説明

緑化システム

【課題】各構成部材を効率的に運搬できるようにして施工性の向上を図るとともに、土壌厚の変更にも柔軟に対応可能な緑化システムを提供する。
【解決手段】側壁1aと底板1bを有する箱状の貯水部1と、貯水部1の空間11の上方に植物が植栽される土壌を収容する空間10を画成する植栽部2とを備えた緑化システムAであって、貯水部1は、側壁1aの下端が上端よりも内側に配されて形成されており、植栽部2は、複数の側壁板7aからなる側壁部7と、側壁板7aを保持する略棒状の複数の脚部9と、側壁部7の内側に設置されて貯水部1の空間11と土壌を収容する空間10を区画する略平板状の底板部8とを備えており、脚部9は、上端側に複数の係合溝9aが設けられ、下端側に複数の脚9cが設けられ、隣り合う脚9cの間に貯水部1の側壁1aを挿入して設置されるとともに、側壁板7aを係合溝9aに係合させて着脱可能に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築物の屋上、テラス、ベランダや、駐車場などの人工地盤上に敷設されて該人工地盤に緑化を施すための緑化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、都市部におけるヒートアイランド現象の緩和や大気中の炭酸ガスの吸収、アメニティ空間の創出などを目的として、建築物や駐車場などの人工地盤上に植栽を施し緑化することが行なわれている。
【0003】
この種の緑化システムには、例えば特許文献1に開示されるような、側壁(側壁部)と底面(底板部)を有し平面視略方形で上面開口の箱形の植栽部と、側壁と底面(底板)を有し平面視略方形で上面開口の箱形の貯水部とを備え、貯水部上に植栽部を分離可能に載置して構成される緑化ユニット(緑化体)を具備したものがある。この緑化システムでは、緑化ユニットの植栽部内に充填した人工土壌(土壌)上に種子を蒔いたり、切芝を載置するなどして植栽が施され、この状態の緑化ユニットを建築物の屋上などの人工地盤の敷設面に隙間なく複数敷設することにより人工地盤に緑化を施すことが可能とされている。また、この緑化システムにおいては、敷設した複数の緑化ユニットをそれぞれ個別に取り扱うことができるため、その設置や撤去が容易で施工性に優れるとともに、レイアウト変更などにも柔軟に対応できるという利点を有している。
【0004】
また、特許文献1に開示された緑化ユニットにおいては、植栽部の底面に、土壌に供給された雨水などの水のうち土壌に保水されない余剰水を貯水部内に排出し、かつ空気の流通を可能にするための通水兼通気孔(貫通孔)が設けられている。さらに、植栽部の底面から略円柱状の複数の第1柱状部材が上方に突出するように設けられ、かつこの底面には下方に突出して垂設され、その下端面が貯水部の底面に当接する略円柱状の複数の第2柱状部材が設けられている。これにより、この緑化ユニットでは、余剰水が貯水部に排出されることで土壌に植栽した植物を好適に生育でき、かつ植栽部の上方から歩行者の踏圧などの外力が作用した場合においても、第1柱状部材と第2柱状部材により高い支持強度と安定性が付与されて、前記外力により植栽部や貯水部が破損することを防止している。
【特許文献1】特開2004−261016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の緑化システムにおいては、植栽部と貯水部がそれぞれ平面視略方形の略同形同大の箱状に形成されているため、人工地盤上に隙間なく敷設する際の取扱性がよい反面、これらを運搬する際には、複数の貯水部や複数の植栽部をそれぞれ積み重ねて大きな荷姿の状態で運搬せざるを得ず、運搬時の取扱性や運搬効率が悪く、施工性を悪化させていた。
【0006】
また、植栽部が予め所定の大きさの箱状に形成されているため、例えば植栽する植物の種類の変更などに応じて土壌の厚さを大きくしたい場合に柔軟に対応できないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑み、各構成部材を効率的に運搬できるようにして施工性の向上を図るとともに、土壌厚の変更にも柔軟に対応可能な緑化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0009】
本発明の緑化システムは、側壁と底板を有し上端側に開口部を備えた箱状の貯水部と、該貯水部の前記側壁と前記底板で画成される空間の上方に植物が植栽される土壌を収容する空間を画成する植栽部とを備えた緑化システムであって、前記貯水部は、前記側壁の前記底板と繋がる下端側が前記上端よりも内側に配されて形成されており、前記植栽部は、前記貯水部の前記側壁の上方でかつ該側壁に沿って配設される複数の側壁板からなる側壁部と、前記側壁板を保持する略棒状の複数の脚部と、貫通孔を有し、前記側壁部の内側に設置されて前記貯水部の側壁と底板で画成される空間と前記土壌を収容する空間を、前記貫通孔を介して連通させつつ区画する略平板状の底板部とを備えており、前記脚部は、上端側に、該上端から下端に向けて延びる複数の係合溝が設けられ、下端側に、分岐するように形成された複数の脚が設けられ、隣り合う前記脚の間に前記貯水部の側壁を挿入して設置されるとともに、前記側壁板を前記係合溝に係合させて着脱可能に保持することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の緑化システムにおいて、前記貯水部の前記側壁は、前記上端側から前記下端に向かうに従い漸次内側に傾斜するように形成されていることが望ましい。
【0011】
さらに、本発明の緑化システムにおいては、外装板が、前記脚部の複数の係合溝のうち前記側壁板が係合されていない他の係合溝に係合されつつ保持されて前記側壁板を覆うように外周側に設けられていることがより望ましい。
【0012】
また、本発明の緑化システムにおいては、前記植栽部の前記土壌を収容する空間内に、上方側からの平面視で該空間を分割して区画する仕切部が設置されており、該仕切部は、略矩形平板状の複数の仕切板がそれぞれの前記仕切板に形成された嵌合溝を介して互いに交差するように分離可能に嵌合されて形成されていることが望ましい。
【0013】
さらに、本発明の緑化システムにおいては、前記仕切板に、前記仕切部で分割して区画した前記空間を連通させる切欠部が設けられていることがより望ましい。
【0014】
また、本発明の緑化システムにおいては、前記底板部に、前記貯水部に貯留した水を、前記貫通孔を通じて前記土壌に供給するための吸水帯が取り付けられていることがさらに望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の緑化システムにおいては、貯水部の側壁が、例えばテーパー形状とされて上端側よりも下端が内側に配されていることによって、貯水部の内部に他の貯水部の底板側を挿入しつつ係合させることが可能になる。これにより、複数の貯水部を運搬する際に、複数の貯水部を係合させつつ安定的に積み重ね、見掛けの容積を小さくした状態でまとめて運搬することが可能になる。よって、複数の貯水部の運搬時の取扱性や運搬効率の向上を図ることができ、施工性を向上させることが可能になる。
【0016】
また、側壁の下端側を内側に配して貯水部を形成した場合には、人工地盤上に敷設した際に、隣り合う貯水部の側壁上端側同士が隙間なく密着されるのに対し、隣り合う貯水部の側壁下端側の間に隙間が画成されることになる。そして、この隙間は、複数の貯水部の並設方向に沿って延設する通水路を人工地盤上に形成することになり、この通水路を通じて人工地盤上に溜まってしまう雨水などの水を外部に排出することが可能になる。
【0017】
さらに、本発明においては、植栽部が、複数の側壁板からなる側壁部と、側壁板を保持する略棒状の複数の脚部と、貯水部の空間と土壌を収容する空間を区画する略平板状の底板部とを備え、人工地盤上に敷設した貯水部の側壁が隣り合う脚の間に挿入されるように脚部を設置し、この脚部の係合溝に側壁板を係合させて側壁部を形成し、底板部を設置して組み立てるという簡易な操作で緑化システムを構築することができる。また、植栽部を形成する各構成部材が棒状や板状に形成されて分離されるため、緑化を施す現場に各構成部材を運搬する際には、それぞれの構成部材をまとめて運搬することができ、施工性を大幅に向上させることが可能になる。
【0018】
また、脚部が複数の脚を備えて形成されているため、隣接する貯水部の側壁を1つの脚部の隣り合う脚の間に挿入させて、隣接する貯水部同士を脚部で保持することも可能である。さらに、この場合には、隣接する貯水部のそれぞれの側壁と底板で画成される空間の上方に、同一の脚部と側壁板を兼用して土壌を収容する空間を画成することができる。これにより、緑化システムを構成する部材点数を減らして、低コストで効率的な施工を行なうことが可能になる。
【0019】
さらに、植栽部の空間に充填されて収容する土壌の層厚を大きく変更したい場合には、着脱可能とされた側壁板を、高さ寸法の大きな側壁板と交換するという簡易な操作で、植栽部の空間を上方に拡大することができ、柔軟に土壌の層厚変更に対応することができる。また、複数の係合溝のうち側壁板が係合されていない他の係合溝に係合されつつ保持されて側壁板を覆う外装板が設けられた場合には、緑化システムの外周側に化粧を施すことができるとともに、外装板を高さ寸法の大きな外装板と交換し、この外装板で画成された空間に土壌を収容するという簡易な操作で、土壌の層厚を大きくすることが可能になる。
【0020】
また、本発明の緑化システムにおいては、植栽部の側壁部及び底板部で画成された空間を分割して区画する仕切部が設けられていることによって、植栽部の上方から歩行者の踏圧などの外力が作用した場合においても、この外力を仕切部で受けることができ、高い支持強度と安定性を付与することができる。これにより、植栽部や貯水部が外力によって破損することを防止できる。また、仕切部が、略矩形平板状の複数の仕切板を互いに嵌合させて形成されるものであるため、すなわち、仕切部が複数の仕切板を組み立てて形成される構成を採っているため、運搬時には分離した状態の仕切板をまとめて運搬でき、設置時に複数の仕切板を係合させて組み立てるという簡易な操作で容易に仕切部を形成し設置することができる。
【0021】
さらに、仕切板に、仕切部で分割して区画した空間を連通させる切欠部が設けられていることにより、区画した空間内の土壌で生育する植物の根や、各空間に供給された水をこの切欠部を通じて他の空間(土壌)内に行き来させることができる。これにより、植物の好適な生育環境を保持することが可能になる。
【0022】
また、植栽部の底板部に、貯水部に貯留した水を、貫通孔を通じて土壌に供給するための吸水帯が取り付けられていることによって、土壌に供給された雨水や灌水などの水のうち、土壌に保水されずに貯水部に貯められた余剰水を、吸水帯を介して再度土壌に供給することができる。これにより、雨水や灌水を有効に再利用できるため、灌水頻度を低下させることが可能になるとともに、植物の好適な生育環境を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図1から図8を参照し、本発明の一実施形態に係る緑化システムについて説明する。本実施形態は、建築物の屋上やベランダ、駐車場などの人工地盤上に敷設して人工地盤に緑化を施すための緑化システムに関するものである。
【0024】
本実施形態の緑化システムAは、図1から図3に示すように、雨水や灌水などの余剰水を貯留する貯水パネル(貯水部)1と、植栽を施す図示せぬ土壌を保持する植栽部2と、歩行者の踏圧などの外力を支持する仕切部3と、植栽部2に保持した土壌に貯水パネル1内の余剰水を供給するための吸水帯4と、植栽部2に取り付けられて緑化システムAの外周側に化粧を施すための外装板5とが主な構成要素とされている。
【0025】
貯水パネル1は、側壁1aと底板1bを有し、平面視略正方形状の箱状に形成され、その上面側が開口されて開口部1cを備えている。また、側壁1aは、上端から底板1bと繋がる下端に向かうに従い漸次貯水パネル1の内側に向けて傾斜するように形成されている。さらに、貯水パネル1には、側壁1aと底板1bで画成される空間内に、それぞれ略矩形柱状を呈する4つの受部材1dが設けられており、これら受部材1dは、底板1bに下端が固着されつつ立設され、4つの角部6側のやや内側にそれぞれ設けられている。
【0026】
植栽部2は、互いに分離した略長方形平板状の4枚の側壁板7aからなる側壁部7と、略正方形平板状の底板部8と、貯水パネル1の4つの角部6にそれぞれ設置された4本の脚部9とから構成されている。側壁部2を構成する各側壁板7aには、上端側に、長手方向外側に延出され、脚部9の後述する係合溝9aに係合される平面視で略矩形状を呈する係合部7bが具備されている。また、側壁板7aには、両側面のそれぞれの長手方向略中央に、側面に直交して突出するとともに互いに平行して上端側から下端側に延びる一対の突部7cが設けられている。この一対の突部7cは、互いの対向する面と側面とで保持溝7dを形成している。底板部8は、図1及び図3に示すように、平面視略正方形状の平板状に形成されるとともに、上面から下面に貫通する複数の排水孔(貫通孔)8aが設けられている。
【0027】
一方、脚部9は、図4から図6に示すように、略矩形棒状に形成されており、長手方向に延びる軸線O1に直交する断面が略正方形を呈するように形成されている。また、上端側には、図4に示す上面(上端)側からの平面視で、4つの側面からそれぞれ軸線O1に向けて凹み、図5に示す側面側からの平面視で、上面から軸線O1に沿って下端側に向けて延びる4条の係合溝9aが凹設されている。これらの係合溝9aは、それぞれ、軸線O1に直交する断面が矩形状に形成され、上面と側面とに開口しつつ上面から軸線O1方向中央よりも若干上面側に位置する範囲に設けられている。また、脚部9の下端側には、互いに平行な一対の側面にそれぞれ開口しつつ連通し、かつ互いに平行な他の一対の側面にもそれぞれ開口しつつ連通して、軸線O1に直交する断面視で十字状を呈する凹部9bが設けられている。そして、この凹部9bによって脚部9の下端側は、4つに分岐され、それぞれ断面略正方形を呈する4つの脚9cが形成されている。また、それぞれの脚9cは、図5に示すように、脚部9の下端から軸線O1に沿って軸線O1方向略中央まで延設され、側面視で隣り合う脚9cとともに凹部9bを画成する側面が、下端から軸線O1方向中央に向かうに従い漸次軸線O1側に傾斜するように形成されている。
【0028】
本実施形態の仕切部3は、図1、図3及び図7に示すように、略長方形平板状に形成された同形同大の2枚の仕切板3a、3bからなり、これら2枚の仕切板3a、3bが分離可能に嵌合されて十字状を呈するように形成されている。この仕切部3を構成する2枚の仕切板3a、3bには、それぞれ、図7に示すように、長手方向に延びる軸線O2、O3方向中央に、下端から上端側に向けて切り欠かれた平面視矩形状の嵌合溝3cが設けられている。また、この嵌合溝3cは、仕切板3a、3bの厚さと略等しい幅を備え、かつ下端から上下方向中央まで延設されている。さらに、仕切板3a、3bには、軸線O2、O3方向一端と中央の間、及び軸線O2、O3方向中央と他端の間にそれぞれ、上端から下端に向けて凹み、かつ下端から上端に向けて凹む互いに上下方向に対向する一対の切欠部3dが設けられている。そして、このように形成された2枚の仕切板3a、3bは、一方の仕切板3aの天地を逆に配しつつ対向する互いの嵌合溝3cを介して互いの軸線O2、O3が直交(交差)するように組み合わされて、十字状の仕切部3を形成している。
【0029】
吸水帯4は、例えばウレタンやフェルトなどの繊維質部材、毛細管部材、パーライト、大谷石や麦飯石などの多孔質部材などを帯状に形成したり、帯状にまとめたものとされている。この吸水帯4は、図2及び図3に示すように、上端側が例えば植栽部2の底板部8に形成された一部の排水孔8aに挿通されて支持され、下端側が底板部8から垂下するように設けられている。
【0030】
外装板5は、図1及び図2に示すように、略長方形平板状に形成されるとともに、一方の側面に、この側面に直交して突出し、短手方向上端から下端側に延びる複数の突出部5aが設けられている。また、これら突出部5aは、長手方向に略等間隔で配設されている。そして、この外装板5は、緑化システムAの外周側に配された側壁板7aを覆うように取り付けられて、緑化システムAの外周側に化粧を施している。
【0031】
上記のように構成された貯水パネル1と植栽部2と仕切部3と吸水帯4と外装板5とを備える緑化システムAは、図1から図3に示すように、はじめに、建築物の屋上などの人工地盤Tの敷設面T1に複数の貯水パネル1が隣接するように敷設される。そして、各貯水パネル1の互いに隣接する角部6に、脚部9が軸線O1を垂直に配した状態で設置される。このとき、脚部9は、図2に示すように、各貯水パネル1の側壁1aを隣り合う脚9cの間に挿入し、すなわち1本ずつの脚9cを隣接するそれぞれの貯水パネル1の内側に配しつつ凹部9bに各貯水パネル1の側壁1aを挿入して設置される。このように設置した状態で、図1及び図2に示すように、貯水パネル1の側壁1aに沿って隣り合う脚部9は、係合溝9aが互いに対向するように設置される。また、各脚部9は、各貯水パネル1の内側に配されたそれぞれの脚9cの下端が各貯水パネル1の底板1bに当接されて支持され、これとともに、隣接する貯水パネル1同士を保持している。
【0032】
ついで、隣り合う脚部9の対向する一対の係合溝9aに、上端側に形成された一対の係合部7bをそれぞれ係合させて、各貯水パネル1の上方にそれぞれ側壁板7aが設置される。このとき、各側壁板7aは、その下端が貯水パネル1の側壁1aの上端に略当接した状態で保持される。このように設置した状態で、前記各側壁板7aは、上端側からの平面視で略矩形状に並設され、側壁部7を形成する。そして、側壁部7の内部に底板部8を挿入して設置する。この底板部8は、水平に配設されてその下面が貯水パネル1の受部1dにそれぞれ当接されつつ支持されて設置される。これにより、各貯水パネル1の上方に、4本の脚部9と4枚の側壁板7aと1つの底板部8からなる植栽部2が形成され、底板部8よりも上方に、側壁部2と底板部8で土壌を収容する空間10が、底板部8よりも下方に、貯水パネル1の側壁1aと底板1bで余剰水を貯留する空間11が画成される。また、底板部8に取り付けた吸水帯4が貯水パネル1の空間11内に配置される。なお、本実施形態の緑化システムAでは、図1及び図2に示すように、複数の貯水パネル1が人工地盤T上に隣接して並べられて各貯水パネル1の上方にそれぞれ植栽部2が形成されている。また、このとき、隣接する貯水パネル1のそれぞれの空間11の上方に画成される隣接する植栽部2の空間10は、それぞれ脚部9と側壁板7aを兼用した状態で画成されている。
【0033】
ついで、植栽部2の側壁部7と底板部8で画成された空間10内に仕切部3を設置する。このとき、仕切部3を構成する十字状に組み合わされた2枚の仕切板3a、3bのそれぞれの一端と他端が、各側壁板7aの前記空間10側に設けられた一対の突部7cからなる保持溝7dに係合されて保持される。また、仕切部3の上端は、側壁部7の上端と同一水平面上、もしくは僅かに側壁部7の上端よりも下方に配置される。このように仕切部3を設置した段階で、この十字状の仕切部3により植栽部2の前記空間10が4つに分割されて区画される。
【0034】
ついで、外周側に、主に化粧を施すことを目的とした外装板5を設置する。本実施形態では、外装板5の側面に形成された突出部5aを、脚部9のそれぞれ外側を向いて開口する係合溝9aに係合させ、かつ側壁板7aの外側を向く側面に形成された一対の突部7cの保持溝7dにも突出部5aを係合させて、外周側の側壁板7aを覆うように外装板5が設置される。このように各構成部材が組み立てられた段階で、それぞれの植栽部2内の仕切部3で4つに区画された空間10内に、上面が側壁部2の上端と略同一水平面上に位置するように図示せぬ土壌を充填し、この土壌上に種子を蒔いたり、切芝を載置するなどして植栽が施される。また、必要に応じて土壌及び植栽した植物に液肥や灌水を供給する図示せぬ灌水手段が設置されて本実施形態の緑化システムAの施工が完了する。
【0035】
ここで、従来の緑化システムでは、貯水部や植栽部がそれぞれ同形同大の矩形箱状に形成されているため、これらの設置数が多くなるほど貯水部や植栽部の運搬効率が悪くなり、施工性の悪化を招いていた。また、植栽部が予め所定の大きさの定形箱状に形成されているため、例えば植物の種類などの変更に応じて植栽部に収容する土壌を増量し、その厚さを大きくすることができず、柔軟に対応できないという問題があった。
【0036】
これに対して、本実施形態の緑化システムAにおいては、図8に示すように、貯水パネル1の側壁1aがテーパー状に形成されているため、貯水パネル1の内部に他の貯水パネル1の下端側を挿入しつつ係合させてゆき、複数の貯水パネル1を安定的に積み重ねてまとめることができる。これにより、本実施形態では、複数の貯水パネル1が、係合しつつ積み重ねて安定的にまとめられてその見掛けの容積が小さくなり、効率的に複数の貯水パネル1を運搬することができる。また、植栽部2においても、図3に示すように、側壁部7(側壁板7a)と底板部8と脚部9がそれぞれ分離されて平板状や棒状に形成されているため、従来の緑化システムで用いる矩形箱状の植栽部と比較して、見掛けの容積を小さくした状態でこれらの各構成部材をそれぞれ個別にまとめて運搬することができる。さらに、仕切部3においても、図7に示すように、2枚の仕切板3a、3bから構成され、各仕切板3a、3bに形成した嵌合溝3cを介して互いを組み合わせることで所定の形状に形成できるため、運搬時には2枚の仕切板3a、3bを分離した状態でまとめて運搬することができる。また、本実施形態においては、2枚の仕切板3a、3bが同形同大とされているため、特にその仕分けを行う必要がなく容易に組み合わせることが可能とされる。
【0037】
また、本実施形態の緑化システムAでは、植物の種類などに応じて植栽部2に収容する土壌の厚さを大きくしたい場合、脚部9の係合溝9aに係合されて着脱可能とされた側壁板7aを、高さ寸法の大きな側壁板7aと交換するという簡易な操作で、植栽部2の空間10を上方に拡大することができ、柔軟に土壌の層厚変更に対応することができる。また、外周側の側壁板7aを覆うように設けられた外装板5を高さ寸法の大きな外装板5と交換しても、この外装板5で画成された空間に土壌を収容するという簡易な操作で、所望の厚さの土壌を形成できる。
【0038】
また、本実施形態では、緑化システムAに雨水(または灌水手段からの灌水)が供給された際に、土壌に雨水が浸透し、その一部が土壌に保水されて植物の生育に供される。この一方で、土壌に保水されずに下方に通過した余剰水が、底板部8の排水孔8aを通じて流下し貯水パネル1の空間11に貯留されることになる。このように貯水された余剰水は、例えば晴天時に吸水帯4によって吸い上げられ、再度上方に位置する土壌に供給されて植物の生育に供されることになる。よって、本実施形態の緑化システムAでは、雨水や灌水の余剰水を貯留し再度上方の土壌に供給できるため、灌水手段による灌水頻度を低減することができる。
【0039】
さらに、図2に示すように、貯水パネル1の側壁1aがテーパー状に形成されているため、隣り合う貯水パネル1の側壁1aの間には、これらの側壁1aと人工地盤Tの敷設面T1とにより断面三角形状の通水路12が画成される。この通水路12が画成されることにより、本実施形態の緑化システムAでは、人工地盤T上に溜まる雨水をこの通水路12を流通させて排出することができる。
【0040】
また、本実施形態では、仕切部3が土壌中に設けられていることによって、緑化システムAが施工された後に、例えば歩行者の踏圧などの外力が作用した場合においても、この外力を仕切部3で受けて支持することができる。これにより、例えば植栽部2の側壁部7などに集中的に外力が作用することを防止でき、緑化システムAが損傷することを防止できる。また、このとき、仕切部3で植栽部2の4つに分割された空間10内に土壌が充填されることになるため、外力が作用した土壌が片寄ってしまったりすることがなく、好適な状態で土壌を保持することも可能になる。
【0041】
さらに、仕切部3で土壌が4分割された場合においても、仕切板7aに設けられた複数の切欠部3dを通じて、植栽された植物の根や、灌水された水を、分割した土壌間で行き来させることができる。これにより、植物の生育を好適な状態で維持することが可能になる。
【0042】
したがって、本実施形態の緑化システムAによれば、各構成部材を分離状態で効率的に運搬して施工性の向上を図ることが可能とされるとともに、土壌厚の変更にも柔軟に対応することができる。また、シンプルに構成された各構成部材を容易に組み立てて緑化システムAを構築でき、かつ土壌を収容する植栽部2の空間10を、側壁板7aと脚部9を兼用して複数形成できるため、コストの低減を図ることも可能になる。
【0043】
以上、本発明に係る緑化システムAの実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、貯水パネル1の側壁1aがテーパー状に形成されることによって、複数の貯水パネル1を係合させつつ積み重ね、見掛けの容積を小さくした状態でまとめて運搬することが可能であるとしたが、例えば、貯水パネル1の側壁1aに、上端側の側壁1aに対し下端側の側壁1aを内側に配置する段差部を形成し、下端側を上端側と平行しつつ下方に垂直に延びるように形成してもよいものである。このように形成した場合には、本実施形態と同様、貯水パネル1の下端側を他の貯水パネル1の上端側の開口部1cから挿入して、複数の貯水パネル1を係合させつつ積み重ね、見掛けの容積を小さくすることができる。よって、効率的に複数の貯水パネル1をまとめて運搬することができる。
【0044】
また、本実施形態では、人工地盤T上に複数の貯水パネル1が敷設されて緑化システムAが構成されているものとしたが、1つの貯水パネル1に1つの植栽部2が設けられて緑化システムAが構成されてもよい。さらに、本実施形態では、貯水パネル1や底板部8がそれぞれ平面視正方形状を呈するように形成されているものとしたが、特にその平面視形状が限定される必要はなく、例えばそれぞれ平面視長方形状に形成されてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、仕切部3が具備されているものとしたが、歩行者の踏圧などの外力が作用しない、もしくは外力が作用しても例えば側壁部7が損傷したり、土壌に片寄りが生じないと判断される場合には、必ずしも仕切部3が具備されなくてもよい。また、仕切部3が2枚の仕切板3a、3bを組み合わせて十字状に形成されているものとしたが、例えば仕切板3a、3bに複数の嵌合溝3cを形成し、3枚以上の仕切板を互いに組み合わせ、仕切部3が例えば格子状に形成されてもよい。この場合には、仕切板の数に応じて、本実施形態の仕切部3よりも大きな外力を支持することができ、より安定的に土壌や緑化システムAを保持することができる。また、これに加えて、仕切板3a、3bにそれぞれ断面コ字状を呈する一対の切欠部3dが2組設けられているものとしたが、仕切部3で区画した土壌間に植物の根や水が行き来できるように切欠部3dが形成されていれば、切欠部3dの形状や配置、数などは特に限定を必要とするものではない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態に係る緑化システムを示す平面図である。
【図2】図1のX−X線矢視図である。
【図3】図1の緑化システムの一部を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る緑化システムに具備される脚部を示す上面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る緑化システムに具備される脚部を示す側面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る緑化システムに具備される脚部を示す下面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る緑化システムに具備される仕切部の分解斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る緑化システムに具備される貯水部を積み重ねた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 貯水パネル(貯水部)
1a 側壁
1b 底板
1c 開口部
2 植栽部
3 仕切部
3a 仕切板
3b 仕切板
3c 嵌合部
3d 切欠部
4 吸水帯
5 外装板
5a 突出部
6 角部
7 側壁部
7a 側壁板
7b 係合部
7c 突部
7d 保持溝
8 底板部
8a 排水孔(貫通孔)
9 脚部
9a 係合溝
9b 凹部
9c 脚
10 空間
11 空間
12 通水路
A 緑化システム
T 人工地盤
T1 敷設面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁と底板を有し上端側に開口部を備えた箱状の貯水部と、該貯水部の前記側壁と前記底板で画成される空間の上方に植物が植栽される土壌を収容する空間を画成する植栽部とを備えた緑化システムであって、
前記貯水部は、前記側壁の前記底板と繋がる下端側が前記上端よりも内側に配されて形成されており、前記植栽部は、前記貯水部の前記側壁の上方でかつ該側壁に沿って配設される複数の側壁板からなる側壁部と、前記側壁板を保持する略棒状の複数の脚部と、貫通孔を有し、前記側壁部の内側に設置されて前記貯水部の側壁と底板で画成される空間と前記土壌を収容する空間を、前記貫通孔を介して連通させつつ区画する略平板状の底板部とを備えており、
前記脚部は、上端側に、該上端から下端に向けて延びる複数の係合溝が設けられ、下端側に、分岐するように形成された複数の脚が設けられ、隣り合う前記脚の間に前記貯水部の側壁を挿入して設置されるとともに、前記側壁板を前記係合溝に係合させて着脱可能に保持することを特徴とする緑化システム。
【請求項2】
請求項1記載の緑化システムにおいて、
前記貯水部の前記側壁は、前記上端側から前記下端に向かうに従い漸次内側に傾斜するように形成されていることを特徴とする緑化システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の緑化システムにおいて、
外装板が、前記脚部の複数の係合溝のうち前記側壁板が係合されていない他の係合溝に係合されつつ保持されて前記側壁板を覆うように外周側に設けられていることを特徴とする緑化システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の緑化システムにおいて、
前記植栽部の前記土壌を収容する空間内に、上方側からの平面視で該空間を分割して区画する仕切部が設置されており、該仕切部は、略矩形平板状の複数の仕切板がそれぞれの前記仕切板に形成された嵌合溝を介して互いに交差するように分離可能に嵌合されて形成されていることを特徴とする緑化システム。
【請求項5】
請求項4記載の緑化システムにおいて、
前記仕切板には、前記仕切部で分割して区画した前記空間を連通させる切欠部が設けられていることを特徴とする緑化システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の緑化システムにおいて、
前記底板部には、前記貯水部に貯留した水を、前記貫通孔を通じて前記土壌に供給するための吸水帯が取り付けられていることを特徴とする緑化システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−209299(P2007−209299A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35110(P2006−35110)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】