説明

耕耘機用突起付破砕爪

【課題】 耕耘機の運転効率を向上させるとともに、部品(破砕爪)の耐久性も向上させ、農業生産性を高めることの可能な耕耘機用の破砕爪を提供する。
【解決手段】耕耘機の回転軸205に取り付けられる取付フランジ207と、取付フランジ207から延設され、回転することによって土壌の表層部から内部に向かって食い込む円弧状の刃状部201Aを備えた縦刃201と、その縦刃201に形成され、土壌を均しながら攪拌・破砕する補助刃203A,203Bとを具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耕耘機のロータリー軸に取り付ける耕耘機用の突起付破砕爪に係り、畑などの土壌を耕す際に利用される破砕爪に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のロータリー式耕耘機は、ロータリーの軸に取り付ける爪はブーメランのような形状で、根元にボルトで固定する穴があり、先端は土壌を破砕しやすいように細くなっている。
【0003】
まず、この従来の耕耘機で使用される破砕爪に関して説明する。
図7〜9は、突起がない一般的な破砕爪を用いて畑の土壌を耕す場合を示す説明図である。
図7(a)であるが、突起のついていない鎌状の縦刃(701)が回転軸(705)に固定ボルト(713)で固定され、回転軸(705)の回転によって縦刃(701)も回転する。図7(b)は、1枚の縦刃を拡大したものである。縦刃本体(701)に固定ボルト穴(711)が開けられている。回転軸(705)への固定方法は機種によって異なるが、回転軸(705)の回転によって縦刃(701)も同時に回転し、この回転する破砕爪(700)の縦刃(701)に、円弧状に形成された刃状部(701A)が土壌に食い込むことによって土壌を細かく破砕し、土を耕すようになっている。
【0004】
図8は、突起のない通常の破砕爪の耕耘作業を表したものである。
回転軸(801)が回転し、破砕爪(803)が矢印方向(805)に土壌に入り込むと、土壌の動きは、破砕爪後方で点線矢印(807)のように巻き込み戻りが発生する。
【0005】
図9は、図8の(a)におけるB−B方向の断面図であり、破砕爪と土壌の移動方向を表している。破砕爪(901)は矢印(903)に移動する。
破砕爪後方では土壌の巻き込み戻りが生ずるが、図4Cと異なり、遮断するものが何もないので、耕耘破砕された土壌がまた元に戻ってしまう。これが突起のない一般的な破砕爪の欠点であり、本発明の目的の一つに、この巻き込み戻りを抑制し、土壌を細かく破砕し、作業効率を向上させることがある。
【0006】
実開昭56−104302号公報には、農用四輪トラクタにおける整地装置の砕土爪に関する考案が記載されている。当該考案では、ロータリーの回転軸中心からの距離が次第に離れるに従い、曲線状の縦刃が連続して設けられた構成が採用されている。
【0007】
また、実開平6−17045号公報には、ロータリー耕運装置における土などの堆積防止装置に関する考案が記載されている。こちらでも土壌を破砕しながら、耕す部分として、曲線状の刃が用いられている。
【0008】
このように、従来では、ロータリー軸に曲線状の爪を取り付け、その爪によって効果的に土壌を破砕しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開昭56−104832号公報
【特許文献2】実開平6−17405号公報
【特許文献3】実開平4−19103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の破砕爪を用いた耕耘機では、土壌を細かく破砕することができず、土壌の巻き込み戻りが起こるため、何度も同じ場所を耕耘機で通る必要があった。また、破砕爪の磨耗も早く、こまめに交換する必要があり、これによってランニングコストの上昇や交換に要する作業手間がかかるなどのデメリットも存在していた。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、農作業の作業性を向上させることが可能であり、ランニングコストを圧縮することにより、収益性の向上を可能とする耕耘機用の破砕爪を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、耕耘機の回転軸に取り付けられる取付部と、前記取付部から円弧状に形成された縦刃とを具備した耕耘機用突起付破砕爪であって、該縦刃の外周部分には刃状部が形成され、該刃状部によって土壌の表層部から内部に向かって食い込むとともに、該刃状部の反対側に補助刃が設けられ、該刃状部並びに補助刃によって、土壌を均しながら攪拌・破砕することを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、上記1項において、前記補助刃は1枚の縦刃に複数設けられ、その補助刃の突起方向は、縦刃の回転方向と反対方向であることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、上記1項又は2項において、前記縦刃本体は、該縦刃本体に設けられた湾曲部を境として先端部側にいくにしたがい平面視左右いずれかに振れ幅を有して形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、上記1〜3項のうち、何れか1項において、前記縦刃本体は、該縦刃本体に設けられた湾曲部を境として先端部側にいくにしたがい平面視左右いずれかに振れ幅を有して形成され、該湾曲部から先端部側にかけて少なくとも一つの補助刃が設けられているとともに、該湾曲部から取付部側にかけて少なくとも一つの補助刃が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、土壌を細かく破砕することができ、土壌の巻き込み戻りを防ぎ、耕耘機の回転軸の回転数を減らしても土壌を十分に撹拌できる。
要するに、従来の耕耘機ではこの巻き込み戻りが発生するために、圃場内の同一エリアを複数回運行する必要があったが、本発明の突起付破砕爪を使用すれば巻き込み戻りを防ぐことが出来るために、耕耘機の運行回数を減らすことができる。
【0016】
また、本発明の破砕爪を使用すれば、ロータリーの回転数を低下させることができるので、エンジンに対する負荷を軽減でき、燃費の節約にもつながる。
【0017】
さらに、本発明の破砕爪は耐久性に優れており、破砕爪の交換頻度を抑えることができ、ランニングコストや交換時間などの節約も実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る突起付破砕爪を使用する耕耘機の概略構成を示した概略斜視図である。
【図2】本発明に係る突起付破砕爪の実施形態を示す斜視図であって、4本の破砕爪が固定された耕耘機の回転軸に対する取付状態を示した斜視図である。
【図3】本発明に係る突起付破砕爪の実施形態の時の作用を示した説明図である。
【図4A】本発明に係る突起付破砕爪による土壌破砕を表した図で、図4Aの(a)は土壌破砕を水平から見た図で、図4Aの(b)は真上から見た図である。
【図4B】本発明に係る突起付破砕爪による土壌破砕を表した図で、図4Aの状態から破砕爪が土壌中に食い込んだ状態を示し、図4Bの(a)は土壌破砕を水平から見た図で、図4Bの(b)は真上から見た図である。
【図4C】本発明に係る突起付破砕爪による土壌破砕を表した図で、図4Bの状態から破砕爪が更に土壌中に食い込んだ状態を示し、図4Cの(a)は土壌破砕を水平から見た図で、図4Cの(b)は真上から見た図である。
【図5】図4のA―A線に沿った矢視断面図で、土壌中の破砕爪の動きと、土壌の移動方向を表した図である。
【図6】本発明の突起付破砕爪を取り付けた小型耕耘機の側面図である。
【図7】一般的に使用されている突起のない通常の破砕爪である。
【図8】一般的な図7の破砕爪による土壌破砕を表した図である。
【図9】図8のB−B線に沿った矢視断面図で、土壌中の破砕爪の動きと、土壌の移動方向を表した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る耕耘機用突起付破砕爪の好適な実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0020】

図1は本発明の破砕爪が使用されるトラクター(耕耘機)の外観を示している。耕耘機の運転者は、運転席(101)に着席し、耕耘機の運転方法に沿ってエンジン(103)始動、目的の圃場まで走行する。この走行時には、タイヤ(105)のみ駆動し、破砕爪が取り付けられる回転軸(109)はギアを中立側にしているため回転しない。
【0021】
目的の圃場に到着したら、耕耘すべき場所で回転軸(109)を駆動させて破砕爪による耕耘作業を開始する。この回転軸(109)は、ギアを入れることによって図示しない伝達軸を介し、チェーンケース(110)内に収容されている駆動チェーン(107)、ギアが駆動されて、エンジンの駆動力が伝達されるようになっている。圃場では、回転軸(109)に固定している突起付破砕爪(111)を、耕作しようとする土壌の所定位置まで下げた後、回転軸(109)を回転させて土壌の耕耘を開始する。
【0022】
図2は回転軸(205)が貫通する縦刃取付フランジ(207)に、本実施形態の耕耘機用突起付破砕爪(200)を固定したものである。実際の耕耘機の回転軸(205)には、図2のように突起付破砕爪(200)を固定するための取付フランジ(207)が、所定の間隔毎に複数設置されている。なお、一つの取付フランジ(207)に対し、4つの突起付破砕爪(200)が取り付けられている。突起付破砕爪(200)は、その基端の取付部を貫通する縦刃固定ボルト(209)によって取付フランジ(207)に対し、脱着可能に取付固定されている。
【0023】
突起付破砕爪(200)は、取付部から円弧状に延出する円弧状の縦刃(201)が延設されており、その外周側に刃状部(201A)が形成されており、耕作時に、この刃状部(201A)から土壌に縦刃(201)が食い込むことによって土壌を破砕しながら耕耘するようになっている。突起付破砕爪(200)は、回転軸(205)が回転すると、縦刃取付フランジ(207)も同方向に回転し、突起付破砕爪(200)も回転する。刃状部(201A)の反対側(峰側)には、補助刃となる2つの突起(203A,203B)が、先端部付近、並びに、先端部からやや間隔を隔てた位置に、溶接などによって立ち上がるようにして設けられている。
なお、回転方向は、突起(203A,203B)の方向と逆方向に回転する(図2の場合では反時計回り)。
【0024】
図3は1枚の突起付破砕爪(300)を示した説明図である。回転軸(307)が矢印(309)の方向に回転し、突起付破砕爪(300)は矢印(311)方向に回転する。縦刃(301)本体には、緩やかな円弧状の刃状部(301A)が形成されているとともに、回転方向に対し左右いずれかに振れ幅を有する湾曲部(305)が設けられている。縦刃(301)本体の基部には、回転軸(205)の取付フランジ(207)に固定するためのボルト穴(313)が設けられている。(a)と(b)との違いは、視点の角度が異なるだけであり、突起付破砕爪(300)の仕組みとしては(a)と(b)は全く同じものである。
なお、以上の突起付破砕爪(200),(300)では、突起の数を2つ設けているが、突起の数はいくつであっても良い。
【0025】
図4Aは土壌(409)に接する瞬間の1枚の突起付破砕爪を表したものである。(a)図は耕耘機による耕耘作業を側面から見た図で、(b)図は、(a)図の矢印bの方向、即ち真上から見た図である。回転軸(401)が時計回りに回転し、それに伴って縦刃(403)も回転する。矢印(411)は当該突起付破砕爪の回転方向で、補助刃である突起(405)が立ち上がっている方向とは逆方向に回転する。
図4A(b)に示されるように、真上からみると(平面視)、縦刃(403)の先端部近傍には、左右方向いずれかに振れるように曲げられた湾曲部(407)が形成されている。
【0026】
図4Bは、突起付破砕爪(400)が土壌を耕耘する際、縦刃(403)が土壌に入り込んだ直後の土壌の動きを表したものである。回転軸や突起付破砕爪などの部分、(a)と(b)の視点の違いは図4Aと同様である。
矢印(413)は土壌中の突起付破砕爪(400)の進行方向を表しているが、点線で示す矢印(415)は突起付破砕爪が土壌中を通過した後の、耕耘された土壌の動きを表している。点線矢印(415)に示されるように、耕耘された土壌は、突起付破砕爪(400)の軌跡に向かって移動する。この動きを巻き込み戻りと呼んでいる。
【0027】
図4Cは、土壌耕耘がさらに進み、突起付破砕爪(400)が土壌深くまで入り込んでいる様子を表している。回転軸や突起付破砕爪などの部分、(a)と(b)の視点の違いは図4Aと同様である。矢印および点線矢印の意味は図4Bと同様である。土壌深くまで突起付破砕爪が入り込むと、巻き込み戻りの度合いも大きくなる。
【0028】
図5は、図4Cの(a)におけるA−A線に沿った矢視断面図であり、突起付破砕爪(400)と土壌の移動方向を表している。突起付破砕爪(400)は、矢印(507)方向に移動する。突起付破砕爪(400)の後方、特に突起(405A,405B)の付近では、土壌の巻き込み戻りの動きが起こっている。
この巻き込み戻りが起こると、突起付破砕爪(400)の刃状部(403A)によって分断破砕された土壌が、元の場所に戻ることになるので、耕耘効率が下がり、同じ場所を何度も耕耘機で耕耘しなければならない。
しかし、本発明の突起付破砕爪(400)は、補助刃である突起(405A,405B)によって、細かく砕くように土壌を破砕しているので、この巻き込み戻りの動きを最小限に食い止めることが可能になるのである。
【0029】
図6は小型耕運機(600)を表しており、本発明による突起付破砕爪(607)は、様々な耕耘機に活用できる汎用性も持ち合わせている。本図の小型耕耘機(600)は、オペレーターがハンドル(601)を両手で持ち、歩きながら運転する形式のものである。エンジンの動力により走行タイヤ(603)が回転し、さらに回転軸(605)を駆動させると、それに固定されている突起付破砕爪(607)も回転し、耕耘作業が可能となる。
【0030】
本実施形態によれば、破砕爪に補助刃として機能する突起がある場合は、巻き込み戻り戻りを抑制することができ、結果として、土壌を細かく破砕することが可能となる。また、これにより圃場の中の同じ場所を複数回耕耘機で作業する必要もなくなり、耕耘機や破砕爪の耐久性の向上および燃料費等の諸経費の削減を実現することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上説明したように、本発明によれば、耕耘機の回転数を低下させても土壌を細かく破砕することが可能となり、破砕爪の磨耗を抑制することができ、耐久性の向上に寄与する。また、燃料代などのランニングコストを圧縮することが可能となり、省資源といった目的に適うものである。
【符号の説明】
【0032】
101 運転席
103 エンジン
105 タイヤ
107 駆動チェーン
109 回転軸
110 チェーンケース
111 突起付破砕爪
201 縦刃
201A 刃状部
203A 203B 突起(補助刃)
205 回転軸
207 縦刃取付フランジ
209 縦刃固定ボルト
300 突起付破砕爪
301 縦刃
301A 刃状部
303A 303B 突起(補助刃)
305 湾曲部
307 回転軸
313 固定用ボルト穴
400 突起付破砕爪
401 回転軸
403 縦刃
405A 405B 突起(補助刃)
407 湾曲部
409 土壌
501 縦刃
503 突起(補助刃)
601 ハンドル
603 走行タイヤ
605 回転軸
607 突起付破砕爪
701 縦刃
703 固定ボルト
705 回転軸
709 回転軸本体
711 固定ボルト用穴
801 回転軸
803 破砕爪
901 破砕爪


【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘機の回転軸に取り付けられる取付部と、前記取付部から円弧状に形成された縦刃とを具備した耕耘機用突起付破砕爪であって、該縦刃の外周側には刃状部が形成され、該刃状部によって土壌の表層部から内部に向かって食い込むとともに、該刃状部の反対側に補助刃が設けられ、該刃状部並びに補助刃によって、土壌を均しながら攪拌・破砕することを特徴とする耕耘機用突起付破砕爪。
【請求項2】
前記補助刃は1枚の縦刃に複数設けられ、その補助刃の突起方向は、縦刃の回転方向と反対方向であることを特徴とする請求項1に記載の耕耘機用突起付破砕爪。
【請求項3】
前記縦刃本体は、該縦刃本体に設けられた湾曲部を境として先端部側にいくにしたがい平面視左右いずれかに振れ幅を有して形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の耕耘機用突起付破砕爪。
【請求項4】
前記縦刃本体は、該縦刃本体に設けられた湾曲部を境として先端部側にいくにしたがい平面視左右いずれかに振れ幅を有して形成され、該湾曲部から先端部側にかけて少なくとも一つの補助刃が設けられているとともに、該湾曲部から取付部側にかけて少なくとも一つの補助刃が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のうち、いずれか1項に記載の耕耘機用突起付破砕爪。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−239782(P2011−239782A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119819(P2011−119819)
【出願日】平成23年5月29日(2011.5.29)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3161389号
【原出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(510137766)
【Fターム(参考)】