説明

紫外線硬化型ハードコート組成物

【課題】多官能モノマーや単官能モノマー、溶剤との相溶性に優れ、紫外線を照射することにより硬化する際の体積収縮を抑制でき、硬度や耐擦傷性、密着性にも優れた塗膜を形成可能な紫外線硬化型ハードコート組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも(A)(a1)N置換(メタ)アクリルアミドモノマー、(a2)水酸基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーまたは(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(a3)(メタ)アクリル酸脂環式炭化水素エステルモノマーからなる共重合プレポリマーと(a4)水酸基と反応し得る官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを反応させることにより得ることができるオリゴマーまたはポリマー、及び(B)分子内に2個以上の重合性官能基を有する多官能モノマーを1種類以上、を含有する紫外線硬化型ハードコート組成物が、上記課題の解決に合致することを見出し、本発明に到達した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多官能モノマーや単官能モノマー、溶剤との相溶性に優れ、紫外線を照射することにより硬化する際の体積収縮を抑制でき、硬度や耐擦傷性、密着性にも優れた塗膜を形成可能な紫外線硬化型ハードコート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック材料は、安価で成形性や軽量性に優れるため、光学用フィルムや自動車部品、化粧品ボトル、建材など多用途での市場展開が図られているが、ガラスや金属などの無機材料に比べ、硬度や耐擦傷性などの物理的強度が劣るという欠点を有している。
そのため、これらの欠点を解消しようとする試みとして、生産性の高い紫外線硬化型塗料を用い、プラスチック基材表面にハードコート皮膜を形成させる方法が検討されてきた。
しかし、従来の多官能モノマーやオリゴマーからなる紫外線硬化型組成物は硬度や耐擦傷性に優れるものの、紫外線硬化時のハードコート層の体積収縮が大きいため、内部応力が発生し、クラックやしわが発生したり、フィルムがカールしたりといった問題があった。また、基材との密着性も悪く、剥がれを生じる問題もあった。
【0003】
これらに対し、紫外線硬化型組成物に重合性官能基を有するポリマーを添加することで紫外線硬化時の硬化収縮を抑制する方法が試みられてきた。例えば、特許文献1では、(メタ)アクリロリル基を有する共役ジエン系ポリマーを添加する方法が記載されているが、硬化収縮は抑制できるものの、硬度や耐擦傷性に関しては何ら記載がなく定かではない。特許文献2及び特許文献3では、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系ポリマーを添加する方法が記載されているが、硬度や耐擦傷性、密着性、相溶性のバランスが不十分であるという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−192745号公報
【特許文献2】特開2008−129130号公報
【特許文献3】特開2009−74079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来の紫外線硬化型ハードコート組成物に認められる欠点を解消し、紫外線硬化時の体積収縮を抑制するだけでなく、硬度や耐擦傷性、密着性、相溶性のバランスに優れた紫外線硬化型ハードコート組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、かかる事情を鑑み鋭意研究を重ねた結果、少なくとも(A)(a1)N置換(メタ)アクリルアミドモノマー、(a2)水酸基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーまたは(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(a3)(メタ)アクリル酸脂環式炭化水素エステルモノマーからなる共重合プレポリマーと(a4)水酸基と反応し得る官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを反応させることにより得ることができるオリゴマーまたはポリマー、及び(B)分子内に2個以上の重合性官能基を有する多官能モノマーを1種類以上、を含有する紫外線硬化型ハードコート組成物が、上記課題の解決に合致することを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0007】
本発明に記載の紫外線硬化型ハードコート組成物は、多官能モノマーや単官能モノマー、溶剤との相溶性に優れ、紫外線を照射することにより硬化する際の体積収縮を抑制でき、硬度や耐擦傷性、耐湿性、耐カール性、密着性に優れた塗膜を形成可能なものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。本発明で用いられるポリマー(A)は、(a1)N置換(メタ)アクリルアミドモノマー、(a2)水酸基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーまたは(メタ)アクリル酸エステルモノマー、さらには(a3)(メタ)アクリル酸脂環式炭化水素エステルモノマーを溶媒中で重合して共重合プレポリマーを合成し、得られたプレポリマーと(a4)水酸基と反応し得る官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとを反応させることにより得られるものである。
【0009】
(a1)N置換(メタ)アクリルアミドモノマーの例としては、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、メチルエチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、n−プロピル(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリロイルピペリジン、(メタ)アクリロイルピロリジンなどが挙げられる。これらが、相溶性に優れ、かつ密着性、硬度、耐擦傷性にも優れる塗膜を形成可能なものとして好適であり、好ましくはジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、メチルエチル(メタ)アクリルアミドである。
【0010】
(a2)水酸基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーまたは(メタ)アクリル酸エステルモノマーの例としては、メチロール(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらが、相溶性に優れ、かつ密着性、硬度、耐擦傷性にも優れる塗膜を形成可能なものとして好適であり、好ましくは2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートであり、更に好ましくは2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートである。
【0011】
(a3)(メタ)アクリル酸脂環式炭化水素エステルモノマーの例としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらが、相溶性に優れ、かつ密着性、硬度、耐擦傷性にも優れる塗膜を形成可能なものとして好適であり、好ましくはイソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートである。
【0012】
(a4)水酸基と反応し得る官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーの例としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネートなどのイソシアネート基含有(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルなどのグリシジル基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、アクリル酸ダイマー、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、EO変性フタル酸(メタ)アクリレートなどのカルボキシル基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらが、相溶性に優れ、かつ密着性、硬度、耐擦傷性にも優れる塗膜を形成可能なものとして好適であり、好ましくは(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネートなどのイソシアネート基含有(メタ)アクリレートである。
【0013】
本発明で用いられるポリマーの重合方法としては、溶液重合、滴下重合、沈殿重合、懸濁重合、エマルジョン重合、塊状重合など、公知の方法により行うことができる。
【0014】
本発明で用いられるポリマー(A)の重合モル比は、(a1)/(a3)が90/10〜40/60の範囲であることが好ましいがこの限りではない。さらに好ましくは、80/20〜50/50の範囲である。(a3)成分が10より少ないとハードコート層の耐湿性に影響を及ぼす。(a3)成分が60より多いと多官能モノマーや単官能モノマー、溶剤との相溶性に影響を及ぼす。
【0015】
(a2)成分の重合モル比は、(a1)成分及び(a3)成分の合計モル数を100とした時に50〜200の範囲であることが好ましいがこの限りではない。さらに好ましくは、70〜170の範囲である。(a2)成分が50より少ないと十分な硬度や耐擦傷性を持つハードコート層を得ることがでず、(a2)成分が200より多いと硬化収縮を抑制することができない。
【0016】
(a2)成分と(a4)成分の反応方法としては、水酸基とイソシアネート基の反応の場合、ジブチルスズジラウレートなどのスズ系触媒を、水酸基とグリシジル基の反応の場合、トリフェニルホフフィンなどのホスフィン系触媒を、水酸基とカルボキシル基の反応の場合、反応温度はトリフルオロメタンスルホン酸などの強酸触媒を使用した公知の方法により行うことができる。
【0017】
(a2)成分と(a4)成分の反応モル比は、(a2)/(a4)が1/1〜1/2の範囲であることが好ましいがこの限りではない。さらに好ましくは、1/1〜1/1.5の範囲である。(a4)成分が1より少ないと(a2)成分の水酸基がポリマー中に残存し、ハードコート層の耐湿性に影響を及ぼす。(a4)成分が2より多いとモノマーとして残存する(a4)成分が増加し、十分な硬度や耐擦傷性を持つハードコート層を得ることができない。
【0018】
本発明で用いられるポリマー(A)の重量平均分子量は、5000〜100000の範囲であることが好ましいがこの限りではない。さらに好ましくは10000〜50000の範囲である。重量平均分子量が5000より小さいと紫外線硬化時の体積収縮を抑制することができず、重量平均分子量が100000より大きいと、粘度が高くなりすぎてハンドリングが困難になる。
【0019】
本発明で用いられるポリマー(A)の含有量としては、特に限定されないが、(A)成分及び(B)成分の合計量100重量部のうち、前記(A)が10〜70重量部の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは、30〜50重量部の範囲である。前記(A)が10より少ないと紫外線硬化時の体積収縮を抑制することができず、前記(A)が70より多いと十分な硬度や耐擦傷性を持つハードコート層を得ることができない。
【0020】
本発明における(B)分子内に2個以上の重合性官能基を有する多官能モノマーとしては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートやエトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが挙げられ、これら1種以上を混合して使用する。前記(A)成分と共に用いることで、優れた硬度や耐擦傷性を有するハードコート層を形成可能なものとして好適である。
【0021】
本発明において、塗料の粘度を下げる場合など、必要に応じて(C)単官能モノマーまたは(D)有機溶剤を配合することができる。(C)成分または(D)成分のどちらか一方を1種以上用いるか、両者を2種以上混合して使用してもよい。
【0022】
(C)単官能モノマーとしては、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート 、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能モノマーは、塗料の粘度を下げる場合など、必要に応じて配合する事ができる。
【0023】
(C)単官能モノマーの含有量としては、(A)成分及び(B)成分の合計量100重量部に対して50重量部以下にすることが好ましい。(C)単官能モノマーの含有量が30重量部よりも多くなると、ハードコート層の硬度や耐擦傷性に影響が出る場合があるため好ましくない。
【0024】
(D)有機溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、ジアセトンアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メトキシプロパノール、メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。これらの有機溶剤は、塗料の粘度を下げる場合など、必要に応じて配合する事ができる。
【0025】
(D)有機溶剤の含有量としては、特に限定されないが、(A)成分及び(B)成分の合計量100重量部に対して100重量部以下にすることが好ましい。(D)有機溶剤の含有量が100重量部よりも多くなると、ハードコート層の密着性、硬度、耐擦傷性に影響が出るため好ましくない。
【0026】
本発明の紫外線硬化型ハードコート組成物には(E)光重合開始剤を配合する。(E)光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインまたはそのエーテル、ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物、ベンジル、ベンジルメチルケタール、ベンジルエチルケタールなどのベンジル系化合物、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンなどのヒドロキシアルキルフェニルケトン系化合物などが挙げられる。市販されているダロキュア1173、ダロキュア2959、イルガキュア184(チバ・ジャパン(株)製)が好適である。
【0027】
(E)光重合開始剤の含有量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分の合計量100重量部に対して1〜10重量部の範囲であることが好ましい。1より少ないと十分な硬化性が得られず、10より多いと硬度や耐擦傷性に影響が出るため好ましくない。
【実施例】
【0028】
以下に実施例により、本発明を詳細に、より具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0029】
[ポリマー(A)の合成]
(A−1)
攪拌機、還流冷却管、温度計及びガス導入管を設けた1L容量のセパラブルフラスコに、ジメチルアクリルアミド((株)興人製:DMAA)50重量部、イソボルニルメタクリレート(東京化成工業(株)製)28重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(東京化成工業(株)製)82.1重量部、メチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製)610重量部を投入し、撹拌下、窒素ガスで1時間脱気した。この後、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製:V−65)3.1重量部をメチルエチルケトン30重量部に溶解させた溶液を加え、70℃に昇温して8時間重合反応を実施することでプレポリマーを合成した。このプレポリマー液を80℃以上に加熱してメチルエチルケトンを蒸留除去し、プレポリマー濃度が70wt%になる様に調整した。導入ガスを窒素から空気に変更し、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工(株)製:カレンズMOI)97.8重量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル(和光純薬工業(株)製)0.2重量部、ジブチルスズジラウレート(東京化成工業(株)製)2重量部を投入し、80℃のまま4時間反応させた。反応終了後、ポリマー濃度が70wt%になる様にメチルエチルケトンを追加して微調整し、(A−1)のメチルエチルケトン溶液を取得した。得られたポリマー(A−1)の重量平均分子量は22000であった。
【0030】
(A−2)
(A−1)のジメチルアクリルアミド50重量部を30重量部、イソボルニルメタクリレート28重量部を67.3重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート65.6重量部を78.8重量部、メチルエチルケトン610重量部を704重量部、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート97.8重量部を93.9重量部としたこと以外は(A−1)と同様に実施した。得られたポリマー(A−2)の重量平均分子量は28000であった。
【0031】
(A−3)
(A−1)の2−ヒドロキシエチルメタクリレート82.1重量部を2−ヒドロキシエチルアクリルアミド72.6重量部、メチルエチルケトン610重量部を573重量部としたこと以外は(A−1)と同様に実施した。得られたポリマー(A−3)の重量平均分子量は17000であった。
【0032】
(A−4)
(A−2)の2−ヒドロキシエチルメタクリレート78.8重量部を2−ヒドロキシエチルアクリルアミド69.7重量部、メチルエチルケトン704重量部を668重量部としたこと以外は(A−2)と同様に実施した。得られたポリマー(A−4)の重量平均分子量は21000であった。
【0033】
(A−5)
(A−1)のプレポリマーの共重合モノマーをイソボルニルメタクリレート100重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート58.5重量部とし、メチルエチルケトン610
重量部を634重量部、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート97.8重量部を69.8重量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.2重量部を0.1重量部、ジブチルスズジラウレート2重量部を1.4重量部としたこと以外は(A−1)と同様に実施した。得られたポリマー(A−5)の重量平均分子量は39000であった。
【0034】
[試験片の作成]
実施例1
(A)成分として(A−1)のポリマー溶液70重量部(ポリマー固形分として49重量部)、(B)成分としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ダイセル・サイテック(株)製:DPHA)50重量部、(D)成分としてメチルエチルケトン30重量部、(E)成分としてダロキュア1173(チバ・ジャパン(株)製)3重量部を撹拌混合し、紫外線硬化型ハードコート組成物を調整した。この時に相溶性を目視により確認した。この組成物を、厚さ100μmの易接着PETフィルムに対して乾燥後の膜厚が10μmになるようにバーコーターを用いて塗工した。
【0035】
次に塗工した基材を加熱することにより有機溶剤を揮発させた後、高圧水銀灯型の紫外線照射機OHD−320M((株)オーク製作所製)を用いて塗膜を硬化させて試験片を作成した。
【0036】
実施例2〜6、比較例1〜3
表1に示す配合割合で紫外線硬化型ハードコート組成物を調整した以外は、実施例1と同様にして試験片を作成した。
【0037】
このようにして得られた実施例1〜6、比較例1〜3の試験片の耐カール性、鉛筆硬度、密着性、耐擦傷性、耐湿性に関して評価を実施した。結果を表1に示す。
【表1】

(*1)シペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(ダイセル・サイテック(株)製)
(*2)アクリロイルモルホリン((株)興人製)
(*3)ウレタンアクリレート
(ダイセル・サイテック(株)製:EBECRYL220)
(*4)メチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製)
(*5)チバ・ジャパン(株)製
【0038】
(1)相溶性
調整した紫外線硬化型ハードコート組成物を目視により確認した。
○:無色透明で不溶解物なし
×:不溶解物、白濁が見られる
【0039】
(2)耐カール性の評価
ハードコート処理したフィルムを10cm角に切り取り、フィルムの四隅の浮き上がりを測定した。
○:10cm以下の浮き上がり
△:20cm以下の浮き上がり
×:大きくカールする
【0040】
(3)鉛筆硬度の評価
JIS K 5400 8.4 手かき法(1990年版)に基づき評価した。
【0041】
(4)密着性の評価
JIS K 5400 8.5 碁盤目テープ法(1990年版)に基づき1mm角のます目を100個作成し、セロハンテープを貼り付け、一気に剥がした時に基材側に塗膜が残ったます目の数を数えて評価した。
【0042】
(5)耐擦傷性の評価
学振型摩擦堅牢度試験機(テスター産業(株)製)に#0000のスチールウールを取り付け、500g/cmの荷重をかけながら10往復させ、傷の発生の有無を評価した。
◎:膜の剥離や傷の発生がほとんど認められない
○:膜にわずかな細い傷が認められる
△:膜に傷が発生するが基材より少ない
×:基材と同等もしくはそれ以上の傷が発生する
【0043】
(6)耐湿性の評価
JIS K 5400 9.2 固定式(1990年版)に基づき評価した。50℃、95%雰囲気下で、72時間放置後の密着性と外観を評価した。密着性に関しては、前記方法と同様に実施した。外観に関しては次のように評価した。
◎:変色、剥離などの変化なし
○:僅かに変色が見られるのみ
△:膜の一部が剥離する
×:膜が完全に剥離または溶解する
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の紫外線硬化型ハードコート組成物を用いることで、紫外線硬化時の体積収縮を抑制でき、プラスチック基材との優れた密着性や耐カール性、硬度、耐擦傷性を有する塗膜を形成することができ、家電機器、電子機器、工業用資材などに利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(A)(a1)N置換(メタ)アクリルアミドモノマー、(a2)水酸基を有する(メタ)アクリルアミドモノマー又は(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(a3)(メタ)アクリル酸脂環式炭化水素エステルモノマーからなる共重合プレポリマー及び(a4)水酸基と反応し得る官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを反応させることにより得ることができるオリゴマー又はポリマー、並びに(B)分子内に2個以上の重合性官能基を有する多官能モノマーを1種類以上、を含有する紫外線硬化型ハードコート組成物。
【請求項2】
(A)成分及び(B)成分の合計量100重量部のうち、(A)成分が10〜70重量部の範囲である請求項1記載の紫外線硬化型ハードコート組成物。
【請求項3】
(C)単官能モノマーを(A)成分及び(B)成分の合計量100重量部に対して50重量部以下の範囲で添加した請求項1〜2のいずれかに記載の紫外線硬化型ハードコート組成物。
【請求項4】
(D)有機溶剤を(A)成分及び(B)成分の合計量100重量部に対して100重量部以下の範囲で添加した請求項1〜3のいずれかに記載の紫外線硬化型ハードコート組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の紫外線硬化型ハードコート組成物に(E)光重合開始剤を添加して基材上に塗布し、紫外線を照射して硬化させたことを特徴とするハードコート層。
【請求項6】
請求項5記載のハードコート層で被覆された基材。

【公開番号】特開2012−219133(P2012−219133A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84450(P2011−84450)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000142252)株式会社興人 (182)
【Fターム(参考)】