説明

細胞表面抗原に対する抗体取得とその抗原同定

【課題】細胞表面抗原に結合する抗体のスクリーニング方法の提供。
【解決手段】次の工程を含む、細胞表面抗原に結合する抗体の取得方法、(1)細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画と抗体ライブラリーとを25℃での比誘電率が80以上の水性媒体中で接触させる工程、(2)(1)の水性媒体と界面を介して接触する25℃での比誘電率が20以下1以上で油性の低極性溶媒とからなる2相系を調製する工程、(3)細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を低極性溶媒に移動させる工程、および(4)低極性溶媒に移動した細胞、またはその分画に結合している抗体を、細胞表面抗原に結合する抗体として回収する工程。


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【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程を含む、細胞表面抗原に結合する抗体の取得方法、
(1)細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画と抗体ライブラリーとを25℃での比誘電率が80以上の水性媒体中で接触させる工程、
(2)(1)の水性媒体と界面を介して接触する25℃での比誘電率が20以下1以上で油性の低極性溶媒とからなる2相系を調製する工程、
(3)細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を低極性溶媒に移動させる工程、および
(4)低極性溶媒に移動した細胞、またはその分画に結合している抗体を、細胞表面抗原に結合する抗体として回収する工程。
【請求項2】
工程(3)と(4)の間に、付加的に次の工程(3-a)から(3-c)を含む、請求項1に記載の方法、
(3-a)(3)において、低極性溶媒に移動された細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を、水性媒体に移動させる工程、
(3-b)(3-a)の水性媒体と界面を介して接触する低極性溶媒とからなる2相系を調製する工程、および
(3-c)細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を低極性溶媒に移動させる工程。
【請求項3】
工程(3-a)における水性媒体が、(1)の水性媒体とは異なる水性媒体に接触させる工程である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(3-b)における低極性溶媒が、(2)の低極性溶媒と共通である請求項2に記載の方法。
【請求項5】
工程(3-b)における低極性溶媒が、(2)の低極性溶媒と置き換えられた異なる低極性溶媒である請求項2に記載の方法。
【請求項6】
(3-c)において低極性溶媒に移動された細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を、(3)において低極性溶媒に移動された細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画として、前記工程(3-a)から(3-c)を繰り返すことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(3-a)から(3-c)を、1〜5回繰り返す、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(3-a)から(3-c)を、2〜3回繰り返す、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
抗体ライブラリーが抗体の可変領域を提示したファージライブラリーである請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程(4)において回収された抗体を新たな抗体ライブラリーとして工程(1)-(3)を繰り返す工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞の分画が、細胞表面抗原の可溶性分画である請求項1に記載の方法。
【請求項12】
細胞表面抗原の可溶性分画を次の工程によって得ることを特徴とする請求項11に記載の方法、
(1) 抗体を取得すべき抗原を発現している細胞を破砕する工程、
(2) 工程(1)の破砕物から細胞膜分画を回収する工程、
(3) 細胞膜分画を界面活性剤混合液によって可溶化する工程、および
(4) 工程(3)の上清を細胞表面抗原の可溶性分画として回収する工程。
【請求項13】
界面活性剤混合液を構成する界面活性剤が、非イオン性界面活性剤と両性界面活性剤のいずれか、または両方である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
非イオン系界面活性剤が、NP-40、Triton X100、n-Dodecyl β-D-maltoside、n-Octyl β-D-glucoside、 n-Octyl β-D-maltopyranoside、およびn-Decyl β-D-maltosideからなる群から選択される少なくとも1つの化合物である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
両性界面活性剤が、Deoxycholic acidである請求項13に記載の方法。
【請求項16】
細胞表面抗原の可溶性分画が固相に結合されている請求項11に記載の方法。
【請求項17】
固相が磁性粒子である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞が、固相に固定化された細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項19】
固相がガラスビーズである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ガラスビーズがコラーゲン処理されたガラスビーズである請求項19に記載の方法。
【請求項21】
固相に固定化された細胞が、前記細胞をコラーゲン処理されたガラスビーズとともに培養することによって得られた細胞である請求項20に記載の方法。
【請求項22】
水性媒体が、不活性蛋白質を添加した細胞培養液または緩衝液である請求項1に記載の方法。
【請求項23】
不活性蛋白質がウシ血清アルブミンである請求項22に記載の方法。
【請求項24】
細胞培養液が、MEM(Minimum EssentialMedium)、 Basal Medium, Eagle(BME)、 Eagle's Minimum Essential Medium(EMEM)、 Dulbecco's Modified Eagle's Medium(DME)、RPMI-1640 Medium(RPMI1640) 、およびES Medium(ES)からなる群から選択されるいずれかの細胞培養液である請求項22に記載の方法。
【請求項25】
低極性溶媒が、シクロヘキサンおよびジフェニルエーテルを含む混合溶媒である請求項1に記載の方法。
【請求項26】
シクロヘキサンとジフェニルエーテルの1:9の混合溶媒である請求項25に記載の方法。
【請求項27】
低極性溶媒が、次のaおよびbに記載の溶媒を含む混合溶媒であり、かつ溶媒密度(d)1.0-1.09を有することを特徴とする請求項1に記載の方法、
a:ヘキサン、シクロヘキサン、イソオクタン、およびジイソプロピルエーテルからなる
群から選択される少なくとも1つの溶媒、
b:フタル酸ジブチル、1,1,1-トリクロロエタン、およびジフェニルエーテルからなる群
から選択される少なくとも1つの溶媒。
【請求項28】
水性媒体として、不活性蛋白質を添加した細胞培養液または緩衝液を組み合わせることを特徴とする請求項25または請求項27に記載の方法。
【請求項29】
以下の工程を含む、抗体の可変領域を提示したファージライブラリーから目的とする細胞の表面抗原に結合する活性を有するファージクローンをスクリーニングするための方法において、ファージライブラリーと前記抗原とを25℃での比誘電率が80以上の水性媒体中で接触させた後に、25℃での比誘電率が20以下1以上で油性の低極性溶媒相に移動させることによって抗原抗体複合体の水素結合を安定化させる工程を含む方法、
(1)抗原抗体反応が可能な条件下でファージライブラリーおよび、目的とする抗原とを接触させる工程、および
(2)前記抗原に結合したファージクローンを回収する工程。
【請求項30】
前記細胞表面抗原が、細胞、または細胞表面抗原の可溶性分画を固定した固相である請求項29に記載の方法。
【請求項31】
水性媒体が血清アルブミンを含むミニマムエッセンシャルメディウムである請求項29に記載の方法。
【請求項32】
低極性溶媒が以下のa-dからなる群から選択されたいずれかの溶媒である請求項29に記載の方法、
a.ジフェニルエーテルと1,1,1-トリクロロエタンとヘキサンの混合溶媒、
b.イソプロピルエーテルと1,1,1-トリクロロエタンとヘキサンの混合溶媒、および
c.フタル酸ジブチルとシクロヘキサンの混合溶媒、
d.ジフェニルエーテルとシクロヘキサンの混合溶媒。
【請求項33】
極性媒体として血清アルブミンを含むミニマムエッセンシャルメディウムを組み合わせることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を保持した固相と抗体ライブラリーを接触させ、細胞表面抗原に結合する抗体を回収する工程を含む、細胞表面抗原に結合する抗体の取得方法において、以下のa)〜c)のいずれかの工程を含む方法であって、抗原マスキング剤と抗体マスキング剤がそれぞれ以下に定義される成分を含み、
抗原マスキング剤:取得を望まない抗体を含む、
抗体マスキング剤:取得を望まない抗体が認識する遊離の抗原を含む、
a) 細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を保持した固相と抗体ライブラリーとが、抗原マスキング剤または抗体マスキング剤のいずれかの共存下で接触させられる、
b)抗体ライブラリーを抗体マスキング剤との接触後に細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を保持した固相と接触させる、または
c)細胞表面抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を保持した固相を抗原マスキ
ング剤と接触後に抗体ライブラリーと接触させる、
更に次の工程を含む、抗体の取得方法、
(1)前記細胞、またはその分画を保持した固相と抗体ライブラリーを含む25℃での比誘電率が80以上の水性媒体と、この水性媒体と接触した25℃での比誘電率が20以下1以上で油性の低極性溶媒で構成される2相系を調製する工程、
(2)標的抗原を細胞膜上に発現した細胞、またはその分画を保持した固相を低極性溶媒相に移動させる工程、および
(3)低極性溶媒相に移動した細胞、またはその分画を保持した固相に結合している抗体を、細胞表面抗原に結合する抗体として回収する工程。
【請求項35】
取得を目的とする抗体が認識する抗原が癌細胞の表面抗原であり、取得を望まない抗体が認識する抗原が正常細胞の表面抗原である請求項34に記載の方法。
【請求項36】
正常細胞と前記癌細胞が由来する組織が共通である請求項35に記載の方法。
【請求項37】
取得を目的とする抗体が認識する抗原が、特定のステージの癌細胞の表面抗原であり、取得を望まない抗体が認識する抗原が前記ステージとは異なるステージの同種の癌細胞の表面抗原である請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記特定のステージと、特定のステージとは異なるステージのいずれかが、進行癌であり、他方が初期癌である請求項37に記載の方法。
【請求項39】
取得を望まない抗体が、前記細胞表面抗原に結合する抗体であり、目的とする抗体が、取得を望まない抗体が認識する抗原または抗原決定基とは異なる抗原または抗原決定基に結合する抗体である請求項34に記載の方法。
【請求項40】
取得を望まない抗体が、前記細胞表面抗原に結合する結合活性によって予め単離された抗体である請求項39に記載の方法。
【請求項41】
請求項1、または請求項34のいずれかの方法によって得ることができる抗体またはその可変領域を含む断片。
【請求項42】
請求項1、または請求項34のいずれかの方法によって得ることができる抗体の可変領域をコードするポリヌクレオチド。
【請求項43】
次の工程を含む、特定の細胞の表面抗原に結合し、同じ条件で類似の細胞に接触させたときに類似の細胞には結合しない抗体のスクリーニング方法、
(1)請求項1または請求項34に記載の方法によって選択された抗体を、前記特定の細胞またはその分画を保持した固相、および前記類似の細胞またはその分画を保持した固相に共通の条件下で接触させる工程、および
(2)前記特定の細胞またはその分画を保持した固相に結合し、前記類似の細胞またはその分画を保持した固相に結合しなかった抗体を選択する工程。
【請求項44】
特定の細胞が癌細胞であり、類似する細胞が当該癌細胞と同じ組織の正常細胞である請求項43に記載の方法。
【請求項45】
特定の細胞があるステージの癌細胞であり、類似する細胞が別のステージの同種の癌細胞である請求項43に記載の方法。
【請求項46】
工程(1)が、前記特定の細胞および前記類似する細胞の細胞固定試料に前記抗体を接触させる工程を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
工程(1)が、前記特定の細胞の抗原分画を保持した固相、および前記類似する細胞の抗原分画を保持した固相に前記抗体を接触させる工程を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記細胞、または細胞の抗原分画を保持した固相に結合した抗体を、その抗体を認識する標識抗体で検出する工程を含む、請求項37または請求項38に記載の方法。
【請求項49】
前記抗体ライブラリーが少なくとも109種類の抗体を含む抗体ライブラリーである請求項1または請求項34に記載の方法。
【請求項50】
前記抗体ライブラリーが、少なくとも1010種類の抗体を含む抗体ライブラリーである請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記抗体ライブラリーが、少なくとも1011種類の抗体を含む抗体ライブラリーである請求項50に記載の方法。
【請求項52】
次の工程を含む請求項41に記載の抗体が結合する抗原の同定方法、
(1)請求項41に記載の抗体と当該抗体の単離に用いた細胞表面抗原とを接触させる工程、
(2)前記抗体に結合した抗原を回収する工程、および
(3)回収された抗原を同定する工程。
【請求項53】
付加的に、工程(3)で同定された抗原のアミノ酸配列を決定する工程を含む請求項52に記載の方法。
【請求項54】
抗原を消化し、消化生成物を構成するアミノ酸を同定する工程を含む請求項53に記載の方法。
【請求項55】
蛋白質分解酵素によって、抗原を消化する工程を含む請求項54に記載の方法。
【請求項56】
蛋白質分解酵素がセリンプロテアーゼである請求項55に記載の方法。
【請求項57】
セリンプロテアーゼがトリプシンである請求項56に記載の方法。
【請求項58】
消化生成物を構成するアミノ酸を、質量分析によって同定する工程を含む請求項54に記載の方法。
【請求項59】
請求項52に記載の方法によって同定された抗原。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−239784(P2011−239784A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157433(P2011−157433)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【分割の表示】特願2004−349783(P2004−349783)の分割
【原出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(503196776)株式会社ペルセウスプロテオミクス (25)
【Fターム(参考)】