「異常有り」となった場合、開閉制御部12bは、速やかに、開閉器10を開放する。
ここで、開閉器10は、マンション内の各電力負荷や、電源類の上位に設けられているので、開閉制御部12bが開閉器10を開放すると、マンション内の電源類を商用電力系統に対して一括して解列することができ、これにより、系統連系保護を行うことができる。
【0032】
またこのとき、各戸の太陽電池パネル3や、発電機7、蓄電池8等の各電源を個別に解列する必要がないので、これら複数の電源を配電路5に接続した状態を維持することができる。
つまり、開放された開閉器10の下位では、図1に示すように各電源と、各戸の専用負荷2や、共用負荷6とが、配電路5を介して接続される。よって、各電源は、開閉器10より下位において配電路5に接続された各戸の専用負荷2や共用負荷6に対し、配電路5を介して電力を供給することができる。
【0033】
さらに、本実施形態では、開閉器10が変圧器9の上位に設けられているため、200Vと100Vの双方をマンション内の各電力負荷に供給することができる。
図3は、変圧器9を示す模式図である。変圧器9の1次側コイルには、商用電力系統の高圧線が接続されている。変圧器9は、2次側コイルから延ばされた電圧線9aそれぞれが対地電圧100Vとされることで、商用電力系統の高圧電力を、単相3線式の200Vに変圧する。これにより、変圧器9は、両電圧線9a間で200Vを、電圧線9aと中性線9bとの間で100Vを、マンション内の各電力負荷に供給する。
【0034】
ここで、開閉器10が開放された状態の場合、マンション内の各電源は、上述のように、配電路5に接続された各戸の専用負荷2や共用負荷6に対し、配電路5を介して電力を供給するが、各PCS4は、通常、2線200Vで電力を給電するので、電圧線9a間に接続される。すると、変圧器9では、1次側コイルには商用電力系統からの電力供給はないが、2次側コイルには、200Vの電力が供給される。これにより、変圧器9の2次側コイルを単巻変圧器として使用でき、電圧線9aと中性線9bとの間で100Vを得ることができる。この結果、特に新たなデバイス等を設けなくても、各戸の専用負荷2や、共用負荷6に含まれる100Vの家電製品等に電力を供給することができる。
【0035】
図2に戻って、検出部12aからの検出結果が、停電等によって異常が有ることを継続的に示している場合、開閉制御部12bは、開閉器10を開放状態で維持する。
一方、検出結果が、「異常有り」の状態から、「異常無し」となった場合、開閉制御部12bは、同期処理部12cに、同期処理を実行させる。
【0036】
ここで、同期処理とは、所定エリア内であるマンション内の電源電力を商用電力系統に同期させる処理であり、通信部12dによる通信を介して各PCS4を制御することで実行される。
通信部12dは、上述したように、各PCS4それぞれが有する通信部4bに対する親機のPLCモデムとしての機能を有している。通信部12dは、各PCS4との間で、電力線通信を行い、同期処理部12cによる制御命令を送信する。
【0037】
以下、同期処理部12cによる同期処理について説明する。同期処理部12cは、開閉制御部12bからの指示に基づいて同期処理を行うことを決定すると、各PCS4に対して、運転を一次停止させるための制御命令(停止命令)を送信する。
各PCS4は、上記停止命令を受信すると、自装置の運転を停止するとともに、停止した旨を示す応答(停止応答)を制御装置12に送信する。
同期処理部12cは、各PCS4からの停止応答を受信し、全てのPCS4が運転停止したことを認識すると、その旨を開閉制御部12bに通知する。開閉制御部12bは、前記通知を受け取ると、開閉器10を閉成し、商用電力系統と、マンション内の各電源や電力負荷とを再連結する。このとき、配電路5には、商用電力系統からの交流電力が給電されるが、マンション内の各PCS4は運転を停止している。
【0038】
開閉制御部12bは、開閉器10を閉成すると、その旨を同期処理部12cに通知する。前記通知を受け取った同期処理部12cは、各PCS4に対して、再動作させるための制御命令(運転命令)を送信する。
各PCS4は、上記運転命令を受信すると、再度運転を開始する。各PCS4は、上述したように、配電路5を流れる電力の位相に同期した交流電力を配電路5側に給電する機能を有しているので、配電路5を流れる商用電力系統の交流電力に対して同期した電力を供給しつつ、商用電力系統に対して系統連系運転する。
以上のように、同期処理部12cは、通信部12dによる通信によって、各PCS4を制御することで、マンション内の各電源を再連結する際に、マンション内の電源電力を商用電力系統に同期させることができる。これにより、開閉制御部12bは、マンション内の各電源を一括して再連結し商用電力系統に連系させることができる。
【0039】
上記のように構成された本システム1によれば、制御装置12が、商用電力系統の異常に関する検出結果に応じて、マンション内の各電力負荷、及び各電源の上位に設けられた開閉器10を開閉することで、マンション内の各電源を商用電力系統に対して一括して解列又は連結することができる。よって、商用電力系統が停電になった場合、この停電を商用電力系統の異常と検出すれば、制御装置12は、開閉器10によって、マンション内の各電源を一括して解列し、系統連系保護を行うことができる。
またこのとき、上記従来例のように、各戸の太陽電池パネル3や、発電機7、蓄電池8等の各電源を個別に解列する必要がないので、これら複数の電源を配電路5に接続した状態を維持することができる。よって、各電源は、開閉器10より下位において配電路5に接続された各戸の専用負荷2や共用負荷6に対し、配電路5を介して電力を供給することができる。
以上のように、本実施形態のシステム1によれば、マンション内において、商用電力系統に停電等の異常が生じた場合に、系統連系保護を実行しつつも、各戸の太陽電池パネル3や、発電機7、蓄電池8といった各電源による電力を有効に活用することができる。
【0040】
また、本実施形態では、配電路5に接続されている電源としては、各戸ごとに対応して設置されている太陽電池パネル3(第一の電源)の他、第二の電源として、発電機7や、蓄電池8も接続されている。このため、制御装置12が開閉器10を開放して解列したときに、蓄電池8は、配電路5を介して、各戸の太陽電池パネル3及びPCS4により給電される余剰電力を蓄電することができ、さらに、マンション内でこの余剰電力を共用することができる。また、マンション内に固定的に設置される蓄電池8aの他、マンション内の駐車場に設置された電気自動車の充電設備に接続された電気自動車Cの蓄電池8bについても、マンション内の電源として利用することができる。発電機7についても、マンション内で当該発電機7が発電した電力を共用することができる。
このように、本実施形態では、上記従来例のように、蓄電池や発電機を戸別に用意する必要がなく、配電路5に蓄電池や発電機を接続すれば、これらによる蓄電や発電による電力をマンション内で共用することができる。
【0041】
また、上記実施形態では、開閉器10を変圧器9の上位に配置した場合を示したが、図4に示すように、開閉器10を変圧器9の下位に配置してもよい。開閉器10を変圧器9の上位に配置した場合には、開閉器10が開放されて解列したときに、配電路5に流れる電流は、変圧器9の2次側コイルを流れるので、若干の電力ロスが生じる。一方、図4の場合では、100Vの電力を得ることはできないが、変圧器9による電力ロスを無くすことができ、エネルギ効率を高めることができる。変圧器9の2次側の配電路が2線式のときは、この方法が好ましい。
【0042】
図5は、本発明の第二の実施形態に係る系統連系保護システムを示すブロック図である。本実施形態と、上記第一の実施形態との相違点は、マンション内に設置されている複数のPCS4の内、発電機7に接続されている一のPCS4のみが通信部4bを備え、制御装置12との間で電力線通信を行うように構成されている点である。
【0043】
本実施形態では、同期処理部12cは、通信部4bを有する一のPCS4のみを制御することで同期処理を行う。
開閉器10が開放されマンション内の各電源が解列されているときに、同期処理部12cは、開閉制御部12bからの指示に基づいて同期処理を行うことを決定すると、前記一のPCS4に対して、商用電力系統における電力の位相に対して同期をとるために必要な情報(同期情報)を送信する。
【0044】
前記一のPCS4は、上記同期情報を受信すると、前記同期情報から特定される商用電力系統の位相に同期するように、自装置の出力する電力の位相を序々に調整する。
開閉器10が開放されることで解列された各電源がマンション内の各電力負荷に対して電力を供給している状態では、各PCS4は、互いに位相同期した状態を維持する。このとき、前記一のPCS4が、自装置の出力する電力の位相を調整すると、他のPCS4は、前記一のPCS4の電力の位相に合わせようと調整する。このため、前記一のPCS4が商用電力系統の位相に対して同期をとれば、他のPCS4は、一のPCS4に位相同期しようとするので、結果的に、他のPCS4を商用電力系統の位相に同期させることができる。
【0045】
前記一のPCS4は、自装置の電力の位相が商用電力系統の位相と一致するように調整が完了してから所定時間経過後に調整が終了した旨を示す応答(終了応答)を制御装置12に送信する。なお、前記所定時間としては、他のPCS4が前記一のPCS4に同期するのに必要な時間が設定される。
【0046】
同期処理部12cは、前記一のPCS4からの終了応答を受信すると、その旨を開閉制御部12bに通知する。開閉制御部12bは、前記通知を受け取ると、開閉器10を閉成する。このとき、配電路5側の電力は、商用電力系統の位相に同期がとれているので、商用電力系統と、マンション内の各電源や電力負荷とは問題なく再連結され、マンション内の各電源は、商用電力系統に対して系統連系運転を開始する。
【0047】
以上のように、本実施形態において、同期処理部12cは、商用電力系統に対してマンション内の各電源を連結する前に、通信部12dを介して複数のPCS4の内の少なくとも一のPCS4に、当該一のPCS4の出力電圧(給電電力)の位相を、商用電力系統の位相に同期するように調整させることで、他のPCS4に、当該他のPCS4の出力電圧(給電電力)の位相を、商用電力系統の位相に同期するように調整させることで同期処理を行う。
【0048】
本実施形態によれば、上記第一の実施形態のように、各PCS4を一時停止させることなく、マンション内の各電源を一括して再連結し商用電力系統に連系させることができる。
又、本実施形態では、少なくとも一のPCS4が通信部4bを備えていれば、マンション内の各電源について商用電力系統と同期をとることができるので、構成が簡易となる。
【0049】
本実施形態では、発電機7に接続されている一のPCS4のみが通信部4bを備えている場合を示したが、他のPCS4が通信部4bを備えていてもよいし、より多数のPCS4が通信部4bを備え、同期処理部12cからの同期情報に基づいて位相調整を行うようにすることもできる。
【0050】
さらに、例えば、図6に示すように、発電機7を制御する制御部72が、当該制御装置72に接続されたPLCモデム73によって、制御装置12と通信可能とされ、制御装置12が、制御部72に対して制御命令を送信して発電機7の回転数等を制御し、当該発電機7が発電する電力の位相を直接調整することで、同期処理を行うこともできる。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることはない。上記実施形態では、配電路5に接続された電源として、太陽電池パネルや、発電機、蓄電池を用いた場合を示したが、燃料電池を用いることもできる。
また、上記実施形態では、制御装置12は、PLCモデムを用いた電力線通信によって、PCS4を制御したが、他の通信手段、例えば、LANや、無線通信等の通信手段を用いて制御することもできる。
【0052】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0053】
1 系統連系保護システム
2 専用負荷
3 太陽電池パネル
4 PCS(パワーコンディショナ)
4b 通信部
5 配電路
6 共用負荷
7 発電機
8a 蓄電池
8b 蓄電池
10 開閉器
12 制御装置
12b 開閉制御部
12c 同期処理部
12d 通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電力負荷、及び複数の電源を含む所定エリアにおける外部交流電力系統に対する系統連系保護を行う系統連系保護システムであって、
前記所定エリア内の複数の電力負荷及び複数の電源を、外部交流電力系統に対して並列に接続する配電路と、
前記配電路と、前記複数の電源との間に設けられ、前記複数の電源が出力する電力を前記配電路を流れる電力の位相に同期した交流電力に変換して前記配電路側に給電する複数のパワーコンディショナと、
前記配電路において、前記所定エリアに含まれる、前記複数の電力負荷、及び前記複数の電源に対する主幹の電路に設けられ、前記所定エリアと前記外部交流電力系統との間を開閉する開閉器と、
前記外部交流電力系統の異常を検出し、その検出結果に応じて、前記開閉器を開閉する制御部と、
を備えていることを特徴とする系統連系保護システム。
【請求項2】
前記開閉器は、前記主幹の電路に設けられた変圧器の1次側に設けられている請求項1に記載の系統連系保護システム。
【請求項3】
前記開閉器は、前記主幹の電路に設けられた変圧器の2次側に設けられている請求項1に記載の系統連系保護システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記複数のパワーコンディショナとの間で通信を行うための通信部と、
前記通信部による通信を介して前記パワーコンディショナを制御することで、前記外部交流電力系統に対して前記所定エリアを連結する際に、当該所定エリア内の電源電力を前記外部交流電力系統に同期させる同期処理を行う同期処理部と、を備えている請求項1〜3のいずれか一項に記載の系統連系保護システム。
【請求項5】
前記同期処理は、前記外部交流電力系統に対して前記所定エリアを連結する前に、前記通信部を介して前記複数のパワーコンディショナの内の少なくとも一のパワーコンディショナに、当該一のパワーコンディショナの出力電圧の位相を、前記外部交流電力系統の位相に同期するように調整させることで、他のパワーコンディショナに、当該他のパワーコンディショナの出力電圧の位相を、前記外部交流電力系統の位相に同期するように調整させる処理である請求項4に記載の系統連系保護システム。
【請求項6】
前記制御部が、前記通信部を介して、前記複数のパワーコンディショナを一次停止又は再起動させることが可能であり、
前記同期処理は、前記外部交流電力系統に対して前記所定エリアを連結する前に、前記複数のパワーコンディショナを一次停止させ、前記所定エリアを連結した後に、前記複数のパワーコンディショナを再動作させる処理である請求項4に記載の系統連系保護システム。
【請求項7】
前記複数の電力負荷は、前記複数の電源に対応して設けられている専用負荷と、前記個別負荷以外の前記所定エリア内で共用される共用負荷とを含んでいる請求項1〜6のいずれか一項に記載の系統連系保護システム。
【請求項8】
前記複数の電源は、前記複数の電力負荷に対応して設けられている第一の電源と、それ以外の第二の電源とを含んでおり、
前記第一の電源が、太陽電池であり、
前記第二の電源が、前記所定エリア内に電力を供給するための蓄電池、及び/又は前記所定エリア内に電力を供給するための発電機である請求項1〜7のいずれか一項に記載の系統連系保護システム。
【請求項9】
所定エリアにおける外部交流電力系統に対する系統連系保護を行う系統連系保護装置であって、
前記所定エリアは、
複数の電力負荷、及び複数の電源と、
前記複数の電力負荷及び複数の電源を外部交流電力系統に対して並列に接続する配電路と、
前記配電路と、前記複数の電源との間に設けられ、前記複数の電源が出力する電力を前記配電路を流れる電力の位相に同期した交流電力に変換して前記配電路側に給電する複数のパワーコンディショナと、
前記配電路において、前記所定エリアに含まれる、前記複数の電力負荷、及び前記複数の電源に対する主幹の電路に設けられ、前記所定エリアと前記外部交流電力系統との間を開閉する開閉器と、を含んでおり、
前記外部交流電力系統の異常を検出する検出部と、
前記検出部による検出結果に応じて、前記開閉器を開閉することで、前記所定エリアを前記外部交流電力系統に対して解列又は連結する開閉制御部と、を備えていることを特徴とする系統連系保護装置。
【請求項10】
請求項4に記載の系統連系保護システムに用いられるパワーコンディショナであって、
前記制御部が送信する、前記所定エリアの電力を前記外部交流電力系統に同期させる同期処理を行うための制御命令を受信する通信部を備え、
前記通信部により受信した前記制御命令に基づいた処理を実行することで同期処理を行うことを特徴とするパワーコンディショナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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