説明

耐火性部材

【課題】 目地部に防・耐火性及び耐水性が同時に付与可能であって、しかも施工が容易な耐火性部材を提供する。
【解決手段】 耐火性部材が、緩衝性材料層の少なくとも一面に加熱によって膨張して耐火断熱層を形成しうる熱膨張性粘着剤層が積層され積層体から形成され、熱膨張性粘着剤層を50kW/m2 の加熱条件下で30分間加熱した後の体積膨張率が3〜100倍である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防・耐火用途に用いられる耐火性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般建築物の内外壁に用いられる部材に対して、防火性能や耐火性能が要求されるようになってきた。これに伴い、外壁の接続部(目地部)に対しても、従来から必要とされた水密性に加えて、防・耐火性能が要求されている。
外壁の接続部(目地部)に要求される防・耐火性能としては、裏面への炎の貫通がないこと、目地部が部材で覆われている場合は、その部材の温度が260℃以下となることが必要である。
【0003】
一般に外壁の接続部(目地部)に防・耐火性能を付与するために、例えば、特開平8−81674号公報には防火性を有するシーラントを塗布する方法や、特開平8−209891号公報には耐火性を有するガスケットを取り付ける方法が挙げられる。しかしながら、シーラントを塗布する方法は、建築物全体に足場を設けた現場にて作業をするため、その作業に技術を要し、施工が不十分であると火災時にシーラントが脱落して炎が貫通する恐れがあった。
また、ガスケットを取り付ける方法は、比較的簡単に施工ができるが、耐火性を有するガスケット自体が高価であるという問題点があった。
【0004】
また、水密性をもたせるためには、一次防水としてガスケットやシーラントを取り付ける方法が採用されているが、さらに毛管現象による水の侵入を防止するには、二次防水として木口面にブチルテープを貼付けた上で、発泡ポリエチレン等のバックアップ材を充填する方法を必要とするため、この場合、施工が非常に煩雑になるという問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記に鑑み、目地部に防・耐火性及び耐水性が同時に付与可能であって、しかも施工が容易な耐火性部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明(以下、第1発明という)である耐火性部材は、緩衝性材料層の少なくとも一面に加熱によって膨張して耐火断熱層を形成しうる熱膨張性粘着剤層が積層された耐火性部材であって、該熱膨張性粘着剤層を50kW/m2 の加熱条件下で30分間加熱した後の体積膨張率が3〜100倍であることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明(以下、第2発明という)である耐火性部材は、筒状緩衝性材料層の表面に加熱によって膨張して耐火断熱層を形成しうる熱膨張性粘着剤層が積層された耐火性部材であって、該熱膨張性粘着剤層が50kW/m2 の加熱条件下で30分間加熱された後の体積膨張率が3〜100倍であることを特徴とする耐火性部材。
【0008】
以下に本発明を詳細に説明する。
第1発明の耐火性部材は、緩衝性材料層の少なくとも一面に熱膨張性粘着剤層が積層された積層体からなり、第2発明の耐火性部材は、筒状緩衝性材料層の表面に熱膨張性粘着剤層が積層された積層体からなる。
【0009】
上記緩衝性材料としては、緩衝性を有するものであれば特に制限はないが、樹脂発泡体、不織布又は織布からなるものが好ましい。
上記樹脂発泡体としては、例えば、ポリエチレン系発泡体、ポリプロピレン系発泡体等のポリオレフィン系発泡体、ポリスチレン系発泡体、ポリウレタン系発泡体、フェノール樹脂系発泡体、イソシアヌレート系発泡体等の独立気泡発泡体が好適に用いられる。発泡倍率は5〜100倍の範囲が好ましい。
【0010】
上記不織布としては、例えば、ポリエステル不織布、ポリプロピレン不織布、ポリエチレン不織布、アクリル樹脂系不織布等の有機繊維不織布;セラミックブランケット、ロックウール、グラスウール等の無機繊維不織布が好適に用いられる。無機繊維不織布は、ゴム成分を含有する熱膨張性粘着剤との接着性を高めるために、ポリエチレン等の樹脂フィルムで包み込まれたものであってもよい。
【0011】
上記織布としては、例えば、ポリエステル織布、ポリプロピレン織布、アクリル樹脂織布等の有機繊維織布や、セラミック繊維、ロックウール繊維、ガラス繊維等からなる無機繊維織布が挙げられる。
【0012】
上記熱膨張性粘着剤は、加熱によって膨張して耐火断熱層を形成するものであって、50kW/m2 の加熱条件下で30分間加熱された後の体積膨張率が3〜100倍であれば、特に制限はないが、樹脂バインダー及び無機充填剤からなるものが好ましい。
【0013】
上記熱膨張性粘着剤層を50kW/m2 の加熱条件下で30分間加熱したときの体積膨張率が、3倍未満では十分な耐火性能を発現させるのに分厚い熱膨張性粘着剤層を必要とするためコストアップを招き、100倍を超えると加熱により膨張して形成される耐火断熱層の強度が低下するため、崩れ易くなる。
【0014】
上記樹脂バインダーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂が使用可能あるが、特にゴム成分35〜50重量%、ポリブテン40〜60重量%及び粘着付与剤5〜25重量%を構成成分とするものが好ましい。
【0015】
上記樹脂バインダー中、ゴム成分の割合が、35重量%未満になると凝集力が不足して成形体の強度が低下し、50重量%を超えると無機充填剤の配合時に均一混合が困難となり、成形体の柔軟性が低下する。
上記ポリブテンの割合が、40重量%未満になると可塑化効果が不十分であるため、無機充填剤の均一混合が困難となり、60重量%を超えると他の樹脂成分の割合が少なくなるため、成形体の強度が不足する。
また、上記粘着付与剤の割合が、5重量%未満になると十分な粘着性が得られず、25重量%を超えると樹脂成分中の他の成分の割合が減少するため、成形体の強度が不足する。
【0016】
上記ゴム成分としては、従来から用いられている天然ゴムや合成ゴムを用いることができる。合成ゴムとしては、例えば、ブチルゴム、ポリクロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエン・アクリロニトリルゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム等が挙げられ、これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0017】
上記ポリブテンとしては、重量平均分子量800〜1600であるものが好ましい。重量平均分子量が、800未満では粘度が低くなるため、成形体の表面にブリードアウトすることがあり、1600を超えると粘度が高くなるため、成形時の可塑化効果が不十分となり、無機充填剤の均一混合が困難になる。
上記重量平均分子量は、ASTM D2503に準拠して測定される値である。
【0018】
上記範囲の重量平均分子量を有するポリブテンの市販品としては、例えば、出光石油化学社製「100R」(重量平均分子量:940)、「300R」(重量平均分子量:1450);日本石油化学社製「HV−100」(重量平均分子量:970);AMOCO社製「H−100」(重量平均分子量:940)等が挙げられる。
【0019】
上記粘着付与剤としては、例えば、ロジン樹脂、ロジン誘導体、ダンマル、ポリテルペン樹脂、テルペン変性体、脂肪族系炭化水素樹脂、シクロペンタジエン樹脂、芳香族系石油樹脂、フェノール系樹脂、アルキルフェノール−アセチレン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ビニルトルエン−αメチルスチレン共重合体等が挙げられる。
【0020】
上記熱膨張性粘着剤における無機充填剤の配合量は、樹脂バインダー100重量部に対して50〜400重量部が好ましい。
無機充填剤の配合量が、50重量部未満になると燃焼後の残渣量が減少するため、十分な耐火断熱層が形成されず、可燃物の配合比率が増加するため難燃性が低下する。また、無機充填剤の配合量が、400重量部未満を超えると、樹脂バインダーの配合比率が減少するため、粘着力が不足する。
【0021】
上記無機充填剤のうち、層状無機物が20〜350重量部用いられる。層状無機物の使用量が、20重量部未満になると膨張倍率が不足するため、十分な防・耐火性能が得られず、350重量部を超えると凝集力が不足するため、成形体に十分な強度が得られなくなる。
【0022】
上記層状無機物としては、加熱時に膨張するものであれば特に制限はなく、例えば、バーミキュライト、カオリン、マイカ、中和処理された熱膨張性黒鉛等が挙げられる。これらの中でも、発泡開始温度が低い中和処理された熱膨張性黒鉛が好ましい。
【0023】
上記中和処理された熱膨張性黒鉛とは、従来公知の物質である熱膨張性黒鉛を中和処理したものである。上記熱膨張性黒鉛は、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理することにより生成するグラファイト層間化合物であり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。
【0024】
上述のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和することにより、中和処理された熱膨張性黒鉛とする。
【0025】
上記脂肪族低級アミンとしては、特に限定されず、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
上記アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物としては、特に限定されず、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
【0026】
上記中和処理された熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュが好ましい。粒度が200メッシュより小さくなると、黒鉛の膨張度が小さく、所定の耐火断熱層が得られず、粒度が20メッシュより大きくなると、黒鉛の膨張度が大きいという利点はあるが、樹脂バインダーと混練する際に分散性が悪くなり、物性の低下が避けられない。
【0027】
上記中和処理された熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、東ソー社製「GREP−EG」、UCAR CARBON社製「GRAFGUARD」等が挙げられる。
【0028】
上記層状無機物以外の無機充填剤としては、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0029】
上記無機充填剤の中でも、特に骨材的役割を果たす炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩;骨材的役割の他に加熱時に吸熱効果を付与する水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の含水無機物が好ましい。
上記含水無機物及び金属炭酸塩を併用は、燃焼残渣の強度向上や熱容量増大に大きく寄与すると考えられる。
【0030】
さらに、上記含水無機物は、加熱時の脱水反応によって生成した水のために吸熱が起こり、温度上昇が低減されて高い耐熱性が得られる点、及び、加熱残渣として酸化物が残存し、これが骨材となって働くことで残渣強度が向上する点で特に好ましい。中でも、水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムは、脱水効果を発揮する温度領域が異なるため、併用すると脱水効果を発揮する温度領域が広くなり、より効果的な温度上昇抑制効果が得られることから、併用することが好ましい。
【0031】
さらに、上記熱膨張性粘着剤の難燃性を向上させるために、上記無機充填剤にはリン化合物を併用してもよい。炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩は、リン化合物との反応で膨張を促すと考えられ、特に、リン化合物として、ポリリン酸アンモニウムを使用した場合に、高い膨張効果が得られる。また、有効な骨材として働き、燃焼後に形状保持性の高い残渣を形成する。
【0032】
上記無機充填剤の粒径としては、0.5〜100μmが好ましく、より好ましくは、約1〜50μmである。
また、粒径の大きい無機充填剤と粒径の小さいものを組み合わせて使用することがより好ましく、組み合わせて用いることによって、熱膨張性粘着剤層の力学的性能を維持したまま、高充填化することが可能となる。
【0033】
上記含水無機物の市販品としては、例えば、水酸化アルミニウムとして、粒径1μmの「ハイジライトH−42M」(昭和電工社製)、粒径18μmの「ハイジライトH−31」(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0034】
上記炭酸カルシウムの市販品としては、例えば、粒径1.8μmの「ホワイトンSB赤」(白石カルシウム社製)、粒径8μmの「ホワイトンBF300」(備北粉化社製)等が挙げられる。
【0035】
上記リン化合物としては、例えば、赤リン;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等のポリリン酸アンモニウム類が挙げられる。これらの中でも、特にポリリン酸アンモニウム類が好ましい。
上記ポリリン酸アンモニウムの市販品としては、例えば、クラリアント社製「エキソリット422」、「エキソリット462」;住友化学工業社製「スミセーフP」;チッソ社製「テラージュC60」、「テラージュC70」、「テラージュC80」等が挙げられる。
【0036】
上記熱膨張性粘着剤層は、樹脂バインダー、無機充填剤等を含有する樹脂組成物を、カレンダー成形、押出成形、プレス成形等でシート状に成形することにより得ることができる。
【0037】
上記樹脂組成物には、その物性を損なわない範囲で、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤の他、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料等が添加されてもよい。
【0038】
上記緩衝性材料層と熱膨張性粘着剤層との積層は、ブチルゴムを含有する熱膨張性粘着剤層の粘着性を利用して行うことができ、緩衝性材料層がシート状の場合は、その一面又は両面に熱膨張性粘着剤層が積層され、緩衝性材料層が筒状の場合は、その表面に熱膨張性粘着剤層が積層される。
また、上記熱膨張性粘着剤は、緩衝性材料層の必ずしも全面に積層される必要はなく、部分的に積層されてもよい。
【0039】
上記熱膨張性粘着剤層は、シート状の熱膨張性粘着剤層を一旦離型紙上に押出成形した後緩衝性材料層と積層してもよい。耐火性部材は、離型紙を積層したままの状態で保存し、使用時に剥離してもよい。上記離型紙としては、例えばシリコーン離型剤により離型処理されたものが用いられる。
【0040】
上記熱膨張性粘着剤層の厚みは、目地部の幅に応じて設定され、目地部の幅の1〜50%程度が好ましい。目地部の幅の1%未満になると、耐熱性部材裏面への火炎の貫通を防止する耐火性能が低下し、目地部の幅の50%を超えると、耐火性能は良好であるが、コストアップを招くので好ましくない。
【0041】
上記緩衝性材料層の厚みは、目地部の幅に応じて設定され、目地部の幅の50〜300%程度が好ましい。目地部の幅の50%未満になると、目地部を充填する際の緩衝機能が低下し、目地部の幅の300%を超えると目地部に充填する際の施工性が低下する。
【0042】
上記耐火性部材は、火災の際に緩衝性材料や目地材が熱により収縮して間隙を生じても、熱膨張性粘着剤層が膨張して耐火断熱層を形成して間隙を充填することにより、優れた耐火性を発現する。
【発明の効果】
【0043】
本発明の耐火性部材は、上述の構成とすることによって、火災時に熱膨張性粘着材層が膨張して目地部が充填されるので、裏面への火炎の貫通がなく、熱の伝搬が抑制され、裏面の温度上昇を抑制することができる。
また、ゴム成分を含有するので、目地部に防水性を付与することができ、しかも施工が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【0045】
熱膨張性粘着剤の配合
表1に示した配合量の、ブチルゴム、ポリブテン、低分子石油樹脂、メタロセンPE、中和処理された熱膨張性黒鉛、バーミキュライト、ポリリン酸アンモニウム、水酸化アルミニウム及び炭酸カルシウムからなる樹脂組成物を二軸押出機で混練して、所定厚みの熱膨張性粘着剤A,B及びCのシートを離型紙の離型面に押出した。
【0046】
体積膨張率の測定
上記熱膨張性粘着剤A,B及びCのシートを100mm×100mmのサイズに切断したサンプルに、ATLAS社製コーンカロリメーター「CONE2」を用いて50kW/m2 の熱量を30分間照射して燃焼、膨張させ、耐火断熱層を形成した。得られた耐火断熱層の厚みから、下式により厚み方向の膨張倍率を算出した。厚み方向の膨張倍率(倍)=t/t0 、ここでtは膨張後の厚み、t0は膨張前の厚みをそれぞれ示す。厚み方向の膨張倍率は体積膨張率と見なされる。尚、厚み方向の膨張倍率が20倍を超える場合は、内寸が100mm×100mm×高さ30mmの鉄製又はアルミ箔製の箱を作製し、箱の下にサンプルを配置して測定した。
【0047】
【表1】

【0048】
(実施例1〜3)
表2に示した緩衝性材料の一面に、表1に示した熱膨張性粘着剤のシートの離型紙を剥離して貼付けた後、幅30mmに切断して耐火性部材を作製した。
【0049】
図1に示したように、2枚のALC板(積水ハウス社製「ダインコンクリートウォール75」、サイズ:縦575mm×横445mm×厚さ75mm)1a,1bを、角形鋼管(サイズ:幅150mm×高さ100mm×厚さ4.5mm)2に、目地部3の幅が10mmとなるようにコンクリート用ビス4で固定した。
この目地部3に一方の外壁材1a側面に耐火性部材5の粘着剤5a側を貼付け、他方の外壁材1b側面に緩衝性材料5bが接するように耐火性部材5を挿入して目地部3を塞いだ後、この目地部3の外側からコーキング材6(積水化学社製変性シリコーン樹脂コーキング材)を充填してシールし、耐火性試験体を得た。
【0050】
耐火性試験
上記耐火性試験体について、JIS A 1304に準拠して1時間加熱した際の裏面温度(図1の上方から加熱し、図1中7の位置で温度測定)を測定し、表2に示した。表中、裏面温度が260℃未満のものを○、260℃以上のものを×でそれぞれ示した。
【0051】
(比較例1)
熱膨張性粘着剤のシートを全く使用せず、実施例1と同様に作製した目地部にロックウールフェルトのみを挿入した後、さらにロックウールフェルト上に実施例1と同様のコーキング材を充填して、耐火性試験体を得た。
上記目地試験体につき、実施例1と同様の耐火性試験を行い、その結果を表2に示した。
【0052】
【表2】

【0053】
熱膨張性粘着剤の配合
表3に示した配合量の、ブチルゴム、ポリブテン、低分子石油樹脂、メタロセンPE、中和処理された熱膨張性黒鉛、ポリリン酸アンモニウム、水酸化アルミニウム及び炭酸カルシウムをニーダーで混練した後、得られた樹脂組成物をカレンダー成形機でシートに成形して、熱膨張性粘着剤D,E及びFのシートを得た。
【0054】
体積膨張率の測定
上記熱膨張性粘着剤D,E及びFのシートについて、熱膨張性粘着剤Aのシートと同様の方法により、加熱膨張させて耐火断熱層を形成した後、耐火断熱層の厚みから体積膨張率を算出し、表3に示した。
【0055】
熱伝導率の測定
上記熱膨張性粘着剤D,E及びFのシートについて、英弘精機社製保温材熱伝導率測定装置「HC−073」を用いて、25℃における熱伝導率を測定し、表3に示した。
【0056】
【表3】

【0057】
(実施例4,7〜9)
表4に示した上記熱膨張性粘着剤の配合物をニーダーで混練し、得られた組成物をカレンダー成形機でシート状に成形して、60mm幅の熱膨張性粘着剤のシートを得た後、このシートを表4に示した60mm幅の緩衝性材料層に積層して、図2に示した耐火性部材を作製した。この耐火性部材を、図3に示したように、緩衝性材料層51bを内側にしてU字状に折り曲げて熱膨張性粘着剤層51aが外壁材1a及び1bの側面に接するように、実施例1と同様の目地部に挿入した後、目地部の外側からコーキング材の代わりにEPDM製のガスケット61(目地幅10mm用、挿入深さ30mm)を充填して、耐火性試験体を作製した。
尚、実施例7では、図4に示したように、60mm幅のシートからなる熱膨張性粘着剤層52aの両端に、20mm幅の緩衝性材料層52bをそれぞれ積層した耐火性部材52を、熱膨張性粘着剤層52aが外側となるようにU字状に折り曲げて使用した。
【0058】
(実施例5,6)
緩衝性材料層として円筒状のポリエチレン発泡体を押出成形し、その周囲に表4に示した熱膨張性粘着剤を押出成形して被覆し、図5に示した耐火性部材を得た。この耐火性部材をU字状に折り曲げて、熱膨張性粘着剤層53aが外壁材側面に接するように挿入したこと以外は、実施例4と同様にして耐火性試験体を作製した。
【0059】
(比較例2)
目地部に耐火性部材の代わりに、円筒状のポリエチレン発泡体のみを挿入したこと以外は、実施例1と同様にして耐火性試験体を作製した。
【0060】
(比較例3)
目地部に耐火性部材の代わりに、ロックウールを挿入したこと以外は、実施例1と同様にして耐火性試験体を作製した。
【0061】
実施例4〜9及び比較例2,3の耐火性試験体及び耐火性部材につき、下記の性能評価を行い、その結果を表4に示した。
【0062】
耐火性試験実施例1と同様の方法で行った。
【0063】
防水性試験
縦200mm×横200mm×厚さ30mmのアクリル樹脂板を、目地部が10mm間隔となるように配置し、この目地部に耐火性部材を充填した。次いで、耐火性部材上に、直径75mm×長さ600mmの硬質塩化ビニル管を立て、アクリル樹脂板との隙間がないようにシーリング材でシールした後、硬質塩化ビニル管内に550mmの高さまで水を注入し、目地部裏側への漏水の有無を目視観察した。表中、漏水のないものを×、漏水のないものを○で示した。
【0064】
【表4】

【0065】
表4中、実施例は耐火試験においてガスケットは脱落したが、熱膨張性粘着剤層が膨張して目地部が充填されたので、裏面温度は260℃未満であった。これに対して、比較例ではガスケットは脱落し、裏面温度は360℃に達した。
防水性試験において、実施例は目地部裏側への漏水はなかったのに対して、比較例では目地部裏側への漏水が認められた。
【0066】
尚、表中で使用した各成分は下記の通りである。
・ブチルゴム:エクソン化学社製「ブチルゴム#065」
・メタロセンPE(ポリエチレン):ダウケミカル社製「EG8200」
・ポリブテン:出光石油化学社製「ポリブテン100R」
・低分子石油樹脂:トーネックス社製「エスコレッツ5320」
【0067】
・ポリリン酸アンモニウム:クラリアント社製「エキソリット422」
・中和処理された熱膨張性黒鉛:東ソー社製「フレームカットGREP−EG」
・水酸アルミニウム:昭和電工社製「ハイジライトH−31」
・炭酸カルシウム:備北粉化社製「ホワイトンBF300」
【0068】
・ポリエチレン発泡体:積水化学社製
・セラミックブランケット:ニチアス社製「ファインフレックブランケット」
・ロックウールフェルト:ニチアス社製「MGフェルト」(40k、アルミクラフト紙付)
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】耐火試験体の一例を示す模式断面図である。
【図2】耐火性部材の一例を示す模式断面図である。
【図3】耐火試験体の他の一例を示す模式断面図である。
【図4】耐火性部材の他の一例を示す模式断面図である。
【図5】耐火性部材の他の一例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1a,1b ALC板
2 角形鋼管
3 目地部
4 コンクリート用ビス
5,51,52,53 耐火性部材
5a,51a,52a,53a 熱膨張性粘着剤層
5b,51b,52b,53b 緩衝性材料層
6 コーキング材
61 ガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝性材料層の少なくとも一面に加熱によって膨張して耐火断熱層を形成しうる熱膨張性粘着剤層が積層されてなり、かつ、該熱膨張性粘着剤層を50kW/m2 の加熱条件下で30分間加熱した後の体積膨張率が3〜100倍である外壁の目地部用耐火性部材を、U字状に折り曲げる工程と、
一方の外壁材と他方の外壁材との間に設けられた目地部に対し、緩衝性材料層を内側にして前記耐火性部材を挿入することにより前記目地部を塞ぐ工程と、
を有することを特徴とする、外壁の目地部用耐火性部材の施工方法。
【請求項2】
筒状緩衝性材料層の表面に加熱によって膨張して耐火断熱層を形成しうる熱膨張性粘着剤層が積層されてなり、かつ、該熱膨張性粘着剤層が50kW/m2 の加熱条件下で30分間加熱された後の体積膨張率が3〜100倍である外壁の目地部用耐火性部材を、U字状に折り曲げる工程と、
一方の外壁材と他方の外壁材との間に設けられた目地部に対し、前記熱膨張性粘着剤層が前記一方の外壁材と他方の外壁材と接する様に前記耐火性部材を挿入することにより前記目地部を塞ぐ工程と、
を有することを特徴とする、外壁の目地部用耐火性部材の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−97466(P2006−97466A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−372883(P2005−372883)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【分割の表示】特願平11−356069の分割
【原出願日】平成11年12月15日(1999.12.15)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】