説明

絶縁型コンバータ

【課題】トランスを用いずに入・出力間の電気的絶縁を図り、同時により小型化を図れる絶縁型コンバータを提供する。
【解決手段】誘電体2を間にして第1対角線6a,6b上に入力電極3a,4b,3c,4dをそれぞれ平行配置し、第1対角線6a,6bと交差する第2対角線7a,7b上に出力電極3b,4a,3d,4cを平行配置する。入力電極3a,4b,3c,4dに交流電力を印加して上記第1対角線6a,6b上周囲の誘電体2内に電界発生に伴う分極を発生させ、これにより両出力電極3b,4a,3d,4c上に交流電力の半サイクルごとに発生する正負電荷に基づき、当該両出力電極3b,4a,3d,4cから負荷9へ電力を出力する構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力側と出力側とを絶縁して入力側から出力側に電力を取り出す絶縁型コンバータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
絶縁型コンバータとして、トランス一次側に印加された入力電圧をスイッチングして印加することで当該トランス二次側に誘起する出力電圧を整流平滑して直流電圧を得る一方、トランスで入力側と出力側との電気的絶縁を図るものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−015927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような絶縁型コンバータにおいては、特許文献1等に開示されているごとく、その小型化の促進が困難であるとされる。これは従来の絶縁型コンバータでは入力側と出力側との絶縁にトランスを用いており、巻線、巻枠、コイルボビン等のトランス構成部品により構成される磁気回路は、その物理的サイズにおいて小型化することに限界があるからである。しかしながら、入力側と出力側との絶縁を採りつつ用途に応じてより小型化が可能な絶縁型コンバータの実現が望まれている。
【0005】
本発明では、上記した要望に鑑みてなされた絶縁型コンバータであって、絶縁型コンバータにおいて小型化の限界をもたらすトランスを用いずに入力側と出力側との電気的絶縁を効果的に高信頼性で採ることができる一方で、用途に適したサイズに小型化することを可能とすることを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による絶縁型コンバータは、第1対角線上に平行配置された少なくとも2つの入力電極と、上記第1対角線と交差する第2対角線上に平行配置された少なくとも2つの出力電極と、これら電極間に共通に介装された誘電体と、を具備し、上記両入力電極に交流電力を印加して上記第1対角線上周囲の誘電体内に分極を発生させ、これにより上記両出力電極に交流電力の半サイクルごと交互の正負電荷を発生させることで、当該両出力電極から電力を出力することが可能となっていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明では、第1対角線上の一対の入力電極間に交流入力を印加すると、当該一対の入力電極間で第1対角線上の周囲の誘電体内に分極が発生する。そして、第1対角線上の入力電極に対して第2対角線上の出力電極は、第1対角線と交差する第2対角線上に配置されているので、上記分極に伴い正負電荷が一部移動し、これにより電力を出力することができる。
【0008】
このように本発明の絶縁型コンバータ構成では、入力側と出力側とをトランスではなく誘電体で絶縁した構成となっているので、トランス構成の絶縁型コンバータよりもより容易に小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、絶縁型コンバータにおいて、誘電体を用いて出力電極から電力の出力を可能とし、かつ、入力側と出力側との絶縁を誘電体により採るので、トランスとは異なって小型化への限界が無く、当該小型化を容易に促進することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1(a)は本発明の実施の形態にかかる絶縁型コンバータを側面から見た概略の構成図、図1(b)は絶縁型コンバータの外観を示す図である。
【図2】図2は図1の絶縁型コンバータにおいて入力電極間での電気力線の発生を説明するための図である。
【図3】図3は図1の絶縁型コンバータにおいて交流電源の一半サイクルでの分極を説明するための図である。
【図4】図4は図1の絶縁型コンバータにおいて交流電源の他半サイクルでの分極を説明するための図である。
【図5】図5は入力電極と出力電極との配置の変形例を示す図である。
【図6】図6は誘電体上の入・出力電極の配置の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る絶縁型コンバータを説明する。まず、図1(a)(b)を参照して、実施の形態の絶縁型コンバータを説明する。図1(a)は、本発明の実施の形態にかかる絶縁型コンバータを側面から見た概略の構成を示し、図1(b)は絶縁型コンバータの外観を示す。絶縁型コンバータ1は、誘電体2を備える。この誘電体2は、所要厚さの長方形形状をなしている。
【0012】
誘電体2の一方の表面2aには、当該誘電体長手方向に沿い、板状の電極3a,3b,3c,3dが一定間隔で一列状態に形成され、また、誘電体2の他方の表面2bにも、当該誘電体長手方向に沿い、板状の電極4a,4b,4c,4dが一定間隔で一列状態に形成されている。これら電極は同面積、同形状である。
【0013】
誘電体2における互いに平行な面である両面2a,2bにおいて、一方表面2a側の電極3aと他方表面2b側の電極4bとの組、一方表面2a側の電極3cと他方表面2b側の電極4dとの組が、それぞれ入力電極組を構成する。
【0014】
同様に一方表面2a側の電極3bと他方表面2b側の電極4aとの組、一方表面2a側の電極3dと他方表面2b側の電極4cとの組が、それぞれ出力電極組を構成する。
【0015】
誘電体2の一方表面2aにおいては、入力電極3a,3c、出力電極3b,3dは誘電体長手方向交互に配置され、誘電体2の他方表面2bにおいては、入力電極4b,4d、出力電極4a,4cは誘電体長手方向交互に配置されている。
【0016】
誘電体1の各面2a,2bそれぞれの面上を通る平行な2線5a,5bを想定し、この平行な2線5a,5bを斜めに横切る線をそれぞれ第1対角線6a,6bとする。入力電極3a,4bの組、入力電極3c,4dの組は、第1対角線6a,6bを通る上記平行線5a,5b上、すなわち、誘電体1の各面2a,2b上に平行平板状に対向している。入力電極3a,4bの組、入力電極3c,4dの組はそれぞれ、交流電源8に並列接続されている。
【0017】
また、出力電極3b,4aの組、出力電極3d,4cの組は、上記平行線5a,5bに平行で第1対角線6a,6bと交差する第2対角線7a,7b上において互いに平行平板状に対向している。出力電極3b,4aの組、出力電極3d,4cの組は、それぞれ、負荷9に並列接続されている。
【0018】
以上の構成を備えた絶縁型コンバータ1において、入力電極3a,4bの組、入力電極3c,4dの組それぞれに交流電源8を印加すると、図2で示すように、入力電極3a,4bの組、入力電極3c,4dの組それぞれの間の誘電体2内には第1対角線6a,6bに沿って電気力線10a,10bが発生する。この電気力線10a,10bにより、第1対角線6a,6b上で対向する入力電極3aと入力電極4bとの間、入力電極3cと入力電極4dとの間の誘電体2部分には図3および図4で示すように分極が発生する。
【0019】
ここで図3は交流電源8の一半サイクルでの分極を示し、図4は交流電源8の他の半サイクルでの分極を示す。図3および図4で示すように、分極は正負一対の電気双極子11が入力電極3a,4bの組、入力電極3c,4dの組どうしの間における誘電体2内で発生している状態である。そして、入力電極3a,4bの組、入力電極3c,4dの組どうしは第1対角線6a,6b上で対向すると共に、出力電極3b,4aの組、出力電極3d,4cの組どうしは、第1対角線6a,6bと交差する第2対角線7a,7b上において対向しているので、上記分極に伴い発生した電荷の一部は、出力電極3bと4a、出力電極3dと4cそれぞれに移動する。
【0020】
この場合、図3では交流電源8の半サイクルにおいて、誘電体2の一方表面2aの出力電極3b,3dには正電荷、誘電体2の他方表面2bの出力電極4a,4cには負電荷が移動し、これにより、負荷9には一方向に電流iが流れる。また、図4では交流電源8の次の半サイクルにおいて、出力電極3b,3dには負電荷、出力電極4a,4cには正電荷が移動し、これにより、負荷9には他方向に電流iが流れる。
【0021】
以上により、実施の形態の絶縁型コンバータにおいては、入力電極3a,4b;3c,4d側と出力電極3b,4a;3d,4c側とが、誘電体2により電気的に絶縁された状態で、入力電極3a,4b;3c,4d側に印加した電力は出力電極3b,4a;3d,4cから負荷9側に出力することができる。そして、負荷9に図示略の整流回路を設けると、交流入力を直流出力に変換することができるコンバータ構成とすることができる。
【0022】
なお、上記入力電極の組数、出力電極の組数は、図上では共に、2組であるが、1組でも3組以上でもよい。
【0023】
また、入力電極3a,4b;3c,4dは、出力電極3b,4a;3d,4cに対して図1(a)で示すように誘電体2厚み方向に相対向しているが、例えば図5(a)(b)(c)で示すように、出力電極3b,4a,3d,4cに対して誘電体長手方向にずれてもよい。
【0024】
また、入力電極3a,4b,3c,4dと、出力電極3b,4a,3d,4cは誘電体2の長手方向に一列に配置する必要はなく、例えば図6で示すように誘電体2の各面2a,2bに電極10,11を行/列配置してもよい。この行/列は複数行、複数列でもよいし、1行1列、1行複列、複行1列でもよい。
【0025】
また、入力電極3a,4b;3c,4dと、出力電極3b,4a;3d,4cは実施の形態では同電極形状、同電極面積、同電極高さであったが、これらは異なってもよい。
【0026】
なお、実施の形態の絶縁型コンバータは、薄型化が要求される電子機器例えばカード形状の電子機器等に使用したり、磁気障害、デジタルノイズ等が発生する環境下で使用したりすることに適している。
【符号の説明】
【0027】
2 誘電体
3a,4b,3c,4d 入力電極
3b,4a,3d,4c 出力電極
5a,5b 平行な2線
6a,6b 第1対角線
7a,7b 第2対角線
8 交流電源
9 負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1対角線上に平行配置された少なくとも2つの入力電極と、
上記第1対角線と交差する第2対角線上に平行配置された少なくとも2つの出力電極と、
これら電極間に共通に介装された誘電体と、
を具備し、
上記両入力電極に交流電力を印加して上記第1対角線上周囲の誘電体内に分極を発生させ、これにより上記両出力電極に交流電力の半サイクルごと交互の正負電荷を発生させることで、当該両出力電極から電力を出力することが可能となっている、ことを特徴とする絶縁型コンバータ。
【請求項2】
上記誘電体の両面それぞれに入力電極と出力電極とを行/列配置している、ことを特徴とする請求項1に記載の絶縁型コンバータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−101509(P2011−101509A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254695(P2009−254695)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000217491)田淵電機株式会社 (67)
【Fターム(参考)】