説明

緊張材の緊張力検出方法

【課題】既設の緊張材に作用している緊張力を容易に且つ安価に検出することができる緊張材の緊張力検出方法を提供すること。
【解決手段】地中に埋設されたグランドアンカー(緊張材)1の露出部分に磁歪センサを押し当てて磁歪測定を行い、測定された磁歪値に基づいてグランドアンカー1に作用している緊張力を検出するものであって、一定の現場ごとに設定する所定数のグランドアンカー1(サンプルアンカーSP)に対して、様々な荷重レベルの緊張力を付与させると同時に磁歪センサを押し当てて磁歪測定を行い、緊張力と測定された磁歪値との相関関係を示す近似式を求めた後、この現場の他のグランドアンカー1(調査対象アンカーTA)に磁歪センサを押し当てて磁歪測定を行い、測定された磁歪値を近似式に代入して、調査対象アンカーTAに作用している緊張力を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊張材に磁歪センサを押し当てて行なった磁歪測定の結果に基づいてこの緊張材に作用している緊張力を検出する緊張材の緊張力検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、緊張材の緊張力を検出するにはロードセルを用いて計測することが最も標準的ではあったが、ロードセルをすべての緊張材に設置するには膨大な費用が必要となるために、全体の数%に設置することが一般的となっている。
【0003】
しかし、緊張材設置後にロードセル計測値に変化が生じた場合や、緊張材の緊張力低下が懸念される場合等には、ロードセル未設置の緊張材についても緊張力を測定し、すべての緊張材に作用している緊張力を把握する必要がある。
【0004】
特に、昭和年代以前に設置された緊張材については、現行の製品規格から見るといわゆる仮設アンカーに相当する規格であり、経年とともに、また、地盤を含めた設置環境により、素線が腐食により破断する恐れのあることが指摘されている。
【0005】
したがって、この昭和年代以前設置の緊張材については、一定以上の経過年とともに、全数の緊張力を計測して、緊張材全体の健全性を評価するとともに、以後は一定の頻度で全数管理していくことが望ましい。
【0006】
そこで、現状では、ロードセル未設置の緊張材については、ジャッキを用いたリフトオフ試験を実施して緊張力を測定している。
【0007】
また、あらかじめ緊張材と同質の試験片によって緊張力と磁歪値との相関関係を求めておき、実際に設置されている緊張材に磁歪センサを押し当てて磁歪測定を行なってから、測定された磁歪値を試験片において求めた緊張力と磁歪値との相関関係と比較し、緊張材に作用している緊張力を推定する方法も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−173935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のリフトオフ試験によって緊張力を測定する方法では、装置等が大掛かりなものとなって手間及び費用がかかるため、すべての緊張材に対して試験を行なうことは現実的ではないという問題があった。
【0009】
また、試験片によって求めた緊張力と磁歪値との相関関係と、測定された磁歪値とを比較して緊張力を推定する方法では、磁歪感度を向上させて正確な緊張力を求めるために、組織の異方性や残留応力の影響をあらかじめ低減する処理を行なった所定の定着部材等を用いて緊張材を設置し、この所定の定着部材を測定対象とする必要があった。
【0010】
そのため、緊張材設置当初から所定の定着部材が必要となり、すでに設置されている既設の緊張材には適用することが困難であるという問題があった。
【0011】
そこで、この発明は、すでに設置されている既設の緊張材に作用している緊張力を容易に且つ安価に検出することができる緊張材の緊張力検出方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、地中に埋設された緊張材の露出部分に磁歪センサを押し当てて磁歪測定を行い、測定された磁歪値に基づいて前記緊張材に作用している緊張力を検出する緊張材の緊張力検出方法であって、一定の現場ごとに設定する所定数の緊張材に対して、様々な荷重レベルの緊張力を付与させると同時に前記磁歪センサを押し当てて磁歪測定を行い、緊張力と測定された磁歪値との相関関係を示す近似式を求めた後、この現場の他の緊張材に前記磁歪センサを押し当てて磁歪測定を行い、測定された磁歪値を前記近似式に代入して、他の緊張材に作用している緊張力を求めることを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の緊張材の緊張力検出方法において、前記緊張材の中心軸を挟んで対称に離間する複数の測定点に押し当てて磁歪測定を行い、各測定点において測定された測定値を平均して磁歪値を求めることを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の緊張材の緊張力検出方法において、前記近似式は、最小自乗法により求められることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、あらかじめ設定された所定数の緊張材に対して様々な荷重レベルの緊張力を付与すると同時に行なう磁歪測定の測定結果に基づいて緊張力と磁歪値との相関関係を示す近似式を求めるので、他の緊張材については磁歪測定を行って得られた結果を、上記相関関係を示す近似式に代入すればよい。
【0016】
これにより、すでに設置された既設の緊張材そのままの状態において磁歪測定を行うことで、この既設の緊張材の緊張力を検出することが可能となり、緊張力を容易に且つ安価に求めることができる。
【0017】
また、一定の現場に実際に設置されている緊張材の一部を用いて緊張力と磁歪値との相関関係を示す近似式を求めるので、所定数の緊張材のそれぞれについて得られた所定数の緊張力と磁歪値との相関関係を示す結果を統計的に処理することで、この現場にある個々の緊張材が持っている組織の異方性や残留応力、緊張材の偏芯等による測定磁歪値のバラツキについて把握することができる。
【0018】
つまり、近似式を求める際に統計的に処理することで、この近似式に含まれる誤差の程度を把握することが可能となる。
【0019】
請求項2の発明によれば、請求項1の効果に加えて、緊張材の偏芯や、測定位置の違いによる測定磁歪値のバラツキ等によって生じる誤差を排除することができ、磁歪値の測定精度を向上させることが可能となる。
【0020】
請求項3の発明によれば、請求項1又は2の効果に加えて、近似式を求める際に、より実際に近い高精度の近似式を容易に求めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明に関わる緊張材の緊張力検出方法を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1において、1は地盤崩落防止用構造物2を地盤3に定着させるために施工されるグランドアンカー(緊張材)である。
【0023】
このグランドアンカー1は、長尺物であって構造物2を貫通する緊張体5と、この緊張体5の上端部に定着することで緊張体5に緊張力を付与する定着部材であるナット8と、ナット8と構造物2との間に配置されてナット8の定着力を受け止めるアンカープレート7とを有している。
【0024】
そして、このグランドアンカー1は、地盤3にアンカー孔4を掘削する工程、アンカー孔4に緊張体5を挿入する工程、アンカー孔4に定着材6を注入して緊張体5の下端部を地中に定着させる工程、緊張体5の上端部にアンカープレート7を介してナット8を仮装着する工程、緊張体5に図示しない油圧ジャッキを用いて緊張力を付与する工程、ナット8を締め付けて緊張体5を固定する工程等を経て施工されている。
【0025】
そして、緊張体5に付与された緊張力は、ナット8及びアンカープレート7を介して構造物2に押圧力として作用し、この押圧力によって構造物2が地盤3に定着するようになっている。
【0026】
ここで、緊張体5は、複数のケーブルをよって形成されたPC鋼より線や、棒状の軸材によって形成された緊張部9と、この緊張部9の一端に一体的に連結される定着部材10と、緊張部9の他端に一体的に連結されるネジ状のマンション部11とを有している。そして、この緊張体5の大部分は地盤3に埋設されており、マンション部11の端部が地盤3から露出している。
【0027】
そして、マンション部11の露出した部分がアンカープレート7の挿入孔7aに挿入され、アンカープレート7が構造物2に載置されるようになっている。また、アンカープレート7から突出したマンション部11にナット8が螺着されている。
【0028】
このとき、アンカープレート7には、図2(a)に示すように、緊張体5の下端部側に向かって引きこまれる方向の応力が作用する。つまり、アンカープレート7には、図2(b)に矢印で示す挿入孔7aの中心に向う方向、放射方向を主応力方向とする引張応力が作用する。
【0029】
このとき、アンカープレート7に作用する引張応力の大きさは、緊張体5の緊張力の大きさに比例する。
【0030】
また、ナット8には、マンション部11に形成されたネジ山からナット8のネジ溝に伝達される緊張体5の緊張力と、アンカープレート7からの反力とが作用する。つまり、ナット8には、図2(a)に矢印で示す緊張体5の軸方向(上下方向)を主応力方向とする圧縮応力が作用する。
【0031】
このとき、ナット8に作用する圧縮応力の大きさは、緊張体5の緊張力の大きさに比例する。
【0032】
また、ナット8に伝達される緊張力は、マンション部12のネジ山を介するせん断力として伝達されるので、ナット8の高さ方向の位置によって伝達される緊張力の大きさが異なることとなる。この緊張力は、ナット8の下端(アンカープレート7側)で最大となり、上端で最小(ゼロ)となる。
【0033】
そして、本発明の実施の形態において磁歪測定における測定対象は、上記アンカープレート7又はナット8である。
【0034】
アンカープレート7の測定面は、図3(a)及び(b)に示すように、ナット8の側面8aから所定距離離間した上面7bであり、測定位置は、平面視六角形に形成されたナット8の側面8aの平坦部分に対向して位置する6点(S1〜S6)である。ここで、各測定点S1〜S6は、緊張体5の中心軸Oを挟んで対称に離間している。
【0035】
そして、各測定点S1〜S6において測定された測定値を平均することで、アンカープレート7における磁歪測定の結果とする。これにより、緊張体5の中心軸Oの位置ズレやアンカープレート7に作用している引張主応力のバラツキ等による誤差を抑制することができる。
【0036】
なお、アンカープレート7の磁歪測定を行う際に、磁歪センサは、このアンカープレート7に作用する引張応力を測定するように押し当てられる。
【0037】
一方、ナット8の測定面は、図3(a)及び(b)に示すように側面8aであり、測定位置は、平面視六角形に形成されたナット8の側面8aの平坦部分のほぼ中央(側方方向はほぼ中央であって、高さ方向はアンカープレート7から一定の同一高さ)に位置する6点(S7〜S12)である。ここで、各測定点S7〜S12は、緊張体5の中心軸Oを挟んで対称に離間している。
【0038】
そして、各測定点S7〜S12において測定された測定値を平均することで、ナット8における磁歪測定の結果とする。これにより、緊張体5の中心軸Oの位置ズレや測定に伴うバラツキ等による誤差を抑制することができる。
【0039】
なお、ナット8の磁歪測定を行う際に、磁歪センサは、このナット8に作用する圧縮主応力を測定するように押し当てられる。
【0040】
次に、この発明の緊張材の緊張力検出方法について説明する。
【0041】
すでに設置された既設の緊張材であるグランドアンカー1に作用している緊張力を測定するには、まず、一定の現場に設置されている多数のグランドアンカー1の中から、所定数のグランドアンカー1を選択する。以下、この選択されたグランドアンカー1をサンプルアンカーSPという。
【0042】
ここで「一定の現場」とは、グランドアンカー1に使用されている緊張体5、アンカープレート7、ナット8等がほぼ同一の製造条件によって製造されたグランドアンカー1の集団を示す。
【0043】
また、「所定数」とは、例えば、一定の現場に設置されているグランドアンカー1の全数量に関わらず任意に設定した一定数であってもよいし、グランドアンカー1の全数量の所定割合(例えば5%程度)等であってもよい。なお、作業性や精度を勘案すると最低5本、最高10本程度が望ましい。
【0044】
次に、所定数のサンプルアンカーSPに対して、それぞれ所定の荷重レベルの緊張力を付与させると同時に磁歪センサを押し当てて磁歪測定を行う。
【0045】
サンプルアンカーSPに緊張力を付与するには、まず、図示しない油圧ジャッキ等をマンション部11に接続する。そして、油圧ジャッキ等で緊張体5を所定の緊張力で引っ張った後にナット8をマンション部11に螺合させる。これにより、サンプルアンカーSPは、所定の荷重レベルの緊張力が付与された状態(緊張定着状態)となる。
【0046】
そして、この緊張定着状態で、アンカープレート7及びナット8の図3に示す測定点S1〜S12において磁歪測定を行なう。なお、この磁歪測定方法については周知であるので詳細な説明は省略する。
【0047】
各測定点において測定された磁歪値は、アンカープレート7についてはS1〜S6で得られた磁歪値を平均することで求める。なお、残留応力等の影響によっては、測定された磁歪値の一部を棄却する場合もある。
【0048】
また、ナット8についてはS7〜S12で得られた磁歪値を平均することで求める。なお、残留応力等の影響によっては、測定された磁歪値の一部を棄却する場合もある。
【0049】
このように、複数の測定点において得られた結果を平均することで、緊張体5の偏芯やアンカープレート7に作用する反力のバラツキ等によって生じる誤差を排除し、測定された磁歪値の精度を向上させることができる。
【0050】
そして、これにより所定の荷重レベルの緊張力が作用しているとき(所定の荷重レベルの緊張定着状態のとき)のアンカープレート7及びナット8それぞれにおける所定の緊張力と磁歪値との関係が求められる。
【0051】
次に、サンプルアンカーSPに付与する緊張力の荷重レベルを上述の場合とは変更し、変更された荷重レベルの緊張力が付与された状態で、再びアンカープレート7及びナット8の磁歪測定を行なう。
【0052】
そして、上述と同様の手順により、上述とは異なる荷重レベルの緊張力が作用しているとき(上述とは異なる荷重レベルの緊張定着状態のとき)のアンカープレート7及びナット8それぞれにおける所定の緊張力と磁歪値との関係を求める。
【0053】
以上を、複数段階の荷重レベルの緊張力を作用させて繰り返し、アンカープレート7及びナット8それぞれにおける緊張力と磁歪値との関係を求める。
【0054】
さらに、所定数のサンプルアンカーSPのすべてに対して、様々な荷重レベルの緊張力を付与させると同時にアンカープレート7及びナット8に磁歪センサを押し当てて磁歪測定を行なう。
【0055】
そして、これらの結果を図4に示すような緊張力と磁歪値との散布図にプロットし、緊張力と磁歪値との相関関係を示す近似式を統計的に求める。
【0056】
ここで、求められる近似式は、アンカープレート7及びナット8それぞれについて異なる近似式となる。つまり、アンカープレート7を測定対象とする近似式とナット8を測定対象とする近似式が求められることとなる。
【0057】
この近似式は、例えば、式(1)となる。なお、式(1)においてxは、磁歪値を示す。ここで、K、K、C、Dはそれぞれ定数である。
【0058】
緊張力 = K−Kx+C(±D) ・・・(1)
また、この近似式から求められる緊張力と磁歪値との相関関係を示すグラフは、図4に示すようになる。
【0059】
図4中、実線で示すラインAが最小自乗法によって得られた近似式を示しており、実線Aよりも上方に位置する一点鎖線で示すラインBが例えば90%信頼範囲上限を示しており、実線Aよりも下方に位置する一点鎖線で示すラインCが例えば90%信頼範囲下限を示している。
【0060】
このように、一定の現場に実際に設置されているグランドアンカー1をサンプルとして選び出し、この選び出されたアンプルアンカーSPにおいて得られた緊張力と磁歪値との相関関係を統計的に処理することで近似式を求めている。
【0061】
これにより、アンカープレート7等の組織の異方性や残留応力等によるバラツキの程度もあわせて把握可能な近似式を求めることができる。
【0062】
続いて、サンプルアンカーSP以外の他のグランドアンカー1に磁歪センサを押し当てて磁歪測定を行う。以下、このサンプルアンカーSP以外の他のグランドアンカー1を調査対象アンカーTAという。
【0063】
調査対象アンカーTAの磁歪測定は、上述のサンプルアンカーSPの場合と同様に実施する。
【0064】
ここで、この調査対象アンカーTAにおける磁歪値も、アンカープレート7については測定点S1〜S6において測定された測定磁歪値の平均とし、ナット8については測定点S7〜S12において測定された測定磁歪値の平均とする。
【0065】
これにより、緊張体5の偏芯やアンカープレート7の測定に伴うバラツキ等によって生じる誤差を排除し、測定された磁歪値の精度を向上させることができる。
【0066】
そして、調査対象アンカーTAにおいて測定された磁歪値を上記近似式に代入し、この調査対象アンカーTAに作用している緊張力を算出する。
【0067】
なお、緊張力を算出する際に代入する近似式は、アンカープレート7を測定対象とした近似式であっても、ナット8を測定対象とした近似式であってもよい。サンプルアンカーSPにおいて求めた緊張力と磁歪値との相関関係のバラツキが小さい(少ない)方の近似式を使用することが望ましい。
【0068】
また、アンカープレート7を測定対象とした近似式を使用する場合には、調査対象アンカーTAにおける測定対象をアンカープレート7とし、ナット8を測定対象とした近似式を使用する場合には、調査対象アンカーTAにおける測定対象をナット8とする。
【0069】
このように、一定の現場ごとに設定する所定数のサンプルアンカーSPに対して、様々な荷重レベルの緊張力を付与させると同時に磁歪センサを押し当てて磁歪測定を行い、緊張力と測定された磁歪値との相関関係を示す近似式を求める。その後、この現場における調査対象アンカーTAに対して磁歪測定を行い、調査対象アンカーTAにおいて測定された磁歪値をあらかじめ求めた近似式に代入し、調査対象アンカーTAに作用している緊張力を求める。
【0070】
これにより、すでに設置された既設の緊張材である調査対象アンカーTAにおいて行なった磁歪測定の結果を、サンプルアンカーSPにおいて行なった磁歪測定の測定磁歪値に基づいて求めた近似式に代入すれば、この調査対象アンカーTAの緊張力を検出することが可能となる。
【0071】
そのため、調査対象アンカーTAそのままの状態において磁歪測定を行うことで、この調査対象アンカーTAに作用している緊張力を容易に且つ安価に求めることができる。
【0072】
また、一定の現場に実際に設置されている緊張材の一部であるサンプルアンカーSPを用いて緊張力と磁歪値との相関関係を示す近似式を求めるので、所定数のサンプルアンカーSPのそれぞれについて得られた所定数の緊張力と磁歪値との相関関係を示す結果を統計的に処理することで、この現場にある個々のグランドアンカー1が持っている組織の異方性や残留応力等による測定磁歪値のバラツキについて把握することができる。
【0073】
つまり、近似式を求める際に統計的に処理することで、この近似式に含まれる誤差の程度を把握することが可能となる。
【0074】
また、上述のグランドアンカー1の緊張力検出方法では、磁歪センサを、緊張体5の中心軸Oを挟んで対称に離間する複数の測定点S1〜S6及びS7〜S12に押し当てて磁歪測定を行い、各測定点において測定された測定値を平均して磁歪値を求めている。
【0075】
これにより、緊張体5の偏芯や、磁歪センサを押し当てる測定位置のズレによる緊張力のバラツキ等によって生じる測定磁歪値の誤差を排除することができ、磁歪値の測定精度を向上させることが可能となる。
【0076】
そして、上述のグランドアンカー1の緊張力検出方法では、緊張力と磁歪値との相関関係を求める近似式を、最小自乗法によって求めている。
【0077】
これにより、近似式を求める際に、より実際に近い高精度の近似式を容易に求めることが可能となる。なお、上述の実施の形態では、2次式を用いた近似式となっているがこれに限らず、3次式や4次式等任意に設定してよい。
【0078】
以上、この発明にかかる実施の形態を図面により詳述してきたが、具体的な構成は上述の実施の形態に限らない。この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等はこの発明に含まれる。
【0079】
例えば、上述の実施の形態では、磁歪センサを複数の測定点S1〜S12に押し当てて磁歪測定を行っているが、測定点の数や位置は上述のものに限られず、精度や作業性等を考慮して適宜変更することが可能である。
【0080】
また、磁歪センサは、アンカープレート7やナット8に作用する主応力方向を測定するように押し当てても、この主応力が作用する方向と直交する方向に作用する応力を測定するように押し当ててもいずれの場合であってもよい。
【0081】
さらに、上述の実施の形態では、緊張材がナット8を締め付けることで緊張力を付与するものであるが、これに限らず、クサビを定着部材と緊張体との間に挟みこんで緊張体を固定し、緊張力を付与するクサビ定着方式のものであってもよい。
【0082】
この場合であっても、アンカープレートについては、上述の方法に準じて緊張力と磁歪値との相関関係を求めることができる。
【0083】
また、この場合の定着部材は、ナット8に代わってアンカーディスクとなり、このアンカーディスクを測定対象として緊張力と磁歪値との相関関係を求めるようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】グランドアンカーの全体構成を示す説明図である。
【図2】(a)はグランドアンカーの露出した部分を示す説明図及び作用する応力の概要を示した断面図であり、(b)はグランドアンカーの露出した部分を示す説明図及び作用する応力の概要を示した平面図である。
【図3】(a)はアンカープレート及びナットの測定点を示す平面図であり、(b)はアンカープレート及びナットの測定点を示す斜視図である。
【図4】緊張力と磁歪センサの出力値との相関関係の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0085】
1 グランドアンカー(緊張材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された緊張材の露出部分に磁歪センサを押し当てて磁歪測定を行い、測定された磁歪値に基づいて前記緊張材に作用している緊張力を検出する緊張材の緊張力検出方法であって、
一定の現場ごとに設定する所定数の緊張材に対して、様々な荷重レベルの緊張力を付与させると同時に前記磁歪センサを押し当てて磁歪測定を行い、緊張力と測定された磁歪値との相関関係を示す近似式を求めた後、
この現場の他の緊張材に前記磁歪センサを押し当てて磁歪測定を行い、測定された磁歪値を前記近似式に代入して、他の緊張材に作用している緊張力を求めることを特徴とする緊張材の緊張力検出方法。
【請求項2】
前記緊張材の中心軸を挟んで対称に離間する複数の測定点に押し当てて磁歪測定を行い、各測定点において測定された測定値を平均して磁歪値を求めることを特徴とする請求項1に記載の緊張材の緊張力検出方法。
【請求項3】
前記近似式は、最小自乗法により求められることを特徴とする請求項1又は2に記載の緊張材の緊張力検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−155475(P2007−155475A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350419(P2005−350419)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000180368)四国電力株式会社 (95)
【出願人】(592250698)株式会社四電技術コンサルタント (15)
【Fターム(参考)】