説明

締付固定装置

【課題】蝶ナットを用いることなく電気通信機器を設置固定することができる締付固定装置を提供すること。
【解決手段】対象とする機器本体に固着されU字ボルト30の中央部を支持する支持部材と、前記支持部材に対向配置された状態で前記U字ボルトの端部が挿通されて前記支持部材との間にマスト20を挟持し、前記機器本体を前記マストに固定保持する当て部材120と、前記U字ボルトの端部に嵌合して前記当て部材を前記支持部材に押圧固定するナット110とを有する締付固定装置において、前記ナットは、軸線に対して斜め方向に傾斜して穿設され前記U字ボルトを挿通させるバカ穴であって、内周壁の複数の部分に前記軸線を中心とする半周未満のネジ溝が分散して設けられたバカ穴111、および前記当て部材に正対するための当接部113をそなえることを特徴とする締付固定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気通信用機器を含む機器を固定するための締付固定装置に係わり、とくに締付作業の簡便化に資する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CATV用屋外機器を設置するには、U字型ボルトを用いてマストに機器ケースを締付固定することが多い。図5は、このような構造の一例を示したものであり、機器ケース10の取付面に取り付けられたかなり長めのU字型ボルト30に蝶ナット11を締め込むことにより、当て部材120と機器ケース10との間に挟持したマスト20に機器ケース10を締付け固定するようにした構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-166541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、U字型ボルトがかなり長めであることが多いため、蝶ナットを手で回していかなければならず、締付完了までの作業時間がかなり長くなって作業性が悪い。
【0005】
本発明は、上述の点を考慮してなされたもので、蝶ナットを用いることなく電気通信機器を設置固定することができる締付固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的達成のため、本発明では、
対象とする機器本体に設けられ、U字ボルトの中央部を支持する支持部材と、前記支持部材に対向配置された状態で前記U字ボルトの端部が挿通されて前記支持部材との間にマストを挟持し、前記機器本体を前記マストに固定保持する当て部材と、前記U字ボルトの端部に嵌合して前記当て部材を前記支持部材に押圧固定するナットとを有する締付固定装置において、
前記ナットは、
軸線に対して斜め方向に傾斜して穿設され前記U字ボルトを挿通させるバカ穴であって、内周壁の複数の部分に前記軸線を中心とする半周未満のネジ溝が分散して設けられたバカ穴、および
前記当て部材に正対するための当接部
をそなえることを特徴とする締付固定装置、
を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上述のように、蝶ナットに替えて、ネジ溝付きバカ穴を持ったナットを用いる締付固定装置として構成したため、バカ穴を利用して簡便にU字ボルトを挿通したうえでネジ溝を利用してナットの締め込み作業をすることにより通信機器の固定を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例の構成を示す縦断面図。
【図2】本発明の一実施例の外観を示す斜視図。
【図3】図3(a),(b)は本発明の一実施例の両端面形状を示す図。
【図4】本発明の一実施例をマストに締付固定する作業途中を示す説明図。
【図5】通信機器を締付固定する従来の作業途中を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明に使用されるバカ穴付きナット110の構造を示す縦断面図である。このバカ穴付きナット110は、図5に示した蝶ナットの替わりに用いられるもので、当て部材120と協働して通信機器をマストに固定する。
【0011】
ナット110は、中心部に軸方向のネジ溝111が設けられ、このネジ溝111に対してネジ溝が作用しない程度に傾斜し、ネジ溝111とほぼ同径のバカ穴112が形成されている。ネジ溝が作用しない程度とは、ネジ溝の深さとバカ穴の径によって異なるが、ネジ溝深さが11mm、バカ穴径が5.1mmで、15度程度である。また、ナット110の厚みによってもバカ穴の傾斜角度を調整する必要がある。
【0012】
このため、ネジ溝111は、ナット110の各端に半周未満の長さだけ数条ずつが残った状態となるとともに、バカ穴112により開口部形状が長孔状になっている。そして、ナット110の厚み方向中央部では、バカ穴112によりネジ溝111が削り取られて残らない。
【0013】
この結果、長孔の端面から見るとU字型ボルト30が自由に挿通できる直線状の孔があり、この孔を利用するとU字型ボルト30の先端からナット110を締め込む位置まで造作なくナット110を差し込むことができる。
【0014】
図1に想像線で示したように、ナット110は例えば15度(図示の場合、右下を向くように)傾斜させて図示右方向に直進させると、図示実線位置近くまでナット110が簡単に到達する。図示符号「X1」は、この直進方向を示している。
【0015】
図示実線位置近くに達したら、ナット110の姿勢を締め込み姿勢、つまり15度の傾斜を元に戻した姿勢にする。図示符号「X2」は、この姿勢建て直しの回動操作方向を示している。
【0016】
ナット110を締め込み姿勢にすると、ネジ溝111がU字ボルト30のネジ溝(図示せず)と嵌合する。そこで、ナット110を回転させて締め込み作業を行う。締め込みが最終段階に近付くと、当て部材120の当接面122とナット110の当接面113とが正対、つまり面接触してU字型ボルト30のネジ溝とナット110のネジ溝とがしっかりと噛み合う。
【0017】
これにより、ナット110は、ネジ溝同士の嵌合と当接面同士の摩擦接触とにより、当て部材120に対して強固に固定される。
【0018】
なお、これに加えて通常行われる緩み止め措置、例えばワッシャの介挿、固定剤の塗布等を施せば、一層確実な締付固定がなされる。
【0019】
図2は、図1に示したナット110の外観形状を示す斜視図であり、ナット110の左側端面にはほぼ中央にバカ穴111があり、その上部にネジ溝112が設けられ、外周に滑り止め溝114が形成されている。
【0020】
図3(a),(b)は、ナット110の両端面形状を示しており、図3(a)は左側端面を、また図3(b)は右側端面を示している。そして、図3(a)では端面中央にバカ穴111があり、その上部にネジ溝112がある。また、図3(b)では端面中央にバカ穴111があり、その下部にネジ溝112がある。
【実施例2】
【0021】
上記実施例では、ナット110を手回しで締め込むように外周に滑り止め114を形成しているが、これを例えば6角ナット状にするとか、平行面を形成しておくとか、によって工具使用に適する形状にすることもできる。
【0022】
また、ナット110の当接面113は、面構成に替えて点接触方式、例えば3点接触型にしてもよい。この場合、当接面の摩擦接触に替わって当て部材120の当接面への当接部分3点での食い込みによる当接力が働く。
【符号の説明】
【0023】
10 機器本体、11 蝶ナット、20 マスト、30 U字ボルト、
110 ナット、111 ネジ溝、112 バカ穴、113 当接面、
114 滑り止め、120 当て部材、121 当て部材本体、
122 当て部材当接面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象とする機器本体に設けられ、U字ボルトの中央部を支持する支持部材と、前記支持部材に対向配置された状態で前記U字ボルトの端部が挿通されて前記支持部材との間にマストを挟持し、前記機器本体を前記マストに固定保持する当て部材と、前記U字ボルトの端部に嵌合して前記当て部材を前記支持部材に押圧固定するナットとを有する締付固定装置において、
前記ナットは、
軸線に対して斜め方向に傾斜して穿設され前記U字ボルトを挿通させるバカ穴であって、内周壁の複数の部分に前記軸線を中心とする半周未満のネジ溝が分散して設けられたバカ穴、および
前記当て部材に正対するための当接部
をそなえることを特徴とする締付固定装置。
【請求項2】
請求項1記載の締付装置において、
前記ネジ溝は、前記軸線を挟んで互いに反対側となるように前記ナットの一端側および他端側に1箇所ずつ分散配置されたことを特徴とする締付固定装置。
【請求項3】
請求項2記載の締付装置において、
前記バカ穴は、前記軸線に対して前記ネジ溝が作用しない程度に傾斜した斜め方向に穿設されていることを特徴とする締付固定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−233535(P2012−233535A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102930(P2011−102930)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000120076)URO電子工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】