説明

耐摩耗性に優れたヌバック様皮革調シート

【課題】ポリウレタン樹脂多孔質膜によるカーシート用途への展開を可能にする耐磨耗性に優れたヌバック様皮革調シートを提供する。
【解決手段】編物、織物及び不織布からなる群から選択された基布と、該基布上に形成され、表面研磨されたポリウレタン樹脂多孔質膜とからなるヌバック様皮革調シートであって、ポリウレタン樹脂が側鎖としてシリコーン鎖を有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車内装材として、シートメイン、サイド、背裏、ヘッドレスト、ドアトリム、天井材等に使用できる、耐摩耗性に優れたヌバック様皮革調シートに関する。
【背景技術】
【0002】
本革はその高級感、質感、独特の表面感及び触感等が好まれ、自動車内装材として、一部高級車に搭載されている。しかし天然のものであるので、品質の均一性は望むべくもなく、オプションとして使用されるにとどまっている。
【0003】
そこで本革に代わるものとして種々の合成皮革や人工皮革が提案されており、例えば、湿式凝固法で形成されたポリウレタン多孔膜表面をサンドペーパーで研磨して多孔膜の蜂窩状構造を露出させ、スエード様にしたものが広く使用されている。
【0004】
しかし、その構造面からくる摩擦抵抗の大きさから耐摩耗性に劣るものとなり、衣料用途、ゴルフ用手袋素材等としては多く使用されているが、生活資材用途としては靴甲皮材が使用限界である。工業資材用途としては、この構造の研磨クロスが製造されているが、車輌シート材として要求される耐磨耗性能を満たすものは未だ得られていない。
【0005】
一方、合成皮革や人工皮革の改良のためには種々の提案がなされ、その一つとして、スエード調皮革様シートの色調維持等のために、ウレタン変性されたシリコーン重合体が混合された多孔質ポリウレタン層を形成することが開示されている(特許文献1)。
【0006】
しかし、これはシリコーン系の凝固調節剤を用いて得られた多孔質ポリウレタン層において、凝固調節剤が経時変化にて表面にブリードし、同時にポリウレタンオリゴマーもブリードさせ、表面の色調が変化するという問題を解決するために、シリコーン主鎖又は側鎖の一部をポリウレタン化したものを用いるものであり、耐磨耗性能の向上については考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−303368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、従来のスエード様、ヌバック様合成皮革では達成できなかった、耐摩耗性の優れたヌバック様の皮革調シートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のヌバック様皮革調シートは、編物、織物及び不織布からなる群から選択された基布と、該基布上に形成され、表面研磨されたポリウレタン樹脂多孔質膜とからなるヌバック様皮革調シートであって、ポリウレタン樹脂が側鎖としてシリコーン鎖を有するものとする。
【0010】
上記において、側鎖としてシリコーン鎖を有するポリウレタン樹脂は、シリコーン鎖を有するポリオールをポリオール全量中1.5〜10重量%含有するポリオールを用いてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のヌバック様皮革調シートは、従来のポリウレタン樹脂多孔質膜によるヌバック様、スエード様シートと比較して耐摩耗性が大きく向上し、従来品では不可能であったカーシート等の自動車内装用途への適用も可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のヌバック様皮革調シートに用いる基材(基布)としては、車輌用内装材に通常用いられる、ポリエステル繊維で構成される織物・編物・不織布がいずれも用いられるが、中でもカーシート成型仕上がりの優美さを左右する表皮シートの円形モジュラス(直径30cmの試料を、タテ方向、ヨコ方向、正バイアス、逆バイアスの4方向に引張試験機で定伸長時の応力を測定)バランスを満足させる素材として編物が好ましく、特に丸編素材が好ましい。
【0013】
多孔質膜を形成するポリウレタン樹脂はポリオール成分として、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、シリコーン系ジオール、フッ素系ポリオール、ポリアミド系ポリオール、または、植物由来成分として、ヒマシ油系ポリオールを用いることができ、特にこれらのジオールが用いられる。
【0014】
本発明においては、ポリウレタン樹脂に側鎖としてシリコーン鎖を導入することを特徴とする。ポリウレタン樹脂に側鎖としてシリコーン鎖を導入するには、シリコーン鎖を有するポリオールとして、例えば、片末端に2個の水酸基を有するポリジメチルシロキサン等のオルガノポリシロキサンを、他のジオールと共に2価のイソシアネートと反応させればよい。
【0015】
導入するシリコーン鎖の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量で通常400〜16000程度であり、5000〜16000が好ましい。
【0016】
また、シリコーン鎖を有するポリオールの含有比率は、ポリオール全量中1.5〜10重量%が好ましい。1.5重量%未満であると導入により期待される効果が十分に得られず、10重量%を超えるとサンドペーパーによる研磨工程でサンドペーパーと多孔質との間でスリップが生じヨコ段状の研削ムラが発生するようになる。
【0017】
本発明で用いるポリウレタン樹脂のより具体的な製造方法の例としては、これに限定されるわけではないが、極性溶剤(ジメチルホルムアミド(DMF),ジメチルスルホキシド(DMSO)等に代表される)に片末端に2個の水酸基を有するシリコーン系ジオールを他のジオールと共に溶解し、ここに2価のイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI),水添MDIなど)を添加し、充分に反応させ、末端にイソシアネートまたは水酸基を有するプレポリマーを作ったのち、ジオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどの石油由来だけでなく、植物性由来の1,3−プロパンジオール、1,2−ヘキサンジオールなど)、又は2価のイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI),水添MDIなど)を添加し、鎖長反応で重合度を上げ、ポリウレタン樹脂とする方法が挙げられる。
【0018】
末端にイソシアネート基を有するプレポリマーと反応させる時に、2価のポリオール(ポリカーボネートジオール、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリカプロラクトンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど)に植物由来ポリオールであるヒマシ油系ポリオールを共重合させることも可能である。
【0019】
本発明のヌバック様皮革調シートは、公知の方法に従い製造することができる。すなわち、ポリウレタン樹脂を水に可溶な極性溶剤(ジメチルホルムアミド(DMF),ジメチルスルホキシド(DMSO)等)に溶解してなるポリウレタン樹脂溶液を基材にコーティングし、これを水中或いは極性溶剤を含有する水溶液(凝固浴)中で湿式凝固させて、多孔質膜を形成し、脱溶剤、熱風乾燥後、サンドペーパーにて多孔質膜表面膜を均一に研磨することによって表皮を削り取り、蜂窩状構造の表面を露出させればよい。
【0020】
なおコーティング方法としては、ナイフコーティング、ナイフオーバーロールコーティング、リバースロールコーティングなどの各種のコーティング方法が使用可能である。
【0021】
蜂窩状表面にグラビアコーターにて皮革模様のプリントロールでポリウレタン樹脂配合液により皮革模様をプリントして、立体感を有する本革に近い表面感を得ることができる。また立体感の表現として、皮革模様のエンボス及びエンボスとプリントとの組み合わせ等の技法を用い、更に皮革に近似した表面感を得ることも可能である。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。また、以下の実施例・比較例で使用する化学物質の表記は次のものを表す。
【0023】
N−980:数平均分子量2,000のポリカーボネートジオール、日本ポリウレタン(株)製
FM−DA26:数平均分子量12,600の片末端ジオールシリコーン樹脂、チッソ(株)製(ウレタン化後、側鎖としてシリコーン鎖が導入される)
KF−6001:数平均分子量1,800の両末端ジオールシリコーン樹脂、信越化学工業(株)製(ウレタン化後、主鎖にシリコーン鎖が取り込まれる)
MDI:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
EG :エチレングリコール
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
【0024】
[実施例1]
(ポリウレタン樹脂の製造)
ポリオール(A)としてN−980を185重量部と、ポリオール(B)として片末端ジオールシリコーン樹脂FM−DA26を3.2重量部と、さらに有機ジイソシアネートとしてMDIを{(A)+(B)}:MDIのモル比率が1:4.61となるようにDMFを溶媒として冷却管付き四つ口セパラブルコルベンに仕込み、窒素雰囲気下で40〜60℃にて攪拌反応させた。さらに鎖伸長剤としてEGを、DMFにて希釈した状態で50〜60℃にて滴下反応させた後、DMFで徐々に希釈し、約10時間後に固形分30%のポリウレタン溶液(I)を得た。このポリウレタン樹脂のポリオール中のシリコーンジオール量は1.70重量%である。
【0025】
(ヌバック様皮革調シートの製造)
ポリウレタン溶液(I):100重量部(以下「部」と表記する)に、DMF:70部、大日精化工業(株)製顔料マスターバッチBS−780:5部、大日精化工業(株)製発泡調節剤CUT−101:1部を加えて充分攪拌して、ポリウレタン樹脂調合液1を得た。ポリエステル繊維(167デシテックス/48フィラメント)の加工糸丸編をベース基材として、予めDMF30%水溶液に浸し、基材重量の50%の付着になるようマングルで絞り、その後ポリウレタン樹脂調合液1を1000g/mを塗布してDMFを10重量%含有する凝固浴に浸漬し、ポリウレタン樹脂を析出凝固させ、80℃の水浴で30分間洗浄を行い、DMFを完全に除去後、120℃の熱風乾燥で乾燥して、厚み450μmのポリウレタン多孔質膜を得た。つぎに180番手のサンドペーパーにて多孔質膜表面より50μ研削することで、開口径8〜15μの蜂窩状表面を得た。
【0026】
次にポリウレタン溶液(I):100部に、MEK:200部、大日精化工業(株)製顔料マスターバッチBS−780:60部を加えて充分攪拌してポリウレタン調合液2をえた。グラビアコーターにて蜂窩状表面に皮革模様のプリントロールでポリウレタン樹脂配合液2により皮革模様をプリントして、立体感を有する本革に近い表面感の表現を行った。
【0027】
[実施例2]
(ポリウレタンの製造)
ポリオール(A)としてN−980を185重量部と、ポリオール(B)として片末端ジオールシリコーン樹脂FM−DA26を6.52重量部と、さらに有機ジイソシアネートとしてMDIを{(A)+(B)}:MDIのモル比率が1:4.61となるようにDMFを溶媒として冷却管付き四つ口セパラブルコルベンに仕込み、窒素雰囲気下で40〜60℃にて攪拌反応させた、さらに鎖伸長剤としてEGを、DMFにて希釈した状態で50〜60℃にて滴下反応させた後、DMFで徐々に希釈し、約10時間後に固形分30%のポリウレタン溶液(II)を得た。このポリウレタン樹脂のポリオール中のシリコーンジオール量は3.40重量%である。
【0028】
(ヌバック様皮革調シートの製造)
ポリウレタン溶液(II):100重量部(以下「部」とする)に、DMF:70部、大日精化工業(株)製顔料マスターバッチBS−780:5部、大日精化工業(株)製発泡調節剤CUT−101:1部を加えて充分攪拌して、ポリウレタン樹脂調合液1を得た。ポリエステル繊維(167デシテックス/48フィラメント)の加工糸丸編をベース基材として、予めDMF30%水溶液に浸し、基材重量の50%の付着になるようマングルで絞り、その後ポリウレタン樹脂調合液1を1000g/mを塗布してDMFを10重量%含有する凝固浴に浸漬し、ポリウレタン樹脂を析出凝固させ、80℃の水浴で30分間洗浄を行い、DMFを完全に除去後120℃の熱風乾燥で乾燥して、厚み450μmのポリウレタン多孔質膜を得た。つぎに180番手のつぎに180番手のサンドペーパーにて多孔質膜表面より50μ研削することで開口径8〜15μの蜂窩状表面を得た。
【0029】
次にポリウレタン溶液(II):100部に、MEK:200部、大日精化工業(株)製顔料マスターバッチBS−780:60部を加えて充分攪拌してポリウレタン調合液2をえた。グラビアコーターにて蜂窩状表面に皮革模様のプリントロールでポリウレタン樹脂配合液2により皮革模様をプリントして、立体感を有する本革に近い表面感の表現を行った。
【0030】
[実施例3]
(ポリウレタン樹脂の製造)
ポリオール(A)としてN−980 178重量部と、ポリオール(B)として片末端ジオールシリコーン樹脂FM−DA26を9.6重量部と、さらに有機ジイソシアネートとしてMDIを{(A)+(B)}:MDIのモル比率が1:4.61となるようにDMFを溶媒として冷却管付き四つ口セパラブルコルベンに仕込み、窒素雰囲気下で40〜60℃にて攪拌反応させた、さらに鎖伸長剤としてEGを、DMFにて希釈した状態で50〜60℃にて滴下反応させた後、DMFで徐々に希釈し、約10時間後に固形分30%のポリウレタン溶液(III)を得た。このポリウレタン樹脂のポリオール中のシリコーンジオール量は5.12重量%である。
【0031】
(ヌバック様皮革調シートの製造)
ポリウレタン溶液(III):100重量部(以下「部」とする)に、DMF:70部、大日精化工業(株)製顔料マスターバッチBS−780:5部、大日精化工業(株)製発泡調節剤CUT−101:1部を加えて充分攪拌して、ポリウレタン樹脂調合液1を得た。ポリエステル繊維(167デシテックス/48フィラメント)の加工糸丸編をベース基材として、予めDMF30%水溶液に浸し、基材重量の50%の付着になるようマングルで絞り、その後ポリウレタン樹脂調合液1を1000g/mを塗布してDMFを10重量%含有する凝固浴に浸漬し、ポリウレタン樹脂を析出凝固させ、80℃の水浴で30分間洗浄を行い、DMFを完全に除去後120℃の熱風乾燥で乾燥して、厚み450μmのポリウレタン多孔質膜を得た。つぎに180番手のサンドペーパーにて多孔質膜表面より50μ研削することで開口径8〜15μの蜂窩状表面を得た。
【0032】
次にポリウレタン溶液(III):100部に、MEK:200部、大日精化工業(株)製顔料マスターバッチBS−780:60部を加えて充分攪拌してポリウレタン調合液2をえた。グラビアコーターにて蜂窩状表面に皮革模様のプリントロールでポリウレタン樹脂配合液2により皮革模様をプリントして、立体感を有する本革に近い表面感の表現を行った。
【0033】
[実施例4]
(ポリウレタン樹脂の製造)
ポリオール(A)としてN−980 175重量部と、ポリオール(B)として片末端ジオールシリコーン樹脂FM−DA26を12.8重量部と、さらに有機ジイソシアネートとしてMDIを{(A)+(B)}:MDIのモル比率が1:4.61となるようにDMFを溶媒として冷却管付き四つ口セパラブルコルベンに仕込み、窒素雰囲気下で40〜60℃にて攪拌反応させた、さらに鎖伸長剤としてEGを、DMFにて希釈した状態で50〜60℃にて滴下反応させた後、DMFで徐々に希釈し、約10時間後に固形分30%のポリウレタン溶液(IV)を得た。このポリウレタン樹脂のポリオール中のシリコーンジオール量は6.82重量%である。
【0034】
(ヌバック様皮革調シートの製造)
ポリウレタン溶液(IV):100重量部(以下「部」とする)に、DMF:70部、大日精化工業(株)製顔料マスターバッチBS−780:5部、大日精化工業(株)製発泡調節剤CUT−101:1部を加えて充分攪拌して、ポリウレタン樹脂調合液1を得た。ポリエステル繊維(167デシテックス/48フィラメント)の加工糸丸編をベース基材として、予めDMF30%水溶液に浸し、基材重量の50%の付着になるようマングルで絞り、その後ポリウレタン樹脂調合液1.を1000g/mを塗布してDMFを10重量%含有する凝固浴に浸漬し、ポリウレタン樹脂を析出凝固させ、80℃の水浴で30分間洗浄を行い、DMFを完全に除去後120℃の熱風乾燥で乾燥して、厚み450μmのポリウレタン多孔質膜を得た。つぎに180番手のサンドペーパーにて多孔質膜表面より50μ研削することで開口径8〜15μの蜂窩状表面を得た。
【0035】
次にポリウレタン溶液(IV):100部に、MEK:200部、大日精化工業(株)製顔料マスターバッチBS−780:60部を加えて充分攪拌してポリウレタン調合液2をえた。グラビアコーターにて蜂窩状表面に皮革模様のプリントロールでポリウレタン樹脂配合液2により皮革模様をプリントして、立体感を有する本革に近い表面感の表現を行った。
【0036】
[実施例5]
(ポリウレタン樹脂の製造)
ポリオール(A)としてN−980:173重量部と、ポリオール(B)として片末端ジオールシリコーン樹脂FM−DA26を19.3重量部と、さらに有機ジイソシアネートとしてMDIを{(A)+(B)}:MDIのモル比率が1:4.61となるようにDMFを溶媒として冷却管付き四つ口セパラブルコルベンに仕込み、窒素雰囲気下で40〜60℃にて攪拌反応させた、さらに鎖伸長剤としてEGを、DMFにて希釈した状態で50〜60℃にて滴下反応させた後、DMFで徐々に希釈し、約10時間後に固形分30%のポリウレタン溶液(V)を得た。このポリウレタン樹脂のポリオール中のシリコーンジオール量は10.04重量%である。
【0037】
(ヌバック様皮革調シートの製造)
ポリウレタン溶液(V):100重量部(以下「部」)に、DMF:70部、大日精化工業(株)製顔料マスターバッチBS−780:5部、大日精化工業(株)製発泡調節剤CUT−101:1部を加えて充分攪拌して、ポリウレタン樹脂調合液1を得た。ポリエステル繊維(167デシテックス/48フィラメント)の加工糸丸編をベース基材として、予めDMF30%水溶液に浸し、基材重量の50%の付着になるようマングルで絞り、その後ポリウレタン樹脂調合液1を1000g/mを塗布してDMFを10重量%含有する凝固浴に浸漬し、ポリウレタン樹脂を析出凝固させ、80℃の水浴で30分間洗浄を行い、DMFを完全に除去後120℃の熱風乾燥で乾燥して、厚み450μmのポリウレタン多孔質膜を得た。つぎに180番手のサンドペーパーにて多孔質膜表面より50μ研削することで開口径8〜15μの蜂窩状表面を得た。
【0038】
次にポリウレタン溶液(V):100部に、MEK:200部、大日精化工業(株)製顔料マスターバッチBS−780:60部を加えて充分攪拌してポリウレタン調合液2をえた。グラビアコーターにて蜂窩状表面に皮革模様のプリントロールでポリウレタン樹脂配合液2により皮革模様をプリントして、立体感を有する本革に近い表面感の表現を行った。
【0039】
[比較例1]
(ポリウレタン樹脂の製造)
ポリオールとして日本ポリウレタン(株)製ポリカーボネートジオールN−980 161重量部と、有機ジイソシアネートとしてMDIをN−980:MDIのモル比率が1:4.61となるようにDMFを溶媒として冷却管付き四つ口セパラブルコルベンに仕込み、窒素雰囲気下で40〜60℃にて攪拌反応させた、さらに鎖伸長剤としてEGを、DMFにて希釈した状態で50〜60℃にて滴下反応させた後、DMFで徐々に希釈し、約10時間後に固形分30%のポリウレタン溶液(VI)を得た。
【0040】
(ヌバック様皮革調シートの製造)
ポリウレタン溶液(VI):100重量部(以下「部」)に、DMF:70部、大日精化工業(株)製顔料マスターバッチBS−780:5部、大日精化工業(株)製発泡調節剤CUT−101:1部を加えて充分攪拌して、ポリウレタン樹脂調合液1を得た。ポリエステル繊維(167デシテックス/48フィラメント)の加工糸丸編をベース基材として、予めDMF30%水溶液に浸し、基材重量の50%の付着になるようマングルで絞り、その後ポリウレタン樹脂調合液1を1000g/mを塗布してDMFを10重量%含有する凝固浴に浸漬し、ポリウレタン樹脂を析出凝固させ、80℃の水浴で30分間洗浄を行い、DMFを完全に除去後120℃の熱風乾燥で乾燥して、厚み450μmのポリウレタン多孔質膜を得た。つぎに180番手のサンドペーパーにて多孔質膜表面より50μ研削することで開口径8〜15μの蜂窩状表面を得た。
【0041】
次にポリウレタン溶液(VI):100部に、MEK:200部、大日精化工業(株)製顔料マスターバッチBS−780:60部を加えて充分攪拌してポリウレタン調合液2をえた。グラビアコーターにて蜂窩状表面に皮革模様のプリントロールでポリウレタン樹脂配合液2を塗布して皮革模様をプリントして立体感を有する本革に近い表面感の表現を行った。
【0042】
[比較例2]
(ポリウレタン樹脂の製造)
ポリオール(A)として日本ポリウレタン(株)製ポリカーボネートジオールN−980 152重量部と、ポリオール(B)として両末端ジオールシリコーン樹脂KF−6001を38重量部と、さらに有機ジイソシアネートとしてMDIを{(A)+(B)}:MDIのモル比率が1:4.61となるようにDMFを溶媒として冷却管付き四つ口セパラブルコルベンに仕込み、窒素雰囲気下で40〜60℃にて攪拌反応させた、さらに鎖伸長剤としてEGを、DMFにて希釈した状態で50〜60℃にて滴下反応させた後、DMFで徐々に希釈し、約10時間後に固形分30%のポリウレタン溶液(VII)を得た。尚このポリウレタン樹脂のポリオール中のシリコーンジオール量は20重量%である。
【0043】
(ヌバック様皮革調シートの製造)
ポリウレタン溶液(VII):100重量部(以下「部」)に、DMF:70部、大日精化工業(株)製顔料マスターバッチBS−780:5部、大日精化工業(株)製発泡調節剤CUT−101:1部を加えて充分攪拌して、ポリウレタン樹脂調合液1を得た。ポリエステル繊維(167デシテックス/48フィラメント)の加工糸丸編をベース基材として、予めDMF30%水溶液に浸し、基材重量の50%の付着になるようマングルで絞り、その後ポリウレタン樹脂調合液1を1000g/mを塗布してDMFを10重量%含有する凝固浴に浸漬し、ポリウレタン樹脂を析出凝固させ、80℃の水浴で30分間洗浄を行い、DMFを完全に除去後120℃の熱風乾燥で乾燥して、厚み450μmのポリウレタン多孔質膜を得た。つぎに180番手のサンドペーパーにて多孔質膜表面より50μ研削することで開口径8〜15μの蜂窩状表面を得た。
【0044】
次にポリウレタン溶液(VII):100部に、MEK:200部、大日精化工業(株)製顔料マスターバッチBS−780:60部を加えて充分攪拌してポリウレタン調合液2をえた。グラビアコーターにて蜂窩状表面に皮革模様のプリントロールでポリウレタン樹脂配合液2により皮革模様をプリントして、立体感を有する本革に近い表面感の表現を行った。
【0045】
上記実施例1〜5、比較例1,2で得たヌバック様皮革調シートの耐磨耗性試験結果を[表1]に示す。
【0046】
上記実施例を含む本願明細書等における諸性能の測定方法としては、以下のものを用いた。
【0047】
1.テーバー式摩耗試験
摩耗強度測定:(株)大栄化学精器製作所製:テーバー式磨耗試験機、磨耗輪:米国テーバー社製CS−10を使用し、1kg荷重×2000回の条件で、次の基準で級(5段階)判定を行った。
<磨耗強度級判定基準>
5級:表面変化まったく認められないもの
4級:表面変化わずかに認められるが、ほとんど目立たないもの
3級:表面変化が明らかに認められるが、目立ちのすくないもの
2級:表面変化がやや著しいもの
1級:表面変化がかなり著しいもの
【0048】
2.平面磨耗試験
磨耗強度測定:(株)大栄化学精器製作所製、平面磨耗試験機を使用し、以下の条件で試験を行った。判定基準は上記テーバー式摩耗試験の基準と同じである。
押圧荷重:1kg,ストローク:140mm、速度:60往復/min,6号帆布を摩擦子に取り付ける。
クッション材:厚さ10±1mm、20%圧縮応力7.9〜10.8KPaのウレタンフォームを用いる。
【0049】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のヌバック様皮革調シートは、従来の製品の用途である衣料、靴等にも使用可能であるが、その優れた耐摩耗性から、自動車内装材として、シート(メイン、サイド)、背裏、ヘッドレスト、ドアトリム、天井材等に特に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
編物、織物及び不織布からなる群から選択された基布と、該基布上に形成され、表面研磨されたポリウレタン樹脂多孔質膜とからなるヌバック様皮革調シートであって、
前記ポリウレタン樹脂が側鎖としてシリコーン鎖を有する
ことを特徴とする、ヌバック様皮革調シート。
【請求項2】
前記シリコーン鎖を有するポリウレタン樹脂が、シリコーン鎖を有するポリオールをポリオール全量中1.5〜10重量%含有するポリオールからなることを特徴とする、請求項1に記載のヌバック様皮革調シート。

【公開番号】特開2011−69002(P2011−69002A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218763(P2009−218763)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(591086407)東レコーテックス株式会社 (29)
【Fターム(参考)】