説明

耐候性電線

【課題】屋外で使用した場合でも長期間に渡り高い耐候性を維持することができる耐候性電線を提供する。
【解決手段】本発明の耐候性電線は、導体と、前記導体を被覆するシース層と、を備える。そして、シース層は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対し、可塑剤20〜100重量部、ハイドロタルサイト8〜15重量部、Ca−Zn系安定剤4〜15重量部、酸化チタン0.5〜5.0重量部を配合してなるポリ塩化ビニル樹脂組成物を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビニル樹脂組成物で被覆した耐候性電線に関する。詳細には、本発明は、ポリ塩化ビニル樹脂組成物をシースとして使用することにより、屋外で使用した場合でも長期間に渡って紫外線劣化を防止することができる耐候性電線に関する。
【背景技術】
【0002】
電線及びケーブルの絶縁に使用される合成樹脂としては、主にポリ塩化ビニルが使用されている。このようなポリ塩化ビニルは安価であり、可塑剤を添加することで加工も容易になることから、自動車用部品や建築用部材として広く用いられている。
【0003】
ここで、ポリ塩化ビニルを屋外で使用する場合には高い耐候性が要求されることから、従来よりポリ塩化ビニルの耐候性を向上させる技術が開示されている(例えば、特許文献1及び2参照)。特許文献1は、ポリ塩化ビニル樹脂にCa−Zn系安定剤、ハイドロタルサイト及び疎水性シリカを配合することにより、熱安定性や耐候性を向上させたポリ塩化ビニル樹脂組成物を開示している。また、特許文献2は、ベースポリマー、金属水和物、高分子量ヒンダードアミン系光安定剤、低分子量ヒンダードアミン系光安定剤及び紫外線吸収剤を配合する耐候性難燃樹脂組成物を開示し、さらにこの樹脂組成物により被覆した電線も開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−80849号公報
【特許文献2】特開2005−187595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のポリ塩化ビニル樹脂組成物でも高い耐候性を有しているが、長期間に渡り絶縁性を確保するためには更なる耐候性が必要である。また、特許文献2に記載の難燃樹脂組成物では、光安定剤や紫外線吸収剤を添加することにより耐候性を向上させているが、屋外で使用する場合には耐候性が不十分である。さらに、前記光安定剤や紫外線吸収剤の分散性に問題があり、機械的強度が低下する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、屋外で使用した場合でも長期間に渡り高い耐候性を維持することができる耐候性電線を提供することにある。
【0007】
本発明の第1の態様に係る耐候性電線は、導体と、前記導体を被覆するシース層とを備える。そして、前記シース層は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対し、可塑剤20〜100重量部、ハイドロタルサイト8〜15重量部、Ca−Zn系安定剤4〜15重量部、酸化チタン0.5〜5.0重量部を配合してなるポリ塩化ビニル樹脂組成物を含有する。
【0008】
本発明の第2の態様に係る耐候性電線は、前記第1の態様のケーブルにおいて、前記ポリ塩化ビニル樹脂組成物は着色剤をさらに含み、前記シース層におけるマンセル表色系の明度が6.0以上である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の耐候性電線では、ハイドロタルサイト及び酸化チタンを高配合し、機械的強度の低下を抑制しつつも耐候性が向上した塩化ビニルシースを使用している。そのため、たとえ屋外で使用したとしても長期間に渡り紫外線劣化を抑制し、絶縁性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る耐候性電線を示す概略図である。(a)は前記耐候性電線の断面図であり、(b)は前記耐候性電線の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0012】
本発明の実施形態に係る耐候性電線(耐候性ケーブル)1は、図1に示すように、導体2と、導体2の周囲を被覆するシース層4とを備えている。さらに、導体2とシース層4との間には、絶縁体3が介在している。
【0013】
導体2としては、銅、銅合金及びアルミニウム、アルミニウム合金等の公知の導電性金属材料を用いることができる。また、絶縁体3としては、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂並びにポリ塩化ビニル樹脂を用いることができる。この絶縁体3は、押出成形により導体2を被覆する。この絶縁体3を構成するポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体などが挙げられる。これらはそれぞれ異なる特性を有し、ポリオレフィン系樹脂として単独で使用することも、複数種類を併用することも可能である。
【0014】
シース層4は、ポリ塩化ビニル樹脂と、可塑剤と、ハイドロタルサイトと、Ca−Zn系安定剤と、酸化チタンとを含むポリ塩化ビニル樹脂組成物を含有する。ポリ塩化ビニル樹脂にハイドロタルサイト及び酸化チタンを添加することにより、シース層4の機械的特性を低下させることなく、耐候性が向上したポリ塩化ビニルシースを得ることができる。
【0015】
シース層4に使用されるポリ塩化ビニル樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソプレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−各種ビニルエーテル共重合体などを挙げることができる。なお、前記ポリ塩化ビニル樹脂の重合方法は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合及び乳化重合など特に限定されない。
【0016】
また、ポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度は、1200〜2000であることが好ましい。平均重合度が1200以上であることにより耐候性をある程度確保することができる。また平均重合度が2000以下であることにより、押出成形時の溶融粘度の上昇を抑制し、成形加工時の熱安定性の悪化を防止することができる。
【0017】
また、可塑剤としては、ポリ塩化ビニル樹脂に通常使用されるものであればよい。すなわち、フタル酸系、トリメリット酸系、アジピン酸系、ポリエステル系などの可塑剤を用いることができる。これらの中でも、フタル酸系、トリメリット酸系及びアジピン酸系の可塑剤が好ましく、フタル酸系及びトリメリット酸系の可塑剤が最も好ましい。これらは単独で使用してもよく、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
なお、可塑剤としては、化学式1に示すフタル酸エステルが特に好ましく、その中でもフタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル及びフタル酸ジウンデシルを用いることが好ましい。このようなフタル酸エステルを前記ハイドロタルサイト、Ca−Zn系安定剤及び酸化チタンと共にポリ塩化ビニル樹脂に混合した場合、流動性及び熱安定性などの加工性に優れたポリ塩化ビニル樹脂組成物を得ることができる。なお、前記可塑剤としては、化学式1に示すフタル酸エステルだけでなく、トリメリット酸エステルなどの耐熱可塑剤を使用してもよい。トリメリット酸エステルを用いても加工性に優れたポリ塩化ビニル樹脂組成物を得ることができる。なお、トリメリット酸エステルとしては、例えばトリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)などを挙げることができる。
【0019】
【化1】

式中、RはC2n+1(nは9以上の整数)を示す。
【0020】
また、ハイドロタルサイトとしては、次の組成式(2)で示される化合物を使用することができる。
Mg1−xAl(OH)(COx/2・mHO (2)
式中、Xは、0<x≦0.5を満たす値であり、mは正の数である。ハイドロタルサイトは天然物であってもよく、また合成品であってもよい。天然物としては、例えば分子式が〔MgAl(OH)16(CO・4HO〕で表されるものを使用することができ、合成品としては、例えば分子式が〔Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO〕で表されるものを使用することができる。このようなハイドロタルサイトは、ポリ塩化ビニル樹脂組成物の腐食性や耐候性を向上させる作用がある。なお、本実施形態においては、ハイドロタルサイトの結晶構造、結晶粒子径及び結晶水の有無などに制限されることない。
【0021】
さらに、Ca−Zn系安定剤としては、2−エチルヘキシル酸、安息香酸、イソデカン酸、クエン酸、ソルビン酸などの高級脂肪酸のカルシウム塩類及び2−エチルヘキシル酸、イソデカン酸、ネオデカン酸などの高級脂肪酸の亜鉛塩類などを挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
酸化チタンとしては、酸化チタン(IV)(TiO)を用いることができる。また、酸化チタンの結晶構造としては、ルチル型及びアナターゼ型のいずれも使用することができる。
【0023】
ここで、ポリ塩化ビニルの劣化は、紫外線に起因する脱塩酸反応により共役二重結合を備えたポリエンが生成することによるものや、酸化反応によりカルボン酸及びカルボキシル基が生成することによるものといわれている。そして、酸化チタンは波長が400nm以下の紫外線を吸収する作用があるため、ポリ塩化ビニル樹脂に配合することにより、屋外で使用した場合でも高い耐候性を維持することができる。
【0024】
なお、酸化チタンの粒子径が小さいほど効率的に紫外線を吸収することができるため、酸化チタンの平均粒子径は0.5μm以下とすることが好ましい。0.5μm以下であることにより、ポリ塩化ビニル樹脂組成物中における酸化チタンの分散性をも向上させることができる。なお、分散性及び紫外線吸収効率の観点から、酸化チタンの平均粒子径は0.15μm〜0.35μmとすることがより好ましい。ここで、酸化チタンの平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により求めることができる。なお、この場合の平均粒子径とは、メジアン径(D50)をいう。
【0025】
前記ポリ塩化ビニル樹脂組成物における各成分の含有量は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対し、可塑剤20〜100重量部、ハイドロタルサイト8〜15重量部、Ca−Zn系安定剤4〜15重量部、酸化チタン0.5〜5.0重量部とすることが好ましい。可塑剤、ハイドロタルサイト、Ca−Zn系安定剤及び酸化チタンの含有量をこのような範囲にすることにより、機械的強度の低下を防止しつつも高い耐候性を得ることができる。なお、可塑剤は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対し、20〜50重量部を配合することがより好ましく、Ca−Zn系安定剤は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対し、4〜6重量部を配合することがより好ましい。さらに、ハイドロタルサイトは、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対し、10〜15重量部を配合することがより好ましい。これにより、ポリ塩化ビニル樹脂組成物の機械的強度をより向上させることが可能となる。また、酸化チタンは、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対し、3〜5重量部を配合することがより好ましい。これにより、紫外線を効率よく吸収し、ポリ塩化ビニル樹脂組成物の耐候性をより向上させることが可能となる。
【0026】
前記ポリ塩化ビニル樹脂組成物には、必要に応じて充填剤、滑剤、難燃剤及び加工助剤を配合してもよい。充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク及びクレー等を用いることができる。充填剤の配合量は、製造コスト、絶縁性、形状保持性等の要求に合わせて適宜選択することができる。滑剤としては、ポリエチレンワックス、シリコーンオイル及びヒドロキシステアリン酸などを用いることができる。難燃剤としては、無機系及び有機系の難燃剤を用いることができる。無機系の難燃剤は、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛及びリン系化合物等を用いることができる。また、有機系の難燃剤は、塩素系、臭素系等のハロゲン系有機難燃剤を用いることができる。加工助剤としては、ゴム材料等に添加されるパラフィン系油、アロマチック系油又はナフテン系油等の石油系油を用いることができる。
【0027】
ここで、従来の電線及びケーブルにおいて、ポリ塩化ビニルシース層が淡い色である場合、屋外で使用するなどして紫外線に曝されることにより、紫外線劣化によるブリード現象の発生や機械的強度の低下が起こることがあった。そして、このようなブリード現象の発生や機械的強度の低下を防止して耐候性を向上させるために、従来、紫外線を吸収しやすい黒やグレー、青、緑などの濃い色の着色剤を配合することが多かった。そのため、従来の耐候性電線及びケーブルは、前記のような濃い色で着色されているため、意匠性に問題があった。
【0028】
しかしながら、本実施形態の耐候性電線では、シース層4に紫外線吸収作用を有する酸化チタンが配合されている。そのため、濃い色の着色剤を使用する必要がなく、アイボリーやベージュなど淡い色の着色剤を使用することができる。具体的には、マンセル表色系で明度が6.0以上の着色剤を使用することができる。これにより、本実施形態の耐候性電線におけるシース層も、高い耐候性を維持しつつもマンセル表色系で明度が6.0以上とすることができるため、意匠性を向上させることが可能となる。
【0029】
シース層4のポリ塩化ビニル樹脂組成物に混合され得る着色剤としては、「顔料便覧(日本顔料技術協会編)」に記載されている一般的な無機顔料や有機顔料を用いることができる。例えば、無機顔料としては、チタンイエロー等のチタンを含む(複合)金属酸化物、酸化亜鉛、酸化鉄、硫化亜鉛、三酸化アンチモン等が挙げられる。有機顔料はフタロシアニン系、アンスラキノン系、キナクリドン系、アゾ系、イソインドリノン系、キノフタロン系、ペリノン系、ペリレン系等の顔料が挙げられる。
【0030】
なお、シース層4は、次のようにして形成することができる。まず、ポリ塩化ビニル樹脂、可塑剤、充填剤、Ca−Zn系安定剤、ハイドロタルサイト及び酸化チタン(必要に応じて、着色剤、充填剤、滑剤、難燃剤及び加工助剤等)を混合し、ドライアップする。その後、得られた混合物を押出成形することにより、絶縁体3が形成された導体2上に形成することができる。また、シース層4は、前記ポリ塩化ビニル樹脂組成物のみからなるものであってもよく、前記ポリ塩化ビニル樹脂組成物と他の樹脂との混合物からなるものであってもよい。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0032】
[実施例1乃至18]
まず、表1及び2に示す重量部数のポリ塩化ビニル樹脂、可塑剤、充填剤、Ca−Zn系安定剤、ハイドロタルサイト、酸化チタンを混合し、さらに着色剤も加え、ドライアップした。得られたパウダー状の混合物を160℃±10℃で8分間ロール混練し、厚さ約1.3mmの素練りシートを得た。これをさらに180℃で熱プレスすることにより、厚さ1.0mm±0.15mmの各実施例のシートを作製した。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
[比較例1及び2]
表3に示す重量部数のポリ塩化ビニル樹脂、可塑剤、充填剤、Ca−Zn系安定剤及びハイドロタルサイトを使用した以外は、実施例と同様にして厚さ1.0mm±0.15mmのシートを作製した。
【0036】
[比較例3乃至8]
表3に示す重量部数のポリ塩化ビニル樹脂、可塑剤、充填剤、Ca−Zn系安定剤、ハイドロタルサイト及び酸化チタンを使用した以外は、実施例と同様にして厚さ1.0mm±0.15mmのシートを作製した。
【0037】
[比較例9及び10]
表3に示す重量部数のポリ塩化ビニル樹脂、可塑剤、充填剤、Ca−Zn系安定剤、ハイドロタルサイト及び紫外線吸収剤(UV剤)を使用した以外は、実施例と同様にして厚さ1.0mm±0.15mmのシートを作製した。
【0038】
【表3】

【0039】
なお、実施例及び比較例で使用したポリ塩化ビニル樹脂は信越化学工業株式会社製TK−1300を使用し、可塑剤としてのDINP及びDOPは株式会社ジェイ・プラス製のフタル酸ジイソノニル及びフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)をそれぞれ使用した。さらに、充填剤としては重質炭酸カルシウムを使用した。また、ハイドロタルサイトは、協和化学株式会社製アルカマイザー2(登録商標)を使用した。なお、比較例9及び10の紫外線吸収剤は、株式会社海水化学研究所製VIONIL Bを使用した。
【0040】
また、得られた実施例及び比較例のシートの色を目視により確認し、その結果を表1乃至3に示した。さらに、各実施例及び比較例のシートの明度を測色計を用いて測定したところ、いずれも6.0以上であった。
【0041】
[常温引張試験]
実施例1乃至18及び比較例1乃至10で得られたシートに対し、日本工業規格JISK7161に準拠した常温引張試験を行った。具体的には、前記実施例及び比較例のシートを12時間以上常温(25℃)で放置して切断することにより、各実施例及び比較例の試験片(JIS3号ダンベル片)を作成した。そして、試験温度を23℃±2℃とし、引張速度を200mm/minとして、試験片の引張強さTs及び伸び率Eを測定した。なお、この引張試験は5つの試験片に対して行い、各試験片の引張強さ及び伸び率の平均値を各実施例及び比較例の引張強さ及び伸び率とした。そして、表1乃至3において、試験片の引張強さTsの平均値が18MPa超の場合を「○」とし、14〜18MPaの場合を「△」とし、14MPa未満の場合を「×」とした。また、試験片の伸び率Eの平均値が300%超の場合を「○」とし、250〜300%の場合を「△」とし、250%未満の場合を「×」とした。
【0042】
[耐候性試験]
スガ試験機株式会社製サンシャインウェザーメーターWELL−SUM−DC(H)を用い、上記実施例及び比較例の各シートに光照射を行った。なお、光照射時の温度は70℃±1.5℃とし、湿度は30〜70RH±5RHとした。その後、上記常温引張試験を同様に、光照射後の各実施例及び比較例の試験片の引張強さ及び伸び率の平均値を求めた。なお、表1乃至3において、光照射前の引張強さに対する光照射後の引張強さの残率RTs([光照射後の引張強さ]/[光照射前の引張強さ]×100)が90%超の場合を「○」とし、60〜90%の場合を「△」とし、60%未満の場合を「×」とした。また、光照射前の伸び率に対する光照射後の伸び率の残率RE([光照射後の伸び率]/[光照射前の伸び率]×100)が90%超の場合を「○」とし、60〜90%の場合を「△」とし、60%未満の場合を「×」とした。なお、表1乃至3では、光照射時間が1000時間の場合と2000の場合のRTs及びREを示した。
【0043】
表1乃至3に示すように、本発明に係る実施例1〜18は、明度が6.0以上であるにもかかわらず、常温引張試験において引張強度が18MPa超であり、伸び率も300%超であった。また、耐候性試験においてもRTs及びREが90%を超えており、高い耐候性を示した。これに対し、酸化チタンを含有しない比較例1及び2や酸化チタンの含有量が少ない比較例3〜8では紫外線劣化が激しく、耐候性が大幅に低下していた。
【0044】
また、比較例1及び2と比較例9及び10とを比較すると、UV剤を含有することにより、耐候性が若干向上するが、分散性に問題があり、機械的強度が大幅に低下した。これに対し、実施例1〜18では、酸化チタンだけでなくハイドロタルサイトも高配合しているため、耐候性を向上させつつも機械的強度の低下を抑制している。
【0045】
以上、本発明を実施例及び比較例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 耐候性電線
2 導体
3 絶縁体
4 シース層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と、
前記導体を被覆するシース層と、
を備え、
前記シース層は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対し、可塑剤20〜100重量部、ハイドロタルサイト8〜15重量部、Ca−Zn系安定剤4〜15重量部、酸化チタン0.5〜5.0重量部を配合してなるポリ塩化ビニル樹脂組成物を含有することを特徴とする耐候性電線。
【請求項2】
前記ポリ塩化ビニル樹脂組成物は着色剤をさらに含み、
前記シース層におけるマンセル表色系の明度が6.0以上であることを特徴とする請求項1に記載の耐候性電線。

【図1】
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【公開番号】特開2013−65519(P2013−65519A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204661(P2011−204661)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(501418498)矢崎エナジーシステム株式会社 (79)
【Fターム(参考)】