説明

耐火物の厚み測定用端子及び耐火物の厚み測定方法

【課題】機械装置によって測定用端子を耐火物に押し付けることなく、耐火物の厚みを正確に測定する。
【解決手段】筒状の本体2内に、測定対象である耐火物側から順に、耐火物と同質の材料からなる接触体11、圧電素子12、電極14が配置され、バネ18によって、圧電素子12は接触体11側に付勢され、接触体11と密着している。接触体11の測定用端面11bは、本体2の端面から露出している。耐火物を測定する際には、接触体11の測定用端面11bを、耐火物の表面に接着剤によって接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火物の厚みを測定する際に用いる耐火物の厚み測定用端子、及び耐火物の厚み測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば高炉の炉壁は、通常外側より鉄皮、不定形耐火物、冷却用ステーブ、スタンプ材、耐火煉瓦によって構成されているが、高炉炉底部の耐火煉瓦は常に溶銑にさらされているため、高炉の操業に伴い徐々に損耗する。そのため耐火煉瓦の残存厚み(残厚)の変化を高炉操業中に精度よく測定して管理することは、溶銑による鉄皮の溶損、溶銑の流出等の防止、さらには高炉の設備診断のために極めて重要である。
【0003】
このため、耐火煉瓦の残存厚みを測定する方法が従来から種々提案されており、例えば特許文献1には、最外側の壁面の表面から内側の耐火煉瓦に向けて弾性波を送信し、耐火物最内面からの反射信号を最外側の壁面の表面にて受信して、耐火煉瓦の厚みを測定する方法が開示されている。また特許文献2においては、超音波振動子を内蔵した端子を被測定物の表面に接触させ、超音波の反射時間を測定して被測定物の厚みを測定することが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−294918号公報
【特許文献2】特開2005−354281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら最外側の壁面の表面から内側の耐火煉瓦に向けて弾性波を送信する方法では、前記したスタンプ材の存在によって弾性波が吸収、散乱されて測定精度が影響を受ける場合があり、この点さらなる改良が望まれるところである。また超音波振動子を内蔵した端子を被測定物に接触させる方法は、振動子と被測定物との間に台座が介在しているため、振動子からの超音波を確実に、かつ測定に必要なレベルの出力で被測定物に伝わらせる必要上、導電性の台座を被測定物に接触させた状態で、端子全体を被測定物に強く押し付けなければならず、そのような押し付けのための機械装置が別途必要となっていた。またそのような機械装置を測定箇所近傍に設置する必要があるため、測定場所によってはステーブ等の冷却構造の存在によって測定箇所に制約を受けたり、高炉炉底部におけるスペース的に余裕がない箇所では、測定できない場合があった。それゆえかかる点でさらなる改善が望まれている。
【0006】
本発明はそのような点に鑑みてなされたものであり、耐火物の厚みを測定するにあたって、前記したような端子を押し付けるための機械装置を不要とし、しかも精度よく耐火煉瓦等の耐火物の厚みを測定することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、前記本体内に配置され、前記圧電素子における前記耐火物側の面に密着して配置された、前記耐火物と同質材料からなる接触体とを有している。そして前記接触体は本体に係止又は固定されてその測定用端面が本体から露出し、前記圧電素子は前記付勢部材によって前記接触体側に付勢されていることを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、圧電素子における耐火物側の面に密着して、当該耐火物と同質材料からなる接触体を本体に有しているので、測定する際にはこの接触体の測定用端面を測定対象である耐火物の表面に接着して使用する。そして圧電素子自体は本体内で耐火物と同質の接触体と予め密着し、かつ付勢されているので、例えば超音波発信用の端子として使用した場合、圧電素子からの超音波は、従来のように途中で他の物質を経由することはなく、直接測定対象である耐火物と同質の接触体から耐火物へ伝わっていく。したがって端子全体を耐火物に対して強く押し付ける必要はない。またそのように端子の接触体の測定用端面を耐火物に接着してセットすればよいので、予め任意の測定希望箇所に本発明の測定用端子を設置しておくことが可能である。
なお本発明において、「同質材料」とは、弾性率がほぼ同じ材料のことをいい、組成については必ずしも同一である必要はない。しかしながら、同一の組成であってかつ同一の弾性率の材料であれば、超音波の減衰やノイズの混入を、最も抑制できる。なお弾性率がほぼ同じというのは、測定のばらつきとみなせる範囲、すなわち耐火物の弾性率に対して、たとえば±1%の範囲のものをいう。
【0009】
本発明に用いる前記圧電素子の材料には、使用環境温度で超音波発信のための圧電効果を十分に発揮する圧電効果の大きな材料を用いることが好ましく、例えばニオブ酸リチウムが使用されていることが好ましい。また本発明が適用できる耐火物としては、例えばカーボンブロック(弾性率が約10GPa)を挙げることができる。もちろんこれに限らず本発明がその厚みを測定しようとする耐火物は、弾性率が約500MPa(例えば粘土質煉瓦)〜約30GPa(例えばSiC質煉瓦)のものに対して適用できる。
【0010】
別な観点によれば、本発明は、耐火物の厚みを測定する方法であって、圧電素子と、当該圧電素子における前記耐火物側の面に密着配置された接触体とを有し、前記圧電素子が前記接触体に付勢された耐火物の厚み測定用端子を用い、前記耐火物の厚み測定用端子の接触体には前記耐火物と同質材料を用い、前記耐火物表面と前記接触体の測定用端面とを接着させた状態で、前記圧電素子に電圧を印加することより前記耐火物の厚みを測定することを特徴としている。かかる場合、前記接着は、接着剤によって実現することがよく、その際に使用する接着剤としては、硬化後の弾性率が、前記耐火物の1/10〜1/1であることが好ましい。発明者の知見によれば、かかる物性を有する接着剤を使用することで、測定対象である耐火物と接触体との間に介在することになる接着剤層による超音波伝播への影響、例えば減衰やノイズを最小限に抑えて、精度のよい測定を実施することができる。なお圧電素子を接触体へ付勢する際の力については、接触体の強度に応じて適宜選択すればよく、例えば接触体の圧縮強さの1/2〜1/3であっても十分であり、従来のように端子全体を押し付ける力よりも小さい力でよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐火物の厚みを測定するにあたって、従来のような端子全体を耐火物側に押し付ける事が不要であり、そのための機械装置も必要ない。したがって任意の箇所での測定が可能であり、測定精度も高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、 本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は本実施の形態にかかる測定用端子1の断面を示しており、本実施の形態ではカーボンブロックで構成された高炉の耐火煉瓦の厚みを測定する端子として構成されている。この測定用端子1は、ステンレス鋼からなる筒状の本体2を有しており、この本体2の両端は開口している。下端部の開口部周縁には、内側に環状に突出した係止段部3が形成されている。
【0013】
前記本体2内には、まず最も下端側に接触体11が挿入、配置されている。この接触体11は、測定対象である耐火煉瓦と同一材料からなる。高炉用の耐火煉瓦として使用されるこの種のカーボンブロックは、例えば無煙炭、黒鉛等を樹脂バインダで混練後、プレス成型されており、接触体11も、当該カーボンブロックと全く同一の組成からなるものが使用される。
【0014】
接触体11は、全体として略円柱形状を有し、下方外周には本体2下端の係止段部3に係止される係止部11aが形成されている。この係止部11aが係止段部3に係止されることで、接触体11は本体2の下端から脱落せず、また接触体11の下端面、すなわち測定用端面11bは、本体2の下端開口部から露出している。また接触体11の測定用端面11bは、図2に示したように、本体2の下端面からわずかに突出している。突出長Dは、1mm以下が好ましい。このように接触体11の測定用端面11bを突出させるのは、後述のように測定対象物に接着させる際に、測定用端面11b全面を、測定対象物の表面に確実に接着させるためである。
【0015】
接触体11の上面には、略円柱形状の圧電素子12が配置されている。このとき圧電素子12の下端面12aと接触体11の上端面11cとの密着性を向上させるために、軟金属からなる接合材13を圧電素子12の下端面12aと接触体11の上端面11cとの間に介在させてもよい。この接合材13の厚さは、なるべく薄くすることが好ましく、図3に示したように、少なくとも接触体11の上端面11c表面の凹部を充填できるほどのものでよい。接合材13に使用する軟金属としては、たとえば銅、インジウムが挙げられる。また圧電素子12の材料には、耐熱性に優れたニオブ酸リチウムが使用されている。
【0016】
圧電素子12の上端面には、円盤状の電極14が配置されている。この場合も、電極14の下端面と圧電素子12の上端面との間に、前記接合材13と同様な材料からなる接合材15を介在させてもよい。
【0017】
電極14の上端面には、中心に孔16aが形成された絶縁ワッシャ16が配置されている。絶縁ワッシャ16の上面には、バネ支持部材17が配置されている。このバネ支持部材17は、中心に孔が形成されたフランジ状の支持板部17aと、支持板部17aの中心から上方に立設された管部17bとを有している。そして管部17bの外周には、付勢部材としてバネ18が設けられている。
【0018】
本体2の上端開口部には、中心に孔19aが形成された押え部材19が設けられている。この押え部材19の外周にはネジ山が形成され、本体2の内周上方のネジ溝と螺着する。したがって、この押え部材19を回して本体2に対して螺着させていくと、本体2内の下端に配置されている接触体11は本体2に対して係止されているので、押え部材19とバネ支持部材17の支持板部17aとの間のバネ18が収縮させられ、それによって、絶縁ワッシャ16、電極14、圧電素子12を接触体11側に付勢させることができる。そのときの圧力は押え部材19の締め付け度によって調整できるが、少なくとも接触体11の材料の破断強度より小さくすることが重要である。接触体11の材料に高炉用カーボンブロックと同一の材料を使用した場合、バネ18による付勢圧力は、例えば7.35MPa以下とすることが適当である。
【0019】
本実施の形態にかかる測定用端子1は、以上の構成を有しており、例えばこの測定用端子1を超音波発信用の端子として使用する場合には、図1に示したように、電極14とバネ支持部材17との間に、例えばパルス電源21によって、超音波発信用のパルス電圧を印加すればよい。
【0020】
次に本実施の形態にかかる測定用端子1を用いて、高炉の耐火煉瓦の厚みを測定する測定方法について説明する。図4は、高炉の炉壁の断面を模式的に示しており、この例では、外側から順に鉄皮31、背面キャスタブル32、ステーブ33、スタンプ材34、耐火煉瓦としてのカーボンブロック35によって、炉壁が構成されている。
【0021】
このような構造を有する炉壁のカーボンブロック35の厚みを測定する場合、カーボンブロック35の最外周面に達するまでの測定用穴36、37を形成し、当該測定用穴36、37の底部、すなわちカーボンブロック35の最外周面に、図5にも示したように、測定用端子1の端面から露出している接触体11の測定用端面11bを接着する。なお図4に示した例では、炉壁に対して2箇所に測定用穴36、37を形成し、その中にそれぞれ測定用端子1をセットしているが、これは測定用穴36内にセットした測定用端子1を超音波発信用として用い、測定用穴37内にセットした測定用端子1を反射波の受信用として用いるためである。各測定用穴36、37にセットした測定用端子は同一構成である。
【0022】
図6に示したように、接触体11の測定用端面11bを、カーボンブロック35の最外周面35aと接着する際には、接着剤41を用いて接着する。この様な場合、接着剤の硬化後も接着剤自体に、カーボンブロック35、接触体11との同質性を持たせることが好ましく、したがって本実施の形態において使用する接着剤41の材料には、カーボンブロック35、接触体11と同じ材料を主成分とし、これにフェノール系樹脂をバインダとして混合したものが適している。しかしながら、それ以外の材料からなる接着剤を用いてももちろん測定は可能である。但し、超音波の減衰、ノイズの混入等を考慮すれば、いずれの材料からなる接着剤であっても、硬化後の弾性率が、測定対象物(本実施の形態ではカーボンブロック35)の弾性率の1/10〜1/1となるような接着剤を使用することが好ましい。また接着剤41の厚みEは、1mm以下が好ましい。
【0023】
なお図5に示したように、電極14などから引き出される信号ケーブル42の外周には、保護チューブ43が設けられる。
【0024】
以上のように接触体11の測定用端面11bを、カーボンブロック35の最外周面35aと接着して、測定用穴36、37内に測定用端子1をセットした後は、例えば測定用端子1の圧電素子12に測定用の電圧、例えばバルス電圧を印加することで、圧電素子12から超音波が発信し、接触体11からそのままカーボンブロック35内に伝播する。そしてカーボンブロック35の炉側内周面で反射した反射波を、測定用穴37にセットした受信用の測定用端子1で受信することで、反射時間と超音波の伝播速度から、カーボンブロック35の厚みを測定することができる。
【0025】
このように本発明の実施の形態によれば、カーボンブロック35の厚みを測定するにあたり、測定用端子1をカーボンブロック35の最外周面に押し付ける必要はなく、測定用端子1の接触体11の測定用端面11bをカーボンブロック35の最外周面35aに接着するだけでよい。したがって従来のこの種の測定用端子に必要であった、端子をカーボンブロック35の最外周面に強く押し付けるための機械装置等は不要である。
【0026】
なお測定用穴36、37は、炉壁形成後に形成してもよいが、炉壁自体を形成する際に同時に測定用穴36、37を形成し、予め測定用端子を測定用穴36、37にセットしてもよい。こうすることで、炉壁完成後には、測定用穴の形成が不可能な場所においても、カーボンブロック35の厚みを測定することが可能である。したがって、本実施の形態にかかる測定用端子1を使用すれば、任意の場所での測定が可能になる。
【0027】
また圧電素子12と接触体11は、予め本体2内において付勢されて密着しているので、前記した接着による測定用端子1のセットだけで、超音波の十分な発信レベル、受信レベルが確保でき、しかも接触体11はカーボンブロック35と同質の材料を使用しているから、正確な測定が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、例えば高炉の炉底部、熱風炉、転炉、真空脱ガス設備における耐火物の厚みを測定する際に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施の形態にかかる測定用端子の側面断面図である。
【図2】図1の測定用端子の下端部分の拡大図である。
【図3】図1の測定用端子の接触体と圧電素子の密着状態を示す説明図である。
【図4】高炉のカーボンブロックの厚みを測定する様子を示す断面の説明図である。
【図5】測定用端子をカーボンブロックの最外周面に接着した様子を示す断面の説明図である。
【図6】測定用端子とカーボンブロックとの接着状態を示す断面の説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 測定用端子
2 本体
3 係止段部
11 接触体
11a 係止部
11b 測定用端面
11c 上端面
12 圧電素子
13、15 接合材
14 電極
16 絶縁ワッシャ
16a 孔
17 バネ支持部材
17a 支持板部
17b 管部
18 バネ
19 押え部材
31 鉄皮
32 背面キャスタブル
33 ステーブ
34 スタンプ材
35 カーボンブロック
35a 最外周面
36 測定用穴
41 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火物の厚みを超音波によって測定するための端子であって、
筒状の本体と、
前記本体内に配置された付勢部材と、
前記本体内に配置された圧電素子と、
前記本体内に配置され、前記圧電素子における前記耐火物側の面に密着して配置された、前記耐火物と同質材料からなる接触体と、を有し、
前記接触体は本体に係止又は固定されてその測定用端面が本体から露出し、
前記圧電素子は前記付勢部材によって前記接触体側に付勢されていることを特徴とする、耐火物の厚み測定用端子。
【請求項2】
前記圧電素子の材料には、ニオブ酸リチウムが使用されていることを特徴とする、請求項1に記載の耐火物の厚み測定用端子。
【請求項3】
前記耐火物はカーボンブロックであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の耐火物の厚み測定用端子。
【請求項4】
耐火物の厚みを測定する方法であって、
圧電素子と、当該圧電素子における前記耐火物側の面に密着配置された接触体とを有し、前記圧電素子が前記接触体に付勢された耐火物の厚み測定用端子を用い、前記耐火物の厚み測定用端子の接触体には前記耐火物と同質材料を用い、
前記耐火物表面と前記接触体の測定用端面とを接着させた状態で、前記圧電素子に電圧を印加することより前記耐火物の厚みを測定することを特徴とする、耐火物の厚み測定方法。
【請求項5】
前記圧電素子の材料には、ニオブ酸リチウムが使用されていることを特徴とする、請求項4に記載の耐火物の厚み測定方法。
【請求項6】
前記耐火物はカーボンブロックであることを特徴とする、請求項4又は5に記載の耐火物の厚み測定方法。
【請求項7】
前記接着は接着剤によって行なわれ、
この接着剤は、硬化後の弾性率が、前記耐火物の1/10〜1/1であることを特徴とする、請求項4〜6のいずれかに記載の耐火物の厚み測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−256589(P2008−256589A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100308(P2007−100308)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000198318)株式会社IHI検査計測 (132)
【Fターム(参考)】