緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品
【課題】 大量生産に適し、更に安全性が確保された緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品の開発を提供する。
【解決手段】 基食素材2と、茶葉を原料とする呈色素材3とを含み、これらが可食状態に加工される食品であって、基食素材2は穀物由来材料であり、また呈色素材3は、含有されている銅イオン量が把握された銅イオン水W1と、茶葉6とが混合され、更に加熱されて銅クロロフィル化処理が施された茶加工品であって、このものは、水分中に茶葉成分が溶出または分散した状態の液茶7であることを特徴として成り、呈色素材3は大量生産が可能であるため、緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品1の大量生産が可能となり、安価な製品として市場に提供することが可能となる。
【解決手段】 基食素材2と、茶葉を原料とする呈色素材3とを含み、これらが可食状態に加工される食品であって、基食素材2は穀物由来材料であり、また呈色素材3は、含有されている銅イオン量が把握された銅イオン水W1と、茶葉6とが混合され、更に加熱されて銅クロロフィル化処理が施された茶加工品であって、このものは、水分中に茶葉成分が溶出または分散した状態の液茶7であることを特徴として成り、呈色素材3は大量生産が可能であるため、緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品1の大量生産が可能となり、安価な製品として市場に提供することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基食素材としての穀物に添加される茶葉本来の鮮やかな緑色発色を維持することのできる穀物加工食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、天ぷら、茶飯、茶そば等の和食や、和菓子、氷菓、洋菓子等の食品に抹茶等の粉末茶を加えることにより、茶の風味を各種食品に付与することが広く行われている。
しかしながらただ単に抹茶等を加えた場合には、クロロフィルの変質により茶葉本来の緑色ではなく、黄緑色、褐色に変色してしまっているのが実情である。これは緑色を呈するクロロフィルは、光、熱、酸に極めて弱く、更に水が共存した状態ではポリフェノール類の酸化重合等により褐色化してしまうからである。
特に米、そば等の穀物を基食素材とする場合、消費する(口にする)ためには加熱処理が必須であるため、緑色発色の低下は避けることができなかった。
【0003】
このような緑色発色の低下を防ぐために、例えば茶そばを作る際に、炭酸マグネシウムを生地に加えることにより、退色、褐変の速度を大幅に遅らすことのできる先行技術も存在する(例えば特許文献1参照)。
しかしながらこのような手法によると、茶そばとしては本来は不要である成分が混入されるため、滋味を損ねてしまうといった弊害がある。
【0004】
ところで茶葉等の植物成分本来の緑色を保持するための技術として、クロロフィル中のマグネシウムを銅イオンに置換する銅クロロフィル化と呼ばれる手法が知られており、茶の抽出液や葉の緑色を維持した状態で製品として提供することが可能となっている(例えば特許文献2、3参照)。
これら茶葉本来の緑色を保持するための技術は、茶抽出液や葉を銅製の鍋で煮沸することにより鍋から溶出した銅イオンをクロロフィルに作用させたり、茶抽出液を銅粒が充填されたカラムに流し込んでクロロフィルと銅粒とを接触させる等の手法が採られるものである。
しかしながらこれらの手法にあっては、銅イオンの溶出量の把握が困難であり、更に銅の溶出速度が遅いため、少量生産ではさほど問題は無いが、大量生産には不向きなものであった。
また銅は人間にとって必須の元素ではあるものの、過剰に摂取されることは好ましくないため、銅イオンの溶出量が把握できない従来手法は、安全性が確保されたものとは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−224599号公報
【特許文献2】特許第3538167号公報
【特許文献3】特開平7−112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような背景を考慮してなされたものであって、安全性が確保されるとともに大量生産に適した、新規な緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品の開発を技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち請求項1記載の緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品は、基食素材と、茶葉を原料とする呈色素材とを含み、これらが可食状態に加工される食品であって、前記基食素材は穀物由来材料であり、また前記呈色素材は、含有されている銅イオン量が把握された銅イオン水と、茶葉とが混合され、更に加熱されて銅クロロフィル化処理が施された茶加工品であって、このものは、水分中に茶葉成分が溶出または分散した状態の液茶であることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項2記載の緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品は、基食素材と、茶葉を原料とする呈色素材とを含み、これらが可食状態に加工される食品であって、前記基食素材は穀物由来材料であり、また前記呈色素材は、含有されている銅イオン量が把握された銅イオン水と、茶葉とが混合され、更に加熱されて銅クロロフィル化処理が施された茶加工品であって、このものは、水分中に茶葉成分が溶出または分散した状態のものを、そのままあるいは濾過した後に、乾燥させた加工茶葉であることを特徴として成るものである。
【0009】
更にまた請求項3記載の緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品は、前記要件に加え、前記基食素材は、一種または二種以上の穀物が炊き上げまたは蒸煮されたものであることを特徴として成るものである。
【0010】
更にまた請求項4記載の緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品は、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記基食素材は、一種または二種以上の穀物が炊き上げまたは蒸煮されたものを、更に成形、焼き上げ、油揚げまたは蒸煮したものであることを特徴として成るものである。
【0011】
更にまた請求項5記載の緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品は、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記基食素材は、一種または二種以上の穀物が粉末状とされ、このものに水を加えて混練した後、乾燥、焼き上げ、油揚げまたは蒸煮されたものであることを特徴として成るものである。
【0012】
更にまた請求項6記載の緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品は、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記基食素材は、一種または二種以上の穀物が加熱処理され、このものを二次加工して得られたものであることを特徴として成るものである。
そしてこれら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0013】
まず請求項1記載の発明によれば、緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品を市場に供給するにあたり、穀物加工食品に含まれる銅の量が把握されているため、消費者は一日の所要量あるいは摂取制限量以上に摂取してしまうのを回避することができる。
また呈色素材は大量生産が可能であるため、緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品の大量生産が可能となり、安価な製品として市場に提供することが可能となる。
更にまた呈色素材として液茶が用いられることにより、特に液状の基食素材に対して馴染んだ状態で混合することができ、茶葉成分が均等に分散した穀物加工食品を実現することができる。
【0014】
また請求項2記載の発明によれば、緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品を市場に供給するにあたり、穀物加工食品に含まれる銅の量が把握されているため、消費者は一日の所要量あるいは摂取制限量以上に摂取してしまうのを回避することができる。
また呈色素材は大量生産が可能であるため、緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品の大量生産が可能となり、安価な製品として市場に提供することが可能となる。
更にまた呈色素材として用いられる加工茶葉は乾燥状態のものであるため、特に乾燥状態の基食素材や水分の添加が好ましくない基食素材に対して良好な状態で混合することができ、茶葉成分が均等に分散した穀物加工食品を実現することができる。
【0015】
更にまた請求項3記載の発明によれば、穀物加工食品としての米飯、おこわ等を、緑色発色が鮮明に維持されたものとして提供することが可能となる。
【0016】
更にまた請求項4記載の発明によれば、穀物加工食品としてのおにぎり、おはぎ、寿司、もち、せんべい、あられ、おかゆ等を、緑色発色が鮮明に維持されたものとして提供することが可能となる。
【0017】
更にまた請求項5記載の発明によれば、穀物加工食品としての麺類、パン、クッキー、ビスケット、かすてら、てんぷら、ドーナツ、まんじゅう、ういろう、ライスペーパー等を、緑色発色が鮮明に維持されたものとして提供することが可能となる。
【0018】
更にまた請求項6記載の発明によれば、穀物加工食品としてのチョコレート、豆腐等を、緑色発色が鮮明に維持されたものとして提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】呈色素材の製造工程を示すフローである。
【図2】液茶の製造工程を示す概念図である。
【図3】加工茶葉の製造工程を示す概念図である。
【図4】本発明の穀物加工食品としての茶飯並びに既存の粉茶が混入された茶飯の表面を示す写真である。
【図5】本発明の穀物加工食品としての無洗米並びに既存の粉茶がコーティングされた無洗米の表面を示す写真である。
【図6】本発明の穀物加工食品としてのおはぎ並びに既存の粉茶が混入されたおはぎの表面を示す写真である。
【図7】本発明の穀物加工食品としてのあられの表面を示す写真である。
【図8】本発明の穀物加工食品としての団子並びに既存の粉茶が混入された団子の断面を示す写真である。
【図9】本発明の穀物加工食品としてのパン並びに既存の粉茶が混入されたパンの断面を示す写真である。
【図10】本発明の穀物加工食品としてのうどん並びに既存の粉茶が混入されたうどんの表面を示す写真である。
【図11】本発明の穀物加工食品としての中華まん並びに既存の粉茶が混入された中華まんの表面を示す写真である。
【図12】本発明の穀物加工食品としての豆腐並びに既存の粉茶が混入された豆腐の表面を示す写真である。
【図13】本発明の穀物加工食品としてのチョコレートの表面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品1(以下、単に穀物加工食品1と呼ぶ。)について説明を行う。
まず本発明の穀物加工食品1は、基食素材2と、茶葉を原料とする呈色素材3とを含み、これらが可食状態に加工される食品である。
ここで可食状態とは、基食素材2に対して加熱処理が施されて実際に消費する(口にする)ことができる状態を意味するものであり、一方、基食素材2が未加熱等の状態であって、その状態では消費する(口にする)ことができない状態を適食状態とするものである。
そして前記基食素材2としては穀物由来材料が採用されるものであり、米、麦、粟(あわ)、豆、黍(きび)、稗(ひえ)、とうもろこし、もろこし、そば等の穀物類が、穀粒状態のまま、あるいは粉末状とした状態で使用される。
【0021】
前記米としては、ジャポニカ種、インディカ種、ジャバニカ種等の品種のものが挙げられ、更にいわゆるうるち米、もち米として分類されるものが挙げられる。
なお米を粉末状にした上新粉、もち米を粉末状にした白玉粉も基食素材2として用いられる。
【0022】
また前記麦としては、小麦、大麦、ライ麦、燕麦が挙げられ、更に粉末状にした小麦粉、はったい粉(大麦粉)、ライ麦粉も基食素材2として用いられる。
【0023】
また前記豆としては、マメ科の豆である大豆、小豆、えんどう豆、いんげん豆、うずら豆、ライマメ、グリーンピース、花豆、そら豆、ささげ、黒目豆、ひよこ豆、緑豆、レンズ豆、イナゴマメ(キャロブ)、落花生、グアー豆、ナタマメ、等が挙げられる。
更に前記豆としては、マメ科以外の豆であるカカオ豆等も挙げられる。
【0024】
次に前記呈色素材3は請求項1で定義したように、含有されている銅イオン量が把握された銅イオン水5と、茶葉6とが混合され、更に加熱されて銅クロロフィル化処理が施された茶加工品であって、水分中に茶葉成分が溶出または分散した状態の液茶7として用いられるものである。
また呈色素材3としては請求項2で定義したように、含有されている銅イオン量が把握された銅イオン水5と、茶葉6とが混合され、更に加熱されて銅クロロフィル化処理が施された茶加工品であって、水分中に茶葉成分が溶出または分散した状態のもの(銅クロロフィル化液L1)を濾過した後に、固形状物を乾燥させた加工茶葉8の形態で用いることもできる。また前記銅クロロフィル化液L1を、そのまま乾燥させた加工茶葉81の形態で用いることもできる。更にまた前記銅クロロフィル化液L1を濾過して得られる液状物を液茶70として用いたり、このものを乾燥させて加工茶葉80として用いることもできる。
【0025】
次に前記茶葉6は、一例としてやぶきた品種の生茶葉T0を原材料とするものであるが、他の品種更には今後現れる新たな品種を原材料とすることもできる。
また茶葉6としては一番芽、二番芽に加え、三番芽、更には四番芽や芽以外のものであって、従来は製品とすることができずに刈り落とされていた茶葉を用いることも可能である。因みに、三番芽、四番芽及び芽以外の茶葉には、多くのクロロフィルが含まれており、このものを用いた茶葉6は鮮やかな緑色を呈するものである。
【0026】
そして前記呈色素材3としての液茶7は、一例として図1に示すような銅イオン水調製工程S1、不活化工程S2、粉砕工程S3、原料液調製工程S4及び銅クロロフィル化処理工程S5が順次実行されるフローに従って製造されるものである。また呈色素材としての加工茶葉8は、銅クロロフィル化処理工程S5の次段に乾燥・粉末化工程S7が追加され、これらが順次実行されるフローに従って製造されるものである。
なお前記原料液調製工程S4と銅クロロフィル化処理工程S5との間あるいは銅クロロフィル化処理工程S5の後段には、塩基物添加工程S8が設けられる。
以下これら各工程について図2、3の概念図を参照しながら説明する。
【0027】
(1)銅イオン水調製工程
まず銅イオン水調製工程S1は、図2に示すように銅または銅を含む合金を素材として成る電極101、102を電解槽103内に配して構成された調製装置100を用いて、電極101、102に通電することにより、これらの間に位置する水Wに銅イオンを溶出させて銅イオン水W1を得るための工程である。
なお電解槽103に投入される水Wに、可食性キレート剤Cを添加することにより、最大溶解度を高めて銅イオンの析出を抑えることができる。この様に可食性キレート剤Cを添加したときには、水W中に溶出した銅イオンはその一部または全部が錯体(錯イオン)の状態となる(一例としてグリシンが用いられた場合、グリシナト銅となる。)。
ここで前記可食性キレート剤Cとしては、EDTA、フィチン酸、リンゴ酸、グルコン酸、コウジ酸、クエン酸、システイン、グルタチオン、ハロゲン化塩、グルコン酸ナトリウム、グリシンの中から選択される一または複数のものが採用される。なお可食性キレート剤Cとしては好ましくはシステインまたはグルタチオンが採用され、更に好ましくはハロゲン化塩、グルコン酸ナトリウムが採用され、より更に好ましくはグリシンが採用される。更に前記可食性キレート剤Cとしては、加水分解によって上述した物質となる物質を用いることもできる。
また前記水Wに対する可食性キレート剤Cの添加量は、0.01重量%(100mg/l)以上とするものである。
【0028】
なお可食性キレート剤Cを添加することにより、銅イオン水調製工程1における、水Wに対する電極101、102からの銅イオンの溶出速度を高めることができる他、各々の可食性キレート剤Cに特有の作用を液茶7、加工茶葉8ひいては穀物加工食品S1に対して付与することができる。
例えばグリシンは、甘味を呈し、更にうま味を増したり味をまろやかにする効果がある。
またグルコン酸ナトリウムは、食品の味にあまり影響を与えず、酸味、苦味、渋味、甘味の質を和らげることができる。
更にまたシステインは、パン生地に添加することにより、生地を柔らかくする効果がある。
もちろん可食性キレート剤Cとしては上述したものの他、本発明者によって確認されていないものであっても採用することができる。
【0029】
また前記銅イオン水W1に含まれる銅イオンの量は、電極101、102間に印加する電圧、流れる電流及び通電時間を調節することにより、原料液調製工程S4において使用される粉砕茶葉Tに含まれるクロロフィル1重量部に対して、0.1重量部以上となるよう調製されるものである。ここで前記銅イオンの量とは、銅イオンのみならず、銅錯イオンに含まれる銅の量も意味するものとする。
一例として粉砕茶葉100g当たり625mg(クロロフィルaが440mg、クロロフィルbが185mg)のクロロフィルが含まれている場合であって、銅イオン水100重量部に対する粉砕茶葉Tの混合量を0.05〜60重量部とした場合には、銅イオン水W1に含まれる銅イオンの量が、0.3〜375mg/lとなるように調製される。
もちろん予め銅イオン水W1に含まれる銅の量が多いもの(一例として600mg/l、1000mg/l等)を用意しておき、このままあるいは適宜希釈することにより所望の銅濃度として供するようにしてもよい。
なお図2にはバッチ式の調製装置100を示したが、適宜電解槽103に給水口及び排水口を設けるなどして、連続的に銅イオン水W1が得られるように構成してもよい。
【0030】
また銅イオン水調製工程S1を、他の工程とは独立した別の工程で成されるようにしてもよく、この場合には、銅イオン水W1を貯蔵しておき、このものを用いることにより効率的な生産を行うことが可能となる。
【0031】
(2)不活化工程
一方、不活化工程S2においては生茶葉T0の不活化が行われるものであり、生茶葉T0を蒸煮または釜炒りにて加熱することにより、酵素を不活化させる。
更にこの実施例では、不活化後の茶葉の含水率を低下させ、7%程度の含水率の乾燥茶葉が得られるようにした。
なおこのような乾燥にあたっては、生茶葉T0に含まれるクロロフィルを破壊しないようにすることが重要であり、生茶葉T0を蒸熱した後、揉まずに乾燥したり(てん茶)、通常の製茶工程における粗揉あるいは中揉までの揉乾処理を行った後、乾燥を行うようにする。
【0032】
(3)粉砕工程
次いで茶葉粉砕工程S3においては、乾燥茶葉を粒径が20μm〜600μmに粉砕あるいは8mm角以下の小片に加工するものであり、適宜のボールミルやカッターが用いられる。
なおこのように乾燥茶葉を細粒状、小片状とすることにより、クロロフィルが露出した状態となる。
また以下の説明においては、このような細粒状または小片状の乾燥茶葉を、ともに粉砕茶葉Tと呼ぶものとする。
因みに不活化後の茶葉を乾燥することなく原料液調製工程S4に供給し、このものに銅イオン水W1を作用させるような形態を採ることもできる。
【0033】
(4)原料液調製工程
次いで原料液調製工程S4においては、銅イオン水W1と粉砕茶葉Tとを混合して原料液L0を調製するものであり、一例として銅イオン水100重量部に対し、粉砕茶葉Tを0.05〜60重量部混合する。このため原料液調製工程S4において用いられる銅イオン水W1の量に応じて、原料液L0中に含まれている銅イオンの量が把握されることとなる。
なお液茶7または加工茶葉8の成分が酸化してしまうのを防ぐために、原料液L0にビタミンC、ビタミンCナトリウム等を抗酸化剤Vとして加えておくこともできる。更にビタミンCの破壊を防止するためにクエン酸を加えたり、EDTAを加えるようにしてもよい。
【0034】
(5)銅クロロフィル化処理工程
次に銅クロロフィル化処理工程S5においては、前記原料液L0を所定の温度(85〜135℃、好ましくは100〜135℃とすることにより、より確実な殺菌作用も発揮される。)で所定の時間(20〜120分)加熱を行うことにより、粉砕茶葉Tに含まれるクロロフィル中のマグネシウムを、銅イオン水W1に含まれる銅(銅錯イオン中の銅原子)に置換する銅クロロフィル化処理を施す。
なお銅クロロフィル化処理を行うための装置としては、適宜の加熱機能が具えられた密閉型の耐熱容器が用いられる。ここで密閉型の耐熱容器を用いる理由は、100℃以上の高温状態を得ることに加え、水分の蒸発を防止して銅の濃度を一定に保つためである。
更にこの装置には、原料液L0を攪拌するための機構を設けることが好ましい。
またこの銅クロロフィル化処理工程S5においては、粉砕茶葉Tの各種成分が水Wに溶出することとなり、液茶7が得られる。
【0035】
(6)塩基物添加工程
また酸味調整あるいはphの調整が必要な場合には、図1中、仮想線でに示すように、前記原料液調製工程S4と銅クロロフィル化処理工程S5との間あるいは銅クロロフィル化処理工程S5の後段、一例として銅クロロフィル化処理工程S5と包装工程S6との間に、炭酸ナトリウム等の可食性塩基物Aを添加するための塩基物添加工程S8が設けられる。
なお可食性塩基物Aを添加することにより、可食性キレート剤Cによる味、匂いへの影響を除去することができるものであり、特に加工茶葉8の酸臭を除去するのに効果的である。
また可食性塩基物Aとしては、前記炭酸ナトリウムの他、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、燐酸、水酸化ナトリウム等を採用することもできる。この場合、例えば炭酸水素ナトリウム溶液を加熱することにより、二酸化炭素を抜いておくことが好ましい。
【0036】
(7)包装工程
そして液茶7は包装工程S6においてペットボトル、ポーションカップ、紙パック、アルミパウチ等に充填される。
【0037】
以上のようにして製造された液茶7に含有される銅の量(銅イオン、銅錯体または銅化合物中の銅原子の総量)は、原料液調製工程S4において把握されたままの量であるため、適宜希釈する等して例えば成人男性の一日の銅所要量1.8mgあるいは成人女性の一日の銅所要量1.6mg毎に小分けして包装することにより、消費者は所要量を確実に摂取することができるとともに、一日の許容上限摂取量(9mg)を超えて摂取してしまうようなことが回避される。
【0038】
なお図1中、仮想線で示したように、包装工程S6を前記原料液調製工程S4の次段に位置させてもよく、この場合には、原料液L0をペットボトル、ポーションカップ、紙パック、アルミパウチ等に充填した後、このものを湯煎やレトルト釜によって加熱することにより銅クロロフィル化を図るものとする。
もちろんこのような包装工程S6は、呈色素材3を予め製造するとともに貯蔵しておき、穀物加工食品1を製造する際に所要量を用いるような場合に設けられるものであり、銅イオン水調製工程S1、不活化工程S2、粉砕工程S3、原料液調製工程S4及び銅クロロフィル化処理工程S5とともに穀物加工食品1の製造工程も具える設備の場合には、包装工程S6を設けなくてもよい。
【0039】
(8)乾燥・粉末化工程
また呈色素材3として加工茶葉8を製造する場合には、銅クロロフィル化処理工程S5の次段に乾燥・粉末化工程S7が追加されるものである(図1、3参照)。
この乾燥・粉末化工程S7においては、銅クロロフィル化処理工程S5において得られた銅クロロフィル化液L1を濾過して得られた固形物を乾燥することにより加工茶葉8が得られる。なおこの際得られる液状物L2を液茶70として用いたり、この液茶70を乾燥させて加工茶葉80として用いることもできる。
なお乾燥・粉砕化工程S7において、銅クロロフィル化液L1を濾過することなく乾燥させることにより得られるものを、加工茶葉81とする。
【0040】
(9)穀物加工食品の製造工程
そして少なくとも呈色素材3と、穀物由来材料である基食素材2とを含んだ材料を、適食状態または可食状態に加工することにより、本発明の穀物加工食品1が製造される。
以下、呈色素材3としての液茶7及び加工茶葉8並びに穀物加工食品1の様々な実施例を例示する。
なお穀物加工食品1としては請求項3で定義したように、基食素材2を、一種または二種以上の穀物が炊き上げまたは蒸煮されるものとした、米飯、おこわ等が挙げられる。
また他の形態の穀物加工食品1としては請求項4で定義したように、基食素材2を、一種または二種以上の穀物が炊き上げまたは蒸煮されたものを、更に成形、焼き上げ、油揚げ、蒸煮または味付けされるものとした、おにぎり、おはぎ、寿司、もち、せんべい、あられ、おかゆ等が挙げられる。
更にまた他の形態の穀物加工食品1としては請求項5で定義したように、基食素材2を、一種または二種以上の穀物が粉末状とされ、このものに水を加えて混練した後、乾燥、焼き上げ、油揚げまたは蒸煮されるものとした、うどん、そば、ラーメン、そうめん、ひやむぎ、ビーフン、フォー等の麺類、パン、クッキー、ビスケット、かすてら、ケーキ、クレープ、バームクーヘン、マドレーヌ、パイ、てんぷら、ドーナツ、まんじゅう、ういろう、団子、柏餅、すあま、ライスペーパー等が挙げられる。
更にまた他の形態の穀物加工食品1としては請求項6で定義したように、基食素材2を、一種または二種以上の穀物が加熱処理され、このものを二次加工して得られるものとした、チョコレート、豆腐等が挙げられる。
【実施例】
【0041】
(I)液茶としての呈色素材(図2参照)
・原料茶葉として、やぶきた品種四番茶(含有クロロフィル量600mg/100g)を 用いた。
・銅イオン水調製工程S1において、水Wに可食性キレート剤Cとしてグリシンを0.0 1重量%添加した後、通電することにより銅含有量が600mg/lの銅イオン水W1 (グリシナト銅水溶液)を得た。
・不活化工程S2において、生茶葉T0を揉まずに加熱、乾燥して原料茶葉を得た。
・茶葉粉砕工程S3において、原料茶葉を粒径20μm程度に粉砕して粉砕茶葉Tを得た 。
・原料液調製工程S4において、銅イオン水W1を50g、水Wを22.9g、粉砕茶葉 Tを25g混合し、更に抗酸化剤VとしてビタミンCナトリウムを0.1g混合し、更 に可食性塩基物Aとして二酸化炭素を抜いた炭酸水素ナトリウム水溶液(10%)を2 g添加した(塩基物添加工程S8)。これにより粉砕茶葉Tの含有率が25重量%の原 料液L0を得た(銅含有量30mg/100g)。
・銅クロロフィル化処理工程S5において、原料液L0を128℃の温度下で30分間加 熱して、濃縮状態の液茶7を得た(銅含有量30mg/100g)。
【0042】
(II)加工茶葉としての呈色素材(図3参照)
・原料茶葉として、やぶきた品種四番茶(含有クロロフィル量600mg/100g)を 用いた。
・銅イオン水調製工程S1において、水Wに可食性キレート剤Cとしてグリシンを0.0 1重量%添加した後、通電することにより銅含有量が600mmg/lの銅イオン水W 1を得た。
・不活化工程S2において、生茶葉T0を揉まずに加熱、乾燥して原料茶葉を得た。
・茶葉粉砕工程S3において、原料茶葉を8m角に裁断して粉砕茶葉Tを得た。
・原料液調製工程S4において、銅イオン水W1を50g、水Wを22.9g、粉砕茶葉 Tを25g混合し、更に抗酸化剤VとしてビタミンCナトリウムを0.1g混合し、更 に二酸化炭素を抜いた炭酸水素ナトリウム水溶液(10%)を2g添加した(塩基物添 加工程S8。これによ り粉砕茶葉Tの含有率が25重量%の原料液L0を得た(銅含 有量30mg/100g)。
・銅クロロフィル化処理工程S5において、原料液L0を128℃の温度下で30分間加 熱して中間製品L1を得た。
・乾燥・粉砕化工程S7において、中間製品L1を市販のコーヒー用ペーパーフィルター (AVANCE社製)により濾過したのち、分離された固形成分を70℃の温度下で6 0分間乾燥し、含水率6%D.Bにまで乾燥させ、更にその後、粒径20μmに粉砕す ることにより加工茶葉8を得た。
【0043】
このようにして得られた加工茶葉8は、鮮やかな緑色を呈しており、更に濾過により分離された液体成分に含まれていた銅イオンが除かれているため、銅の含有量が30mg未満として把握されているものである。なおこの際得られるろ過液を液茶70とした場合、このものは銅の含有量が30mg未満として把握されているものである。またこの液茶70を乾燥させて得られる加工茶葉80は銅の含有量が30mg未満として把握されているものである。
また乾燥粉末化工程S7において、銅クロロフィル化液L1を濾過することなく乾燥させて得られる加工茶葉81は、銅の含有量が30mgとして把握されたものとなる。
【0044】
(III)穀物加工食品の実施例
(1)米(穀粒)を基食素材とした実施例
〔実施例1:茶飯としての加工食品〕
以下、茶飯11としての穀物加工食品1である実施例1を例示するものであり、各材料の配合を以下に示す。
米(穀粒) :300g(2合、360ml)
水 :432ml
液茶 : 10g(水8g、粉砕茶葉2g)
【0045】
〔比較例1〕
比較例1として、実施例1の液茶7を市販の粉茶に置き換えた茶飯11′を用意する。各材料の配合は以下に示すようにした。
米(穀粒) :300g(2合360ml)
水 :440ml
粉茶 : 2g
【0046】
上記実施例1及び比較例1の米を同じ条件で炊き上げて可食状態とした茶飯11、11′の比較を目視により行った。
図4に実施例1の茶飯11及び比較例1の茶飯11′を撮影した写真を示すものであり、茶飯11は鮮明な緑色を呈していることが確認できる。
なお図中には、丸で囲んだ範囲のウェブ上のカラーチャート(HTMLタグ・カラーチャート、各色256階調で表した数値)のRGB値(平均値)を示してある。
一方、比較例1としての茶飯11′は鮮やかな緑色とはならず、茶色味を帯びて変色してしまっていることが確認できる。
なお茶飯11は数日経過しても鮮明な緑色に変化は無かったが、茶飯11′の場合には変色とともに色褪せていることが確認された。
またこのようにして製造された茶飯11としての穀物加工食品1は、食感、味等が、通常の米飯と遜色ないものとなっており、ほどよい茶の風味が加えられていることが確認された。
【0047】
なお茶飯11においては、液茶7に含まれる粉砕茶葉Tとして、20μm〜600μmの細粒状物と、8mm角以下の小片状物とが混在したものとすることにより、全体に緑色の粒(小片状物)がマーブル状に分散した状態となり、視覚的により自然な印象を与えることが可能となる。もちろん粉砕茶葉Tをこのように混在させることは、茶飯11以外の他の穀物加工食品1においても適用することができる。
また茶飯11を作る際には、呈色素材3としての液茶7、各種具材及び調味料をまとめてパウチに個装するような形態で流通させることが好ましい。
【0048】
また茶飯11を作る際には、呈色素材3として加工茶葉8を用いるようにしてもよく、この場合、各種具材や調味料も乾燥状態としてパウチに個装するような形態で流通させることが好ましい。
更にまた前記茶飯11を製造する際には無洗米110を用いることもでき、この場合には無洗米110を液茶7に浸した後に乾燥することにより、米粒の表面に加工茶葉8がコーティングされた状態のものが用意される(図5参照)。
そして消費者は無洗米に所定量の水を加えて炊き上げることにより、極めて手軽に茶飯11を製造することが可能となる。
【0049】
〔実施例2:おはぎとしての加工食品〕
次に、おはぎ12としての穀物加工食品1である実施例2を例示するものであり、各材料の配合を以下に示す。
もち米 :150g(1合)
水 :250ml
塩 : 3g
液茶 : 12g(水9.6g、粉砕茶葉2.4g)
【0050】
〔比較例2〕
比較例2として、実施例2の液茶7を市販の粉茶に置き換えたおはぎ12′を用意する。各材料の配合は以下に示すようにした。
もち米 :150g(1合)
水 :259.6ml
塩 : 3g
粉茶 : 2.4g
【0051】
上記実施例2及び比較例2のもち米を同じ条件で炊き上げた後、それぞれ液茶7、粉茶を加え、次いで米粒が残る程度につき、1口大程度の俵状にまるめて可食状態としたおはぎ12、12′の比較を目視により行った。
図6に実施例2のおはぎ12及び比較例2のおはぎ12′を撮影した写真を示すものであり、おはぎ12は鮮明な緑色を呈していることが確認できる。
一方、比較例2としてのおはぎ12′は鮮やかな緑色とはならず、茶色味を帯びて変色しまっていることが確認できる。
またこのようにして製造されたおはぎ12としての穀物加工食品1は、食感、味等が、通常のものと遜色ないものとなっており、ほどよい茶の風味が加えられていることが確認された。
【0052】
〔実施例3:あられとしての加工食品〕
次に、あられ13としての穀物加工食品1である実施例3を例示するものであり、各材料の配合を以下に示す。
もち米 :225g
水 :360ml
液茶 : 7.5g(水6g、粉砕茶葉1.5g)
【0053】
上記もち米を炊き上げた後、液茶7を加え、次いでつき上げて餅とし、更に大豆程の大きさに丸め、このものを乾燥させた後、油で揚げることにより可食状態としたあられ13を得た。そして状態観察を目視により行った。
図7に実施例3のあられ13を撮影した写真を示すものであり、あられ13は鮮明な緑色を呈していることが確認できる。
なお比較例1において、一般の粉茶を用いた茶飯11′は炊き上げた時点で変色していることが確認されているため、実施例3に対する比較例3の製作は省略した。
またこのようにして製造されたあられ13としての穀物加工食品1は、食感、味等が、通常のものと遜色ないものとなっており、ほどよい茶の風味が加えられていることが確認された。
【0054】
〔実施例4:団子としての加工食品〕
次に、団子14としての穀物加工食品1である実施例4を例示するものであり、各材料の配合を以下に示す。
上新粉 :230g
ぬるま湯 :180g
液茶 : 16g(水12.8g、粉砕茶葉3.2g)
【0055】
〔比較例4〕
比較例4として、実施例4の液茶7を市販の粉茶に置き換えた団子14′を用意する。各材料の配合は以下に示すようにした。
上新粉 :230g
ぬるま湯 :192.8g
粉茶 : 3.2g
【0056】
上記実施例4及び比較例4の上新粉に、それぞれぬるま湯及び液茶7、粉茶を加え、次いで1口大程度にまるめた後、蒸し上げることにより可食状態とした団子14、14′を得た。その後、比較を目視により行った。
図8に実施例4の団子14及び比較例4の団子14′を撮影した写真を示すものであり、団子14は鮮明な緑色を呈していることが確認できる。
一方、比較例4としての団子14′は鮮やかな緑色とはならず、茶色味を帯びて変色しまっていることが確認できる。
またこのようにして製造された団子14としての穀物加工食品1は、食感、味等が、通常のものと遜色ないものとなっており、ほどよい茶の風味が加えられていることが確認された。
【0057】
(2)小麦粉を基食素材とした実施例
〔実施例5:パンとしての加工食品〕
以下、パン15としての穀物加工食品1である実施例5を例示するものであり、各材料の配合は以下に示すようにした。
強力粉 :300g
砂糖 : 12g
塩 : 5g
バター : 15g
イースト : 5g
お湯 :200ml
液茶 : 15g(水12g、粉砕茶葉3g)
【0058】
〔比較例5〕
比較例5として、実施例5の液茶7を市販の粉茶に置き換えたパン15′を用意する。各材料の配合は以下に示すようにした。
強力粉 :300g
砂糖 : 12g
塩 : 5g
バター : 15g
イースト : 5g
お湯 :212ml
粉茶 : 3g
【0059】
上記実施例5及び比較例5の材料をこねた後、同じ条件で醗酵させ、成形したパン生地を同じ条件で焼成してパン15、15′を得た。
この際、液茶7は液状であるため、このものをお湯に投入することにより、 粉砕茶葉Tが素早くお湯の全域に分散することとなり、この状態のものを他の材料と合わせることにより、茶葉成分が均等に分散したパン生地を得ることができた。因みに呈色素材3として加工茶葉8を用いる場合には、このものを強力粉に混ぜた後、お湯を加えることにより、茶葉成分が均等に分散したパン生地を得ることができる。
図9に実施例5のパン15及び比較例5のパン15′の断面を撮影した写真を示すものであり、パン15は鮮明な緑色を呈していることが確認できる。
一方、比較例5としてのパン15′は鮮やかな緑色とはならず、茶色味を帯びて変色してしまっていることが確認できる。
なおパン15は数日経過しても鮮明な緑色に変化は無かったが、パン15′の場合には変色とともに色褪せていることが確認された。
またこのようにして製造されたパン15としての穀物加工食品1は、食感、味等が、本来の原料により製造されたものと遜色ないものとなっており、ほどよい茶の風味が加えられていることが確認された。
【0060】
〔実施例6:うどんとしての加工食品〕
次に、うどん16としての穀物加工食品1である実施例6を例示するものであり、各材料の配合は以下に示すようにした。
小麦粉 :400g
食塩 : 18g
水 :160ml
液茶 : 15g(水12g、粉砕茶葉3g)
【0061】
〔比較例6〕
比較例6として、実施例6の液茶7を市販の粉茶に置き換えたうどん16′を用意する。各材料の配合は以下に示すようにした。
小麦粉 :400g
食塩 : 18g
水 :172ml
粉茶 : 3g
【0062】
そして、まず小麦粉に、食塩、水を加えよく捏ねる。その後、30分以上ねかせ、生地を延ばして細く切る。そして沸騰している湯で10分程度ゆでた後、冷水にさらすことにより、可食状態の加工食品であるうどん16が得られる。
この際、液茶7は液状であるため、このものを水に投入することにより、 粉砕茶葉Tが素早く水の全域に分散することとなり、この状態のものを他の材料と合わせることにより、茶葉成分が均等に分散したうどん生地を得ることができた。因みに呈色素材3として加工茶葉8を用いる場合には、このものを小麦粉に混ぜた後、水を加えることにより、茶葉成分が均等に分散したうどん生地を得ることができる。
なお細く切った生地をゆでることなく乾燥させることにより適食状態し、この状態で市場に提供し、消費者が自宅等でゆでることにより、可食状態とするような流通の仕方も可能である。
図10に実施例6のうどん16及び比較例5のうどん16′を撮影した写真を示すものであり、うどん16は鮮明な緑色を呈していることが確認できる。
一方、比較例6としてのうどん16′は鮮やかな緑色とはならず、茶色味を帯びてしまっていることが確認できる。
またこのようにして製造されたうどん16としての穀物加工食品1は、麺の食感、コシ、味等が、本来の原料により製造されたものと遜色ないものとなっており、ほどよい茶の風味が加えられていることが確認された。
【0063】
〔実施例7:中華まんとしての加工食品〕
以下、中華まん17としての穀物加工食品1である実施例7を例示するものであり、各材料の配合(生地のみ)は以下に示すようにした。
薄力粉 :250g
強力粉 : 50g
砂糖 : 10g
塩 : 2g
イースト : 2g
お湯(40℃):160ml
液茶 : 12g(水9.6g、粉砕茶葉2.4g)
【0064】
〔比較例7〕
比較例7として、実施例7の液茶7を市販の粉茶に置き換えた中華まん17′を用意する。各材料の配合は以下に示すようにした。
薄力粉 :250g
強力粉 : 50g
砂糖 : 10g
塩 : 2g
イースト : 2g
お湯(40℃):169.6ml
粉茶 : 2.4g
【0065】
上記実施例7及び比較例7の材料で作った生地に小豆餡を包んだ後、同じ条件で蒸煮し、膨化させた中華まん17、17′の比較を目視により行った。
この際、液茶7は液状であるため、このものを水に投入することにより、 粉砕茶葉Tが素早くお湯の全域に分散することとなり、この状態のものを他の材料と合わせることにより、茶葉成分が均等に分散した生地を得ることができた。因みに呈色素材3として加工茶葉8を用いる場合には、このものを小麦粉に混ぜた後、お湯を加えることにより、茶葉成分が均等に分散した生地を得ることができる。
図11に実施例7の中華まん17及び比較例7の中華まん17′の断面を撮影した写真を示すものであり、中華まん17は鮮明な緑色を呈していることが確認できる。
一方、比較例7としての中華まん17′は鮮やかな緑色とはならず、茶色味を帯びてしまっていることが確認できる。
またこのようにして製造された中華まん17としての穀物加工食品1は、食感、味等が、本来の原料により製造されたものと遜色ないものとなっており、ほどよい茶の風味が加えられていることが確認された。
【0066】
(3)豆類を基食素材とした実施例
〔実施例8:豆腐としての加工食品〕
以下、豆腐18としての穀物加工食品1である実施例8を例示するものであり、各材料の配合は以下に示すようにした。
豆乳 :500ml
にがり : 7g
液茶 : 20g(水16g、粉砕茶葉4g)
【0067】
〔比較例8〕
比較例8として、実施例8の液茶7を市販の粉茶に置き換えた豆腐18′を用意する。各材料の配合は以下に示すようにした。
豆乳 :516ml
にがり : 7g
粉茶 : 4g
【0068】
上記実施例8及び比較例8の豆乳を70〜75℃に加熱してにがりを加え、軽く混ぜた後、固まるまでふたをして10分ほどおく。
やがて豆乳が固まったら、ふきんを敷いたざるに入れ、15分ほど重しをすることにより、豆腐18、18′が得られる。
この際、液茶7は液状であるため、このものを豆乳に投入する際に、粉砕茶葉Tが素早く豆乳の全域に分散することとなり、茶葉成分が均等に分散した豆腐18を得ることができた。
そして豆腐18、18′の比較を目視により行った。図12に実施例8の豆腐18及び比較例8の豆腐18′の表面を撮影した写真を示すものであり、豆腐18は鮮明な緑色を呈していることが確認できる。
一方、比較例8としての豆腐18′は鮮やかな緑色とはならず、茶色味を帯びてしまっていることが確認できる。
またこのようにして製造された豆腐18としての穀物加工食品1は、食感、味等が、本来の原料により製造されたものと遜色ないものとなっており、ほどよい茶の風味が加えられていることが確認された。
【0069】
〔実施例9:チョコレートとしての加工食品〕
以下、チョコレート19としての穀物加工食品1である実施例9を例示するものであり、市販のホワイトチョコレート100gを50℃程度のお湯を用いて湯せんにて溶かし、このものに加工茶葉8を2g加えてよく混ぜた後、型に入れて固めることによりチョコレート19を得た。
この際、加工茶葉8は乾燥状態のものであるため、水分の添加が好ましくない基食素材2であるホワイトチョコレートに対して良好な状態で混合することができ、茶葉成分が均等に分散したチョコレート19を得ることができた。
図10に実施例9のチョコレート19を撮影した写真を示すものであり、チョコレート19は鮮明な緑色を呈していることが確認できる。
またこのようにして製造されたチョコレート19としての穀物加工食品1は、食感、味等が、本来の原料により製造されたものと遜色ないものとなっており、ほどよい茶の風味が加えられていることが確認された。
【符号の説明】
【0070】
1 穀物加工食品
11 茶飯
110 無洗米
12 おはぎ
13 あられ
14 団子
15 パン
16 うどん
17 中華まん
18 豆腐
19 チョコレート
2 基食素材
3 呈色素材
6 茶葉
7 液茶
70 液茶
8 加工茶葉
80 加工茶葉
81 加工茶葉
100 調製装置
101 電極
102 電極
103 電解槽
A 可食性塩基物
C 可食性キレート剤
L0 原料液
L1 中間製品
S1 銅イオン水調製工程
S2 不活化工程
S3 粉砕工程
S4 原料液調製工程
S5 銅クロロフィル化処理工程
S6 包装工程
S7 乾燥・粉末化工程
S8 塩基物添加工程
T 粉砕茶葉
T0 生茶葉
V 抗酸化剤
W 水
W1 銅イオン水
【技術分野】
【0001】
本発明は基食素材としての穀物に添加される茶葉本来の鮮やかな緑色発色を維持することのできる穀物加工食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、天ぷら、茶飯、茶そば等の和食や、和菓子、氷菓、洋菓子等の食品に抹茶等の粉末茶を加えることにより、茶の風味を各種食品に付与することが広く行われている。
しかしながらただ単に抹茶等を加えた場合には、クロロフィルの変質により茶葉本来の緑色ではなく、黄緑色、褐色に変色してしまっているのが実情である。これは緑色を呈するクロロフィルは、光、熱、酸に極めて弱く、更に水が共存した状態ではポリフェノール類の酸化重合等により褐色化してしまうからである。
特に米、そば等の穀物を基食素材とする場合、消費する(口にする)ためには加熱処理が必須であるため、緑色発色の低下は避けることができなかった。
【0003】
このような緑色発色の低下を防ぐために、例えば茶そばを作る際に、炭酸マグネシウムを生地に加えることにより、退色、褐変の速度を大幅に遅らすことのできる先行技術も存在する(例えば特許文献1参照)。
しかしながらこのような手法によると、茶そばとしては本来は不要である成分が混入されるため、滋味を損ねてしまうといった弊害がある。
【0004】
ところで茶葉等の植物成分本来の緑色を保持するための技術として、クロロフィル中のマグネシウムを銅イオンに置換する銅クロロフィル化と呼ばれる手法が知られており、茶の抽出液や葉の緑色を維持した状態で製品として提供することが可能となっている(例えば特許文献2、3参照)。
これら茶葉本来の緑色を保持するための技術は、茶抽出液や葉を銅製の鍋で煮沸することにより鍋から溶出した銅イオンをクロロフィルに作用させたり、茶抽出液を銅粒が充填されたカラムに流し込んでクロロフィルと銅粒とを接触させる等の手法が採られるものである。
しかしながらこれらの手法にあっては、銅イオンの溶出量の把握が困難であり、更に銅の溶出速度が遅いため、少量生産ではさほど問題は無いが、大量生産には不向きなものであった。
また銅は人間にとって必須の元素ではあるものの、過剰に摂取されることは好ましくないため、銅イオンの溶出量が把握できない従来手法は、安全性が確保されたものとは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−224599号公報
【特許文献2】特許第3538167号公報
【特許文献3】特開平7−112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような背景を考慮してなされたものであって、安全性が確保されるとともに大量生産に適した、新規な緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品の開発を技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち請求項1記載の緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品は、基食素材と、茶葉を原料とする呈色素材とを含み、これらが可食状態に加工される食品であって、前記基食素材は穀物由来材料であり、また前記呈色素材は、含有されている銅イオン量が把握された銅イオン水と、茶葉とが混合され、更に加熱されて銅クロロフィル化処理が施された茶加工品であって、このものは、水分中に茶葉成分が溶出または分散した状態の液茶であることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項2記載の緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品は、基食素材と、茶葉を原料とする呈色素材とを含み、これらが可食状態に加工される食品であって、前記基食素材は穀物由来材料であり、また前記呈色素材は、含有されている銅イオン量が把握された銅イオン水と、茶葉とが混合され、更に加熱されて銅クロロフィル化処理が施された茶加工品であって、このものは、水分中に茶葉成分が溶出または分散した状態のものを、そのままあるいは濾過した後に、乾燥させた加工茶葉であることを特徴として成るものである。
【0009】
更にまた請求項3記載の緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品は、前記要件に加え、前記基食素材は、一種または二種以上の穀物が炊き上げまたは蒸煮されたものであることを特徴として成るものである。
【0010】
更にまた請求項4記載の緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品は、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記基食素材は、一種または二種以上の穀物が炊き上げまたは蒸煮されたものを、更に成形、焼き上げ、油揚げまたは蒸煮したものであることを特徴として成るものである。
【0011】
更にまた請求項5記載の緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品は、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記基食素材は、一種または二種以上の穀物が粉末状とされ、このものに水を加えて混練した後、乾燥、焼き上げ、油揚げまたは蒸煮されたものであることを特徴として成るものである。
【0012】
更にまた請求項6記載の緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品は、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記基食素材は、一種または二種以上の穀物が加熱処理され、このものを二次加工して得られたものであることを特徴として成るものである。
そしてこれら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0013】
まず請求項1記載の発明によれば、緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品を市場に供給するにあたり、穀物加工食品に含まれる銅の量が把握されているため、消費者は一日の所要量あるいは摂取制限量以上に摂取してしまうのを回避することができる。
また呈色素材は大量生産が可能であるため、緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品の大量生産が可能となり、安価な製品として市場に提供することが可能となる。
更にまた呈色素材として液茶が用いられることにより、特に液状の基食素材に対して馴染んだ状態で混合することができ、茶葉成分が均等に分散した穀物加工食品を実現することができる。
【0014】
また請求項2記載の発明によれば、緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品を市場に供給するにあたり、穀物加工食品に含まれる銅の量が把握されているため、消費者は一日の所要量あるいは摂取制限量以上に摂取してしまうのを回避することができる。
また呈色素材は大量生産が可能であるため、緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品の大量生産が可能となり、安価な製品として市場に提供することが可能となる。
更にまた呈色素材として用いられる加工茶葉は乾燥状態のものであるため、特に乾燥状態の基食素材や水分の添加が好ましくない基食素材に対して良好な状態で混合することができ、茶葉成分が均等に分散した穀物加工食品を実現することができる。
【0015】
更にまた請求項3記載の発明によれば、穀物加工食品としての米飯、おこわ等を、緑色発色が鮮明に維持されたものとして提供することが可能となる。
【0016】
更にまた請求項4記載の発明によれば、穀物加工食品としてのおにぎり、おはぎ、寿司、もち、せんべい、あられ、おかゆ等を、緑色発色が鮮明に維持されたものとして提供することが可能となる。
【0017】
更にまた請求項5記載の発明によれば、穀物加工食品としての麺類、パン、クッキー、ビスケット、かすてら、てんぷら、ドーナツ、まんじゅう、ういろう、ライスペーパー等を、緑色発色が鮮明に維持されたものとして提供することが可能となる。
【0018】
更にまた請求項6記載の発明によれば、穀物加工食品としてのチョコレート、豆腐等を、緑色発色が鮮明に維持されたものとして提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】呈色素材の製造工程を示すフローである。
【図2】液茶の製造工程を示す概念図である。
【図3】加工茶葉の製造工程を示す概念図である。
【図4】本発明の穀物加工食品としての茶飯並びに既存の粉茶が混入された茶飯の表面を示す写真である。
【図5】本発明の穀物加工食品としての無洗米並びに既存の粉茶がコーティングされた無洗米の表面を示す写真である。
【図6】本発明の穀物加工食品としてのおはぎ並びに既存の粉茶が混入されたおはぎの表面を示す写真である。
【図7】本発明の穀物加工食品としてのあられの表面を示す写真である。
【図8】本発明の穀物加工食品としての団子並びに既存の粉茶が混入された団子の断面を示す写真である。
【図9】本発明の穀物加工食品としてのパン並びに既存の粉茶が混入されたパンの断面を示す写真である。
【図10】本発明の穀物加工食品としてのうどん並びに既存の粉茶が混入されたうどんの表面を示す写真である。
【図11】本発明の穀物加工食品としての中華まん並びに既存の粉茶が混入された中華まんの表面を示す写真である。
【図12】本発明の穀物加工食品としての豆腐並びに既存の粉茶が混入された豆腐の表面を示す写真である。
【図13】本発明の穀物加工食品としてのチョコレートの表面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品1(以下、単に穀物加工食品1と呼ぶ。)について説明を行う。
まず本発明の穀物加工食品1は、基食素材2と、茶葉を原料とする呈色素材3とを含み、これらが可食状態に加工される食品である。
ここで可食状態とは、基食素材2に対して加熱処理が施されて実際に消費する(口にする)ことができる状態を意味するものであり、一方、基食素材2が未加熱等の状態であって、その状態では消費する(口にする)ことができない状態を適食状態とするものである。
そして前記基食素材2としては穀物由来材料が採用されるものであり、米、麦、粟(あわ)、豆、黍(きび)、稗(ひえ)、とうもろこし、もろこし、そば等の穀物類が、穀粒状態のまま、あるいは粉末状とした状態で使用される。
【0021】
前記米としては、ジャポニカ種、インディカ種、ジャバニカ種等の品種のものが挙げられ、更にいわゆるうるち米、もち米として分類されるものが挙げられる。
なお米を粉末状にした上新粉、もち米を粉末状にした白玉粉も基食素材2として用いられる。
【0022】
また前記麦としては、小麦、大麦、ライ麦、燕麦が挙げられ、更に粉末状にした小麦粉、はったい粉(大麦粉)、ライ麦粉も基食素材2として用いられる。
【0023】
また前記豆としては、マメ科の豆である大豆、小豆、えんどう豆、いんげん豆、うずら豆、ライマメ、グリーンピース、花豆、そら豆、ささげ、黒目豆、ひよこ豆、緑豆、レンズ豆、イナゴマメ(キャロブ)、落花生、グアー豆、ナタマメ、等が挙げられる。
更に前記豆としては、マメ科以外の豆であるカカオ豆等も挙げられる。
【0024】
次に前記呈色素材3は請求項1で定義したように、含有されている銅イオン量が把握された銅イオン水5と、茶葉6とが混合され、更に加熱されて銅クロロフィル化処理が施された茶加工品であって、水分中に茶葉成分が溶出または分散した状態の液茶7として用いられるものである。
また呈色素材3としては請求項2で定義したように、含有されている銅イオン量が把握された銅イオン水5と、茶葉6とが混合され、更に加熱されて銅クロロフィル化処理が施された茶加工品であって、水分中に茶葉成分が溶出または分散した状態のもの(銅クロロフィル化液L1)を濾過した後に、固形状物を乾燥させた加工茶葉8の形態で用いることもできる。また前記銅クロロフィル化液L1を、そのまま乾燥させた加工茶葉81の形態で用いることもできる。更にまた前記銅クロロフィル化液L1を濾過して得られる液状物を液茶70として用いたり、このものを乾燥させて加工茶葉80として用いることもできる。
【0025】
次に前記茶葉6は、一例としてやぶきた品種の生茶葉T0を原材料とするものであるが、他の品種更には今後現れる新たな品種を原材料とすることもできる。
また茶葉6としては一番芽、二番芽に加え、三番芽、更には四番芽や芽以外のものであって、従来は製品とすることができずに刈り落とされていた茶葉を用いることも可能である。因みに、三番芽、四番芽及び芽以外の茶葉には、多くのクロロフィルが含まれており、このものを用いた茶葉6は鮮やかな緑色を呈するものである。
【0026】
そして前記呈色素材3としての液茶7は、一例として図1に示すような銅イオン水調製工程S1、不活化工程S2、粉砕工程S3、原料液調製工程S4及び銅クロロフィル化処理工程S5が順次実行されるフローに従って製造されるものである。また呈色素材としての加工茶葉8は、銅クロロフィル化処理工程S5の次段に乾燥・粉末化工程S7が追加され、これらが順次実行されるフローに従って製造されるものである。
なお前記原料液調製工程S4と銅クロロフィル化処理工程S5との間あるいは銅クロロフィル化処理工程S5の後段には、塩基物添加工程S8が設けられる。
以下これら各工程について図2、3の概念図を参照しながら説明する。
【0027】
(1)銅イオン水調製工程
まず銅イオン水調製工程S1は、図2に示すように銅または銅を含む合金を素材として成る電極101、102を電解槽103内に配して構成された調製装置100を用いて、電極101、102に通電することにより、これらの間に位置する水Wに銅イオンを溶出させて銅イオン水W1を得るための工程である。
なお電解槽103に投入される水Wに、可食性キレート剤Cを添加することにより、最大溶解度を高めて銅イオンの析出を抑えることができる。この様に可食性キレート剤Cを添加したときには、水W中に溶出した銅イオンはその一部または全部が錯体(錯イオン)の状態となる(一例としてグリシンが用いられた場合、グリシナト銅となる。)。
ここで前記可食性キレート剤Cとしては、EDTA、フィチン酸、リンゴ酸、グルコン酸、コウジ酸、クエン酸、システイン、グルタチオン、ハロゲン化塩、グルコン酸ナトリウム、グリシンの中から選択される一または複数のものが採用される。なお可食性キレート剤Cとしては好ましくはシステインまたはグルタチオンが採用され、更に好ましくはハロゲン化塩、グルコン酸ナトリウムが採用され、より更に好ましくはグリシンが採用される。更に前記可食性キレート剤Cとしては、加水分解によって上述した物質となる物質を用いることもできる。
また前記水Wに対する可食性キレート剤Cの添加量は、0.01重量%(100mg/l)以上とするものである。
【0028】
なお可食性キレート剤Cを添加することにより、銅イオン水調製工程1における、水Wに対する電極101、102からの銅イオンの溶出速度を高めることができる他、各々の可食性キレート剤Cに特有の作用を液茶7、加工茶葉8ひいては穀物加工食品S1に対して付与することができる。
例えばグリシンは、甘味を呈し、更にうま味を増したり味をまろやかにする効果がある。
またグルコン酸ナトリウムは、食品の味にあまり影響を与えず、酸味、苦味、渋味、甘味の質を和らげることができる。
更にまたシステインは、パン生地に添加することにより、生地を柔らかくする効果がある。
もちろん可食性キレート剤Cとしては上述したものの他、本発明者によって確認されていないものであっても採用することができる。
【0029】
また前記銅イオン水W1に含まれる銅イオンの量は、電極101、102間に印加する電圧、流れる電流及び通電時間を調節することにより、原料液調製工程S4において使用される粉砕茶葉Tに含まれるクロロフィル1重量部に対して、0.1重量部以上となるよう調製されるものである。ここで前記銅イオンの量とは、銅イオンのみならず、銅錯イオンに含まれる銅の量も意味するものとする。
一例として粉砕茶葉100g当たり625mg(クロロフィルaが440mg、クロロフィルbが185mg)のクロロフィルが含まれている場合であって、銅イオン水100重量部に対する粉砕茶葉Tの混合量を0.05〜60重量部とした場合には、銅イオン水W1に含まれる銅イオンの量が、0.3〜375mg/lとなるように調製される。
もちろん予め銅イオン水W1に含まれる銅の量が多いもの(一例として600mg/l、1000mg/l等)を用意しておき、このままあるいは適宜希釈することにより所望の銅濃度として供するようにしてもよい。
なお図2にはバッチ式の調製装置100を示したが、適宜電解槽103に給水口及び排水口を設けるなどして、連続的に銅イオン水W1が得られるように構成してもよい。
【0030】
また銅イオン水調製工程S1を、他の工程とは独立した別の工程で成されるようにしてもよく、この場合には、銅イオン水W1を貯蔵しておき、このものを用いることにより効率的な生産を行うことが可能となる。
【0031】
(2)不活化工程
一方、不活化工程S2においては生茶葉T0の不活化が行われるものであり、生茶葉T0を蒸煮または釜炒りにて加熱することにより、酵素を不活化させる。
更にこの実施例では、不活化後の茶葉の含水率を低下させ、7%程度の含水率の乾燥茶葉が得られるようにした。
なおこのような乾燥にあたっては、生茶葉T0に含まれるクロロフィルを破壊しないようにすることが重要であり、生茶葉T0を蒸熱した後、揉まずに乾燥したり(てん茶)、通常の製茶工程における粗揉あるいは中揉までの揉乾処理を行った後、乾燥を行うようにする。
【0032】
(3)粉砕工程
次いで茶葉粉砕工程S3においては、乾燥茶葉を粒径が20μm〜600μmに粉砕あるいは8mm角以下の小片に加工するものであり、適宜のボールミルやカッターが用いられる。
なおこのように乾燥茶葉を細粒状、小片状とすることにより、クロロフィルが露出した状態となる。
また以下の説明においては、このような細粒状または小片状の乾燥茶葉を、ともに粉砕茶葉Tと呼ぶものとする。
因みに不活化後の茶葉を乾燥することなく原料液調製工程S4に供給し、このものに銅イオン水W1を作用させるような形態を採ることもできる。
【0033】
(4)原料液調製工程
次いで原料液調製工程S4においては、銅イオン水W1と粉砕茶葉Tとを混合して原料液L0を調製するものであり、一例として銅イオン水100重量部に対し、粉砕茶葉Tを0.05〜60重量部混合する。このため原料液調製工程S4において用いられる銅イオン水W1の量に応じて、原料液L0中に含まれている銅イオンの量が把握されることとなる。
なお液茶7または加工茶葉8の成分が酸化してしまうのを防ぐために、原料液L0にビタミンC、ビタミンCナトリウム等を抗酸化剤Vとして加えておくこともできる。更にビタミンCの破壊を防止するためにクエン酸を加えたり、EDTAを加えるようにしてもよい。
【0034】
(5)銅クロロフィル化処理工程
次に銅クロロフィル化処理工程S5においては、前記原料液L0を所定の温度(85〜135℃、好ましくは100〜135℃とすることにより、より確実な殺菌作用も発揮される。)で所定の時間(20〜120分)加熱を行うことにより、粉砕茶葉Tに含まれるクロロフィル中のマグネシウムを、銅イオン水W1に含まれる銅(銅錯イオン中の銅原子)に置換する銅クロロフィル化処理を施す。
なお銅クロロフィル化処理を行うための装置としては、適宜の加熱機能が具えられた密閉型の耐熱容器が用いられる。ここで密閉型の耐熱容器を用いる理由は、100℃以上の高温状態を得ることに加え、水分の蒸発を防止して銅の濃度を一定に保つためである。
更にこの装置には、原料液L0を攪拌するための機構を設けることが好ましい。
またこの銅クロロフィル化処理工程S5においては、粉砕茶葉Tの各種成分が水Wに溶出することとなり、液茶7が得られる。
【0035】
(6)塩基物添加工程
また酸味調整あるいはphの調整が必要な場合には、図1中、仮想線でに示すように、前記原料液調製工程S4と銅クロロフィル化処理工程S5との間あるいは銅クロロフィル化処理工程S5の後段、一例として銅クロロフィル化処理工程S5と包装工程S6との間に、炭酸ナトリウム等の可食性塩基物Aを添加するための塩基物添加工程S8が設けられる。
なお可食性塩基物Aを添加することにより、可食性キレート剤Cによる味、匂いへの影響を除去することができるものであり、特に加工茶葉8の酸臭を除去するのに効果的である。
また可食性塩基物Aとしては、前記炭酸ナトリウムの他、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、燐酸、水酸化ナトリウム等を採用することもできる。この場合、例えば炭酸水素ナトリウム溶液を加熱することにより、二酸化炭素を抜いておくことが好ましい。
【0036】
(7)包装工程
そして液茶7は包装工程S6においてペットボトル、ポーションカップ、紙パック、アルミパウチ等に充填される。
【0037】
以上のようにして製造された液茶7に含有される銅の量(銅イオン、銅錯体または銅化合物中の銅原子の総量)は、原料液調製工程S4において把握されたままの量であるため、適宜希釈する等して例えば成人男性の一日の銅所要量1.8mgあるいは成人女性の一日の銅所要量1.6mg毎に小分けして包装することにより、消費者は所要量を確実に摂取することができるとともに、一日の許容上限摂取量(9mg)を超えて摂取してしまうようなことが回避される。
【0038】
なお図1中、仮想線で示したように、包装工程S6を前記原料液調製工程S4の次段に位置させてもよく、この場合には、原料液L0をペットボトル、ポーションカップ、紙パック、アルミパウチ等に充填した後、このものを湯煎やレトルト釜によって加熱することにより銅クロロフィル化を図るものとする。
もちろんこのような包装工程S6は、呈色素材3を予め製造するとともに貯蔵しておき、穀物加工食品1を製造する際に所要量を用いるような場合に設けられるものであり、銅イオン水調製工程S1、不活化工程S2、粉砕工程S3、原料液調製工程S4及び銅クロロフィル化処理工程S5とともに穀物加工食品1の製造工程も具える設備の場合には、包装工程S6を設けなくてもよい。
【0039】
(8)乾燥・粉末化工程
また呈色素材3として加工茶葉8を製造する場合には、銅クロロフィル化処理工程S5の次段に乾燥・粉末化工程S7が追加されるものである(図1、3参照)。
この乾燥・粉末化工程S7においては、銅クロロフィル化処理工程S5において得られた銅クロロフィル化液L1を濾過して得られた固形物を乾燥することにより加工茶葉8が得られる。なおこの際得られる液状物L2を液茶70として用いたり、この液茶70を乾燥させて加工茶葉80として用いることもできる。
なお乾燥・粉砕化工程S7において、銅クロロフィル化液L1を濾過することなく乾燥させることにより得られるものを、加工茶葉81とする。
【0040】
(9)穀物加工食品の製造工程
そして少なくとも呈色素材3と、穀物由来材料である基食素材2とを含んだ材料を、適食状態または可食状態に加工することにより、本発明の穀物加工食品1が製造される。
以下、呈色素材3としての液茶7及び加工茶葉8並びに穀物加工食品1の様々な実施例を例示する。
なお穀物加工食品1としては請求項3で定義したように、基食素材2を、一種または二種以上の穀物が炊き上げまたは蒸煮されるものとした、米飯、おこわ等が挙げられる。
また他の形態の穀物加工食品1としては請求項4で定義したように、基食素材2を、一種または二種以上の穀物が炊き上げまたは蒸煮されたものを、更に成形、焼き上げ、油揚げ、蒸煮または味付けされるものとした、おにぎり、おはぎ、寿司、もち、せんべい、あられ、おかゆ等が挙げられる。
更にまた他の形態の穀物加工食品1としては請求項5で定義したように、基食素材2を、一種または二種以上の穀物が粉末状とされ、このものに水を加えて混練した後、乾燥、焼き上げ、油揚げまたは蒸煮されるものとした、うどん、そば、ラーメン、そうめん、ひやむぎ、ビーフン、フォー等の麺類、パン、クッキー、ビスケット、かすてら、ケーキ、クレープ、バームクーヘン、マドレーヌ、パイ、てんぷら、ドーナツ、まんじゅう、ういろう、団子、柏餅、すあま、ライスペーパー等が挙げられる。
更にまた他の形態の穀物加工食品1としては請求項6で定義したように、基食素材2を、一種または二種以上の穀物が加熱処理され、このものを二次加工して得られるものとした、チョコレート、豆腐等が挙げられる。
【実施例】
【0041】
(I)液茶としての呈色素材(図2参照)
・原料茶葉として、やぶきた品種四番茶(含有クロロフィル量600mg/100g)を 用いた。
・銅イオン水調製工程S1において、水Wに可食性キレート剤Cとしてグリシンを0.0 1重量%添加した後、通電することにより銅含有量が600mg/lの銅イオン水W1 (グリシナト銅水溶液)を得た。
・不活化工程S2において、生茶葉T0を揉まずに加熱、乾燥して原料茶葉を得た。
・茶葉粉砕工程S3において、原料茶葉を粒径20μm程度に粉砕して粉砕茶葉Tを得た 。
・原料液調製工程S4において、銅イオン水W1を50g、水Wを22.9g、粉砕茶葉 Tを25g混合し、更に抗酸化剤VとしてビタミンCナトリウムを0.1g混合し、更 に可食性塩基物Aとして二酸化炭素を抜いた炭酸水素ナトリウム水溶液(10%)を2 g添加した(塩基物添加工程S8)。これにより粉砕茶葉Tの含有率が25重量%の原 料液L0を得た(銅含有量30mg/100g)。
・銅クロロフィル化処理工程S5において、原料液L0を128℃の温度下で30分間加 熱して、濃縮状態の液茶7を得た(銅含有量30mg/100g)。
【0042】
(II)加工茶葉としての呈色素材(図3参照)
・原料茶葉として、やぶきた品種四番茶(含有クロロフィル量600mg/100g)を 用いた。
・銅イオン水調製工程S1において、水Wに可食性キレート剤Cとしてグリシンを0.0 1重量%添加した後、通電することにより銅含有量が600mmg/lの銅イオン水W 1を得た。
・不活化工程S2において、生茶葉T0を揉まずに加熱、乾燥して原料茶葉を得た。
・茶葉粉砕工程S3において、原料茶葉を8m角に裁断して粉砕茶葉Tを得た。
・原料液調製工程S4において、銅イオン水W1を50g、水Wを22.9g、粉砕茶葉 Tを25g混合し、更に抗酸化剤VとしてビタミンCナトリウムを0.1g混合し、更 に二酸化炭素を抜いた炭酸水素ナトリウム水溶液(10%)を2g添加した(塩基物添 加工程S8。これによ り粉砕茶葉Tの含有率が25重量%の原料液L0を得た(銅含 有量30mg/100g)。
・銅クロロフィル化処理工程S5において、原料液L0を128℃の温度下で30分間加 熱して中間製品L1を得た。
・乾燥・粉砕化工程S7において、中間製品L1を市販のコーヒー用ペーパーフィルター (AVANCE社製)により濾過したのち、分離された固形成分を70℃の温度下で6 0分間乾燥し、含水率6%D.Bにまで乾燥させ、更にその後、粒径20μmに粉砕す ることにより加工茶葉8を得た。
【0043】
このようにして得られた加工茶葉8は、鮮やかな緑色を呈しており、更に濾過により分離された液体成分に含まれていた銅イオンが除かれているため、銅の含有量が30mg未満として把握されているものである。なおこの際得られるろ過液を液茶70とした場合、このものは銅の含有量が30mg未満として把握されているものである。またこの液茶70を乾燥させて得られる加工茶葉80は銅の含有量が30mg未満として把握されているものである。
また乾燥粉末化工程S7において、銅クロロフィル化液L1を濾過することなく乾燥させて得られる加工茶葉81は、銅の含有量が30mgとして把握されたものとなる。
【0044】
(III)穀物加工食品の実施例
(1)米(穀粒)を基食素材とした実施例
〔実施例1:茶飯としての加工食品〕
以下、茶飯11としての穀物加工食品1である実施例1を例示するものであり、各材料の配合を以下に示す。
米(穀粒) :300g(2合、360ml)
水 :432ml
液茶 : 10g(水8g、粉砕茶葉2g)
【0045】
〔比較例1〕
比較例1として、実施例1の液茶7を市販の粉茶に置き換えた茶飯11′を用意する。各材料の配合は以下に示すようにした。
米(穀粒) :300g(2合360ml)
水 :440ml
粉茶 : 2g
【0046】
上記実施例1及び比較例1の米を同じ条件で炊き上げて可食状態とした茶飯11、11′の比較を目視により行った。
図4に実施例1の茶飯11及び比較例1の茶飯11′を撮影した写真を示すものであり、茶飯11は鮮明な緑色を呈していることが確認できる。
なお図中には、丸で囲んだ範囲のウェブ上のカラーチャート(HTMLタグ・カラーチャート、各色256階調で表した数値)のRGB値(平均値)を示してある。
一方、比較例1としての茶飯11′は鮮やかな緑色とはならず、茶色味を帯びて変色してしまっていることが確認できる。
なお茶飯11は数日経過しても鮮明な緑色に変化は無かったが、茶飯11′の場合には変色とともに色褪せていることが確認された。
またこのようにして製造された茶飯11としての穀物加工食品1は、食感、味等が、通常の米飯と遜色ないものとなっており、ほどよい茶の風味が加えられていることが確認された。
【0047】
なお茶飯11においては、液茶7に含まれる粉砕茶葉Tとして、20μm〜600μmの細粒状物と、8mm角以下の小片状物とが混在したものとすることにより、全体に緑色の粒(小片状物)がマーブル状に分散した状態となり、視覚的により自然な印象を与えることが可能となる。もちろん粉砕茶葉Tをこのように混在させることは、茶飯11以外の他の穀物加工食品1においても適用することができる。
また茶飯11を作る際には、呈色素材3としての液茶7、各種具材及び調味料をまとめてパウチに個装するような形態で流通させることが好ましい。
【0048】
また茶飯11を作る際には、呈色素材3として加工茶葉8を用いるようにしてもよく、この場合、各種具材や調味料も乾燥状態としてパウチに個装するような形態で流通させることが好ましい。
更にまた前記茶飯11を製造する際には無洗米110を用いることもでき、この場合には無洗米110を液茶7に浸した後に乾燥することにより、米粒の表面に加工茶葉8がコーティングされた状態のものが用意される(図5参照)。
そして消費者は無洗米に所定量の水を加えて炊き上げることにより、極めて手軽に茶飯11を製造することが可能となる。
【0049】
〔実施例2:おはぎとしての加工食品〕
次に、おはぎ12としての穀物加工食品1である実施例2を例示するものであり、各材料の配合を以下に示す。
もち米 :150g(1合)
水 :250ml
塩 : 3g
液茶 : 12g(水9.6g、粉砕茶葉2.4g)
【0050】
〔比較例2〕
比較例2として、実施例2の液茶7を市販の粉茶に置き換えたおはぎ12′を用意する。各材料の配合は以下に示すようにした。
もち米 :150g(1合)
水 :259.6ml
塩 : 3g
粉茶 : 2.4g
【0051】
上記実施例2及び比較例2のもち米を同じ条件で炊き上げた後、それぞれ液茶7、粉茶を加え、次いで米粒が残る程度につき、1口大程度の俵状にまるめて可食状態としたおはぎ12、12′の比較を目視により行った。
図6に実施例2のおはぎ12及び比較例2のおはぎ12′を撮影した写真を示すものであり、おはぎ12は鮮明な緑色を呈していることが確認できる。
一方、比較例2としてのおはぎ12′は鮮やかな緑色とはならず、茶色味を帯びて変色しまっていることが確認できる。
またこのようにして製造されたおはぎ12としての穀物加工食品1は、食感、味等が、通常のものと遜色ないものとなっており、ほどよい茶の風味が加えられていることが確認された。
【0052】
〔実施例3:あられとしての加工食品〕
次に、あられ13としての穀物加工食品1である実施例3を例示するものであり、各材料の配合を以下に示す。
もち米 :225g
水 :360ml
液茶 : 7.5g(水6g、粉砕茶葉1.5g)
【0053】
上記もち米を炊き上げた後、液茶7を加え、次いでつき上げて餅とし、更に大豆程の大きさに丸め、このものを乾燥させた後、油で揚げることにより可食状態としたあられ13を得た。そして状態観察を目視により行った。
図7に実施例3のあられ13を撮影した写真を示すものであり、あられ13は鮮明な緑色を呈していることが確認できる。
なお比較例1において、一般の粉茶を用いた茶飯11′は炊き上げた時点で変色していることが確認されているため、実施例3に対する比較例3の製作は省略した。
またこのようにして製造されたあられ13としての穀物加工食品1は、食感、味等が、通常のものと遜色ないものとなっており、ほどよい茶の風味が加えられていることが確認された。
【0054】
〔実施例4:団子としての加工食品〕
次に、団子14としての穀物加工食品1である実施例4を例示するものであり、各材料の配合を以下に示す。
上新粉 :230g
ぬるま湯 :180g
液茶 : 16g(水12.8g、粉砕茶葉3.2g)
【0055】
〔比較例4〕
比較例4として、実施例4の液茶7を市販の粉茶に置き換えた団子14′を用意する。各材料の配合は以下に示すようにした。
上新粉 :230g
ぬるま湯 :192.8g
粉茶 : 3.2g
【0056】
上記実施例4及び比較例4の上新粉に、それぞれぬるま湯及び液茶7、粉茶を加え、次いで1口大程度にまるめた後、蒸し上げることにより可食状態とした団子14、14′を得た。その後、比較を目視により行った。
図8に実施例4の団子14及び比較例4の団子14′を撮影した写真を示すものであり、団子14は鮮明な緑色を呈していることが確認できる。
一方、比較例4としての団子14′は鮮やかな緑色とはならず、茶色味を帯びて変色しまっていることが確認できる。
またこのようにして製造された団子14としての穀物加工食品1は、食感、味等が、通常のものと遜色ないものとなっており、ほどよい茶の風味が加えられていることが確認された。
【0057】
(2)小麦粉を基食素材とした実施例
〔実施例5:パンとしての加工食品〕
以下、パン15としての穀物加工食品1である実施例5を例示するものであり、各材料の配合は以下に示すようにした。
強力粉 :300g
砂糖 : 12g
塩 : 5g
バター : 15g
イースト : 5g
お湯 :200ml
液茶 : 15g(水12g、粉砕茶葉3g)
【0058】
〔比較例5〕
比較例5として、実施例5の液茶7を市販の粉茶に置き換えたパン15′を用意する。各材料の配合は以下に示すようにした。
強力粉 :300g
砂糖 : 12g
塩 : 5g
バター : 15g
イースト : 5g
お湯 :212ml
粉茶 : 3g
【0059】
上記実施例5及び比較例5の材料をこねた後、同じ条件で醗酵させ、成形したパン生地を同じ条件で焼成してパン15、15′を得た。
この際、液茶7は液状であるため、このものをお湯に投入することにより、 粉砕茶葉Tが素早くお湯の全域に分散することとなり、この状態のものを他の材料と合わせることにより、茶葉成分が均等に分散したパン生地を得ることができた。因みに呈色素材3として加工茶葉8を用いる場合には、このものを強力粉に混ぜた後、お湯を加えることにより、茶葉成分が均等に分散したパン生地を得ることができる。
図9に実施例5のパン15及び比較例5のパン15′の断面を撮影した写真を示すものであり、パン15は鮮明な緑色を呈していることが確認できる。
一方、比較例5としてのパン15′は鮮やかな緑色とはならず、茶色味を帯びて変色してしまっていることが確認できる。
なおパン15は数日経過しても鮮明な緑色に変化は無かったが、パン15′の場合には変色とともに色褪せていることが確認された。
またこのようにして製造されたパン15としての穀物加工食品1は、食感、味等が、本来の原料により製造されたものと遜色ないものとなっており、ほどよい茶の風味が加えられていることが確認された。
【0060】
〔実施例6:うどんとしての加工食品〕
次に、うどん16としての穀物加工食品1である実施例6を例示するものであり、各材料の配合は以下に示すようにした。
小麦粉 :400g
食塩 : 18g
水 :160ml
液茶 : 15g(水12g、粉砕茶葉3g)
【0061】
〔比較例6〕
比較例6として、実施例6の液茶7を市販の粉茶に置き換えたうどん16′を用意する。各材料の配合は以下に示すようにした。
小麦粉 :400g
食塩 : 18g
水 :172ml
粉茶 : 3g
【0062】
そして、まず小麦粉に、食塩、水を加えよく捏ねる。その後、30分以上ねかせ、生地を延ばして細く切る。そして沸騰している湯で10分程度ゆでた後、冷水にさらすことにより、可食状態の加工食品であるうどん16が得られる。
この際、液茶7は液状であるため、このものを水に投入することにより、 粉砕茶葉Tが素早く水の全域に分散することとなり、この状態のものを他の材料と合わせることにより、茶葉成分が均等に分散したうどん生地を得ることができた。因みに呈色素材3として加工茶葉8を用いる場合には、このものを小麦粉に混ぜた後、水を加えることにより、茶葉成分が均等に分散したうどん生地を得ることができる。
なお細く切った生地をゆでることなく乾燥させることにより適食状態し、この状態で市場に提供し、消費者が自宅等でゆでることにより、可食状態とするような流通の仕方も可能である。
図10に実施例6のうどん16及び比較例5のうどん16′を撮影した写真を示すものであり、うどん16は鮮明な緑色を呈していることが確認できる。
一方、比較例6としてのうどん16′は鮮やかな緑色とはならず、茶色味を帯びてしまっていることが確認できる。
またこのようにして製造されたうどん16としての穀物加工食品1は、麺の食感、コシ、味等が、本来の原料により製造されたものと遜色ないものとなっており、ほどよい茶の風味が加えられていることが確認された。
【0063】
〔実施例7:中華まんとしての加工食品〕
以下、中華まん17としての穀物加工食品1である実施例7を例示するものであり、各材料の配合(生地のみ)は以下に示すようにした。
薄力粉 :250g
強力粉 : 50g
砂糖 : 10g
塩 : 2g
イースト : 2g
お湯(40℃):160ml
液茶 : 12g(水9.6g、粉砕茶葉2.4g)
【0064】
〔比較例7〕
比較例7として、実施例7の液茶7を市販の粉茶に置き換えた中華まん17′を用意する。各材料の配合は以下に示すようにした。
薄力粉 :250g
強力粉 : 50g
砂糖 : 10g
塩 : 2g
イースト : 2g
お湯(40℃):169.6ml
粉茶 : 2.4g
【0065】
上記実施例7及び比較例7の材料で作った生地に小豆餡を包んだ後、同じ条件で蒸煮し、膨化させた中華まん17、17′の比較を目視により行った。
この際、液茶7は液状であるため、このものを水に投入することにより、 粉砕茶葉Tが素早くお湯の全域に分散することとなり、この状態のものを他の材料と合わせることにより、茶葉成分が均等に分散した生地を得ることができた。因みに呈色素材3として加工茶葉8を用いる場合には、このものを小麦粉に混ぜた後、お湯を加えることにより、茶葉成分が均等に分散した生地を得ることができる。
図11に実施例7の中華まん17及び比較例7の中華まん17′の断面を撮影した写真を示すものであり、中華まん17は鮮明な緑色を呈していることが確認できる。
一方、比較例7としての中華まん17′は鮮やかな緑色とはならず、茶色味を帯びてしまっていることが確認できる。
またこのようにして製造された中華まん17としての穀物加工食品1は、食感、味等が、本来の原料により製造されたものと遜色ないものとなっており、ほどよい茶の風味が加えられていることが確認された。
【0066】
(3)豆類を基食素材とした実施例
〔実施例8:豆腐としての加工食品〕
以下、豆腐18としての穀物加工食品1である実施例8を例示するものであり、各材料の配合は以下に示すようにした。
豆乳 :500ml
にがり : 7g
液茶 : 20g(水16g、粉砕茶葉4g)
【0067】
〔比較例8〕
比較例8として、実施例8の液茶7を市販の粉茶に置き換えた豆腐18′を用意する。各材料の配合は以下に示すようにした。
豆乳 :516ml
にがり : 7g
粉茶 : 4g
【0068】
上記実施例8及び比較例8の豆乳を70〜75℃に加熱してにがりを加え、軽く混ぜた後、固まるまでふたをして10分ほどおく。
やがて豆乳が固まったら、ふきんを敷いたざるに入れ、15分ほど重しをすることにより、豆腐18、18′が得られる。
この際、液茶7は液状であるため、このものを豆乳に投入する際に、粉砕茶葉Tが素早く豆乳の全域に分散することとなり、茶葉成分が均等に分散した豆腐18を得ることができた。
そして豆腐18、18′の比較を目視により行った。図12に実施例8の豆腐18及び比較例8の豆腐18′の表面を撮影した写真を示すものであり、豆腐18は鮮明な緑色を呈していることが確認できる。
一方、比較例8としての豆腐18′は鮮やかな緑色とはならず、茶色味を帯びてしまっていることが確認できる。
またこのようにして製造された豆腐18としての穀物加工食品1は、食感、味等が、本来の原料により製造されたものと遜色ないものとなっており、ほどよい茶の風味が加えられていることが確認された。
【0069】
〔実施例9:チョコレートとしての加工食品〕
以下、チョコレート19としての穀物加工食品1である実施例9を例示するものであり、市販のホワイトチョコレート100gを50℃程度のお湯を用いて湯せんにて溶かし、このものに加工茶葉8を2g加えてよく混ぜた後、型に入れて固めることによりチョコレート19を得た。
この際、加工茶葉8は乾燥状態のものであるため、水分の添加が好ましくない基食素材2であるホワイトチョコレートに対して良好な状態で混合することができ、茶葉成分が均等に分散したチョコレート19を得ることができた。
図10に実施例9のチョコレート19を撮影した写真を示すものであり、チョコレート19は鮮明な緑色を呈していることが確認できる。
またこのようにして製造されたチョコレート19としての穀物加工食品1は、食感、味等が、本来の原料により製造されたものと遜色ないものとなっており、ほどよい茶の風味が加えられていることが確認された。
【符号の説明】
【0070】
1 穀物加工食品
11 茶飯
110 無洗米
12 おはぎ
13 あられ
14 団子
15 パン
16 うどん
17 中華まん
18 豆腐
19 チョコレート
2 基食素材
3 呈色素材
6 茶葉
7 液茶
70 液茶
8 加工茶葉
80 加工茶葉
81 加工茶葉
100 調製装置
101 電極
102 電極
103 電解槽
A 可食性塩基物
C 可食性キレート剤
L0 原料液
L1 中間製品
S1 銅イオン水調製工程
S2 不活化工程
S3 粉砕工程
S4 原料液調製工程
S5 銅クロロフィル化処理工程
S6 包装工程
S7 乾燥・粉末化工程
S8 塩基物添加工程
T 粉砕茶葉
T0 生茶葉
V 抗酸化剤
W 水
W1 銅イオン水
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基食素材と、茶葉を原料とする呈色素材とを含み、これらが可食状態に加工される食品であって、前記基食素材は穀物由来材料であり、また前記呈色素材は、含有されている銅イオン量が把握された銅イオン水と、茶葉とが混合され、更に加熱されて銅クロロフィル化処理が施された茶加工品であって、このものは、水分中に茶葉成分が溶出または分散した状態の液茶であることを特徴とする緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品。
【請求項2】
基食素材と、茶葉を原料とする呈色素材とを含み、これらが可食状態に加工される食品であって、前記基食素材は穀物由来材料であり、また前記呈色素材は、含有されている銅イオン量が把握された銅イオン水と、茶葉とが混合され、更に加熱されて銅クロロフィル化処理が施された茶加工品であって、このものは、水分中に茶葉成分が溶出または分散した状態のものを、そのままあるいは濾過した後に、乾燥させた加工茶葉であることを特徴とする緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品。
【請求項3】
前記基食素材は、一種または二種以上の穀物が炊き上げまたは蒸煮されるものであることを特徴とする請求項1または2記載の緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品。
【請求項4】
前記基食素材は、一種または二種以上の穀物が炊き上げまたは蒸煮されたものを、更に成形、焼き上げ、油揚げ、蒸煮または味付けされるものであることを特徴とする請求項1または2記載の緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品。
【請求項5】
前記基食素材は、一種または二種以上の穀物が粉末状とされ、このものに水を加えて混練した後、乾燥、焼き上げ、油揚げまたは蒸煮されるものであることを特徴とする請求項1または2記載の緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品。
【請求項6】
前記基食素材は、一種または二種以上の穀物が加熱処理され、このものを二次加工して得られるものであることを特徴とする請求項1または2記載の緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品。
【請求項1】
基食素材と、茶葉を原料とする呈色素材とを含み、これらが可食状態に加工される食品であって、前記基食素材は穀物由来材料であり、また前記呈色素材は、含有されている銅イオン量が把握された銅イオン水と、茶葉とが混合され、更に加熱されて銅クロロフィル化処理が施された茶加工品であって、このものは、水分中に茶葉成分が溶出または分散した状態の液茶であることを特徴とする緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品。
【請求項2】
基食素材と、茶葉を原料とする呈色素材とを含み、これらが可食状態に加工される食品であって、前記基食素材は穀物由来材料であり、また前記呈色素材は、含有されている銅イオン量が把握された銅イオン水と、茶葉とが混合され、更に加熱されて銅クロロフィル化処理が施された茶加工品であって、このものは、水分中に茶葉成分が溶出または分散した状態のものを、そのままあるいは濾過した後に、乾燥させた加工茶葉であることを特徴とする緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品。
【請求項3】
前記基食素材は、一種または二種以上の穀物が炊き上げまたは蒸煮されるものであることを特徴とする請求項1または2記載の緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品。
【請求項4】
前記基食素材は、一種または二種以上の穀物が炊き上げまたは蒸煮されたものを、更に成形、焼き上げ、油揚げ、蒸煮または味付けされるものであることを特徴とする請求項1または2記載の緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品。
【請求項5】
前記基食素材は、一種または二種以上の穀物が粉末状とされ、このものに水を加えて混練した後、乾燥、焼き上げ、油揚げまたは蒸煮されるものであることを特徴とする請求項1または2記載の緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品。
【請求項6】
前記基食素材は、一種または二種以上の穀物が加熱処理され、このものを二次加工して得られるものであることを特徴とする請求項1または2記載の緑色発色を鮮明に維持した穀物加工食品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−259349(P2010−259349A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111458(P2009−111458)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(508135828)株式会社サーマクリエィション (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(508135828)株式会社サーマクリエィション (7)
【Fターム(参考)】
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