紫外線光源体及び紫外線照射装置
【課題】 バッチ式の紫外線照射装置において、紫外線照度の均整度が高い被照射面を得て、更に、有効照射面を広くした紫外線ランプ及び紫外線照射装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 箱体の内部に平面状に配列された長尺状の紫外線ランプと、この紫外線ランプと平行に配置されている被照射面とからなるバッチ式の紫外線照射装置において、紫外線ランプは直管部分が平行に2本以上配列され、この直管部分は、被照射面に対してランプ平面におけるランプ直管軸の直角方向の中心側から外側に向けて偏倚させて配列した。
【解決手段】 箱体の内部に平面状に配列された長尺状の紫外線ランプと、この紫外線ランプと平行に配置されている被照射面とからなるバッチ式の紫外線照射装置において、紫外線ランプは直管部分が平行に2本以上配列され、この直管部分は、被照射面に対してランプ平面におけるランプ直管軸の直角方向の中心側から外側に向けて偏倚させて配列した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を利用して殺菌及び紫外線酸化分解、オゾン洗浄・改質、樹脂硬化等に使用されるバッチ式の紫外線ランプ及び紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から紫外線ランプは、そのエネルギーの高さ・特有の波長の発光・光の特徴である直進性から電気エネルギーを遠隔的に物体にエネルギーを移すことが出来る。つまり光化学反応を自由に操ることを可能とするため、様々な分野へ応用されていることは周知の通りである。
【0003】
低圧水銀ランプはその主な発光波長である185nm、254nmの紫外線の発光効率が電力に対し20〜35%くらいまでと非常に優れている。特に254nmの波長はDNAに作用し、遺伝子のチミン−チミン配列を変化させ強制的に突然変異を起こさせ生存維持を不能とすることにより殺菌さらしめる特徴のある波長域であり、その最も効率良く作用する260nm波長に極近いことから別名殺菌線とも呼ばれる。真空紫外域である185nmも同時に発光するため、紫外線酸化分解、オゾン洗浄・改質として利用されている。近年は半導体・液晶カラーフィルター・パネル製造業にオゾン洗浄としての利用が急増している。
【0004】
低圧水銀ランプの主な構造と動作は次のようなものである。発光管はガラス管の両端にリード線を介して電極を封着し、そのガラス管内には水銀と希ガスを封入している。そして両電極間に電圧を印可することによって放電させ、水銀に励起エネルギーを与えて発光させる。発光スペクトルは励起エネルギーに相当する波長の紫外線(主に254nmと185nm)が得られる。
高圧ランプは水銀ランプと水銀とその他の金属を添加したメタルハライドランプに分類され、高圧ランプの特徴としては365nm波長を中心とした水銀もしくはその他の金属の発光による紫外線をランプ電力として消費させることにより高出力化することができる。この特徴から高スピードの硬化・処理に対応することができ、専用の紫外線硬化インキ・樹脂との組み合わせで印刷・製版・家具等の表面コーティング等に利用されている。
【0005】
高圧ランプの発光管として実用上は透過率・コストから石英ガラスが使用されるがアーク温度が2000℃以上に達することからランプ形状は1対の電極を挟み直管型もしくは楕円・球状の発光管からなることが一般的である。近年半導体・液晶の露光パターン形成は現在のところ最も有効な方法であるため高出力の点光源として超高圧水銀ランプが年々大型化されている。
【0006】
低圧ランプ・高圧ランプの他、キセノンなどの不活性ガス放電を利用する光源がある。キセノン発光は真空紫外から長波長と幅広い波長域をもち、希ガス発光であるため光の立ち上がりが水銀やメタルハライドランプに比べ極めて早い特性がある。この反面発光効率が低いが、フラッシュランプとして高エネルギー化・発熱抑制に工夫されDVDの張り合わせや表面殺菌及び薬液の滅菌等に応用され、近年用途開発が進んでいる。
【0007】
上記の希ガス放電ランプは発光管内に電極を溶着して発光管内に電子を供給する有電極ランプであるが、キセノン原子の二量体励起による発光つまりエキシマ発光を利用したランプが開発されている。エキシマランプはこれまでの水銀・その他の金属原子の励起による発光波長よりさらにエネルギーの高い172nmの真空紫外線を発光させるため、近年液晶等のフラットパネル製造業に利用されている。エキシマランプの形状は現在のところ石英ガラスによる二重管形状もしくは加熱用ハロゲンランプの直管型で使用されている。
また、近年では紫外線LEDの開発も進んでいる。
【0008】
上記紫外線ランプは一般的にバッチ式またはコンベア等の専用の装置に取り付けられる。大量生産が必要とされる液晶等のフラットパネル製造業界では製造スピードを上げるために装置はコンベア式が一般的であり、光量を稼ぐためランプを複数並べて点灯されることが多い。また被照射物の大型化に伴い紫外線ランプも高出力・長大化に進んでいる。
【0009】
一方、一括処理のバッチ式はコンベア式と異なり少量・多品種生産もしくは企業や学術機関の開発・研究の実験に使用されるケースが前途に比べ多い。バッチ式照射装置はランプからの紫外線出力と照射時間により紫外線光量つまりエネルギーを調整する。図1はバッチ式紫外線照射装置の概略図を示す。1が紫外線ランプであり、その下部に紫外線ランプからの紫外線を照射して、ワークを処理する被照射面2がある。これらが箱体3の内部に配置され、紫外線照射装置を成している。処理面2上にワークを乗せたり取り出したりを容易にするため、引き出しになっており、実験の都度、ワークを出し入れすることができる。
【0010】
従来は図11に示すように、複数回屈曲させたランプの直管部分の設置間隔は被照射面の大きさやランプと処理面の距離に関係なく等間隔に設置されている。例えば直管部分を図2のように円筒と見なして、それらをA、B、C、D、E、Fとする。そのようなランプの照度分布は、例えばCの発光部の直下では、その両側にB、Dの発光があるため、その影響で高い照度が得られるが、Aの発光部の直下では片側にBの発光があるものの、Cの直下と比較すると照度は低くなる。図3は図2の円筒を長手方向の横手方向断面から眺めたもので、断面直下の相対照度分布(ピーク値を100%としている)を示している。図3のようにランプ直下の照度はC,D付近はA、F付近よりも高くなり、そのため紫外線照度の照射ムラが起こっていた。紫外線照射装置では、一定以上の均一な紫外線照度分布面を有効照射面として利用するが、従来の紫外線ランプではこの有効照射面が非常に小さくなっていた。
【0011】
特許文献1には、液晶パネル用ではあるが、ランプ軸方向に均一な照度を得るために、軸方向に液晶パネルをはみ出すように配置している。また特許文献2では、こちらも液晶パネル用ではあるが、均斉度を改善するためにランプの配置によって蛍光体皮膜の膜厚を変化させている。
【0012】
【特許文献1】特開平07−175064
【特許文献2】特開平07−272507
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題を解消すべく、バッチ式の紫外線照射装置において、紫外線照度の均整度が高い被照射面を得て、更に、有効照射面を広くした紫外線ランプ及び紫外線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載された発明にかかる紫外線照射装置は、箱体の内部に平面状に配列された紫外線光源体と、該光源体と平行に配置されている被照射面とからなるバッチ式の紫外線照射装置において、前記紫外線光源体が被照射面に対し中心部が疎に、外側が密に配列されていることを特徴とする。
【0015】
この紫外線光源体は、配置が特に限定されず、被照射面に対して上面・下面もしくは両面にも配置される。
【0016】
被照射面が紫外線光源体の下方に配置される場合、紫外線光源体から放射される紫外線はその紫外線光源体直下の被照射面だけではなく、直下周辺に向けて照射される。そのため、被照射面の中心部では、その直上の紫外線光源体の周囲にある紫外線光源体からの照射により高い照度を得ることが出来る。しかし被照射面の外側になると、直上の紫外線光源体の外側には紫外線光源体がないため、被照射面の中心部と比較して高い照度を得ることが出来ない。特に被照射面の一番外側はその外側から紫外線が照射されることがないため、照度は低くなっていた。
【0017】
そこで請求項1のように、紫外線光源体を配列することにより、被照射面の中心部では、紫外線光源体の存在が少ないため紫外線照射が全体的に減り、被照射面の外側では紫外線光源体の存在が増えるため紫外線照射が全体的に増え、被照射面として全体的に均一な照度を得ることが出来る。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、バッチ式の紫外線照射装置において、上面・下面もしくは両面に設置される紫外線光源体の配列を光源体の形状に応じて被照射面に対し紫外線光源体を中心部が疎、外側が密に配列することにより、中心部に比べると周囲からの光が加算されず低照度となる被照射面外側の照度を高くし、かつ均整度の高い被照射面を得ることを可能とする。これにより従来等間隔に配列された光源、また、直管型で平行かつ等間隔に配列された光源を用いたものより広い有効照射面とることができ、処理ロットを増やし効率を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明についての実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1はバッチ式の紫外線照射装置を示し、1は紫外線光源体、2は被照射面であり、この上にワークを乗せ、紫外線光源体からの紫外線を照射する。これらが箱体3の内部に配置され、紫外線照射装置を成している。ワークを乗せる被照射面は引き出し型になっており、ワークの出し入れが容易になるよう構成されている。
【0020】
図4は、本発明にかかるバッチ式の紫外線照射装置の被照射面の均整度を改善するための紫外線光源体の配置図の概念を示す図である。図4において、図4(a)は理想的な紫外線光源体の配列疎密分布の概念図である。また、図4(b)は直管型の光源体を平行に複数用いて(例えば図11のように直管部が平行に並んでいる光源体を指す)、その直管の軸に対して直角方向の均整度改善を考慮した紫外線光源体の配列疎密分布の概念図である。図4(a)、図4(b)のように紫外線光源体を配列することで、被照射面の均整度が高くなり、その結果有効照射面を広く取る事が可能である。
【0021】
尚、紫外線LEDを用いると図4(a)の理想的な光源配列を実現することができる。
以下、図4(b)のような均整度改善を考慮した光源の配列の具体な実施の形態を、図を用いて説明する。
【0022】
図5は、紫外線ランプの一つの形状が直管型で構成され且つそれぞれが平行に配列される場合の具体化として、外側のランプの間隔を中心部よりも狭く配列している。この様に配列された直管型の紫外線ランプの種類としては、高圧・低圧・その他の区別なく紫外線を発光する光源であれば全て均整度の高い照射面を得ること可能とする。
【0023】
図6は、一つの形状がU字型(もしくはコの字型)の紫外線ランプ3本で構成され、且つこのU字型ランプの直管部分を平行に配列し、U字管のランプを被照射面に対して中央から外側に偏移させている。また、中央に存在するU字型ランプより外側にあるU字型ランプの方の発光管の間隔を狭くしている。この場合対象となる紫外線ランプはアークがランプの屈曲部で内面に近接してしまうため、温度が石英管を溶かすほどに温度が上がらない、主として低圧水銀放電のランプに関して可能となる。この様に配列により前記同様の均整度の高い照射面を得ること可能とする。
【0024】
図7は1本の長尺状の紫外線ランプを複数回屈曲させ、得られた直管部分を平行に配列している。そしてこの紫外線ランプは1平面状に構成されており、外側の直管部分の間隔が中心部よりも狭い間隔で構成されている。この場合対象となる紫外線ランプは前記同様に発光管に屈曲部を有するため主として低圧水銀放電のランプに関して可能となり、この様に配列により前記同様の均整度の高い照射面を得ること可能とする。
【0025】
図8は、1本の長尺状の紫外線ランプを複数回屈曲させ、得られた直管部分を平行に配列している。そしてこの直管部分の間隔は片側を狭くしている。更にこの紫外線ランプの形状と左右対称であるランプを、その直管部分が平行になる様に配列する。これら2本から構成される紫外線ランプは1平面状に構成されており、直管部分の間隔が狭いほうが外側となるように構成されている。この場合対象となる紫外線ランプは前記同様に発光管に屈曲部を有するため主として低圧水銀放電のランプに関して可能となり、この様に配列により前記同様の均整度の高い照射面を得ること可能とする。
【0026】
図9は、バッチ式の紫外線照射装置の被照射面が円形の場合、1本の紫外線ランプを輪状に形成し、この紫外線ランプと同心円上で輪の大きさの異なる紫外線ランプを同一平面状に形成している。図9の場合、これら紫外線ランプを被照射面に対して、中心部より端部側に偏移させている。
【0027】
この場合対象となる紫外線ランプは前記同様に発光管に曲部を有するため主として低圧水銀放電のランプに関して可能となり、この様に配列により前記同様の均整度の高い照射面を得ること可能とする。
【実施例1】
【0028】
次に本発明による効果を証明する具体的な例を以下に示す。
低圧水銀ランプは熱陰極方式で、発光管は合成石英よりなり、図7のように、1本の発光管を5回屈曲させ、直管部分を6本設けている。その発光管の外径はφ20mm、肉厚は1.2mmで構成されている。この発光管に緩衝ガスとしてArを1.0Torr封入した。発光管の直管部分の配列を表1の条件で構成し、本発明の構成と従来の構成とで被照射面照度の比較実験を行った。なお、図2のA、B、C、D、E、Fを基に発光管直管部のピッチを示している。
【0029】
【表1】
【0030】
測定系を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
上記仕様における測定結果を図10に示す。(a)は本発明の構成による測定結果であり、(b)は従来の構成による測定結果である。ランプ直管の長手方向をA方向、横手方向をB方向とした。図10では、(a)(b)それぞれ照度均整度分布図とその分布で被照射面の照度均整度が80%以上の分布のみを示す図を示しており、従来の構成に比べ、本発明の構成では被照射面の照度均整度が80%以上となる分布が広くなり、つまり有効照射面を広くとることが可能となった。特に直管部横手方向の両端ではその差が歴然である。なお、図中6が照度均整度80%以上を示している。
【0033】
実施例では1本の低圧水銀ランプを用いて、実験を行ったが、低圧水銀ランプが複数本あっても、その直管部分の配列は内側を疎に外側を密にすることによって、同様の効果を得ることが出来た。
【0034】
更に実施例では直管部分を含むランプを用いて、図4の(b)の疎密分布に近づけるよう構成したが、紫外線光源体に紫外線LEDを用いる事で、図4の(a)のような疎密分布に近づける構成を得ることが出来る。その結果、中心部に比べると周囲からの光が加算されず低照度となる被照射面外側の照度を高くし、かつ均整度の高い被照射面を得ることを可能とする。これにより従来等間隔に配列された光源、また、直管型で平行かつ等間隔に配列された光源を用いたものより広い有効照射面とることができ、処理ロットを増やし効率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】バッチ式紫外線照射装置の概略図を示す図である。
【図2】発光管直管部分を円筒と見なした模式図である。
【図3】図2の相対照度分布を示す図である。
【図4】本発明のバッチ式の紫外線照射装置の被照射面の均整度を改善するための光源の配列図の概念を示す図である。
【図5】本発明のバッチ式の紫外線照射装置に直管型紫外線ランプを用い、それを平行に並べた場合の光源配列の実施の形態を示す図である。
【図6】本発明のバッチ式の紫外線照射装置にU字型紫外線ランプを用い、それを平行に並べた場合の光源配列の実施の形態を示す図である。
【図7】本発明のバッチ式の紫外線照射装置に1本の紫外線ランプを複数回屈曲させ、直管部分を平行に複数設けた場合の光源配列の実施の形態を示す図である。
【図8】本発明のバッチ式の紫外線照射装置に1本の紫外線ランプを複数回屈曲させ、直管部分を平行に複数設けたランプを2本使用した場合の光源配列の実施の形態を示す図である。
【図9】本発明のバッチ式の紫外線照射装置の照射面が円形の場合、輪状の紫外線ランプが同心軸に複数設置される場合の実施の形態を示す図である。
【図10】実施例1の被照射面における均整度分布を示す図である。(a)は本発明にかかる均整度分布を示す図であり、(b)は従来の構成による均整度分布を示す図を示す。
【図11】従来の構成のランプを示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 紫外線光源体
2 被照射面
3 箱体
4 紫外線ランプ直管部分
5 輪状の紫外線ランプ
6 有効照射面
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を利用して殺菌及び紫外線酸化分解、オゾン洗浄・改質、樹脂硬化等に使用されるバッチ式の紫外線ランプ及び紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から紫外線ランプは、そのエネルギーの高さ・特有の波長の発光・光の特徴である直進性から電気エネルギーを遠隔的に物体にエネルギーを移すことが出来る。つまり光化学反応を自由に操ることを可能とするため、様々な分野へ応用されていることは周知の通りである。
【0003】
低圧水銀ランプはその主な発光波長である185nm、254nmの紫外線の発光効率が電力に対し20〜35%くらいまでと非常に優れている。特に254nmの波長はDNAに作用し、遺伝子のチミン−チミン配列を変化させ強制的に突然変異を起こさせ生存維持を不能とすることにより殺菌さらしめる特徴のある波長域であり、その最も効率良く作用する260nm波長に極近いことから別名殺菌線とも呼ばれる。真空紫外域である185nmも同時に発光するため、紫外線酸化分解、オゾン洗浄・改質として利用されている。近年は半導体・液晶カラーフィルター・パネル製造業にオゾン洗浄としての利用が急増している。
【0004】
低圧水銀ランプの主な構造と動作は次のようなものである。発光管はガラス管の両端にリード線を介して電極を封着し、そのガラス管内には水銀と希ガスを封入している。そして両電極間に電圧を印可することによって放電させ、水銀に励起エネルギーを与えて発光させる。発光スペクトルは励起エネルギーに相当する波長の紫外線(主に254nmと185nm)が得られる。
高圧ランプは水銀ランプと水銀とその他の金属を添加したメタルハライドランプに分類され、高圧ランプの特徴としては365nm波長を中心とした水銀もしくはその他の金属の発光による紫外線をランプ電力として消費させることにより高出力化することができる。この特徴から高スピードの硬化・処理に対応することができ、専用の紫外線硬化インキ・樹脂との組み合わせで印刷・製版・家具等の表面コーティング等に利用されている。
【0005】
高圧ランプの発光管として実用上は透過率・コストから石英ガラスが使用されるがアーク温度が2000℃以上に達することからランプ形状は1対の電極を挟み直管型もしくは楕円・球状の発光管からなることが一般的である。近年半導体・液晶の露光パターン形成は現在のところ最も有効な方法であるため高出力の点光源として超高圧水銀ランプが年々大型化されている。
【0006】
低圧ランプ・高圧ランプの他、キセノンなどの不活性ガス放電を利用する光源がある。キセノン発光は真空紫外から長波長と幅広い波長域をもち、希ガス発光であるため光の立ち上がりが水銀やメタルハライドランプに比べ極めて早い特性がある。この反面発光効率が低いが、フラッシュランプとして高エネルギー化・発熱抑制に工夫されDVDの張り合わせや表面殺菌及び薬液の滅菌等に応用され、近年用途開発が進んでいる。
【0007】
上記の希ガス放電ランプは発光管内に電極を溶着して発光管内に電子を供給する有電極ランプであるが、キセノン原子の二量体励起による発光つまりエキシマ発光を利用したランプが開発されている。エキシマランプはこれまでの水銀・その他の金属原子の励起による発光波長よりさらにエネルギーの高い172nmの真空紫外線を発光させるため、近年液晶等のフラットパネル製造業に利用されている。エキシマランプの形状は現在のところ石英ガラスによる二重管形状もしくは加熱用ハロゲンランプの直管型で使用されている。
また、近年では紫外線LEDの開発も進んでいる。
【0008】
上記紫外線ランプは一般的にバッチ式またはコンベア等の専用の装置に取り付けられる。大量生産が必要とされる液晶等のフラットパネル製造業界では製造スピードを上げるために装置はコンベア式が一般的であり、光量を稼ぐためランプを複数並べて点灯されることが多い。また被照射物の大型化に伴い紫外線ランプも高出力・長大化に進んでいる。
【0009】
一方、一括処理のバッチ式はコンベア式と異なり少量・多品種生産もしくは企業や学術機関の開発・研究の実験に使用されるケースが前途に比べ多い。バッチ式照射装置はランプからの紫外線出力と照射時間により紫外線光量つまりエネルギーを調整する。図1はバッチ式紫外線照射装置の概略図を示す。1が紫外線ランプであり、その下部に紫外線ランプからの紫外線を照射して、ワークを処理する被照射面2がある。これらが箱体3の内部に配置され、紫外線照射装置を成している。処理面2上にワークを乗せたり取り出したりを容易にするため、引き出しになっており、実験の都度、ワークを出し入れすることができる。
【0010】
従来は図11に示すように、複数回屈曲させたランプの直管部分の設置間隔は被照射面の大きさやランプと処理面の距離に関係なく等間隔に設置されている。例えば直管部分を図2のように円筒と見なして、それらをA、B、C、D、E、Fとする。そのようなランプの照度分布は、例えばCの発光部の直下では、その両側にB、Dの発光があるため、その影響で高い照度が得られるが、Aの発光部の直下では片側にBの発光があるものの、Cの直下と比較すると照度は低くなる。図3は図2の円筒を長手方向の横手方向断面から眺めたもので、断面直下の相対照度分布(ピーク値を100%としている)を示している。図3のようにランプ直下の照度はC,D付近はA、F付近よりも高くなり、そのため紫外線照度の照射ムラが起こっていた。紫外線照射装置では、一定以上の均一な紫外線照度分布面を有効照射面として利用するが、従来の紫外線ランプではこの有効照射面が非常に小さくなっていた。
【0011】
特許文献1には、液晶パネル用ではあるが、ランプ軸方向に均一な照度を得るために、軸方向に液晶パネルをはみ出すように配置している。また特許文献2では、こちらも液晶パネル用ではあるが、均斉度を改善するためにランプの配置によって蛍光体皮膜の膜厚を変化させている。
【0012】
【特許文献1】特開平07−175064
【特許文献2】特開平07−272507
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題を解消すべく、バッチ式の紫外線照射装置において、紫外線照度の均整度が高い被照射面を得て、更に、有効照射面を広くした紫外線ランプ及び紫外線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載された発明にかかる紫外線照射装置は、箱体の内部に平面状に配列された紫外線光源体と、該光源体と平行に配置されている被照射面とからなるバッチ式の紫外線照射装置において、前記紫外線光源体が被照射面に対し中心部が疎に、外側が密に配列されていることを特徴とする。
【0015】
この紫外線光源体は、配置が特に限定されず、被照射面に対して上面・下面もしくは両面にも配置される。
【0016】
被照射面が紫外線光源体の下方に配置される場合、紫外線光源体から放射される紫外線はその紫外線光源体直下の被照射面だけではなく、直下周辺に向けて照射される。そのため、被照射面の中心部では、その直上の紫外線光源体の周囲にある紫外線光源体からの照射により高い照度を得ることが出来る。しかし被照射面の外側になると、直上の紫外線光源体の外側には紫外線光源体がないため、被照射面の中心部と比較して高い照度を得ることが出来ない。特に被照射面の一番外側はその外側から紫外線が照射されることがないため、照度は低くなっていた。
【0017】
そこで請求項1のように、紫外線光源体を配列することにより、被照射面の中心部では、紫外線光源体の存在が少ないため紫外線照射が全体的に減り、被照射面の外側では紫外線光源体の存在が増えるため紫外線照射が全体的に増え、被照射面として全体的に均一な照度を得ることが出来る。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、バッチ式の紫外線照射装置において、上面・下面もしくは両面に設置される紫外線光源体の配列を光源体の形状に応じて被照射面に対し紫外線光源体を中心部が疎、外側が密に配列することにより、中心部に比べると周囲からの光が加算されず低照度となる被照射面外側の照度を高くし、かつ均整度の高い被照射面を得ることを可能とする。これにより従来等間隔に配列された光源、また、直管型で平行かつ等間隔に配列された光源を用いたものより広い有効照射面とることができ、処理ロットを増やし効率を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明についての実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1はバッチ式の紫外線照射装置を示し、1は紫外線光源体、2は被照射面であり、この上にワークを乗せ、紫外線光源体からの紫外線を照射する。これらが箱体3の内部に配置され、紫外線照射装置を成している。ワークを乗せる被照射面は引き出し型になっており、ワークの出し入れが容易になるよう構成されている。
【0020】
図4は、本発明にかかるバッチ式の紫外線照射装置の被照射面の均整度を改善するための紫外線光源体の配置図の概念を示す図である。図4において、図4(a)は理想的な紫外線光源体の配列疎密分布の概念図である。また、図4(b)は直管型の光源体を平行に複数用いて(例えば図11のように直管部が平行に並んでいる光源体を指す)、その直管の軸に対して直角方向の均整度改善を考慮した紫外線光源体の配列疎密分布の概念図である。図4(a)、図4(b)のように紫外線光源体を配列することで、被照射面の均整度が高くなり、その結果有効照射面を広く取る事が可能である。
【0021】
尚、紫外線LEDを用いると図4(a)の理想的な光源配列を実現することができる。
以下、図4(b)のような均整度改善を考慮した光源の配列の具体な実施の形態を、図を用いて説明する。
【0022】
図5は、紫外線ランプの一つの形状が直管型で構成され且つそれぞれが平行に配列される場合の具体化として、外側のランプの間隔を中心部よりも狭く配列している。この様に配列された直管型の紫外線ランプの種類としては、高圧・低圧・その他の区別なく紫外線を発光する光源であれば全て均整度の高い照射面を得ること可能とする。
【0023】
図6は、一つの形状がU字型(もしくはコの字型)の紫外線ランプ3本で構成され、且つこのU字型ランプの直管部分を平行に配列し、U字管のランプを被照射面に対して中央から外側に偏移させている。また、中央に存在するU字型ランプより外側にあるU字型ランプの方の発光管の間隔を狭くしている。この場合対象となる紫外線ランプはアークがランプの屈曲部で内面に近接してしまうため、温度が石英管を溶かすほどに温度が上がらない、主として低圧水銀放電のランプに関して可能となる。この様に配列により前記同様の均整度の高い照射面を得ること可能とする。
【0024】
図7は1本の長尺状の紫外線ランプを複数回屈曲させ、得られた直管部分を平行に配列している。そしてこの紫外線ランプは1平面状に構成されており、外側の直管部分の間隔が中心部よりも狭い間隔で構成されている。この場合対象となる紫外線ランプは前記同様に発光管に屈曲部を有するため主として低圧水銀放電のランプに関して可能となり、この様に配列により前記同様の均整度の高い照射面を得ること可能とする。
【0025】
図8は、1本の長尺状の紫外線ランプを複数回屈曲させ、得られた直管部分を平行に配列している。そしてこの直管部分の間隔は片側を狭くしている。更にこの紫外線ランプの形状と左右対称であるランプを、その直管部分が平行になる様に配列する。これら2本から構成される紫外線ランプは1平面状に構成されており、直管部分の間隔が狭いほうが外側となるように構成されている。この場合対象となる紫外線ランプは前記同様に発光管に屈曲部を有するため主として低圧水銀放電のランプに関して可能となり、この様に配列により前記同様の均整度の高い照射面を得ること可能とする。
【0026】
図9は、バッチ式の紫外線照射装置の被照射面が円形の場合、1本の紫外線ランプを輪状に形成し、この紫外線ランプと同心円上で輪の大きさの異なる紫外線ランプを同一平面状に形成している。図9の場合、これら紫外線ランプを被照射面に対して、中心部より端部側に偏移させている。
【0027】
この場合対象となる紫外線ランプは前記同様に発光管に曲部を有するため主として低圧水銀放電のランプに関して可能となり、この様に配列により前記同様の均整度の高い照射面を得ること可能とする。
【実施例1】
【0028】
次に本発明による効果を証明する具体的な例を以下に示す。
低圧水銀ランプは熱陰極方式で、発光管は合成石英よりなり、図7のように、1本の発光管を5回屈曲させ、直管部分を6本設けている。その発光管の外径はφ20mm、肉厚は1.2mmで構成されている。この発光管に緩衝ガスとしてArを1.0Torr封入した。発光管の直管部分の配列を表1の条件で構成し、本発明の構成と従来の構成とで被照射面照度の比較実験を行った。なお、図2のA、B、C、D、E、Fを基に発光管直管部のピッチを示している。
【0029】
【表1】
【0030】
測定系を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
上記仕様における測定結果を図10に示す。(a)は本発明の構成による測定結果であり、(b)は従来の構成による測定結果である。ランプ直管の長手方向をA方向、横手方向をB方向とした。図10では、(a)(b)それぞれ照度均整度分布図とその分布で被照射面の照度均整度が80%以上の分布のみを示す図を示しており、従来の構成に比べ、本発明の構成では被照射面の照度均整度が80%以上となる分布が広くなり、つまり有効照射面を広くとることが可能となった。特に直管部横手方向の両端ではその差が歴然である。なお、図中6が照度均整度80%以上を示している。
【0033】
実施例では1本の低圧水銀ランプを用いて、実験を行ったが、低圧水銀ランプが複数本あっても、その直管部分の配列は内側を疎に外側を密にすることによって、同様の効果を得ることが出来た。
【0034】
更に実施例では直管部分を含むランプを用いて、図4の(b)の疎密分布に近づけるよう構成したが、紫外線光源体に紫外線LEDを用いる事で、図4の(a)のような疎密分布に近づける構成を得ることが出来る。その結果、中心部に比べると周囲からの光が加算されず低照度となる被照射面外側の照度を高くし、かつ均整度の高い被照射面を得ることを可能とする。これにより従来等間隔に配列された光源、また、直管型で平行かつ等間隔に配列された光源を用いたものより広い有効照射面とることができ、処理ロットを増やし効率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】バッチ式紫外線照射装置の概略図を示す図である。
【図2】発光管直管部分を円筒と見なした模式図である。
【図3】図2の相対照度分布を示す図である。
【図4】本発明のバッチ式の紫外線照射装置の被照射面の均整度を改善するための光源の配列図の概念を示す図である。
【図5】本発明のバッチ式の紫外線照射装置に直管型紫外線ランプを用い、それを平行に並べた場合の光源配列の実施の形態を示す図である。
【図6】本発明のバッチ式の紫外線照射装置にU字型紫外線ランプを用い、それを平行に並べた場合の光源配列の実施の形態を示す図である。
【図7】本発明のバッチ式の紫外線照射装置に1本の紫外線ランプを複数回屈曲させ、直管部分を平行に複数設けた場合の光源配列の実施の形態を示す図である。
【図8】本発明のバッチ式の紫外線照射装置に1本の紫外線ランプを複数回屈曲させ、直管部分を平行に複数設けたランプを2本使用した場合の光源配列の実施の形態を示す図である。
【図9】本発明のバッチ式の紫外線照射装置の照射面が円形の場合、輪状の紫外線ランプが同心軸に複数設置される場合の実施の形態を示す図である。
【図10】実施例1の被照射面における均整度分布を示す図である。(a)は本発明にかかる均整度分布を示す図であり、(b)は従来の構成による均整度分布を示す図を示す。
【図11】従来の構成のランプを示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 紫外線光源体
2 被照射面
3 箱体
4 紫外線ランプ直管部分
5 輪状の紫外線ランプ
6 有効照射面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱体の内部に平面状に配列された紫外線光源体と、該光源体と平行に配置されている被照射面とからなるバッチ式の紫外線照射装置において、前記紫外線光源体の配列が被照射面に対し中心部が疎に、外側が密であることを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記紫外線光源体は長尺状のランプにより構成されている請求項1記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
箱体の内部に平面状に配列された長尺状の紫外線ランプと、該紫外線ランプと平行に配置されている被照射面とからなるバッチ式の紫外線照射装置において、前記ランプは直管部分が平行に2本以上配列され、該直管部分は、被照射面に対してランプ平面におけるランプ直管軸の直角方向の中心側から外側に向けて偏倚させて配列したことを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項4】
前記ランプは1本のランプを複数回屈曲させて構成している請求項3記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
箱体の内部に平面状に配列された長尺状の紫外線ランプと、該紫外線ランプと平行に配置されている被照射面とからなるバッチ式の紫外線照射装置において、2本以上の輪状の紫外線ランプが同心円状に配列され、被照射面に対してランプ平面における中心から外側に向けて偏倚させて配列したことを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項1】
箱体の内部に平面状に配列された紫外線光源体と、該光源体と平行に配置されている被照射面とからなるバッチ式の紫外線照射装置において、前記紫外線光源体の配列が被照射面に対し中心部が疎に、外側が密であることを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記紫外線光源体は長尺状のランプにより構成されている請求項1記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
箱体の内部に平面状に配列された長尺状の紫外線ランプと、該紫外線ランプと平行に配置されている被照射面とからなるバッチ式の紫外線照射装置において、前記ランプは直管部分が平行に2本以上配列され、該直管部分は、被照射面に対してランプ平面におけるランプ直管軸の直角方向の中心側から外側に向けて偏倚させて配列したことを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項4】
前記ランプは1本のランプを複数回屈曲させて構成している請求項3記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
箱体の内部に平面状に配列された長尺状の紫外線ランプと、該紫外線ランプと平行に配置されている被照射面とからなるバッチ式の紫外線照射装置において、2本以上の輪状の紫外線ランプが同心円状に配列され、被照射面に対してランプ平面における中心から外側に向けて偏倚させて配列したことを特徴とする紫外線照射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−287516(P2007−287516A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−114571(P2006−114571)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】
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