説明

肥料散布機

【課題】 肥料散布機における水平回転するスピンナによる散布部において、より肥料
の放出距離を大きくして散布巾を広くする。
【解決手段】 肥料ホッパーと、この肥料ホッパーの下方には繰り出し口と、繰り出し口には肥料の繰出量を調節するシャッタ板が設けられ、その繰出口の下方には水平方向に回転するスピンナを有した散布部を配したトラクタに装着する肥料散布機である。前記スピンナには、その上面に立設した羽根を有するとともに、その回転中心から外縁に向けて次第に椀状にあるいは円錐状にセリ上げた形状をしたことを特徴としたもので、スピンナに落下した肥料は次第に椀状にあるいは円錐状にセリ上げた形状の表面に沿って上方に放物線状に放出されて飛散距離を大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥料散布機の水平回転するスピンナによる散布部の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
肥料の散布が広範囲に、かつ、均平に散布しうる対向回転円板式の肥料散布機として、特開平11-225524号公報(特許文献1)が知られる。この公報には「スピンナー4・4の上面に設けられる翼板41・・・は、それの下縁に、スピンナー4・4の上面に沿う平板状の取付座板41aが連続して形成してあって、全体としてアングル状に形成してあり、それの取付座41aを、図7に示している如くアジテータ軸40中心に放射状にスピンナー4の上面に配位し、スピンナー4の中心に寄る内端側と、周縁に寄る外端側とを、連結ピン42・43によりスピンナー4に連結することで装着するが、外端側の連結ピン43は、スピンナー4に開設した連結穴44に対し挿脱自在に組付け、かつ、その外端側の連結ピン43が、内端側の連結ピン42中心とする取付座板41aの回動により画かれる回動軌跡上で、スピンナー4の回動方向に対し後方に位置する部位に開設しておく連結穴44・・・に嵌挿して連結することで、翼板41・・・がスピンナー軸40中心とする放射方向に対し所定の後退角θを具備する状態に組付けられるようにしてある。
【0003】
集肥部材5は、上述の一対のスピンナー4・4が、肥料ホッパーHの底板2に開設した繰出穴22・22から繰出される肥料Mを、対向側の周縁部の上面に受け止めて遠心力および翼板41・・・の抗力により機体枠1の後面側の散布口から振り出したときに、その肥料M・・・を所定の巾の流れに集合させるもので、前述のスピンナー4・4の翼板41・・・に後退角θを具備せしめた状態時に、ステー7・7をセットボルト70・70により機体枠1に装脱自在に組付けることで装着する。」との技術が開示されている。
【特許文献1】特開平11-225524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、圃場の大規模化が進み、ますます散布作業のスピード化と効率化が要求されるが、前記したスピンナの上面に設けた翼板の放射方向に対して後退角の調整や単にスピンナの回転速度の増加のみでは肥料の散布到達距離にも限界があり、その散布巾の拡大は困難になっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載した、肥料ホッパーと、肥料ホッパーの下方には繰り出し口と、繰り出し口には肥料の繰出量を調節するシャッタ板が設けられ、その繰出口の下方には、水平方向に回転するスピンナを有した散布部を配したトラクタに装着する肥料散布機において、前記スピンナには、その上部に立設した羽根を有するとともに、その回転中心から外縁に向けて次第に椀状あるいは円錐状にセリ上げた形状としたことを特徴とした肥料散布機である。
【0006】
又、請求項2に記載した、請求項1記載の肥料散布機であって、そのスピンナの上面に設けた羽根が回転方向に向けて開放した断面チャンネル状で先端がスピンナの外縁より突出していることを特徴とした肥料散布機である。
又、請求項3に記載した、請求項2記載の肥料散布機であって、断面チャンネル状の羽根の立設面に適宜に切欠孔を設けたことを特徴とした肥料散布機である。
【発明の効果】
【0007】
以上のような構成にすることにより、従来公知のもの、例えば図7に示す表面がフラットなスピンナ620よりも散布巾を拡大することができたもので、請求項1においては特に、スピンナの中心から外縁に向けて次第に椀状あるいは円錐状にセリ上げた形状によって、繰り出し口から落下した肥料は遠心力を与えられながらセリ上げられてスピンナ外縁から上方に放物線を描いて放出される。このため従来の水平なスピンナに比較して到達点が遠くなり、その分散布巾が広まる。
又、請求項2においては羽根が回転方向に向けて開放した断面チャンネル状で先端がスピンナの外縁より突出しているので、肥料がチャンネル形状の立設面と上面に抱持されて外方へ移動して、その突出した先端から放出されるので、所定の重量を有する肥料は従来より遠心力が大きくなって到達点が大きくなる。
又、請求項3において、断面チャンネル状の羽根の立設面に適宜に切欠孔を設けたので、チャンネル内を抱持されながら移動する肥料の一部が切欠孔を通過し、その肥料の遠心力は小さくなって、その到達点は分散され、幅方向に対する散布精度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施例を示す肥料散布機の全体斜視図、図2は本発明の実施例を示す肥料散布機の横断面図、図3は同肥料散布機の繰出口及び散布部の上面図、図4は同肥料散布機の繰出口及び散布部の部分断面側面図、図5は同肥料散布機に備えた散布部のスピンナ斜視図、図6はスピンナの作用を示す断面図及び図7は従来のスピンナ作用を示す側面図を示している。
【0009】
図1において、全体の構成を説明する。機体フレーム1前方には、トラクタに装着するロアピン11とトップブラケット12があり、肥料散布機はトラクタから駆動力を入力軸30に伝達され駆動する。
【0010】
シャッタ開閉装置54は、左右に配置された散布部6に肥料の供給を調節するシャッタをそれぞれ作動させ、肥料ホッパー2に入れた肥料はシャッタを開くと散布部6に供給され散布される。
【0011】
81はコントロールボックスで、図示されていないがトラクタ座席近傍に配置され、シャッタ開閉装置54を作業者が指示作動させる遠隔操作装置である。メインスイッチ81aをONすると、シャッタ開度制御装置が作動可能となり、開度設定ダイヤル81b,81bでシャッタ開度を設定し、シャッタ開閉スイッチ81cをONにすると設定した開度にシャッタはそれぞれ開かれる。シャッタ開閉スイッチ81cをOFFすると、開度設定ダイヤル81b,81bが開状態であっても、シャッタ板はそれぞれ全閉となる。
【0012】
シャッタが閉じているときはシャッタ全閉ランプ81d,81dが、シャッタが設定した開度に開いたときはシャッタ開ランプ81e,81eがそれぞれ点燈する。このシャッタ開閉スイッチ81cを設けることにより、枕地旋回時や肥料の補給時など散布作業を一時中断する場合に、シャッタ開度設定ダイヤル81bを「0」に戻すことなく散布作業を停止することが可能となる。
【0013】
図2から図4において、本発明を実施した肥料散布機の断面図を示し説明する。機体フレーム1と、上方に配設される肥料ホッパー2をホッパーフレーム21で支持し固定する。機体フレーム1内の前方に入力軸30と出力軸31を有した減速機3を配設し、入力軸30の回転力は減速機3内のベベルギヤ3aにより垂直方向へ変換され、平歯車3bにより減速され出力軸31へ伝達される。
【0014】
肥料ホッパー2の底部に配設された底板4に繰出口41を開設し、それにシャッタ板51を摺動するように配置し、シャッタレバー52を回動させ、リンクロット53aとリンクアーム53bおよびシャッタリンク53を介しシャッタ板51を開閉させ、肥料繰出量を調節する。
【0015】
54はシャッタ開閉装置で、前記機体フレーム1の前方上部に配置される。シャッタ開閉装置54は、前記シャッタ板51の開閉作動を電気的に行うもので、モータギヤ54aを備えた電動モータMとモータギヤ54aと噛合し、水平方向に軸支されたシャッタギヤプレート54bを有し、このシャッタギヤプレート54bはシャッタレバー52と連動して動き、リンクロット53aとリンクアーム53bおよびシャッタリンク53を介して、シャッタ板51を作動させる。
【0016】
8はシャッタ開度制御装置で、前記コントロールボックス81からの指示により、シャッタ開閉装置54を作動させるための制御回路が組み込まれていて、シャッタギヤプレート54bの回動軸にはポテンショメータ82が組み込まれており、シャッタギヤプレート54bの回動量情報をシャッタ開度制御装置8に伝える。
【0017】
肥料繰出口41から繰り出される肥料は、傾斜板61を介し回転する散布部6に落下し散布される。
散布部6は、左右一対に配置されて水平方向に回転するスピンナ62を有する。スピンナ62は縦軸65によって回転される。63の羽根はスピンナ62の上面に配置され、回転する縦軸65から放射方向に向けて着脱自在に、且つ、投てき角度(後退角)調整自在に取り付けられている。羽根63はコ字状チャンネル断面を有し、下面がスピンナ62の上面に当接され回転方向に開放側を向けて固着される。
【0018】
7は混合装置で、回転軸71と回転軸71の中間部に放射状に伸ばした板、放射板72を配設し、回転軸71の上端部に回転軸中心からオフセットした位置により放射方向に突出させて、下方に向け屈曲させた一対のアーム右73とアーム左74を設けている。アーム右73はホッパー底面に近接する部分に配設される混合板75に向けて伸ばし下端で接合し、アーム右74は、前記放射板72の上面に配設した混合板75に向けて伸ばし下端で接合されたものから構成され、出力軸31に嵌挿される。
【0019】
図5と図6に基づいて散布部6を構成するスピンナ62について詳説する。
縦軸65を中心に回転するスピンナ62は、回転中心から外縁に向けて次第に椀状あるいは円錐状にせり上げた形状を示す。図6はスピンナ62の断面を示したもので、回転するスピンナ62の表面に落下した肥料は遠心力を与えられながらセリ上げられてスピンナ62の外縁から
上方に放物線を描いて放出されるので到達点が遠くなる。
【0020】
図5に示すスピンナ62の上面に設置された断面コ字状でチャンネル状の羽根は、スピンナ62の外縁より突出して設置され、立設面に切欠孔64が設けられている。回転するスピンナ62に落下してくる肥料は外縁へ向けて移動し、一部は羽根63のチャンネル状の内部に移動し、立設面を上面によって抱持されて外縁へ移動し、その突出した先端から放出されるので所定重量の肥料は遠心力が加速されて到達点が遠くなって散布巾が広まる。
【0021】
羽根63の立設面に切欠孔64を設けたのでチャンネル状の羽63内部を抱持移動されながら、一部の肥料は切欠孔64を通過して放出される。
切欠孔64は羽63外縁より回転中心から近い位置にあるので遠心力は小さくなり到達点も短くなり巾方向に対して分散され散布精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例を示す肥料散布機の全体斜視図
【図2】本発明の実施例を示す肥料散布機の横断面図
【図3】同肥料散布機の繰出口及び散布部の上面図
【図4】同肥料散布機の繰出口及び散布部の部分断面側面図
【図5】同肥料散布機に備えた散布部のスピンナ斜視図
【図6】スピンナの作用を示す断面図
【図7】従来のスピンナ作用を示す側面図
【符号の説明】
【0023】
1 機体フレーム
11 ロアピン
12 トップブラケット
2 肥料ホッパー
21 ホッパーフレーム
3 減速機
30 入力軸
31 出力軸
3a ベベルギヤ
3b 平歯車
4 底板
41 繰出口
51 シャッタ板
52 シャッタレバー
53 シャッタリンク
53a リンクロット
53b リンクアーム
54 シャッタ開閉装置
54a モータギヤ
54b シャッタギヤプレート
6 散布部
61 傾斜板
62 スピンナ
63 羽根
64 切欠孔
65 縦軸
7 混合装置
71 回転軸
72 放射板
73 アーム右
74 アーム左
75 混合板
8 シャッタ開度制御装置
81 コントロールボックス
81a メインスイッチ
81b シャッタ開度設定ダイヤル
81c シャッタ開閉スイッチ
81d シャッタ全閉ランプ
81e シャッタ開ランプ
82 ポテンショメータ
M 電動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥料ホッパーと、肥料ホッパーの下方には繰り出し口と、繰り出し口には肥料の繰出量を調節するシャッタ板が設けられ、その繰出口の下方には、水平方向に回転するスピンナを有した散布部を配したトラクタに装着する肥料散布機において、前記スピンナには、その上面に立設した羽根を有するとともに、その回転中心から外縁に向けて次第に椀状あるいは円錐状にセリ上げた形状としたことを特徴とした肥料散布機。
【請求項2】
請求項1記載の肥料散布機であって、そのスピンナの上面に設けた羽根が回転方向に向けて開放した断面チャンネル状で先端がスピンナの外縁より突出していることを特徴とした肥料散布機。
【請求項3】
請求項2記載の肥料散布機であって、断面チャンネル状の羽根の立設面に適宜に切欠孔を設けたことを特徴とした肥料散布機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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