説明

置換空調システム

【課題】居住域内に微風速で均一な低温清浄域を安定して形成することが可能な置換空調システムを提供する。
【解決手段】置換空調システム10は、空調機11から供給される調和空気を建物12内の空調空間13の床面13f近傍に水平方向に連続して配列された複数の吹出口14から空調空間13内へ微風速で吹き出し、空調空間13の天井面13cから排気を行う空調システムである。調和空気の供給経路として、空調機11に接続されたメインダクト15から分岐する複数の枝ダクト16と、枝ダクト16から二方向のダクト18に分岐する分岐ボックス17と、を備え、分岐ボックス17上流側の枝ダクト16にVAV19が配置され、分岐ボックス17下流側のダクト18に微風量調整用の風量調整ダンパ20が設けられ、風量調整ダンパ20より下流側のダクト18にチャンバ24及び吹出口14が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の空気を新鮮な冷気に置き換えるようにして空調を行う置換空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
置換空調方式とは、空調対象である室内空間に、通常の空調を行う場合に吹き出す調和空気の温度よりも高い温度(例えば、通常の空調の調和空気の温度が16℃であれば、置換空調では20℃程度)の新鮮な空気を微風速(0.5m/s前後)で送り込みながら、上部空間から排気を行う、空気の浮力(温度差に起因する比重差)を利用した空調方式である。具体的には、居住域(床面から高さ1800mmまでの空間)に向かって前述した新鮮な調和空気を供給して充満させることにより、居住域にある汚染空気を、人間の体温や室内設備の発熱による上昇気流を利用して、居住域より上方へ移動させ、空調空間の上部に設けた排気口から排気する、という空調方式である。
【0003】
一般的な空調方式においては、室温を26℃に設定する場合は給気温度を16℃程度に設定する必要があるのに対し、置換空調方式においては、室温26℃に設定する場合の給気温度は20℃程度に設定すれば良いので、設定室温と給気温度との温度差を小さくすることができ、また、置換空調方式においては、調和空気を微風速で給気するので、通常の空調よりも空調機の能力を低減することが可能となり、省エネルギを図ることができる。
【0004】
このような置換空調システムに関しては、従来、様々な技術が提案されているが、本願発明に関連するものとして、例えば、特許文献1,2記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−256269号公報
【特許文献2】特開2000−121099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、置換空調方式は、設定室温と給気温度との温度差を小さくすることができ、調和空気を微風速で給気するので、省エネルギを図ることができるなどの点において優れている。しかしながら、居住域内に適温、適湿の空調空気を微風速で供給して充満させ、居住域より上方空間にある汚染空気を、上昇気流を利用して上方へスムーズに移動させることは極めて困難であるのが実状である。
【0007】
特に、居住域に向かって新鮮な冷気(調和空気)を供給する吹出口からの吹出気流に乱れが生じ、居住域に低温清浄域がうまく生成されないことが多い。このような問題は、特許文献1,2に記載された技術を用いても解消することができない。
【0008】
また、特許文献1に記載された空調システムにおいては、空調空間の床面近傍に複数台の給気チャンバが水平方向に配列されているが、これらの給気チャンバは所定間隔をおいて配列されているため、隣り合う給気チャンバから吹き出される調和空気流が合成されることがなく、調和空気流の合成によって到達距離を伸ばすという効果を得ることができない。従って、調和空気流の到達距離を伸ばすためには、給気チャンバから吹き出される調和空気流の風速を増大させざるを得ず、省エネルギを実現することが困難である。
【0009】
一方、特許文献2に記載された置換換気式空気調和装置は、水平方向に連続して配列された透気性パネル(全面板)を通して調和空気を吹き出す構成となっているが、実際のところ、前記透気性パネルの背面側全体に均一に調和空気を供給することは極めて困難であるため、透気性パネルからの吹出気流に乱れが生じ、均一な低温清浄域を形成することができないのが実状である。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、居住域内に微風速で均一な低温清浄域を安定して形成することができる置換空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の置換空調システムは、空調機から供給される調和空気を建物内の空調空間の床面近傍に配置された吹出口から前記空調空間へ微風速で吹き出し、前記空調空間の天井面若しくはその近傍から排気を行う置換空調システムにおいて、
複数の前記吹出口を前記空調空間の床面近傍に水平方向に連続して配列し、
前記空調空間内の気温設定値に基づいて、前記空調機から前記吹出口に供給される調和空気の風量を可変調整するVAVと、前記吹出口から微風速で吹き出す調和空気流の速度分布を均一化するため前記吹出口に設けられた整流手段と、を設け、
前記整流手段として、複数の貫通孔が開設された多孔板と、通気性を有するハニカム構造体と、を配置したことを特徴とする。
【0012】
このような構成とすれば、空調機から送給される調和空気は、VAVにおいて、空調空間内の設定値に基づいて可変調整された適切な風量となって複数の吹出口へ送り込まれ、各吹出口に設けられた整流手段である多孔板及びハニカム構造体を通過して均一気流となって空調空間へ吹き出される。複数の吹出口は空調空間の床面近傍に水平方向に連続して配列されているので、各吹出口から均一気流となって吹き出す空調空気により居住域に低温清浄域を形成することができる。
【0013】
また、各吹出口から空調空間に吹き出した空調空気流は隣接する他の吹出口から吹き出す調和空気流と合成されることによって到達距離が伸びる結果、空調空間内において、複数の吹出口が配置されている面の対向面にまで調和空気流が到達するので、吹出口を複数領域に設けなくとも低温清浄域を安定して形成することができ、室内負荷によって給気風量が低減してもその効果を持続することができる。
【0014】
ここで、前記空調機から前記吹出口に至る調和空気の供給経路が、前記空調機に接続されたメインダクトと、前記メインダクトから分岐する複数の枝ダクトと、前記枝ダクトから二方向のダクトに分岐する分岐手段と、を備え、前記分岐手段の上流側の前記枝ダクトに前記VAVを配置し、前記分岐手段の下流側の前記ダクトに微風量調整手段を設けた構成とすることができる。
【0015】
メインダクトから複数の枝ダクトに分岐したところにVAVを配置したことにより、分岐後の各枝ダクトの風量が設定値となるように可変制御することができる。また、二方向の分岐手段を備えたことにより、VAVにて風量調整された空調空気を二分することができる。さらに、分岐手段で二分された各ダクトに微風量調整手段を設けたことにより、二分されたダクト内の風量に若干の差が発生したとき、微風量調整手段で微調整することができるので、各吹出口から吹き出す調和空気流が均一化され、生成される低温清浄域の安定性が向上する。
【0016】
一方、前記空調機から前記吹出口に至る調和空気の供給経路が、前記空調機に接続されたメインダクトと、前記メインダクトから分岐する複数の枝ダクトと、前記枝ダクトから二方向のダクトに分岐する分岐手段と、を備え、
前記分岐手段に、当該分岐手段より下流側のダクト内に設けた風速センサで検知した当該ダクト内の風速に基づいて前記分岐手段より下流側のダクトへの風量分配率を均一化する分配手段を設けた構成とすることもできる。
【0017】
分岐手段で分岐された後の下流側のダクト内の風速を風速センサで検知して風量を演算し、二つの前記ダクトへの風量分配率が均一となるように制御することにより、分配後のダクト内の風量が自動的に均一化されるので、各吹出口から吹き出した空調空気流によって安定した低温清浄域を生成することができる。また、前記風速センサで検知した風速値の信号をVAVの制御装置にフィードバックすれば、VAVが処理すべき必要風量(の合計)に基づいてVAVを制御することができる。
【0018】
また、本発明の置換空調システムは、空調機から供給される調和空気を建物内の空調空間の床面近傍に配置された吹出口から前記空調空間へ微風速で吹き出し、前記空調空間の天井面若しくはその近傍から排気を行う置換空調システムにおいて、
複数の前記吹出口を前記空調空間の床面近傍に水平方向に連続して配列し、
前記空調空間内の気温設定値に基づいて、前記吹出口から前記空調空間へ供給される調和空気の風量を可変調整するVAV機構と、前記吹出口から微風速で吹き出す調和空気流の速度分布を均一化する整流手段と、を前記吹出口に設けたことを特徴とする。
【0019】
このような構成とすれば、吹出口自体にVAV機能を持たせて可変風量制御を行うことにより、空調機から供給される調和空気は、吹出口にて可変調整され適切な風量となり、各吹出口に設けられた整流手段を通過して均一気流となって空調空間へ吹き出される。複数の吹出口は空調空間の床面近傍に水平方向に連続して配列されているので、各吹出口から均一気流となって吹き出す空調空気により居住域内に低温清浄域を形成することができる。また、吹出口の設置作業と同時にVAVの設置も完了するので、施工性が大幅に向上する。
【0020】
この場合、前記VAV機構として、重ね合わせて配置された少なくとも2枚の多孔板と、前記多孔板同士を相対的に面方向にずれるように移動させるスライド手段と、を設けることができる。
【0021】
このように、VAV機構を2枚の多孔板を重ね合わせた構成とすることにより、通常のバタフライ方式のダンパのように大型にならず、VAV機構を吹出口本体内に納めることができ、装置自身をコンパクト化することができる。また、2枚の多孔板をスライドさせて全体に分布した複数の小孔を開閉するので、小孔から吹出した気流を整流させることができる。さらに、前述した整流手段との相乗作用により、整流効果が向上する。
【0022】
さらに、前記空調空間と隔壁によって区画された隣接空間側へ突設されたカウンタ内に、複数の前記吹出口及び前記吹出口へ空調空気を供給する空気経路を配置することもできる。
【0023】
このような構成とすれば、複数の吹出口及びこれらの吹出口へ空調空気を供給する空気経路を配置するためのスペースを設けることに起因する空調空間の狭隘化を回避することができる。
【0024】
また、前記空調空間の天井に、前記空調機で形成された調和空気を微風速で吹き出す吹出口を設けることもできる。
【0025】
このような構成とすれば、空調空間内に設置された設備機器などの影響で床面近傍に設けた前記吹出口からの調和空気流が到達し難い領域や、熱負荷の高い設備機器付近に向かって調和空気を供給することが可能となるため、低温清浄域の欠損(空調不良の領域)を無くすことができる。また、これにより、安定した低温清浄域の生成に貢献できるとともに、熱負荷処理や作業者に対するスポット空調の効果も得られる。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、居住域内に微風速で均一な低温清浄域を安定して形成することが可能な置換空調システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態である置換空調システムを示す平面図である。
【図2】図1に示す置換空調システムの側面図である。
【図3】図1に示す置換空調システムの一部拡大側面図である。
【図4】図1に示す置換空調システムを構成する吹出口の一部切欠側面図である。
【図5】図4に示す吹出口の正面図である。
【図6】本発明の第2実施形態である置換空調システムを示す平面図である。
【図7】本発明の第3実施形態である置換空調システムを示す平面図である。
【図8】本発明の第4実施形態である置換空調システムを示す側面図である。
【図9】本発明の第5実施形態である置換空調システムを示す側面図である。
【図10】本発明の第6実施形態である置換空調システムの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1〜図5に基づいて、本発明の第1実施形態である置換空調システム10について説明する。置換空調システム10は、空調機11から供給される調和空気を建物12内の空調空間13の床面13f近傍に水平方向に連続して配列された複数の吹出口14から空調空間13内へ微風速で吹き出し、空調空間13の天井面13cから排気を行う空調システムである。
【0029】
空調機11から吹出口14に至る調和空気の供給経路として、空調機11に接続されたメインダクト15と、メインダクト15から分岐する複数の枝ダクト16と、枝ダクト16から二方向のダクト18に分岐する分岐手段の一つである分岐ボックス17と、を備えている。分岐ボックス17の上流側の枝ダクト16にVAV19が配置され、分岐ボックス17の下流側のダクト18に微風量調整用の風量調整ダンパ20が設けられている。風量調整ダンパ20より下流側のダクト18にチャンバ24及び吹出口14が接続されている。
【0030】
VAV19は、空調空間13内の気温設定値に基づいて、空調機11から吹出口14に供給される調和空気の風量を可変調整する機能を有し、吹出口14から微風速で吹き出す調和空気流の速度分布を均一化するための整流手段として、図4,図5に示すように、吹出口14に、複数の貫通孔が開設された多孔板21と、通気性を有するハニカム構造体22と、が配置され、吹出口14の正面にはフェース23が取り付けられている。本実施形態においては、多孔板21及びフェース23をパンチングメタルで形成しているが、これに限定するものではない。
【0031】
図2に示すように、空調空間13の天井面13cには、空調機11で形成された調和空気を微風速で吹き出す吹出口14aと、空調空間13内の空気を排出する排気口25と、が設けられ、排気口25に接続された排気ダクト26にVAV19が配置されている。天井面13cの吹出口14aには、吹出口14に接続されているメインダクト15と同系統のダクト18aを経由して調和空気が送給される。吹出口14aは吹出口14と同じ構造、機能を有している。
【0032】
図3に示すように、空調空間13と隔壁27によって区画された隣接空間28側へ突設されたカウンタ29下方の空間内に、前述した複数の吹出口14及びこれらの吹出口14へ空調空気を供給する空気経路の一部をなすチャンバ24などが配置されている。本実施形態においては、チャンバ24の下方にL字状のダクト18が接続され、隣接空間28の床面28f下方の空間30内に、メインダクト15、枝ダクト16、VAV19,分岐ボックス17及び風量調整ダンパ20などが配置されている。
【0033】
空調機11からメインダクト15及び枝ダクト16を経由して送給される調和空気は、枝ダクト16の途中に配置されたVAV19において、空調空間13内の設定値に基づいて可変調整された適切な風量となって複数の吹出口14へ送り込まれ、各吹出口14に設けられた整流手段である多孔板21及びハニカム構造体22を通過して均一気流となって空調空間13内へ吹き出す。図1,図2に示すように、複数の吹出口14は空調空間13の床面13f近傍に水平方向に連続して配列されているので、各吹出口14から均一気流となって吹き出す空調空気により空調空間13内に低温清浄域を形成することができる。
【0034】
また、各吹出口14から空調空間13内へ吹き出した空調空気流は隣接する他の吹出口14から吹き出す調和空気流と合成されることによって到達距離が伸びる結果、空調空間13内において、複数の吹出口14が配置されている面(隔壁27面)の対向壁面13wにまで調和空気流が到達するので、吹出口14を複数領域に設けなくとも低温清浄域を安定して形成することができる。
【0035】
図1に示すように、メインダクト15から複数の枝ダクト16に分岐したところにVAV19を配置したことにより、分岐後の各枝ダクト16の風量が設定値となるように可変制御することができる。また、枝ダクト16から二方向のダクト18に分岐する分岐ボックス17を備えたことにより、VAV19にて風量調整された空調空気を二分することができる。さらに、分岐ボックス17で二分された各ダクトに風量調整ダンパ20を設けたことにより、二分されたダクト18内の風量に若干の差が発生したとき、風量調整ダンパ20で微調整することができるので、各吹出口14から吹き出す調和空気流が均一化され、生成される低温清浄域の安定性も良好である。
【0036】
図3に示したように、空調空間13と隔壁27によって区画された隣接空間28側へ突設されたカウンタ29内に、複数の吹出口14及びこれらの吹出口14へ空調空気を供給するチャンバ24などを配置したことにより、空調空間13内に、複数の吹出口14及びチャンバ24などを配置するためのスペースを設ける必要がなくなるため、空調空間13の狭隘化を回避することができる。
【0037】
本実施形態において、建物12は給食センターの施設であり、空調空間13は調理室であり、隣接空間28は材料の下ごしらえを行う下処理室であるが、図3に示すように、下処理室側(隣接空間28側)の隔壁27に沿った領域にカウンタ29を設置し、回転釜31などで実際に調理する調理室側(空調空間13)に複数の吹出口14を設置したことにより、下処理室(隣接空間28)から調理室(空調空間13)への材料の受け渡しを、カウンタ29を通じて行うことができるため、熱負荷の高い調理室(空調空間13)内は、複数の吹出口14からの空調空気流で生成される低温清浄域によって良好な環境に保つことができる。
【0038】
また、図2に示すように、空調空間13の天井面13cに、空調機11で形成された調和空気を微風速で吹き出す吹出口14aを設けたことにより、空調空間13内に設置された回転釜31などの熱負荷の高い設備機器付近で作業する作業者に向かって調和空気を供給することが可能となる。このため、床面13f近傍に設けた複数の吹出口14からの調和空気流が到達し難い領域や低温清浄域の欠損(空調不良の領域)が空調空間13内に発生するのを防止することができる。また、吹出口14aを設けたことにより、安定した低温清浄域の生成に貢献できるとともに、熱負荷処理や作業者に対するスポット空調の効果も得られる。
【0039】
図2に示すように、本実施形態においては、吹出口14aの位置を、空調空間13の天井面13cであって、複数の吹出口14が設置されている隔壁27の対向壁面13w側に設定しているが、これに限定するものではないので、空調空間内に設置される設備機器の位置や熱負荷状況あるいは作業者の作業場所に応じて任意に設定することができる。
【0040】
次に、図6に基づいて、本発明の第2実施形態である置換空調システム40について説明する。なお、置換空調システム40において前述した置換空調システム10と共通する部分には図1〜図5と同じ符号を付して説明を省略する。
【0041】
図6に示すように、置換空調システム40は、空調機(図示せず)に接続されたメインダクト15と、メインダクト15から分岐する複数の枝ダクト16と、枝ダクト16から二方向のダクト41に分岐する分岐ボックス42と、を備え、分岐ボックス42に、当該分岐ボックス42より下流側のダクト41内に設けた風速センサ43で検知した当該ダクト41内の風速に基づいて分岐ボックス42より下流側のダクト41への風量分配率を均一化する分配手段44を設けている。
【0042】
分岐ボックス42で分岐した後の下流側のダクト41内の風速を風速センサ43で検知して風量を演算し、二つのダクト41への風量分配率が均一となるように分配手段44で制御することにより、分配後のダクト41内の風量が自動的に均一化されるので、複数の吹出口14から吹き出した空調空気流によって安定した低温清浄域を生成することができる。また、風速センサ43で検知した風速値の信号をVAV19の制御装置(図示せず)にフィードバックすれば、VAV19が処理すべき必要風量(の合計)に基づいてVAV19を制御することができる。
【0043】
次に、図7に基づいて、本発明の第3実施形態である置換空調システム50について説明する。なお、置換空調システム50において前述した置換空調システム10,40と共通する部分には図1〜図6と同じ符号を付して説明を省略する。
【0044】
図7に示すように、置換空調システム50においては、空調空間13内の気温設定値に基づいて、複数の吹出口51から空調空間13へ供給される調和空気の風量を可変調整するVAV機構52と、吹出口51から微風速で吹き出す調和空気流の速度分布を均一化する整流手段(多孔板21及びハニカム構造体22)と、を吹出口51に設けている。
【0045】
このように、吹出口51自体にVAV機構52を設けて可変風量制御を行うことにより、空調機(図示せず)から供給される調和空気は、吹出口51にて可変調整され適切な風量となり、各吹出口51に設けられた整流手段(多孔板21及びハニカム構造体22)を通過して均一気流となって空調空間13へ吹き出される。
【0046】
複数の吹出口51は空調空間13の床面近傍に水平方向に連続して配列されているので、各吹出口51から均一気流となって吹き出す空調空気により居住域に低温清浄域を形成することができる。また、吹出口51の設置作業と同時にVAV機構52の設置も完了するので、施工性も極めて良好である。
【0047】
置換空調システム50においては、VAV機構52として、重ね合わせて配置された2枚の多孔板52a,52bと、多孔板52a,52b同士を相対的に面方向にずれるように移動させるスライド手段53と、を設けている。このような構成とすることにより、バタフライ方式のダンパのように大型にならず、VAV機構52の多孔板52a,52bを吹出口51の本体ケーシング51a内に納めることができ、システムをコンパクト化することができる。
【0048】
また、2枚の多孔板52a,52bをスライドさせることにより、多孔板52a,52b全体に分布して開設された複数の小孔(図示せず)を開閉するので、小孔から吹出した調和空気流を整流しながら風量調整することができる。さらに、前述した整流手段(多孔板21及びハニカム構造体22)との相乗作用により、優れた整流効果を得ることができる。
【0049】
また、吹出口51の正面に取り付けられたフェース23を取り外せば、本体ケーシング51aの正面が開放状態となり、その内部のメンテナンスも実行可能となるので、点検口なども不要である。なお、フェース23や多孔板52a,52bの材料はパンチングメタルが好適であるが、これに限定するものではないので、グリル(ユニバーサルなど)のように吹出空気流に指向性を持たせる機能を有するものでもよい。
【0050】
次に、図8に基づいて、本発明の第4実施形態である置換空調システム60について説明する。なお、置換空調システム60において前述した置換空調システム10,40,50と共通する部分には図1〜図7と同じ符号を付して説明を省略する。
【0051】
図8に示すように、置換空調システム60においては、空調機11から供給される調和空気を階段教室である空調空間61へ微風速で吹き出す複数の吹出口14を、空調空間61の床面61f近傍に水平方向に連続して配列するとともに階段状に配置している。また、空調空間61内の気温設定値に基づいて、空調機11からメインダクト15及び枝ダクト16を経由して各吹出口14に供給される調和空気の風量を可変調整するVAV19が枝ダクト16の途中に配置されている。
【0052】
図8に示す置換空調システム60においては、各階段62上にある座席(図示せず)の後部足元から新鮮な調和空気が吹き出されるので、座席近傍(居住域)に均一な低温清浄域を形成するとともに、着席者の体温などで加温された汚染空気を上昇させて置換空調を行うことができる。
【0053】
次に、図9に基づいて、本発明の第5実施形態である置換空調システム70について説明する。なお、置換空調システム70において前述した置換空調システム10,40,50,60と共通する部分には図1〜図8と同じ符号を付して説明を省略する。
【0054】
図9に示すように、置換空調システム70においては、空調機11から供給される調和空気を美術館である空調空間71へ微風速で吹き出す複数の吹出口14を、空調空間71の床面71f近傍の壁面71wに設けられた凹部71a内に水平方向に連続して配列している。
【0055】
図9に示す置換空調システム70においては、吹出口14が空調空間71内の目立たない位置にあるので、展示物より目立つものが展示室内に存在しないことが要請される美術館などに極めて好適である。また、複数の吹出口14から吹き出す調和空気により、空調空間71内が必要とする低温清浄域を生成するので、展示物の傷みを防止することができる。一方、空調空間71内の汚染空気は展示物を照らす照明の熱による浮力を利用して空調空間71の上方へ移動する。
【0056】
次に、図10に基づいて、本発明の第6実施形態である置換空調システム80について説明する。なお、置換空調システム80において前述した置換空調システム10,40,50,60,70と共通する部分には図1〜図9と同じ符号を付して説明を省略する。
【0057】
図10に示すように、置換空調システム80においては、空調機11から供給される調和空気を病院内の病室である空調空間81へ微風速で吹き出す複数の吹出口14を、空調空間81の床面81f近傍の壁面81wに沿って水平方向に連続して配列している。
【0058】
図10に示す置換空調システム80においては、病室である空調空間81内のベッド82上に居る患者83付近に均一な低温清浄域を形成することができるので、例えば、隣のベッドの患者(図示せず)からウイルスなどの病原体が飛散することがあっても、ベッド82付近を清浄に保つことができ、院内感染の防止に有効である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の置換式空調システムは、給食センター、美術館、階段教室、音楽ホールあるいは病院など比較的天井が高く、広い空間を有する建物の空調システムとして広く利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
10,40,50,60,70,80 置換空調システム
11 空調機
12 建物
13,61,71,81 空調空間
13c 天井面
13f,61f,71f,81f 床面
13w 対向壁面
14 吹出口
15 メインダクト
16 枝ダクト
17,42 分岐ボックス
18,18a,41 ダクト
19 VAV
20 風量調整ダンパ
21,52a,52b 多孔板
22 ハニカム構造体
23 フェース
24 チャンバ
25 排気口
26 排気ダクト
27 隔壁
28 隣接空間
29 カウンタ
30 空間
31 回転釜
43 風速センサ
44 分配手段
52 VAV機構
53 スライド手段
62 階段
71w,81w 壁面
71a 凹部
82 ベッド
83 患者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機から供給される調和空気を建物内の空調空間の床面近傍に配置された吹出口から前記空調空間へ微風速で吹き出し、前記空調空間の天井面若しくはその近傍から排気を行う置換空調システムにおいて、
複数の前記吹出口を前記空調空間の床面近傍に水平方向に連続して配列し、
前記空調空間内の気温設定値に基づいて、前記空調機から前記吹出口に供給される調和空気の風量を可変調整するVAVと、前記吹出口から微風速で吹き出す調和空気流の速度分布を均一化するため前記吹出口に設けられた整流手段と、を設け、
前記整流手段として、複数の貫通孔が開設された多孔板と、通気性を有するハニカム構造体と、を配置したことを特徴とする置換空調システム。
【請求項2】
前記空調機から前記吹出口に至る調和空気の供給経路が、前記空調機に接続されたメインダクトと、前記メインダクトから分岐する複数の枝ダクトと、前記枝ダクトから二方向のダクトに分岐する分岐手段と、を備え、前記分岐手段の上流側の前記枝ダクトに前記VAVを配置し、前記分岐手段の下流側の前記ダクトに微風量調整手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の置換空調システム。
【請求項3】
前記空調機から前記吹出口に至る調和空気の供給経路が、前記空調機に接続されたメインダクトと、前記メインダクトから分岐する複数の枝ダクトと、前記枝ダクトから二方向のダクトに分岐する分岐手段と、を備え、
前記分岐手段に、当該分岐手段より下流側のダクト内に設けた風速センサで検知した当該ダクト内の風速に基づいて前記分岐手段より下流側のダクトへの風量分配率を均一化する分配手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の置換空調システム。
【請求項4】
空調機から供給される調和空気を建物内の空調空間の床面近傍に配置された吹出口から前記空調空間へ微風速で吹き出し、前記空調空間の天井面若しくはその近傍から排気を行う置換空調システムにおいて、
複数の前記吹出口を前記空調空間の床面近傍に水平方向に連続して配列し、
前記空調空間内の気温設定値に基づいて、前記吹出口から前記空調空間へ供給される調和空気の風量を可変調整するVAV機構と、前記吹出口から微風速で吹き出す調和空気流の速度分布を均一化する整流手段と、を前記吹出口に設けたことを特徴とする置換空調システム。
【請求項5】
前記VAV機構として、重ね合わせて配置された少なくとも2枚の多孔板と、前記多孔板同士を相対的に面方向にずれるように移動させるスライド手段と、を設けた請求項4記載の置換空調システム。
【請求項6】
前記空調空間と隔壁によって区画された隣接空間側へ突設されたカウンタ内に、複数の前記吹出口及び前記吹出口へ空調空気を供給する空気経路を配置した請求項1〜5のいずれかに記載の置換空調システム。
【請求項7】
前記空調空間の天井に、前記空調機で形成された調和空気を微風速で吹き出す吹出口を設けた請求項1〜6のいずれかに記載の置換空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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