説明

給紙装置および印刷機

【課題】給紙装置の枚葉紙がずれた状態で積載されていたとしても、枚葉紙を搬送方向に確実に揃えることができ、適正な給紙ができる給紙装置および印刷機を提供することをその課題とする。
【解決手段】フィーダーヘッド60にはネジ部材62が回転可能で、軸方向に移動不能に設けられている。ネジ部材62は昇降ブロック61に螺合している。昇降ブロック61はフィーダーヘッド60に上下昇降可能、回転不能に設けられており、ネジ部材62の回転により上下方向へ昇降する。昇降ブロック61にはテンションプーリ63が固定されている。テンションプーリ63は後側チェーン53に接離可能に設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機に搭載され、枚葉紙の積載されたパレットが載置される給紙装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷機に搭載される給紙装置には枚葉紙の積載されたパレットが載置され、この給紙装置からフィーダーボードを介して印刷機内に枚葉紙が供給される。給紙装置に積載された枚葉紙はその上端から一枚ずつフィーダーボードに供給される。フィーダーボードに供給される枚葉紙の上端位置を一定高さに保つため、給紙装置の給紙台は、枚葉紙が減少するのに伴って、昇降チェーンの巻上げにより段階的に上昇するよう構成されている。また、給紙装置には、上端の枚葉紙を吸引保持してフィーダーボードへ供給するサッカーを備えたフィーダーヘッドが設けられている。このフィーダーヘッドには高さ位置検知片が揺動可能に設けられている。高さ位置検知片は枚葉紙の上端位置を検知するために、枚葉紙の搬送方向後端部上面に、枚葉紙の上方から当接可能に構成される。高さ位置検知片はフィーダーヘッドに常時下方に付勢されており、枚葉紙の減少に伴い下方へ揺動することにより、検知信号を発生する。よって、この検知信号により昇降チェーンの巻上げ量が制御される。
【0003】
ここで、給紙装置への枚葉紙の載置については、枚葉紙の積載されたパレットがハンドリフト等により運ばれることにより行われる。枚葉紙の積載されたパレットは数百キロになることもあり、枚葉紙を適正に揃えて給紙装置に載置するのは容易ではない。このため、枚葉紙の積載される給紙装置の給紙台を上板と下板に分割し、上板を下板に対して枚葉紙の搬送方向前側にスライド移動させ、枚葉紙を搬送方向の位置決めとなる前当てに圧接させる技術が用いられている。例えば、特許文献1にはこのような給紙装置の開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−37238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の給紙装置によると、枚葉紙を搬送方向にある程度揃えることができるものの、対応できない場合がある。図4(a)は給紙装置100の概略側面図であるが、給紙台101に植設された4本のボルト102には、枚葉紙の幅方向(搬送方向に直行する方向)に2箇所設けられた後側チェーン103と、同じく幅方向に2箇所設けられた前側チェーン104の一端が固定されている。後側チェーン103及び前側チェーン104の他端は図示しないモータに連係されており、モータの正逆駆動によって給紙台101は4本のチェーンで昇降するよう構成される。
【0006】
給紙台101には枚葉紙Pが積載されたパレット105が載置されている。図4(a)において、枚葉紙Pの上部前端はフロントガイド(前当て)106に当接しているものの、図示の通り、搬送方向の前後に波打った状態でずれて積載されているので、いくら給紙台101を前方へスライド移動させても高さ方向中央の枚葉紙Pは後方にずれており、適正な給紙ができないという問題がある。
【0007】
また、図4(b)は同じく給紙装置100の概略側面図であるが、枚葉紙Pの後部が垂れ下がった状態となっている。これは、搬送方向前側から中央部に印刷された枚葉紙の裏面を印刷するために載置された枚葉紙Pに起こりやすい現象であり、印刷部分のインキの膜厚によりこのような状態となる。この場合、枚葉紙Pの後部が垂れ下がっていることにより、前述の高さ位置検知片が大きく下方に揺動して検知信号を発生し、給紙台101を必要以上に上昇させてしまう。よって枚葉紙の上端位置が適正に保たれず、複数の枚葉紙Pが一気にフィーダーボードに搬送されてしまう可能性があり、改善の余地があった。
【0008】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、給紙装置の枚葉紙がずれた状態で積載されていたとしても、枚葉紙を搬送方向に確実に揃えることができ、適正な給紙が行える給紙装置および印刷機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するため、枚葉紙Pを昇降可能に積載し、上端の枚葉紙Pから給紙搬送可能な給紙装置20において、枚葉紙Pを搬送方向に前傾させる前傾手段57、61、62、63を設けたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る給紙装置20は、枚葉紙Pが積載される給紙台51と、搬送方向前後に設けられ、該給紙台51を昇降可能に保持する昇降手段53、54とを備え、該前傾手段57、61、62、63は該昇降手段53、54による該給紙台51の前後の保持高さを変更することにより枚葉紙Pを前傾させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る給紙装置20は、該前傾手段57、61、62、63が枚葉紙Pの前傾具合を調整可能であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る印刷機は、請求項1〜3記載の給紙装置20と、該給紙装置20から給紙される枚葉紙Pを搬送するフィーダーボード5と、該フィーダーボード5から搬送される枚葉紙Pを印刷する印刷部30と、該印刷部30により印刷された印刷物Qを排紙する排紙部40と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るによれば、枚葉紙を搬送方向に確実に揃え、適正な給紙を行うことができる給紙装置を得ることが可能となる。
【0014】
また、簡単な構成によって枚葉紙を搬送方向に確実に揃え、適正な給紙を行うことができる給紙装置を得ることが可能となる。
【0015】
また、枚葉紙Pの揃え具合を調整でき、適正な給紙を行うことができる給紙装置を得ることが可能となる。
【0016】
また、前記のような給紙装置を備えた印刷機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る給紙装置を備えた印刷機の一実施形態の概略構成を示す図である。
【図2】本発明に係る給紙装置給紙装置を模式的に示す概略側面図である。
【図3】本発明に係る他の実施例の給紙装置を模式的に示す概略側面図である。
【図4】従来の給紙装置を模式的に示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係るインキ供給装置を備えた印刷機の一実施形態の概略構成を示す図である。なお、図1において、実質的に同様の構成、作用を有する部品には同じ参照符号を付してある。
【0019】
図1に示す印刷機は、給紙装置20、印刷部30及び排紙部40を備えている。給紙装置20は、フィーダーボード5を介して枚葉紙P(ここでは印刷用紙)を印刷部30に供給することができる。印刷部30は、給紙装置20から供給される枚葉紙Pを印刷することができ、複数の印刷ユニット(ここでは4台の印刷ユニット30a〜30d)を備えている。また、排紙部40は、印刷部30にて印刷された印刷物Qを排紙することができる。この印刷機では、給紙装置20から枚葉紙Pが印刷部30に供給され、当該供給された枚葉紙Pが印刷部30における各印刷ユニット30a〜30dにて印刷された後、当該印刷された印刷物Qが排紙部40にて排紙される。
【0020】
給紙装置20は複数の枚葉紙Pを収容することができるものであり、収容される枚葉紙Pの上端が位置する付近にメインフィードローラ21を備える。そして上端の枚葉紙Pから1枚ずつ引き出し、フィーダーボード5を介して当該引き出された枚葉紙Pを印刷部30に向けて矢印Z方向に搬送することができるものである。これにより、枚葉紙Pを印刷部30に供給することができる。給紙装置20の詳細は後述する。
【0021】
印刷部30の各印刷ユニット30a〜30dは、それぞれ版胴1、ゴム胴2及び圧胴3を主要構成要素の一組として構成されるものである。印刷ユニット30aにおける4aは給紙胴であり、印刷ユニット30b〜30dにおける4はいずれも渡し胴である。
【0022】
各印刷ユニット30a〜30dにおいて、版胴1には印刷用の版(図示を省略)が配設される。この版には図示しないインキローラ群及び給水装置からインキ及び水が供給され、版に従ってインキがゴム胴2に転写される。そしてゴム胴2に転写されたインキがゴム胴2及び圧胴3に挟持されつつ搬送されてくる枚葉紙Pにさらに転写される。これにより、給紙装置20から供給される枚葉紙Pに対してそれぞれに設けられた版に対応して印刷を行うことができる。
【0023】
印刷ユニット30a〜30dは、それぞれブラック色(K)、シアン色(C)、マゼンタ色(M)、イエロー色(Y)の4色の印刷用インキにより、枚葉紙Pにカラー印刷画像を印刷する。かくして印刷部30では、枚葉紙Pに、互いに異なる複数の基本色(ここではブラック色(K)、シアン色(C)、マゼンタ色(M)、イエロー色(Y)の4色)で構成されるカラー印刷画像が印刷される。
【0024】
排紙部40は、搬送部41及び収容部42を備えている。この排紙部40では、印刷ユニット30dの圧胴3にて搬送されてくる印刷物Qは、先端部が搬送部41の保持部(図示省略)に保持され、搬送部41の図中略下側面に沿って搬送されて収容部42に送られる。収容部42は、搬送部41にて搬送されてきた印刷物Qを収容することができる。
【0025】
図2において、給紙装置20の給紙台51に植設された4本のボルト52には、枚葉紙の幅方向(搬送方向に直行する方向)に2箇所設けられた後側チェーン53と、同じく幅方向に2箇所設けられた前側チェーン54の一端が固定されている。後側チェーン53はスプロケット57、58を介して、前側チェーン54はスプロケット58を介して、それぞれ他端が図示しないモータに連係されており、モータの正逆駆動によって給紙台51は4本のチェーンで昇降するよう構成される。
【0026】
給紙台51には枚葉紙Pが積載されたパレット55が載置されている。また、給紙台51の搬送方向前方にはフロントガイド56が設けられており、枚葉紙Pの前端がこのフロントガイド56に当接することにより、枚葉紙Pの搬送方向の位置決めが行われる。
【0027】
給紙装置20には、給紙台51上の上端の枚葉紙を吸引保持してフィーダーボード5へ供給する図示しないサッカーを備えたフィーダーヘッド60が設けられている。このフィーダーヘッド60には枚葉紙Pの搬送方向後端部上面に、枚葉紙Pの上方から当接可能な図示しない高さ位置検知片が揺動可能に設けられている。高さ位置検知片はフィーダーヘッド60に常時下方に付勢されており、枚葉紙Pの減少に伴い下方へ揺動することにより、検知信号を発生する。よって、この検知信号によりチェーン53、54の巻上げ量が制御され、枚葉紙Pの上端位置が一定に保たれる。
【0028】
フィーダーヘッド60は図示の通り、下方に膨出しており、ネジ部材62が回転可能で、軸方向に移動不能に設けられている。ネジ部材62は昇降ブロック61に螺合している。昇降ブロック61はフィーダーヘッド60に上下昇降可能、回転不能に設けられており、ネジ部材62の回転により上下方向へ昇降する。昇降ブロック61にはテンションプーリ63が固定されている。テンションプーリ63は後側チェーン53に接離可能に設置される。
【0029】
本実施形態の作用について説明する。作業者は給紙台51に枚葉紙Pが積載されたパレット50を載置する。そしてネジ部材62を回転させ、昇降ブロック61及びテンションプーリ63を下降させる。下降したテンションプーリ63は後側チェーン53を上方から当接、押圧し、後側チェーン53は図2中二点鎖線のような状態となる。すると、給紙台51の後方が上昇し、給紙台51及び枚葉紙Pは搬送方向に前傾した前傾姿勢をとることとなる。すると枚葉紙Pがフロントガイド56に当接し、枚葉紙Pの搬送方向での位置決めが行われる。ネジ部材62の回転により、この前傾具合は任意に調整可能である。なお、図2では給紙台51の前傾した状態のみを実線で示している。
【0030】
この状態で印刷を開始すると、枚葉紙Pはその上端から一枚ずつフィーダーヘッド60の図示しないサッカーによりフィーダーボード5上へ搬送されていく。枚葉紙Pはフロントガイド56に当接することにより適正に給紙されることとなる。図4(a)に示すように、枚葉紙Pが前後方向に波打った状態で積載されている場合、給紙台51を前傾させたとしても、枚葉紙Pの自重もあって、高さ方向中央付近より下方の枚葉紙Pはすぐにフロントガイド56に当接することはない。しかし、上端付近の枚葉紙Pは自重が大きくかからないので、給紙台51の前傾によりフロントガイド56に当接し、フィーダーボード5への搬送時には適正に給紙を行うことができる。
【0031】
枚葉紙Pを前傾させるにあたって、給紙台51を別駆動手段により直接前傾させてもよいが、本実施形態のように、昇降手段である後側チェーン53を、前傾手段である昇降ブロック61、ネジ部材62、テンションプーリ63の動作に連動させて給紙台51及び枚葉紙Pを前傾させる構成の方が、簡易な構成で枚葉紙Pの前傾及び適正な給紙を行うことが可能となる。
【0032】
尚、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、図2の実施形態では、後側チェーン53をテンションプーリ63により押圧するようにしていたが、図3に示すように、後側のスプロケット57を直接引き上げて給紙台51及び枚葉紙Pを前傾させる構成としてもよい。この場合、図2の実施例と同様に、フィーダーヘッド60に設けられたネジ部材62に螺合し、スプロケット57に固定された昇降ブロックが必要となる。なお、図3ではフィーダーヘッド60、昇降ブロック61の図示を省略している。
【0033】
また、前述の実施例においては、給紙台51を前方に傾斜させて枚葉紙Pを搬送方向に位置決めするよう構成していたが、これに限らず、例えば給紙台51を搬送方向前後に分割構成し、給紙台51の後側のみを上昇させることにより、枚葉紙Pを前傾させるようにしてもよい。
【0034】
また、前述の実施例においては、給紙台51の後方を持ち上げることにより、枚葉紙Pを前傾させていたが、給紙台51の前方を下げることにより、枚葉紙Pを前傾させることも可能である。
【0035】
また、前述の実施形態では、枚葉オフセット印刷機であったが、これに限定されず、枚葉紙の給紙装置を使用する印刷機であればグラビア印刷機やフレキソ印刷機のようなものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る給紙装置および印刷機は、枚葉紙を給紙搬送する給紙装置及び印刷機において極めて有用である。
【符号の説明】
【0037】
20…給紙装置、21…メインフィードローラ、51…給紙台、52…ボルト、53…後側チェーン、54…前側チェーン、55…パレット、56…フロントガイド、57…スプロケット、58…スプロケット、60…フィーダーヘッド、61…昇降ブロック、62…ネジ部材、63…テンションプーリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枚葉紙を昇降可能に積載し、上端の枚葉紙から給紙搬送可能な給紙装置において、枚葉紙を搬送方向に前傾させる前傾手段を設けたことを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
該給紙装置は、枚葉紙が積載される給紙台と、搬送方向前後に設けられ、該給紙台を昇降可能に保持する昇降手段とを備え、該前傾手段は該昇降手段による該給紙台の前後の保持高さを変更することにより枚葉紙を前傾させることを特徴とする請求項1記載の給紙装置。
【請求項3】
該前傾手段が枚葉紙の前傾具合を調整可能であることを特徴とする請求項1又は2記載の給紙装置。
【請求項4】
請求項1〜3記載の給紙装置と、該給紙装置から給紙される枚葉紙を搬送するフィーダーボードと、該フィーダーボードから搬送される枚葉紙を印刷する印刷部と、該印刷部により印刷された印刷物を排紙する排紙部と、を備えたことを特徴とする印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−210993(P2012−210993A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76997(P2011−76997)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)
【Fターム(参考)】